特許第6186280号(P6186280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6186280短距離ミリメートル波ワイヤレスインターコネクト(M2W2インターコネクト)のための周期的近接場導波器(PNFD)
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186280
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】短距離ミリメートル波ワイヤレスインターコネクト(M2W2インターコネクト)のための周期的近接場導波器(PNFD)
(51)【国際特許分類】
   H01Q 19/30 20060101AFI20170814BHJP
   H01P 1/04 20060101ALI20170814BHJP
   H04B 5/02 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   H01Q19/30
   H01P1/04
   H04B5/02
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-544840(P2013-544840)
(86)(22)【出願日】2011年12月16日
(65)【公表番号】特表2014-504483(P2014-504483A)
(43)【公表日】2014年2月20日
(86)【国際出願番号】US2011065576
(87)【国際公開番号】WO2012083213
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年12月12日
(31)【優先権主張番号】61/424,554
(32)【優先日】2010年12月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】チャン マウ‐チャン フランク
(72)【発明者】
【氏名】タム サイ‐ワン
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0318105(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0001917(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/144617(WO,A2)
【文献】 Kai KANG;Wen-Yan YIN;Lei-Wei LI,Transfer Functions of On-Chip Global Interconnects Based on Distributed RLCG Interconnects Model,2005 IEEE Antennas and Propagation Society International Symposium Digest,米国,IEEE,2005年,Vol. 1A,pp. 524 - 527
【文献】 S. M. HOLIK; T. D. DRYSDALE,Simplified Model for On-Chip Interconnects in Electromagnetic Modelling of System-in-Package,2010 International Conference on Electromagnetics in Advanced Applications (ICEAA) Proceedings,2010年 9月,pp. 541 - 544,ISBN: 978-1-4244-7368-7
【文献】 K. KIMOTO; N. SASAKI; S. KUBOTA; W. MORIYAMA; T. KIKKAWA,High-Gain On-Chip Antennas for LSI Intra-/Inter-Chip Wireless Interconnection,2009 3rd European Conference on Antennas and Propagation Proceedings,2009年,pp. 278 - 282
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/04
H01P 3/16
H01Q 19/30
H04B 1/26
H04B 5/02
H04B 7/24
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速データ転送速度能力を有する短距離通信に向けた、指定された周波数で信号を送信および受信するためのワイヤレスインターコネクトであって、
送信機と受信機との間の高速データ転送速度能力を有する短距離通信に向けた、ミリメートル波周波数で無線周波数(RF)信号を送信および受信する短距離ミリメートル波ワイヤレス(millimeter wave wireless)(M2W2)インターコネクトのための、該送信機及び該受信機の両方に近接場で結合された一つまたは複数の周期的近接場導波器(periodic near field director)(PNFD)
を含み、
近接場結合が周期的結合構造によりカスケード式に該送信機から該受信機へ延長されるように、該期的近接場導波器内の少なくとも二つの連続した周期的結合構造(PCS)間の近接場結合がある、前記ワイヤレスインターコネクト。
【請求項2】
周期的結合構造が、
長手方向の寸法が送信機と受信機との間の無線周波数信号の伝搬方向に対して実質的に直角になるように位置決めされた金属片
から構成されている、請求項1記載のワイヤレスインターコネクト。
【請求項3】
周期的結合構造の各々が、隣接する周期的結合構造に対して平行に位置決めされており、各周期的結合構造間の分離距離が、無線周波数信号の1波長以内である、請求項1記載のワイヤレスインターコネクト。
【請求項4】
周期的近接場導波器が、
第1の周期的近接場導波器と第2の周期的近接場導波器との間で無線周波数信号を送信および受信するための、互いに結合している該第1の周期的近接場導波器および該第2の周期的近接場導波器
を含む、請求項1記載のワイヤレスインターコネクト。
【請求項5】
第1の周期的近接場導波器と第2の周期的近接場導波器との間にエアギャップがある、請求項4記載のワイヤレスインターコネクト。
【請求項6】
送信機が搬送波信号を入力データストリームで変調し、変調された該搬送波信号が次いで、変調された該搬送波信号を放射する送信機アンテナへ供給され、
受信機が、放射された該搬送波信号を受信機アンテナで受信し、かつ受信した該搬送波信号を出力データストリームとしてのフルスイングデジタル信号へ変換し、かつ
該送信機および該受信機が、集積回路チップ間またはプリント回路基板間での通信に非同期変調および差動信号方式を使用する、
請求項1記載のワイヤレスインターコネクト。
【請求項7】
送信機アンテナまたは受信機アンテナがオンチップ差動ダイポールアンテナを含む、請求項6記載のワイヤレスインターコネクト。
【請求項8】
ワイヤレスインターコネクトを使用した高速データ転送速度能力を有する短距離通信に向けた、指定された周波数で信号を送信および受信するための方法であって、
送信機と受信機との間の高速データ転送速度能力を有する短距離通信に向けた、ミリメートル波周波数で無線周波数(RF)信号を送信および受信する短距離ミリメートル波ワイヤレス(M2W2)インターコネクトのために、一つまたは複数の周期的近接場導波器(PNFD)を該送信機及び該受信機の両方に近接場で結合する段階
を含み、
近接場結合が周期的結合構造によりカスケード式に該送信機から該受信機へ延長されるように、該期的近接場導波器内の少なくとも二つの連続した周期的結合構造間の近接場結合がある、前記方法。
【請求項9】
周期的結合構造が、
長手方向の寸法が送信機と受信機との間の無線周波数信号の伝搬方向に対して実質的に直角になるように位置決めされた金属片
から構成されている、請求項8記載の方法。
【請求項10】
周期的結合構造の各々が、隣接する周期的結合構造に対して平行に位置決めされており、各周期的結合構造間の分離距離が、無線周波数信号の1波長以内である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
周期的近接場導波器が、
第1の周期的近接場導波器と第2の周期的近接場導波器との間で無線周波数信号を送信および受信するための、互いに結合している該第1の周期的近接場導波器および該第2の周期的近接場導波器
を含む、請求項8記載の方法。
【請求項12】
第1の周期的近接場導波器と第2の周期的近接場導波器との間にエアギャップがある、請求項11記載の方法。
【請求項13】
送信機が搬送波信号を入力データストリームで変調し、変調された該搬送波信号が次いで、変調された該搬送波信号を放射する送信機アンテナへ供給され、
受信機が、放射された該搬送波信号を受信機アンテナで受信し、かつ受信した該搬送波信号を出力データストリームとしてのフルスイングデジタル信号へ変換し、かつ
該送信機および該受信機が、集積回路チップ間またはプリント回路基板間での通信に非同期変調および差動信号方式を使用する、
請求項8記載の方法。
【請求項14】
送信機アンテナまたは受信機アンテナがオンチップ差動ダイポールアンテナを含む、請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、整理番号30435.220-US-P1(2010-728-1)の、「PERIODIC NEAR FIELD DIRECTORS (PNFD) FOR SHORT-RANGE MILLI-METER-WAVE-WIRELESS-INTERCONNECT (M2W2-INTERCONNECT)」という名称の、Mau-Chung F. ChangおよびSai-Wang Tamによる、2010年12月17日に出願された、同時係属中の同一出願人による米国仮特許出願第61/424,554号の合衆国法典第35巻第119(e)条による恩典を主張するものであり、同出願は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本出願は、整理番号30435.209-US-WO(2009-445-2)の、「MILLI-METER-WAVE-WIRELESS-INTERCONNECT (M2W2-INTERCONNECT) METHOD FOR SHORT-RANGE COMMUNICATIONS WITH ULTRA-HIGH DATA RATE CAPABILITY」という名称の、Sai-Wang TamおよびMau-Chung F. Changによる、2011年12月8日に出願された、同時係属中の同一出願人による米国実用特許出願第13/377,124号(特許文献1)に関連したものであり、米国実用特許出願第13/377,124号(特許文献1)は、整理番号30435.209-WO-U1(2009-445-2)の、「MILLI-METER-WAVE-WIRELESS-INTERCONNECT (M2W2-INTERCONNECT) METHOD FOR SHORT-RANGE COMMUNICATIONS WITH ULTRA-HIGH DATA RATE CAPABILITY」という名称の、Sai-Wang TamおよびMau-Chung F. Changによる、2010年6月9日に出願された、同時係属中の同一出願人による、PCT国際出願番号PCT/US2010/038033(特許文献2)の合衆国法典第35巻第371条による国内段階であり、同出願の合衆国法典第35巻第365(c)条による恩典を主張するものであり、国際出願番号PCT/US2010/038033(特許文献2)は、整理番号30435.209-US-P1(2009-445-1)の、「MILLI-METER-WAVE-WIRELESS-INTERCONNECT (M2W2-INTERCONNECT) METHOD FOR SHORT-RANGE COMMUNICATIONS WITH ULTRA-HIGH DATA RATE CAPABILITY」という名称の、Sai-Wang TamおよびMau-Chung F. Changによる、2009年6月10日に出願された、同時係属中の同一出願人による米国仮特許出願第61/185,946号(特許文献3)の合衆国法典第35巻第119(e)条による恩典を主張するものであり、これらの出願は参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
1.発明の分野
本発明は、短距離ミリメートル波ワイヤレス(millimeter wave wireless)(M2W2)インターコネクトのための周期的近接場導波器(periodic near field director)(PNFD)に関する。
【背景技術】
【0004】
2.関連技術の説明
上記の、参照により本明細書に組み入れられる、相互参照される関連出願(出願第13/377,124号(特許文献1)、出願番号PCT/US2010/038033(特許文献2)、および出願第61/185,946号(特許文献3))に記載されている機構では、オンチップアンテナが短距離通信でのワイヤレスデータ送信に使用された。しかし、損失の大きいシリコン基板のために、オンチップアンテナの放射効率はきわめて低く、その後に続く、5mmのエアギャップ間でのチャネル損失が60dBの高さになり得る。この厳しいチャネル損失は全体のリンクバジェットを著しく逼迫させ、高度に電力効率的なM2W2送受信機アーキテクチャを設計することの困難性をさらに増大させる。
【0005】
よって、当技術分野では、ワイヤレスデータ送信の改善された方法が必要とされている。本発明はこの必要を満たすものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国実用特許出願第13/377,124号
【特許文献2】PCT国際出願番号PCT/US2010/038033
【特許文献3】米国仮特許出願第61/185,946号
【発明の概要】
【0007】
前述の先行技術における限界を克服すると共に、本明細書を読み、理解すれば明らかになる他の限界を克服するために、本発明は、送信機と受信機との間の高速データ転送速度能力を有する短距離通信に向けた、ミリメートル波周波数で無線周波数(RF)信号を送信および受信する短距離ミリメートル波ワイヤレス(M2W2)インターコネクトのための、送信機と受信機とに結合された周期的近接場導波器(PNFD)を開示する。周期的近接場導波器の各々は、一つまたは複数の周期的結合構造(periodic coupling structure)(PSC)から構成され、周期的結合構造は、長手方向の寸法が送信機と受信機との間の無線周波数信号の伝搬方向に対して実質的に直角になるように位置決めされた金属片から構成されている。周期的結合構造の各々は、隣接する周期的結合構造に対して平行に位置決めされており、各周期的結合構造間の分離距離は、無線周波数信号の1波長以内である。周期的近接場導波器は、第1の周期的近接場導波器と第2の周期的近接場導波器との間で無線周波数信号を送信および受信するための、互いに結合している第1の周期的近接場導波器および第2の周期的近接場導波器を含んでいてよく、第1の周期的近接場導波器と第2の周期的近接場導波器との間にはエアギャップがある。
[本発明1001]
高速データ転送速度能力を有する短距離通信に向けた、指定された周波数で信号を送信および受信するためのワイヤレスインターコネクトであって、
送信機と受信機との間の高速データ転送速度能力を有する短距離通信に向けた、ミリメートル波周波数で無線周波数(RF)信号を送信および受信する短距離ミリメートル波ワイヤレス(millimeter wave wireless)(M2W2)インターコネクトのための、該送信機と該受信機とに結合された一つまたは複数の周期的近接場導波器(periodic near field director)(PNFD)
を含む前記ワイヤレスインターコネクト。
[本発明1002]
周期的近接場導波器の各々が、一つまたは複数の周期的結合構造(periodic coupling structure)(PSC)から構成されている、本発明1001のワイヤレスインターコネクト。
[本発明1003]
周期的結合構造が、
長手方向の寸法が送信機と受信機との間の無線周波数信号の伝搬方向に対して実質的に直角になるように位置決めされた金属片
から構成されている、本発明1002のワイヤレスインターコネクト。
[本発明1004]
周期的結合構造の各々が、隣接する周期的結合構造に対して平行に位置決めされており、各周期的結合構造間の分離距離が、無線周波数信号の1波長以内である、本発明1002のワイヤレスインターコネクト。
[本発明1005]
周期的近接場導波器が、
第1の周期的近接場導波器と第2の周期的近接場導波器との間で無線周波数信号を送信および受信するための、互いに結合している該第1の周期的近接場導波器および該第2の周期的近接場導波器
を含む、本発明1001のワイヤレスインターコネクト。
[本発明1006]
第1の周期的近接場導波器と第2の周期的近接場導波器との間にエアギャップがある、本発明1005のワイヤレスインターコネクト。
[本発明1007]
送信機が搬送波信号を入力データストリームで変調し、変調された該搬送波信号が次いで、変調された該搬送波信号を放射する送信機アンテナへ供給され、
受信機が、放射された該搬送波信号を受信機アンテナで受信し、かつ受信した該搬送波信号を出力データストリームとしてのフルスイングデジタル信号へ変換し、かつ
該送信機および該受信機が、集積回路チップ間またはプリント回路基板間での通信に非同期変調および差動信号方式を使用する、
本発明1001のワイヤレスインターコネクト。
[本発明1008]
送信機アンテナまたは受信機アンテナがオンチップ差動ダイポールアンテナを含む、本発明1007のワイヤレスインターコネクト。
[本発明1009]
ワイヤレスインターコネクトを使用した高速データ転送速度能力を有する短距離通信に向けた、指定された周波数で信号を送信および受信するための方法であって、
送信機と受信機との間の高速データ転送速度能力を有する短距離通信に向けた、ミリメートル波周波数で無線周波数(RF)信号を送信および受信する短距離ミリメートル波ワイヤレス(M2W2)インターコネクトのために、一つまたは複数の周期的近接場導波器(PNFD)を該送信機と該受信機とに結合する段階
を含む前記方法。
[本発明1010]
周期的近接場導波器の各々が、一つまたは複数の周期的結合構造(PSC)から構成されている、本発明1009の方法。
[本発明1011]
周期的結合構造が、
長手方向の寸法が送信機と受信機との間の無線周波数信号の伝搬方向に対して実質的に直角になるように位置決めされた金属片
から構成されている、本発明1010の方法。
[本発明1012]
周期的結合構造の各々が、隣接する周期的結合構造に対して平行に位置決めされており、各周期的結合構造間の分離距離が、無線周波数信号の1波長以内である、本発明1010の方法。
[本発明1013]
周期的近接場導波器が、
第1の周期的近接場導波器と第2の周期的近接場導波器との間で無線周波数信号を送信および受信するための、互いに結合している該第1の周期的近接場導波器および該第2の周期的近接場導波器
を含む、本発明1009の方法。
[本発明1014]
第1の周期的近接場導波器と第2の周期的近接場導波器との間にエアギャップがある、本発明1013の方法。
[本発明1015]
送信機が搬送波信号を入力データストリームで変調し、変調された該搬送波信号が次いで、変調された該搬送波信号を放射する送信機アンテナへ供給され、
受信機が、放射された該搬送波信号を受信機アンテナで受信し、かつ受信した該搬送波信号を出力データストリームとしてのフルスイングデジタル信号へ変換し、かつ
該送信機および該受信機が、集積回路チップ間またはプリント回路基板間での通信に非同期変調および差動信号方式を使用する、
本発明1009の方法。
[本発明1016]
送信機アンテナまたは受信機アンテナがオンチップ差動ダイポールアンテナを含む、本発明1015の方法。
【0008】
次に図面を参照する。図面全体を通して同じ参照番号は対応する部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】ミリメートル波ワイヤレスインターコネクト(M2W2インターコネクト)の概略図である。
図1B】本発明の一態様による、周期的近接場導波器(PNFD)を使用したミリメートル波ワイヤレスインターコネクトの概略図である。
図1C】本発明の一態様による、周期的近接場導波器間にエアギャップを有する2つの周期的近接場導波器を使用したミリメートル波ワイヤレスインターコネクトの概略図である。
図2A】本発明の一態様による、周期的近接場導波器を使用したミリメートル波ワイヤレスインターコネクトの3次元(3D)シミュレーションモデルを示す。
図2B】本発明の一態様による、周期的近接場導波器を使用したミリメートル波ワイヤレスインターコネクトの3次元(3D)シミュレーションモデルを示す。
図2C】本発明の一態様による、周期的近接場導波器を使用したミリメートル波ワイヤレスインターコネクトの3次元(3D)シミュレーションモデルを示す。
図3図2A図2Bおよび図2Cの3Dシミュレーションモデルと同じ寸法を有する周期的近接場導波器の測定結果を示す、周波数(GHz)対チャネル損失(dB)のグラフである。
図4】本発明の一態様による、異なる周期的結合構造の寸法および形状を有する周期的近接場導波器の5×5アレイの顕微鏡写真である。
図5A】本発明の一態様による、高速アイソレータのデモボードの写真である。
図5B】デモボードで使用された、送信機(TX)チップ、周期的近接場導波器、および受信機(RX)チップを示す図5Aの拡大図である。
図6A図5Aおよび図5Bの高速アイソレータ応用例のデモボードで使用された送信機(TX)チップの顕微鏡写真である。
図6B図5Aおよび図5Bの高速アイソレータ応用例のデモボードで使用された受信機(RX)チップの顕微鏡写真である。
図7図5Aおよび図5Bの高速アイソレータ応用例のデモボードの、測定された5.7/Gbit/秒アイダイアグラムを示す。
図8図5Aおよび図5Bの高速アイソレータ応用例のデモボードについての測定されたBER(Bit Error Rate:ビット誤り率)を示すデータ転送速度(Gbps)対BERのグラフである。
図9図5Aおよび図5Bの高速アイソレータ応用例のデモボードで使用されたRXチップ上の5Gbit/秒27-1PRBS(pseudo-random binary sequence:擬似ランダム2進シーケンス)波形を示す。
図10図5Aおよび図5Bの高速アイソレータ応用例のデモボードのRXチップにおける5Gbit/秒27-1PRBS波形の測定されたアイダイアグラムを示す。
図11】BER<10-10を有するワイヤレスコネクタデータ最大転送速度を示す分離距離(mm)対データ転送速度(Gbps)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
好ましい態様の以下の説明では、本出願の一部を形成し、本発明が実施され得る具体的態様を例として示す添付の図面を参照する。他の態様が利用されてもよく、本発明の範囲を逸脱することなく構造的変更が加えられてもよいことを理解すべきである。
【0011】
概説
本発明は、短距離ミリメートル波ワイヤレス(M2W2)インターコネクトのための周期的近接場導波器(PNFD)を記述し、PNFDは短距離ワイヤレス通信でのミリメートル波周波数のチャネル損失を著しく低減させ、高速データ転送速度能力を有する高度に電力効率的なM2W2インターコネクト技術を可能にする。一態様では、本発明のPNFDは、超短距離(10cm未満)チップ間またはボード間マルチギガビット通信に使用される。
【0012】
ミリメートル波ワイヤレスインターコネクト(M2W2インターコネクト)
上記の、参照により本明細書に組み入れられる、相互参照される関連出願(出願第13/377,124号、出願番号PCT/US2010/038033、および出願第61/185,946号)に記載されている、図1Aの概略図に示す一般的なミリメートル波ワイヤレスインターコネクト(M2W2インターコネクト)は、損失が大きくかつ不十分な機械的特性を有する従来の高速ボード間コネクタとは対照的に、いかなる物理的接触もなしで非常に短い距離にわたって無線周波数(RF)信号を使用して電波でデータを送信する。普通、M2W2インターコネクトは、オンチップアンテナを利用して開放型無線(open air)チャネル上でRF信号を受信または送信する。
【0013】
残念ながら、損失の大きいシリコン基板のために、オンチップアンテナの放射効率はきわめて低く、普通は5%未満である。測定結果によれば、5mmエアギャップ間でのチャネル損失は60dBの高さになり得る。この厳しいチャネル損失は全体のリンクバジェットを著しく逼迫させ、高度に電力効率的なM2W2送受信機アーキテクチャを設計することの困難性をさらに増大させる。
【0014】
図1Aの単チャネルワイヤレスM2W2インターコネクト100を考察する。M2W2インターコネクト100は、送信機を含む第1のチップ(チップ1)102を、受信機を含む第2のチップ(チップ2)104に結合し、第1のチップ102は、短いリーチまたは長さ106で第2のチップ104から物理的に隔てられている。非同期変調および差動信号方式が、同じ、または異なるプリント回路基板(printed circuit board)(PCB)上の集積回路(integrated circuit)(IC)チップまたはダイ102と104との間での通信に使用される。
【0015】
第1のチップ102は、無線周波数(RF)搬送波信号を生成する電圧制御発振器(voltage-controlled oscillator)(VCO)108と、入力データストリームを含むデータ入力信号112を使用してRF搬送波信号を変調する送信機(Tx)110とを含み、変調されたRF搬送波信号は次いで、変調されたRF搬送波信号を放射するオンチップ差動ダイポールアンテナ114へ供給される(ボンドワイヤダイポールアンテナも使用されてもよい)。
【0016】
第2のチップ104は、放射されたRF搬送波信号を受信するオンチップ差動ダイポールアンテナ116を含み、RF搬送波信号は次いで、増幅されたRF搬送波信号を生成するために低雑音増幅器(low-noise amplifier)(LNA)118へ供給される。増幅されたRF搬送波信号は、ベースバンド信号を生成するために、増幅されたRF搬送波信号をそれ自体122と自己混合することによる自己混合器120での復調によって変換される。ベースバンド信号は、フルスイングデジタル信号である出力データストリームを含むデータ出力信号126を生成するために、ベースバンド増幅器124によって増幅される。
【0017】
送信機110は、データ入力信号112を使用してRF搬送波信号を直接変調する一対のオンオフスイッチを使用して、非同期変調方式であるASK変調を実施する。送信機110の出力は次いで、それ以上増幅されずにアンテナ114へ供給される。
【0018】
二相位相偏移変調(binary-phase shift-keying)(BPSK)といった他の同期変調方式とは異なり、非同期ASK変調システムの受信機は、RF搬送波信号の振幅の変化を検出するにすぎず、RF搬送波信号の位相または周波数変動の変化を検出しない。したがって受信機は、電力消費の大きい位相ロックループ(phase lock loop)(PLL)なしで非同期的に動作することができる。
【0019】
またASK変調は、差動回路アーキテクチャおよび差動相互混合技術(differential-mutual-mixing technique)を使用して、追加の構成要素を必要とせずにRF搬送波信号を自動的に除去することにより、受信機でのRF搬送波信号再生も不要にする。したがって、M2W2インターコネクトは、送信(Tx)機能と受信(Rx)機能との間のプロセス誘起の搬送波変動によって損なわれない。
【0020】
差動ダイポールアンテナ114は入力インピーダンスを上げることができ、送信機110のASK変調とアンテナ114との間のより良い電力整合を可能にする。さらに、オンチップアンテナ114を使用するこの設計は、ミリメートル波周波数で動作するいかなるパッケージングも、静電気放電(electrostatic discharge)(ESD)保護回路も不要にする。
【0021】
PNFD構造を使用したM2W2インターコネクト
図1AのM2W2インターコネクトの性能を改善するために、本発明はM2W2インターコネクトに一つまたは複数のPNFDを含み、PNFDは、チャネル損失を大幅に低減させるために、場の結合を提供する。
【0022】
原則として、2種類の結合、すなわち、近接場結合と遠方場結合とがある。近接場結合の範囲は、普通、1波長以内である。ミリメートル波周波数においては、1波長は数ミリメートル程度であり、したがって、近接場結合の範囲は非常に限られている。さらに、近接場結合の大部分は等方性であり、これは結合指向性および分離の性能が低いことを意味する。M2W2といった多くの用途で、隣接する送受信機間の分離に優れていることは、高帯域幅密度を達成するための鍵である。
【0023】
PNFD構造を使用したM2W2インターコネクトが図1Bに示されており、このM2W2インターコネクトは一対のミリメートル波送受信機とPNFD構造とを含む。すなわち図1Bは、図1Aと同じであるが、チップ1 102とチップ2 104との間にオフチップPNFD128が位置決めされている単チャネルワイヤレスM2W2インターコネクトの概略図である。
【0024】
PNFD128は、長手方向の寸法がチップ1 102とチップ2 104との間のRF信号の伝搬方向に対して実質的に直角になるように位置決めされた金属片から構成された一つまたは複数の周期的結合構造(PSC)130(周期的誘導構造または周期的導波器構造ともいう)から構成されている。さらにPSC130は、隣接するPSC130に対して平行に位置決めされており、各PSC130間の分離距離132は、送信されるRF信号の1波長以内である(すなわち、送信されるRF信号の1波長未満またはこれと等しい)。
【0025】
PNFD128は、隣接する送受信機間の結合距離を有効に延長することができるのみならず、隣接する送受信機間の優れた分離も達成することができる。PNFD128の基本概念は、PSC130における近接場結合を利用することである。PNDF128内の各PSC130間の分離距離132が1波長以内である限り、2つの連続したPSC間の結合132は強いままであり、近接場結合をカスケード式に有効に延長することができる。
【0026】
図1Bは単なる例示であり、縮尺通り描かれておらず、いかなる意味でも制限するためのものではないことに留意されたい。PNFD128およびPSC130は、図示されているものと異なる寸法、構造および位置で構成されていてよい。さらに、PNFD128およびPSC130は、様々な組成物を含んでいてよく、任意の数の周知の製造技術を使用して製造されてよい。
【0027】
図1Cに示すように、本発明のPNFDの概念は、2つのPNFD128a、128b間にエアギャップ134を挿入して通信距離をさらに延長することによってさらに拡張することができる。この場合、チップ1 102はまず変調されたRF信号を生成し、オンチップアンテナ114はこの信号を、近接場結合によって第1のPNFD128aに結合する。2つのPNFD128a、128b間のエアギャップ134の分離が近接場結合距離範囲以内である限り、チップ1 102のPNFD128aは、変調されたRF信号をチップ2 104のPNFD128bにやはり有効に結合することができ、PNFD128bは続いて、変調されたRF信号をチップ2 104のオンチップアンテナ116に結合する。
【0028】
この概念は、損失の大きいミリメートル波パッケージングを事実上不要にし、M2W2インターコネクト全体の複雑さを低減させる。
【0029】
PNFDシミュレーションモデル
図2A図2Bおよび図2Cに、HFSS(商標)として知られている、3次元(3D)全波電磁(EM)場シミュレーションのためのシミュレーションツールにおいて作成された本発明の3Dシミュレーションモデルを示す。このモデルにおいて、PNFD200は、誘電率ε=4.2の、4.5mm×2mmのRoger(商標)プリント回路基板(PCB)202で構成されている。PSC204はRoger(商標)PCB202の上に配置されており、1.2mmの長さを有し、連続するPSC204間に1.125mmの分離距離を有する。加えて、オンチップダイポールアンテナ210、212を備える2つのシリコン基板またはチップ206、208もRogerボード202の両端に配置されており、Roger(商標)PCB202は0.5mmの厚さまたは高さを有し、2つのシリコン基板またはチップ206、208は0.7mmの厚さまたは高さを有し、アンテナ210、212は0.9mmの長さを有する。このモデルでは、シミュレートされたチャネル損失は、図3に記載するように約-30dBである。
【0030】
図3は、図2A図2Bおよび図2CのHFSSシミュレーションモデルと同じ寸法を有するPNFDの測定結果を示す周波数(GHz)対チャネル損失(dB)のグラフである。青色(太線)の曲線300は、いかなるPSCもなしのPNFDを表し、測定されたチャネル損失は5mmの分離間で約-50dBである。赤色(細線)の曲線302は、PSCありのPNFDを表し、測定されたチャネル損失は5mmの分離間で約-30dBである。これらの測定結果によれば、PNFDは、チャネル損失を約20dB改善することができ、これによりM2W2インターコネクトのリンクバジェットが大幅に緩和される。
【実施例】
【0031】
実験結果
短距離通信でのM2W2インターコネクトの方法のためのPNFDを設計し、製造し、測定結果によって検証した。これらの実装形態は、65nmの市販のCMOSプロセスおよびRoger(商標)プリント回路基板(PCB)を使用して実現した。
【0032】
一例では、PNFD概念を実証するために、異なるPSCの寸法および形状を有するPNFDの5×5アレイを設計し、Roger(商標)PCBに実装した。これを図4の顕微鏡写真に示す。
【0033】
別の例では、本発明の高速アイソレータ応用例を例示するために、PNFDを備える高速M2W2インターコネクトをデモボード上に実装した。この高速M2W2インターコネクトは、オンチップアンテナを備えるASK送信機、Roger(商標)PCB上の5mm PNFD、およびオンチップアンテナを備えるASK受信機を含む。図5Aは、高速アイソレータのデモボードの写真である。図5Bは、デモボードで使用された、送信機(TX)チップ500、PNFD(中央)502、および受信機(RX)チップ504を示す図5Aの拡大図である。
【0034】
図6Aは、図5Aおよび図5Bの高速アイソレータ応用例のデモボードで使用された送信機(TX)チップの顕微鏡写真である。
【0035】
図6Bは、図5Aおよび図5Bの高速アイソレータ応用例のデモボードで使用された受信機(RX)チップの顕微鏡写真である。
【0036】
図7に、図5Aおよび図5Bの高速アイソレータ応用例のデモボードの、測定された5.7Gbit/秒のアイダイアグラムを示す。
【0037】
図8は、図5Aおよび図5Bの高速アイソレータ応用例のデモボードについての測定されたBER(ビット誤り率)を示すデータ転送速度(Gbps)対BERのグラフである。
【0038】
図9に、図5Aおよび図5Bの高速アイソレータ応用例のデモボードで使用されたRXチップ上の5Gbit/秒27-1PRBS(擬似ランダム2進シーケンス)を示す。
【0039】
図10に、図5Aおよび図5Bの高速アイソレータ応用例のデモボードのRXチップにおける5Gbit/秒27-1PRBS波形の測定されたアイダイアグラムを示す。
【0040】
図11は、BER<10-10を有するワイヤレスコネクタデータ最大転送速度を示す分離距離(mm)対データ転送速度(Gbps)のグラフである。
【0041】
本発明の利点
本発明は以下の利点を提供する。
・低チャネル損失:
- PNFDはチャネル損失を約20dB改善し、これによりM2W2インターコネクトのリンクバジェットが大幅に緩和される。
・優れた分離:
- PNFDは、隣接するチャネル間の分離を20dBの高さまで増加させる。
・超広帯域:
- PNFDの帯域幅はきわめて広い(10GHzにわたる)。
・簡単なパッケージング:
- この概念は、損失の大きいミリメートル波パッケージングの問題を事実上取り除き、システム全体の複雑さを低減させる。
・高速データ転送速度:
- 将来においては、複数のチャネルを同時に送ることによって何十Gbpsもの高い速度が可能である。
・低電力:
- 従来の光アイソレータと比べて、M2W2ベースのアイソレータは、その消費電力をわずか約3分の1で済ませることができる。
・スケーラブル:
- CMOS技術が拡張し続けているため、より多くのチャネルが利用可能になる。
【0042】
PNFDを備える高速M2W2インターコネクトは、ハイブリッド車、高性能電力計、光アイソレータの代替などといった超高速高電圧アイソレータにおいて適用することができる。またこの技術は、高速非接触コネクタにも適用可能である。
【0043】
結論
これで本発明の好ましい態様の説明を終了する。本発明の一つまたは複数の態様の以上の記述は、例示と説明のための提示したものである。網羅的であることも、本発明を開示の厳密な形に限定することも意図するものではない。上記の開示に照らして多くの改変および変形が可能である。本発明の範囲はこの詳細な説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるべきものである。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11