(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
P波又はS波の一方を透過し他方を反射する偏光分離層を有する第1の透光部材と、前記偏光分離層によって反射されるP波又はS波の他方を反射する反射層を有する第2の透光部材とが、交互に貼り合わされてなり、入射面から入射したP波又はS波の他方が前記反射層により出射面へ反射される偏光ビームスプリッタアレイと、
前記偏光ビームスプリッタアレイの前記出射面上に選択的に設けられ、誘電体からなる斜方蒸着層を有する、無機1/2波長板と、
前記無機1/2波長板の前記斜方蒸着層の側面を被覆する保護膜とを備え、
前記保護膜は、SiO2、Ta2O5、TiO2、Al2O3、Nb2O5、LaO、及びMgF2からなる群から選択され、
前記無機1/2波長板が、ガラス基板と第1の屈折率調整層と前記斜方蒸着層と第1の保護膜と第2の屈折率調整層と第2の保護膜とがこの順に積層されてなり、
前記第1の保護膜は、前記第1の屈折率調整層と前記斜方蒸着層の側面を被覆しており、
前記第2の保護膜は、前記第1の保護膜と前記第2の屈折率調整層の側面を被覆している
偏光変換素子。
前記偏光ビームスプリッタアレイが、前記無機1/2波長板の中心を通る垂直面を基準として面対称となるように前記第1の透光部材と前記第2の透光部材が貼り合わされている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の偏光変換素子。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、図面を参照しながら以下の順序にて詳細に説明する。
1−1.偏光変換素子
1−2.無機1/2波長板の側面保護
1−3.第1の接着剤層及び第2の接着剤層
1−4.積層構造からなる斜方蒸着層
1−5.具体例1
1−6.具体例2
1−7.具体例3
1−8.具体例4
2.偏光変換素子の製造方法
3.光源ユニット
4.光学機器
【0014】
なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
<1−1.偏光変換素子>
図1及び
図2は、それぞれ本発明の一実施形態に係る偏光変換素子を示す平面図及び断面図である。この偏光変換素子は、偏光分離層11aを有する偏光ビームスプリッタ11と、反射層12aを有する反射プリズム12とを交互に貼り合わせた偏光ビームスプリッタアレイ13を備える。偏光ビームスプリッタ11の出射面には、無機1/2波長板14が選択的に設けられる。
【0016】
偏光ビームスプリッタ11は、平行四辺形の断面を有する透光部材の1つの面に偏光分離層11aが形成されてなる。透光部材の基材としては、サファイアガラス、石英ガラス、ソーダガラス等が挙げられる。偏光分離層11aは、入射光のうちP波又はS波の一方を透過し他方を反射する性質を有する。このような偏光分離層11aは、例えば誘電体膜を積層することによって形成される。
【0017】
反射プリズム12は、平行四辺形の断面を有する透光部材に反射層12aが形成されてなる。透光部材の基材としては、サファイアガラス、石英ガラス、ソーダガラス等が挙げられる。反射層12aは、特定の直線偏光成分(例えばP波)に対し、高い反射率を有する。このような反射層12aは、例えば誘電体膜を積層することや、アルミニウム等の金属膜によって形成される。
【0018】
偏光ビームスプリッタアレイ13は、偏光ビームスプリッタ11の偏光分離層11aと反射プリズム12の反射層12aとは反対側の面とが貼り合わされ、また、偏光ビームスプリッタ11の偏光分離層11aとは反対側の面と反射プリズム12の反射層12aとが貼り合わされて構成される。そして、偏光ビームスプリッタアレイ13において、偏光分離層11a及び反射層12aは、入射面に対して所定の角度を有し、平行関係にある。この偏光ビームスプリッタアレイ13は、略矩形板状をなし、出射面上に、出射面より出射される偏光状態がすべてS波(又はP波)の光束となるように無機1/2波長板14が選択的に接着される。
【0019】
また、偏光ビームスプリッタアレイ13は、偏光ビームスプリッタ11と反射プリズム12とが、シリコーン系接着剤からなる第1の接着剤層15を介して貼り付けられて構成される。シリコーン系接着剤としては、耐熱性及び耐光性に優れるジメチルシリコーン、メチルゴムなどが挙げられる。偏光ビームスプリッタ11と反射プリズム12とが、シリコーン系接着剤からなる第1の接着剤層15を介して貼り付けられて構成されることにより、耐熱性及び耐光性を向上させることができる。
【0020】
無機1/2波長板14は、偏光ビームスプリッタ11の出射面上に設けられ、P波又はS波の一方を他方へ変換する。すなわち、無機1/2波長板14は、偏光分離層11aを透過した特定の直線偏光成分の偏光方向を90°回転させ、偏光ビームスプリッタ11および反射プリズム12によって反射されたP波又はS波と同一の偏光状態に変更させる。
【0021】
無機1/2波長板14は、略矩形板状をなし、反射プリズム12の透光部材上に設けられている。この無機1/2波長板14は、単層又は複層の斜方蒸着層を有する無機位相差素子である。斜方蒸着層は、斜め蒸着法により形成された誘電体微粒子からなる。誘電体微粒子としては、Ta
2O
5、TiO
2、SiO
2、Al
2O
3、Nb
2O
5、MaF
2等を含有する高屈折材料を使用することが可能である。これにより、高分子延伸フィルムを有する有機位相差素子に比べて、熱やUV光線に対して高い耐久性を得ることができる。また、水晶などの無機光学単結晶の位相差素子に比べて、大型化が容易であり、原材料費及び加工コストを低下させることができる。
【0022】
斜方蒸着層は、一般的に高い複屈折を得るためにより高多孔質構造を有する。したがって、大気中の水分が吸着し易く、透過率・位相差といった光学特性が変動しやすい。斜方蒸着層は、低密度の柱状組織であり、体積比20〜30%の空隙がある。作製直後の斜方蒸着層の空隙部は、空気(屈折率1.0)が主成分であるが、室温で大気中の水分(屈折率1.3)を取り込み光学特性が変動する。100℃以上の雰囲気にさらすと取り込んだ水分は蒸発して再び空気が主成分となる。このように、温度によって斜方蒸着層中の水分量が変化すると、空隙部の屈折率が変化し、結果として斜方蒸着層の複屈折が変わり、透過率・位相差が変動する要因となる。
【0023】
このため、斜方蒸着層の側面は、緻密性の高い保護膜で被覆されている。保護膜を成膜することにより、斜方蒸着層への大気中の水分の出入りを防止することができ、耐湿性を向上することができる。
【0024】
保護膜の材料としては、湿度透過性が低い、例えばSiO
2、Ta
2O
5、TiO
2、Al
2O
3、Nb
2O
5、LaO、MgF
2等の無機化合物を使用することが好ましい。
保護膜の成膜方法は、このような無機化合物を高密度に形成することで低湿度透過性の保護膜を成膜することが可能な方法を採用する。このような保護膜の成膜方法としては、例えば化学蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)法を挙げることができる。CVD法により保護膜を成膜する場合、大気圧〜中真空(100〜10
−1Pa)とした容器内に複屈折層が形成された基板を設置し、保護膜の材料であるガス状の無機化合物をこの容器内に送り込み、熱、プラズマ、光等のエネルギーを与えてガス状の無機化合物と複屈折層とを化学反応させる。このようなCVD法によれば、複屈折層上に無機化合物を高密度に形成して低湿度透過性の保護膜とすることができる。保護膜の成膜方法は、このようなCVD法に替えて、例えばプラズマアシスト蒸着法、スパッタ法等、無機化合物を高密度に形成することが可能な何れの方法を採用するようにしてもよい。
【0025】
また、反射プリズム12と無機1/2波長板14とは、偏光ビームスプリッタアレイ13と同様、シリコーン系接着剤からなる第2の接着剤層16を介して貼り付けられていることが好ましい。これにより、耐熱性及び耐光性を向上させることができる。
【0026】
また、偏光ビームスプリッタ11の出射面上及び無機1/2波長板14の出射面上に、反射防止膜(AR膜)が形成されていることが好ましい。反射防止膜は、例えば、高屈折率膜、低屈折率膜からなる多層薄膜であり、表面反射を防ぎ、透過性を向上させることができる。
【0027】
このような構成から成る偏光変換素子において、光入射面には、S波とP波とを含むランダムな偏光方向を有する光が入射される。この入射光は、まず、偏光分離層11aによってS波とP波とに分離される。S波(又はP波)は、偏光分離層11aによって反射され、偏光ビームスプリッタアレイ13の入射面にほぼ平行となり、反射層12aによってさらに反射され、偏光ビームスプリッタアレイ13の出射面にほぼ垂直に出射される。一方、P波(又はS波)は、偏光分離層11aをそのまま透過し、無機1/2波長板14によってS波(又はP波)に変換されて出射される。従って、この光学素子に入射したランダムな偏光方向を有する光束は、すべてS波(又はP波)の光束となって出射される。
【0028】
図3は、本発明の一実施形態に係る偏光変換素子の変形例を示す断面図である。
図2における偏光変換素子10では、偏光分離層11a及び反射層12aが同一方向に傾斜する構成となっているが、例えば、
図3に示す偏光変換素子70のように、偏光ビームスプリッタアレイ73が、無機1/2波長板74の中心を通る垂直面Lを基準として面対称となるように第1の透光部材(偏光分離層)71aと第2の透光部材(反射層)72aを貼り合わせた構造とすることもできる。このような構成とすることで、無機1/2波長板74の枚数を減らすことができ、構造をシンプルにすることができる。
【0029】
図3に示す偏光変換素子においても、入射した光のうち、例えば、P偏光成分は第1の透光部材(偏光分離層)71aを通過し、無機1/2波長板74によってS偏光に変換される。一方、S偏光成分は第1の透光部材(偏光分離層)71a及び第2の透光部材(反射層)72aによって反射され、S偏光のまま出射する。これにより、本発明の一実施形態に係る偏光変換素子70に入射したランダムな偏光方向を有する光束は、すべて同一のS波(又はP波)の光束となって出射される。
【0030】
<1−2.無機1/2波長板の保護>
ここで、無機位相差板の耐湿性について検証する。
図4は、無機位相差板の高温高湿試験前後の透過率の変化を示すグラフである。斜方蒸着層を有する無機位相差板を所望のサイズに切断した後、斜方蒸着層を露出したサンプルを用い、高温高湿試験の前後の透過率変化量を算出した。透過率変化量は、高温高湿試験後、サンプルを常温でそれぞれ7、23、173時間放置した後、透過率を測定して算出した。高温高湿試験の条件は、60℃、90%、48時間とした。
【0031】
図4から分かるように、無機位相差板は、7時間放置後では透過率特性が波長450mmで約−5.5%低下するが、23時間放置後では、約−2.5%まで透過率特性が回復し、173時間放置後では−1.0%まで透過率特性が回復した。すなわち、無機位相差板は、斜方蒸着層の高多孔質部分に大気中の水分が吸着し易く、徐々に水分が蒸発することが分かる。したがって、斜方蒸着層を有する無機位相差板を100℃以上の雰囲気下に放置することにより、さらに短時間で透過率特性を回復可能であるものと考えられる。
【0032】
図5は、斜方蒸着膜面にSiO
2膜を成膜した無機位相差板の高温高湿試験前後の透過率の変化を示すグラフである。斜方蒸着層を有する無機位相差板を所望のサイズに切断した後、斜方蒸着層上にCVDによりSiO
2膜を成膜したサンプルを用い、高温高湿試験の前後の透過率変化量を算出した。透過率変化量は、高温高湿試験後、サンプルを常温で24時間放置した後、透過率を測定して算出した。高温高湿試験の条件は、60℃、90%、48時間とした。
【0033】
図5から分かるように、斜方蒸着層上のSiO
2膜の膜厚を60mm以上成膜することにより、透過率変化量を減少させることができた。また、SiO
2膜の膜厚を60mm以上成膜することにより、斜方蒸着層の厚み方向がSiO
2で覆われることが分かった。
【0034】
図6Aは、無機位相差板の断面のSEM写真であり、
図6Bは、
図6Aを拡大したSEM写真である。この無機位相差板は、斜方蒸着層上にSiO
2膜を90mm成膜したものである。
図6A及び
図6Bから分かるように、斜方蒸着層の側面が覆われているのが確認できる。よって、斜方蒸着層上のSiO
2膜の膜厚を60mm以上成膜することにより、斜方蒸着層の側面が覆われ、優れた耐湿特性が得られることが分かった。
【0035】
<1−3.第1の接着剤層及び第2の接着剤層>
次に、第1の接着剤層15及び第2の接着剤層16の耐熱性及び耐光性について検証する。従来の偏光変換素子は、偏光ビームスプリッタとプリズムとを交互に貼り合わせる光学接着剤として、UV(ultraviolet)硬化系の接着剤が多く用いられている。また、偏光ビームスプリッタの出射面と1/2波長板との貼り付けにも、同様にUV硬化系の接着剤が、多用されている。
【0036】
図7は、シリコーン系接着剤とUV系接着剤との耐光加速試験の結果を示すグラフである。また、
図8は、サンプルの構成を示す断面図である。サンプルは、2枚のガラス基板を接着剤にて貼り合わせて作製した。また、耐光加速試験条件は、ある高輝度プロジェクター(実機)の約40倍のパワー密度32W/cm
2とし、サンプルの基板の表面温度を70℃とした。すなわち、実機の40倍の加速度として実施した。
【0037】
図7に示すグラフのようにUV系接着剤A(共立化学(株)製、XLV90)を使用したサンプルは、約5000時間の実機相当時間経過後、接着剤層が黄変した。また、約6000時間の実機相当時間経過後サンプルに破壊が起こった。したがって、UV系接着剤Aを使用した偏光変換素子をプロジェクターに使用した場合、約5000時間でプロジェクターの輝度が低下してしまうため、5000時間ごとに新たな偏光変換素子に交換する必要がある。
【0038】
また、UV系接着剤B((株)アーデル製、UT20)を使用したサンプルは、約18000時間の実機相当時間経過後、接着剤層が黄変し、破壊が起こった。したがって、UV接着剤Bを使用した偏光変換素子をプロジェクターに用いた場合も同様に、18000時間ごとに新たな偏光変換素子に交換する必要がある。
【0039】
一方、シリコーン系接着剤C(ジメチルシリコーン)を使用したサンプルは、50000時間の実機相当時間を経過しても、透過率の低下は見られなかった。よって、シリコーン系接着剤を用いることにより、耐熱性及び耐光性が向上し、従来のUV系接着剤Aを使用した偏光変換素子に比べて約10倍以上長く使い続けることが可能となる。
【0040】
このように、放置時間や放置温度によって斜方蒸着膜中の水分量が変化する。すると、空隙部の屈折率が変化し、結果として斜方蒸着膜の複屈折が変わり、透過率・位相差が変動する要因となる。本発明は、この対策として、斜方蒸着膜を用いた無機位相差板を所望のサイズに切断した後に、CVD製法によりSiO
2保護膜で蒸着膜側面の蒸着膜厚み方向を覆った構造にすることで蒸着膜中に大気中の水分が入り込み難くなる。また、入った場合においても、本発明の斜め蒸着法により形成した1層以上の高屈折微粒子を備えた無機位相差板と、透光部材に入射した光のうちP波を透過しS波を反射する偏光分離層を備えた透光部材と、この反射されたS波を更に反射する反射層を備えた透光部材をそれぞれシリコーン系接着剤にて貼り合せ構成されている事を特徴とする高耐久偏光変換素子であれば、高耐光・高耐熱性に優れた偏光変換素子であるため、100℃以上の雰囲気にさらす事でより短時間で斜方蒸着膜の高多孔質部分からの水分が蒸発し透過率特性が回復させることが可能である。
【0041】
<1−4.積層構造からなる斜方蒸着層>
次に、無機1/2波長板における斜方蒸着層について説明する。本実施の形態における斜方蒸着層は、積層構造からなることが好ましい。複数層の斜方蒸着層は、原理的に膜厚を調整することによって任意の位相差を設定することが可能である。また、各層間の反射率は、各層の膜厚に比例するため、各層の膜厚は、使用波長以下であることが好ましい。
【0042】
斜方蒸着層の誘電体材料は、Ta、Zr、Ti、Si、Al、Nb、Laのいずれかの酸化物、又はそれらの組み合わせであることが好ましい。具体的な誘電体材料としては、Ta
2O
5、ZrO
2、TiO
2、Ta
2O
5にTiO
2を5〜15wt%添加した材料などが挙げられる。このような誘電体材料を用いることにより、面内直交2軸x,yの屈折率n
oblx,n
obly(n
oblx>n
obly)のそれぞれが1.55以上1.7以下となるような斜方蒸着層を得ることが可能となる。
【0043】
図9は、無機1/2波長板における斜方蒸着層が単層の場合のP→S変換効率のシミュレーション結果である。斜方蒸着層は、Ta
2O
5からなる微粒子が入射光(基板法線)に対し45度軸が傾いたものとし、膜厚は、赤色波長帯域、緑色波長帯域、及び青色波長帯域でそれぞれ最適となるように設定した。
図9から分かるように、斜方蒸着層が単層の場合では、広い波長帯域において高いP→S変換効率を得ることができない。
【0044】
また、
図10は、無機1/2波長板における斜方蒸着層が複数層の場合のP→S変換効率のシミュレーション結果である。斜方蒸着層は、1層目がTa
2O
5からなる微粒子が入射光(基板法線)に対し24度軸が傾いたものとし、2層目がTa
2O
5からなる微粒子が入射光(基板法線)に対し66度軸が傾いたものとした。
図10から分かるように、斜方蒸着層が複数層(積層)の場合、広い波長帯域において高いP→S変換効率を得ることができる。
【0045】
<1−5.具体例1>
図11は、偏光変換素子の具体例1の構成を示す断面図である。具体例1として示す偏光変換素子は、偏光ビームスプリッタ11の透光部材と、反射プリズム12の透光部材と、無機1/2波長板14の基板とが、屈折率nが1.46のガラス基板から構成される。
【0046】
無機1/2波長板14は、ガラス基板21と、第1の屈折率調整層22と、斜方蒸着層23と、第2の屈折率調整層24と、SiO
2膜25とがこの順に積層されてなる。また、無機1/2波長板14は、ガラス基板21側を接着面としてシリコーン系接着剤(n:1.41)からなる第2の接着層16を介して貼り付けられている。
【0047】
具体例1として示す偏光変換素子は、屈折率調整層24上にSiO
2膜25が形成されているため、大気との界面で反射を抑えるFinal−AR膜26を全て同じ設計で成膜することができる。また、高多孔質構造を有する斜方蒸着層23の側面が、SiO
2膜25aで被覆されているため、斜方蒸着層23内への水分の浸入を防止し、耐湿性を向上させることができる。
【0048】
図12は、具体例1の無機1/2波長板の作製方法を説明するための図である。ガラス基板21上に、第1の屈折率調整層22と、斜方蒸着層23と、第2の屈折率調整層24とを成膜した後、スクライバー等で切断し、例えばCVD製法によりSiO
2膜を膜厚が60nm以上となるように成膜する。これにより、斜方蒸着層23の厚み方向をSiO
2膜25aで覆うことができ、耐湿性を向上させることができる。
【0049】
また、
図11に示す偏光変換素子において、無機1/2波長板14が、SiO
2膜25側を接着面として貼り付けられていても良い。この場合も、具体例1と同様に、耐湿性を向上させることができる。また、例えば映画館などで使われるシネマ用プロジェクターに適用された場合、ポップコーンオイルと呼ばれるオイルミストが表面に付着するため、定期的に表面の払拭清掃が行われるが、蒸着面側をシリコーン接着剤で貼り付けることにより、直接蒸着面が払拭されるのを防ぐことができる。
【0050】
<1−6.具体例2>
図13は、具体例2の無機1/2波長板の構成を示す断面図である。偏光変換素子のビームスプリッタアレイ13は、具体例1と同様である。
図13に示すように、無機1/2波長板14は、ガラス基板31と、第1の屈折率調整層32と、斜方蒸着層33と、SiO
2膜34と、第2の屈折率調整層35とがこの順に積層されてなる。
【0051】
この無機位相差板は、第2の屈折率調整層35の一部としてSiO
2膜34を設けるものである。この無機位相差板は、斜方蒸着層33の成膜後、スクライバー等で切断し、例えばCVD製法によりSiO
2膜34を成膜することにより得ることができる。これにより、斜方蒸着層33の厚み方向をSiO
2膜34aで覆うことができ、耐湿性を向上させることができる。
【0052】
<1−7.具体例3>
図14は、具体例3の無機1/2波長板の構成を示す断面図である。偏光変換素子のビームスプリッタアレイ13は、具体例1と同様である。
図14に示すように、無機1/2波長板14は、ガラス基板41と、第1の屈折率調整層42と、斜方蒸着層43と、第1のSiO
2膜44と、第2の屈折率調整層45と、第2のSiO
2膜46とがこの順に積層されてなる。
【0053】
この無機位相差板は、第2の屈折率調整層45の一部としてSiO
2膜44を設けるものであり、さらに、第2の屈折率調整層45上に、保護のためのSiO
2膜46を設けたものである。この無機位相差板は、第2の屈折率調整層45の成膜後、スクライバー等で切断し、例えばCVD製法によりSiO
2膜46を成膜することにより得ることができる。これにより、斜方蒸着層43の厚み方向をSiO
2膜46aで覆うことができ、耐湿性を向上させることができる。
【0054】
<1−8.具体例4>
図15は、具体例4の無機1/2波長板の構成を示す断面図である。偏光変換素子のビームスプリッタアレイ13は、具体例1と同様である。この無機位相差板は、
図13に示す具体例2の無機1/2波長板の構成に、さらに第2のSiO
2膜36を設けたものである。すなわち、無機1/2波長板14は、
図15に示すように、ガラス基板31と、第1の屈折率調整層32と、斜方蒸着層33と、第1のSiO
2膜34と、第2の屈折率調整層35と、第2のSiO
2膜36とがこの順に積層されてなる。
【0055】
この無機位相差板は、斜方蒸着層33の成膜後、スクライバー等で切断し、例えばCVD製法によりSiO
2膜34を成膜し、第2の屈折率調整層35の成膜後、さらにSiO
2膜36を成膜することにより得ることができる。これにより、斜方蒸着層33の厚み方向をSiO
2膜34a及びSiO
2膜36aで覆うことができ、耐湿性をさらに向上させることができる。
【0056】
<2.偏光変換素子の製造方法>
次に、本実施の形態に係る偏光変換素子の製作方法について説明する。本実施の形態に係る偏光変換素子の製造方法は、偏光分離層が成膜された偏光板と反射層が形成された反射板とをシリコーン系接着剤を介して交互に貼り合わせる工程と、貼り合わせた基板面の法線に対して所定角度で切断し、偏光ビームスプリッタアレイを得る工程と、誘電体からなる斜方蒸着層を有し、斜方蒸着層の側面が保護膜で被覆されてなる無機1/2波長板を作成する工程と偏光ビームスプリッタアレイに無機1/2波長板を選択的に貼り付ける工程と、最表面に反射防止膜を成膜する工程とを有する。
【0057】
先ず、
図16に示すように偏光板と反射板とを一方向に所定幅ずらして交互に貼り合わせる。貼り合わせには、ジメチルシリコーン、メチルゴムなどのシリコーン系接着剤が用いられる。
【0058】
次の工程では、
図17に示すように、所定幅ずらして積層された方向と同じ方向に切断し、偏光ビームスプリッタと反射プリズムとが平行四辺形からなる断面で交互に貼り合わされた偏光ビームスプリッタアレイを得る。切断には、ガラススクライバー等の切断装置を用いることができる。
【0059】
無機1/2波長板を作製する工程では、誘電体からなる斜方蒸着層を成膜後、ガラススクライバー等の切断装置を用いて所定のサイズに切断し、例えばCVD製法によりSiO
2膜を膜厚が60nm以上となるように成膜する。これにより、斜方蒸着層の厚み方向をSiO
2膜で覆うことができ、耐湿性を向上させることができる。
【0060】
次に、
図18に示すように、偏光ビームスプリッタアレイに無機1/2波長板14を選択的に貼り付ける。無機1/2波長板14は、ジメチルシリコーン、メチルゴムなどのシリコーン系接着剤により貼り付けられることが好ましい。また、無機1/2波長板14は、シリコーン系接着剤が接着面から側面に亘ってはみ出して接着されることが好ましい。これにより、無機1/2波長板14の斜方蒸着層に水分が進入するのを防止することができる。また、無機1/2波長板14と偏光ビームスプリッタアレイとの接続強度を維持することができる。
【0061】
また、透過率向上の目的で、スパッタにより表裏両面に反射防止膜(AR膜)を成膜することが好ましい。AR膜は一般的に用いられる高屈折膜、低屈折膜からなる多層薄膜としても良い。
【0062】
このように斜方蒸着層の側面が保護膜で被覆されてなる無機1/2波長板を、偏光ビームスプリッタアレイに選択的に貼り付けることにより、優れた耐湿性を有する偏光変換素子を得ることができる。
【0063】
<3.光源ユニット>
次に、本発明の一実施形態に係る偏光変換素子を用いた光源ユニット80について説明する。
図19Aは、本発明の一実施形態に係る光源ユニット80を示す正面断面図であり、
図19Bは、本発明の一実施形態に係る光源ユニット80を示す側面断面図である。光源ユニット80は、少なくとも、光源81と、光源81からの光を集光するレンズ82と、集光された光を一方向の直線偏光に変換する上述した本発明の一実施形態に係る偏光変換素子83と、変換された光の均一性を向上させる拡散板84とを有する。
【0064】
光源81は例えば、LEDであり、2次元方向に複数のLEDを配置することができる。レンズは、例えば
図19A及び
図19Bに示すように、2種類の集光レンズ82a、82bからなる集光レンズ群82とし、各集光レンズ82a、82bは、光源81の数に対応したレンズの数を有することができる。LED等の光源81から出射された光は集光レンズ群82により偏光変換素子83に入射される。
【0065】
偏光変換素子83は、本発明の一実施形態に係る偏光変換素子であり、偏光ビームスプリッタアレイ83aと無機1/2波長板83bとを有する。特に、
図3に示すような偏光ビームスプリッタアレイ73が、無機1/2波長板74の中心を通る垂直面Lを基準として面対称となるように第1の透光部材71aと第2の透光部材72aが貼り合わされている偏光変換素子70を用いることが好ましい。このような偏光変換素子83を用いることで、無機1/2波長板83bの枚数を減らすことができ、構造をシンプルにすることができ、光源ユニット80をコンパクトにすることができる。
【0066】
偏光変換素子83を透過した光は、拡散板84により拡散され、光の均一性を向上させるために用いられる。拡散板84としては、例えば、マイクロレンズのような構造を持つ模型用エンビ板(セミクリアーEB−04、光栄堂)や、耐光性が必要な場合にはガラス材料などの無機材料から成るマイクロレンズアレイを用いることができる。
【0067】
また、本発明の一実施形態に係る偏光変換素子を用いた光源ユニット80は、
図19A及び
図19Bに示すように、さらに液晶パネル85、放熱板86、放熱器87、ハウジング88を備えることで単板透過型の液晶プロジェクター90等に適応することができる。
【0068】
液晶パネル85を拡散板84より出射した光の偏光方向と同じ方向の光を透過する向きに配置することで、拡散板84を透過した光は効率よく液晶パネルを透過することが可能となる。その結果、液晶パネル85を出射した光は効率よく均一に投影面に投影することができる。
【0069】
このように、LED等の光源から出射された光の偏光を一方向の直線偏光に変換する本発明の一実施形態に係る偏光変換素子を備えることにより、LED等の光源から出射された光を効率よく液晶パネルに透過させて投影面に投影される光の輝度を向上させることができる。また、消費電力の低減による燃費向上、さらには構成部品にかかる熱負荷を低減させて部品の寿命を延ばすことができる。
【0070】
<4.光学機器>
次に、光学機器への適用例について、液晶プロジェクターを参照して説明する。
図20は、液晶プロジェクターの光学系を示す図である。このプロジェクターは、光源51と、光束を略平行にするフライアイレンズ52、入射ランダム偏光を一定の偏光方向に揃える偏光変換素子53と、赤色光、緑色光、青色光に分離に分離する色分解ミラー(ダイクロイックミラー)54,55,56と、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)と呼ばれるシリコン基板上に液晶を形成した赤色,緑色,青色表示用の反射型液晶表示パネル57,58,59と、3色の色光を合成してカラー画像を形成する色合成プリズム60と、ミラー61,62と、PBS(偏光ビームスプリッタ)63,64,65とを備える。
【0071】
光源51として例えば白色ランプから出射された光束は、フライアイレンズ52でほぼ並行にされ、偏光変換素子53でランダム偏光が一定の偏光方向(P波又はS波)に揃えられる。一定の偏光方向に揃えられた光束は、色分解ミラー54,55により赤色光と緑色青色光とに分離される。緑色青色光は、ミラー62で反射されて色分解ミラー56により緑色光と青色光とに分離される。赤色光は、ミラー61で反射されてPBS63に入射し、緑色光及び青色光は、それぞれPBS64,65に入射する。
【0072】
PBS63,64,65では、一つの振動方向の直線偏光のみが反射され、反射光がそれぞれ赤色,緑色,青色表示用の反射型液晶表示パネル57,58,59に入射する。各反射型液晶表示パネル57,58,59から出射した映像光は、それぞれ再びPBS63,64,65に入射して検光される。PBS63,64,65を通過した直線偏光は、色合成プリズム60で合成され、カラー画像が投射レンズによりスクリーンに投射される。
なお、光学機器には上述の光源ユニット80を適用することもできる。
【0073】
このような光学機器において、偏光変換素子53が上述した構成を有することにより、耐熱性及び耐光性が向上され、高輝度化による熱や光によっても焦げ付き等の劣化を防止することができる。また、偏光変換素子53は、ポップコーンオイルと呼ばれるオイルミストが表面に付着するため、定期的に表面の払拭清掃が行われて強い圧力が加わるが、シリコーン接着剤の接着層がクッション効果の働きをするため、優れた耐衝撃性を得ることができる。