(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記開口は、前記第1補強部材が前記載置部材の側部に接する面に設けられており、前記側部を側方から見たとき、前記開口は、前記載置部材の山折り形状に対応している、請求項4に記載の熱処理用治具。
1対の前記第1補強部材の間に、前記1対の前記第1補強部材を互いに連結するガイド部材をさらに有し、前記ガイド部材の両端は前記第1補強部材に対して隙間のある嵌合によって微動可能に取り付けられている、請求項1から5のいずれかに記載の熱処理用治具。
前記第1補強部材の最も下方にある部位は、前記載置部材の谷折りとなった部分の底部よりも下側に位置し、前記ガイド部材の最も下方にある部位は、前記第1補強部材の最も下方にある部位と同一の高さにある、請求項6に記載の熱処理用治具。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る熱処理用治具について、図面に基づいて具体的に説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、従来の熱処理用治具を用いる加熱装置の構成を示す概要図である。
図1では、いわゆるロール方式の加熱装置を示している。
図1に示すように、加熱装置における加熱炉(熱処理炉)の炉内の底面部に、回転することが可能な複数のローラ1を設けており、チップ状の(セラミック)電子部品3、例えばチップ状セラミックコンデンサ、チップ状インダクタ等の積層体を熱処理用治具2の積載面にランダムにばら積みして、加熱炉内を図中の矢印方向に通過させる。加熱炉内上部のガス噴出口4から加熱された雰囲気ガスが噴射され、通過中のチップ状の電子部品3を熱処理する。もちろん、ガス噴出口4は加熱炉内上部に設けることに限定されるものではなく、加熱炉内下部に設けても良いし、加熱炉内側面部に設けても良い。
【0023】
従来の熱処理用治具2では、チップ状の電子部品3を積載面にランダムにばら積みするため、上部の電子部品と下部の電子部品とで雰囲気ガスに接触する度合を均等にすることが困難であった。これを回避するべく、熱処理用治具2の積載面に、チップ状の電子部品3を互いに重なり合わないように一面に積載することも考えられるが、一度に熱処理できるチップ状の電子部品3の数が少なくなり、全体として製造時間を短縮することができず、コストアップ要因となる。
【0024】
そこで、本実施の形態1に係る熱処理用治具は、複数の貫通孔(第1の貫通孔)を有する積載面を有し、該積載面が、山折り及び谷折りを交互に繰り返した蛇腹状の凹凸面で構成されている点に特徴を有する。そして、蛇腹状の凹凸面を繰り返し折り返す方向に直交する方向の両端の底部に補強板を備えている。なお、「底部」とは、蛇腹状の凹凸面の谷部の頂部を含む平面で形成された底面の一部を意味する。
図2は、本発明の実施の形態1に係る熱処理用治具の構成を示す斜視図である。
【0025】
まず、本実施の形態1に係る熱処理用治具12は、線径0.1mm、目開き0.2mmのニッケル製の金網を、一辺10mmで山折り、谷折りを交互に繰り返して折り返し、上からの投影形状が縦横200mmの四辺形状になるよう加工されている。以後、折り返し方向とは、
図2の矢印方向、すなわち蛇腹状の凹凸面を繰り返し折り返す方向を意味する。
【0026】
熱処理用治具12の積載面は、隣接する二つの積載面、すなわち一の山折部の頂部121と隣接する谷折部の頂部122との間の二つの積載面が、互いに略同一の傾斜角度で対向している。具体的には、折り返し方向を含む縦断面において、隣接する二つの積載面がそれぞれ二等辺三角形(又は正三角形)をなすように形成されている。
【0027】
つまり、山折部と谷折部との間の積載面がそれぞれ、山折部の頂部を通り、折り返し方向に対して直交する面を中心として、山折部を挟んで隣接する一組の積載面ごとに互いに面対称となるよう形成されていれば良い。
【0028】
山折り、谷折りを交互に繰り返すことにより、折り返し方向と直交する方向に対する曲げ強度が向上する。しかし、熱処理用治具12をニッケル製の金網のみで構成した場合、熱変形等により加熱炉内のローラ上を蛇行することなく搬送することが困難である。
【0029】
そこで、本実施の形態1では、折り返し方向に直交する方向の両端の底部に補強板123を備えている。具体的には、熱処理用治具12の谷折部にチップ状の電子部品を積載する。この場合、山折部の頂部121の高さを超えない範囲でチップ状の電子部品を積載する。従来の熱処理用治具のように、平板状の200mm角プレートで積載面を構成し、チップ状の電子部品を上下方向に重なり合わないように敷き詰めた場合と比較すると、約3倍の数のチップ状の電子部品を積載することができる。
【0030】
補強板123として、例えば厚み2mm、幅30mmのニッケル厚板を接着すれば良い。接着方法としては、スポット溶接であっても良いし、補強板123自体にニッケル製の金網を取り付けた構造であっても良い。補強板123は、ニッケル等の金属板に限定されるものではなく、例えばアルミナ等のセラミック基材を用いても良い。また、補強板123の形状も、板状に限定されるものではなく、角柱状、あるいは円柱状、半柱状であっても良い。
【0031】
また、補強板123は、熱処理用治具12の折り返し方向に直交する方向の両端の底部に備えることに限定されるものではなく、例えば折り返し方向に直交する方向の両端の側部に備えても良い。ここで「側部」とは、蛇腹状の凹凸面の折り返し方向に直交する方向の端部で形成される側面の一部又は全部を意味する。
図3は、本発明の実施の形態1に係る熱処理用治具12の他の構成を示す斜視図である。
図3に示すように、補強板123aを、熱処理用治具12の折り返し方向に直交する方向の両端の側部に備えている。
【0032】
さらに、補強板123は、底部及び上部の両側に、上下両側から挟むように備えても良い。ここで、「上部」とは、熱処理用治具12を挟んで底部に対向する側を意味する。
図4は、本発明の実施の形態1に係る熱処理用治具12の他の構成を示す斜視図である。
図4に示すように、補強板123bを、熱処理用治具12の折り返し方向に直交する方向の両端の底部に、補強板123cを、熱処理用治具12を挟んで補強板123bに対向する位置に、それぞれ備えている。このように上下両側から挟むように補強板123b、123cを備えることにより上下対称な構造とすることができるので、熱処理治具12を上下反転して使用することも可能となる。
【0033】
また、本実施の形態1では、ニッケル製の金網で熱処理用治具12の積載面を構成しているが、特にこれに限定されるものではなく、チップ状の電子部品が抜け落ちることなく、雰囲気ガスのみが流通する大きさの貫通孔を有していれば良いので、例えば0.6mm×0.3mm程度の複数の貫通孔を有する板を、山折り、谷折りを交互に繰り返して蛇腹状に折り返しても良い。
【0034】
このように、熱処理用治具12の折り返し方向に直交する方向の両端の底部、側部、あるいは底部及び上部の両側に補強板123を備えることにより、熱処理用治具12の両端における熱変形を抑制することができる。しかも全周縁を例えば金属枠で囲んではいないので、捩り外力に対する自由度を維持することができる。したがって、加熱炉内のローラに熱処理用治具12を密着させることができ、熱処理用治具12を蛇行することなく搬送することができる。
【0035】
なお、積載面は、複数の谷折部の頂部122が、一平面上(
図2では一直線上)に位置するよう形成されていることが好ましい。加熱炉内を通過させる場合に、無用な振動が生じにくいからである。
【0036】
以上のように本実施の形態1によれば、積載面が複数の貫通孔(第1の貫通孔)を有することにより、軽量であり、しかも雰囲気ガスが流通しやすい。また、折り返し方向に直交する方向の両端の底部、側部、あるいは底部及び上部の両側に補強板123を備えることにより、熱処理用治具12の両端における熱変形を抑制することができるとともに、捩り外力に対する自由度を維持することができるので、加熱炉内のローラに密着させつつ、蛇行することなく搬送することができる熱処理用治具12を提供することが可能となる。
【0037】
(実施の形態2)
本実施の形態2に係る熱処理用治具12は、複数の貫通孔(第1の貫通孔)を有する積載面を有し、該積載面が、山折り及び谷折りを交互に繰り返す蛇腹状の凹凸面で構成されている点では実施の形態1と共通する。しかし、補強板123の代わりに、山折り及び谷折りを交互に繰り返す方向(折り返し方向)に直交する方向の両端の底部及び側部に、断面形状がL字状の補強部材を備えている点で実施の形態1と相違する。
【0038】
図5は、本発明の実施の形態2に係る熱処理用治具12の構成を示す斜視図である。
図5に示すように、熱処理用治具12の積載面は、複数の貫通孔を有する金属板、例えばニッケル製の金網を、山折り、谷折りを交互に繰り返し折り返した蛇腹状の凹凸面として構成されている。
【0039】
本実施の形態2では、折り返し方向に直交する方向の両端の底部及び側部を覆う補強部材125を備えている。具体的には、熱処理用治具12の折り返し方向に直交する方向の両端の底部及び側部に、断面形状がL字状の補強部材125を互いに向き合うように備えている。
【0040】
補強部材125は、例えば厚み2mm、幅30mmのニッケル厚板をL字状に折り曲げて接着すれば良い。接着方法としては、スポット溶接等であれば良い。補強部材125は、ニッケル等の金属板に限定されるものではなく、例えばアルミナ等のセラミック基材を用いても良い。また、補強部材125は、一体として形成されていても良いし、実施の形態1の補強板123に側部を覆う側部補強板を別途取り付けた構造であっても良い。
【0041】
本実施の形態2では、ニッケル製の金網で熱処理用治具12の積載面を構成しているが、特にこれに限定されるものではなく、チップ状の電子部品が抜け落ちることなく、雰囲気ガスのみが流通する大きさの貫通孔を有していれば良いので、例えば0.6mm×0.3mm程度の複数の貫通孔を有する板を、山折り、谷折りを交互に繰り返して蛇腹状に折り返しても良い。
【0042】
このように、両端の底部及び側部を覆う補強部材125を備えることにより、熱処理用治具12の両端における熱変形を抑制することができる。しかも全周縁を、例えば金属枠で囲んではいないので、捩り外力に対する自由度を維持することができる。したがって、加熱炉内のローラに熱処理用治具12を密着させることができ、熱処理用治具12を蛇行することなく搬送することができる。
【0043】
なお、補強部材125の側部には、複数の貫通孔(第2の貫通孔)126を設けることが好ましい。補強部材125の側部に複数の貫通孔126を設けることにより、雰囲気ガスが熱処理用治具12の下方にも流通しやすくなる。したがって、側部が補強部材125で覆われていても、雰囲気ガスを熱処理用治具12の下方へ誘導することができ、加熱ムラの発生を抑制することが可能となる。
【0044】
もちろん、貫通孔126は、山折部の頂部121に位置を合わせて形成されていることがより好ましい。貫通孔126を、山折部の頂部121に位置を合わせて形成することにより、貫通孔126を通じて雰囲気ガスを熱処理用治具12の下方に確実に流通させることができ、加熱ムラの発生をより抑制することができるからである。
【0045】
補強部材125を一体として形成する場合、一枚のニッケル等の金属板を素材として所定の位置で折り曲げて製造する。
図6は、本発明の実施の形態2に係る熱処理用治具12の補強部材125の素材を示す平面図である。
【0046】
図6の例では、複数の貫通孔(第2の貫通孔)の大きさ、形状を、二つの積載面で二等辺三角形をなすように形成された山折部の大きさ、形状と一致するよう位置を合わせて構成する場合の例を示している。
図6に示すように、平板状の金属板41に、大きさ、形状を合わせた二等辺三角形状の貫通孔126を事前に形成しておき、折り曲げ位置42で90度屈曲させる。これにより、
図6の上半分411を熱処理用治具12の側部に、下半分412を熱処理用治具12の底部に、それぞれ接着させることが可能な断面形状がL字状の補強部材125を製造することができる。
【0047】
また、
図6に示すように、貫通孔126の大きさ、形状を山折部と谷折部との間の積載面がなす二等辺三角形の大きさ、形状と合わせておくことにより、最も効率的に雰囲気ガスを熱処理用治具12の下方にも流通させることが可能となる。
【0048】
以上のように本実施の形態2によれば、実施の形態1のように底部だけに補強板123を備える代わりに、折り返し方向に直交する方向の両端の底部及び側部に、断面形状がL字状の補強部材125を備えることにより、補強部材125自体の熱変形を抑制することができ、熱処理用治具12の両端における熱変形をより確実に抑制することが可能となる。したがって、加熱炉内のローラにより密着させることができ、蛇行することなく搬送することが可能な熱処理用治具12を提供することが可能となる。また、積載されたチップ状の電子部品が側部からこぼれ落ちることを防止することも可能となる。
【0049】
なお、実施の形態1及び2に係る熱処理用治具12を折り返し方向が平行になるように、あるいは交差するように上下に複数積み上げて、バッチ式熱処理炉で一括して脱バインダ処理、焼成処理等を実行しても良い。
図7は、本発明に係る熱処理用治具12を折り返し方向が交差するように上下に複数積み上げた状態を模式的に示す断面図である。
図7(a)は、実施の形態1に係る熱処理用治具12を用いた場合を、
図7(b)は、実施の形態2に係る熱処理用治具12を用いた場合を、それぞれ示している。
【0050】
図7(a)に示すように、実施の形態1に係る熱処理用治具12a、12bを上下に複数積み上げた場合、両端の補強板123の厚みによって、上下の熱処理用治具12a、12bの間に空間127が生じる。したがって、別途スペーサを用いることなく、確実に熱処理用治具12a、12bの間に雰囲気ガスを流通させることが可能な流路を確保することができる。
【0051】
一方、
図7(b)に示すように、補強部材125を用いる場合であっても、
図7(a)と同様の空間127に加えて、側部に貫通孔126を設けているときには、確実に熱処理用治具12a、12bの間に雰囲気ガスを流通させることが可能な流路を確保することができる。
【0052】
したがって、複数の熱処理用治具12a、12bを折り返し方向が交差するように上下に積み上げて、バッチ式の熱処理炉で一括して脱バインダ処理、焼成処理等を実行する場合であっても、積み上げた熱処理用治具12a、12bの間に雰囲気ガスを流通させることができるので、加熱ムラの発生を抑制することができるとともに、加熱効率を向上させることが可能となる。
【0053】
その他、上述した実施の形態1又は2は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができることは言うまでもない。例えば、折り返し方向を含む縦断面において、隣接する二つの積載面がそれぞれ二等辺三角形(又は正三角形)をなすように形成されていることに限定されるものではなく、台形状、あるいは台形状と三角形状とを組み合わせた形状をなすように形成されていても良い。また、複数の熱処理用治具12を、折り返し方向が一致するように上下に積み上げても良いことは言うまでもない。
【0054】
引き続き、さらに他の実施の形態について説明する。
(実施の形態3)
本発明に基づく実施の形態3における熱処理用治具12について説明する。本実施の形態における熱処理用治具12は、複数の貫通孔(第1の貫通孔)を有する積載面を有し、該積載面が、山折り及び谷折りを交互に繰り返す蛇腹状の凹凸面で構成されている点では実施の形態1と共通する。また、第1補強部材として補強板123aが備わっている点も、実施の形態1において
図3を参照しつつ説明した構成と共通する。しかし、本実施の形態では、
図8および
図9に示すように、熱処理用治具12は、ガイド部材131を備える。
図8は斜視図であり、
図9は側面図である。
【0055】
本実施の形態における熱処理用治具12においては、1対の第1補強部材としての補強板123aの間に、1対の前記第1補強部材を互いに連結するガイド部材131をさらに有し、ガイド部材131の両端は第1補強部材123aに対して隙間のある嵌合によって微動可能に取り付けられている。ここでいう「微動可能」とは、熱処理用治具12の載置部材が使用時に、温度変化などにより多少変形しても嵌合部分が破壊されることなく、かつ、ガイド部材131の両端が第1補強部材123aに追従することができる程度に遊びがもたせられている状態を意味する。すなわち、嵌合部には多少の隙間があってよい。熱処理用治具12に加わる変形としては、特にねじり変形が想定される。
【0056】
微動可能に取り付けられた嵌合の一例を説明するために、
図8におけるZ部に注目した側面図を
図10に示す。ガイド部材131を単独で取り出したところを
図11に示す。ガイド部材131は両端にそれぞれ突起513を備える。突起513は他の部分に比べて径が小さくなった部分とみなすこともできる。
図10に示すように、ガイド部材131の端に設けられた突起513が補強板123aに設けられた貫通孔514に嵌め込まれている。貫通孔514の内径は突起513の外径よりある程度大きくなっている。
【0057】
(作製例)
この熱処理用治具12を作製した例をより詳細に説明する。
【0058】
まずは、実施の形態1で説明したのと同様に、線径0.1mm、目開き0.2mmのニッケル製の金網を、一辺10mmで山折り、谷折りを交互に繰り返して折り返し、上からの投影形状が縦横200mmの四辺形状になるよう加工した。このように加工された金網は、山折りおよび谷折りを交互に繰り返した波状形状となる。この金網は、チップ状の電子部品を載置するために用いられる。すなわち、この金網は載置部材となるものである、この載置部材は、上述の寸法の金網で形成されているので、表面に複数の貫通孔を有しているといえるが、これらの複数の貫通孔は、電子部品の大きさよりも小さくなっている。
【0059】
この載置部材としての波状形状の金網においては、波状形状の波の進行方向を第1方向とし、この第1方向に直交して水平な方向を第2方向とする。ここでは、説明の便宜のため、金網を水平に置いたものとして説明しているが、ここでいう「水平」とは絶対的なものではない。
図2〜
図5では、図中左右方向が第1方向に相当し、図中の左下−右上の方向が第2方向に相当する。載置部材の第2方向の両端部の側部に、厚み1mm、幅10mmのニッケル製の厚板を接合した。この厚板は、第1補強部材に相当するものである。
図2〜
図5において第2方向の両端部の底部または側部に設けられていたものも第1補強部材に相当するが、本実施の形態では、
図8に示すように、第1補強部材として補強板123aを接合した。このときの接合方法は、スポット溶接などの溶接による方法であってもよい。あるいは、補強部材123aに何らかの挟み込み構造を設けておいて載置部材の端部を挟み込む方法によってもよい。第1補強部材は、金属板に限定されるものではなく、金属板以外であってもよい。第1補強部材としては、たとえばアルミナなどのセラミック基材を用いてもよい。第1補強部材の形状は、板状に限定されるものではなく、棒状であってもよい。第1補強部材は、たとえば角柱、円柱、半円柱などであってもよい。
【0060】
本実施の形態では、上述したように、ガイド部材131が設けられている。このガイド部材は、第1補強部材を載置部材に接合した後で取り付けることとしてもよいが、第1補強部材を載置部材に接合する前に、ガイド部材を適切な位置に配置しておいて、第1補強部材を接合する際には、ガイド部材を同時に取り込むように接合することとしてもよい。
【0061】
(作用・効果)
本実施の形態では、1対の前記第1補強部材としての補強板123aを互いに連結するガイド部材を備えているので、十分な強度をもたせることができる。強度をもたせることのみを重視して、完全に4辺を取り囲む枠状に補強部材を設けてこれらが完全に固定されてしまっていると、使用時に、温度変化などによって載置部材が変形したときに枠状の補強部材に過度の負荷がかかって破損するおそれがある。しかし、本実施の形態では、ガイド部材131の両端は第1補強部材としての補強板123aに対して隙間のある嵌合によって微動可能に取り付けられているので、載置部材がねじりなどの変形を引き起こしたとしても、熱処理用治具12全体として、当該ねじりに追従して変形することができ、その結果、破損することなく使用し続けることができる。
【0062】
熱処理用治具12は、平行に配置された複数のローラを備える搬送装置において、これらのローラの上に載せられることによって搬送されうる。本実施の形態で示したような熱処理用治具12は、全体としてある程度の幅の変形に対しては柔軟に変形することができるので、搬送装置のローラの配列に多少の誤差があったとしても、良好な当接状態が維持される。その結果、安定して搬送することができる。本実施の形態によれば、たとえば搬送中の蛇行や脱落といった問題の発生を抑制することができる。
【0063】
また、搬送中にローラと熱処理用治具との当接具合のわずかなバランスの差により、熱処理用治具が搬送中に水平面内で回転する場合がある。もしガイド部材がなかった場合には、熱処理用治具が水平面内で回転した結果、熱処理用治具にとっての第1方向がローラの長手方向と一致した場合、第1補強部材がローラとローラとの間に落ち込む場合がある。万が一そのような事態が発生すると、搬送が困難となる。しかし、本実施の形態では、ガイド部材が設けられているので、側方から見たときのガイド部材の下端の位置を第1補強部材の下端に近い位置で適切に選ぶことによって、そのような落ち込みが生じにくくなる。
【0064】
なお、
図10に示した例のように、ガイド部材131の下端が第1補強部材の下端と異なる高さにあってもよいが、
図12に示すようにガイド部材131の下端が第1補強部材の下端と同じ高さにあることが好ましい。
【0065】
言い換えれば、前記第1補強部材の最も下方にある部位は、前記載置部材の谷折りとなった部分の底部よりも下側に位置し、前記ガイド部材の最も下方にある部位は、前記第1補強部材の最も下方にある部位と同一の高さにあることが好ましい。このような構成であれば、第1補強部材とガイド部材とで、搬送装置のローラに対する接し方がほぼ均一な状態となるので、より確実に落ち込みを避けることができ、安定した搬送を行なうことができる。
【0066】
(実施の形態4)
本発明に基づく実施の形態4における熱処理用治具は、基本的な構成は実施の形態3で述べたものと共通する。実施の形態3では、補強部材の端部のみにガイド部材が取り付けられていたが、本実施の形態では、
図13に示すように、ガイド部材131は少なくとも補強部材141の中間部に取り付けられている。本実施の形態では、ガイド部材131は、補強部材141の端部と中間部との両方にそれぞれ取り付けられていてもよい。
図13に示した例では、載置部材と厚み方向に重なる位置にガイド部材131が配置されている。
【0067】
(作用・効果)
本実施の形態では、補強部材の中間部にガイド部材が設けられているので、強度を高めることができる。
【0068】
図13に示した例では、ガイド部材131を補強部材141の中間部の片面側にのみ配置した例を示したが、ガイド部材は両面に配置してもよい。
図14に示した例では、ガイド部材132a,132bが載置部材を挟むようにして両面にそれぞれ配置されている。補強部材142には貫通孔514が設けられており、ガイド部材132a,132bの突起513が貫通孔514を通っている。ガイド部材を両面に配置することができるように補強部材142の厚み方向の寸法はやや大きくなっている。このように補強部材142の中間部において両面にガイド部材を配置した場合、この熱処理用治具は、表裏の両方をリバーシブルで使用することができる。
【0069】
(実施の形態5)
実施の形態3,4では、ガイド部材が円柱形状であったが、ガイド部材の形状は円柱とは限らない。ガイド部材の断面形状は円形とは限らず、他の形状であってもよい。
【0070】
本発明に基づく実施の形態5における熱処理用治具について説明する。この熱処理用治具の端部の側面図を
図15に示す。この熱処理用治具は、第1補強部材としての補強板123aを備え、補強板123aにはガイド部材133が取り付けられている。ガイド部材133を単独で取り出したところを
図16に示す。ガイド部材133は両端にそれぞれ突起515を備える。突起515は四角柱であり、ガイド部材133内の他の部分に比べて寸法が小さくなっている。
図15に示した例では、第1補強部材としての補強板123aの端部に四角形の貫通孔516が設けられており、突起515が貫通孔516を通っている。貫通孔516のサイズは、突起515の外形よりわずかに大きくなっている。
【0071】
(作用・効果)
本実施の形態においても、実施の形態3と同様の効果を得ることができる。本明細書においては、ガイド部材の断面形状が円形である例と四角形である例とを示したが、ガイド部材の断面形状はこれらの形状に限るものではなく、他の形状であってもよい。
【0072】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。