特許第6186325号(P6186325)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186325
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】潤滑構造を備えたボールスプライン装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/06 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   F16C29/06
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-180797(P2014-180797)
(22)【出願日】2014年9月5日
(65)【公開番号】特開2015-113979(P2015-113979A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年2月16日
(31)【優先権主張番号】102145323
(32)【優先日】2013年12月10日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】513241523
【氏名又は名称】上銀科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100141379
【弁理士】
【氏名又は名称】田所 淳
(72)【発明者】
【氏名】張哲▲網▼
(72)【発明者】
【氏名】江宗憲
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−122652(JP,A)
【文献】 特開平08−296641(JP,A)
【文献】 実開平06−073438(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑構造を備えたボールスプライン装置であって、
スプライン軸と、移動体と、保持器と、複数の転動体とを含み、
前記スプライン軸は、一方向に延伸された長条状構造で、この延伸方向が軸方向であると定義し、このスプライン軸の表面には複数本の軸方向に沿って設置された転動溝が設けられ、
前記移動体には、スプライン軸を貫通させる貫通孔が設けられ、前記貫通孔の内縁面には前記転動溝と対応する別の転動溝が設けられ、前記転動溝と前記別の転動溝は一つの負荷経路を構成し、前記移動体の外縁面には、前記貫通孔と連通する複数個の油孔が設けられ、
前記保持器は、前記スプライン軸と前記移動体の間に設けられるとともに、複数の保持経路を有し、前記保持経路と前記負荷経路は一つの循環経路を構成し、二つの前記保持経路間には軸方向に沿って設置された軸方向油経路と、二つの前記保持経路と前記軸方向油経路を連接する横方向油経路がそれぞれ設けられ、前記軸方向油経路と前記横方向油経路と前記貫通孔の内縁面は一つの潤滑油流れ通路を構成し、前記潤滑油流れ通路は前記油孔と連通し、
前記転動体は前記循環通路に設けられることを特徴とする、潤滑構造を備えたボールスプライン装置。
【請求項2】
前記軸方向油経路は、長さが前記保持器の長さの40%〜97%であることを特徴とする、請求項1に記載の潤滑構造を備えたボールスプライン装置。
【請求項3】
前記軸方向油経路は、円周角が2度〜30度であることを特徴とする、請求項1に記載の潤滑構造を備えたボールスプライン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリニア伝動装置に係り、特に潤滑構造を備えたボールスプライン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑はリニア伝動装置にとって非常に重要である。これは転動体のスムーズな転がりを高めるのみならず、温度上昇による熱変位も回避し、さらにリニア伝動装置の使用寿命を延長することができるからである。このため、ユーザーはリニア伝動装置の潤滑構造設計を非常に重視している。異なる分野の使用目的に応じるためには、メーカーが汎用性の高い潤滑構造を設計しなければならない。図9は公知のボールスプライン装置の潤滑構造を示すものであり、ボールスプラインの移動体2上に油孔22を設け、油孔22は保持器3の横方向油経路31と連通し、しかも潤滑油が油孔22へ進入した後、横方向油経路31を経て両側の循環経路32に流入することで転動体1を潤滑するようになっている。
【0003】
しかし、上述した従来のボールスプライン装置の潤滑構造では、保持器3の横方向油経路31の位置が固定されているため、ユーザーが使用する設備の油注入位置が油孔及び横方向油経路の位置と合わせることができないとき、保持器の横方向油経路の位置を設備の油注入位置に合わせるように移動しなければならない。即ち、保持器を再び取り出して取り付けることが必要となる。因って、設計と製造のコストが嵩むのみならず、且つ保持器の横方向油経路の規格を多く備えるために物品管理のコストも高くなり、故にボールスプライン装置の製造利率を大幅に低下させる恐れがある。よって、廉価なボールスプライン装置を提供するためには、さらなる改善が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、汎用性が高く、異なる分野のユーザーが使用する設備の潤滑油注入口に対応できる潤滑構造を備えたボールスプライン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、潤滑構造を備えたボールスプライン装置であって、スプライン軸と、移動体と、保持器と、複数の転動体とを含み、前記スプライン軸は、一方向に延伸された長条状構造で、この延伸方向が軸方向であると定義し、このスプライン軸の表面には複数本の軸方向に沿って設置された転動溝が設けられ、前記移動体には、スプライン軸を貫通させる貫通孔が設けられ、前記貫通孔の内縁面には前記転動溝と対応する別の転動溝が設けられ、前記転動溝と前記別の転動溝は一つの負荷経路を構成し、前記移動体の外縁面には、前記貫通孔と連通する複数個の油孔が設けられ、前記保持器は、前記スプライン軸と前記移動体の間に設けられるとともに、複数の保持経路を有し、前記保持経路と前記負荷経路は一つの循環経路を構成し、二つの前記保持経路間には軸方向に沿って軸方向油経路と、二つの前記保持経路と前記軸方向油経路を連接する横方向油経路がそれぞれ設けられ、前記軸方向油経路と前記横方向油経路と前記貫通孔の内縁面は一つの潤滑油流れ通路を構成し、前記潤滑油流れ通路は前記油孔と連通し、前記転動体は前記循環通路に設けられることを特徴とする。
【0007】
ここでは、前記軸方向油経路の長さが前記保持器の長さの40%〜97%であることが好ましい。
【0008】
ここでは、前記軸方向油経路の円周角が2度〜30度であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、前記軸方向油経路と前記横方向油経路を組み合わせることにより、移動体の油孔の位置を自由に変化することができる。例えば、移動体の中央部又は両端部付近に油孔を設置すると、ユーザーの使用する設備の潤滑油注入口に合わせることができるので、保持器を再び取り出して取付けるか、又は再製造することを避けることができる。よって、ボールスプライン装置の潤滑構造の汎用性を広げることができる。
なお、移動体の油孔が刃具で加工成型されるので、ユーザーの需要に応じて製造できるが、保持器がプラスチック射出成型で製造されるので、その油経路構造を自由自在に変更することができない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の潤滑構造を備えたボールスプライン装置の全体分解図である。
図2】本発明の潤滑構造を備えたボールスプライン装置のアセンブリ図である。
図3】本発明の潤滑構造を備えたボールスプライン装置の軸方向断面図(その1)である。
図4】本発明の潤滑構造を備えたボールスプライン装置の軸方向断面図(その2)である。
図5図4のA−Aの断面図である。
図6図4のB−Bの断面図である。
図7図4のC−Cの断面図である。
図8】本発明の潤滑構造を備えたボールスプライン装置のアセンブリ図である。
図9】公知技術の潤滑構造を備えたボールスプライン装置のアセンブリ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の特徴および技術内容のよりよい理解のために、本発明の実施方式の説明及び図面を参照していただきたい。ただし、この実施方式及び図面は説明及び参考用のものであり、これらにより本発明に対するいかなる制限も加えられるものではない。
【0012】
図1から図8に示している本発明の好適な実施例を参照して、本発明は一種の潤滑構造を備えたボールスプライン装置であり、スプライン軸1、移動体2、保持器、複数の転動体5を含む。
【0013】
スプライン軸1は、一方向に延伸した長条状構造で、この延伸方向を軸方向Xであると定義し、このスプライン軸1の表面に複数本の軸方向Xに沿って設置されたボール転動溝11が設けられる。
【0014】
移動体2には、スプライン軸1を貫通させる貫通孔21が設けられ、前記貫通孔21の内縁面213には前記転動溝11と対応する別の転動溝211が設けられ、前記転動溝11と前記別の転動溝211は一つの負荷経路を構成し、前記移動体2の外縁面には、前記貫通孔21と連通する複数個の油孔22が設けられる。
【0015】
保持器は、前記スプライン軸1と前記移動体2の間に設けられるとともに、複数の保持経路90を有し、一つの前記保持経路90と前記負荷経路は一つの循環経路を構成し、二つの前記保持経路90の間には軸方向Xに沿って軸方向油経路Aと、二つの前記保持経路90と軸方向油経路Aを連接する横方向油経路32がそれぞれ設けられ、前記軸方向油経路Aと前記横方向油経路32と前記貫通孔21の内縁面213は一つの潤滑油流れ通路100を構成し、前記潤滑油流れ通路100は前記油孔22と連通する。
【0016】
本実施例では、前記保持器が第1部材3と第2部材4とからなり、第1部材3の長さが第2部材4の長さより長くなる。第1部材3には、複数の第1保持経路33と、二つの第1保持経路33の間を介在する第1軸方向油経路31が設けられる。前記横方向油経路32は、前記第1部材3に設けられる。第2部材4には、複数の第2保持経路41と、二つの第2保持経路41の間を介在する第2軸方向油経路42が設けられる。第1保持経路33は、断面がU字型を呈し、第2保持経路41は、断面が半円形を呈する。しかも第1保持経路33と第2保持経路41は保持経路90を構成し、第1軸方向油経路31と第2軸方向油経路42は軸方向油経路Aを構成する。さらに、保持器を貫通孔21に取り付けた後、固定部材6を介して前記保持器の両端を移動体2に設置された凹溝212に嵌設する。これにより、貫通孔21に保持器を固定する。また、前記転動体5は前記循環通路に設置される。
【0017】
さらに、図4図5に示すように、循環構造の汎用性を高めるためには、軸方向油経路Aの最適な長さLが保持器の長さH(又は総長さ)の40〜97%とする。これにより、機械、半導体、自動化機器及び木工機械のニーズに合致するとともに、ボールスプライン装置の汎用性を高め、その製造コストを大幅に低減することができる。その他、軸方向油経路Aの設置を増設するため、保持器の全体剛性への影響を避ける必要があり、寸法・構造の最適化の数値解析・分析を行い、さらに実測テストを実施したところ、軸方向油経路Aの寸法の最適値又は限界値を求めることができた。軸方向油経路Aが保持器の構造に及ぼす最大の影響としては、保持経路間の厚さ設定が挙げられるため、本発明では、軸方向油経路Aの広さ又は幅が円周角(又は中心角)方式により算定される。図5に示すように、規格の異なる保持器に適するためには、軸方向油経路の両側端点と保持器の円心となす円周角(又は中心角)Qは最適として2度〜30度が好ましい。本実施例では、保持器の外径が28mmである場合、軸方向油経路の円周角が5.2度となる。これにより、保持器の好適な剛性を得ることができる。
【0018】
その他、図8に示すように、移動体2の外縁面には、環状油溝23が設けられ、環状油溝23は複数個の油孔22と連通する。これにより、ユーザーの使用設備にこのような環状油溝を加工する必要がなくなる。例えば、図2に示すように、移動体2の外縁面には、環状油溝23がないため、ユーザーの使用設備に環状油溝(図示せず)を加工しなければならない。この環状油溝に潤滑油を注入することによって、これを介してそれぞれの油孔に流入するので、潤滑構造の簡素化を図ることができる。
【符号の説明】
【0019】
<本発明>
1:スプライン軸又は長軸
11:転動溝
2:移動体
21:貫通孔
211:転動溝
212:凹溝
213:内縁面
22:油孔
23:環状油溝
3:第1部材
31:第1軸方向油経路
32:横方向油経路
A:軸方向油経路
33:第1保持経路
4:第2部材
41:第2保持経路
42:第2軸方向油経路
90:保持経路
100:潤滑油流れ通路
5:転動体
6:固定部材
X:軸方向
L:長さ
H:長さ
Q:円周角又は中心角
<従来技術>
1:転動溝
2:移動体
22:油孔
3:保持器
31:横方向油経路
32:循環経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9