特許第6186359号(P6186359)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6186359歯列矯正装置および同装置を使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186359
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】歯列矯正装置および同装置を使用する方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/10 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   A61C7/10
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-530769(P2014-530769)
(86)(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公表番号】特表2014-526340(P2014-526340A)
(43)【公表日】2014年10月6日
(86)【国際出願番号】US2012055040
(87)【国際公開番号】WO2013040144
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2015年9月14日
(31)【優先権主張番号】13/233,283
(32)【優先日】2011年9月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514064958
【氏名又は名称】リー,スー,エス.
【氏名又は名称原語表記】LEE, Sue, S.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】リー,スー,エス.
【審査官】 武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第93/015684(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/00−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の口蓋を成形するために、矯正力を適用するための装置であって、該装置は、
第1の近位部および第1の遠位部を含む、第1の延長ワイヤ、
第2の近位部および第2の遠位部を含む、第2の延長ワイヤ、および
右部、中央部および左部を含む、口蓋アーチワイヤ
を含み、
該口蓋アーチワイヤの中央部が、左ループ、中央ループ、および右ループを含み、
該右および左ループが、該右部、該左部および該中央ループから、該第1のおよび第2の遠位部へと全般的に向かう方向に向いており、かつ該中央ループが該右および左ループが向いている方向とは逆の方向に向いており、ならびに
該右部および該左部が、患者の口腔内で後方へと延伸する逆U字状の形状を有する、
前記装置。
【請求項2】
装置が患者の口に装着されるときに、第2の延長ワイヤの遠位部が、第1の延長ワイヤの遠位部および近位部にわたって重複できるように設計されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第1の延長ワイヤおよび第2の延長ワイヤならびに口蓋アーチワイヤが、金属合金を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
金属合金が、炭素、クロム、コバルト、マンガン、ニッケル、ステンレス鋼、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
左ループ、中央ループ、および右ループが、横方向の矯正力を適用し、患者の歯列および骨を、片側または両側で、回す、捻るまたは曲げるように操作可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
第1の近位部が第1の柄部材を含み、および第2の近位部が第2の柄部材を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
装置が患者の口に取り付けられたときに、患者の口の第1の大臼歯に備え付けることができる、第1の留め金部材、および
装置が患者の口に取り付けられたときに、患者の口の第2の大臼歯に備え付けることができる、第2の留め金部材、
をさらに含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
左ループおよび右ループがそれぞれ、患者の口腔内で後方へと延伸する逆U字状の形状を有し、ならびに中央ループがΩ状の形状を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
中央部が第1および第2の延長ワイヤよりも高い位置に配置され、装置が患者の口に取り付けられたときに、中央部が、右部および左部から、患者の歯列の方に向かって延伸する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
装置が患者の口に取り付けられたときに、第1の大臼歯に付着させることができる、第1の付着部材、および
装置が患者の口に取り付けられたときに、第2の大臼歯に付着させることができる、第2の付着部材
をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
装置が患者の口に取り付けられたときに、口蓋アーチワイヤの操作による第1および第2の付着部材の操作が、患者の第1の大臼歯、第2の大臼歯、または両方への矯正力に影響を与える、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
第1の近位部が第1の柄部材を含み、および第2の近位部が第2の柄部材を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
第1および第2の柄部材が、装置が患者の口に取り付けられたときに、第1および第2の付着部材を固定する、請求項12に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年9月15日に出願された米国特許出願第13/233,283号に対する優先権を主張するものであり、その内容全体は、本明細書中に参照により組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、患者の口の内で矯正力を加えるための方法およびデバイスに関し、より詳細には、成形デバイスの使用によって、患者の口蓋を矯正するための、横方向の、頬側への、および唇側への力を加えることに関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
口蓋アーチ拡張器組立体は、米国特許第5,816,800号に記載されている。そして、様々な口蓋デバイスおよび他の歯列矯正デバイスは、NorthStar Orthodontics, Inc.として知られている歯列矯正研究所(Park Rapids, Minnesota)等の様々な供給源から市販されている。NorthStar Orthodonticsは、例えば、Porter ArchおよびQuad Helix Expander等を提供する。
【0004】
口蓋拡張器(palatal expander)はまた、急速口蓋拡張器、急速上顎拡張器具、口蓋拡張器(palate expander)または歯列矯正拡張器としても知られている。口蓋拡張器(palatal expander)は、上顎を広げるようにするために、患者の口蓋を拡張するために個別的に使用される。拡張器の使用は子どもたちにおいて最も多く見られることであるが、それは、成人においても使用することができ、また選択的に使用されている。患者の上顎を広げる際、知られている拡張器は、上顎の物理的な分離をもたらすことがあり、また、患者の上2本の前歯の間に大きな隙間をもたらすこともある。
【0005】
骨としての口蓋(口蓋突起)が、鼻腔の床と同様に口腔の天井としても働くため、知られている拡張器における意味のある結果は、それらが口腔と鼻腔との解剖学的関係を変化させ得ることである。これらの既知の拡張器は、解剖学的障壁としての口蓋突起の機能的崩壊をもたらし得、これら腔間の連通を生じさせる。患者は、口蓋拡張器を装着している間、圧迫、苦痛および頭痛を経験することがある。ブレース(Brace)は、典型的には、拡張器が患者の上顎を広げるために使用された後で、全ての、または何人かの患者の歯を真っすぐにするために使用される。
【発明の概要】
【0006】
本発明の概要
本発明は、例えば、幾何学形状としての患者の口蓋の外形をヒトの口の適切な形態学的、解剖学的な構造に矯正するための、歯列矯正デバイスならびに歯槽複合体(DAC)として知られている患者の歯列および骨に矯正力を加えるための方法に関する。患者は、ほとんどどの年齢でのヒト男性またはヒト女性であり得る。
【0007】
本発明の口蓋成形器は、DACの1ユニットとしての歯を、ヒト歯列弓の理想の外形へと移動させる;したがって、歯列弓のパラメータを増加させる歯槽骨および口蓋突起を成形する。よって、この歯列矯正成形デバイスは、正中口蓋縫合に対してほとんど、またはまったく効果がなく、圧迫、苦痛、頭痛の臨床症状、または上2本の前歯の間の隙間をめったにもたらさない。口腔と鼻腔との間の解剖学的な崩壊は、ほとんど、または全くない。
【0008】
一側面において、本発明は、患者の口の内に取り付けるための歯列矯正装置に関する。装置は、第1延長ワイヤ、第2延長ワイヤおよび口蓋アーチワイヤを含む。第1延長ワイヤは、近位部および遠位部を含む。第1延長ワイヤの近位部は、右付着部材から延長し、装置が患者の口の内に取り付けられるとき、患者の口蓋内で右上後方DACに対し頬側に矯正力を加えるように操作可能である。第1延長ワイヤの遠位部は、近位部から延長し、装置が患者の口の内に取り付けられるとき、患者の口蓋内で上前方DACに対しては唇側に矯正力を加え、いくつかの左上後方DACに対しては選択的に頬側に矯正力を加えるように操作可能である。第1延長ワイヤの遠位部は、遠位端で終結する。
【0009】
装置が取り付けられるとき、第1延長の遠位端は、第1延長ワイヤの近位部とは逆側の口蓋において、第2延長ワイヤの近位部と近接している。第2延長ワイヤは、近位部および遠位部を含む。第2延長ワイヤの近位部は、左付着部材から延長し、装置が患者の口の内に取り付けられるとき、患者の口蓋内で左上後方DACに対し頬側に矯正力を加えるように操作可能である。第2延長ワイヤの遠位部は、第2延長ワイヤの近位部から延長し、装置が患者の口の内に取り付けられるとき、患者の口蓋内で上前方DACに対しては唇側に矯正力を加え、いくつかの右後方DACに対しては選択的に頬側に矯正力を加えるように操作可能である。第2延長ワイヤの遠位部は、遠位端で終結し、該遠位端は、取り付けられるとき、第2延長ワイヤの近位部とは逆側の口蓋にあり;第1延長ワイヤの近位部と近接している。口蓋アーチワイヤは、右部、中央部および左部を含む。右部は、中央部の右側から右付着部材へと延長する。
【0010】
左部は、中央部の左側から左付着部材へと延長する。中央部は、左ループ、中央ループおよび右ループを含む、一般的なM形をした形状を含む。左ループおよび右ループの夫々は、一般的に逆さまのU形をした形状を含む。中央ループは、一般的にΩ形をした形状を含む。中央部は、第1延長ワイヤと第2延長ワイヤとの間に配置され、水平軸が、右付着部材および左付着部材の夫々を通じて延長する。患者の口蓋の内に取り付けられるとき、口蓋アーチワイヤの中央部は、患者の口蓋内で配置される。口蓋アーチワイヤは、装置が患者の口の内に取り付けられるとき、後方DACの片側または両側に対し横方向の矯正力を加えるように操作可能である。
【0011】
本発明のこの側面に従う一態様において、第1延長ワイヤおよび第2延長ワイヤ、右付着部材および左付着部材ならびに口蓋アーチワイヤは、金属合金を含み得る。金属合金は、炭素、クロム、コバルト、マンガン、ニッケルおよびステンレス鋼の1または2以上を含むことができる。
【0012】
本発明のこの側面に従う他の態様において、近位部の夫々は、柄部材を含むことができる。患者の口の内に取り付けられるとき、第1延長ワイヤの近位部の柄部材は、装置を固定するため、右付着部材に付着されることができる。同様に、第2延長ワイヤの近位部の柄部材は、装置が患者の口の内に取り付けられるとき、装置を固定するため、左付着部材に付着されることができる。
【0013】
本発明のこの側面に従う他の態様において、延長ワイヤの遠位部の夫々は、上前方歯列および口蓋の逆の端の少なくともいくつかの後方歯列を横切ることができる。右付着部材および左付着部材の夫々は、右留め金部材および左留め金部材への付着のために適合されることができ、夫々は、装置が患者の口蓋の内に取り付けられるとき、大臼歯に対し独立して減捻の矯正力を加えるように操作可能である。右留め金部材および左留め金部材の夫々は、患者の口蓋の逆側の上顎大臼歯に備え付けることができる。口蓋アーチワイヤは、装置が患者の口の内に取り付けられるとき、患者の口蓋のより高い部へと上げることができる。
【0014】
他の態様において、本発明は、患者の口蓋の上DACに対し、矯正力を加える方法に関する。該方法は、患者の口の中に取り付けるための先に記載した歯列矯正装置等の歯列矯正装置を提供すること、患者の口の口蓋へと装置を入れること、右付着部材を、上顎右大臼歯に備え付けられた第1留め金部材に固定すること、左付着部材を、上顎左大臼歯に備え付けられた第1留め金部材に固定すること、付着部材の夫々を、各大臼歯に対し独立して減捻の矯正力を加えるように、操作すること、第1延長ワイヤの近位部を、右上前方DACに対し頬側に矯正力を加えるように、操作すること、第1延長ワイヤの遠位部を、少なくともいくつかの上前方DACに対しては唇側に矯正力を加え、少なくともいくつかの左上後方DACに対しては頬側に矯正力を加えるように、操作すること、第2延長ワイヤの近位部を、左上後方DACに対し、頬側に矯正力を加えるように、操作すること、第2延長ワイヤの遠位部を、少なくともいくつかの上前方DACに対しては唇側に矯正力を加え、少なくともいくつかの右上後方DACに対しては選択的に頬側に矯正力を加えるように、操作すること、ならびに、口蓋アーチワイヤを、第1延長ワイヤと第2延長ワイヤとの間に配置されるように、操作すること、および、水平軸が、上DACに対し横方向の矯正力を加えるように、右付着部材および左付着部材の夫々を通じて延長すること、を含む。
【0015】
本発明のこの側面に従う一態様において、歯列矯正装置の第1延長ワイヤおよび第2延長ワイヤ、右付着部材および左付着部材、ならびに口蓋アーチワイヤの夫々は、金属合金を含む。金属合金は、炭素、クロム、コバルト、マンガン、ニッケルおよびステンレス鋼の1または2以上を含むことができる。
【0016】
他の態様において、歯列矯正装置の近位部の夫々は、柄部材を含む。第1延長ワイヤの近位部の第1柄部材を操作するステップは、装置が患者の口の内にあるとき、装置を固定するため、それを右付着部材に留めることを含む。第2延長ワイヤの近位部の第2柄部材を操作するステップは、装置が患者の口の内に取り付けられるとき、装置を固定するため、それを左付着部材に留めることを含む。
【0017】
他の態様において、歯列矯正装置の遠位部の夫々は、口蓋の逆の端の、上前方歯列および少なくともいくつかの後方歯列を横切る。口蓋アーチワイヤは、装置が患者の口の内に取り付けられるとき、患者の口の口蓋のより高い部へと上げられる。操作ステップの夫々は、所望の量の矯正力を与えるために、繰り返すことができる。口蓋アーチワイヤの中央部は、装置が患者の口の内に取り付けられるとき、患者の口の口蓋のより高い部へと上げられることができる。
【0018】
他の側面において、本発明は、口蓋を成形するためのデバイスに関する。デバイスは、一対の付着部材、一対の延長ワイヤ―夫々が付着部材の1つから突き出ている―付着部材に架かる口蓋アーチワイヤを含む。延長ワイヤの夫々は、遠位部と同様に付着部材の1つに付着された近位部を有する。延長ワイヤの夫々は、遠位端を有する。付着部材―延長ワイヤの近位部に付着された―は、一般的に、その終端近くのそれらの夫々と付着された口蓋アーチワイヤにより、互いに隔ててある距離を保ち、2つの付着部材間の領域に架かる中央部を残す。口蓋アーチワイヤの中央部は、実質的に同一平面状にあり、かつ交互方向に開放された3つの連続した半ループに形成される。
【0019】
デバイスは、一対の上顎第一大臼歯が負う回転力を独立して制御するため、主に上顎第一大臼歯に備え付けられた一対の留め金部材に付着される一対の付着部材により口蓋内に取り付けられるように構成されている。デバイスは、DACに対し横方向の力を加えるため―付着部材より前方にあり、延長ワイヤより高い―口蓋内の口蓋アーチワイヤの中央部により口内に取り付けられるように構成される。デバイスは、DACに対し頬側に力を加えるように位置付けられた近位部の夫々を有する、付着部材より前方にある一対の延長ワイヤにより、患者の口の内に取り付けられるように構成される。デバイスは、DACに対し唇側に力を加えるため、上後方歯列の裏側を横切る延長ワイヤの遠位部により、患者の口の内に取り付けられるように構成され、逆側のDACに対し頬側にいくらかの力を加えるために、少なくとも一部が他の延長ワイヤの近位部と重複する。
【0020】
本発明のこれらの目的および他の目的、利点ならびに特長は、以下の説明、図面および特許請求の範囲を参照により明らかになるだろう。本明細書に記載された態様の側面は、相互排他的なものではなく、様々な組み合わせおよび並び替えにおいて存在することができることに留意する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図面の簡単な説明
図面において、参考文献と同じように、一般的に、特徴は、異なる観点を通して、同一の部分または同様の部分を参照する。図面は、本発明の原理と同様に、本発明に従う様々な態様の詳細の両方を解説することを意図する。
【0022】
図1図1は、第1延長ワイヤおよび第2延長ワイヤが所望の形状に操作される前の歯列矯正装置の態様の上面図である。
【0023】
図2図2は、第1延長ワイヤおよび第2延長ワイヤが所望の形状に操作された後の歯列矯正装置の上面図である。
【0024】
図3図3は、歯列矯正装置の側面図である。
図4図4は、第1延長ワイヤおよび第2延長ワイヤが所望の形状に操作された後の歯列矯正装置の斜視図である。
【0025】
図5図5は、右留め金部材および左留め金部材を含むこと以外は図1と同様の歯列矯正装置の上面図である。
【0026】
図6図6は、第1延長ワイヤおよび第2延長ワイヤが所望の形状に操作された後の図5の歯列矯正装置の上面図である。
【0027】
図7図7は、患者の口の内の対向する大臼歯に備え付けられた右留め金部材および左留め金部材の上面図である。
【0028】
図8図8は、歯列矯正装置が患者の口の内に取り付けられた後の歯列矯正装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
態様の詳細な説明
一般に、本発明は、患者の口の内で口蓋を成形するため、3次元:横方向の、頬側の、および唇側の矯正力を加えるための、歯列矯正デバイスおよび方法に関する。
【0030】
図1、2、3、4、5および6を参照すると、本発明に従う一態様において、歯列矯正装置100は、第1延長ワイヤ102、第2延長ワイヤ104および口蓋アーチワイヤ106を含む。第1延長ワイヤ102は、近位部102Aおよび遠位部102Bを含む。
【0031】
第1延長ワイヤ102の近位部102Aは、右付着部材108から延長する。第1延長ワイヤ102の遠位部102Bは、近位部102Aから延長し、遠位端102Cで終結する。第2延長ワイヤ104は、近位部104Aおよび遠位部104Bを含む。延長ワイヤ104の近位部104Aは、左付着部材110から延長する。第2延長ワイヤ104の遠位部104Bは、近位部104Aから延長し、遠位端104Cで終結する。
【0032】
第1延長ワイヤ102および第2延長ワイヤ104は、近位部102A、104Aおよび遠位部102B、104Bの夫々が、装置100が患者の口の内に取り付けられるとき、DACおよび歯に対し頬側へのおよび唇側への矯正力を加えるように構成されるように、操作可能である(図示なし)。これらの矯正力は、大臼歯を、回し、捻り、または曲げるように調整され得る。例えば、第2延長ワイヤ104の遠位部104Bは、第1延長ワイヤ102の遠位部102Bおよび近位部102Aにわたって重複するように操作され得る。遠位部102Bおよび104Bのために選択される的確な外形は、個別の適用に合うように変動するものである。
【0033】
口蓋アーチワイヤ106は、右部112、中央部114および左部116を含む。右部112は、右付着部材108から中央部114の右側まで延長する。左部116は、左付着部材110から延長し、中央部114の左側まで延長する。中央部114は、右ループ118、中央ベンド120および左ループ122を含む。中央部114は、様々な形状で構成され得る。一態様において、中央部114は、一般的なM形をした形状を有し、右ループ118および左ループ122の夫々は、一般的に逆さまのU形をした形状を含む。中央ループ120は、一般的に逆さまのΩ形をした形状を含む。
【0034】
中央部114は、第1延長ワイヤ102;第2延長ワイヤ104の間に配置され、水平軸が、右付着部材108および左付着部材110を通じて延長する。したがって、本発明の装置は、中央部114、延長ワイヤ102および延長ワイヤ104を含み、これらは夫々、―装置が患者の口内に取り付けられるとき―右付着部材108と左付着部材110との両方に対して前方に設置される。
【0035】
実施において、中央部114は、装置100が患者の口の内に取り付けられるとき、患者の口蓋のより高い部内で配置される。口蓋アーチワイヤ106は、装置100が患者の口の内に取り付けられるとき、上DACに対し横方向の矯正力を加えるように、操作可能であって、そのように構成される。これらの矯正力は、大臼歯を、回し、捻り、または曲げるように、片側または両側で調整され得る。本発明に従い、患者のDACおよび大臼歯に対する3次元の矯正力は、患者の口蓋の外形の矯正をもたらす。
【0036】
第1延長ワイヤ102、第2延長ワイヤ104、右付着部材108、左付着部材110および口蓋アーチワイヤ106の夫々は、金属合金から形成され得る。金属合金は、炭素、クロム、マンガン、ニッケルおよびステンレス鋼の1または2以上を含むことができる。装置100のために選択される材料は、個別の適用に合うように変動するだろう。
【0037】
装置100はまた、第1柄部材124および第2柄部材126も含む。第1柄部材124は、第1延長ワイヤ102の近位部102A上に配置される。第2柄部材126は、第2延長ワイヤ104の近位部104A上に配置される。第1柄部材124および第2柄部材126の夫々は、装置100が患者の口蓋の内に取り付けられるとき、第1付着部材108および第2付着部材110を固定するように構成される。
【0038】
図7および8を参照すると、装置100はまた、右留め金部材300および左留め金部材302も含み、留め金部材は、好ましくは歯列矯正の大臼歯ベルトの口蓋側に備え付けられる。右留め金部材300および左留め金部材302の夫々は、右付着部材108および左付着部材110への付着のために適合される。実施において、右留め金部材300は、上顎右第一大臼歯200に付着され、左留め金部材302は、上顎左第一大臼歯202に付着される。
【0039】
一態様において、留め金部材300および留め金部材302が付着された後、次に、装置100は、患者の口の口蓋へと入れられる。右付着部材108は、右留め金部材300内へ入れられ、右柄部材124は、右付着部材108によりロックするため操作される。左付着部材110は、左留め金部材302内へ入れられ、左柄部材126は、左付着部材110によりロックするため操作される。付着部材108および110の夫々は、各第一大臼歯200および202に対し、独立して、減捻の矯正力を加えるように操作され得る。
【0040】
右付着部材108を、上顎第一大臼歯200周囲の右留め金部材300へと入れることによって、第1延長ワイヤ102の近位部102Aは、右上後方DACの歯200、204および206、ならびに選択的に右第二大臼歯226に対し頬側に矯正力を加えるように操作され得る。
【0041】
左付着部材110を、上顎左大臼歯202周囲の左留め金部材302内へと入れることによって、第2延長ワイヤ104の近位部104Aは、左上後方DACの歯220、222および202、ならびに選択的に左第二大臼歯228に対し、頬側に矯正力を加えるように操作され得る。
【0042】
第1延長ワイヤ102の遠位部102Bは、上前方歯列208、210、212、214および216の少なくともいくつかのDACに対し唇側に矯正力を加え、ならびに、歯218、220および222に対し頬側にいくらかの選択的な矯正力を加えるように操作され得る。第2延長ワイヤ104の遠位部104Bは、上前方歯列210、212、214、216および218の少なくともいくつかのDACに対し唇側に矯正力を加え;歯208、206および204に対し頬側にいくらかの選択的な矯正力を加えるように操作され得る。
【0043】
本発明の一態様において、遠位部102Bと遠位部104Bとの重複領域は、装置が患者の口の内に取り付けられるとき、重複領域が歯206、208、210、212、214、216、218および220の裏側;選択的に歯204および222の裏側になるように、患者の口を中心にしてくるまる。
【0044】
本発明に一態様において、操作者は、遠位部102Bおよび遠位部104Bを、それら部がDACに対して加える唇側および頬側への矯正力を精密にカスタマイズするために、操作してもよい。高度にカスタマイズ可能な遠位部102Bおよび遠位部104Bを有することによって、装置は、操作者が、患者の口の内のDACの個々の歯または領域に対し、的確に位置付けられた、精密に制御された異なる量の唇側および頬側への力を提供することができるようになるという有益な結果を提供する。それによって、所望の形態学的、解剖学的な構造が、的確に、素早く、痛みを伴わず、効率良く達成される。
【0045】
装置が患者の口の内に取り付けられるとき、一部の遠位部102Bは、一部の近位部104Aと重複し、一部の遠位部104Bは、一部の近位部102Aと重複する。したがって、装置が患者の口の内に取り付けられるとき、遠位端102Cは、近位部104Aに近接して位置し、遠位端104Cは、近位部102Aに近接して位置する。
【0046】
装置の操作者は、口蓋アーチワイヤ106が、第1延長ワイヤ102;第2延長ワイヤ104の間に配置されるように操作してもよく;水平軸が右付着部材300および左付着部材302を通じて延長する。この配置において、口蓋アーチワイヤ106は、上顎大臼歯200および202のDACの一方または両方に対して横方向に矯正力を加えるように利用され得る。
【0047】
デバイスは、それが患者の口の内に取り付けられる場合、一対の付着部材の夫々が一対の留め金部材の1つと付着するように、構成され得る。図7で説明するように、留め金部材300および302の夫々は、口の口蓋側の上顎第一大臼歯200および202に主に付着され得る。図8に描かれたとおり、デバイスは、留め金部材300および302に付着するように構成され得る。
【0048】
デバイスは、それが患者の口の内に取り付けられる場合、口蓋アーチワイヤ106の中央部114ならびに延長ワイヤ102および104の両方が、図6で説明されるように、付着部材から前方向に突き出るように構成される。図2で説明されるように、装置が患者の口の内に取り付けられる場合、口蓋アーチワイヤの中央部は、近位部102A;重複する遠位部102Bおよび104B;近位部104B;2つの付着部材108および110を通じて突き出る軸によって区切られた境界内にある。図4で説明されるように、口蓋アーチワイヤの中央部は、それが患者の口蓋内に位置付けられるように、延長ワイヤより高い。操作者は、有利には、DACに対して片側または両側から加えるべき横方向の力を生じさせるため、本発明のこの形状のこの側面を利用してもよい。
【0049】
本開示の発明は:形態学的にヒトの口に対応する形状へと患者の口蓋を成形することによって歯列弓パラメータを増加させ;DACの上前方および上後方の部位に対する、横方向の、頬側への、および唇側への力を、独立して、回し、捻り、加え;歯槽突起を成形し;ならびに、口蓋突起を成形する処置の新規装置および新規方法を提供する。装置の側面は、歯槽複合体の単一ユニットとしての歯を移動させるように、および、歯列弓のパラメータを増大させるように、機能する。装置の運用および使用は、正中口蓋縫合に対してほとんど、または全く影響がなく、口腔と鼻腔との間の解剖学的な崩壊をほとんど、または全くもたらさない。単一の装置にこれらの機能を与えることによって、装置は、患者の口の内のDACの個々の歯または領域に対し、的確に位置付けされた、精密に制御され、異なる量の横方向の、頬側への、および唇側への力を操作者が提供することができるようになるという有益な結果を提供する。それによって、所望の幾何学的形状の形態学的、解剖学的な構造が、的確に、素早く、痛みを伴わず、効率良く達成される。
【0050】
様々な改変が、本明細書に開示の態様に対し、なされてもよい。開示された態様および詳細は、限定的に解釈されるべきではなく、代わりに、本発明のいくつかの態様および原理の例証として解釈されるべきである。
図1
図2
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図4
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図7
図8