(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186375
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】処理済み促進イオン交換樹脂触媒の製造方法および使用
(51)【国際特許分類】
B01J 37/04 20060101AFI20170814BHJP
B01J 31/10 20060101ALI20170814BHJP
C07C 215/50 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
B01J37/04 102
B01J31/10 Z
C07C215/50
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-550322(P2014-550322)
(86)(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公表番号】特表2015-509042(P2015-509042A)
(43)【公表日】2015年3月26日
(86)【国際出願番号】US2012069630
(87)【国際公開番号】WO2013101493
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年11月30日
(31)【優先権主張番号】61/581,064
(32)【優先日】2011年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ジェイ・オルセン
(72)【発明者】
【氏名】アルフレッド・ケイ・シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・シー・ピアース
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・ダイエター・トップ
【審査官】
増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−251179(JP,A)
【文献】
特表2008−528276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオール基を含む結合分子を有する促進イオン交換樹脂触媒を提供し、
処理済み促進イオン交換樹脂を製造するために前記促進イオン交換樹脂触媒を酸化防止剤と接触させるステップを含む、処理済み促進イオン交換樹脂触媒を製造する方法。
【請求項2】
前記イオン交換樹脂触媒がスルホン酸型カチオン交換樹脂触媒である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記カチオン交換樹脂触媒がスルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーである
、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記酸化防止剤が単環もしくは多環フェノール、アミン、ジアミン、チオエステル、ホスフェート、キノリンまたはこれらの混合物である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記酸化防止剤が2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾールである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記促進イオン交換樹脂触媒中に含まれる酸化防止剤の量が0.001から10重量パーセントである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法によって製造される処理済み促進イオン交換樹脂。
【請求項8】
請求項7記載の処理済み促進イオン交換樹脂をヒドロキシ芳香族化合物のアルデヒドまたはケトンとの縮合反応において使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性触媒としての使用のための促進強酸イオン交換樹脂の、酸化分解から該樹脂を保護するための酸化防止剤による処理および化学物質製造方法における前記処理済み促進イオン交換樹脂触媒の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー性促進イオン交換樹脂、たとえばスルホン化スチレン−ジビニルベンゼン型の強酸イオン交換樹脂は、たとえばビスフェノールAおよびアルキルフェノールを含む多様な有機化学物質の製造において触媒として使用される。これらの触媒は、使用前の製造、保管、取扱い、加工、洗浄および乾燥の間に酸化を受けやすい。酸化分解は、ポリマー性樹脂からの低および中分子量酸性物質、たとえば低分子量有機スルホネート、スルホン化オリゴマーおよびスルホン化ポリスチレンポリマーの放出につながる。これらの酸性成分の、たとえばビスフェノール樹脂製造方法中への放出は、望ましくない不純物および着色体の発生につながることがあり、規格外製品の製造がもたらされる。
【0003】
保管前および保管中に;洗浄前および洗浄中に;乾燥前および乾燥中に;ならびに化学物質製造方法におけるイオン交換樹脂の使用前に、イオン交換樹脂を酸化分解から保護する必要がある。
【0004】
米国特許第7,923,586号明細書は、イオン交換樹脂を酸化分解から保護するための酸化防止剤の使用を開示している。該特許は、酸化防止剤が好ましくは製造時にイオン交換樹脂に添加されることを記載している。米国特許第7,923,586号明細書は製造されているイオン交換樹脂を酸化分解から保護するための酸化防止剤の使用について開示しているが、促進イオン交換樹脂の酸化分解を低減し、これによりさらに促進剤を含むすでに製造されたイオン交換樹脂の清浄度を向上させる方法を開示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、促進イオン交換樹脂を、触媒としてのその使用の前に該樹脂の分解を防止するために安定化させる経済的な方法を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、促進イオン交換樹脂触媒を酸化防止剤と接触させて処理済み促進イオン交換樹脂を製造するステップを含む、処理済み促進イオン交換樹脂触媒を製造する方法を提供する。本発明は処理済み促進イオン交換樹脂および縮合反応において処理済み促進イオン交換樹脂を使用する方法をさらに提供する。
【0007】
本発明の1つの目的は、強酸促進イオン交換樹脂を、酸化分解から該樹脂を保護するための酸性触媒として使用するために安定化することと、前記安定化イオン交換樹脂の化学物質製造方法における、たとえばビスフェノールAの製造における使用である。
【0008】
本発明を説明する目的で、樹脂の「安定性」とは、樹脂が保管、取扱い、加工および乾燥中の分解に耐える能力を指す。分解は主に酸化により引き起こされ、望ましくないカラースロー、浸出物および全有機体炭素(TOC)レベルの上昇をもたらすことがあり、これらは次に樹脂の性能および感性品質に影響することがある。この望ましくないカラースロー、浸出物および全有機体炭素(TOC)レベルの上昇は、樹脂の清浄度に寄与する。安定化された樹脂は保管、取扱い、加工および乾燥時の酸化に耐える。樹脂の安定性を改善することは、樹脂が長期の保管、取扱い、加工および乾燥後に酸化分解に耐える能力を向上させて、このような樹脂が利用されるときのカラースロー、浸出物およびTOCレルの上昇を排除する。このような樹脂は、「より清浄な樹脂」と言われる。
【0009】
酸化分解は、酸素との接触を防止するための特別な予防措置なしに保管したときに、促進イオン交換樹脂サンプルの変色の進行として観察することができる。このようなサンプルの水への浸漬は、水の変色と、水の酸性度およびTOC含有量の著しい上昇を生じるであろう。酸化分解に耐えるイオン交換樹脂は、良好な貯蔵寿命を有すると言われ、保管時に著しく変色しないか、または水中に入れたときに水の色、酸性度およびTOC含有量の大きな変化を引き起こさないであろう。通例の不安定化イオン交換樹脂は良好な貯蔵寿命を有さず、1カ月以下の保管後に変色を開始する。これに対して、本発明の安定化触媒は概して、3カ月以上、好ましくは6カ月以上、最も好ましくは1年超の貯蔵寿命を有するであろう。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、促進イオン交換樹脂を酸化防止剤で処理することによって、促進イオン交換樹脂の分解を防止する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用されるように、イオン交換樹脂、イオン交換樹脂触媒、樹脂、イオン交換樹脂、イオン交換樹脂触媒、触媒、樹脂触媒およびイオン交換樹脂という用語は、互換的に使用される。
【0012】
本明細書で使用されるように、促進イオン交換樹脂とは、促進剤を含むイオン交換樹脂を意味する。本発明の好適な促進剤としては、これに限定されるわけではないが、チオール促進剤または縮合反応の反応速度を上昇させることができる他の求核性(nulceophilic)物質が挙げられる。
【0013】
「チオール促進剤」という用語は、本明細書で使用されるように、チオール(SH)基を含む分子を指す。チオール促進剤は、ヒドロキシ芳香族化合物が酸性触媒の存在下でアルデヒドまたはケトンと縮合されるときに、チオール促進剤の非存在下で行われた同じ反応と比べて、ビスフェノール形成の速度および選択性を改善するように作用する。
【0014】
用いられ得るチオール促進剤としては、アミンなどの塩基性基またはカルボン酸などの酸性基によって置換され得る脂肪族、脂環式および芳香族チオールが挙げられる。チオール促進剤は、「バルク」促進剤、すなわちアミン修飾酸性樹脂への結合に適していないチオール促進剤、または「結合」促進剤として使用され得る。チオール促進剤がアミンなどの塩基性官能基を含有する場合、前記チオール促進剤はアミン修飾酸性樹脂触媒に結合され得て、「結合」促進剤と呼ばれる。アミン修飾酸性樹脂触媒へのチオール促進剤の結合を促進するアミノ基以外のチオール促進剤中に存在する官能基としては、アミド、イミドおよびカルバメートにそれぞれ見出されるような、アミド基、イミド基およびカルバミル基が挙げられる。
【0015】
バルクチオール促進剤としては、脂環式チオール、たとえばシクロヘキサンチオールおよびシクロペンタンチオール、芳香族チオール、たとえばチオフェノールおよびベンジルチオールならびに脂肪族チオール、たとえばブタンチオール、ヘキサンチオール、オクタデカンチオールおよび3−メルカプトプロピオン酸が挙げられる。
【0016】
結合チオール促進剤としては、アミン修飾酸性樹脂触媒、たとえば10から30パーセントの、より好ましくは20から25パーセントのスルホン酸基が促進剤によって中和されているスルホン化ポリスチレンに固定された、2−メルカプトメチルピリジン、システアミンおよび4−アミノブタンチオールが挙げられる。
【0017】
酸化防止剤および酸化防止剤を促進イオン交換樹脂に適用するために必要なステップが以下に記載される。酸化防止剤は、好ましくは促進イオン交換樹脂に添加される。酸化防止剤は、本発明の処理済み促進イオン交換樹脂触媒を製造するときに、促進剤の添加に順次続くべきである。
【0018】
本発明で使用される促進イオン交換樹脂としては、たとえば促進剤を含むイオン交換樹脂が挙げられる。イオン交換樹脂およびイオン交換樹脂を調製する方法は、Helfferich,Ion Exchange,McGraw−Hill Book Co.,Inc.,pp.26−47(1962)に例示されているように当分野で周知である。有利には、樹脂は、架橋コポリマーマトリックスを調製するために最初に1つ以上のモノビニルモノマーおよび1つ以上のポリビニルモノマーを共重合するステップと、次にカチオンを交換することができる基を用いてコポリマーマトリックスを官能化するステップとによって調製される。好ましいモノビニルモノマーとしては、スチレンおよびその誘導体、アクリル酸またはメタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルおよびこれらの混合物が挙げられる。より好ましいモノビニルモノマーはモノビニル芳香族モノマーであり、スチレンが最も好ましい。好ましいポリビニルモノマーとしては、ジビニルベンゼン(DVB)トリビニルベンゼンおよびジアクリレートまたはジメタクリレートである。より好ましいポリビニルモノマーはジビニルモノマー、とりわけジビニル芳香族モノマーである。最も好ましいポリビニルモノマーはDVBである。少量の第3のモノマーが添加され得る。このようなモノマーとしては、たとえばポリアクリロニトリルおよびエチレングリコールジメタクリレートが挙げられる。このようなモノマーの量はたとえば10重量パーセント未満、好ましくは5重量パーセント未満、より好ましくは3重量パーセント未満であり得る。コポリマーマトリクスは有利には、スルホン酸基、ホスフィン酸基、ホスホン酸基、ヒ酸基もしくはカルボン酸基、またはフェノール性基によって官能化される。コポリマーマトリクスは、好ましくはスルホン酸基によって官能化される。
【0019】
本発明で有用なイオン交換樹脂としては、たとえばスチレン−ジビニルベンゼン型の強酸イオン交換樹脂、たとえばダウ・ケミカル・カンパニーから市販されているダウエックス50WX4、ダウエックス50WX2、ダウエックスM−31、ダウエックスモノスフィアM−31、ダウエックスDR−2030およびダウエックスモノスフィアDR−2030触媒が挙げられる。
【0020】
本発明で有用な市販のイオン交換樹脂の他の例としては、三菱化成工業製のダイヤイオンSK104、ダイヤイオンSK1B、ダイヤイオンPK208、ダイヤイオンPK212およびダイヤイオンPK216;ダウ・ケミカル・カンパニー製のアンバーリスト(商標)−15、アンバーリスト(商標)−35、アンバーリスト(商標)−121、アンバーリスト(商標)−232およびアンバーリスト(商標)−131;サーマックス製のT−38、T−66およびT−3825;ランクセス製のレバチットK1131、レバチットK1221、レバチットK1261およびレバチットSC104;イオン・エクスチェンジ・インディア社製のインディオン180およびインディオン225;ならびにピュロライト製のピュロライトCT−175、ピュロライトCT−222およびピュロライトCT−122が挙げられる。
【0021】
本発明で有用なスルホン酸型カチオン交換樹脂触媒は、たとえばスルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、スルホン化架橋スチレンポリマー、フェノールホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂またはベンゼンホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂であることができる。スルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーが好ましい(copolymer copolymer being preferred)。これらの樹脂はゲル形、多孔性形または核添加形で使用できる。これらの樹脂は狭いまたは広い粒径分布を有することができる。これらの樹脂は、スルホン架橋、シェル官能化することも可能であり、およびまたはベンゼン環1個当たり1個を超えるスルホン酸基を含有できる。およびこれらの樹脂は、単独でまたは2つ以上組み合わせて使用することができる。
【0022】
本発明で使用され得る酸化防止剤としては、可溶性酸化防止剤および結合酸化防止剤が挙げられる。可溶性酸化防止剤は、これらを水に溶解させて、次に水溶性酸化防止剤を促進イオン交換樹脂と混合することによって、促進イオン交換樹脂に適用することができる。過剰な液体が樹脂から排出されるとき、促進イオン交換樹脂が「水濡れ」状態のままであれば、酸化防止剤の一部が促進イオン交換樹脂によって吸収された水中に保持される。いくつかの場合において、所望ならば、可溶性酸化防止剤は使用前に促進イオン交換樹脂から除去することができる;このような場合、酸化防止剤は、洗浄することによって使用前に促進イオン交換樹脂から除去され得る。
【0023】
結合酸化防止剤は、酸化防止剤をイオン交換樹脂のスルホン酸基に結合させるようにする官能基を含有する。たとえば2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾールは、イオン交換樹脂のスルホン酸基に強く結合する、弱塩基であるアミン基を含有し、強酸を使用することまたは強酸基を中和することによってのみすすぎ落とすことができる(中和は、イオン交換樹脂を強酸性触媒として使用不能にするであろう)。
【0024】
本発明で有用な酸化防止剤は、時間に対する酸化によるイオン交換樹脂の劣化を遅延させる物質であり、たとえば米国特許第4,973,607号明細書に記載されているものを挙げることができる。加えて、本明細書で使用する酸化防止剤は、Dexter et al.,Encyclopedia of Polymer Science and Technology,Copyright(登録商標)2002 by John Wiley & Sons,Inc.;Thomas et al.,Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,Copyright C 2002 by John Wiley & Sons;Ash,Michael and Irene,The Index of Antioxidants and Antiozonants,Copyright 1997 by Gower;Denisov,E.T.,Handbook of Antioxidants,Copyright 1995 by CRC Press;およびIndex of Commercial Antioxidants and Antiozonants,Copyright 1983 by Goodyear Chemicalsに記載されているものが挙げられ、そのすべては参照により本明細書に組み入れられている。
【0025】
本発明で使用され得る酸化防止剤としては、たとえば単環もしくは(of)多環フェノール、アミン、ジアミン、ヒドロキシルアミン、チオエステル、ホスファイト、キノリン、ベンゾフラノンまたはこれらの混合物が挙げられる。酸化防止剤は、とりわけ結合または共重合型の酸化防止剤が使用される場合、処理済み促進イオン交換樹脂が目的とされる化学的方法において好ましくは非反応性であるべきである。本明細書で使用され得る他の考えられる型の酸化防止剤は、米国特許第4,973,607号に開示されている。
【0026】
本発明の実施で有用な酸化防止剤の他の例としては連邦規則集、食品および医薬品、21CFR182.1 サブパートD−化学食品保存料、リファレンス 21CFR パート170−199、2001年4月1日改訂(the Code of Federal Regulations,for Food and Drugs,21CFR182.1 Subpart D−Chemical Preservatives,reference 21CFR Parts 170−199,Apr.1,2001 revision)に基づいて、一般に安全と認められる(generally recognized as safe)(GRAS)物質である多様な化学保存料が挙げられる。イオン交換樹脂用の好ましい化学保存料は、保管を改善するために、ならびに長期保管のためのカラースローおよびTOCを制御するために使用される。通例の強酸イオン交換樹脂への該添加剤の添加は、前記樹脂を安定化させて、視覚的および抽出カラースローをどちらも低減させて、TOC浸出物の発生を遅延させる。酸化防止剤または保存料は、GRASであるか、または食品に間接的に接触する用途で使用するための試験および承認がなされているかのどちらかである。連邦規則集21、パート182.1 サブパートD(the Code of Federal Regulations 21,Part 182.1 Subpart D)に記載されているような、または食品との間接的接触について商業的に試験および承認がなされているようなGRAS化学保存料の例は、表Iに見出すことができる。これらとしては、たとえばアスコルビン酸、エリソルビン酸、ソルビン酸、チオジプロピオン酸、ソルビン酸カルシウム、チオジプロピオン酸ジラウリル、メタ重亜硫酸カリウム、ソルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、トコフェロールが挙げられる。
【0027】
促進イオン交換樹脂は、好ましくは使用前に樹脂の酸化を効果的に防止するのに十分な酸化防止剤を含有すべきである。結合酸化防止剤が使用される場合、促進イオン交換樹脂は、酸性樹脂の官能性が損なわれるほど多くの酸化防止剤を含有すべきではない。許容される範囲は、促進イオン交換樹脂の0.001から10重量パーセントの酸化防止剤の含有率を包含してよい。好ましい酸化防止剤含有率の範囲は、0.01から2.0重量パーセントであり得る。
【0028】
酸化防止剤を促進イオン交換樹脂に適用するために、多様な方法が使用され得る。たとえば一実施形態において、酸化防止剤は、最初に酸化防止剤の水溶液を調製して、次に溶液中に存在する酸化防止剤の少なくとも一部が促進イオン交換樹脂によって吸着されるまで、酸化防止剤水溶液を促進イオン交換樹脂と混合することによって、促進イオン交換樹脂に適用され得る。過剰な溶液は次に、処理済み促進イオン交換樹脂から排出される。
【0029】
酸化防止剤水溶液は、溶液を形成するために必須ではないか、または必要であるかのどちらかの他の成分を含有し得る。たとえば酸化防止剤2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾールは、水に難溶性であり、したがって酸、たとえば塩酸または硫酸は、好ましくは酸化防止剤が可溶性となるようにアミン塩を形成するために使用される。
【0030】
処理済み促進イオン交換樹脂は、酸化防止剤溶液が適用された後に、酸化防止剤の未吸収要素を樹脂から除去するためにすすいでよい。すすぎステップは、結合酸化防止剤、たとえば2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾールが使用される場合に;または酸化防止剤溶液が、処理済み促進イオン交換樹脂の続いての使用において問題を引き起こし得る他の成分も含有する場合に、特に望ましい。たとえば2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾールの塩酸塩を含有する溶液によって促進イオン交換樹脂を処理するとき、塩酸が放出され得る。このため、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾールの塩酸塩を促進イオン交換樹脂に適用した後に、安定化された促進イオン交換樹脂から塩酸をすすぐことは好ましいことがある。
【0031】
本発明の処理済み促進イオン交換樹脂は、触媒が使用され、最終的な最終用途にかかわらず触媒酸化を防止する必要がある多様な化学物質製造方法において使用され得る。このような方法としては、たとえばフェノールとケトンの縮合反応;フェノール/アセトン製造;フェノールまたはクレゾールのアルキル化を挙げることができる。本発明の酸化防止剤は、カラーおよび酸スローが問題となり得る方法において有用であり、最終的により高い製品品質につながる、より清浄で色度の低い溶媒を生じる可能性および酸放出の低減を与える。
【0032】
安定化された処理済み促進イオン交換樹脂は、好ましくは、酸性触媒の存在下で2モルのフェノールを1モルのアセトンと縮合することによって商業的に調製される、2価フェノール2,2ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン(普通は「ビスフェノールA」と呼ばれる)を製造する方法で使用される。1モルの水が同時に製造される。ビスフェノールA方法は周知の方法であり、たとえば米国特許第4,400,555号;第6,703,530号;第6,307,111号;第6,465,697号;および第6,737,551号明細書に記載されている。
【0033】
本発明の強酸処理済み促進イオン交換樹脂は概して、上記の酸化防止剤による処理後に、低いカラースローおよび低いTOC浸出物のどちらも示す。このような利点は、たとえば最長6カ月にわたって保管された後に、カラースローおよびTOC浸出物の著しい増加なしに示される。
【0034】
以下の実施例は、本発明を説明するために本明細書に包含されており、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0035】
試験用の樹脂の調製:
清浄な開始ベースラインを確立するために、プラント方法からいずれの残留酸も除去する目的で、すべての触媒樹脂に同じ調整手順を施す。清浄なガラス製クォート瓶に新しいイオン交換樹脂350mLを充填し、脱イオン水500mLで3回バッチ洗浄する。次に樹脂を、FMIポンプおよび加熱浴を装着した直径1インチのジャケット付きガラスカラムに加える。加熱浴によってカラムを加熱して60℃に維持する。脱イオン水4Lをカラムに15mL/分にて圧送することによって触媒樹脂を逆洗する。カラムに脱イオン水が4リットル通過した後、樹脂を清浄なガラス製クォート瓶に移し、今度はミリQ水を用いて再度バッチ洗浄を3回行う。最後のバッチ洗浄の後、ハウスバキュームを使用して樹脂を60秒間吸引乾燥させる。これで試験用の新たに洗浄済み樹脂が準備される。
【0036】
促進剤の添加:
テフロン製撹拌棒を装着した清浄な1L丸底フラスコに調整済み樹脂150gを十分な脱イオン水と共に流体撹拌のために移す。システアミン−95 1.50gを脱イオン水13.5gに添加することによって促進剤溶液を調製する。混合物を溶解するまで激しく撹拌して、次に添加漏斗に移す。促進剤溶液を触媒樹脂に室温にて撹拌しながら60分間にわたって滴加する。促進剤溶液の添加後、添加漏斗を脱イオン水で丸底フラスコ中にすすぎ入れる。促進剤添加の終了後、触媒樹脂をさらに30分間撹拌する。30分後、樹脂を脱イオン水500mLで3回(バッチ方式)洗浄していずれの残留促進剤溶液も除去して、次にサンプルを清浄なクォート瓶に移す。添加された樹脂を再度、ミリQ水500mLで3回バッチ洗浄して、標準脱イオン水のいずれの効果も除去する。次に処理済み樹脂の50gサンプルを清浄な8オンス瓶に移し、後述する安定性試験を受けさせる。
【0037】
酸化防止剤の添加:
テフロン製撹拌棒を装着した清浄な1L丸底フラスコに調整済み樹脂150gを十分な脱イオン水道水と共に流体撹拌のために移す。エタノックス−703 1.0gを脱イオン水113.6gに96% H
2SO
4 0.7gと共に添加することによって、酸化防止剤溶液を調製する。混合物を溶解するまで激しく撹拌する。丸底フラスコ内の調整済み樹脂に調製したエタノックス−703溶液11.53gを加える。酸化防止剤の樹脂上への添加を行い、同時に丸底フラスコ内で樹脂を室温にて30分間撹拌する。30分後、樹脂を脱イオン水500mLで3回バッチ洗浄していずれの残留酸化防止剤溶液も除去して、清浄なクォート瓶に移す。添加された樹脂を再度、ミリQ水500mLで3回バッチ洗浄して、標準脱イオン水のいずれの効果も除去する。次に処理済み樹脂の50gサンプルを清浄な8オンス瓶に移し、後述する安定性試験を受けさせる。
【0038】
樹脂サンプルに安定性試験を行うための一般的手順:
清浄な8オンス瓶に調整済み樹脂50gを移す。(樹脂固体に応じて)正確な量のミリQ水を樹脂に加える。瓶を密閉して、オートシェーカーに140rpmにて20分間置く。振とう後、清浄なガラス漏斗およびワットマン濾紙を使用して、樹脂およびミリQ水を分離する。エージング後に試験されるサンプルでは、樹脂を30Cとして必要量の時間にわたって保管して(下の表を参照)、続いて清浄なガラス漏斗およびワットマン濾紙を使用して、樹脂とミリQ水を分離する。ミリQ水を清浄な4オンス瓶中に濾過して、触媒樹脂を吸引乾燥して8オンス瓶に保管する。次に流出したミリQ水をpHおよび導電率について試験する。これらの値を下の表1に記録する。
【表1】