(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186377
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H05B 33/02 20060101AFI20170814BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
H05B33/02
H05B33/14 A
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-552782(P2014-552782)
(86)(22)【出願日】2012年12月18日
(86)【国際出願番号】JP2012082773
(87)【国際公開番号】WO2014097387
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2015年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】東家 安伸
【審査官】
小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−322490(JP,A)
【文献】
特開2010−129184(JP,A)
【文献】
特開2008−066027(JP,A)
【文献】
特開2005−063926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50 − 51/56
H01L 27/32
H05B 33/00 − 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する第1電極、発光層を有する有機機能層、及び第2電極を有する第1透光性基板と、
前記第1透光性基板のうち前記第1電極が位置する第1面とは逆側の面である第2面側が固定されており、前記第1透光性基板よりも曲げ剛性が高い第2透光性基板と、
を備え、
前記第1透光性基板の前記第2面には複数の第1凹凸が形成されており、
前記第2透光性基板のうち前記第1透光性基板に接する面には複数の第2凹凸が形成されており、
前記第2凹凸の頂点の間隔は、前記第1凹凸の頂点の間隔よりも狭い発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
前記第1凹凸の頂点は、前記第2透光性基板に接する発光装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発光装置において、
前記第2凹凸及び前記第1凹凸の境界に空隙を有する発光装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記第1凹凸は規則的である発光装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記第2凹凸の頂点の間隔の分散は、前記第1凹凸の頂点の間隔の分散よりも大きい発光装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記第1透光性基板は絶縁性のフィルムである発光装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記第1透光性基板の屈折率と前記第1電極の屈折率の差は0.5以下である発光装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記第2透光性基板の屈折率は前記第1透光性基板の屈折率よりも低い発光装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記第2透光性基板のうち前記第1透光性基板に対向する面に形成された凹凸形成層を有しており、
前記第2凹凸は前記凹凸形成層に形成されている発光装置。
【請求項10】
請求項9に記載の発光装置において、
前記第1透光性基板の屈折率は前記凹凸形成層の屈折率よりも高い発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光装置の一つに、有機EL(Organic Electroluminescence)を用いるものがある。このような発光装置の課題の一つに、有機ELで発生した光のうち外部に放射される光の割合(光取り出し効率)を向上させることがある。
【0003】
例えば非特許文献1には、プラスチックフィルム上に有機層を形成したものをガラス基板に搭載する際に、プラスチックフィルムのうちガラス基板に対向する面に凹凸を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kazuyuki yamae, 他6名、"High-Efficiency White OLEDs with Built-up Outcoupling Substrate", P694, SID 2012 DIGEST
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載の構造では、有機層を形成した第1基板(例えばフィルム)を、この基板よりも曲げ剛性が高い別の第2基板(例えばガラス基板)に貼り付ける際、第1基板が曲げられることがある。本発明者は、この場合、第1基板が曲げられたことに起因して発光量に面内バラツキが生じる可能性があると考えた。本発明が解決しようとする課題としては、発光装置の発光量の面内バラツキを低下させることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、第1透光性基板と、
前記第1透光性基板の第1面側に形成され、透光性を有する第1電極と、
前記第1電極を介して前記第1透光性基板とは逆側に位置し、発光層を有する有機機能層と、
前記有機機能層を介して前記第1電極とは逆側に位置する第2電極と、
前記第1透光性基板のうち前記第1面とは逆側の面である第2面側が固定されており、前記第1透光性基板よりも曲げ剛性が高い第2透光性基板と、
を備え、
前記第1透光性基板の前記第2面には複数の第1凹凸が形成されており、
前記第2透光性基板のうち前記第1透光性基板に対向する面には複数の第2凹凸が形成されている発光装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0008】
【
図1】実施形態に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【
図2】
図1に示した発光装置の製造方法を示す断面図である。
【
図3】実施例1に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【
図4】実施例2に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【
図5】実施例3に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【
図6】実施例4に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、以下の説明における透光性は、有機機能層120が有する発光層が発光する光の少なくとも一部を透光することを意味する。
【0010】
図1は、実施形態に係る発光装置10の構成を示す断面図である。発光装置10は、第1透光性基板100、第1電極110、有機機能層120、第2電極130、及び第2透光性基板140を備えている。第1電極110は、第1透光性基板100の第1面側に形成され、透光性を有している。有機機能層120は、第1電極110を介して第1透光性基板100とは逆側に位置している。有機機能層120は発光層を有している。第2電極130は、有機機能層120を介して第1電極110とは逆側に位置している。第2透光性基板140には、第1透光性基板100のうち上記した第1面とは逆側の面である第2面が固定されている。第2透光性基板140は、第1透光性基板よりも曲げ剛性が高い。そして、第1透光性基板100の第2面には複数の第1凹凸102が形成されており、第2透光性基板140のうち第1透光性基板100に対向する面には複数の第2凹凸142が形成されている。本実施形態において、有機機能層120で発光した光は、第2透光性基板140側から取り出される。
【0011】
第1凹凸102は、例えば規則性を持って形成されている。第1凹凸102は、例えば多角錘や多角柱を複数並べたものである。これに対して第2凹凸142は規則性を有していないのが好ましい。すなわち第2凹凸142の頂点の間隔の分散は、第1凹凸102の頂点の間隔の分散よりも広いのが好ましい。また、第2凹凸142の頂点の間隔は、第1凹凸102の頂点の間隔よりも狭いのが好ましい。
【0012】
また、第2凹凸142の深さ(頂部と底部の高さの差)は第1凹凸102の深さよりも小さいのが好ましい。例えば第1凹凸102の深さは1μm以上200μm以下であり、第2凹凸142の深さは0.2μm以上10μm以下である。
【0013】
本実施形態において、第1透光性基板100は、可撓性を有しているのが好ましい。第1透光性基板100は、例えば樹脂フィルムなどの絶縁性のフィルムである。第1透光性基板100が樹脂フィルムである場合は、第1透光性基板100を構成する樹脂は、例えばPET(Polyethylene terephthalate)、PES(Poly ether sulfone)、又はPEN(Polyethylene naphthalate)であるが、これらに限定されない。
【0014】
第1電極110は、例えばITO(Indium Thin Oxide)やIZO(インジウム亜鉛酸化物)などによって形成された透明電極である。ただし、第1電極110は、光が透過する程度に薄い金属薄膜であっても良い。第1電極110の屈折率n
1と第1透光性基板100の屈折率n
2の差は、例えば0.5以下である。すなわち、(n
1−0.5)≦n
2≦(n
1+0.5)である。なお、n
1はn
2と同等であるのが好ましい。なお、(n
1−0.2)≦n
2≦(n
1+0.2)であってもよい。なお、PET、PES、及びPENの屈折率は、それぞれ1.6,1.7,1.8である。またITOやIZOの屈折率は、1.8〜2.0程度である。
【0015】
有機機能層120は、少なくとも正孔注入層、発光層、及び電子注入層を有している。有機機能層120の各層は、蒸着法により形成されていても良いし、塗布法(インクジェット法を含む)で形成されていても良い。
【0016】
第2電極130は、例えばAg膜やAl膜などの金属膜である。
【0017】
第2透光性基板140は、例えばガラス基板や樹脂基板である。第2透光性基板140の屈折率n
3は、第1透光性基板100の屈折率n
2よりも低い。ただし、屈折率n
3は屈折率n
2と同程度であっても良い。ガラス基板に用いられるガラスの屈折率は、例えば1.5である。
【0018】
図2は、
図1に示した発光装置10の製造方法を示す断面図である。まず、
図2(a)に示すように、支持台200上に第1透光性基板100を搭載する。次いで、第1透光性基板100の第1面上に第1電極110を形成する。次いで、第1電極110上に有機機能層120を形成する。次いで、有機機能層120上に第2電極130を形成する。
【0019】
その後、
図2(b)に示すように、第1透光性基板100を支持台200上から取り出す。次いで、第1透光性基板100の第2面に、第1凹凸102を形成する。第1凹凸102は、例えば第1透光性基板100の第2面に型を押し付けることにより形成される。なお、第1透光性基板100の第2面に、第1凹凸102を形成するための層を設けても良い。また、第1凹凸102は、第1透光性基板100の第1面に第1電極110を形成する前であっても良い。
【0020】
上記した工程とは別に、第2透光性基板140のうち第1透光性基板100を搭載する面に、第2凹凸142を形成する。第2凹凸142は、例えばサンドブラストやエッチングなどを用いて形成される。そして、第2凹凸142が形成された後の第2透光性基板140に、第1透光性基板100を、接着剤等を用いて搭載する。
【0021】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。本実施形態によれば、第1透光性基板100の第2面には、第1凹凸102が形成されている。第1凹凸102が形成されることにより、有機機能層120の発光層で発光した光は、第1透光性基板100の屈折率が第2透光性基板140の屈折率より高い場合や、第1透光性基板100の屈折率と第1電極110の屈折率の差が0.5以下の場合であっても、第1透光性基板100から外部に出射しやすくなる。
【0022】
一方、第1透光性基板100を第2透光性基板140に取り付ける際に、第1透光性基板100が曲げられることがある。この場合、第1透光性基板100上の有機機能層120の均一性が低下し、第1透光性基板100から取り出される光に、面内バラツキが生じる可能性が出てくる。この可能性は、第1透光性基板100がフィルムである場合、特に大きくなる。
【0023】
これに対して本実施形態では、第2透光性基板140のうち第1透光性基板100に対向する面には第2凹凸142が形成されている。このため、第1透光性基板100から取り出される光に面内バラツキがあっても、このばらつきは、光が第2凹凸142を透過する際に緩和される。従って、発光装置10から取り出される光に面内バラツキが生じることを抑制できる。また、第1透光性基板100から出射する光にモアレが生じていても、このモアレは第2透光性基板140を透過する際に目立たなくなる。
【0024】
また、第2凹凸142が形成されることにより、第1透光性基板100を出射した光が第2透光性基板140に入射する際に、光の入射角が臨界角を超えにくくなる。従って、発光装置10の光取り出し効率は向上する。
【0025】
また、第2凹凸142の頂点の間隔の分散は、第1凹凸102の頂点の間隔の分散よりも広い場合、上記した効果は特に顕著になる。
【0026】
また、第2凹凸142の頂点の間隔が第1凹凸102の頂点の間隔よりも狭い場合、光が第1凹凸102を透過する際に緩和し切れなかった光量の面内バラツキも、光が第2凹凸142を透過する際に緩和することができる。よって、発光装置10から取り出される光に面内バラツキが生じることをさらに抑制できる。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
図3は、実施例1に係る発光装置10の構成を示す断面図である。実施例1に係る発光装置10は、第2透光性基板140が凹凸形成層144を有している点を除いて、実施形態に示した発光装置10と同様の構成を有している。
【0028】
凹凸形成層144は、第2透光性基板140のうち第1透光性基板100に対向する面に形成されている。第2凹凸142は凹凸形成層144に形成されている。凹凸形成層144は、例えば第2凹凸142を有するフィルムであっても良いし、ガラスペーストを焼成した層であっても良いし、無機粒子(例えばSiO
2の粒子)を第2透光性基板140の一面に固定したものであっても良い。凹凸形成層144としてフィルムを用いる場合、このフィルムの材料は、例えばPET、PES、又はPENなどの樹脂である。凹凸形成層144の屈折率は、第1透光性基板100の屈折率よりも低いのが好ましい。
【0029】
本実施例によれば、実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第2凹凸142を凹凸形成層144に形成しているため、第2凹凸142を容易に形成することができる。
【0030】
(実施例2)
図4は、実施例2に係る発光装置10の構成を示す断面図である。本実施例に係る発光装置10は、以下の点を除いて、実施形態に示した発光装置10と同様の構成である。
【0031】
まず、有機機能層120は、正孔注入層121、正孔輸送層122、発光層123、及び電子注入層124をこの順に積層させた構成を有している。
【0032】
また、第1電極110、正孔注入層121、正孔輸送層122、及び発光層123の積層構造は、複数の領域に分割されている。詳細には、これらの積層構造は、紙面に対して垂直な方向に、互いに平行に延伸している。隣り合う積層構造は、隔壁150によって互いに分離されている。隔壁150は、例えばポリイミドなどの感光性の樹脂であり、露光及び現像されることによって、所望のパターンに形成されている。なお、隔壁150はポリイミド以外の樹脂、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂であっても良い。
【0033】
そして、隣り合う発光層123は、互いに異なる発光スペクトル、例えば互いに異なる最大ピーク波長を有している。具体的には、発光層123としては、赤色の光を発光する層、緑色の光を発光する層、及び青色を発光する層が、繰り返し配置されている。このため、発光装置10は、平面視で、赤色の光を発光する線状の領域、緑色の光を発光する線状の領域、及び青色を発光する線状の領域が繰り返し配置されていることになる。
【0034】
一方、電子注入層124及び第2電極130は複数の発光層123に共通の電極として形成されており、隔壁150上にも形成されている。
【0035】
また、第1電極110の一部は隔壁150によって覆われている。そして第1電極110のうち隔壁150で覆われている部分には、補助電極112が形成されている。補助電極112は、例えばAg又はAlなどの金属を用いて形成されており、第1電極110よりも抵抗が低い。補助電極112は、第1電極110の見かけ上の抵抗を下げるための補助電極として機能する。
【0036】
本実施例によっても、実施形態と同様の効果を得ることができる。また、電源に接続する第1電極110を選択し、かつ選択した第1電極110に入力する電力量を制御することにより、発光装置10を所望の色調で発光させることができる。
【0037】
なお本実施例において、発光層123は、複数の色を発光するための材料を混ぜることにより、白色等の単一の発光色で発光するように構成されていても良いし、異なる色を発光する層(例えば赤色を発光する層、緑色を発光する層、及び青色を発光する層)を複数積層させていてもよい。
【0038】
(実施例3)
図5は、実施例3に係る発光装置10の構成を示す断面図である。本実施例に係る発光装置10は、第1電極110が共通電極になっており、有機機能層120が発光領域別の電極になっている点を除いて、実施例2に係る発光装置10と同様の構成である。詳細には、電子注入層124及び第2電極130が複数の発光層123に個別に設けられており、かつ第1電極110が複数の発光層123に共通の電極になっている。
【0039】
本実施例によっても、実施例2と同様の効果を得ることができる。
【0040】
(実施例4)
図6は、実施例4に係る発光装置10の構成を示す断面図である。本実施例に係る発光装置10は、封止部材160を備えている点を除いて、実施形態に示した発光装置10、及び実施例1〜3に係る発光装置10のいずれかと同様の構成である。
【0041】
詳細には、第2透光性基板140の平面形状は、第1透光性基板100の平面形状よりも大きい。そして平面視において、第2透光性基板140は、第1透光性基板100の全周から食み出している。そして封止部材160は、第2透光性基板140との間で第1透光性基板100、第1電極110、有機機能層120、及び第2電極130を封止している。
【0042】
封止部材160は、例えば石英、ガラス、金属、またはプラスチックなどの樹脂によって形成されている。封止部材160は、平板の縁を第2透光性基板140に向けて略90° 折れ曲がった形状を有している。そして封止部材160は、折れ曲がった部分の端面が接着層162を介して第2透光性基板140に固定されている。なお、封止部材160及び第2透光性基板140で囲まれた空間には、特定の気体又は液体が充填されている。
【0043】
本実施例によっても、実施形態及び実施例1〜3のいずれかと同様の効果を得ることができる。また、これらの効果を得つつ、第1透光性基板100及びその上の積層体を封止することができる。
【0044】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。