特許第6186427号(P6186427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6186427抗菌性ファージのカクテルを含む組成物及び細菌感染症を処置するためのその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186427
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】抗菌性ファージのカクテルを含む組成物及び細菌感染症を処置するためのその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/76 20150101AFI20170814BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20170814BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20170814BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20170814BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20170814BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20170814BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170814BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20170814BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   A61K35/76ZNA
   A61K9/08
   A61K47/02
   A61K47/28
   A61K45/00
   A61P31/04
   A61P43/00 121
   A61P17/00 101
   A61P17/02
【請求項の数】33
【全頁数】62
(21)【出願番号】特願2015-501614(P2015-501614)
(86)(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公表番号】特表2015-512384(P2015-512384A)
(43)【公表日】2015年4月27日
(86)【国際出願番号】PT2013000016
(87)【国際公開番号】WO2013141730
(87)【国際公開日】20130926
【審査請求日】2016年3月22日
(31)【優先権主張番号】61/612,531
(32)【優先日】2012年3月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511189218
【氏名又は名称】テクニファー−インダストリア テクニカ ファーマシューティカ,エス.エー.
(73)【特許権者】
【識別番号】509302467
【氏名又は名称】テクノファージ, インベスティガサン エ デセンボルビメント エム ビオテクノロジア,エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100177714
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昌平
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(72)【発明者】
【氏名】アウベス メンデス ジョアン ジョアン ドゥアルテ
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス レアンドロ クララ イザベル
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー コルテ−レアル ソフィア
【審査官】 佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6058540(JP,B2)
【文献】 特開2016−104011(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/090542(WO,A1)
【文献】 Appl. Environ. Microbiol., 2009, Vol.75, pp.4483-4490
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00−35/768
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々の株が配列番号1及び配列番号2からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するゲノムを有し、かつ、黄色ブドウ球菌に対して抗菌活性を示す、第1及び第2の精製されたバクテリオファージ株;
配列番号3のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するゲノムを有し、かつ、緑膿菌に対して抗菌活性を示す、第3の精製されたバクテリオファージ株;
配列番号4のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するゲノムを有し、かつ、緑膿菌に対して抗菌活性を示す、第4の精製されたバクテリオファージ株;及び
配列番号5のヌクレオチド配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するゲノムを有し、かつ、アシネトバクター・バウマンニに対して抗菌活性を示す、第5の精製されたバクテリオファージ株
を含む組成物。
【請求項2】
第1、第2、第4及び第5のバクテリオファージ株の各々が、第3のバクテリオファージ株の約10倍の量で組成物中に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の組成物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項4】
局所適用用に製剤化されている、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
0.05MのTris−HCl、0.1MのNaCl及び10mMのMgSO.7HOを含む滅菌緩衝液をさらに含む、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
アンプルに含まれる、請求項4又は5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
抗生物質剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤、局部麻酔薬、増殖因子、及びコルチコステロイドからなる群から選択される追加的な薬剤をさらに含む、請求項3〜6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
追加的な薬剤が、アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び/又は黄色ブドウ球菌に対して抗菌活性を有する抗生物質剤である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
抗生物質剤が、黄色ブドウ球菌に対して抗菌活性を有する、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
有傷皮膚の領域と関連がある細菌感染症の処置において使用するためのものである、請求項4〜9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
有傷皮膚の領域が、糖尿病性潰瘍、皮膚潰瘍、慢性潰瘍、熱傷創傷, 蜂巣炎性びらん、丹毒病変、褥瘡性潰瘍及び褥瘡からなる群から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
領域への局所投与の際、前記領域の1cm当たり10〜1013個のファージ粒子の量で第3のバクテリオファージ株を提供するように製剤化される、請求項10又は11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
領域への局所投与の際、前記領域の1cm当たり10〜10個のファージ粒子の量で第3のバクテリオファージ株を提供するように製剤化される、請求項10又は11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
領域への局所投与の際、前記領域の1cm当たり10個のファージ粒子の量で第3のバクテリオファージ株を提供するように製剤化される、請求項10又は11に記載の医薬組成物。
【請求項15】
領域への局所投与の際、前記領域の1cm当たり10個のファージ粒子の量で第3のバクテリオファージ株を提供するように製剤化される、請求項10又は11に記載の医薬組成物。
【請求項16】
領域への局所投与の際、前記領域の1cm当たり10個のファージ粒子の量で第3のバクテリオファージ株を提供するように製剤化される、請求項10又は11に記載の医薬組成物。
【請求項17】
局所適用用に製剤化されており、有傷皮膚の領域と関連がある細菌感染症の処置において使用するためのものであり、前記領域への局所投与の際、前記領域の1cm当たり10個のファージ粒子量で第3のバクテリオファージ株を提供するように製剤化される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
有傷皮膚の領域が糖尿病性潰瘍である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
請求項18のいずれかに記載の医薬組成物を含む、それを必要とする対象における細菌感染症の処置剤又は防止剤。
【請求項20】
細菌感染症が、アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌の1又は2以上による感染症である、請求項19に記載の処置剤又は防止剤。
【請求項21】
医薬組成物が局所的に投与される、及び/又は感染症が、黄色ブドウ球菌による感染症である、請求項19又は20に記載の処置剤又は防止剤。
【請求項22】
対象が哺乳動物又はヒトである、請求項1921のいずれかに記載の処置剤又は防止剤。
【請求項23】
細菌感染症が慢性潰瘍、熱傷創傷、又は糖尿病性足感染症と関連があり、及び/又は細菌感染症が、蜂巣炎に関連するびらん、丹毒病変、褥瘡性潰瘍、及び褥瘡から選択される有傷皮膚の領域と関連がある、請求項1922のいずれかに記載の処置剤又は防止剤。
【請求項24】
糖尿病性足感染症が皮膚潰瘍を含医薬組成物が前記皮膚潰瘍に局所的に投与される、請求項23に記載の処置剤又は防止剤。
【請求項25】
投与が、潰瘍の機械的デブリードマン後に行われる、及び/又は
投与が、包帯、点滴注入デバイス及び陰圧閉鎖療法デバイスの少なくとも1つの使用を含む、請求項24に記載の処置剤又は防止剤。
【請求項26】
最初の24時間は4時間毎又は6時間毎に投与されるためのものである、請求項24又は25に記載の処置剤又は防止剤。
【請求項27】
最初の24時間の後、少なくともさらに3日間又は4日間は12時間毎又は24時間毎に投与されるためのものである、請求項26に記載の処置剤又は防止剤。
【請求項28】
糖尿病性足感染症の標準的な療法と組み合わせて使用するためのものである、請求項24〜27のいずれかに記載の処置剤又は防止剤。
【請求項29】
標準的な療法が、細胞外マトリックス置換療法、湿潤創傷療法、陰圧閉鎖療法、動脈血管再生療法、高圧酸素療法、抗生物質剤の投与及び増殖因子の投与からなる群から選択される、請求項28に記載の処置剤又は防止剤。
【請求項30】
湿潤創傷療法が、裏面が粘着性のフィルム、シリコーンでコーティングされた発泡体、ヒドロゲル及び/又はヒドロコロイドの使用を含む、及び/又は
細胞外マトリックス置換療法が生物工学的に作られた組織の使用を含む、及び/又は
抗生物質剤がアシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び/又は黄色ブドウ球菌に対して抗菌活性を有する、及び/又は
増殖因子が、血小板由来増殖因子、顆粒球コロニー刺激因子、上皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、神経増殖因子及び血管内皮増殖因子からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項29に記載の処置剤又は防止剤。
【請求項31】
抗生物質剤の投与が全身投与を含む、請求項30に記載の処置剤又は防止剤。
【請求項32】
増殖因子の投与が局所投与を含む、請求項30に記載の処置剤又は防止剤。
【請求項33】
糖尿病性足感染症の非標準的な療法と組み合わせて使用されるためのものであり、前記糖尿病性足感染症が標準的な療法に難治性である、請求項24〜27のいずれかに記載の処置剤又は防止剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.配列表
本出願は、EFS−Webを介してASCIIフォーマットで提出した配列表を含有し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。2012年3月14日に作成された前記ASCIIのコピーは、16395105.txtという名称であり、574,104バイトのサイズである。
【0002】
2.発明の分野
本発明は、細菌感染症、特に糖尿病性足感染症などの慢性潰瘍を処置(treatment)及び制御(control)するためのファージ療法分野を対象とする。より具体的には、本発明は、バクテリオファージ株F44/10、F125/10、F770/05、F510/08、F1245/05、他のファージ及び/又はそのバリアントの新規なカクテル、並びに例えば黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)及び/又はアシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)によって引き起こされる糖尿病性足感染症に関連する皮膚潰瘍を含めた細菌感染症の処置及び防止(prevention)においてそれを使用する方法を対象とする。このカクテルは、単独で、又は慢性潰瘍用の他の療法、例えば、抗生物質、増殖因子若しくは他の標準的及び非標準的な療法とのさらなる組合せで、医薬組成物として使用される。
【背景技術】
【0003】
3.背景
糖尿病性足感染症(DFI, diabetic foot infection)は、糖尿病(DM, diabetes mellitus)の頻繁に起こる重篤な合併症であり、非外傷性下肢切断の世界的な主因である(Jeffcoate WJ, et al. 2003. Lancet 361:1545-1551)。現在の臨床診療では、DFIの処置は、デブリードマン及び全身的抗生物質を含む(例えば、Lipsky BA, et al. 2004. Clin Infect Dis. 39:885-910を参照されたい)。それにもかかわらず、不十分な血管新生及び局部微小環境のために、抗生物質濃度は、多くの場合治療濃度以下である(Lipsky BA, et al. 2009. Clin Infect Dis. 49:1541-1549)。さらに、多剤耐性生物、例えば、メチシリン抵抗性黄色ブドウ球菌、並びに汎薬剤抵抗性非醗酵陰性桿菌の発生率増大は、増え続ける地域及び入院中の患者において、転帰を脅かしている(Mendes JJ, et al. 2012. Diabetes Res Clin Pract. 95(1):153-161;Tascini C, et al. 2011. Diabetes Res Clin Pract 94 (1):133-139)。したがって、DFIを処置、制御及び管理するための新しいストラテジーを特定する必要性が依然として存在する。
【0004】
局所処置は、全身的有害作用を回避するという利点を提供し、これによって、標的部位濃度が増大され、かつ全身的療法に利用できない薬剤の使用が可能になる。機械的なデブリードマンは局所処置を改善し、これは、この切除が、存在する細菌の生物汚染度を低減し、さらに局所抗菌性療法(TAT, topical antimicrobial therapy)に対する時間依存的治療濃度域を広げるからである(Wolcott RD, et al. 2010. J Wound Care 19:320-328)。それにもかかわらず、今までに、DFIを処置するのに有効であるということが証明されているTAT薬剤はない(Nelson EA, et al. 2006. Diabet Med 23:348-359)。
【0005】
バクテリオファージ(ファージ)は、特に細菌に感染し、細菌を溶解するウイルスである。ファージ療法、すなわち細菌感染性疾患の処置にファージウイルス全体を使用する方法は、Felix d'Herelleによって1920年代に導入された。しかし西洋では、1940年代に抗生物質が開発されたのを機に、ファージに基づく治療法への関心は減退した。この減退に寄与する最も重要な要因のうちの1つは、標準化された試験プロトコール及び産生方法がないことであった。ファージ療法試験に対する業界全体の標準を開発できなかったことが研究結果の文書化を妨げ、これが、ファージ療法の価値に関して、有効性に欠けているという認識及び信用性の問題につながった。ファージ産生における別の問題は、市販のファージ調製物の純度に関連しており、調製物は望まれない細菌性成分、例えば内毒素を含有していた。したがって、有害事象は、特に静脈内に調製物が与えられる患者において、調製物と関連があることが多かった。
【0006】
それにもかかわらず、東欧及びかつてのソビエト連邦では、抗生物質の利用が限られており、ファージ療法の開発及び使用が、抗生物質と共に又は抗生物質の代わりに続いた。さらに西洋では、多くの細菌の抗生物質抵抗性株の台頭と共に、ファージに基づく治療法への関心が戻ってきた。すなわち、たとえ新規なクラスの抗生物質が開発され得ても、その新しい薬物に対する抵抗性を細菌が最終的に発達させるという見通しによって、細菌感染症を制御、防止及び処置するための非化学療法的な手段の探索が強化された。
【0007】
溶菌性バクテリオファージは、特に十分な機械的なデブリードマンによって補完される場合に、DFIを処置するための解決策、例えば、新規なTAT薬剤としての使用を提供する。溶菌性細菌は、病原性細菌(多剤耐性と関連があるものでさえ)の溶解における特異性及び効率という利点を提供し得る(Rossney AS, et al. 1994. J Hosp Infect 26:219-234)。さらなる利点としては、ヒト及び動物に対して病原性がないこと(Burrowes B, et al. 2011. Expert Rev Anti Infect Ther 9:775-785)、バイオフィルム中の細菌に対する抗菌活性があること、並びに高細菌負荷であったとしても微好気性環境での活性があること(Azeredo J, et al. 2008. Curr Pharm Biotechnol 9:261-266)、並びに世界の一部の地域で一般に受容されるバクテリオファージ療法の安全性(Sulakvelidze A, et al., 2001, Antimicrob Agents Chemother. 45(3): 649-659)があることを挙げることができる。バクテリオファージ療法の最近の動物試験は、内部投与(McVay CS, et al. 2007. Antimicrob Agents Chemother 51:1934-1938)及び外部投与(Soothill JS. 1994. Burns 20:209-211;Wills QF, et al. 2005. Antimicrob Agents Chemother 49:1220-1221)の両方で、皮膚の細菌性疾患を治癒又は改善するその潜在能力を実証した。しかし、数時間より長い時間確立された感染症を治すためにバクテリオファージを使用することを支持する、発表されたエビデンスはほとんどない(Ryan EM, et al. 2011 J Pharm Pharmacol 63:1253-1264)。
【0008】
特に、ファージカクテルは、個々のファージの使用に利点、例えば、特定の細菌株に対する溶菌活性を増大させること、及び個々のバクテリオファージに対して抵抗性の細菌が出現する可能性を低下させることを与え得る。すなわち、異なるバクテリオファージをカクテルとして混合して、それらの性質を広げることができ、好ましくは、集団的により大きな抗菌性の活性スペクトル、例えば宿主域の拡大がもたらされ、これは、耐性発現は可能性が低い。それにもかかわらず、おそらく、貯蔵安定性を維持しながらバクテリオファージの様々な特異性を組み合わせるのが困難であるために、今までに、様々な細菌に対して抗微生物活性を有するファージカクテルはほとんど存在しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Jeffcoate WJ, et al. 2003. Lancet 361:1545-1551
【非特許文献2】Lipsky BA, et al. 2004. Clin Infect Dis. 39:885-910
【非特許文献3】Lipsky BA, et al. 2009. Clin Infect Dis. 49:1541-1549
【非特許文献4】Mendes JJ, et al. 2012. Diabetes Res Clin Pract. 95(1):153-161
【非特許文献5】Tascini C, et al. 2011. Diabetes Res Clin Pract 94 (1):133-139
【非特許文献6】Wolcott RD, et al. 2010. J Wound Care 19:320-328
【非特許文献7】Nelson EA, et al. 2006. Diabet Med 23:348-359
【非特許文献8】Rossney AS, et al. 1994. J Hosp Infect 26:219-234
【非特許文献9】Burrowes B, et al. 2011. Expert Rev Anti Infect Ther 9:775-785
【非特許文献10】Azeredo J, et al. 2008. Curr Pharm Biotechnol 9:261-266
【非特許文献11】Sulakvelidze A, et al., 2001, Antimicrob Agents Chemother. 45(3): 649-659
【非特許文献12】McVay CS, et al. 2007. Antimicrob Agents Chemother 51:1934-1938
【非特許文献13】Soothill JS. 1994. Burns 20:209-211
【非特許文献14】Wills QF, et al. 2005. Antimicrob Agents Chemother 49:1220-1221
【非特許文献15】Ryan EM, et al. 2011 J Pharm Pharmacol 63:1253-1264
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、病原性細菌に対してインビボで使用するための、治療及び/又は予防剤としての新規なファージ産物を開発する必要がある。また、DFIに対するより良い処置、特に局所処置が必要である。特に、黄色ブドウ球菌、緑膿菌及び/又はアシネトバクター・バウマンニを含めた、DFIの原因となる細菌を溶解できるバクテリオファージカクテルが必要である。本出願は、この必要性及び他の必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
4.発明の概要
一態様では、本発明は、ファージカクテルを含む組成物を対象とする。幾つかの実施形態では、本発明は、少なくとも2種の異なる単離されたバクテリオファージ株を含む組成物であって、株のそれぞれが、配列番号1(F44/10)、配列番号2(F125/10)、配列番号3(F770/05)、配列番号4(F510/08)及び配列番号5(F1245/05)からなる群から選択される核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有し、バリアントが、対応する核酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、かつ、黄色ブドウ球菌、緑膿菌及び/又はアシネトバクター・バウマンニの少なくとも1つに対して抗菌活性を示す、組成物を提供する。幾つかの実施形態では、少なくとも2種のバクテリオファージ株のうちの1つは、配列番号1若しくは配列番号2の核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有する株である。幾つかの実施形態では、少なくとも2種のバクテリオファージ株は、配列番号1及び配列番号2の核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有する株である。幾つかの実施形態では、組成物は、少なくとも第3のバクテリオファージ株をさらに含み、第3の株は、配列番号3、配列番号4及び配列番号5からなる群から選択される核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有する。幾つかの実施形態では、組成物は、少なくとも第3及び第4のバクテリオファージ株をさらに含み、第3及び第4の株のそれぞれは、配列番号3、配列番号4及び配列番号5からなる群から選択される核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有する。幾つかの実施形態では、少なくとも2種のバクテリオファージ株のうちの1つは、配列番号3若しくは配列番号4の核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有する株である。幾つかの実施形態では、少なくとも2種のバクテリオファージ株は、配列番号3及び配列番号4の核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有する株である。幾つかの実施形態では、組成物は、少なくとも第3のバクテリオファージ株をさらに含み、第3の株は、配列番号1、配列番号2及び配列番号5からなる群から選択される核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有する。幾つかの実施形態では、組成物は、少なくとも第3及び第4のバクテリオファージ株をさらに含み、第3及び第4の株のそれぞれは、配列番号1、配列番号2及び配列番号5からなる群から選択される核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有する。幾つかの実施形態では、少なくとも2種のバクテリオファージ株のうちの1つは、配列番号5の核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有する株である。幾つかの実施形態では、組成物は、少なくとも第3のバクテリオファージ株をさらに含み、第3の株は、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択される核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有する。幾つかの実施形態では、組成物は、少なくとも第3及び第4のバクテリオファージ株をさらに含み、第3及び第4の株のそれぞれは、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択される核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有する。
【0012】
幾つかの好ましい実施形態では、本発明は、少なくとも5種の単離されたバクテリオファージ株を含む組成物であって、これらの株が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及び配列番号5の核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有し、バリアントが、対応する核酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、かつ、黄色ブドウ球菌、緑膿菌及び/又はアシネトバクター・バウマンニの少なくとも1つに対して抗菌活性を示す、組成物を対象とする。幾つかの実施形態では、配列番号1、2、4及び5の核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有するバクテリオファージ株は、配列番号3の核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有するバクテリオファージ株の量の約10倍に相当する量で組成物中にそれぞれ存在する。幾つかの実施形態では、組成物は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及び配列番号5の核酸配列を含むゲノムを有するバクテリオファージ株を含む。
【0013】
別の態様では、本発明は、ファージカクテルを含む医薬組成物、特に、上記組成物のいずれか及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を対象とする。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、局所適用用に製剤化されている。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、滅菌緩衝液、例えば、約0.05MのTris−HCl、約0.1MのNaCl及び約10mMのMgSO.7HOを含む緩衝液を含む。幾つかの実施形態では、医薬組成物はアンプルに含有される。
【0014】
幾つかの実施形態では、医薬組成物は、追加的な薬剤、例えば、抗生物質剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤、局部麻酔薬、増殖因子及びコルチコステロイドからなる群から選択される薬剤をさらに含む。幾つかの実施形態では、追加的な薬剤は、抗生物質剤、例えば、アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び/若しくは黄色ブドウ球菌に対して抗菌活性を有する抗生物質剤、又はアシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌以外の細菌に対して抗菌活性を有する抗生物質剤である。より具体的には、幾つかの実施形態では、追加的な薬剤は、黄色ブドウ球菌に対して抗菌活性を有する抗生物質剤、又は黄色ブドウ球菌以外の細菌に対して抗菌活性を有する抗生物質剤である。幾つかの実施形態では、追加的な薬剤は、緑膿菌に対して抗菌活性を有する抗生物質剤、又は緑膿菌以外の細菌に対して抗菌活性を有する抗生物質剤である。幾つかの実施形態では、追加的な薬剤は、アシネトバクター・バウマンニに対して抗菌活性を有する抗生物質剤、又はアシネトバクター・バウマンニ以外の細菌に対して抗菌活性を有する抗生物質剤である。幾つかの実施形態では、抗生物質剤の投与は、全身投与を含む。
【0015】
幾つかの実施形態では、組成物は、有傷皮膚の領域(area)と関連がある細菌感染症の処置において使用するためのものであり、各ファージ株は、領域の1cm当たり10〜1013個のファージ粒子に相当する量で組成物中に存在する。幾つかの実施形態では、各ファージ株は、領域の1cm当たり10〜10個のファージ粒子に相当する量で組成物中に存在する。
【0016】
本発明の別の態様は、それを必要とする対象において細菌感染症を処置又は防止する方法であって、本発明による医薬組成物の治療有効量を対象に投与することを含む方法を対象とする。幾つかの実施形態では、細菌感染症は、アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌の1又は2以上による感染症である。幾つかの実施形態では、医薬組成物は局所的に投与される。幾つかの実施形態では、対象は哺乳動物、例えばヒトである。幾つかの実施形態では、細菌感染症は糖尿病性足感染症である。幾つかの実施形態では、糖尿病性足感染症は皮膚潰瘍を含む。幾つかの実施形態では、細菌感染症は、蜂巣炎に関連するびらん、丹毒病変、熱傷創傷、慢性潰瘍、褥瘡性潰瘍及び褥瘡から選択される有傷皮膚の領域と関連がある。幾つかの実施形態では、処置は、糖尿病性足感染症に関連する皮膚潰瘍に医薬組成物を局所的に投与することを含む。幾つかの好ましい実施形態では、投与は、潰瘍の機械的デブリードマン後に行われる。幾つかの実施形態では、投与は、包帯、点滴注入デバイス及び陰圧閉鎖療法デバイスの少なくとも1つの使用を含む。
【0017】
幾つかの実施形態では、医薬組成物は、最初の24時間は、4時間毎又は6時間毎に投与される。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、最初の24時間の後、少なくともさらに3日間は12時間毎又は24時間毎に投与される。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、少なくともさらに4日間は12時間毎又は24時間毎に投与される。
【0018】
幾つかの実施形態では、方法は、糖尿病性足感染症の標準的な療法と組み合わせて使用され、例えば、標準的な療法は、細胞外マトリックス置換療法、湿潤創傷療法、陰圧閉鎖療法、動脈血管再生療法、高圧酸素療法、抗生物質剤の投与及び増殖因子の投与からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、湿潤創傷療法は、裏面が粘着性のフィルム、シリコーンでコーティングされた発泡体、ヒドロゲル及び/又はヒドロコロイドの使用を含む。幾つかの実施形態では、細胞外マトリックス置換療法は、生物工学的に作られた組織の使用を含む。幾つかの実施形態では、抗生物質剤の投与は、全身投与を含む。幾つかの実施形態では、増殖因子は、血小板由来増殖因子、顆粒球コロニー刺激因子、上皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、神経増殖因子及び血管内皮増殖因子からなる群から選択される少なくとも1つである。幾つかの実施形態では、増殖因子の投与は、局所投与を含む。幾つかの実施形態では、方法は、例えば糖尿病性足感染症が標準的な療法に難治性の場合に、糖尿病性足感染症の非標準的な療法と組み合わせて使用される。
【0019】
4.1 定義
本明細書で使用する場合、核酸分子の文脈における用語「単離された」は、最初の核酸分子の天然源に存在する他の核酸分子から分離された、最初の核酸分子を指す。さらに、cDNA分子などの「単離された」核酸分子は、組換え手法によって産生された場合は、他の細胞物質若しくは培養培地を実質的に含んでいないか、又は化学的に合成された場合は、化学的前駆体若しくは他の化学物質を実質的に含んでおらず、例えば、核酸ライブラリー中の他のクローンから単離された場合は、他のcDNA又は他のゲノムDNA分子を含んでいない可能性がある。さらに、「単離された」ゲノムDNAは、組換え手法によって産生された場合は、他のウイルス性細胞物質若しくは培養培地を実質的に含んでいないか、又は化学的に合成された場合は、化学的前駆体若しくは他の化学物質を実質的に含んでおらず、例えば、バクテリオファージ及び/又は細菌株より多くを含有する調製物から単離された場合は、他のcDNA又は他のゲノムDNA分子を含んでいない可能性がある。
【0020】
バクテリオファージに関する用語「精製された」は、ファージが、任意の精製方法(これらに限定されないが、環境又は培養物からの単離、例えば、増殖及び/又は増幅、遠心分離などの後の培養物からの単離を含める)によって、測定可能な程度に濃度が増大し、それによって、部分的に、実質的に、ほぼ完全に又は完全に、不純物、例えば宿主細胞及び宿主細胞の成分が除去されたことを意味する。当業者なら、所与の使用に必要な精製量はわかるであろう。例えば、ヒトへの投与が企図された治療用組成物で使用するための単離されたファージは、通常、規制基準及び適正製造基準に従って、高純度でなければならない。
【0021】
用語「精製された」は、ペプチド、ポリペプチド、融合タンパク質又は核酸分子が、任意の精製方法(これらに限定されないが、カラムクロマトグラフィー、HPLC、沈殿、電気泳動などを含める)によって、測定可能な程度に濃度が増大し、それによって、ペプチド、ポリペプチド、融合タンパク質又は核酸分子の調製に関与する前駆体又は他の化学物質などの不純物が、部分的に、実質的に、ほぼ完全に又は完全に除去されたことを意味する。当業者なら、所与の使用に必要な精製量はわかるであろう。例えば、ヒトへの投与が企図された治療用組成物で使用するための単離されたゲノムDNAは、通常、規制基準及び適正製造基準に従って高純度でなければならない。
【0022】
本明細書で使用する場合、核酸配列の文脈における用語「バリアント」は、基準核酸配列と少なくとも80%、85%、90%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む又はそれからなる核酸配列を指す。基準核酸配列の1又は2以上の機能を維持するバリアントを選択してもよい。例えば、バリアントバクテリオファージは、少なくとも1つの生物活性、例えば、それが由来するバクテリオファージの抗微生物活性又は抗菌活性(例えば溶菌性死滅活性)を示してもよい。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「宿主細胞」は、核酸分子をトランスフェクトされた特定の対象細胞、及び核酸分子又は染色体に組み込まれたバージョンのその核酸分子を含有する当該細胞の子孫又は潜在的な子孫を指す。当該細胞の子孫は、次世代で起こり得る変異若しくは環境上の影響又は宿主細胞ゲノムへの核酸分子の組込みが原因で、核酸分子をトランスフェクトされた親細胞と同一でない可能性がある。バクテリオファージを生成するために、宿主細胞は、バクテリオファージが単離された又は培養されたものと同一の種又は株であってもよいし、そうでなくてもよい。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「組み合わせて」又は「さらなる組合せで」又は「さらに組み合わせて」は、さらなる予防及び/又は治療剤も本発明のファージカクテルも使用することを指す。用語「組み合わせて」の使用は、予防及び/又は治療剤を対象に投与する順序を制限するものではない。第1の予防又は治療剤は、第2の予防又は治療剤(第1の予防又は治療剤とは異なる)の投与より前に(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8間週又は12週間前)、第2の予防又は治療剤の投与と同時に、又は第2の予防又は治療剤の投与の後に(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間後)、対象に投与してもよい。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「予防剤(prophylactic agent)」及び「予防剤(prophylactic agents)」は、疾患又は障害、特に、糖尿病性足感染症などの細菌感染症に関連する疾患又は障害の、1又は2以上の症状の防止、管理又は制御において使用することができる、本発明のバクテリオファージカクテルなどの薬剤を指す。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語「治療剤(therapeutic agent)」及び「治療剤(therapeutic agents)」は、疾患又は障害、特に、糖尿病性足感染症などの細菌感染症に関連する疾患又は障害の、1又は2以上の症状の処置、管理又は制御において使用することができる、本発明のバクテリオファージカクテルなどの薬剤を指す。
【0027】
本明細書で使用する場合、用語「処置する」、「処置」及び「処置すること」は、医薬組成物が与えられている対象において治療的有用性を得ることを指す。治療的有用性の達成に関しては、その目的は、病態又は障害と関連がある症状又は根本原因(例えば細菌感染症)をなくすこと、小さくすること、その重症度を低下させること、寛解させること、又はその進行を遅らせることである。「治療有効量」は、医薬組成物が与えられている対象において少なくとも1つの治療的有用性を達成するのに十分である、本発明のファージカクテル医薬組成物などの治療剤の量を指す。
【0028】
本明細書で使用する場合、用語「防止する」、「防止」及び「防止すること」は、医薬組成物が与えられている対象において、予防的有用性を得ることを指す。予防的有用性の達成に関しては、その目的は、病態又は障害と関連がある症状又は根本原因(例えば、細菌感染症)を遅延させる又は防止することである。「予防有効量」は、医薬組成物が与えられている対象において少なくとも1つの予防的有用性を達成するのに十分である、本発明のファージカクテル医薬組成物などの予防剤の量を指す。
【0029】
本明細書で使用する場合、バクテリオファージ(又はそのバリアント若しくは断片)又はバクテリオファージ産物に関連する用語「抗菌活性」及び「抗微生物活性」は互換的に使用されて、微生物、特に、バクテリオファージが感染する細菌の種若しくは株を死滅させる能力及び/又は微生物、特に、バクテリオファージが感染する細菌の種若しくは株の増殖若しくは繁殖を阻害する能力を指す。ある種の実施形態では、抗菌活性又は抗微生物活性は、細菌、例えば、グラム陽性細菌(例えば黄色ブドウ球菌)、グラム陰性細菌(例えば、アシネトバクター・バウマンニ、大腸菌(E. coli)及び/又は緑膿菌)、又はグラム陽性菌にもグラム陰性菌にも分類されない細菌を、標準的な手法(例えば、液体培養中又は寒天プレート上)に従って培養し、培養物を本発明のバクテリオファージ又はそのバリアントに接触させ、前記接触後に細胞増殖をモニタリングすることによって、評価される。例えば、液体培養では、培養物の指数増殖の中間点の代表的な光学密度(「OD」, optical density)まで細菌を増殖させることができ、この培養物を、本発明の1若しくは2以上のバクテリオファージ又はそのバリアントの1又は2以上の濃度に曝露し、対照培養物と比較してODをモニタリングする。対照培養物と比較して減少したODは、抗菌活性を示す(例えば溶菌性死滅活性を示す)バクテリオファージを表している。同様に、細菌のコロニーを寒天プレート上に形成させることができ、このプレートを本発明の1若しくは2以上のバクテリオファージ又はそのバリアントに曝露し、その後のコロニー増殖を、対照プレートと関連付けて調べる。コロニーサイズの減少又はコロニー総数の減少は、抗菌活性を有するバクテリオファージを示す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明による例示的なファージカクテル組成物の調製物を説明する図である。
図2】本発明による例示的なファージカクテル組成物のラットモデルにおけるインビボでの有効性を示すのに使用する研究プロトコールを説明する図である。
図3】本発明による例示的なファージカクテル組成物のブタモデルにおけるインビボでの有効性を示すのに使用する研究プロトコールを説明する図である。
図4】黄色ブドウ球菌743/06に対して調べた溶菌性研究の結果を説明する図である。これは、本発明による例示的なファージカクテル組成物のインビトロでの有効性を示す。
図5】緑膿菌433/07に対して調べた溶菌性研究の結果を説明する図である。これは、本発明による例示的なファージカクテル組成物のインビトロでの有効性を示す。
図6】アシネトバクター・バウマンニ1305/05に対して調べた溶菌性研究の結果を説明する図である。これは、本発明による例示的なファージカクテル組成物のインビトロでの有効性を示す。
図7】黄色ブドウ球菌接種、緑膿菌接種及びアシネトバクター・バウマンニ接種の動物についての、対照(C, control)群及び試験(T, test)群に対する微生物負荷解析の結果を説明する図である。これは、本発明による例示的なファージカクテル組成物のラットモデルでのインビボでの有効性を示す。
図8】黄色ブドウ球菌接種、緑膿菌接種及びアシネトバクター・バウマンニ接種の動物についての、陰性群、対照(C)群及び試験(T)群に対する創傷閉鎖解析の結果を説明する図である。これは、本発明による例示的なファージカクテル組成物のラットモデルでのインビボでの有効性を示す。
図9】黄色ブドウ球菌接種、緑膿菌接種及びアシネトバクター・バウマンニ接種の動物についての、陰性群、対照(C)群及び試験(T)群に対する組織学的解析の結果を説明する図である。これは、本発明による例示的なファージカクテル組成物のラットモデルでのインビボでの有効性を示す。
図10】黄色ブドウ球菌接種、緑膿菌接種及びアシネトバクター・バウマンニ接種の動物についての、対照(C)群及び試験(T)群に対する微生物負荷解析の結果を説明する図である。これは、本発明による例示的なファージカクテル組成物のブタモデルでのインビボでの有効性を示す。
図11】黄色ブドウ球菌接種、緑膿菌接種及びアシネトバクター・バウマンニ接種の動物についての、陰性群、対照(C)群及び試験(T)群に対する創傷閉鎖解析の結果を説明する図である。これは、本発明による例示的なファージカクテル組成物のブタモデルでのインビボでの有効性を示す。
図12】黄色ブドウ球菌接種、緑膿菌接種及びアシネトバクター・バウマンニ接種の動物についての、陰性群、対照(C)群及び試験(T)群に対する組織学的解析の結果を説明する図である。これは、本発明による例示的なファージカクテル組成物のブタモデルでのインビボでの有効性を示す。
図13】糖尿病性足感染症の分類、及び本発明による例示的なファージカクテル組成物を使用するファージ療法の糖尿病性足感染症への適用を説明する図である。
図14】糖尿病性足部潰瘍に対する療法で使用するための本発明による例示的なファージカクテル組成物についての臨床研究計画を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
5.1 詳細な説明
本発明は、細菌感染症、特に、糖尿病性足感染症を処置及び制御するためのファージ療法を対象とする。一態様では、本発明は、異なるバクテリオファージ株の新規なカクテル組成物に関する。「カクテル」は、少なくとも2種の異なる単離されたバクテリオファージ株、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10種又はそれ以上の異なる単離されたバクテリオファージ株を含んでもよい。カクテルは、単独で使用してもよいし、他の療法、例えば、抗生物質剤及び/又は増殖因子とのさらなる組合せで使用してもよい。
【0032】
ファージカクテルは、個々のファージの使用に利点、例えば、特定の細菌株に対する溶菌活性を増大させること、及び/又は個々のバクテリオファージにして抵抗性の細菌が出現する可能性を低下させることを提供する。異なるバクテリオファージをカクテルとして混合して、それらの性質を広げることができ、好ましくは、集団的により大きな抗菌性の活性スペクトルがもたらされる。しかし、おそらく、別々のバクテリオファージ株の存在下で個々のバクテリオファージの感染能力及び/又は溶菌活性を維持しながら、バクテリオファージ株の様々な特異性を組み合わせるのが困難であるために、様々な細菌に対して抗微生物活性を有するファージカクテルはほとんど存在しない。
【0033】
幾つかの特に好ましい実施形態では、本発明は、5種の単離されたバクテリオファージ株F44/10、F125/10、F770/05、F510/08及びF1245/05を含むカクテル組成物であって、局所製剤として製剤化されており、糖尿病性足感染症の処置及び/又は防止に使用されるカクテル組成物を提供する。
【0034】
幾つかの実施形態では、本発明は、同一又は異なる細菌種又は株に対して抗菌活性を有する少なくとも2種の異なる単離されたバクテリオファージ株を含むカクテル組成物を提供する。好ましい実施形態では、カクテルの治療成分は、細菌の2又は3以上の種又は株を標的にする。幾つかの実施形態では、ファージカクテルは、少なくとも2種のファージ株、少なくとも3種のファージ株、少なくとも4種のファージ株、少なくとも5種のファージ株、少なくとも6種のファージ株、少なくとも7種のファージ株、少なくとも8種のファージ株、少なくとも9種のファージ株、少なくとも10種のファージ株又はそれ以上を含む。幾つかの実施形態では、ファージカクテルは、2〜20種のファージ株、2〜15種のファージ株、2〜10種のファージ株、3〜8種のファージ株又は4〜6種のファージ株を含む。より好ましい実施形態では、組合せは、別々のバクテリオファージ株の存在下で、個々のバクテリオファージの感染能力及び/又は溶菌活性を減退又は低減させない(又は実質的に若しくは有意に減退若しくは低減させない)。
【0035】
幾つかの実施形態では、カクテルの少なくとも1種のファージ株は、これらに限定されないが、アシネトバクター・バウマンニ及び緑膿菌を含めた少なくとも1種のグラム陰性細菌に対して、並びに/又はこれに限定されないが、黄色ブドウ球菌を含めた少なくとも1種のグラム陽性細菌に対して、抗菌活性を有する株である。幾つかの実施形態では、カクテル組成物は、黄色ブドウ球菌、緑膿菌及び/又はアシネトバクター・バウマンニの少なくとも1つに対して抗菌活性を示す株である、少なくとも2種の異なる単離されたバクテリオファージ株を含む。幾つかの好ましい実施形態では、カクテル組成物は、黄色ブドウ球菌、緑膿菌及び/又はアシネトバクター・バウマンニの少なくとも2つに対して抗菌活性を示す。幾つかのより一層好ましい実施形態では、カクテル組成物は、黄色ブドウ球菌、緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニのそれぞれに対して抗菌活性を示す。
【0036】
幾つかの実施形態では、カクテル組成物は、黄色ブドウ球菌に対して抗菌活性を示す少なくとも1種のファージ株を含む。黄色ブドウ球菌は、グラム陽性の球状通性嫌気性菌であり、金色を特徴とするブドウ様クラスターとして増殖し、ブドウ球菌感染症の最も一般的な原因である。これは、ヒト皮膚の菌叢の一部であることが多く、面ぽう(pimples)、よう(carbuncles)、熱傷様皮膚症候群、肺炎、胃腸炎、髄膜炎、骨髄炎、心内膜炎、中毒性ショック症候群、菌血症及び敗血症を含めた様々な感染症の原因となる。これはまた、これに限定されないが、皮膚潰瘍を含めた糖尿病性足感染症に関与することが多い。そうした皮膚潰瘍はまた、「糖尿病性足部潰瘍」として本明細書で言及される。
【0037】
特に懸念されるものは、メチシリン抵抗性黄色ブドウ球菌株(MRSA, methicillin-resistant Staphylococcus aureus strain)である。病院内でMRSAの流行が急増した1990年代まで、MRSAは、病院施設内において珍しい存在のままであった。今やMRSAは、特に英国において、病院に特有であると考えられている(Johnson AP et al. 2001 J. Antimicrobial Chemotherapy 48(1): 143-144)。さらに、MRSAは糖尿病性足感染症において新しい脅威をもたらす(疾病管理予防センター(CDC, Centers for Disease Control and Prevention)のウェブサイトから2009年1月17日に検索した)。糖尿病性足病変に起こり得る潰瘍及び開放びらんは、患者をMRSAに罹患する危険性にさらし、最近の研究によって、糖尿病性創傷中に存在する場合は、MRSAが治癒を減退させるエビデンスが示されている(Bowling FL, et al. 2009 Curr Diab Rep 9(6):440-444)。Kosinski, MA, et al. 2010. Expert Rev AntiInfect Ther. 8(11):1293-1305も参照されたい。
【0038】
幾つかの実施形態では、本発明は、配列番号1の核酸配列を含む又はそれからなるゲノムを有するバクテリオファージを含むカクテル組成物を提供する。本実施形態による具体例は、単離されたバクテリオファージF44/10であり、これは、黄色ブドウ球菌を含めたブドウ球菌属(Staphylococcus)種の幾つかの株を標的にする。株F44/10は、ブダペスト条約の下に、NCIMB Limited社(Ferguson Building, Craibstone Estate, Bucksburn, Aberdeen, AB21 9YA, Scotland UK)に2011年9月16日に寄託され、受託番号41867を有する。幾つかの実施形態では、本発明は、配列番号2の核酸配列を含む又はそれからなるゲノムを有するバクテリオファージを含むカクテル組成物を提供する。本実施形態による具体例は、単離されたバクテリオファージF125/10であり、これも、黄色ブドウ球菌を含めたブドウ球菌属種の幾つかの株を標的にする。株F125/10は、ブダペスト条約の下に、NCIMB Limited社(Ferguson Building, Craibstone Estate, Bucksburn, Aberdeen, AB21 9YA, Scotland UK)に2011年9月16日に寄託され、受託番号41866を有する。幾つかの実施形態では、カクテル組成物は、少なくともF44/10及びF125/10ファージ株の両方を含む。ある種の実施形態では、ファージカクテルは、黄色ブドウ球菌の1又は2以上の株に対して抗菌活性を示す少なくとも1種のファージ株(例えば、F44/10及び/又はF125/10)、並びに様々な細菌に対して抗菌活性を示す少なくとも1種のファージ株を含む。例えば、幾つかの実施形態では、ファージカクテルは、配列番号3、4若しくは5又はそのバリアントを含む又はそれからなるゲノムを有する少なくとも1種の他のファージ株との組合せで、配列番号1若しくは2又はそのバリアントを含む又はそれからなるゲノムを有するファージ株を含む。
【0039】
幾つかの実施形態では、カクテル組成物は、緑膿菌に対して抗菌活性を示す少なくとも1種のファージ株を含む。緑膿菌は、土壌、水、皮膚の菌叢及びほとんどの人工環境に見られる、一般的なグラム陰性桿状細菌である。これは、通常の空気中だけでなく、通性嫌気性菌のように酸素がほとんどなくても盛んに増殖し、損傷組織、又は糖尿病患者を含めた免疫無防備状態の個体に感染することができる。実際、緑膿菌は、糖尿病性足部潰瘍に重篤な組織損傷を引き起こすことが多く、緑膿菌感染症に関連する主だった問題は、この病原体が、広域スペクトルの抗生物質に高い抵抗性を示すことである(Murugan, S. et al. 2010 Intl J of Microbiol Res 1(3):123-128)。例えば、Murugan et al.の研究では、糖尿病性足部潰瘍から単離された緑膿菌の100%がメロペネムに抵抗性であることがわかり、71%超がイミペネムに抵抗性であることがわかった。
【0040】
幾つかの実施形態では、本発明は、配列番号3の核酸配列を含む又はそれからなるゲノムを有するバクテリオファージを含むカクテル組成物を提供する。本実施形態による具体例は、単離されたバクテリオファージF770/05であり、これは、緑膿菌を含めたシュードモナス属(Pseudomonas)種の幾つかの株を標的にする。前記バクテリオファージ株を開示する国際出願公開第WO2010/090542号パンフレットも参照されたい。株F770/05は、ブダペスト条約の下に、NCIMB Limited社(Ferguson Building, Craibstone Estate, Bucksburn, Aberdeen, AB21 9YA, Scotland UK)に2011年9月16日に寄託され、受託番号41864を有する。幾つかの実施形態では、本発明は、配列番号4の核酸配列を含む又はそれからなるゲノムを有するバクテリオファージを含むカクテル組成物を提供する。本実施形態による具体例は、単離されたバクテリオファージF510/08であり、これも、緑膿菌を含めたシュードモナス属種の幾つかの株を標的にする。株F510/08は、ブダペスト条約の下に、NCIMB Limited社(Ferguson Building, Craibstone Estate, Bucksburn, Aberdeen, AB21 9YA, Scotland UK)に2011年9月16日に寄託され、受託番号41868を有する。幾つかの実施形態では、カクテル組成物は、少なくともF770/05及びF510/08ファージ株の両方を含む。ある種の実施形態では、ファージカクテルは、緑膿菌の1又は2以上の株に対して抗菌活性を示す少なくとも1種のファージ株(例えば、F770/05及び/又はF510/08)並びに様々な細菌に対して抗菌活性を示す少なくとも1種のファージ株を含む。例えば、幾つかの実施形態では、ファージカクテルは、配列番号1、2若しくは5又はそのバリアントを含む又はそれからなるゲノムを有する少なくとも1種の他のファージ株との組合せで、配列番号3若しくは4又はそのバリアントを含む又はそれからなるゲノムを有するファージ株を含む。
【0041】
幾つかの実施形態では、カクテル組成物は、アシネトバクター・バウマンニに対して抗菌活性を示す少なくとも1種のファージ株を含む。アシネトバクター・バウマンニは、特に、糖尿病患者を含めた易感染性免疫系を有する個体において、幾つかの重篤な臨床感染症を引き起こす細菌種である。例えば、アシネトバクター・バウマンニは、下肢感染症を伴う糖尿病患者から単離された(Colayco, CAS, et al 2002 Phil J Microbiol Infect Dis 31(4):151-106)。アシネトバクター・バウマンニは、糖尿病性足部潰瘍などの開放創から体に侵入することが多い、多形性の好気性グラム陰性桿菌である。これはまた、多数の抗生物質に抵抗性であると知られており、アシネトバクター・バウマンニによって引き起こされる院内感染の数が近年増加している。Browne AC, et al. 2001 Ostomy Wound Management 47(10):44-49(糖尿病性足部潰瘍における黄色ブドウ球菌、緑膿菌及びアシネトバクター属(Acinetobacter)種の存在について議論している)も参照されたい。アシネトバクター・バウマンニは、一般に創傷感染過程の後期に出現する生着菌である。したがって、ある種の実施形態では、ファージカクテル組成物が、アシネトバクター・バウマンニに感染するバクテリオファージを含むことが重要である。
【0042】
幾つかの実施形態では、本発明は、配列番号5の核酸配列を含む又はそれからなるゲノムを有するバクテリオファージを含むカクテル組成物を提供する。本実施形態による具体例は、単離されたバクテリオファージF1245/05であり、これは、アシネトバクター・バウマンニを含めたアシネトバクター属種の幾つかの株を標的にする。前記バクテリオファージ株を開示する国際出願公開第WO2010/090542号パンフレットも参照されたい。株F1245/05は、ブダペスト条約の下に、NCIMB Limited社(Ferguson Building, Craibstone Estate, Bucksburn, Aberdeen, AB21 9YA, Scotland UK)に2011年9月16日に寄託され、受託番号41865を有する。ある種の実施形態では、ファージカクテルは、アシネトバクター・バウマンニの1又は2以上の株に対して抗菌活性を示す少なくとも1種のファージ株(例えばF1245/05)、及び様々な細菌に対して抗菌活性を示す少なくとも1種のファージ株を含む。例えば、幾つかの実施形態では、ファージカクテルは、配列番号1、2、3若しくは4又はそのバリアントを含む又はそれからなるゲノムを有する少なくとも1種の他のファージ株との組合せで、配列番号5又はそのバリアントを含む又はそれからなるゲノムを有するファージ株を含む。
【0043】
ある種の実施形態では、本発明のカクテルは、核酸配列の配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及び配列番号5のうちのいずれかのバリアントであるバクテリオファージであって、バクテリオファージ株F44/10、F125/10、F770/05、F510/08及びF1245/05の1又は2以上の少なくとも1つの生物活性、例えば、抗微生物活性又は抗菌活性(例えば溶菌性死滅活性)を示すバクテリオファージを含む。幾つかの好ましい実施形態では、バクテリオファージ株F44/10又はF125/10のバリアントは、ブドウ球菌属種の株の1又は2以上(より好ましくは黄色ブドウ球菌を含める)に対して、抗微生物活性又は抗菌活性(例えば溶菌性死滅活性)を維持する。幾つかの好ましい実施形態では、カクテルは、シュードモナス属種の株の1又は2以上(より好ましくは緑膿菌を含める)に対して抗微生物活性又は抗菌活性(例えば溶菌性死滅活性)を維持する、バクテリオファージ株F770/05又はF510/08のバリアントを含む。幾つかの好ましい実施形態では、カクテルは、アシネトバクター属種の株の1又は2以上(より好ましくはアシネトバクター・バウマンニを含める)に対して抗微生物活性又は抗菌活性(例えば溶菌性死滅活性)を維持する、バクテリオファージ株P1245/05のバリアントを含む。
【0044】
バリアントバクテリオファージ株は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及び/又は配列番号5の核酸配列と少なくとも80%、85%、90%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するゲノムを含んでもよいし、そうしたゲノムからなってもよく、これらのバクテリオファージは、それぞれ、バクテリオファージF44/10、F125/10、F770/05、F510/08及びF1245/05の少なくとも1つの生物活性、例えば、抗微生物活性又は抗菌活性(例えば溶菌性死滅活性)を示す。幾つかの好ましい実施形態では、バクテリオファージ株F44/10のバリアントは、配列番号1の核酸配列と少なくとも80%、85%、90%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するゲノムを含む又はそうしたゲノムからなり、ブドウ球菌属種の株の1又は2以上(より好ましくは黄色ブドウ球菌を含める)に対して、抗微生物活性又は抗菌活性(例えば溶菌性死滅活性)を維持する。幾つかの好ましい実施形態では、バクテリオファージ株F125/10のバリアントは、配列番号2の核酸配列と少なくとも80%、85%、90%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するゲノムを含む又はそうしたゲノムからなり、ブドウ球菌属種の株の1又は2以上(より好ましくは黄色ブドウ球菌を含める)に対して、抗微生物活性又は抗菌活性(例えば溶菌性死滅活性)を維持する。幾つかの好ましい実施形態では、バクテリオファージ株F770/05のバリアントは、配列番号3の核酸配列と少なくとも80%、85%、90%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するゲノムを含む又はそうしたゲノムからなり、シュードモナス属種の株の1又は2以上(より好ましくは緑膿菌を含める)に対して、抗微生物活性又は抗菌活性(例えば溶菌性死滅活性)を維持する。幾つかの好ましい実施形態では、バクテリオファージ株F510/08のバリアントは、配列番号4の核酸配列と少なくとも80%、85%、90%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するゲノムを含む又はそうしたゲノムからなり、シュードモナス属種の株の1又は2以上(より好ましくは緑膿菌を含める)に対して、抗微生物活性又は抗菌活性(例えば溶菌性死滅活性)を維持する。幾つかの好ましい実施形態では、バクテリオファージ株P1245/05のバリアントは、配列番号5の核酸配列と少なくとも80%、85%、90%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するゲノムを含む又はそうしたゲノムからなり、アシネトバクター属種の株の1又は2以上(より好ましくはアシネトバクター・バウマンニを含める)に対して、抗微生物活性又は抗菌活性(例えば溶菌性死滅活性)を維持する。
【0045】
その代わりに又はそれに加えて、本発明のカクテルは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及び/又は配列番号5の核酸配列の機能的断片を含むゲノムを有するバリアントを含み、これらのバリアントバクテリオファージは、好ましくは上記のように、それぞれ、バクテリオファージF44/10、F125/10、F770/05、F510/08及びF1245/05の少なくとも1つの生物活性、例えば、抗微生物活性又は抗菌活性(例えば溶菌性死滅活性)を示す。
【0046】
幾つかの実施形態では、本発明は、少なくとも2種の異なる単離されたバクテリオファージ株を含むカクテル組成物であって、各株が、上記のように、配列番号1(F44/10)、配列番号2(F125/10)、配列番号3(F770/05)、配列番号4(F510/08)及び配列番号5(F1245/05)からなる群から選択される核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有するカクテル組成物を提供する。幾つかの好ましい実施形態では、カクテル組成物は、配列番号1若しくは配列番号2の核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有するバクテリオファージ株の少なくとも1種を含む。幾つかのより好ましい実施形態では、カクテル組成物は、配列番号1及び配列番号2の核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有する少なくとも両方のバクテリオファージ株を含む。幾つかのさらにより好ましい実施形態では、カクテル組成物は、少なくとも第3のバクテリオファージ株を含み、前記第3の株は、配列番号3、配列番号4及び配列番号5からなる群から選択される核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有する。幾つかのより一層好ましい実施形態では、カクテル組成物は、少なくとも第3及び第4のバクテリオファージ株を含み、前記第3及び第4の株のそれぞれは、配列番号3、配列番号4及び配列番号5からなる群から選択される核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有する。
【0047】
幾つかの好ましい実施形態では、カクテル組成物は、配列番号3若しくは配列番号4の核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有するバクテリオファージ株の少なくとも1種を含む。幾つかのより好ましい実施形態では、カクテル組成物は、配列番号3及び配列番号4の核酸配列又はそのバリアント(複数可)を含むゲノムを有する少なくとも両方のバクテリオファージ株を含む。幾つかのさらにより好ましい実施形態では、カクテル組成物は、少なくとも第3のバクテリオファージ株を含み、前記第3の株は、配列番号1、配列番号2及び配列番号5からなる群から選択される核酸配列又はそのバリアント(複数可)を含むゲノムを有する。幾つかのより一層好ましい実施形態では、カクテル組成物は、少なくとも第3及び第4のバクテリオファージ株を含み、前記第3及び第4の株のそれぞれは、配列番号1、配列番号2及び配列番号5からなる群から選択される核酸配列又はそのバリアント(複数可)を含むゲノムを有する。
【0048】
幾つかの好ましい実施形態では、カクテル組成物は、配列番号5の核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有するバクテリオファージ株を含む。幾つかのより好ましい実施形態では、カクテル組成物は、1、2又は3種のさらなるバクテリオファージ株であって、それぞれが、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択される核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有する株と共に、配列番号5の核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有するバクテリオファージ株を含む。
【0049】
特に好ましい実施形態では、本発明は、少なくとも5種の単離されたバクテリオファージ株を含むカクテル組成物であって、前記株が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及び配列番号5の核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有する、カクテル組成物を提供する。幾つかのそのような実施形態では、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4又は配列番号5のうちのいずれか1つについて選択されるバリアントは、対応する核酸配列に対して少なくとも93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有し、黄色ブドウ球菌、緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニの少なくとも1つに対して抗菌活性を示す。特に好ましい実施形態は、3種の細菌株すべてに対する抗菌活性を兼ね備える。幾つかの実施形態では、カクテル組成物は、1又は2以上のさらなるファージ株であって、黄色ブドウ球菌、緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニの少なくとも1つに対して、並びに/又は他の細菌に対して抗菌活性を有する株をさらに含む。
【0050】
特に好ましい実施形態では、本発明は、5種の単離されたバクテリオファージ株を含むカクテル組成物であって、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及び配列番号5の核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有する前記株を、少なくとも1種のさらなるファージ株とさらに組み合わせて含むカクテル組成物を提供する。幾つかの好ましい実施形態では、さらなるファージ株は、(国際公開第WO2011/065854号パンフレット及び米国特許出願公開第2012/0052048号明細書に開示されているような)エンテロコッカス・フェカリス(E. faecalis)及び/又はエンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)の1又は2以上の株に対して抗生物質活性を有するバクテリオファージ株F168/08、(国際公開第WO2011/065854号パンフレット及び米国特許出願公開第2012/0052048号明細書に開示されているような)エンテロコッカス・フェカリス及び/又はエンテロコッカス・フェシウムの1又は2以上の株に対して抗生物質活性を有するバクテリオファージ株F170/08、(米国特許出願公開第2012/0052048号明細書に開示されているような)黄色ブドウ球菌の1又は2以上の株に対して抗菌活性を有するバクテリオファージ株F197/08、(米国特許出願公開第2012/0052048号明細書に開示されているような)黄色ブドウ球菌の1又は2以上の株に対して抗菌活性を有するバクテリオファージ株F86/06、(米国特許出願公開第2012/0052048号明細書に開示されているような)黄色ブドウ球菌の1又は2以上の株に対して抗菌活性を有するバクテリオファージ株F87s/06、(米国特許出願公開第2012/0052048号明細書に開示されているような)黄色ブドウ球菌の1又は2以上の株に対して抗菌活性を有するバクテリオファージ株F91a/06、(米国特許仮出願第61/384,015号明細書に開示されているような)肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の1又は2以上の株に対して抗菌活性を有するバクテリオファージ株F391/08、(米国特許仮出願第61/384,01号明細書に開示されているような)アシネトバクター・バウマンニの1又は2以上の株に対して抗菌活性を有するバクテリオファージ株F394/08、(米国特許仮出願第61/384,01号明細書に開示されているような)大腸菌の1又は2以上の株に対して抗菌活性を有するバクテリオファージ株F488/08、並びに(米国特許仮出願第61/384,015号明細書に開示されているような)肺炎桿菌の1又は2以上の株に対して抗菌活性を有するバクテリオファージ株F387/08からなる群から選択される(それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。2010年9月17日に出願された米国特許仮出願第61/384,015号明細書及び2011年9月19日に出願された国際出願番号PCT/PT2011/000031の内容も、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0051】
幾つかの実施形態では、本発明は、少なくとも5種の単離されたバクテリオファージ株を含む組成物を提供し、前記株は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及び配列番号5の核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有し、配列番号1、2、4及び5の核酸配列又はその前記バリアントを含むゲノムを有するバクテリオファージ株は、配列番号3の核酸配列又はその前記バリアントを含むゲノムを有する前記バクテリオファージ株の量と比較して多い量で前記組成物中にそれぞれ存在する。幾つかの好ましい実施形態では、配列番号1、2、4及び5の核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有するバクテリオファージ株は、配列番号3の核酸配列又はそのバリアントを含むゲノムを有するバクテリオファージ株の量の約2倍、約5倍、約8倍、約9倍、約10倍、約11倍、約12倍、約15倍又は約20倍に相当する量で、カクテル組成物中にそれぞれ存在する。
【0052】
幾つかの実施形態では、ファージカクテル組成物は、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,688,501号明細書に開示されているような、インビボでの半減期の増大について選択されたファージを伴っていてもよいし、伴っていなくてもよい。幾つかの実施形態では、カクテルは、単離されたポリペプチドの非存在下で、例えばリアーゼの非存在下で投与される。
【0053】
本発明は、本発明のバクテリオファージの1又は2以上に感染した、単離された細菌も提供する。ある種の実施形態では、本発明は、配列番号1及び/若しくは2の核酸配列又はそのバリアントを含む又はそれからなるゲノムを有するバクテリオファージに感染した単離された黄色ブドウ球菌を提供する。ある種の実施形態では、本発明は、配列番号3及び/若しくは4の核酸配列又はそのバリアントを含む又はそれからなるゲノムを有するバクテリオファージに感染した単離された緑膿菌を提供する。ある種の実施形態では、本発明は、配列番号5の核酸配列又はそのバリアントを含む又はそれからなるゲノムを有するバクテリオファージに感染した単離されたアシネトバクター・バウマンニを提供する。
【0054】
本発明のファージカクテルで使用するためのバクテリオファージは、当技術分野で既知の及び/又は本明細書に開示されたいかなる方法によっても産生及び/又は単離することができる。例えば、当業者は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4又は配列番号5並びにそのバリアントの核酸配列を含む又はそれからなるゲノムを有するバクテリオファージを産生及び/又は単離する、1又は2以上の方法を使用することができる。配列番号1及び/若しくは配列番号2の核酸配列並びに/又はいずれかのバリアントを含む又はそれからなるゲノムを有するバクテリオファージを産生及び/又は単離する方法は、(i)黄色ブドウ球菌の培養物を獲得すること、(ii)培養物に、配列番号1及び/若しくは配列番号2の核酸配列並びに/又はいずれかのバリアントを含む又はそれからなるゲノムを有するバクテリオファージを感染させること、(iii)培養物の著しい溶菌が観察されるまで培養すること、並びに(iv)培養物からバクテリオファージを単離することを含み得る。使用する宿主細胞は、バクテリオファージによる感染を受けやすく、バクテリオファージを複製するのに使用できる、いかなる細菌株、例えば、いかなる黄色ブドウ球菌株でもよい。幾つかの実施形態では、使用する宿主細胞は、ブダペスト条約の下に、NCIMB Limited社(Ferguson Building, Craibstone Estate, Bucksburn, Aberdeen, AB21 9YA, Scotland UK)に2011年9月16日に受託番号NCIMB41862で寄託された黄色ブドウ球菌株743/06である。配列番号3及び/若しくは配列番号4の核酸配列並びに/又はいずれかのバリアントを含む又はそれからなるゲノムを有するバクテリオファージを産生及び/又は単離する方法は、(i)緑膿菌の培養物を獲得すること、(ii)培養物に、配列番号3及び/若しくは配列番号4の核酸配列並びに/又はいずれかのバリアントを含む又はそれからなるゲノムを有するバクテリオファージを感染させること、(iii)培養物の著しい溶菌が観察されるまで培養すること、並びに(iv)培養物からバクテリオファージを単離することを含み得る。使用する宿主細胞は、バクテリオファージによる感染を受けやすく、バクテリオファージを複製するのに使用できる、いかなる細菌株、例えば、いかなる緑膿菌株でもよい。幾つかの実施形態では、使用する宿主細胞は、例えば、ブダペスト条約の下に、NCIMB Limited社(Ferguson Building, Craibstone Estate, Bucksburn, Aberdeen, AB21 9YA, Scotland UK)に2011年9月16日に受託番号NCIMB41861で寄託された緑膿菌株433/07でもよい。配列番号5の核酸配列及び/又はそのバリアントを含む又はそれからなるゲノムを有するバクテリオファージを産生及び/又は単離する方法は、(i)アシネトバクター・バウマンニの培養物を獲得すること、(ii)培養物を、配列番号5の核酸配列及び/又はそのバリアントを含む又はそれからなるゲノムを有するバクテリオファージに感染させること、(iii)培養物の著しい溶菌が観察されるまで培養すること、並びに(iv)培養物からバクテリオファージを単離することを含み得る。使用する宿主細胞は、バクテリオファージによる感染を受けやすく、バクテリオファージを複製するのに使用できる、いかなる細菌株、例えば、いかなるアシネトバクター・バウマンニ株でもよい。幾つかの実施形態では、使用する宿主細胞は、例えば、ブダペスト条約の下に、NCIMB Limited社(Ferguson Building, Craibstone Estate, Bucksburn, Aberdeen, AB21 9YA, Scotland UK)に2011年9月16日に受託番号NCIMB41863で寄託されたアシネトバクター・バウマンニ株1305/05でもよい。
【0055】
バクテリオファージは、本明細書に記載の又は当技術分野で既知の(例えば、Carlson, "Working with bacteriophage: common techniques and methodological approaches," In, Kutter and Sulakvelidze (Eds) Bacteriophage: Biology and Applications, 5th ed. CRC Press (2005)を参照されたい。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)いかなる方法によっても、細菌試料から単離することができる。使用可能な特定の細菌株としては、例えば、黄色ブドウ球菌743/06株(例えば、ファージF44/10及びF125/10の単離用)、緑膿菌433/07株(例えば、ファージF770/05及びF510/08の単離用)及びアシネトバクター・バウマンニ株1305/05(例えば、ファージF1245/05の単離用)が挙げられる。黄色ブドウ球菌743/06、緑膿菌433/07及びアシネトバクター・バウマンニ1305/05株は、ブダペスト条約の下に、NCIMB Limited社(Ferguson Building, Craibstone Estate, Bucksburn, Aberdeen, AB21 9YA, Scotland UK)に2011年9月16日に寄託され、それぞれ、受託番号NCIMB41862、NCIMB41861及びNCIMB41863を有する。バクテリオファージは、1又は2以上のバクテリオファージによる感染を受けやすく、バクテリオファージが複製する、いかなる他の細菌株からも単離することもできる。
【0056】
5.2 抗生物質組成物
本発明のファージカクテルは、これらに限定されないが、アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌、及び/又は黄色ブドウ球菌を含めた細菌によって引き起こされる細菌感染症(例えば、糖尿病性足感染症)の処置及び/又は防止で使用するための医薬組成物中に組み込まれる。例えば本明細書で開示されるような異なるファージ株のカクテルは、賦形剤又は安定化剤などの薬学的に許容される担体と組み合わせることができる。薬学的に許容される担体、賦形剤及び安定化剤の例としては、これらに限定されないが、リン酸、クエン酸及び他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸を含めた抗酸化剤;低分子量ポリペプチド;血清アルブミン及びゼラチンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン若しくはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース若しくはデキストリンを含めた単糖、二糖及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトール若しくはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;並びに/又はTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG, polyethylene glycol)及びPLURONICS(商標)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。本発明の医薬組成物(例えば抗菌性組成物)は、例えば上記成分に加えて、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、着香剤、乳化剤、懸濁化剤及び防腐剤を含むこともできる。
【0057】
本発明のバクテリオファージカクテル組成物は、本明細書に記載及び/又は当技術分野で既知のような、細菌感染症の処置及び/又は防止に有用な1又は2以上の非ファージの治療及び/又は予防剤(例えば1又は2以上の抗生物質剤)と組み合わせることもできる。本発明のファージカクテルと組み合わせて使用可能な他の治療及び/又は予防剤としては、これらに限定されないが、抗生物質剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤、局部麻酔薬、増殖因子及びコルチコステロイドが挙げられる。幾つかの好ましい実施形態では、医薬組成物は、糖尿病性足感染症の処置及び/又は防止用に製剤化されており、抗生物質剤、局部麻酔薬及び増殖因子から選択される、1又は2以上のさらなる治療及び/又は予防剤を含む。幾つかの実施形態では、ファージカクテルは、抗生物質剤の非存在下で投与される。
【0058】
本発明のファージカクテルを含む医薬組成物と共に使用可能な標準的な抗生物質としては、これらに限定されないが、所与の感染症に対する本発明のファージカクテルの治療及び/又は予防効果を相加的又は相乗的に増強するのに有効な量の、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ロドストレプトマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、アプラマイシン、リファマイシン、ナフトマイシン、ムピロシン、ゲルダナマイシン、アンサマイトシン、カルバセフェム、イミペネム、メロペネム、エルタペネム、ファロペネム、ドリペネム、パニペネム/ベタミプロン、ビアペネム、PZ−601、セファロスポリン、セファセトリル、セファドロキシル、セファレキシン、セファログリシン、セファロニウム、セファロリジン、セファロチン、セファピリン、セファトリジン、セファザフル、セファゼドン、セファゾリン、セフラジン、セフロキサジン、セフテゾール、セファクロル、セフォニシド、セフプロジル、セフロキシム、セフゾナム、セフメタゾール、セフォテタン、セフォキシチン、セフカペン、セフダロキシム、セフジニル、セフジトレン、セフェタメト、セフィキシム、セフメノキシム、セフテラム、セフチブテン、セフチオフル、セフチオレン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフォペラゾン、セフタジジムラタモキセフ、セフクリジン、セフェピム、セフルプレナム、セフォセリス、セフォゾプラン、セフピロム、セフキノム、フロモキセフ、セフトビプロール、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、アズトレオナム、ペニシリン(pencillin)及びペニシリン誘導体、アクチノマイシン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、シノキサシン、フルメキン、ナリジクス酸、オキソリン酸、ピロミド酸、ピペミド酸、ロソキサシン、シプロフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、ロメフロキサシン、ナジフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、ペフロキサシン、ルフロキサシン、バロフロキサシン、ガチフロキサシン、グレパフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、パズフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、トスフロキサシン、クリナフロキサシン、ガレノキサシン、ゲミフロキサシン、スチフロキサシン(stifloxacin)、トロバルフロキサシン(trovalfloxacin)、プルリフロキサシン、アセタゾラミド、ベンゾラミド、ブメタニド、セレコキシブ、クロルタリドン、クロパミド、ジクロフェナミド、ドルゾラミド、エトキシゾールアミド、フロセミド、ヒドロクロロチアジド、インダパミド、マフェンダイド(mafendide)、メフルシド、メトラゾン、プロベネシド、スルファセタミド、スルファジメトキシン、スルファドキシン、スルファニルアミド、スルファメトキサゾール、スルファサラジン、スルチアム、スマトリプタン、キシパミド、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、ドキシサイクリン、リメサイクリン、メクロサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、ロリテトラサイクリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン(oxacilin)、クロキサシリン、バンコマイシン、テイコプラニン、クリンダマイシン、コトリモキサゾール、フルクロキサシリン、ジクロキサシリン、アンピシリン、アモキシシリン並びにそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0059】
幾つかの好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌、及び/又は黄色ブドウ球菌の1又は2以上に対して抗菌活性を有する抗生物質剤を含む。幾つかのより好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌に対して抗菌活性を有する抗生物質剤を含む。幾つかの他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌、及び/又は黄色ブドウ球菌以外の細菌に対して抗菌活性を有する抗生物質剤を含む。
【0060】
幾つかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、黄色ブドウ球菌などのブドウ球菌属種によって引き起こされる細菌感染症の処置及び/又は防止において使用するために製剤化されている。幾つかのそのような実施形態では、医薬組成物は、配列番号1の核酸配列を含む又はそれからなるゲノムを有するバクテリオファージ、例えば、黄色ブドウ球菌を含めたブドウ球菌属種の幾つかの株を標的にする単離されたバクテリオファージF44/10を含むカクテル組成物を含む。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、配列番号2の核酸配列を含む又はそれからなるゲノムを有するバクテリオファージ、例えば黄色ブドウ球菌を含めたブドウ球菌属種の幾つかの株を標的にする単離されたバクテリオファージF125/10を含むカクテルを含む。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、少なくともF44/10及びF125/10ファージ株の両方を含むカクテルを含む。ある種の実施形態では、医薬組成物は、黄色ブドウ球菌の1又は2以上の株に対して抗菌活性を示す少なくとも1種のファージ株(例えば、F44/10及び/又はF125/10)及び様々な細菌に対して抗菌活性を示す少なくとも1種のファージ株を含むカクテルを含む。例えば、幾つかの実施形態では、医薬組成物は、配列番号1若しくは2又はそのバリアントを含む又はそれからなるゲノムを有するファージ株を、配列番号3、4若しくは5又はそのバリアントを含む又はそれからなるゲノムを有する少なくとも1種の他のファージ株と組み合わせて含むカクテルを含む。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、追加的な薬剤、例えば、黄色ブドウ球菌に対して抗菌活性を有する抗生物質剤、及び/又は黄色ブドウ球菌以外の細菌に対して抗菌活性を有する抗生物質剤をさらに含むことができる。
【0061】
幾つかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、緑膿菌などのシュードモナス属種によって引き起こされる細菌感染症の処置及び/又は防止において使用するために製剤化されている。幾つかのそのような実施形態では、医薬組成物は、配列番号3の核酸配列を含む又はそれからなるゲノムを有するバクテリオファージ、例えば、緑膿菌を含めたシュードモナス属種の幾つかの株を標的にする単離されたバクテリオファージF770/05などを含むカクテル組成物を含む。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、配列番号4の核酸配列を含む又はそれからなるゲノムを有するバクテリオファージ、例えば、同じく緑膿菌を含めたシュードモナス属種の幾つかの株を標的にする単離されたバクテリオファージF510/08を含むカクテル組成物を含む。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、少なくともF770/05及びF510/08のファージ株の両方を含むカクテルを含む。ある種の実施形態では、医薬組成物は、緑膿菌の1又は2以上の株に対して抗菌活性を示す少なくとも1種のファージ株(例えば、F770/05及び/又はF510/08)及び様々な細菌に対して抗菌活性を示す少なくとも1種のファージ株を含むカクテルを含む。例えば、幾つかの実施形態では、医薬組成物は、配列番号3若しくは4又はそのバリアントを含む又はそれからなるゲノムを有するファージ株を、配列番号1、2若しくは5又はそのバリアントを含む又はそれからなるゲノムを有する少なくとも1種の他のファージ株と組み合わせて含むカクテルを含む。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、追加的な薬剤、例えば、緑膿菌に対して抗菌活性を有する抗生物質剤、及び/又は緑膿菌以外の細菌に対して抗菌活性を有する抗生物質剤をさらに含むことができる。
【0062】
幾つかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、アシネトバクター・バウマンニなどのアシネトバクター属種によって引き起こされる細菌感染症の処置及び/又は防止において使用するために製剤化されている。幾つかのそのような実施形態では、医薬組成物は、配列番号5の核酸配列を含む又はそれからなるゲノムを有するバクテリオファージ、例えば、アシネトバクター・バウマンニを含めたアシネトバクター属種の幾つかの株を標的にする単離されたバクテリオファージF1245/05を含むカクテル組成物を含む。ある種の実施形態では、医薬組成物は、アシネトバクター・バウマンニの1又は2以上の株に対して抗菌活性を示す少なくとも1種のファージ株(例えばF1245/05)及び様々な細菌に対して抗菌活性を示す少なくとも1種のファージ株を含むカクテルを含む。例えば、幾つかの実施形態では、医薬組成物は、配列番号5又はそのバリアントを含む又はそれからなるゲノムを有するファージ株を、配列番号1、2、3若しくは4又はそのバリアントを含む又はそれからなるゲノムを有する少なくとも1種の他のファージ株と組み合わせて含むカクテルを含む。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、追加的な薬剤、例えば、アシネトバクター・バウマンニに対して抗菌活性を有する抗生物質剤、及び/又はアシネトバクター・バウマンニ以外の細菌に対して抗菌活性を有する抗生物質剤をさらに含むことができる。
【0063】
本発明の医薬組成物と共に使用するために製剤化することができる局部麻酔剤としては、これらに限定されないが、テトラカイン、塩酸テトラカイン、塩酸リドカイン、塩酸ジメチソキン、ジブカイン、塩酸ジブカイン、ブタンベンピクレート及び塩酸プラモキシンが挙げられる。局部麻酔剤の例示的濃度は、組成物全体の約0.025〜約5重量%である。幾つかの好ましい実施形態では、麻酔薬は、本発明のカクテルと共に、局所製剤である医薬組成物中に製剤化されている。
【0064】
本発明の医薬組成物と共に使用可能なコルチコステロイドとしては、これらに限定されないが、ベタメタゾン、ジプロピオネート、フルオシノロン、アクチニド、吉草酸ベタメタゾン、トリアムシノロンアクチニド、プロピオン酸クロベタゾール、デスオキシメタゾン、二酢酸ジフロラゾン、アムシノニド、フルランドレノリド、吉草酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン及びデソニドが挙げられる。コルチコステロイドの例示的濃度は、組成物全体の約0.01〜約1重量%である。
【0065】
本発明の医薬組成物と共に使用可能な増殖因子としては、これらに限定されないが、血小板由来増殖因子、顆粒球コロニー刺激因子、上皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、神経増殖因子及び血管内皮増殖因子が挙げられる。
【0066】
幾つかの好ましい実施形態では、糖尿病性足部潰瘍の処置及び制御で使用される増殖因子は、本発明のファージカクテル医薬組成物と組み合わせて使用することもできる。例えば、血小板由来増殖因子(PDGF, platelet-derived growth factor)及び顆粒球コロニー刺激因子(GCSF, granulocyte colony-stimulating factor)は、糖尿病性足部潰瘍の処置及び制御における重要な増殖因子である(Papanas et al. 2007. Lower Extremity Wounds 6(1):37-53)。PDGFは、マクロファージの潰瘍への遊走を援助し、コラーゲン合成を促し、ひいては治癒を改善すると考えられている(例えば、Meyer-Ingold W et al. 1995 Cell Biol Int 19:389-398を参照されたい)。PDGFは市販されている。市販形態としては、コラーゲン基剤中に懸濁されたすべての血小板関連増殖因子の溶液を含むProcurn(Curative Technologies In.社, New York);及び組換えのホモ二量体PDGFを含むベカプレルミン(Regranexゲル、Ortho-McNeil Pharmaceutical, Inc.社, Titusville, NJ)が挙げられる。GCSFは、糖尿病患者で損なわれる恐れがある活性である、好中球の殺菌活性及び食作用活性を増強すると考えられている(Roilides E et al 1991 J Infect Dis 163:579-583)。PDGFも市販されている。市販形態としては、フィルグラスチム(非グリコシル化のGCSF;Neupogen, Amgen Inc.社, Thousand Oaks, CA)及びレノグラスチム(グリコシル化されたGCSF;Granocyte, Sanofi Aventis Inc.社, Paris France)が挙げられる。
【0067】
糖尿病性足部潰瘍の処置及び制御で使用されるさらなる増殖因子としては、これらに限定されないが、上皮増殖因子(EGF, epidermal growth factor)、線維芽細胞増殖因子(FGF, fibroblast growth factor)、神経増殖因子(NGF, nerve growth factor)及び血管内皮増殖因子(VEGF, vascular endothelial growth factor)が挙げられる。EGFは、コラーゲン合成、上皮形成及び血管新生を促進すると考えられている(Brown GL et al 1986 J Exp Med 163:1319-1342;及びBrown GL et al 1991 Plast Reconstr Surg 88:189-194)。FGFも、コラーゲン合成、上皮形成及び血管新生を促進し、線維芽細胞増殖を援助すると考えられている(Sasaki T 1992 J Dermatol 19:664-666;及びAuirinia A et al 1998 Scand J Plast Reconstr Hand Surg 32:9-18)。NGFは、ケラチノサイト増殖及び新しい血管形成を刺激することによって治癒を促進すると考えられている(Generini S et al 2004 Exp Clin Endocrinol Diabetes 112:542-544)。VEGFも皮膚治癒を加速することが示されており、骨髄から血管前駆体及び内皮細胞を集めると考えられている(Galiano RD et al. 2004 Am J Pathol 164:1935-1947)。本明細書に開示する及び/又は当技術分野で既知の増殖因子の1又は2以上を、本発明のファージカクテルを含む医薬組成物と組み合わせて使用してもよい。
【0068】
本発明のファージカクテルを含む医薬組成物は、単位用量製剤又は多用量製剤で製剤化することができる。好ましい製剤は、局所的に適用することができる製剤、例えば、軟膏剤、液剤及び噴霧剤から選択される製剤である。他の適切な製剤としては、懸濁剤、乳濁液、エキス剤、散剤又は顆粒剤が挙げられ、さらに、分散剤又は安定化剤を挙げることができる。
【0069】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、局所的(例えば、ローション剤、液剤、クリーム剤、軟膏剤又は散布剤の形で)又は表皮的若しくは経皮的に(例えば皮膚パッチの使用によって)に投与される。さらに又は或いは、本発明の医薬組成物は、吸入によって、坐剤若しくは膣坐剤の形で、経口的に(例えば、デンプン又はラクトースなどの賦形剤を含有し得る錠剤として、カプセル剤、卵形剤、エリキシル剤、液剤又は懸濁剤として(それぞれ、着香剤及び/又は賦形剤を含有していてもよい))投与することができ、又はそれらは非経口的(例えば、静脈内、筋肉内又は皮下)に注射することができる。非経口投与に関しては、他の物質、例えば、溶液を血液と等張にするのに十分な塩又は単糖を含有し得る滅菌水溶液の形で、組成物を使用してもよい。バッカル又は舌下投与に関しては、従来の方式で製剤化することができる錠剤又はロゼンジ剤の形で組成物を投与してもよい。好ましい実施形態では、本発明のファージカクテルは、本明細書に記載の又は当技術分野で既知のように、単一の薬剤又は他の治療及び/若しくは予防剤と組み合わせて、局所投与用に製剤化されている。
【0070】
特に好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、例えば、有傷皮膚の領域への局所投与用に製剤化されている。有傷皮膚としては、これらに限定はされないが、皮膚病変、小水疱、慢性潰瘍、嚢胞、疱疹、水疱、褥瘡性潰瘍(床ずれ)及び他の褥瘡などの開放びらん、蜂巣炎性びらん、丹毒病変、創傷、熱傷創傷、よう、皮膚潰瘍、例えば、糖尿病性足感染症に関連する皮膚潰瘍、又は皮膚が損傷を受けた、傷つけられた、ひび割れた、破られた及び/若しくは別の形で損なわれた他の状態を挙げることができる。局所製剤は、滅菌緩衝液、例えば滅菌したPBS、水若しくは生理食塩水緩衝液又は滅菌したSM緩衝液を一般に含む。本発明のある種の実施形態での使用に適した特定のSM緩衝液の1つは、Tris−HCl、NaCl及び/又はMgSO.7HOを、例えば、約0.05MのTris−HCl(pH7.4〜7.5)、約0.1MのNaCl及び/又は約10mMのMgSO.7HOを含む。他の実施形態では、製剤は、SM緩衝液及び10mMのMgClをさらに含む。さらに他の実施形態では、製剤は、SM緩衝液及び約20%〜約30%のエタノールをさらに含む。
【0071】
皮膚への局所適用に関しては、本発明の医薬組成物は、局所製剤用の担体の1つ又は組合せと組み合わせることができ、担体としては、これらに限定されないが、水性液体、アルコールベースの液体、水溶性ゲル、ローション、軟膏、非水性液体基剤、鉱物油基剤、鉱物油とワセリンのブレンド、ラノリン、リポソーム、血清アルブミン又はゼラチンなどタンパク質担体、粉末セルロースカーメル、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0072】
局所製剤用の担体は、半固体及び/又はゲル様媒体を含むことができ、媒体としては、ポリマー増粘剤、水、防腐剤、活性界面活性剤、乳化剤、及び/又は溶媒若しくは混合溶媒系を挙げることができる。米国特許第5,863,560号明細書には、医薬への皮膚の曝露を援助することができる担体の幾つかの異なる組合せが開示されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。担体は、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008/0260697号明細書に開示されているような制御放出製剤を伴っていてもよいし、伴っていなくてもよい。担体は、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公第2008/0038322号明細書、米国特許出願公開第2008/0138311号明細書、米国特許出願公開第2009/0130196号明細書、欧州特許第1812025号明細書、欧州特許第1817043号明細書及び欧州特許第1833497号明細書のうちのいずれか1つに記載されているようなマトリックスに吸着したファージを伴っていてもよいし、伴っていなくてもよい。幾つかの実施形態では、担体は、粘着製剤、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公第2009/0191254号明細書に開示されているような、例えばゲル剤を伴っていてもよいし、伴っていなくてもよい。
【0073】
幾つかの特に好ましい実施形態では、本発明の局所医薬組成物は、密封容器中に提供される。容器は、バイアル、チューブ、ビン、アンプルなどでもよく、ガラス、プラスチック又は他の適切な材料を含んでもよいし、それらからなってもよい。例えば、アンプルは、一般に、ガストーチによる加熱及び重力で形づけられた短いガラス管から工業的に生産される。例えば品質管理のためにコンピュータビジョン法が用いられることが多い。アンプルの充填及び密封は、自動化された機械で行ってもよい。空のアンプルは、科学用ガラス供給会社から購入することができ、例えば、小型ガストーチを用いて、好ましくは不活性雰囲気下で、密閉することができる。幾つかの実施形態では、医薬組成物に加えて、不活性ガスで容器を充填することもできる。幾つかの実施形態では、以下に記載するように、ファージカクテル組成物は、アンプル又は他の適切な容器中に提供され、有傷皮膚と直接接触するのに適した媒体、例えば、パッチ、ワイプ、帯具、包帯に移されて使用される。
【0074】
送達の局所様式としては、塗抹、噴霧、帯具、徐放性パッチ、液体を吸収したワイプ及びそれらの組合せを挙げることができる。幾つかの特に好ましい実施形態では、本発明のファージカクテル組成物は、直接的に又は担体(複数可)内のいずれかで、皮膚、特に、有傷皮膚と直接接触するのに適したパッチ、ワイプ、帯具、包帯又は他の媒体中に提供される。
【0075】
幾つかの実施形態では、本発明の医薬組成物の局所投与は、包帯の使用を含む。本発明のファージカクテルを含む医薬組成物は、包帯に組み込んでもよく、及び/又は包帯の使用に加えて、別々に適用してもよい。包帯は、創傷を保湿する、感染に対するバリアを作る、及び/又は周囲の皮膚を乾燥に保つことによって、治癒を促進する。
【0076】
幾つかの実施形態では、包帯は、湿式創傷包帯を含む。湿潤創傷療法は、湿式創傷包帯の使用を含み、例えば糖尿病性足部潰瘍を含めた非治癒創傷の処置及び制御の標準的な療法に相当する。湿潤創傷療法では、創傷は、外部の混入物から保護し、創傷の乾燥を防止し、創傷閉鎖に貢献する環境を提供する材料で手当てされる。創傷中の水分度は、糖尿病性潰瘍を処置する際に考慮されるべきである。高いレベルの滲出液は、これらに限定されないが、アルジネート、発泡体、コラーゲンとアルジネートの組合せ物、カルボキシメチルセルロース材料又はガーゼを含めた水分吸収材料の選択を是認する。低滲出液及び乾燥した創傷は、一般に、ヒドロゲルによく反応する。ヒドロゲルシートは、架橋結合した親水性ポリマーの3次元網目構造を含むことが多い。非晶質ヒドロゲルはヒドロゲルシートと組成が似ているが、架橋結合を欠く。ゲルはまた、コラーゲン、アルジネート又は複合糖質などのさらなる成分を含んでいてもよい。
【0077】
米国における糖尿病性足部潰瘍の処置の標準的な包帯ケアは、今もなお、湿乾又は湿潤生理食塩水ガーゼ包帯の使用である。アルジネート包帯は、褐海藻に由来する自然の多糖のカルシウム又はカルシウム−ナトリウム塩を含むことが多い。アルジネート材料が、ナトリウムが豊富な創傷滲出液に接触すると、イオン交換が起こり、親水性ゲルが生成される。
【0078】
さらなる包帯の選択としては、これらに限定されないが、裏面が粘着性のフィルムを含めたフィルム、ゲル及びシリコーンでコーティングされた発泡体を含めた発泡体、ヒドロコロイド、コラーゲンベースの包帯、吸収ポリマーなどが挙げられる。ヒドロコロイド包帯は、粘着性、吸収性及びエラストマーの成分を含むことが多い。例えば、カルボキシメチルセルロースは一般的な吸収性成分である。ヒドロファイバー包帯も、カルボキシメチルセルロース、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含むことが多い。発泡体包帯は、液体を保持することができる小さな開放セルを有するポリマーを、多くの場合はポリウレタンを含むことが多い。幾つかの種類の発泡体包帯は、上面を覆う防水性フィルムを有し、創傷接触面又は創傷境界部に粘着性コーティングを有し得る。フィルム包帯は、粘着剤を持つ片面に、ポリウレタンコーティングした単一の薄い透明なシートを含むことが多い。このシートは、気体及び水蒸気に対して透過性であるが、創傷液体に対して透過性ではない。ヒドロファイバー包帯は、カルボキシメチルセルロースナトリウムファイバーを含むことが多い。コラーゲンベース包帯は、ウシ、ブタ、ウマ又はトリの供給源に由来する精製コラーゲンを含むことが多い。コラーゲンベース包帯は、例えば線維芽細胞産生を刺激することによって創傷の治癒を助けると考えられている。
【0079】
幾つかの実施形態では、本発明の医薬組成物の局所投与は、点滴注入を含む。本発明のファージカクテルを含む医薬組成物は、点滴注入に組み込まれてもよく、及び/又は点滴注入の使用に加えて別々に適用されてもよい。点滴注入は、液体医薬組成物を徐々に、例えば、液体一滴ずつの導入による投与を指す。典型的な点滴注入療法は、低陽圧下で液体を創傷に滴下注入する。点滴注入で使用するためのデバイスとしては、例えば、Kritter型点滴注入カテーテル(例えば、Brent H. et al. 2005. Wounds 17(2):37-48を参照されたい)が挙げられる。液体の点滴注入及び分配を改善する当技術分野で既知の手法としては、これらに限定されないが、点滴注入液で創傷を充填すること、多孔性の創傷フィラーを適用すること、及び/又は陰圧閉鎖療法と組み合わせることが挙げられる。
【0080】
幾つかの実施形態では、本発明の医薬組成物の局所投与は、陰圧閉鎖療法を含む。陰圧閉鎖療法(NPWT, negative pressure wound therapy)は、新しい組織の増殖を増進及び/又は加速するために、有傷皮膚の創傷領域又は他の領域に近接して減圧を使用することを指す。この療法は、真空ポンプにつながれた密閉された創傷包帯を使用して、その領域へ大気未満の気圧を制御して施すことを伴う。「陰圧閉鎖療法」は、「減圧療法」又は「真空療法」と呼ばれる場合もある。一般的には、減圧は、多孔性パッドを介して有傷皮膚の領域に施される。この多孔は、その領域に減圧を分配すること及び/又は出された液体を運ぶことができる孔を含有する。
【0081】
幾つかのデバイスをNPWTで使用することができる。NPWTデバイスは、真空ポンプ、排液管及び/又は包帯セットを備えることが多い。ポンプは、定置型でも携帯型でもよく、AC電源に依拠してもバッテリ電源で依拠してもよく、及び/又は吸引力の調整が可能であってもよい。包帯セットは、例えば創傷に置かれる発泡体又はガーゼ包帯、及びその領域を密閉するための粘着性フィルムドレープを含んでもよい。排液管は、使用される包帯又は処置される創傷に応じて、種々の配置で加えられてもよい。一旦包帯が密閉されると、−125から−75mmHgで一般に変動するレベルで、連続的又は断続的に圧を送達するように真空ポンプをセットすることができる。NPWTは、例えば、使用するNPWTデバイスによって、液体医薬組成物などの液体を送達することが可能になる場合に、本発明の医薬組成物の投与に使用してもよい(例えば、Gerry R, et al. 2007. Ann Plast Surg 59(1):58-62を参照されたい)。
【0082】
本明細書に記載の及び/又は当技術分野で既知の投与様式を、本発明のファージカクテルの所望の投薬量を適切な投薬レジメンに従って送達するのに使用してもよい。投薬量及び投薬レジメンは、特定の製剤、投与経路、処置される状態及び他の要因に応じて変わり得る。動物実験は、例えば、通常の医師の能力内にあるような、ヒトの療法における有効用量を決定するための信頼できるガイダンスを提供することができる。有効用量の種間スケーリングは、例えば、Mordenti, J. et al. "The use of interspecies scaling in toxicokinetics" in Toxicokinetics and New Drug Development, Yacobi et al., Eds., Pergamon Press, New York 1989, pp 42-96によって記載されている原理に従って、当業者によって実施することができる。
【0083】
本発明の医薬組成物は、投薬レジメンに従って投与することができる。慢性潰瘍及び糖尿病性足感染症の処置(例えば、これに限定されるが、それらに関連する皮膚潰瘍の処置が含まれる)では、第1の投薬レジメンは、最初に、例えば、導入期の間に採り入れてもよく、第2の投薬レジメンは、後に、例えば、維持期の間に採り入れてもよい。幾つかの実施形態では、導入期の投薬レジメンは、処置の最初の約12時間にわたって、又は最初の約18時間、約24時間、約36時間若しくは約48時間にわたって採り入れられる。幾つかの好ましい実施形態では、導入期の投薬レジメンは、約毎時間、約2時間毎、4時間毎、6時間毎、8時間毎、10時間毎又は12時間毎に本発明の医薬組成物を投与することを含む。より好ましい実施形態では、導入期の投薬レジメンは、約4時間毎又は約6時間毎に、例えば、最初の24時間にわたって、本発明の医薬組成物を投与することを含む。より一層好ましい実施形態では、医薬組成物は、導入期の投薬レジメンに従って局所的に投与される。
【0084】
幾つかの実施形態では、導入期の後に維持期が続き、例えば、そこでは、異なる投薬レジメンを採り入れてもよい。維持期は、最初の処置に続いて、何日間、何週間、何か月間又はさらに長く続いてもよい。幾つかの実施形態では、維持期は、導入期に続いて約1、2、3、4、5、6又は7日間続く。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、2、3若しくは4週間;2、4、6、8、10若しくは12か月間;又は2、3、4、5年間若しくはそれ以上投与される。さらに幾つかの実施形態では、本発明による医薬組成物は、慢性的に、例えば数年又は患者の生涯にわたって投与される。
【0085】
幾つかの実施形態では、維持期の投薬レジメンは、導入期の投薬レジメンと比較してより低い投薬頻度での本発明の医薬組成物の投与を含む。例えば、幾つかの好ましい実施形態では、医薬組成物は、約6時間毎、8時間毎、10時間毎、12時間毎、16時間毎、20時間毎、24時間毎、30時間毎、36時間毎、42時間毎又は48時間毎に投与される。より好ましい実施形態では、維持期の投薬レジメンは、例えば、導入期に続いて少なくともさらに約3又は4回にわたって、約12時間毎又は約24時間毎に、本発明の医薬組成物を投与することを含む。より一層好ましい実施形態では、医薬組成物は、維持期の投薬レジメンに従って局所的に投与される。
【0086】
5.3 治療的使用
本発明の別の態様は、細菌感染症の防止及び/又は処置におけるファージカクテル組成物の使用に関する。具体的な実施形態では、本発明の医薬組成物が与えられる対象は、哺乳動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ類、霊長類(例えばヒト)、げっ歯類、ウサギ類又はトリ(例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ))である。好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物が与えられる対象は、ヒト、特に、糖尿病性足感染症を含めた慢性潰瘍を罹患する又は罹患する危険性がある糖尿病患者である。本発明の文脈において、「処置」は、医薬組成物が与えられている対象において治療的有用性を得ることを指す。治療的有用性の達成に関しては、その目的は、病態又は障害と関連がある症状又は根本原因(例えば細菌感染症)をなくすこと、小さくすること、管理すること、その重症度を低下させること、その症状又は根本原因の悪化を防止すること、その症状又は根本原因を寛解させる又はその進行を遅らせることである。ある種の実施形態では、本発明のファージカクテルは、1又は2以上の細菌によって引き起こされる感染症の発症を防止する、予防的又は防止的な方策として働き得ることも企図される。「防止」は、医薬組成物が与えられている対象において予防的有用性を得ることを指す。予防的有用性の達成に関しては、その目的は、病態又は障害と関連がある症状又は根本原因(例えば細菌感染症)を遅延させる又は防止することである。
【0087】
本発明のファージカクテルは、複数の細菌株に対して活性を有する。幾つかの好ましい実施形態では、ファージカクテルは、アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び/又は黄色ブドウ球菌の複数の株に対して活性を有する。したがって、本発明の別の態様は、ヒトと動物の両方において、ファージカクテル組成物を使用して、アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び/又は黄色ブドウ球菌と関連がある感染症を処置及び/又は防止する方法を提供する。他の態様では、本発明は、これらの細菌の近縁の種又は株と関連がある感染症を処置及び/又は防止する方法を提供する。幾つかの特に好ましい実施形態では、細菌感染症は、糖尿病性足感染症などの糖尿病性下肢感染症と関連がある感染症である。
【0088】
アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌は、特に、糖尿病患者を含めた易感染性免疫系を有する個体において、多くの重篤な日和見感染症の原因となる。本発明の医薬組成物は、これらに限定されないが、皮膚感染症、創傷内及び創傷の周囲の感染症、慢性潰瘍、熱傷創傷に関連する潰瘍、手術後の感染症、カテーテル及び外科用ドレーンと関連がある感染症並びに血液の感染症を含めた、アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び/若しくは黄色ブドウ球菌と関連がある又は他の細菌の種若しくは株と関連があるいかなる感染症も処置及び/又は防止することが企図される。好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、有傷皮膚の領域に関連する細菌感染症の処置及び/又は防止において使用される。有傷皮膚の領域に関連する感染症としては、これらに限定されないが、糖尿病性足部潰瘍などの皮膚潰瘍、皮膚病変、小水疱、嚢胞、疱疹、水疱、褥瘡性潰瘍(床ずれ)及び他の褥瘡などの開放びらん、慢性潰瘍、蜂巣炎及びそれに関連するびらん、丹毒及びそれに関連する病変、創傷、熱傷及びそれに関連する創傷、よう、又は皮膚が損傷を受けた、ひび割れた、傷つけられた、破られた及び/若しくは別の形で損なわれた他の状態に関連する感染症が挙げられる。
【0089】
特に好ましい実施形態では、本発明のファージカクテル組成物は、慢性潰瘍の処置において使用される。慢性潰瘍は、特に血液循環障害の患者において、種々の要因によって引き起こされる、例えば心血管系の問題によって又はベッド若しくは車椅子からの外部圧によって引き起こされる、創傷から生じ得る。800万人を超える患者が、米国だけで毎年、慢性皮膚潰瘍と診断され(Harsha, A. et al., 2008, Journal of Molecular Medicine, 86(8): 961-969)、これは、年間100億ドルを超える費用がかかる(Margolis, DJ, et al., 2002, Journal of the American Academy of Dermatology 46(3): 381-386)。慢性潰瘍は、口、咽頭、胃及び皮膚に発生する可能性がある。慢性皮膚潰瘍としては、糖尿病性潰瘍、静脈性潰瘍、放射線潰瘍及び圧迫潰瘍が挙げられ、慢性皮膚潰瘍の3つの主要なカテゴリーは、糖尿病性潰瘍、静脈うっ血潰瘍及び圧迫潰瘍である。慢性潰瘍によって、皮膚の大部分の完全な状態が損なわれ得、病的状態及び死亡にさえつながる。
【0090】
より一層特に好ましい実施形態では、本発明のファージカクテル組成物は糖尿病性足感染症などの糖尿病性下肢感染症の処置において使用される。糖尿病性足感染症は、糖尿病の主な合併症の1つであり、全糖尿病患者の約15%に起こり、全体の約85%が下腿を切断するという結果になる(Brem, et al., J. Clinical Invest., 2007, 117(5):1219-1222)。糖尿病は、創傷治癒過程の通常のステップを妨害し、その結果、糖尿病性足感染症は、非治癒性の慢性皮膚潰瘍と関連するようになり得る。
【0091】
慢性創傷は、急性創傷治癒の通常の過程の不全を表す。創傷治癒は、伝統的に、別々の3期、すなわち炎症、増殖及び再形成に分類されている。創傷治癒の炎症期は、傷害時に、血小板血栓を介する血餅形成によって始まり、それによって、好中球及びマクロファージからの応答が惹起される。好中球は、最初に、種々のプロテアーゼ及び活性酸素フリーラジカルを放出することによって、創傷の細菌及び挫滅組織片を取り除く。次いで、マクロファージが、化学誘引物質によって創傷部位に誘引され、続いてマクロファージ自体の化学誘引物質を放出して、線維芽細胞及びより多くのマクロファージを刺激する。増殖期の間、線維芽細胞は、上皮形成、血管新生及びコラーゲン化を惹起する。上皮形成は、それが無傷のままであるならば、一般に基底膜から起こり、無傷でないならば、創傷縁から起こる。線維芽細胞は、この期の間、III型コラーゲンを合成し、筋線維芽細胞に変わり、創面収縮を刺激するのを助ける。再形成期の間、III型コラーゲンは、I型コラーゲンに置き換えられ始める。コラーゲンは、組織的な、架橋結合した網目構造に織り込まれ、その強度は、傷害を受けていない元の組織の80%に近づく。
【0092】
この3期の治癒過程を止まらせ、急性創傷を慢性創傷に転換し得る多くの要因が存在する。これらとしては、線維芽細胞の低増殖能力、受容体のダウンレギュレーション、増殖因子の低減、又は真皮中の適切なタンパク質マトリックスの非存在を挙げることができる。さらに、不十分な潅流及び/又は栄養は、創傷を炎症期に停止させ得、創傷中に滲出液の過剰な蓄積をもたらし得る。慢性潰瘍は、例えば上記のような創傷治癒の通常の過程に従うことができない、及び/又は最初の処置に応答することができない若しくは適切に応答することができない有傷皮膚の領域などの、有傷皮膚の非治癒領域と考えることができる。皮膚の慢性潰瘍は、顕著な治癒傾向なしに4週を超えて続く創傷病変として、又は頻繁に再発する創傷として特徴づけることができる(Fonder, M. et al., 2012, Journal of the American Academyof Dermatology 58(2): 185-206)。慢性創傷は、赤色の肉芽及び黄色膿、顆粒状組織周囲のくすんだ紫色の皮膚、又は灰白色かつ腫大した肉芽と共に出現し得る。慢性皮膚潰瘍の標準的なケア手順としては、例えば以下が挙げられる:壊死組織又は感染組織の除去;十分な血液循環の確立;湿性の創傷環境の維持;創傷感染の管理;創傷クレンジング;及び糖尿病性潰瘍の対象に対する血糖コントロールを含めた栄養サポート。例えば、糖尿病患者では、血糖レベルの不十分なコントロールは、細菌を創傷内でより急速に増殖させ、またさらに、糖尿病における神経変性は、その状態が有痛性でない場合もあり、それにより少なくとも最初は検知されずにいることを意味する。糖尿病性足部潰瘍を含めた慢性潰瘍は、日和見性の細菌にさらに感染することが多く、これは状態の増悪につながる。アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌は、そうした感染症と関連がある。
【0093】
アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌はまた、液体含量が高い器官系に関連する感染症と関連があり、本発明のファージカクテルはそうした感染症に関して治療及び/又は予防の用途があることが企図される。例えば、本発明の医薬組成物は、気道、脳脊髄液、腹膜液及び尿路の感染症の防止又は処置のために使用してもよい。本発明の組成物は、院内肺炎、持続性自己管理腹膜透析(CAPD, continuous ambulatory peritoneal dialysis)と関連がある感染症、カテーテル関連菌血症及び院内髄膜炎の防止及び/又は処置に使用することもできる。幾つかの実施形態では、本発明のファージカクテル組成物は、例えば病院施設で、予防的に使用される。例えば、本発明のファージカクテル組成物は、例えばカテーテル法及び任意の他の医療手順又はデバイスが原因の創傷又は損傷皮膚に関連する感染症を防止するのに使用され得る。
【0094】
幾つかの好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び/又は黄色ブドウ球菌によって引き起こされる細菌感染症を処置及び/又は防止する方法で使用するために製剤化されている。幾つかのより好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌によって引き起こされる細菌感染症を処置及び/又は防止する方法で使用するために製剤化されている。幾つかの他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び/又は黄色ブドウ球菌以外の細菌によって引き起こされる細菌感染症を処置及び/又は防止する方法で使用するために製剤化されている。
【0095】
幾つかの好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、黄色ブドウ球菌などのブドウ球菌属種;緑膿菌などのシュードモナス属種;及びアシネトバクター・バウマンニなどのアシネトバクター属種によって引き起こされる細菌感染症を処置及び/又は防止する方法で使用するために製剤化されている。幾つかのそのような実施形態では、医薬組成物は、配列番号1、2、3、4及び5の核酸配列又はそのバリアントを含む又はそれからなるゲノムを有するバクテリオファージ、例えば単離されたバクテリオファージ株F44/10、F125/10、F770/05、F510/08及びF1245/05又はそのバリアントを含むカクテル組成物を含む。幾つかの特に好ましい実施形態では、医薬的カクテル組成物は、慢性潰瘍、例えば糖尿病性足感染症及びそれに関連する皮膚潰瘍の処置、防止、制御及び/又は管理において使用される。
【0096】
幾つかの実施形態では、本発明は、慢性潰瘍を処置及び/又は防止する方法であって、本発明の医薬組成物の治療又は予防に有効な量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。好ましい実施形態では、投与は、慢性潰瘍と関連がある有傷皮膚の領域への局所投与を含む。より好ましい実施形態では、局所投与は、処置される領域のデブリードマン後に行われる。
【0097】
幾つかの実施形態では、本発明は、糖尿病性足感染症を処置及び/又は防止する方法であって、本発明の医薬組成物の治療又は予防に有効な量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。好ましい実施形態では、投与は、糖尿病性足感染症、例えば皮膚潰瘍と関連がある有傷皮膚の領域への局所投与を含む。より好ましい実施形態では、局所投与は、処置される領域のデブリードマン後に行われる。
【0098】
デブリードマンは、幾つかのアプローチによって達成することができる。外科的デブリードマンは、創傷の死滅した組織又は有傷皮膚の他の領域を切除することを伴う。機械的なデブリードマンは、創傷の挫滅組織片を離し、除去するための様々な方法、例えば加圧潅注デバイス、渦流水浴又は特殊化した包帯を使用する。例えば、創傷を湿性かつ清潔に保つ適切な包帯を使用する自己分解性デブリードマンは、死滅した組織を破壊するために酵素を動員するという体の自然過程を増強する。酵素的デブリードマンは、創傷部位又は有傷皮膚の他の領域でさらに死滅した組織を破壊するのを援助するために、化学的酵素及び適切な包帯を使用する。
【0099】
デブリードマンは、存在する細菌の生物汚染度を低減し、さらに、局所抗菌性療法(TAT, topical antimicrobial therapy)に対する時間依存的治療濃度域を広げるので、局所処置を改善する(Wolcott RD, et al. 2010. J Wound Care 19:320-328)。デブリードマンのタイミングに関しては、創傷管理において、一旦この処置選択が選ばれれば、遅延したデブリードマンよりも、早期又は即時のデブリードマンが好ましい。さらに、創傷管理間の多数のデブリードマンが、必要とされる場合がある(Wolcott RD, et al. 2009. J Wound Care 18(2):54-6)。例えば、幾つかの実施形態では、デブリードマンは、本発明のファージカクテル組成物の局所適用に先行し、カクテル組成物の各投与の前に反復される。幾つかの実施形態では、デブリードマンは、カクテル組成物の1つおきの投与の前のみ、又はカクテル組成物の第3、第4、第5若しくは第6の投与毎の前のみ実施される。幾つかの実施形態では、創傷デブリードマンが、本発明のカクテル組成物の局所投与の前に実施されるかどうかは、創傷を処置する健康管理従事者、例えば、医師、医師の補助者又は緊急医療員の臨床判断内にある。
【0100】
本発明のファージカクテル組成物は、糖尿病性足感染症及びそれに関連する皮膚潰瘍を含めた慢性潰瘍と関連がある感染症の処置、管理、制御及び/又は防止に使用され得る。他の実施形態では、本発明のファージカクテル組成物は、他の有傷皮膚の領域、例えば、蜂巣炎、びらん、丹毒病変、褥瘡性潰瘍、熱傷創傷及び褥瘡と関連がある細菌感染症の処置、管理、制御及び/又は防止に使用される。幾つかのそのような実施形態では、使用される組成物は、例えば、上記のような有傷皮膚の領域への直接適用のための局所投与用に製剤化されている局所組成物でもよい。
【0101】
本発明のファージカクテル組成物は、褥瘡性潰瘍の処置、管理、制御及び/又は防止にも使用される。褥瘡又は圧迫潰瘍とも呼ばれる褥瘡性潰瘍は、その領域への長期の圧迫から生じる皮膚及び下層組織への傷害である。例えば、床ずれは、たいていの場合、体の骨性領域、例えば踵、足首、股関節部又は殿部を覆う皮膚に発生する。
【0102】
床ずれは、その重症度に基づいて4ステージのうちの1つに分類される。ステージIは褥瘡の初期ステージではあるが、皮膚はまだ無傷である。皮膚は赤色、灰色、青みを帯びた色又は紫色に見える場合があり、触った時に蒼白にならない。ステージIIは、有傷皮膚の開放創を伴うことが多い。このステージでは、皮膚の外層(表皮)及び皮膚の下層(真皮)部が損傷を受けているか又は失われている。潰瘍は、浅い、ピンクがかった赤色の、たらい形状の創傷として出現し得る。ステージIIIでは、潰瘍は深創傷であり、皮膚の喪失によって、幾らかの量の脂肪が露出される可能性があり、潰瘍は、クレーター様の外見を有する。創傷の底部は、幾らかの黄色がかった死滅した組織(脱落組織)を有する場合もある。ステージIVの潰瘍は大規模な組織喪失を示し、創傷によって、筋肉、骨及び腱が露出される可能性がある。創傷の底部は、脱落組織、又は黒ずんだ、皮殻質の、死滅した組織(痂皮)を含有することがあり得る。
【0103】
糖尿病性足部潰瘍の処置のように、デブリードマンは、損傷を受けた、死滅した又は感染した組織を創傷から除去するのに使用してもよく、これは、例えば本明細書に記載の及び/又はそうでなければ当技術分野で既知の適切な治癒を促す。幾つかの実施形態では、本発明の医薬組成物の投与はデブリードマン後に行われる。例えば、本明細書に開示するファージカクテルを含む医薬組成物は、褥瘡性潰瘍の外科的、機械的、自己分解的又は酵素的なデブリードマン後、褥瘡性潰瘍に局所的に投与してもよい。
【0104】
本発明のファージカクテル組成物は、これらに限定されないが、蜂巣炎及び丹毒に関連するびらん及び病変を含めた、蜂巣炎及び/又は丹毒の処置、管理、制御及び/又は防止にも使用される。蜂巣炎及び丹毒は、皮膚の保護バリアの裂け目を介して細菌が侵入した結果として発生する皮膚感染症である。例えば、皮膚の亀裂、切り傷、疱疹、熱傷、虫刺され、クモ咬傷、入れ墨、外科的創傷、静脈内薬物注射又は静脈内カテーテル挿入部位は、細菌に侵入手段を提供し得る。A群レンサ球菌(Streptococcus)及びブドウ球菌は、蜂巣炎に関与する最も一般的な細菌である。蜂巣炎は、中年と高齢者の間で最も頻繁に観察されるが、丹毒は、幼児及び高齢者で起こる(Ellis Simonsen SM et al. 2006. Epidemiol Infect. 134(2):293;及びEriksson B. et al. 1996 Clin Infect Dis 23:1091)。また、免疫不全、糖尿病、飲酒症、真菌性感染症及びリンパ排出障害の人々は、危険性が高まる。糖尿病は、特に足の蜂巣炎になりやすい。なぜならば、この疾患が脚の血液循環の機能障害を引き起こすからである。丹毒及び蜂巣炎の両方について、下肢が最も一般的な感染症部位である(Ellis Simonsen SM et al. 2006. Epidemiol Infect. 134(2):293; Chartier C et al 1996 Int J Dermatol 35:779)。
【0105】
蜂巣炎及び丹毒は同時に存在することが多く、皮膚紅パッチ、浮腫及び熱っぽさの領域として一般に現れる。これらは、丹毒は上部真皮及び表在性リンパを伴うが、蜂巣炎はより深い真皮及び皮下脂肪を伴うという点において異なる。したがって、丹毒は、蜂巣炎よりも特徴的な解剖的特色を有する。丹毒病変は、関与する組織と関与しない組織の間にはっきりした境界線を有して、周囲の皮膚レベルより高く隆起する可能性がある(Bisno AL et al. 1996 N Engl J Med 334:240)。病変は、赤色で、腫大して、温かく、硬化したように見え、及び/又はオレンジの皮と硬度が似ている発疹として出現し得る。丹毒は、例えば「チョウ」の模様で顔に出現し得る。より重篤な感染症は、皮膚壊死の可能性がある、小水疱、水疱及び点状出血をもたらし得る。さらに、丹毒の患者は、発熱及び悪寒を含めた全身的発現を伴う症状の急性発症を有する傾向がある。
【0106】
蜂巣炎の患者は、発生経過がよりゆっくりとした傾向があり、数日の時をかけて症状が出現する。様々な形態の蜂巣炎としては、眼窩周囲蜂巣炎、(病的肥満個体における)腹壁蜂巣炎、(肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)が原因の)頬部蜂巣炎、ルートヴィヒアンギナ(顎下隙内の蜂巣炎)及び(A群β−溶血性レンサ球菌が原因の)肛門周囲蜂巣炎(Barzilai A, et al, 1998 Pediatr Infect Dis J. 17(4):358; Thorsteinsdottir B, et al. 2005 Scand J Infect Dis. 37(8):605)が挙げられる。蜂巣炎は、高体温及びふるえを伴う、インフルエンザ様症状ももたらし得る。
【0107】
幾つかの実施形態では、蜂巣炎又は丹毒の処置は、抗生物質剤投与をさらに含む。例えば、本発明による医薬組成物は、ペニシリン、クリンダマイシン及びエリスロマイシンからなる群から選択される抗生物質剤と組み合わせて、丹毒病変へ局所的に投与してもよい。別の例としては、本発明による医薬組成物は、フルクロキサシリン、ジクロキサシリン、ペニシリン、アンピシリン及びアモキシシリンからなる群から選択される抗生物質剤と組み合わせて、蜂巣炎に関連するびらんへ局所的に投与してもよい。抗生物質は、経口的、静脈内に又は局所的に、例えば、本発明のカクテルの局所投与と共に投与してもよい。
【0108】
本発明のファージカクテル組成物は、熱傷創傷に関連する感染症の処置、管理、制御及び/又は防止にも使用される。熱傷創傷は、直接的に又は間接的に熱傷から引き起こされる、任意の有傷皮膚の領域である。熱傷は、熱及び電気、化学物質、光、放射線又は摩擦によって引き起こされ得る、皮膚への傷害の型である。熱傷は、皮膚(上皮組織)にのみ影響を及ぼす場合があるが、場合によっては、より深い組織、例えば筋肉、骨及び血管にも傷害を与える。熱傷は、傷害の機序、深度、範囲及び関連する傷害並びに合併性によって分類することができる。熱傷は慣習的に真皮への傷害の深度に基づいて説明されており、1度、2度、3度及び4度の熱傷に大まかに分類されている。Walls et al., 2009, Rosen's Emergency Medicine: Expert Consult Premium Edition(Rosen's Emergency Medicine: Concepts & Clinical Practice (2v)。熱傷創傷の重要な特徴としては、その原因(熱、化学物質、電気)、解剖的位置、深度(全体の又は部分的な厚さ)、持続期間及び範囲(全体表面積のパーセント)が挙げられる。熱傷創傷治癒に影響を及ぼす患者の特徴としては、年齢、栄養状態、根底にある医学的状態及び随伴性傷害(例えば、頭部外傷、吸入傷害、骨折)が挙げられる。
【0109】
熱傷患者の間で感染症は主だった問題であり、報告された院内感染発生率は100人の患者当たり63〜240及び1000患者入院日数当たり53〜93で変動し、これは、主に使用された定義に依存する(Chim H, et al, 2007, Burns 33:1008-1014;及びWibbenmeyer L, et al., 2006, J Burn Care Res 27:152-60)。さらに、熱傷創傷の細菌感染症は、有害転帰及び死亡と関連がある。一連の175人の重篤な熱傷患者では、例えば、感染症は、患者の83%において多臓器機能不全に先行し、亡くなった患者の36%の直接の死因と考えられた(Fitzwater J, et al., 2003, J Trauma 54:959-66)。熱傷創傷は、多数の原因から感染し得る。熱傷創傷は、グラム陽性細菌、主に、熱傷に曝露された汗腺及び毛包の通常の深部の生息菌であるブドウ球菌に最初に感染し得る(Sharma BR., 2007, Infect Dis Clin North Am 21:745-59;ix)。湿性の、血管性焼痂は、さらに微生物の増殖を助長し得る。グラム陰性細菌の感染症は、例えば、熱傷時における腸間膜の血流の低減及びそれに続く傷害が原因となる、結腸からの移行から生じ得る(Herndon DN, et al., 2000, Crit Care Med 28:1682-3)。さらに、熱傷患者は、細胞傷害性Tリンパ球応答障害、好中球減少を引き起こす骨髄系成熟停止、好中球機能障害及びマクロファージ産生の低下を含めた免疫不全にかかる可能性がある(Sharma BR., 2007, Infect Dis Clin North Am 21:745-59,ix; Gamelli RL, et al., 2000, J Burn Care Rehabil 21:64-9; Hunt JP, et al., 1998, J Surg Res 80:243-51;及びShoup M, et al., 1998, Ann Surg 228:112-22)。最終的に、熱傷患者は、血管内カテーテル関連感染症及び人工呼吸器関連肺炎を含めた、集中治療室の他の患者に共通の病院内感染症にかかりやすく、感染症の全体の発生率が、集中治療室の他の患者のものよりも高い(Chim H, et al., 2007, Burns 33:1008-14;及びWibbenmeyer L, et al., 2006, J Burn Care Res 27:152-60)。実際、第1週後の、熱傷患者における血流感染症のたいていのエピソードは、病院型多剤耐性細菌によって引き起こされる(Wibbenmeyer L, et al., 2006, J Burn Care Res 27:152-60;及びRessner RA, et al., 2008, J Am Coll Surg 206:439-44)。
【0110】
熱傷の従来の処置としては、デブリードマン及び切除、包帯を創傷に適用すること、創傷閉鎖、皮膚移植、輸液蘇生、抗生物質投与などの創傷感染の管理、疼痛管理、栄養サポート並びに/又は過剰な瘢痕形成を阻害するための方策が挙げられる。熱傷は、清潔かつ乾燥したシート又は包帯(クリングフィルムなど)で覆ってもよい。熱傷30分以内の、冷水による早期冷却は、熱傷深度及び疼痛を低減する。デブリードマン、清浄及び包帯は、熱傷創傷ケアの重要な態様である。
【0111】
幾つかの実施形態では、熱傷創傷の処置は抗生物質剤投与をさらに含む。抗生物質予防投与が、集中治療室の患者の間で、死亡、菌血症及び人工呼吸器関連肺炎を低減できることが示された(Silvestri L, et al, 2007, J Hosp Infect 65:187-203;及びDe Smet AM, et al., 2009, N Engl J Med 360:20-31)。熱傷患者では、皮膚は、感染症のさらなる原因である(Avni T, et al., 2010, BMJ 340: c241)。幾つかの実施形態では、熱傷創傷の処置は、疼痛を管理するための薬剤の投与をさらに含む。本発明による医薬組成物は、単純な鎮痛薬、イブプロフェン、アセトアミノフェン及び麻薬からなる群から選択される疼痛管理のための薬剤と組み合わせて、熱傷創傷に局所的に投与してもよい。疼痛を管理するための抗生物質剤及び/又は薬剤は、経口的、静脈内に又は局所的に、例えば、本発明のカクテルの局所投与と共に投与してもよい。従来の熱傷処置の1又は2以上の他の態様も、本発明のファージカクテル組成物と組み合わせて使用してもよい。
【0112】
幾つかの実施形態では、本発明のファージカクテル組成物と組み合わせて使用するための疼痛管理用の薬剤は、パラセタモール(アセトアミノフェン)、非ステロイド系抗炎症薬、イブプロフェン、ケトプロフェン、ピロキシカム、ヒドロコドン、モルヒネ、ヒドロモルヒネ、オキシモルフォン、フェンタニル、オキシコドン、ジアモルヒネ、メサドン、ブプレノルフィン、メペリジン、ペンタゾシン、デキストロモラミド、ジピパノン、アミトリプチリン、ジラウジッド、タペンタドール及びメサドンからなる群から選択される1又は2以上の薬剤を含む。疼痛管理のための薬剤は、本明細書に記載の及び/又は当技術分野で既知の、疼痛のためのいかなる他の薬剤も含んでもよい。
【0113】
幾つかの好ましい実施形態では、疼痛管理のための薬剤は、局所麻酔薬などの局所的に適用できるものである。局所麻酔薬は、体部分の表面、例えば皮膚の任意の領域、眼球の前面、鼻、耳若しくは咽頭の内部、肛門又は生殖器領域を麻痺させるのに使用される局部麻酔薬である。幾つかの実施形態では、本発明のファージカクテル組成物と組み合わせて使用するための疼痛管理のための薬剤は、ベンゾカイン、ブタンベン、ジブカイン、リドカイン、オキシブプロカイン、プラモキシン、プリロカイン、プロパラカイン、プロキシメタカイン及びテトラカイン(アメトカイン)からなる群から選択される1又は2以上の局所麻酔薬を含む。局所麻酔薬は、クリーム剤、軟膏剤、エアロゾル剤、噴霧剤、ローション剤及びゼリー剤で利用可能である。さらなる実施形態では、局所麻酔薬は、疼痛管理のための1又は2以上の追加的な薬剤、例えば別の局所麻酔薬又は疼痛管理のための異なる薬剤、例えば本明細書に記載の及び/若しくは当技術分野で既知の疼痛管理のための任意の他の薬剤(複数可)と共に使用してもよい。
【0114】
本発明のファージカクテル組成物は、本明細書に記載のように、治療及び/又は予防有効量の、より多くのファージ株の1種を含む。治療及び/又は予防有効量は、前記量が与えられた対象において、それぞれ治療及び/又は予防的有用性をもたらすのに必要とされる量を指す。治療及び/又は予防有効量は、特定の製剤、投与経路、処置される状態、他の薬剤又は療法が本発明の方法と組み合わせて使用されるかどうか、及び他の要因によって決まる。
【0115】
幾つかの具体的な実施形態では、本発明のファージカクテル組成物は、有傷皮膚の領域に関連する細菌感染症の処置及び/又は防止において使用するための医薬組成物として製剤化されている。治療及び/又は予防有効量は、有傷皮膚の領域によって決まり、医薬組成物は、これを反映するように製剤化することができる。例えば、幾つかの好ましい実施形態では、医薬組成物は、それぞれが、前記領域の1cm当たり約10〜約1013個のファージ粒子に相当する量で存在するようにファージ株を含む。幾つかのより好ましい実施形態では、治療及び/又は予防量は、処置される有傷皮膚の領域の1cm当たり少なくとも約10個、少なくとも約10個、少なくとも約10個、少なくとも約10個、少なくとも約10個、又は少なくとも約10個のファージ粒子に相当し得る。幾つかのより好ましい実施形態では、治療及び/又は予防量は、処置される有傷皮膚の領域の1cm当たり約1013個未満、約1012個未満、約1011個未満、約1010個未満、約10個未満又は約10個未満のファージ粒子に相当し得る。さらにより好ましい実施形態では、各ファージ株は、有傷皮膚の領域の1cm当たり10〜10個のファージ粒子に相当する量で、医薬組成物中に存在する。
【0116】
幾つかの実施形態では、本発明によるファージカクテル組成物の治療有効量の投与は、創傷閉鎖の改善、例えば、処置開始前の領域と比較した、有傷皮膚の領域(創傷領域)の低減をもたらす。創傷領域は、処置開始後の1又は2以上の時点における、初期創傷領域のパーセントとして表すことができる。例えば、幾つかの好ましい実施形態では、創傷領域は、本発明のファージカクテル組成物を用いた処置の経過を通して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%縮小する。幾つかの具体的な実施形態では、創傷領域の縮小は、少なくとも処置開始後1日目(t1)、処置開始後2日目(t2)、処置開始後3日目(t3)、処置開始後4日目(t4)、処置開始後5日目(t5)、処置開始後6日目(t6)、処置開始後7日目(t7)、処置開始後8日目(t8)、処置開始後9日目(t9)、処置開始後10日目(t10)、処置開始後12日目(t12)、処置開始後15日目(t15)、処置開始後20日目(t20)、処置開始後25日目(t25)又は処置開始後30日目(t30)までに起こる。特に好ましい実施形態では、創傷領域は、少なくとも処置開始後9日目(t9)までに、約30%〜約40%低減する。さらに特に好ましい実施形態では、創傷領域は、少なくとも処置開始後9日目(t9)までに、約40%〜約50%低減する。なおさらなる特に好ましい実施形態では、創傷領域は、少なくとも処置開始後9日目(t9)までに、約50%〜約60%低減する。より一層特に好ましい実施形態では、創傷領域は、少なくとも処置開始後9日目(t9)までに、約60%〜約70%低減する。
【0117】
幾つかの実施形態では、本発明によるファージカクテル組成物の治療有効量の投与は、創傷治癒の改善、例えば処置開始前の潰瘍グレードと比較した、PEDIS分類に基づく潰瘍グレードの改善をもたらす。PEDISは、日常的に使用される、糖尿病足病変に関する国際ワーキンググループ(IWGDF, International Working Group on the Diabetic Foot)によって開発された、創傷に関連する感染症に対する有効な分類システムである。IWGDFは、潅流、範囲(サイズ)、深度(組織喪失)、感染、感覚(ニューロパチー)を表す頭字語PEDISを使用する、糖尿病性足感染症に関連する創傷を分類するためのシステムを特に開発した。この分類は、研究ツールとして元々開発され(Schaper NC., 2004, Diabetes Metab Res Rev 20(Suppl 1):S90-5)、各カテゴリーの重症度に対して半定量的な階級を与える。特に、PEDISグレード1は、感染症の無症状又は無徴候に対応し、グレード2は皮膚及び皮下組織(より深い組織の関与及び全身的徴候はない)のみに関与する局部感染に対応するが、伴われるいかなる紅パッチも0.5cm〜2cmでなければならず、グレード3は、グレード2について記載されている局部感染に対応するが、2cmを越える紅パッチを伴うか又は皮膚及び皮下組織より深部の構造(例えば、膿瘍、骨髄炎、敗血症性関節炎、筋膜炎)を伴い、いかなる全身的炎症反応の徴候もなく、グレード4は、グレード2及び3について記載されている局部感染に対応するが、以下の2つより多くが顕性化するような全身的炎症反応症候群の徴候を伴う:38℃を超える又は36℃未満の温度、90拍動/分を超える心拍数、20呼吸/分を超える呼吸数又は32mm Hg未満の動脈二酸化炭素分圧、及び12000を超える若しくは4000未満の細胞/μLの白血球数又は10%以上の未熟(桿状核球)形態(例えば、Lipsky, BA, et al., 2012, CID 54:e132-e173を参照されたい)。別の分類システムは、米国感染症学会(IDSA, Infectious Diseases Society of America)によって開発され、感染した創傷、特に、糖尿病性足感染症の感染の重症度を評価する。特に、IDSAは、PEDISグレード1〜4を、それぞれ、「非感染」、「軽度」、「中程度」及び「重度」として評価する(再びLipsky, BA, et al., 2012, CID 54:e132-e173を参照されたい)。
【0118】
幾つかの好ましい実施形態では、本発明のファージカクテル組成物を用いた処置の経過を通して、PEDISグレードは、グレード4からグレード3、グレード2又はグレード1へ低下する。他の好ましい実施形態では、PEDISグレードは、本発明のファージカクテル組成物を用いた処置の経過を通して、グレード3からグレード2又はグレード1へ低下する。さらに他の好ましい実施形態では、PEDISグレードは、本発明のファージカクテル組成物を用いた処置の経過を通して、グレード2からグレード1へ低下する。幾つかの具体的な実施形態では、潰瘍グレードの低下は、少なくとも処置開始後1日目(t1)、処置開始後2日目(t2)、処置開始後3日目(t3)、処置開始後4日目(t4)、処置開始後5日目(t5)、処置開始後6日目(t6)、処置開始後7日目(t7)、処置開始後8日目(t8)、処置開始後9日目(t9)、処置開始後10日目(t10)、処置開始後12日目(t12)、処置開始後15日目(t15)、処置開始後20日目(t20)、処置開始後25日目(t25)又は処置開始後30日目(t30)までに起こる。
【0119】
ある種の実施形態では、本発明のファージカクテル組成物は、アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び/又は黄色ブドウ球菌によって引き起こされる感染症、例えば糖尿病性足感染症を処置又は防止するための、単一の薬剤として使用される。他の実施形態では、本発明のファージカクテルは、(例えば、糖尿病性足感染症に関与する異なる種又は株の細菌を標的にする)他のバクテリオファージを含めた他の薬剤、又は任意のグラム陽性細菌、任意のグラム陰性細菌及びグラム陽性菌としてもグラム陰性菌としても分類されない任意の他の群の細菌から選択される細菌を含めた、同一又は異なる種類の細菌を標的にする抗生物質とのさらなる組合せで使用される。本発明の組成物は、当業者に既知の細菌感染症を処置する任意の他の手段、特に、糖尿病性足部潰瘍を処置する任意の他の手段と組み合わせて使用してもよい。
【0120】
幾つかの実施形態では、本発明によるカクテル組成物は、同一又は異なる細菌種に対する少なくとも1種のさらなるファージ株と組み合わせて使用される。幾つかの好ましい実施形態では、本発明によるカクテル組成物は、(国際公開第WO2011/065854号パンフレット及び米国特許出願公開第2012/0052048号明細書に開示されているような)エンテロコッカス・フェカリス及び/又はエンテロコッカス・フェシウムの1又は2以上の株に対して抗生物質活性を有するバクテリオファージ株F168/08、(国際公開第WO2011/065854号パンフレット及び米国特許出願公開第2012/0052048号明細書に開示されているような)エンテロコッカス・フェカリス及び/又はエンテロコッカス・フェシウムの1又は2以上の株に対して抗生物質活性を有するバクテリオファージ株F170/08、(米国特許出願公開第2012/0052048号明細書に開示されているような)黄色ブドウ球菌の1又は2以上の株に対して抗菌活性を有するバクテリオファージ株F197/08、(米国特許出願公開第2012/0052048号明細書に開示されているような)黄色ブドウ球菌の1又は2以上の株に対して抗菌活性を有するバクテリオファージ株F86/06、(米国特許出願公開第2012/0052048号明細書に開示されているような)黄色ブドウ球菌の1又は2以上の株に対して抗菌活性を有するバクテリオファージ株F87s/06、(米国特許出願公開第2012/0052048号明細書に開示されているような)黄色ブドウ球菌の1又は2以上の株に対して抗菌活性を有するバクテリオファージ株F91a/06、(米国特許仮出願第61/384,015号明細書に開示されているような)肺炎桿菌の1又は2以上の株に対して抗菌活性を有するバクテリオファージ株F391/08、(米国特許仮出願第61/384,01号明細書に開示されているような)アシネトバクター・バウマンニの1又は2以上の株に対して抗菌活性を有するバクテリオファージ株F394/08、(米国特許仮出願第61/384,01号明細書に開示されているような)大腸菌の1又は2以上の株に対して抗菌活性を有するバクテリオファージ株F488/08、並びに(米国特許仮出願第61/384,015号明細書に開示されているような)肺炎桿菌の1又は2以上の株に対して抗菌活性を有するバクテリオファージ株F387/08からなる群から選択される少なくとも1種のさらなるファージ株と組み合わせて使用される(それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。2010年9月17日に出願された米国特許仮出願第61/384,015号明細書及び2011年9月19日に出願された国際出願番号PCT/PT2011/000031の内容も、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0121】
本明細書で使用する場合、用語「組み合わせて」又は「さらなる組合せで」又は「さらに組み合わせて」は、さらなる予防及び/又は治療剤も本発明のファージカクテルも使用することを指す。用語「組み合わせて」の使用は、予防及び/又は治療剤を対象に投与する順序を制限するものではない。第1の予防又は治療剤は、第2の予防又は治療剤(第1の予防又は治療剤とは異なる)の投与より前に(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間又は12週間前)、第2の予防又は治療剤の投与と同時に、又は第2の予防又は治療剤の投与の後に(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間又は12週間後)、対象に投与することができる。
【0122】
幾つかの実施形態では、本発明は、糖尿病性足感染症を処置及び/又は防止する方法であって、本発明のファージカクテルを、糖尿病性足感染症の標準的な及び/又は非標準的な療法と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。糖尿病性足感染症(これに限定されないが、それに関連する皮膚潰瘍を含める)に対する標準的な療法としては、細胞外マトリックス置換療法、湿潤創傷療法、陰圧閉鎖療法、動脈血管再生療法、高圧酸素療法、抗生物質剤の投与及び増殖因子の投与が挙げられる(Blume et al. 2008 Diabetes Care 31: 631-636)。
【0123】
幾つかの実施形態では、本発明のファージカクテル組成物は、局所的に、例えば、糖尿病性足部潰瘍部位に投与されるが、追加的な薬剤は全身的に投与される。例えば、幾つかの好ましい実施形態では、本発明のファージカクテル組成物は、局所的に、例えば、糖尿病性足部潰瘍部位に投与されるが、抗生物質剤は全身的に投与される。糖尿病性足部潰瘍の処置に関するさらにより好ましい実施形態では、全身的に投与される抗生物質剤は、アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及び/又は黄色ブドウ球菌に対して抗菌活性を有する。幾つかの実施形態では、本発明のファージカクテル組成物は、局所的に、例えば、糖尿病性足部潰瘍部位に追加的な薬剤と共に投与され、この薬剤も局所的に投与される。例えば、幾つかの好ましい実施形態では、本発明のファージカクテル医薬組成物は、増殖因子と共に、例えば、糖尿病性足部潰瘍部位に局所的に投与される。
【0124】
細胞外マトリックス療法は、有傷皮膚の非治癒領域の処置、管理、制御及び/又は防止において使用され、糖尿病性足部潰瘍に対する標準的な療法である。細胞外マトリックス(ECM, extracellular matrix)の合成は、特に、著しい組織喪失があった場合、創傷治癒の重要な特色である。細胞外マトリックス療法は、プロテアーゼの競合的基質(コラーゲン)を与えることによって創傷液体中のプロテアーゼレベルを低減するように意図されており、それによって、必須の細胞外マトリックス(ECM)成分のタンパク分解性の破壊を低減させ、治癒を促進する。例えば、ECM療法は、フィブロネクチン及び/又は血小板由来増殖因子(PDGF, platelet-derived growth factor)のタンパク分解性の破壊を低減させる、並びにマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP, matrix metalloproteinase)の合成を低減させる薬剤、例えば金属カチオン混合物の投与を含んでもよい。ECM療法は、皮膚の再生及び修復における生物活性を有するECMタンパク質であるアメロゲニンの投与を含んでもよい(Romanelli M. 2010 Wounds - Clinical Review 6(2):47-52)。
【0125】
ECM療法はまた、例えば、破滅したECMを置き換えるために、生物工学的に作られた組織の使用を含んでもよい。「皮膚置換物」又は「代用皮膚」とも呼ばれる生物工学的に作られた組織は、生細胞の有無にかかわらず、生体マトリックスを含むことが多い(Brian DL et al. 2011. Expert Rev Dermatol. 6(3):255-262)。たいていの生物工学的に作られた組織は、生体組織代用物と生理活性補助物に分けることができる。生物工学的に作られた組織は、薄い、円形の本物の皮膚の小片のように見える可能性があり、有傷皮膚の領域に直接置くことができる。治癒の正確な機序は完全には理解されていないが、生物工学的に作られた組織は、創傷を細胞外マトリックスタンパク質で充填させることによって、またおそらく、治癒しやすくする、さらなる増殖因子及びサイトカインを発現させることによって、治癒を改善すると考えられている。糖尿病性足部潰瘍の処置で使用される生物工学的に作られた組織の具体例としては、市販品として入手可能なApligraf及びDermagraftが挙げられる。
【0126】
動脈血管再生療法(ART, arterial revascularization therapy)も有傷皮膚の非治癒領域の処置、管理、制御及び/又は防止で使用され、これも糖尿病性足部潰瘍に対する標準的な療法である。糖尿病性足感染症処置における好ましいアプローチとしては、おそらくステント挿入法を用いる経皮的バルーン血管形成術を伴う、ARTの経皮的方法が挙げられる。他の血管再生アプローチとしては、大動脈大腿動脈バイパスを用いる大動脈腸骨動脈再建術及び伏在静脈を使用する大腿−膝窩−脛骨バイパスが挙げられる。
【0127】
高圧酸素療法(HBOT, hyperbaric oxygen therapy)も有傷皮膚の非治癒領域の処置、管理、制御及び/又は防止において使用され、これも、糖尿病性足部潰瘍に対する標準的な療法である。HBOTは、通常の空気と比較して増大した酸素含有量を用いることが多い、通常より高い気圧での全身の間欠的処置を指す。例えば、高圧酸素チャンバーを使用して、通常の気圧の2倍まで圧を上げてもよい。また、100%までの濃度で、患者を酸素に曝露してもよい。酸素含有量の増大と組み合わせた圧の増大は、血漿、体細胞、組織及び体液中に酸素を溶かし、それが次に、創傷治癒過程を援助する。HBOTは、血行が低減した位置への新しい血管の成長を刺激することができ、動脈閉塞を伴う領域への血流を改善すると考えられている。
【0128】
幾つかの他の実施形態では、本発明は、糖尿病性足感染症を処置及び/又は防止する方法であって、本発明のファージカクテル組成物を、糖尿病性足感染症の非標準的な療法と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。非標準的な療法は、一般に、糖尿病性足部潰瘍が1又は2以上の標準的な療法に難治性である場合に使用される。
【実施例】
【0129】
6.実施例
以下の実施例及び本明細書に記載の実施形態は例示目的にすぎず、それに照らして様々な改変又は変更が当業者に示唆され、それらは本出願の趣旨及び範囲並びに添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが理解されよう。
【0130】
別段指示がない限り、本明細書に開示する特定のバクテリオファージは、以下の方法に従って単離し、処理し、解析した。さらに、以下に記載される研究は、Instituto de Medicina Molecularの動物倫理委員会によって所内で承認され、ポルトガルの法律に基づいて、ポルトガルのGeneral Directorate of Veterinary Services(Direccao Geral de Veterinaria)によって国家的に承認された。研究におけるすべての動物は、欧州指針86/609/EC(Council of the European Communities. Council Directive 86/609/EEC of 24 November 1986 on the approximation of laws, regulations and administrative provisions of the Member States regarding the protection of animals used for experimental and other scientific purposes. Off J Eur Communities L358:1-28)、ポルトガルの法律(条例1005/92)(Portuguese Agricultural Ministry. Portaria no. 1005/92 of 23 October on the protection of animals used for experimental and other scientific purposes. Diario da Republica I - Serie B245:4930-4942)、及び実験動物の管理と使用に関する指針(NRC2011)(Institute for Laboratory Animal Research. 2011. Guide for the care and use of laboratory animals. Washington (DC): National Academies Press.)に基づいて維持した。
【0131】
本研究の一目的は、DMの2種の動物モデル(ラット及びブタ)において、黄色ブドウ球菌、緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニの慢性感染を伴う創傷に対して局所的に送達したバクテリオファージ溶液の抗微生物活性及び創傷治癒能力を検討することであった。
【0132】
6.1.1 細菌株の調製
黄色ブドウ球菌743/06、緑膿菌433/07及びアシネトバクター・バウマンニ1305/05株を、患者から採取したヒト臨床皮膚創傷試料から単離し、リスボン地区の病院で同定した。黄色ブドウ球菌743/06、緑膿菌433/07及びアシネトバクター・バウマンニ1305/05株は、ブダペスト条約の下に、NCIMB Limited社(Ferguson Building, Craibstone Estate, Bucksburn, Aberdeen, AB21 9YA, Scotland UK)に2011年9月16日に寄託し、それぞれ受託番号NCIMB41862、NCIMB41861及びNCIMB41863を有する。各単離物を、トリプトンダイズ寒天培地プレート(TSA、Biokar Diagnostics社, PantinCedex, France)上に画線し、37℃で18時間インキュベートした。すべての宿主株は、必要になるまで、15%グリセロール(w/v)を含むトリプトンダイズブロス(TSB、Biokar Diagnostics社, Pantin Cedex, France)中で、−70℃で保管した。
【0133】
−70℃で凍結保存した株を、TSA上で37℃で一晩増殖させた。
【0134】
インビトロでの実験用に、シングルコロニーを、撹拌してTSB中で37℃で一晩増殖させた。別の細菌懸濁液(一晩培養したものの希釈物)を調製し、撹拌して37℃でインキュベートし、それが指数増殖期(600nmでの光学密度が0.3〜0.5)に達した時に収集した。約2.0×10cfu/mlの接種材料を増殖曲線用に使用した。
【0135】
インビボでの実験用に、シングルコロニーをトリプトンダイズ寒天(TSA、Biokar Diagnostics社)上で、37℃で一晩増殖させた。24時間インキュベートしてから、細菌懸濁液を生理食塩水(NaCl 0.9%、Applichem社, Darmstadt, Germany)中で調製し、マクファーランド標準と比較し(すなわち、1:10の連続希釈によってマクファーランドのスケール(bioMerieux社, Craponne, France)に合わせ)、2.0×10cfu/mLの最終的な溶液濃度を得た。2.0×10cfuの臨床株の単回用量を使用して、創傷に接種した。
【0136】
6.1.2 バクテリオファージ株の調製
黄色ブドウ球菌F44/10及びF125/10、緑膿菌F770/05及びF510/08並びにアシネトバクター・バウマンニF1245/05溶菌性バクテリオファージをリスボン地区の汚水から単離しそれぞれ黄色ブドウ球菌743/06、緑膿菌433/07及びアシネトバクター・バウマンニ1305/05臨床株で増幅した。上記の宿主株を使用して、バクテリオファージの単離及び増幅のための標準的な方法(Adams M. Bacteriophages. New York: Interscience Publishers, Inc., 1959)を用いた。実験に十分な量のバクテリオファージストックを産生するために、増幅、高速遠心分離による濃縮及び塩化セシウムグラジエントによる精製の、以前に記載されているプロトコールを使用した(Miller H., 1987, Methods Enzymol. 152: 145-70)。終濃度は、二重寒天重層プラークアッセイ(Kropinski et al., 2009, In: Clokie M, Kropinski A, editors. Bacteriophages Methods and Protocols, volume 1: isolation, characterization, and interactions. New York: Humana Press, Springer Science + Business Media, 69-76)を用いて決定した。ファージ株F44/10、F125/10、F770/05、F510/08及びF1245/05は、ブダペスト条約の下に、NCIMB Limited社(Ferguson Building, Craibstone Estate, Bucksburn, Aberdeen, AB21 9YA, Scotland UK)に2011年9月16日に寄託し、それぞれ受託番号NCIMB41867、NCIMB41866、NCIMB41864、NCIMB41868及びNCIMB41865を有する。
【0137】
黄色ブドウ球菌、緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニに対する溶菌性バクテリオファージを単離するために、3種の臨床株を使用した(指標株)。バクテリオファージの存在を決定するための二重寒天重層プラークアッセイで使用する前に、リスボン市街地の様々な由来からの汚水を高速遠心分離によって濃縮した。
【0138】
水試料50mlを、8000×gで10分間4℃で遠心分離した。上清を、0.45μmのMillexフィルター(Millipore社, Massachusetts, USA)で濾過し、17000rpm(Beckman社J2-21M/E、JA-20ローター)で3時間4℃で遠心分離した。ペレットを5mlのSM緩衝液(0.05MのTris−HCl pH7.5、0.1MのNaCl、10mMのMgSO.7HO、0.03%ゼラチン)中に溶出し、4℃で一晩溶出させた。再懸濁したペレットは、必要になるまで4℃で保管した。
【0139】
水試料はまた、バクテリオファージを単離するチャンスを増やすために増菌した(Van Twest and Kropinski 2009)。黄色ブドウ球菌743/06指標株の1つのシングルコロニーを、0.5%酵母エキスを補充した5mlのトリプトンダイズブロス(TSBY、Biokar Diagnostics社, PantinCedex, France)に接種し、撹拌して37℃で一晩インキュベートした。5mlのTSBY、50μlの一晩培養した細菌、100μlの濃縮した水、並びに5mMのCaCl及びMgClを用いる培養物を調製し、撹拌して37℃で一晩インキュベートした。8000×gで10分間、4℃で培養物を遠心分離する前に、クロロホルムを加え、5〜10分間室温でインキュベートして、細胞を溶解し、細胞内のバクテリオファージを培地中に遊離させた。上清を、0.45μmのMillexフィルター(Millipore社, Massachusetts, USA)で濾過し、必要になるまで4℃で保管した。
【0140】
濃縮及び/又は増菌してから、汚水試料を、黄色ブドウ球菌743/06、緑膿菌433/07及びアシネトバクター・バウマンニ1305/05臨床株に感染する能力を有するバクテリオファージの存在について、二重寒天重層プラークアッセイによって試験した。簡単に述べると、細菌指標株を、TSB又はTSBY(黄色ブドウ球菌バクテリオファージの単離用)中で、撹拌して37℃で一晩増殖させた。別の細菌懸濁液(一晩培養したものの希釈物:黄色ブドウ球菌指標株については1:200、緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニ指標株については1:50)を調製し、撹拌して37℃でインキュベートし、それが指数増殖期(600nmでの光学密度が0.3〜0.5)に達した時に収集した。各培養物は、CaCl及び/又はMgCl(黄色ブドウ球菌株は5mMのCaCl及びMgCl、緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニ株は10mMのMgCl)を補充し、濃縮及び/又は増菌した水試料(黄色ブドウ球菌バクテリオファージの単離については100μl、並びに緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニバクテリオファージの単離については50μl)と共に、ガラスチューブ内に設置した(黄色ブドウ球菌については200μl、緑膿菌については400μl及びアシネトバクター・バウマンニ株については150μl)。この混合物を37℃で30分間インキュベートし、その後、50℃で予め平衡化した3mlの軟寒天を加えた(黄色ブドウ球菌バクテリオファージの単離については0.35%、並びに緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニバクテリオファージの単離については0.7%)。短時間ボルテックスしてから、この寒天−水−細菌懸濁物を、黄色ブドウ球菌バクテリオファージの単離用の0.5%酵母エキスを補充したトリプトンダイズ寒天(TSAY、Biokar Diagnostics社, Pantin Cedex, France)上に、又は1.5%TSAプレート(緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニバクテリオファージの単離用)上に重層し、室温で固まらせ、37℃でインキュベートした。18〜24時間後、このプレートを、細菌ローン内のバクテリオファージ(透明な領域)について確認し、これによって、バクテリオファージの存在が示された。滅菌したピペットチップを使用してバクテリオファージのプラークを突つき、100μlのSM緩衝液に移し、4℃で保管した。
【0141】
6.1.3 ファージ増殖及び特性評価
単離したバクテリオファージを、指標株において、増殖、増幅及び精製(3連続溶出)の工程にかけてから、その宿主域を評価した。特定のバクテリオファージに対する30の細菌分離株の感受性を、スモールドロッププラークアッセイシステム(Mazzocco A, et al. 2009. Bacteriophages, methods and protocols vol. 1 chapter 9 Humana Press.)を使用して実施した。簡単に述べると、細菌指標株を、撹拌してTSB中で37℃で一晩増殖させた。新しい細菌懸濁液(一晩培養したものの希釈物:黄色ブドウ球菌指標株については1:200、緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニ指標株については1:50)を調製し、撹拌して37℃でインキュベートし、それが指数増殖期(600nmでの光学密度が0.3〜0.5)に達した時に収集した。各培養物は、CaCl及び/又はMgCl(黄色ブドウ球菌株は5mMのCaCl及びMgCl、緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニ株は10mMのMgCl)を補充し、ガラスチューブ内に設置し(黄色ブドウ球菌については200μl、緑膿菌については400μl及びアシネトバクター・バウマンニ株については150μl)、それに、50℃で予め平衡化した3mlの軟寒天(黄色ブドウ球菌バクテリオファージの単離については0.35%、並びに緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニバクテリオファージの単離については0.7%)を加えた。短時間ボルテックスしてから、この寒天−細菌懸濁液を1.5%TSAプレート上に重層し、室温で固まらせた。少容量(5μl)の新しく単離されたバクテリオファージのそれぞれを、新たに調製した細菌ローン上に落下させ、プレートを室温で乾燥させてから、37℃で一晩インキュベートした。30の細菌分離株の特定のバクテリオファージに対する感受性を、スポット領域における溶菌領域の出現を観察することによって決定した。
【0142】
宿主域で感染の最も良いパーセントを有するバクテリオファージを選択して、増幅、高速遠心分離による濃縮、塩化セシウム(CsCl)グラジエントでの精製、バクテリオファージゲノムDNAの抽出及び制限の新しい工程に移した。100の細菌分離株を用いて、宿主域に関してこの工程を反復し、バクテリオファージの最終的な選択が行われるまで行い、それらのゲノムをシークエンスした。
【0143】
6.1.4 ファージカクテルのインビトロでの有効性
それぞれ個々の又は液体培養中で組み合わせた、黄色ブドウ球菌F44/10及びF125/10、緑膿菌F770/05及びF510/08並びにアシネトバクター・バウマンニF1245/05バクテリオファージの、黄色ブドウ球菌743/06、緑膿菌433/07及びアシネトバクター・バウマンニ1305/05指標株に対する溶菌活性を研究するために、インビトロでのアッセイを実施した。
【0144】
細菌指標株を、撹拌してTSB中で37℃で一晩増殖させた。新鮮な細菌懸濁液(一晩培養したものの希釈物:黄色ブドウ球菌指標株については1:200、緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニ指標株については1:50)を調製し、撹拌して37℃でインキュベートし、それが指数増殖期(600nmでの光学密度が0.3〜0.5)に達した時に収集した。各培養物は、CaCl及び/又はMgCl(黄色ブドウ球菌株は5mMのCaCl及びMgCl、緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニ株は10mMのMgCl)を補充した。
【0145】
各細菌について、10mlのTSBの3つの液体培養を調製し、同時に試験した。細菌の対照培養物を、培地及び2.0×10cfu/mlの指数増殖期の銘々の指標株(黄色ブドウ球菌743/06、緑膿菌433/07及びアシネトバクター・バウマンニ1305/05)で接種した。バクテリオファージの対照培養物を、予め決定された感染多重度(F44/10 MOI=10、F125/10 MOI=10、F770/05 MOI=1、F510/08 MOI=10及びF1245/05 MOI=10)で、培地及び指標株に対する試験バクテリオファージで接種した。試験培養物を、培地、試験バクテリオファージ(F44/10 MOI=10、F125/10 MOI=10、F770/05 MOI=1、F510/08 MOI=10及びF1245/05 MOI=10)及び2.0×10cfus/mlの指数増殖期の銘々の指標株(黄色ブドウ球菌743/06、緑膿菌433/07及びアシネトバクター・バウマンニ1305/05)で接種した。すべての培養物は、CaCl及び/又はMgCl(黄色ブドウ球菌株は5mMのCaCl及びMgCl、緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニ株は10mMのMgCl)を補充した。培養物は、弱く撹拌して37℃でインキュベートした。100μlアリコートの試料を、24時間のインキュベーション期間にわたって、1時間間隔で各培養物から取得し、段階希釈に使用した。
【0146】
生存細菌数を10倍段階希釈方法(Murray PR, et al. 2003. Manual of clinical microbiology. Washington, DC: ASM Press.)によって定量化した。細菌の対照培養物及び試験培養物については、銘々の選択培地プレート(黄色ブドウ球菌についてはチャップマンマンニット食塩寒天培地(Biokar Diagnostics社, PantinCedex, France)、緑膿菌についてはセトリマイド寒天培地(Merck Chemical社, Darmstadt, Germany)及びアシネトバクター・バウマンニについてはCHROmagarアシネトバクター培地(CHROmagar社, Paris, France))上に100μlの各希釈物を接種した。これらのプレートを好気性条件下で37℃で24時間インキュベートし、その後、コロニーを数えた。チャップマンマンニット食塩寒天培地で増殖した分離菌は、コロニーの形態及びマンニット食塩寒天培地の発酵(Chapman GH. 1946. J Bacteriol 51:409-410)に基づいて、黄色ブドウ球菌として推定的に同定した。セトリマイド寒天培地で増殖した分離菌は、コロニーの形態(Brown VI, et al. 1965. J Clin Pathol 18:752-756)に基づいて、緑膿菌として推定的に同定した。CHROmagarアシネトバクター培地で増殖した分離菌は、コロニーの赤色(Wareham DW, et al. 2011. J Clin Pathol 64:164-167)に基づいて、アシネトバクター・バウマンニとして推定的に同定した。
【0147】
バクテリオファージの対照培養物については、100μlアリコートを時点(t0)で取得し、直ちに希釈して、二重寒天重層プラークアッセイによって、各バクテリオファージの最初の力価を決定した。簡単に述べると、細菌指標株を、撹拌してTSB中で37℃で一晩増殖させた。新鮮な細菌懸濁液(一晩培養したものの希釈物:黄色ブドウ球菌指標株については1:200、緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニ指標株については1:50)を調製し、撹拌して37℃でインキュベートし、それが指数増殖期(600nmでの光学密度が0.3〜0.5)に達した時に収集した。各培養物は、CaCl及び/又はMgCl(黄色ブドウ球菌株は5mMのCaCl及びMgCl、緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニ株は10mMのMgCl)を補充し、100μlのバクテリオファージ培養希釈物と共に、ガラスチューブ内に設置した(黄色ブドウ球菌については200μl、緑膿菌については400μl及びアシネトバクター・バウマンニ株については150μl)。この混合物を37℃で30分間インキュベートし、その後、50℃で予め平衡化した3mlの軟寒天を加えた(黄色ブドウ球菌については0.35%、並びに緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニ培養物については0.7%)。短時間ボルテックスしてから、この寒天−バクテリオファージ−細菌懸濁物を1.5%TSAプレート上に重層し、室温で固まらせ、37℃でインキュベートした。18〜24時間後に、プラーク形成単位(pfu, plaque forming unit)を計算して、バクテリオファージの力価を決定した。
【0148】
6.1.5 ファージカクテルの調製
図1は、本発明による例示的なファージカクテル組成物の調製物を説明する。F44/10、F125/10、F770/05、F510/08及びF1245/05バクテリオファージのインビトロでのアッセイの後、個々の及び組み合わせた、5種のバクテリオファージの溶菌活性を、単一のバクテリオファージカクテル中で一緒に試験した。様々な濃度及び相対的比率の精製したバクテリオファージを使用して、3種の初期カクテル(黄色ブドウ球菌カクテル、緑膿菌カクテル及びアシネトバクター・バウマンニカクテル)及び1種の最終的なカクテルを調製した。これらのバクテリオファージカクテルは、予め決定されたMOI(F44/10 MOI=10、1010pfu/mL;F125/10 MOI=10、1010pfu/mL;F770/05 MOI=1、10pfu/mL;F510/08 MOI=10、1010pfu/mL;及びF1245/05 MOI=10、1010pfu/mL)で存在する各バクテリオファージを用いて、生理食塩水中で調製した。
【0149】
各培養は、個々のバクテリオファージ試験について以前に記載されているように実施した。黄色ブドウ球菌743/06、緑膿菌433/07及びアシネトバクター・バウマンニ1305/05指標株について、細菌の対照培養物、バクテリオファージカクテルの対照培養物及び試験培養物を調製した。培養物は、弱く撹拌して37℃でインキュベートし、100μlアリコートを1時間間隔で24時間取得し、段階希釈に使用した。
【0150】
生存細菌数を、10倍段階希釈方法(Murray PR, et al. 2003. Manual of clinical microbiology. Washington, DC: ASM Press.)によって定量化した。細菌の対照培養物及び試験培養物については、100μlの各希釈物を、銘々の選択培地プレート(黄色ブドウ球菌についてはチャップマンマンニット食塩寒天培地、緑膿菌についてはセトリマイド寒天培地、及びアシネトバクター・バウマンニについてはCHROmagarアシネトバクター培地)上に接種した。これらのプレートを37℃で24時間インキュベートし、その後、コロニーを数えた。チャップマンマンニット食塩寒天培地で増殖した分離菌は、コロニーの形態及びマンニット食塩寒天培地の発酵(Chapman GH. 1946. J Bacteriol 51:409-410)に基づいて、黄色ブドウ球菌として推定的に同定した。セトリマイド寒天培地で増殖した分離菌は、コロニーの形態(Brown VI, et al. 1965. J Clin Pathol 18:752-756)に基づいて、緑膿菌として推定的に同定した。CHROmagarアシネトバクター培地で増殖した分離菌は、コロニーの赤色(Wareham DW, et al. 2011. J Clin Pathol 64:164-167)に基づいて、アシネトバクター・バウマンニとして推定的に同定した。
【0151】
最初のバクテリオファージの力価を二重寒天重層プラークアッセイによって決定した。100μlアリコートの試料を時点(t0)で取得し、直ちに希釈した。細菌指標株を、撹拌してTSB中で37℃で一晩増殖させた。新鮮な細菌懸濁液(一晩培養したものの希釈物:黄色ブドウ球菌指標株については1:200、緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニ指標株については1:50)を調製し、撹拌して37℃でインキュベートし、それが指数増殖期(600nmでの光学密度が0.3〜0.5)に達した時に収集した。各培養物は、CaCl及び/又はMgCl(黄色ブドウ球菌株は5mMのCaCl及びMgCl、緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニ株は10mMのMgCl)を補充し、100μlのバクテリオファージカクテル培養希釈物と共に、ガラスチューブ内に設置した(黄色ブドウ球菌については200μl、緑膿菌については400μl、及びアシネトバクター・バウマンニ株については150μl)。この混合物を37℃で30分間インキュベートし、その後、50℃で予め平衡化した3mlの軟寒天を加えた(黄色ブドウ球菌については0.35%並びに緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニ培養物については0.7%)。短時間ボルテックスしてから、この寒天−バクテリオファージ−細菌懸濁物を1.5%TSAプレート上に重層し、室温で固まらせ、37℃でインキュベートした。18〜24時間後、pfu(プラーク形成単位)の計算によってバクテリオファージの力価を決定した。
【0152】
6.1.6 ラットモデルにおけるファージカクテルのインビボでの有効性
図2は、本発明による例示的なファージカクテル組成物のラットモデルにおけるインビボでの有効性を示すのに使用する研究プロトコールを説明する。化学誘発性糖尿病のウィスターマウスにおいて以前に最適化されたげっ歯類の創傷感染モデルを使用した(Mendes JJ, et al. 2012. Comp Med 62:1-12)。
【0153】
動物
体重が250〜350g(8〜10週齢)の、特定病原体除去のオスのウィスターラット[Crl:WI(Han)]をCharles River Laboratories社(L'Arbresle, Cedex, France)から得た。この動物を、以下の条件(湿度(50〜70%)及び温度(20〜22℃)で制御され、14時間明期及び10時間暗期のサイクルで、ペレット化したげっ歯類用固形飼料及び濾過滅菌した水へ自由にアクセスできる部屋の中のマイクロアイソレーターでの飼育)下で、承認された動物ケアセンターで飼った。この動物を、最初に2つの群で飼育した。除毛及びそれに続く手順の後で、動物を個々に飼育して、皮膚、及び後の包帯の完全性を保護した。すべての外科的処置は、オートクレーブ滅菌した器具を使用して、衛生的な手術室で実施した。
【0154】
DMの誘発
Wu et al.(Wu K, et al. 2008. Curr Protoc Pharmacol 40:5.47.1-5.47.14)によって記載されているように、DMを化学的に誘発した。12時間絶食させてから、0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.5)中で新たに調製したストレプトゾトシン(65mg/kg;Merck Chemical社, Darmstadt, Germany)を動物に単回腹腔内(i.p., intraperitoneal)注射した。8日後に、グルコメーターを使用して、尾の静脈の血液について血糖を測定した。250mg/dLより高い空腹時血糖レベルを示すラットを糖尿病とみなした。
【0155】
除毛
DM確認後に(8日後に)、42匹の糖尿病ラットに、塩酸キシラジン(10mg/kg)及び塩酸ケタミン(25mg/kg)のi.p.注射によって麻酔をかけ、それらの背面の毛を電気バリカンで刈り込み、一方で、コールドワックスストリップ(Veet cold wax strips、Reckitt Benckiser社, West Ryde, Australia)を使用して、残りの毛を徹底的にワックスで固めて抜いた。次いで、動物の背中を10%ポビドンヨード液ですすぎ、乾燥及びクレンジング後に、液体の膜形成性アクリレート(Cavilon Skin Cleanser、3M Health Care社, Saint Paul, MN)を均等に塗って、除毛領域を覆った。
【0156】
創傷、副子固定、第1の撮影及び包帯
除毛してから4日後に、同一のプロトコールで、動物に再び麻酔をかけ、背中の皮膚を滅菌生理食塩水で徹底的に洗浄し、続いて、10%ポビドンヨードで消毒し、10分のポビドンヨードの接触時間の後に、70%イソプロピルアルコールで洗浄した。パンチ生検器具(直径6mm;Accu-Punch、Acuderm社, Fort Lauderdale, FL, USA)を使用して、各ラットの上背部の肩甲間部皮筋層まで及ぶ全層切開を1つ行って、円形の創傷を作り、虹彩はさみを使用して皮弁を切除した。卵型のシリコーン副子を粘着性コーンクッション(Comforsil社, Toledo, Spain)から作り変えた。使い捨ての単回用量パッケージに入っている即時接着性のシアノアクリレート接着剤(Loctite、Henkel Corporation社, Westlake, OH)を使用して、副子を皮膚へ固定し、続いて、結節3−0ナイロン縫合糸によって固定して、その位置を確実にした。包帯をする前に、固定されたデジタル顕微鏡(SuperEyes 200× USB Digital Microscope、Shenzhen Tak and Assistive Technology社, Shenzhen, China)を使用して、標準的な高さ(1.5cmの距離)から創傷を撮影した。次いで、液体の膜形成性アクリレートを脱毛領域に塗り、創傷及びその周辺領域を、前もって適合させておいた、半閉塞性で不織のポリエステル包帯(Fixomull Stretch、BSN Medical社, Hamburg, Germany)で覆った。接着テープでできている被覆物(Leukoplast surgical tape、BSN Medical社, Hamburg, Germany)を用いて、副子及び包帯を、実験の経過全体を通して所定の位置に維持した。
【0157】
群の無作為化
包帯を適用した後で、動物がまだ麻酔をかけられている状態で、動物を7群(陰性対照(n=6)、黄色ブドウ球菌接種対照(n=6)及び試験(n=6)、緑膿菌接種対照(n=6)及び試験(n=6)、並びにアシネトバクター・バウマンニ接種対照(n=6)及び試験(n=6))に無作為に分けた。
【0158】
創傷感染
陰性対照群の動物の創傷には100μLの滅菌生理食塩水で注射し、一方、接種群(試験及び対照)の創傷には、滅菌生理食塩水に再懸濁した、100μLの培養した黄色ブドウ球菌、緑膿菌又はアシネトバクター・バウマンニ(約2.0×10cfu)を、1−mLの使い捨ての注射器に取り付けられた27G/19mmのニードルをシリコーン副子を介して45度の角度で挿入することによって、それぞれ接種した。
【0159】
デブリードマン
創傷後4、5及び8日目に、すべての動物において半閉塞性包帯を切り取り、創傷を清拭した。デブリードマンは、厳密な無菌的手法を使用する、乾燥した血液、血清及び滲出液の堅くなった表面と定義される瘡蓋の単純な機械的除去からなっていた。
【0160】
バクテリオファージ処置のプロトコール
バクテリオファージ処置のプロトコールは導入期及び維持期に分けられ、すべての試験群で実施した。導入期は、第1のデブリードマン(創傷後4日目)の後に行い、6回(4時間毎)の100μLの初期バクテリオファージ溶液の投与からなっていた。維持期は5日目〜8日目に行い、1日2回(12時間毎)の100μLの初期バクテリオファージ溶液の投与からなっていた。デブリードマンを実施した場合は、バクテリオファージ投与が続いた。対照群には、100μLの滅菌生理食塩水を同一頻度で与えた。
【0161】
微生物学的解析
創傷後4、5及び8日目並びにデブリードマンの後に、液体のAmies溶出スワブ(eSwab Collection and Preservation System、Copan社, Corona, CA)を使用して、スワブ培養物を採取及び輸送した。細菌採取は、Sullivan et al.(Sullivan PK et al. 2004 Wounds 16:115-123)によって記載されている1点法を使用して実施した。簡単に述べると、滅菌したスワブを使用して、十分な指圧でスワブを時計回りに3回回転させて、各創傷の中心の表面をよくこすり、小量の滲出液を得た。次いで、このスワブをチューブに挿入し、実験室に輸送して、即時処理した。このスワブ採取チューブを、(スワブを内に入れて)5秒間ボルテックスし、得られた懸濁液の100μLアリコートを段階希釈に使用した。
【0162】
10倍段階希釈方法(Murray PR et al. 2003. Manual of clinical microbiology. Washington, DC: ASM Press)を使用して、定量化を実施した。感染/接種群では、100μLの各希釈物を銘々の選択培地プレート(黄色ブドウ球菌についてはチャップマンマンニット食塩寒天培地(Biokar diagnostics社, Pantin Cedex, France)、緑膿菌についてはセトリマイド寒天培地(Merck Chemical社, Darmstadt, Germany)及びアシネトバクター・バウマンニについてはCHROmagarアシネトバクター培地(CHROmagar社, Paris, France))上にプレーティングした。アシネトバクター・バウマンニ−感染群では、100μLの各希釈物をトリプトンダイズ寒天培地プレート(TSA、Biokar Diagnostics社, Pantin Cedex, France)上に同時に接種した。陰性対照群では、100μLの各希釈物をトリプトンダイズ寒天培地プレート上に接種した。これらのプレートを好気性条件下で37℃で24時間インキュベートし、その後、コロニーを数えた。チャップマンマンニット食塩寒天培地で増殖した分離菌は、コロニーの形態及びマンニット食塩寒天培地の発酵(Chapman GH. 1946. J Bacteriol 51:409-410)に基づいて、黄色ブドウ球菌として推定的に同定した。セトリマイド寒天培地で増殖した分離菌は、コロニーの形態(Brown VI, et al. 1965. J Clin Pathol 18:752-756)に基づいて、緑膿菌として推定的に同定した。CHROmagarアシネトバクター培地で増殖した分離菌は、コロニーの赤色(Wareham DW, et al. 2011. J Clin Pathol 64:164-167)に基づいて、アシネトバクター・バウマンニとして推定的に同定した。
【0163】
創傷閉鎖動態(面積測定)
創傷後9日目に、屠殺する前に、以前に記載されているように固定したデジタル顕微鏡を使用して、1.5cmの標準的な高さから創傷を撮影した。創傷動態を画像処理ソフトウェア(ImageJ、US National Institutes of Health, Bethesda, MD)を使用して定量化して、面積測定によって創傷領域を測定し、創傷領域を最初の創傷領域のパーセントとして表した。
【0164】
組織学的解析
すべての動物を、ペントバルビタール(200mg)のi.p.注射によって創傷後9日目に屠殺し、0.5cmの皮膚縁を含む各潰瘍を、滅菌した外科用ばさみを使用して完全に収集し、チューブ内に設置した。この試料を10%緩衝ホルマリン溶液中で固定し、一晩固定した後、組織をトリミングし、最大幅のマージンで切り開き、パラフィンに包埋し、3μmずつ増やして切片を作った。前後軸に垂直かつ創傷の表面に垂直に、切片を作製した。
【0165】
各創傷について、2つの連続切片をスライドに置き、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。カラーカメラ(Leica DM2500、Leica Microsystems GmbH社, Wetzlar, Germany)を備えた電動式倒立明視野顕微鏡(Zeiss Axiovert 200M、Gottingen, Germany)を使用して、光学顕微鏡検査下で、50×倍率で切片を撮影した。各創傷のパノラマ式横断面デジタル画像を顕微鏡自動化ソフトウェア(MetaMorph、MDS Analytical Technologies社, Sunnyvale, CA)を使用して調製し、画像処理ソフトウェア(ImageJ、US National Institutes of Health, Bethesda, MD)を使用して処理した。同じ画像処理ソフトウェアを使用して、上皮間隙(EG, epithelial gap)及び真皮間隙(DG, dermal gap)について画像を解析した。
【0166】
EGは、はっきりした、多層の新表皮の進行端部間の距離と定義され(Galiano RD, et al. 2004. Wound Repair Regen 12:485-492; Scherer SS, et al. 2008. Wounds 20:18-28)、そのサイズをミリメートルで測定し、ゼロのEGは、完全に再上皮化した創傷を表した。DGは、創傷の両側の傷害を受けていない真皮間の距離と定義され(Galiano RD, et al. 2004. Wound Repair Regen 12:485-492; Scherer SS, et al. 2008. Wounds 20:18-28)、ミリメートルで測定した。すべての創傷動態及び組織学的測定は試料の由来(試験又は対照)に関して知らされていない研究者で実施した。
【0167】
6.1.7 ブタモデルにおけるファージカクテルのインビボでの有効性
図3は、本発明による例示的なファージカクテル組成物のブタモデルにおけるインビボでの有効性を示すのに使用する研究プロトコールを説明する。Hirsch et al.(Hirsch T, et al. 2008. BMC Surg 8:5)によって記載されているような、以前に最適化された、化学的に誘発したDMを有する動物におけるブタ創傷感染モデルを、本研究の要求に適合するように改変した。合計で48切除創傷(12陰性対照創傷、12緑膿菌接種創傷、12黄色ブドウ球菌接種創傷、及び12アシネトバクター・バウマンニ接種創傷)を有する3動物(陰性対照、接種−対照、及び接種−試験)を本研究で使用した。
【0168】
動物
到着時に±60kgの体重のメスのヨークシャーブタ(飼育場)3匹を、実験開始前に1週間順応させた。動物は、一匹ずつケージで飼育し、水へ自由にアクセスさせ、標準的な餌を1日2回与えた。処置の間は、ブタを封じ込めデバイス中に維持した。
【0169】
DMの誘発及び制御
ブタを12時間絶食させてから、DMを誘発した。処置の日は、動物を秤量し、塩酸キシラジン及び塩酸ケタミンで筋内麻酔を導入した。動物が麻酔にかかっている間に、21ゲージの静脈内(i.v., intravenous)カテーテルを耳の静脈に挿入した。ストレプトゾトシンは、10mL/g滅菌生理食塩水に希釈した体重1kg当たり150mgの用量で調製し、濾過滅菌し、カテーテルを介して1分かけて投与した。麻酔から回復した後、メトクロプラミドを用いる処置後の制吐療法を与えた。最初の3時間はブタを継続的に観察し、次いで、低血糖を回避するために食物を自由に与えた。実験の間、毎日血糖を測定した。血糖濃度を250〜400mg/dLに維持するために、16IUの予め混合してある、中性インスリン(30%)とイソフェンインスリン(70%)(Mixtard 30、Novo Nordisk社, Bagsvaerd, Denmark)の中性懸濁液を、ブタに毎日皮下注射した。
【0170】
除毛、創傷、第1の撮影及び感染
DMを誘発してから14日後に、以前に記載されているように、ブタに麻酔を導入した。導入後、ブタに気管内挿管を与え、従量式の時間設定BIRD人工呼吸器(Mark 9;Bird Corporation社, Palm Springs, CA)で、室内空気及び用量設定したイソフルラン(0.5%〜1.5%)の混合物を機械的に通気した。1回換気量を12mL/kgに設定し、人工呼吸器の速度を1分当たり12呼吸に設定した。手術より前に、背面の毛を電気バリカンで刈り込み、コールドワックスストリップを使用して、残りの毛を徹底的にワックスで固めて抜き、10%ポビドンヨードペイントを使用して傍脊柱領域を徹底的に消毒し、次いで、15分間の接触時間の後、70%イソプロパノールで洗浄した。
【0171】
接種−対照、及び接種−試験のブタについては、直径6mmの生検パンチを使用して、傍脊柱領域の両側に9つの全層切除創傷(直径6mm及び深度6mm)を作った(全体で18)。陰性対照のブタについては、6つの切除創傷のみを傍脊柱領域の両側に作った(全体で12)。続いて、滅菌した鉗子及び外科用の刃を使用して、全層の皮弁を除去し、滅菌ガーゼを利用して、創傷からいかなる凝固血液も取り除き、かつ出血を制御した。粘着性チャンバーで覆う前に、固定したデジタル顕微鏡を使用して、標準的な高さから創傷を撮影した。半閉塞性の不織のポリエステル包帯で覆われた結腸瘻バッグで作られている改変粘着性チャンバー(ツーピース35mmオストミー、Hollister Incorporated社, Libertyville, IL)を各創傷の上に設置し、外科用ステープル(Manipler AZ、B. Braun社, Tuttlingen, Germany)及び絆創膏で所定の位置に固定した。
【0172】
接種−対照及び接種−試験動物では、創傷を3つの亜群(黄色ブドウ球菌(2×6潰瘍)、緑膿菌(2×6潰瘍)及びアシネトバクター・バウマンニ(2×6潰瘍))に分けた。囲われた表面を浸すために、創傷を、100μLの全溶液(滅菌した0.9%生理食塩水)中の2×10黄色ブドウ球菌cfu、100μLの全溶液(滅菌した0.9%生理食塩水)中の2×10緑膿菌cfu、及び100μLの全溶液(滅菌した0.9%生理食塩水)中の2×10アシネトバクター・バウマンニcfuでそれぞれ接種した。陰性対照群(12潰瘍)では、創傷を100μLの滅菌生理食塩水で注射した。麻酔から回復した後、処置後の麻酔(ブプレノルフィン0.005mg/kg)及び制吐療法を12時間毎に48時間与えた。
【0173】
デブリードマン
創傷後4、5及び8日目に、半閉塞性包帯を切り取り、創傷を清拭した。げっ歯類モデルについて記載されているように、デブリードマンは、厳密な無菌的手法を使用する、乾燥した血液、血清及び滲出液の堅くなった表面と定義される瘡蓋の単純な機械的除去からなっていた。
【0174】
バクテリオファージ処置のプロトコール
げっ歯類モデルと類似している、導入期及び維持期に分けられるバクテリオファージ処置のプロトコールを使用した。導入期は、第1のデブリードマン(創傷後4日目)の後に行い、最終的なバクテリオファージカクテルを使用する、6回(4時間毎に24時間)の100μLのバクテリオファージ溶液の投与からなっていた。維持期は5日目〜8日目に行い、最終的なバクテリオファージカクテルを使用する、1日2回(12時間毎)の100μLのバクテリオファージ溶液の投与からなっていた。デブリードマンを実施した場合は、バクテリオファージ投与が続いた。対照群には、100μLの滅菌生理食塩水を同一頻度で与えた。
【0175】
微生物学的解析
げっ歯類の研究と類似している微生物学的解析プロトコールを使用した。創傷後4、5及び8日目並びにデブリードマンの後に、液体のAmies溶出スワブを使用して、スワブ培養物を採取及び輸送した。以前に記載されているように、細菌採取は、Sullivan et al.(Sullivan PK, et al. 2004. Wounds 16:115-123)によって記載されている1点法を使用して実施した。次いで、このスワブをチューブに挿入し、実験室に輸送して、即時処理した。10倍段階希釈方法(Murray PR, et al. 2003. Manual of clinical microbiology. Washington, DC: ASM Press)を使用して、定量化を実施した。
【0176】
感染/接種群では、銘々の選択培地プレート(チャップマンマンニット食塩寒天培地、セトリマイド寒天培地及びCHROmagarアシネトバクター培地)上に、100μLの各希釈物をプレーティングした。陰性対照群では、100μLの各希釈物をトリプトンダイズ寒天培地プレート上に接種した。これらのプレートを好気性条件下で37℃で24時間インキュベートし、その後、コロニーを数えた。分離菌は、以前に記載されているように、推定的に同定した。陰性対照群では、任意の所定の日に10cfu/スワブ超を有する潰瘍を、激しくコロニー化されたとみなし、さらなる解析から除外した。
【0177】
創傷閉鎖動態(面積測定)
創傷後9日目に、屠殺してから、以前に記載されているように、固定したデジタル顕微鏡を使用して、標準的な高さから創傷を撮影した。げっ歯類の研究と同様に、創傷動態を画像処理ソフトウェアを使用して定量化した。創傷領域を最初の創傷領域のパーセントとして表した。
【0178】
組織学的解析
すべての動物を、ペントバルビタールのi.v.注射によって創傷後9日目に屠殺し、0.5cmの皮膚縁を含む各潰瘍を、滅菌した外科用ばさみを使用して完全に収集し、チューブ内に設置した。この試料を、げっ歯類の研究について記載されているように処理及び撮影した。げっ歯類の研究と同じ方法を用いて、上皮間隙(EG)について画像を解析した。
【0179】
統計解析
すべての定量的な微生物学的結果は、銘々の標準偏差と共に平均として提供し、対数に変換した値[スワブ試料についてはlog(cfu/スワブ)及び組織試料についてはlog(cfu/潰瘍)]として表す。培養間におけるcfu/スワブの幅広い変動のために、対数スケールを使用してデータを比較した。両側のスチューデントのt検定を使用して群間を比較し、0.05未満のp値を有意とみなした。すべての面積測定の結果は、銘々の標準偏差と共に、元の創傷サイズ領域のパーセントの平均として表す。両側のスチューデントのt検定を使用して群間を比較し、0.05未満のp値を有意とみなした。組織学的測定の結果は、銘々の標準偏差と共に、平均値として提供する。両側のスチューデントのt検定を使用して群間を比較し、0.05未満のp値を有意とみなした。すべてのデータは、表計算プログラム(Excel、Microsoft社, Redmond, WA)に入れて、統計解析を行った。解析的統計は、表計算プログラム用の統計的なアドインプログラムである、Analyse-itバージョン2.21Excel 12+(Analyse-it Software社, Leeds, UK)によって実施した。
【0180】
6.1.8 結果
前臨床研究−薬理学/概念実証
バクテリオファージの様々な特異性の組合せにおける以前の困難、例えば保管時の不安定性にもかかわらず、本発明者らは、使用される個々のバクテリオファージ株への耐性出現の問題を克服するために、それぞれ高い溶菌活性を有する1種を超える別々のバクテリオファージ株を使用して、バクテリオファージカクテル組成物を開発した。驚いたことに本カクテルは、インビトロでのアッセイに関する図4、5及び6の死滅曲線で説明するように、ファージを個々に使用する場合よりも優れた複合効果を実証する。個々のバクテリオファージ株の培養物の使用と比較して、例えばF770/05及びF510/08が組み合わされた培養物を使用して観察される低下は、緑膿菌株に対する溶菌活性を増大させ、一方で、バクテリオファージ株に抵抗性の細菌の出現を低下させるために1種を超えるバクテリオファージ株を使用する(すなわち、本発明によるバクテリオファージカクテルを使用する)という利点を実証する。ここで、本発明者らは、100の異なる細菌株において、選択されたバクテリオファージのそれぞれの感染能力を測定した。F510/08は80%の宿主域を有し、F770/05は55%の宿主域を有し、F44/10及びF125/10の両方は100%の宿主域を有し、F1245/05は75%の宿主域を有する。
【0181】
ファージカクテルの開発
創傷感染で適用するためのバクテリオファージカクテルを開発するために、新しく単離し、特徴づけられた黄色ブドウ球菌バクテリオファージ株F44/10及びF125/10、緑膿菌バクテリオファージ株F770/05及びF510/08並びにアシネトバクター・バウマンニバクテリオファージ株F1245/05の溶菌活性を、それぞれ、黄色ブドウ球菌743/06、緑膿菌433/07及びアシネトバクター・バウマンニ1305/05株に対して調べた。図4、5及び6で示すように、バクテリオファージカクテル(赤色のライン)のインビトロでの使用は、黄色ブドウ球菌、緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニの細菌数の有意な低減をもたらす。バクテリオファージカクテルのインビトロでの使用の結果は、別々の細菌の異なるバクテリオファージ株の存在が原因の、バクテリオファージ株の感染能力の阻害がないこと示し、このカクテルが、場合によっては(例えば緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニ細菌の場合)細菌の溶解を実際に増強することをさらに実証する。
【0182】
以前に測定された細菌接種材料を使用して、制御された条件下で、慣習的な増殖曲線を実施した。予備的な研究を行い、ラットモデルにおいて、黄色ブドウ球菌743/06、緑膿菌433/07又はアシネトバクター・バウマンニ1305/05株での4日間の感染における細菌の負荷質量を決定した。cfuの決定によって、約2.0×10cfu/創傷の細菌負荷が示された。これを、インビトロでのアッセイで使用する接種材料とした。
【0183】
バクテリオファージカクテル組成物を評価する前に、様々なMOI(データ不図示)で、各バクテリオファージを個々に及び組み合わせて試験して、動物モデルにおいて、潜在的な治療及び実験使用に対するそれらの有効性をスクリーニングした。生存細菌数を1時間間隔で24時間モニタリングした。
【0184】
図4は、黄色ブドウ球菌743/06に対して調べた溶菌性研究の結果を説明し、本発明による例示的なファージカクテル組成物のインビトロでの有効性を示す。バクテリオファージF44/10を、10に等しいMOIで個別に試験して、黄色ブドウ球菌743/06に感染させた。最初の3時間以内に、生存細菌数は、細菌の対照培養物と比較して約4log単位低減した。その後、細菌は増加し始め、培養物の感染後6時間では、生存細菌は2.1×10cfu/mlであった。細菌の対照培養物(24時間のインキュベーションで、生存数は9.9×10cfu/mlであった)と比較した場合、97%の低減があったが、バクテリオファージF44/10は、宿主細胞を完全になくせなかった。個々にアッセイした場合、5種のバクテリオファージについて同様の結果が観察され、おそらく、バクテリオファージ感染に対する影響を受けにくい細菌の出現の結果であった。
【0185】
図4で説明するように)10に等しいMOIでバクテリオファージF125/10を使用して、黄色ブドウ球菌743/06に感染させ、細菌743/06の対照培養物と比較した場合、1時間以内に、細菌の生存数を約3log単位低減させた。6時間のインキュベーションで、生存細菌は3.6×10cfu/ml(F44/10培養の値より低い)であり、インキュベーション期間(24時間)の終わりでは、生存細菌は6.6×10cfu/mlであった。最初の3時間のインキュベーションのバクテリオファージF44/10とF125/10の活性の変動で見られる別々の挙動は、それらの吸着速度、潜伏期及びバーストサイズの違いを反映する(データ不図示)。
【0186】
黄色ブドウ球菌743/06に対する2種のバクテリオファージ株(F44/10及びF125/10)の組合せは、個々に観察したものと比較して、細菌の増殖をさらに低減するであろうと予想された。細菌の対照培養物と比較した場合、バクテリオファージF44/10及びF125/10は、細菌を早期に溶解し、5log単位の低減(1.9×10cfu/mlの生存細菌)に達した。しかし、細菌の対照培養物と比較した場合減少したにもかかわらず、低レベルの生存細菌数は4時間維持された。24時間のインキュベーションで、生存細菌数は4.3×10cfu/ml(細菌数の56.6%の低減)に達した。
【0187】
図5は、緑膿菌433/07に対して調べた溶菌性研究の結果を説明し、本発明による例示的なファージカクテル組成物のインビトロでの有効性を示す。黄色ブドウ球菌743/06で見られたものと類似した傾向が、バクテリオファージF770/05及びF510/08を感染させた緑膿菌433/07について観察された。
【0188】
図5で説明するように、バクテリオファージF770/05を、緑膿菌433/07に対して、1に等しいMOIで個別に試験した。インキュベーションの最初の2時間以内に、生存細菌数は、細菌433/07の対照培養物と比較して約3log単位低減し、4.6×10cfu/mlに達した。インキュベーションの3時間以内に、細菌は指数関数的に増殖し始め、6時間のインキュベーションで、生存細菌は7.3×10cfu/mlであった。培養インキュベーション期間(24時間)の終わりでは、細菌数は2.8×10cfu/mlであり、4.8×10cfu/mlを有する細菌の対照培養物と比較した場合41.6%の低減であった。
【0189】
図5で説明するように、バクテリオファージF510/08も、緑膿菌433/07に対して、10に等しいMOIで個別に試験してから、バクテリオファージF510/08を、F770/05と組み合わせた場合の使用について試験した。インキュベーションの2時間以内に、バクテリオファージF510/08は細菌を溶解し、細菌の対照培養物と比較した場合、約5log単位の細菌数の低減に達した。6時間のインキュベーションで、生存細菌は1.7×10cfu/mlであり、最初の接種材料の約2.0×10cfu/mlに達した。24時間後では、F510/08の培養は、2.8×10cfu/mlを有する細菌の対照培養物のものと類似した細菌数(41.6%の低減に相当する)をもたらした。
【0190】
様々なMOIを有するバクテリオファージF770/05及びF510/08を用いた以前のアッセイは、2種のバクテリオファージの組合せでの使用に適切な感染多重度(1に等しいMOIを有するF770/05及び10に等しいMOIを有するF510/08の使用)が、緑膿菌433/07の感染において、より有効であることを示した。
【0191】
同様に図5で説明するように、それぞれ1及び10に等しいMOIを有するバクテリオファージF770/05及びF510/08を、緑膿菌433/07に対して試験した。インキュベーションの3時間以内に、細菌数は、細菌の対照培養物と比較した場合、4log単位の低減を呈し、F770/05単独の培養と比較した場合、1log単位の低減を呈した。この時点で、F510/08は、単独でより有効であると思われた。6時間のインキュベーションで、すなわち培養物の感染後6時間で、生存細菌数は1.4×10cfu/mlであったが、インキュベーション期間(24時間)の終わりでは、生存細菌は1.7×10cfu/mlであった。これは、細菌の対照培養物と比較した場合、96.5%の低減に相当する。この減少は、各バクテリオファージの個々の培養物の使用と比較して、F770/05とF510/08の両方を使用して観察され、例えば、本明細書で論じるような、1種を超えるバクテリオファージ(バクテリオファージ「カクテル」と同様)を使用する利点を示す。
【0192】
図6はアシネトバクター・バウマンニ1305/05に対して調べた溶菌性研究の結果を説明し、本発明による例示的なファージカクテル組成物のインビトロでの有効性を示す。図6で説明するように、バクテリオファージF1245/05も、ここで説明する例示的なバクテリオファージカクテル組成物に含むために選択し、アシネトバクター・バウマンニ1305/05に対して、10に等しいMOIで個別に試験した。このMOIで、バクテリオファージF1245/05は、生存細菌の急速な減少を引き起こし、その結果、たった1時間で、2.0×10cfu/mlから6.8×10cfu/mlに数が減った。細菌の対照培養物と比較した場合、低いcfu値は約3時間維持された。6時間のインキュベーション後、生存細菌数は1.1×10cfu/mlであり、インキュベーション期間(24時間)の終わりでは、細胞は、2.2×10cfu/mlに増殖した。したがって、バクテリオファージF1245/05は個別に、アシネトバクター・バウマンニ1305/05に対して高い溶菌活性を示し、対照培養物と比較した場合、24時間のインキュベーションで、細菌数の76.3%の低減を達成した。
【0193】
この結果は、個々のバクテリオファージ株の使用は、特定のバクテリオファージ株に対する耐性の出現を最終的に、引き起こし得ることを示し、これを回避又は最小化する1つの方法は、好ましくはそれぞれが特定の細菌に対して高い溶菌活性を有する1種を超えるバクテリオファージ株を含む組成物を開発することである。
【0194】
例示的なバクテリオファージカクテル
本研究の目的は、様々なこれらの細菌に対して広域活性を示し、かつ創傷感染の管理で使用可能なバクテリオファージ株を使用して、黄色ブドウ球菌、緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニ株に対する例示的なバクテリオファージカクテルを産生することであった。
【0195】
ある種のバクテリオファージ株の細菌株に対する個々の活性を試験した後、以下の組成物、MOI=10のF44/10、MOI=10のF125/10、MOI=1のF770/05、MOI=10のF510/08及びMOI=10のF1245/05、を有するバクテリオファージカクテルを調製した。図1を参照されたい。
【0196】
このバクテリオファージカクテルを、黄色ブドウ球菌743/06、緑膿菌433/07及びアシネトバクター・バウマンニ1305/05株に対してインビトロで試験した。生存細菌数を、増殖曲線において1時間間隔で24時間、各細菌について個々に測定した。バクテリオファージカクテルのインビトロでの適用は、黄色ブドウ球菌、緑膿菌及びアシネトバクター・バウマンニの細菌数の有意な低減をもたらす(それぞれ図4〜6を参照されたい)。
【0197】
図4で説明するように、細菌の対照培養物と比較した場合、バクテリオファージカクテルの単独接種は、黄色ブドウ球菌743/06を5log単位低減するのに十分であった。組み合わせた2種の黄色ブドウ球菌バクテリオファージ株の活性について類似した低下が観察された。インキュベーションの2時間目と6時間目の間では、カクテルの有効性は、2種のバクテリオファージ株F44/10とF125/10が一緒よりも低いが、24時間後では、これら2つの培養物の間の差は著しかった。細菌数は減少し始め、インキュベーション期間(24時間)の終わりでは、生存細菌は6.8×10cfu/mlであった(対照培養物と比較した場合93.1%の低減)。
【0198】
図5で説明するように、このバクテリオファージカクテルを、緑膿菌433/07に対しても試験し、2時間のインキュベーション期間で、ほぼ4log単位の細菌数の低減を呈した。培養インキュベーション時間(24時間)の終わりでは、細菌数は3.9×10cfu/mlであり、両方のバクテリオファージ株を一緒に試験した時よりもわずかに高いが、細菌の緑膿菌433/07の対照培養物と比較した場合、これは、生存細菌の91.9%の低減に相当する。この差は、緑膿菌バクテリオファージ株F770/05及びF510/08の溶菌活性に対するカクテルの阻害効果と関連づけるのに十分でなかった。
【0199】
図6で説明するように、このバクテリオファージカクテルを、アシネトバクター・バウマンニ1305/05株に対しても試験した。細菌1305/05の対照培養物と比較した場合、2時間のインキュベーションで、このバクテリオファージカクテルは細菌数を約4log単位低減した。培養インキュベーション期間(24時間)の終わりでは、細菌数は8.6×10cfu/mlに達し、これは、対照培養物と比較した場合、92.8%の低減に相当する。これらの結果は、カクテル中のこのバクテリオファージのより優れたパフォーマンスを示す。
【0200】
バクテリオファージカクテルのインビトロでの適用の結果は、別々の細菌の異なるバクテリオファージの存在に起因する各バクテリオファージの感染能力の阻害がないことを示した。
【0201】
げっ歯類モデルを使用した結果
要点をまとめると、げっ歯類で行われた研究は、Instituto de Medicina Molecularの動物倫理委員会によって所内で承認され、ポルトガルの法律に基づいて、ポルトガルのGeneral Directorate of Veterinary Services(Direccao Geral de Veterinaria)によって国家的に承認された。すべての動物は、欧州指針86/609/EC、ポルトガルの法律(条例1005/92)及び実験動物の管理と使用に関する指針(NRC2011)に基づいて維持した。化学誘発性糖尿病のウィスターマウスにおいて以前に最適化されたげっ歯類の創傷感染モデルを使用した(Mendes JJ, et al. 2012. Comp Med 62:1-12)。
【0202】
上で述べたように、図2は研究プロトコールを説明する。簡単に述べると、糖尿病を誘発し、確立した後、バクテリオファージ株の溶菌曲線に基づいて処置を施し、処置は抗生物質の薬量学と類似しており、すなわち、最初の24時間は4時間毎、次いで5日間は1日1回であった。用量は、ポルトガルの幾つかの病院から集めた様々な患者で以前に行われた疫学研究で得られた結果に基づいた(データ不図示)。本研究では、糖尿病性足部潰瘍に感染させる細菌濃度は10〜10の範囲にわたると結論した。インビトロでのアッセイは、MOIは、バクテリオファージ株に応じて1又は10であることを示し、その結果、ファージ濃度は、潰瘍の1cm当たり10〜10であった。
【0203】
感染させる慢性創傷モデルの選択は、バクテリオファージは、その特定の生きた細菌宿主でのみ複製するという事実に基づき、したがって、感染が慢性でないであろうモデルを研究することは意味をなさなかった。主要エンドポイントは、創傷における微生物の減少であった。組織病理を微生物学的結果と比較する時と同様に、創傷閉鎖の違いが、真皮及び上皮間隙における本当の減少を必ずしも反映するとは限らないけれども、創傷閉鎖も測定した。
【0204】
環境条件と関わり合いを持つ動物モデルにおいて起こり得るバクテリオファージの消耗及び細菌の耐性出現の問題並びに処置の延長の問題を克服するために、インビボでの実験では、すなわち創傷に接種し、動物を処置するために、より多くの数のバクテリオファージを使用した。インビボでの使用に関する例示的カクテル中に存在するバクテリオファージ粒子の数は、1log増やした。
【0205】
微生物学的解析
図7は、黄色ブドウ球菌接種、緑膿菌接種及びアシネトバクター・バウマンニ接種の動物についての対照(C)群及び試験(T)群に対する微生物負荷解析の結果を説明し、本発明による例示的なファージカクテル組成物のラットモデルでのインビボでの有効性を示す。
【0206】
導入療法後(t1)では、黄色ブドウ球菌接種、緑膿菌接種及びアシネトバクター・バウマンニ接種群において、対照と試験亜群の間で、選択培地のコロニー数に統計的有意差があった。処置開始後4日目(t4)では、対照と試験亜群の間で、選択培地のコロニー数に統計的有意差があった。黄色ブドウ球菌及び緑膿菌接種対照亜群のt0〜t4に、微生物負荷低減の傾向があった。すなわち、t1及びt4で、3つの群すべてにおいて、バクテリオファージ処置した動物が対照動物より有意に低い数を示した。
【0207】
創傷閉鎖動態(面積測定)
図8は、黄色ブドウ球菌接種、緑膿菌接種及びアシネトバクター・バウマンニ接種の動物についての陰性群、対照(C)群及び試験(T)群に対する創傷閉鎖解析の結果を説明し、本発明による例示的なファージカクテル組成物のラットモデルでのインビボでの有効性を示す。創傷領域は、t1及びt9で評価し、2時点間の差を計算した。
【0208】
ラットモデルにおける創傷の面積測定解析は、陰性対照群及びすべての接種対照亜群の創傷領域の間で、すべての群の対照と試験亜群の間に創傷領域低減の傾向を伴って、統計的有意差を示し、黄色ブドウ球菌接種群及び緑膿菌接種群において、対照と試験亜群の創傷領域間に統計的有意差を示した。すなわち、バクテリオファージ処置は、黄色ブドウ球菌感染創傷及び緑膿菌感染創傷の両方で、創傷サイズを低減した(pは0.05未満)。
【0209】
組織学的解析
図9は、黄色ブドウ球菌接種、緑膿菌接種及びアシネトバクター・バウマンニ接種の動物についての陰性群、対照(C)群及び試験(T)群に対する組織学的解析の結果を説明し、本発明による例示的なファージカクテル組成物のラットモデルでのインビボでの有効性を示す。
【0210】
上皮間隙(EG)及び真皮間隙(DG)の両方において、陰性対照群及びすべての接種対照亜群の間で統計的有意差があった。黄色ブドウ球菌接種群及び緑膿菌接種群において、対照と試験亜群のEGの間に統計的有意差があった(pは0.05未満)。DGでは、試験及び対照亜群の間の差は、緑膿菌接種群においてのみ統計的有意性が得られた。これらの結果は、緑膿菌は黄色ブドウ球菌よりも深く組織に侵入するという事実と相関する。アシネトバクター・バウマンニは、経過の後期に患者に出現する生着菌であり、このことは、ある種の実施形態では、バクテリオファージカクテルにとってこのバクテリオファージを含むことが重要であることの理由である。
【0211】
ブタモデルを使用した結果
上記で説明したものと同様の結果がブタモデルを使用して得られた。要点をまとめると、Hirsch et al.(Hirsch T, et al. 2008. BMC Surg 8:5)によって記載されているような、以前に最適化された化学的誘発動物におけるブタ創傷感染モデルを、本研究の要求に適合するように改変した。合計で48切除創傷(12陰性対照創傷、12緑膿菌接種創傷、12黄色ブドウ球菌接種創傷、及び12アシネトバクター・バウマンニ接種創傷)を有する3匹の動物(陰性対照、接種−対照、及び接種−試験)を使用した。上で述べたように、図3は研究プロトコールを説明する。上記のラットモデルと同じ投薬及び投薬スケジュールを使用した。
【0212】
微生物学的解析
図10は黄色ブドウ球菌接種、緑膿菌接種及びアシネトバクター・バウマンニ接種の動物についての対照(C)群及び試験(T)群に対する微生物負荷解析の結果を説明し、本発明による例示的なファージカクテル組成物のブタモデルでのインビボでの有効性を示す。
【0213】
導入療法後(t1)では、黄色ブドウ球菌接種群及び緑膿菌接種群において、対照と試験亜群の間で、選択培地のコロニー数に統計的有意差があり、アシネトバクター・バウマンニ接種試験及び対照亜群について、平均コロニー数における微生物負荷低減の傾向(pは0.05未満)があった。処置開始後4日目(t4)では、黄色ブドウ球菌接種群及び緑膿菌接種群において、対照と試験亜群の間で、コロニー数に統計的有意差があった。アシネトバクター・バウマンニ接種試験及び対照亜群において平均コロニー数に統計的有意差がなかったが、コロニー数低下の傾向がある。
【0214】
創傷閉鎖動態(面積測定)
図11は、黄色ブドウ球菌接種、緑膿菌接種及びアシネトバクター・バウマンニ接種の動物についての陰性群、対照(C)群及び試験(T)群に対する創傷閉鎖解析の結果を説明し、本発明による例示的なファージカクテル組成物のブタモデルでのインビボでの有効性を示す。
【0215】
組織学的解析
図12は、黄色ブドウ球菌接種、緑膿菌接種及びアシネトバクター・バウマンニ接種の動物についての陰性群、対照(C)群及び試験(T)群に対する組織学的解析の結果を説明し、本発明による例示的なファージカクテル組成物のブタモデルでのインビボでの有効性を示す。
【0216】
EGでは、陰性対照群及びすべての接種対照亜群の間で統計的有意差があった。EGに関しては、黄色ブドウ球菌接種群及び緑膿菌接種群の対照と試験亜群の間にも統計的有意差があった(pは0.05未満)。
【0217】
結果の考察
以前のげっ歯類の研究(Mendes JJ, et al. 2012. Comp Med 62:1-12)に基づくと、t4の感染した創傷から培養された組織中の細菌コロニー数は、平均で、潰瘍当たり7.54±0.19log(CFU)であることがわかっていた。本研究は、高バクテリオファージ用量(投与当たり10〜10pfu)を使用し、これは、10〜100の感染多重度をもたらす。この初回用量は、バクテリオファージが複製し、生活環を完了する必要なしに低減を引き起こすように、標的細菌集団を十分に上回っていると考えられる。これは、比較的低いバクテリオファージ用量を用い、標的細菌を低減させるためにファージの感染/複製サイクルを伴う能動的療法に主に依存していた以前のバクテリオファージ療法研究(Loc Carrillo C, et al., 2005, Appl Environ Microbiol. 71(11):6554-6563)と対照的である。能動的及び受動的バクテリオファージ療法のこれらの方法は、インビトロ及びインビボでの研究について記載されている(Cairns BJ, et al., 2011, PLoS Pathog. 5(1):e1000253;及びHooton SP, et al., 2011, Int J Food Microbiol. 151(2): 157-163)。
【0218】
黄色ブドウ球菌及び緑膿菌に感染した動物において、3つの転帰すべてがバクテリオファージ処置によって改善され、アシネトバクター・バウマンニに感染した動物において、細菌の低減が観察された。理論に拘束されるものではないが、これは、バイオフィルムコミュニティー中にアシネトバクター属種が存在することによって、他の種、すなわちブドウ球菌属種の表面定着が容易になることが発見された研究(例えば、Simoes LC, et al., 2008, Appl Environ Microbiol. 74(4): 1259-1263)によって説明することができる。本明細書の結果は、アシネトバクター・バウマンニ接種群の、非選択的培地で増殖する過剰な細菌は主としてブドウ球菌属種であることが確認されたという点において、この発見と合致している。
【0219】
本研究では、細菌数をt4(処置開始後4日目)で評価し、コロニー数は、対照と比較して、黄色ブドウ球菌及び緑膿菌試験条件について、特に緑膿菌に関して有意に異なった。これらの発見は、以前の研究(例えば、Mendes JJ, et al. 2012. Comp Med 62:1-12;及びFazli M, et al., 2009, J Clin Microbiol. 47(12): 4084-4089)と一致している。特に、Fazli et al.は、臨床的な創傷生検検体に関して共焦点レーザー走査顕微鏡検査を使用して、緑膿菌凝集体から創傷表面への距離が、黄色ブドウ球菌凝集体からの距離より有意に長いことを示し、これがスワブ試料における前者の過小評価につながった。この知見は、各病原性細菌株に内在する要因が、スワブから増殖した培養物と組織試料から増殖した培養物を比較する研究間の差に寄与し得る可能性を支持する。
【0220】
面積測定の評価は、対照並びに黄色ブドウ球菌及び緑膿菌で処置した試験群の間の統計的有意差を明らかにし、アシネトバクター・バウマンニついて同じ傾向が観察された。これらの結果は、収集した組織学的検体におけるEG及びDGの測定と類似していた。
【0221】
ブタは、皮膚疾患研究の理想的な大型動物モデルであると考えられており(Greenhalgh DG., 2005, J Burn Care Rehabil. 26(4): 293-305)、重要なことに、げっ歯類モデルで得られた結果は、大部分がブタでの実験によって確証された。両方のモデルにおいて、黄色ブドウ球菌感染及び緑膿菌感染について、両時点(t1及びt4)で細菌数の有意な低減があった。
【0222】
EG測定に関して、黄色ブドウ球菌接種及び緑膿菌接種の試験動物において有意な結果が観察された。
【0223】
したがって、本研究は、バクテリオファージ含有TATは、薬物抵抗性細菌によって引き起こされる感染症を含めたDFIに対する実行可能な処置を提供し、DFI並びに他の慢性の皮膚感染症及び軟部組織感染症と関連がある重大な問題に対処するための有効かつ新規な処置アプローチを与えることを示唆する。すなわち、バクテリオファージ処置は、黄色ブドウ球菌感染及び緑膿菌感染において、上皮間隙及び真皮間隙の縮小によって示されるように、効果的に細菌コロニー数を低下させ、創傷治癒を改善し、したがって、局所的に投与されるバクテリオファージ処置は、特に創傷デブリードマンと併せて適用する場合に、慢性の感染症を回復させるのに有効である。
【0224】
6.1.9 最初のヒト研究用の毒性プログラム
以下に示すミニブタでの4週間の真皮炎症研究は、最初の臨床研究を支持するために提案される。バクテリオファージ株は、特定の細菌の存在下にない場合は複製しないので、静脈内(iv)研究は、いかなる結論も導かないと考えられており(しかし、iv研究は、この考えをさらに強くすることができる)、バクテリオファージ株は、(iv研究における、局所適用と同じ用量の使用は、考え得る最大吸収と比較した場合にはるかに高い用量を反映するので)はるかに高い量で与えた場合に安全であるとも考えられているが、必要であれば、ラットでの4週間のiv研究も行うことができる。
【0225】
ミニブタでの4週間の真皮炎症研究、4週間の回復期(GLP)
研究計画は5匹のメスのミニブタを伴い、投薬経路は、1日1回の頻度で真皮(2部位/側面;覆われた/洗浄された)である。用量調製物は、受取ったままの状態で使用するためのものである。観察は1日2回行う(死亡/病的状態)が、体重測定を含めた詳細な臨床的観察は、1週1回行う。身体検査は、被験物質(TA, test article)としての本発明による例示的なファージカクテル組成物の投与を開始する前に、すべての動物について獣医スタッフが行う。
【0226】
皮膚反応を調べるために、紅パッチ及び浮腫について、2日目に始まる各投薬より前に、各動物を毎日調べる。いかなる非試験部位の病変も注意し、記載する。皮膚炎症をスコア付けするためのドレーズスケールを、以下のように使用する。紅パッチ及び痂皮形成については、0は紅パッチなしを示し、1は非常に軽度の紅パッチ(辛うじて認識可能)を示し、2ははっきりとした紅パッチを示し、3は中程度から重度までの紅パッチを示し、そして4は重度な紅パッチ(高度紅斑)からわずかな痂皮形成(深部傷害)までを示す。浮腫形成については、0は浮腫なしを示し、1は非常に軽度の浮腫(辛うじて認識可能)を示し、2は軽度浮腫(明確な隆起によるはっきりとした領域の縁)を示し、3は中程度の浮腫(約1ミリメートルの隆起)、そして4は 重度な浮腫(1ミリメートルを超える隆起及び曝露領域を越えた広がり)を示す。部検がない場合は、動物をストックに戻す。
【0227】
組織学的解析のためにパンチ生検を行う。左側面から3試料(ナイーブ、プラセボ、TA)を29日目に採取し、右側面から3試料を57日目に採取する。すべての試料を保存し、スライドに加工し、顕微鏡的に調べる。配合分析は、第三者によって提供された分析証明書を伴う。
【0228】
ラットにおける4週間の真皮毒性研究、4週間の回復期(GLP)
研究計画は、以下の表に示す、本発明による例示的なファージカクテル組成物を投与するための投薬スケジュールを伴う。
【0229】
【表1】
【0230】
さらなる動物/性別/処置群を交替動物として含む。
【0231】
投薬経路は1日1回の頻度でivボーラスである。用量調製物は、受取ったままの状態で使用するためのものである。観察は1日2回行う(死亡/病的状態)が、体重測定を含む詳細な臨床的観察観測は、1週1回行う。食物消費もまた1週1回行う。
【0232】
眼科試験は、すべての動物について試験前に実施し、すべての生存している主要研究動物について終了及び回復時に実施する。血液学、凝固、臨床化学及び尿検査を含めた臨床病理試験は、すべての生存している主要研究動物について、終了部検又は回復部検時に一度実施する。部検試験は、すべての主要研究動物及び回復動物について実施し、TK動物は安楽死させ処分する。器官重量は、副腎、脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、卵巣、下垂体、前立腺、唾液腺、精嚢、脾臓、副甲状腺を含む甲状腺、胸腺、精巣及び子宮について測定する。
【0233】
スライド調製及び顕微鏡的病理は、媒体対照及び高用量群のすべての動物並びにすべての死滅して発見された動物について実施し、低用量及び中用量群の標準的な組織(約65)及び標的器官のフルセットの調製、並びにすべての回復動物についての調製を含む。スライド調製及び顕微鏡的病理は、すべての動物の肉眼的病変にも実施する。
【0234】
標準的な統計的解析を使用する。AUC、t1/2、tmax及びCmaxなどの毒物動態学解析の標準的なパラメーターも使用する。
【0235】
6.1.10 臨床研究
臨床試験/概念実証
図13は、糖尿病性足感染症の分類、及び本発明による例示的なファージカクテル組成物を使用する、糖尿病性足感染症へのファージ療法の適用を説明する。基本的に、本発明によるバクテリオファージカクテル組成物は、PEDIS分類に基づいて、グレード2〜3の潰瘍に適用する。投与は、創傷のデブリードマンの後に局所的に適用される液体製剤の使用を伴う。
【0236】
図14は、糖尿病性足部潰瘍に対する療法で使用するための本発明による例示的なファージカクテル組成物に対する臨床研究計画を説明する。研究の種類は、平行割付(parallel assignment)の介入モデルを伴う介入性であり、研究計画はオープンラベルマスキングを用いる無作為割付を伴い、エンドポイント分類は安全性及び有効性を含むが、主な目的は処置に関してである。主要転帰の尺度は、微生物組織負荷(生検)、創傷液体微生物負荷(時間枠:発泡体の取替え毎)、及び組織微生物負荷(時間枠:24時間/第3日/第5日/臨床徴候オフ/オン)を含む。二次転帰の尺度は、各経過観察来院(時間枠4週間及び12週間)の際の創傷評価を含む。
【0237】
スクリーニングの来院及び創傷のデブリードマンの後に、適格な患者集団にプラセボ又は10ファージ/cm/投与の本発明によるバクテリオファージカクテル組成物を、最初の24時間は4時間/4時間で、次いで5日間は1日1回で無作為に与える。薬物の安全性及び有効性は、プラセボ群と比較する。しかし、患者が、切断を要する危険性があると判定される場合は、その患者を療法群に含めることもできる。
【0238】
判定基準は、以下の組み入れ基準及び除外基準を伴う。組み入れ基準は、PEDIS分類によるグレード2又は3の潰瘍部位における臨床的細菌感染症、及び陰圧閉鎖療法への禁忌がないことを含む。除外基準は、7日前以内の、創傷ケア進展のための任意の薬剤の創傷への局所適用(例えば増殖因子の使用)を含む。
【0239】
前述の説明を読めば、当業者は何らかの改変及び改善を思い浮かべるであろう。すべてのそうした改変及び改善は、簡潔さと読み易さのために本明細書において削除されているが、適切に、以下の特許請求の範囲の範囲内にあることを理解されたい。
【0240】
本明細書に引用されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、すべての目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【受託番号】
【0241】
NCIMB41862
NCIMB41861
NCIMB41863
NCIMB41867
NCIMB41866
NCIMB41864
NCIMB41868
NCIMB41865
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]