(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186441
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】過剰締め付けを防止する骨ねじの固定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/80 20060101AFI20170814BHJP
A61B 17/86 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
A61B17/80
A61B17/86
【請求項の数】17
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-536044(P2015-536044)
(86)(22)【出願日】2013年9月20日
(65)【公表番号】特表2015-531285(P2015-531285A)
(43)【公表日】2015年11月2日
(86)【国際出願番号】EP2013069584
(87)【国際公開番号】WO2014056704
(87)【国際公開日】20140417
【審査請求日】2016年8月19日
(31)【優先権主張番号】12007011.5
(32)【優先日】2012年10月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512052878
【氏名又は名称】ファセット−リンク・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FACET−LINK INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】ハルム−イフェン・イェンゼン
【審査官】
宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−512725(JP,A)
【文献】
特開2010−119638(JP,A)
【文献】
特表2011−504408(JP,A)
【文献】
特表平11−500334(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0306555(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0306550(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0062862(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102010042930(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/80
A61B 17/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダ(2)と、
骨ねじ(1)を収容するクランプスリーブ(3)と、を有し、
骨ねじ(1)が、先側にねじ部(11)を備えるシャンク(10)、ヘッド(13)、および第2のねじ部(12)を備える拡径部(15)を備え、
ホルダ(2)が、貫通穴(20)と、クランプスリーブ(3)が旋回可能に取り付けられる受け座(23)とを備え、
クランプスリーブ(3)が、その外側表面(30)に放射方向に突出する突起(34)を備えるとともに、その内側(31)に第2のねじ部(12)と係合する少なくとも一山のクランプ用ねじ部(32)を備え、
非クランプ状態において、遊び(F)がクランプスリーブ(3)上のクリアランスによって形成され、
突起(34)が、受け座(23)上のくぼみ(24)にポジティブロック状態で係合し、
拡径部(15)が円錐状であって後側に向かって拡がり、その円錐角(β)が、遊び(F)を円錐角の半分のタンジェント(tan(β/2))で割り算した値が第2のねじ部(12)のねじピッチ(h)の0.5〜2.5倍に相当するように、選択されている、固定装置。
【請求項2】
遊び(F)が、拡径部(15)とクランプスリーブ(3)の内側(31)との間のギャップによって形成されるアンダーサイズ(U)を含んでいる、請求項1に記載の固定装置。
【請求項3】
遊び(F)が、クランプスリーブ(3)と受け座(23)との間のクリアランス(S)を含んでいる、請求項1または2に記載の固定装置。
【請求項4】
拡径部(15)とヘッド部(13)とが一体化されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項5】
骨ねじ(1)のシャンク(10)上におけるねじ部(11)のピッチと第2のねじ部(12)のピッチとが異なる、請求項1から4のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項6】
第2のねじ部(12)のピッチの方が小さく、好ましくは0.4〜0.7倍小さい、請求項5に記載の固定装置。
【請求項7】
クランプスリーブ(3)の内側(31)が円筒状である、請求項1から6のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項8】
クランプスリーブの内側が円錐状であって、
拡径部の外側表面が円筒状である、請求項1から6のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項9】
クランプ用ねじ部(32)のピッチが、ねじ(1)のシャンク(10)上におけるねじ部(11)のピッチ(H)に対して、最大で3倍、好ましくは1.5倍である、請求項1から8のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項10】
クランプスリーブ(3)と受け座(23)との間の境界面が球状であり、特に、クランプスリーブ(3)の外側表面(30)が球状である、請求項1から9のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項11】
クランプスリーブ(3)が、1つのスロットを備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項12】
突起(34)が、クランプスリーブ3の最も幅が大きい部分、特にその赤道(35)上に設けられている、請求項1から11のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項13】
突起(34)が、回転対称に構成されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項14】
突起(34)が、ドーム状、好ましくは半球状の先端を備えるように構成されている、請求項13に記載の固定装置。
【請求項15】
突起(34)が、柱状、好ましくは円筒状の構造を備える、請求項13または14に記載の固定装置。
【請求項16】
受け座(23)内のくぼみ(24)が、スロット状であって、貫通穴(20)の中心軸方向に延在する、請求項1から15のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項17】
第2の突起(34’)が径方向の反対側に設けられ、
対応する第2のくぼみ(24’)が受け座(23)内に設けられる、請求項1から16のいずれか一項に記載の固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定用の骨ねじを備えていないホルダを有する固定装置に関する。固定装置は、特にインプラントと周囲の骨材料とを連結する役割をする。
【背景技術】
【0002】
インプラントを適切な固定方法で固定するために、または関節を固定するために、骨ねじを使用することが知られている。用途にもよるが、これに関連して、インプラントと骨ねじの間の位置決めは角度について固定されれば十分であり、ある場合には、角度可変(多軸)機構が必要となる。角度調節を可能とするために、ドーム状のクランプスリーブが、保持される対象(骨プレートまたはインプラント)と骨ねじとの間に設けることが知られている。クランプスリーブは、保持体の対応する受け座に傾き可能に取り付けられる。固定に関して、骨ねじは傾き可能なクランプスリーブの内側を介してガイドされ、骨ねじのねじ部が保持体の下側に位置する骨に係合するとともに、ヘッド部近傍の部分がクランプスリーブの内壁上の対応するめねじ部に係合する。ねじが固定されたとき、結果として骨に固定されるだけでなく、骨ねじは、保持体に対向するクランプスリーブに押圧され、それによりその角度位置で固定される。その押圧を受けるためには拡径する必要があり、そのために、ねじのヘッド部は内側の幅に比べてオーバーサイズにされている。このタイプの固定装置は、US2005/154392A1に記載されている。
【0003】
このタイプの固定装置の取り扱いにおける問題の1つとして、外科医が骨ねじを十分に締め付けた感触をほとんど得ることができない点がある。アクセスが困難なまたは狭い場所であってそれにより細心の注意を必要とする骨部を正確に手術するためには、締め付けトルクの感触のみに頼ることは相対的に当てにならない。この対処としてトルクスパナを使用することは、ねじ部の状態(乾燥しているまたは体液によって湿っている)によって締め付けトルクが大きく変化するので、解決策にはならない。また、上述の固定装置の場合、締め付けトルクは、クランプスリーブを広げるための力が加わるために正確ではない。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本発明の目的は、従来の固定装置を、再現可能な強さでよりシンプルな方法で締め付けできるように改良することである。
【0005】
本発明によれば、独立請求項の特徴を備える固定装置が実現される。従属請求項の特徴がさらに有利に発展させる。
【0006】
ホルダと、骨ねじを収容するクランプスリーブとを有し、骨ねじが、先端部にねじ部を備えるシャンク、ヘッド、および第2のねじ部が設けられた後側の拡径部を備え、ホルダが貫通穴とクランプスリーブが旋回可能に取り付けられる受け座とを備え、クランプスリーブがその外側表面に放射方向に突出する突起を備えるとともに、その内側に第2のねじ部と係合する少なくとも1山のクランプ用ねじ部を備え、非クランプ状態において遊びがクランプスリーブ上のクリアランスによって形成される固定装置について、本発明によれば、突起が受け座のくぼみにポジティブロック状態で係合し、拡径部が円錐状であって後側に向かって拡がり、その円錐角βが、遊びを円錐角の半分のタンジェント(tan(β/2))で割り算した値が第2のねじ部のねじピッチの0.5〜2.5倍に相当するように選択される。
【0007】
以下、いくつかの用語について説明する。
【0008】
用語”ポジティブロック状態”は、クランプスリーブが受け座に対してツイストしないように双方向、すなわち各回転方向について固定されるように、突起がくぼみにガイドされている状態と理解される。これは、突起が、組み立てに必要なわずかなクリアランスは別として、クリアランスフリーで受け座内に固定されていることを意味する。
【0009】
骨ねじに関して、用語”先側”はシャンクの先端側であって、”後側”はその反対側の骨ねじのヘッド部側と理解される。
【0010】
用語”旋回可能”は、クランプスリーブによって固定される骨ねじの軸が、ホルダ内において貫通穴の中心軸に対して角度が自由に調節可能な状態になることができることと理解される。調節範囲は、好ましくは貫通穴の中心軸に対してそれぞれの方向に少なくとも15°である。
【0011】
本発明の核心は、2つの手段の組み合わせによって確実に着座するまでの締め付けパスを正確に定義することである。この組み合わせの第1の特徴は、クランプスリーブがその突起によってホルダに対して回転不可能な状態で固定されることである。また、初期状態(骨ねじが取り付けられているがまだ締められていない状態)のクランプスリーブが、受け座に対するクリアランスおよび/または骨ねじに対するクリアランスを有し、そのクリアランスが、骨ねじの円錐状の拡径部によって骨ねじが締まるにつれて徐々に消失する遊びを定義する。遊びが消失する速さは、骨ねじのねじれ角および拡径部上の第2のねじ部のピッチに依存する。これに関連して、骨ねじの回転によって達成されるフィードパスと円錐状の拡径部によって達成される拡大パスは、クリアランスが最終的に結果として消失する範囲で、同一ではなく、円錐角βによって互いに関連している。本発明では、クランプスリーブ自体が受け座内において双方向への回転が不可能な状態で固定されている場合、これは、本発明の決定的な第2の特徴であるが、円錐角βを任意に選択するのではなく具体的に選択することにより、遊びを消失させるためのねじの締め付け角を定義することができる。双方向の回転が不可能な状態で固定されていない場合、この非固定の比較例のシステムでは、クランプスリーブが引きずられて回転すると、締め付け角を意味がある具体的な値に決定することができない。実用上、例えばトルクスパナを再び利用するためにねじが外科医によってときどきゆるめられる可能性がある場合において、双方向の固定は、実際には、非常に重要な意味を持つ。本発明では、上述したような円錐角の定義と双方向への回転を不可能にするクランプスリープの固定とを義務的に組み合わせることにより、現実的な取り扱いの信頼性を確保するとともに、その結果として固定装置を現実的な用途に適用させる。
【0012】
遊びを形成するクリアランスは、異なる方法でも形成することができる。適切な方法において、クランプスリーブの外側のクリアランスは、クランプスリーブと受け座との間のクリアランスである。これに加えてまたは代わりとして、遊びを、内側のクリアランスである、クランプスリーブの内側の幅に対する骨ねじの拡径部のアンダーサイズによって形成することができる。これら2つを組み合わせることも可能である。その結果として、好ましくは3/4回転に相当する少なくとも270°である、実用的で相対的に大きい締め付け角を実現することができる。
【0013】
また、骨ねじ、ホルダ、および特にクランプスリーブの弾性は、遊びを考慮してもよい。例えば、骨ねじに使用される材料はその拡径部が負荷を受けて圧縮するような弾性を備え、その圧縮部はさらに遊びを考慮しなければならない。なお、このことは本質的なものではなく、様々な用途に使用される材料は十分な剛性があればよい。
【0014】
適切な方法において、ねじの拡径部およびヘッド部は一体的に結合されてもよい。これにより、骨ねじをシンプルな構造にすることができる。なお、この結合は必須ではない。
【0015】
本発明は、特に、骨ねじのシャンク上のねじ部と第2のねじ部とが異なるピッチである実施の形態の場合に価値がある。骨ねじのねじ部は概して相対的に粗く(1.25〜2.5mmの範囲のピッチ)、その一方、第2のねじ部は細かいのが好ましい。このピッチの違いにより、2つのねじ部を、それぞれの目的の用途に応じて、すなわち一方が骨材料の固定のために、また他方が大抵の場合に金属から作製されるクランプスリーブに作用するために最適化することができる。ねじ部のピッチは、好ましくは第2のねじ部のピッチが骨ねじのシャンク上のねじ部のピッチに比べて小さくなるように、好ましくは0.4〜0.7倍に小さくなるように選択される。ピッチの違いの結果、骨ねじが締め付けられると、骨ねじによって連結される部分同士が互いに引っ張り合う。2つの骨部分の規定のテンションは、本発明に係る締め付け角を限定することによって決まる。結果として、ねじ部によって骨ねじがちぎれるリスクがある過剰な締め付けの恐れが首尾よくなくなる。
【0016】
適切な方法において、クランプスリーブ内側のクランプ用ねじ部のピッチは、好ましくはわずか3山、より好ましくは、1.5山に限定される。このような構成によれば、クランプ用ねじ部と同一の直径であって異なるピッチを有する骨ねじの先側のねじ部が、クランプスリーブの内部の内側表面上のねじ部を介して容易にガイドされる。
【0017】
クランプ用ねじ部は、その内側が円筒状になるように適切に構成される。これにより、製造が容易になるだけでなく、締め付けパスを算出するために決定される円錐角を骨ねじの拡径部のみによって決定することができるという利点を提供する。なお、その一方で、内側が円錐状に形成されることと、拡径部の外側表面が対称的に円筒状に構成されることは、除外すべきではない。
【0018】
好都合な方法において、クランプスリーブと受け座は、それらの間の境界面が球状になるように形成される。特に、クランプスリーブの外側表面は球状であるのがよい。これにより、クランプスリーブが受け座内にて大きい角度で旋回するのに有利な構成が提供される。
【0019】
クランプスリーブは、好ましくは、1つのスロットを備える。これは、連続的なスロットがクランプスリーブの高さ方向全体にわたって延在していることを意味する。これにより、良好に拡大することができ、組み立てが容易になる良好な圧縮率を得ることができる。
【0020】
好都合な方法において、突起は、クランプスリーブの最大幅の部分(赤道部分)に設けられる。これにより、傾き角の方向に関係なく、好ましい傾き特性を得ることができる。また、突起は、回転対称になるように好都合に構成される。これにより、傾き角の方向に関係なく、傾き特性が一様にされる。また、このような突起形状により、運動中に受け座内におけるクランプスリーブのぐらつきを抑制することができる。これに関して適切であるのは、突起の先端がドーム状、特に半球状である。突起は、柱状構造、特に円筒状構造を備えてもよい。なお、これは、ぐらつきのリスクを抑制するために、好ましくは高さについて小さく(突起の幅に比べて小さく)すべきである。
【0021】
突起を受け入れる受け座のくぼみはスロット状であるのが好ましく、そのスロット状のくぼみは貫通穴の中心軸の方向に延在する。その結果として、クランプスリーブは、受け座内の位置に向かって押し込まれることによって簡単に取り付けられる。それと同時に、特にクリアランスがなくても、ポジティブロック状態で固定される。シンプルな取り付け性は、このように、高い信頼性で双方向への回転を不可能にすることにつながる。
【0022】
径方向の反対側のクランプスリーブ上に第2の突起を設けることが有利なことは分かっている。対応する第2のくぼみが受け座に設けられることは明らかである。これにより、クランプスリーブは信頼性が高い状態で固定され、クランプスリーブの傾き軸は2つの突起の結果として正確に定義される。
【0023】
さらにくぼみがスロット状であることにより、突起がその内部で上下に移動し、それにより、上述の傾き軸に対して直角方向の軸を中心とする第2の傾き挙動が可能になる。その結果として、クランプスリーブの挙動の自由度および骨ねじの固定についての多軸性が増加する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下、本発明は、一例の実施の形態に基づいて、また添付図面を参照しながらより詳細に説明され、
【
図1】
図1は、本発明の一例の実施の形態に係る、取り付け状態における固定装置の全体図、
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る固定装置は、骨ねじ1と、ホルダ2と、クランプスリーブ3とを含んでいる。図に示す一例の実施の形態は、2本の骨ねじ1と2つのクランプスリーブ3とを含むダブルホルダを提供する。
【0026】
2つの骨ねじ1を備えるこのタイプの固定装置は、例えば、椎骨(図示せず)の椎弓板を、特に椎弓板を部分的に切除した後に補強する外側ブリッジインプラントとして構成されている。このようなインプラントが、同一出願人の別の出願である国際出願PCT/EP2012/001357に開示されている。
【0027】
骨ねじ1は、従来の方法で構成され、本質的には、先側部分に骨ねじ部11を備えるシャンク10を有する。骨ねじ部11を、シャンク10全体にわたって設けてもよい。拡径部として構成されたねじヘッド部13は、シャンク10の後端に設けられている。それは、その外側端面に、スクリュードライバ(図示せず)と係合する星形状の凹部を備える。ねじヘッド部13は円錐状であって、その外側表面14の円錐角はβである。第2のねじ部12がその外側表面14に設けられている。それは、骨ねじ部11と同一方向に方向付けされているが、かなり小さいピッチhを備える(図に示す一例の実施の形態の場合、骨ねじ部11のピッチHの半分である)。第2のねじ部12は、およそ3山以上である。拡径部15は、ねじヘッド部13とは別々にもうけられてもよい(
図7参照)。
【0028】
ホルダ2は、その2つの端に、骨ねじ1を受け入れる貫通穴20を備える。それは、その中央部が部分球状に広がり、クランプスリーブ3のための受け座23を形成する。少なくとも貫通穴20の深さの半分以上の長さであるスロット状のくぼみ24が、受け座23の一方側に形成されている。受け座23は、クランプスリーブ3を旋回可能に固定する役割をする。そのために、クランプスリーブ3は、球状の外側表面30を有し、その輪郭は実質的に受け座23の輪郭に沿う。クランプスリーブ3は、円筒状の内部31を形成する中央穴を有する。骨ねじ1は、取り付け状態時、円筒状内部を介して押圧される。この場合、内部31の壁面に設けられて骨ねじ1の第2のねじ部と係合する1.5倍の山のクランプ用ねじ部32に対して、骨ねじ1が係合する。
【0029】
クランプねじ3はさらに、一方側に連続的なスロット33を備える。放射方向外側に突出する突起34が、クランプスリーブ3の外側表面31の赤道35上であって反対側に設けられている。図に示す一例の実施の形態において、突起34は半球状に形成されている。そのサイズは、スロット状のくぼみ24のサイズと合うように選択されている。それにより、突起34は、小さいクリアランス量(本願では、突起の幅の約5%〜30%の間と理解される)でスロット状のくぼみ24にポジティブロック状態で挿入される。取り付け状態において、クランプスリーブ3は、ホルダ2に対して双方向にツイストしないように固定されている。スロット状くぼみ24と協働する半球状の突起34により、
図2の右半分の2つの矢印によって示すように、ホルダ2内において、クランプスリーブ3はダブルカルダン軸受け装置として機能する。その結果として、骨ねじ1は、ホルダ2内に軸可変(多軸の)軸受け装置を備える。実際には、各方向について約15度の角度調節範囲が実現可能となる。
【0030】
図5aおよび
図5bの断面図を参照する。取り付けを容易にするためにまたより旋回するように、初期状態において、クランプスリーブ3は、クリアランスがある状態で、受け座23に着座する。これは、球形状の受け座23の内径が、クランプスリーブ3の球状の外側表面30の外径に比べて大きいことを意味する。
【0031】
さらに、一例の実施の形態において、骨ねじ1は、ねじヘッド部13に位置する円錐状拡径部においてアンダーサイズUを備える。アンダーサイズUは、骨ねじ1が第2のねじ部12を介してクランプ用ねじ部をつかんでいる状態のときの内部31の縁と円錐状の外側表面14との間のギャップとして定義される(
図5b参照)。
【0032】
結果として、クリアランスSとアンダーサイズUとの合計によって決定される遊びFは、概して、数式1に基づいてクリアランスSとアンダーサイズUとから算出される。
(数1)
F=S+U ・・・(数式1)
【0033】
ねじヘッド部13の円錐状拡径部によって骨ねじ1が締まるにつれて、遊びFが徐々に減少する。それが完全に消滅すると、骨ねじ1が締められる。さらに締められると、その結果としてねじ接続が過負荷状態になり、特に骨ねじ部11が椎体の外部に不必要に突き抜ける。
【0034】
この問題を確実な方法で防止するために、外科医が締め付け時に考慮しなければならない締め付け角γが定義されている。それは、例えば、3/4回転である約270度である(
図6参照)。その開始点は、骨ねじが第2のねじ部12を介してクランプ用ねじ部32にちょうど係合する位置である(
図5b参照)。270度の大きさ(3/4回転に対応する)は、優れた調節性と間違いのない操作との間の現実的な妥当性に関して確実に保証する。3/4回転後に遊びFがなくなるように、円錐角βを適切な方法で選択する必要がある。本発明によれば、これは、数式2に基づいて求められる。
(数2)
F/tan(β/2)=270°/360°*h ・・・(数式2)
【0035】
ここで、hは第2のねじ部12のピッチである。対象の円錐角βを算出するために、この式は数式3に変換される。
(数3)
β=2*arctan(F/(0.75*h)) ・・・(数式3)
【0036】
円錐角βを求める上述の計算は、遊びFがクリアランスSまたはアンダーサイズUによって定義される、あるいはこれら2つの組み合わせによって定義されるに関係なく、適用される。
【0037】
しかしながら、ここでは一例として270度である締め付け角の定義は、クランプスリーブがツイストしないように固定されていない場合には無意味である。ツイストを抑制する手段がない場合、クランプスリーブは、締め付け角を定義する理由がなくなった結果として、回転に同調する。本発明では、この問題に対処するために、突起34を介して双方向に回転不可能にクランプスリーブ3がロット状くぼみ24に固定される。そのために、現実的に適切な締め付け角の定義を行う。クランプスリーブ3がホルダ2に回転不可能な状態で保持されると、締め付け角の基準点が一定に維持される。これは、それ自体が規定されていなくても、ねじがゆるんでもあてはまり、例えばねじ回しが実行されても一定である。この締め付け角の概念は、上述の双方向の挙動に対するクランプスリーブの取り付けとの併用で、手術環境において現実的に有用である。
【0038】
骨ねじ1が特定の締め付け角γだけ締め付けられたとき、二重の効果が得られる。まず、クランプスリーブ3がホルダ2から確実に力を受け、結果として骨ねじ1の軸が固定される。また、骨ねじ1が、過剰な締め付けを原因として骨ねじ部が突き抜けることによって椎骨がダメージを負わないように過剰に締め付けられることなく、十分に締め付けられて高い信頼性で椎骨に固定される。骨ねじ1が2つの骨片を連結する場合、それらは特定のテンションで互いに引っ張り合う。
【0039】
それゆえ、信頼性が高い締め付けは、実用的な過剰締め付けの抑制につながる。
【0040】
別の実施の形態において、
図2の右半分に示すように、2つの突起34、34’がクランプスリーブ3’に設けられてもよい。第2の突起34’は、突起34と同一の形態で且つ同一の目的で設けられる。突起は、クランプスリーブ3の外側表面上に径方向に対向した状態で設けられ、異なる方向に向いている。この場合、スロット33’は、クランプスリーブ3上の2つの突起34、34’の間の位置に設けられ、好ましくは中間位置に設けられる。受け座23は、ホルダ2上に対応する第2のスロット状くぼみ24’を備える。クランプスリーブ3がホルダ2内においての正確なガイド付きダブルカルダン式で移動可能になるように、2つの突起34、34’によって第2の傾き軸が定義される。