(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186451
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】モバイル・ウォレット・システムとともに作動する装置において磁気ストライプ・データをセキュアにロード、記憶、及び、送信するためのシステム並びに方法
(51)【国際特許分類】
G09C 1/00 20060101AFI20170814BHJP
G06Q 20/34 20120101ALI20170814BHJP
G06K 7/08 20060101ALI20170814BHJP
G06K 19/06 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
G09C1/00 660A
G06Q20/34 340
G06K7/08 040
G06K19/06 206
【請求項の数】23
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-560220(P2015-560220)
(86)(22)【出願日】2014年2月20日
(65)【公表番号】特表2016-513294(P2016-513294A)
(43)【公表日】2016年5月12日
(86)【国際出願番号】US2014017371
(87)【国際公開番号】WO2014133863
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2015年8月26日
(31)【優先権主張番号】13/781,964
(32)【優先日】2013年3月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515234738
【氏名又は名称】グレーリン、ウィリアム ダブリュー.
(73)【特許権者】
【識別番号】515234749
【氏名又は名称】サムスン ペイ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレーリン、ウィリアム ダブリュー.
【審査官】
金沢 史明
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0287726(US,A1)
【文献】
国際公開第2014/113278(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0024372(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0303520(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0203693(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0197743(US,A1)
【文献】
特開2005−025327(JP,A)
【文献】
米国特許第07357319(US,B1)
【文献】
本田元,図解カードビジネスの戦略,中央経済社,2011年 9月 1日,第1版,pp. 127-158
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 9/00− 9/38
G06K 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ストライプ・カードの取り込み、記憶、及び、送信装置のためのシステムであって、
モバイル通信装置と、
ドライバ及びインダクタを含む磁界送信機、マイクロプロセッサ、第1の磁気ストライプ読み取り装置(MSR)、メモリ手段、オーディオ・ジャック・インターフェイス、並びに、通信インターフェイスを含む磁気ストライプ・トランスポータ(MST)と、
を含み、
前記第1のMSRは、前記MSTに関連付けされており、
前記磁界送信機は、磁気パルスを小売業者用販売時点管理(POS)又は他のMSR装置の第2のMSRに送信するように構成されており、
前記MSTは、前記オーディオ・ジャック・インターフェイス又は前記通信インターフェイスを通して前記モバイル通信装置とインターフェイスし、
前記MSTは、磁気ストライプ・カードから磁気ストライプ・データを読み込んで、暗号化した前記磁気ストライプ・データを前記メモリ手段に記憶し、および、前記暗号化し記憶した磁気ストライプ・データを解読して前記第2のMSRへ送信するように適合した、システム。
【請求項2】
前記モバイル通信装置は、モバイル・ウォレット・アプリケーションと、正当なモバイル・ウォレット・アカウントを含み、前記モバイル・ウォレット・アカウントが認証されると、前記MSTは初期化され且つロック解除され、前記MSTは1度に1つの正当なモバイル・ウォレット・アカウントでのみ動作可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記磁気ストライプ・データは支払いカード・データであり、前記モバイル通信装置は、前記MSTと相互作用して、前記MSTから前記支払いカード・データを受け入れる支払いPOS又はチェックアウト・アプリケーションをさらに含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記モバイル・ウォレット・アプリケーションは、初期化及び再設定モード、カードロード/カード削除モード、送信及び使用モード、切断送信モード、並びに、POSカード読み取りモードのうちの少なくとも1つを含む動作モードをもたらすように、前記MSTと相互作用する、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記初期化及び再設定モードで動作する前記MSTは、ユーザに対し前記ウォレット・アプリケーションを通して正当なモバイル・ウォレット・アカウントに対して新規の又は再設定された前記MSTをペアリングを許可するように構成され、且つ、前記MSTのシリアル番号を特定の前記正当なモバイル・ウォレット・アカウントに関連付けることで、ペアリング済みMSTは、ペアリングした前記特定の正当なモバイル・ウォレット・アカウントでのみアクセス可能であるか使用可能である、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記カードロード/カード削除モードで動作する前記MSTは、ユーザに対して、前記MSTに関連付けられた前記第1のMSRに前記磁気ストライプ・カードを読み取らせることを許可し、前記磁気ストライプ・データを暗号化されたカード・トラック・データに変換して前記MST上の前記メモリ手段に記憶できるように構成され、前記暗号化されたカード・トラック・データをまた、前記モバイル通信装置及びウォレット・アプリケーションを介してウォレット・サーバに送信することで、前記サーバは、前記カード・トラック・データを解読し、且つ、前記カード・トラック・データに含まれる名前が前記モバイル・ウォレット・アカウントの名前に一致しているかを決定することができるようにする、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記MSTは、カード発行者及びウォレット・アプリケーション・プロバイダに対し、暗号化された又は暗号化されていないカード・トラック・データを、サーバから遠隔に前記MST上の前記メモリ手段へロードすることを許可するように構成された、請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
前記MSTは、ウォレット・アプリケーション・プロバイダに対し、磁気ストライプ・データと共にロイヤルティ・アカウント情報を、トランザクションの終了時に前記カード発行者によって読み取られるべき前記トラック・データの任意のフィールドにロードすることを許可するように構成された、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記送信及び使用モードで動作する前記MSTは、磁気ストライプ・カードのユーザに対し、デフォルト・カードとして前記MSTに記憶された磁気ストライプ・データを持つ特定の支払いカード又は非支払いカードを選択し、且つ、前記デフォルト・カードを変更することを許可するように構成され、デフォルトでは、前記MSTによって送信されるべき磁気ストライプ・データが前記デフォルト・カードの磁気ストライプ・データに相当する、請求項4に記載のシステム。
【請求項10】
前記切断送信モードで動作する前記MSTは、磁気ストライプ・カードのユーザに対し、前記MSTに対する前記ウォレット・アカウントの認証後、前記MSTをロック解除し、且つ、前記MST上のボタンの押下に応答して、前記MSTを前記モバイル通信装置から外すか切断した上で、所定の期間前記MSTをその状態を保つことを許可し、前記MST上に記憶されたデフォルト支払いカードの磁気ストライプ・データを前記小売業者用POS装置又は他のMSR装置の前記第2のMSRに送信できるように構成された、請求項4に記載のシステム。
【請求項11】
前記切断送信モードで動作する前記MSTは、前記ウォレット・アカウントに対して最初の認証を行わずにデフォルト・カードの磁気ストライプ・データを送信できるようにすることによって、磁気ストライプ・データの送信を許可するように構成された、請求項4に記載のシステム。
【請求項12】
前記モバイル通信装置は、スマートフォン、タブレット、及び、パーソナル・コンピュータのうちの1つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記MSTは、電池と、送信時に照明し且つ前記電池の容量を示すように適合した発光ダイオード(LED)インジケータをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記MSTは、前記MST上又は前記モバイル通信装置上のどちらかにあるとすることができるセキュアなメモリ手段又はセキュア要素に支払いカード・トラック・データを記憶する、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記MSTは、磁気支払いカードのトラック・データを読み取るように、且つ、小売業者のアカウント情報による解読及び処理のために支払いサーバに送信されるように、前記支払いカード・トラック・データを前記モバイル通信装置上のPOSアプリケーションに送信するように構成された、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
磁気ストライプ・カードの取り込み、記憶、及び、送信装置のための方法であって、
モバイル・ウォレット・アカウントの認証の受信時に、磁気ストライプ・トランスポータ(MST)を初期化及びロック解除し、
前記磁気ストライプ・カードから磁気ストライプ・カード・データを読み込み、
暗号化された前記磁気ストライプ・カード・データを前記MSTのメモリ手段に記憶し、
前記暗号化された磁気ストライプ・カード・データを、前記MSTによって解読し、
前記MSTの磁界送信器から磁気パルスを送信することにより、前記解読された磁気ストライプ・カード・データを小売業者用販売時点管理(POS)装置又は他のMSR装置の第1の磁気ストライプ読み取り装置へ送信する、ステップを含む、方法。
【請求項17】
前記MSTを前記モバイル・ウォレット・アカウントとペアリングするステップと、前記MSTのシリアル番号を前記モバイル・ウォレット・アカウントに関連付けるステップとをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ユーザに対し前記MSTを再設定することを許可するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ユーザに対し前記MSTに関連付けられた第2の磁気ストライプ読み取り装置(MSR)上でカードを読み取ることを許可し、
前記カード上のデータを暗号化されたカード・トラック・データに変換し、
前記暗号化されたカード・トラック・データを前記MSTのセキュアなメモリ手段に記憶し、
前記暗号化されたカード・トラック・データをモバイル通信装置を介してウォレット・サーバに送信することで、前記ウォレット・サーバは、前記暗号化されたカード・トラック・データを解読し、且つ、前記カード・トラック・データに含まれる名前が前記モバイル・ウォレット・アカウントの名前と一致するかを決定できるようにするステップと、をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
ユーザに対し、デフォルト・カードとして前記MSTに記憶された特定の支払いカードを選択して、接続又は切断モードで送信することを許可するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
ユーザに対し、前記MSTに対するウォレット・アプリケーションの認証後、前記MSTをロック解除することを許可し、
前記MSTを前記モバイル通信装置から切断してそのままにすることができるようにし、
前記MST上のボタンをアクティブにすると、ユーザ又は小売業者によって、前記MST上のデフォルト・カードのカード・トラック・データを前記小売業者用POSシステムの前記第1のMSRに送信できるようにするステップと、をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
マイクロプロセッサと、
第1の磁気ストライプ読み取り装置(MSR)と、
ドライバとインダクタとを含む磁界送信機と、
メモリ手段と、
を含む磁気ストライプ・トランスポータ(MST)であって、
前記第1のMSRを介して磁気ストライプ・データを取り込み、
前記磁気ストライプ・データを暗号化し、
暗号化された磁気ストライプ・データを前記メモリ手段に記憶し、
前記暗号化され記憶された磁気ストライプ・データを解読し、
前記解読された磁気ストライプ・データを、前記磁界送信機から小売業者用販売時点管理(POS)又は他のMSR装置の第2のMSRに送信し、前記磁界送信機は磁気ストライプ・データを磁気パルスとして送信する
ように構成されている磁気ストライプ・トランスポータ。
【請求項23】
オーディオ・ジャックと通信インターフェイスの少なくとも1つを含み、前記MSTが移動通信装置と前記オーディオ・ジャックあるいは前記通信インターフェイスを介してインターフェイスするように適合した、請求項22に記載の磁気ストライプ・トランスポータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モバイル・ウォレット(wallet)・アプリケーションを実装するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ストライプ・データの送信は、主に、磁気ストライプ・カードを磁気ストライプ読み取り装置(MSR:Magnetic Stripe Reader)に読み取って(swipe)、支払い、識別(ID:Identification)、及び、アクセス制御機能を有効にすることによって、行われている。スマートフォン及びタブレット上のモバイル・ウォレット・アプリケーションを、既存の小売業者用販売時点管理(POS:Point of Sale)装置又はMSRを有する他の装置と相互作用させるのは困難である。非接触型読み取り装置対応POS端末(典型的には、例えば、ISO14443規格を使用する)は、非接触型又は近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)支払いを受け入れるためにユビキタス(ubiquitous)でない。NFC電話、又はバーコードのような他の送信手段と相互作用させるためだけに、単に磁気ストライプ・カードを受け入れる非常に多数の小売業者用POS装置又はドア・ロックを取り替えることは、費用がかさみ時間がかかることになる。
【0003】
多くの国では、発行される非接触型支払いカードの数は、消費者に発行される磁気ストライプ・カードの数と比べて依然として少ない。非接触通信機能を有するNFCチップは、いくつかの携帯電話に埋め込まれており、セキュアなカード保有者の情報を記憶するためのデジタル・ウォレットとして、グーグル及びISISなどの企業によって使用されている。これらのNFCチップベースのデジタル・ウォレットは、限られた数のNFC対応のPOS装置による非接触型支払いトランザクションにおいて使用可能であるが、これらのNFCチップベースのデジタル・ウォレットにはかなりの制約がある。
【0004】
NFCチップが埋め込まれた電話はほとんどないため、このモバイル・ウォレット解決策の一般大衆への浸透は大幅に限られたものになっている。また、カード保有者の支払い証明書(payment credential)支払いをNFCチップのメモリにロードするプロセスは複雑で費用がかかる。特に、NFCチップのメモリのロードは、信頼できるセキュリティ・マネージャ(TSM:Trusted Security Manager)を必要とする。支払いカード発行者は、このようなTSMに対して署名し、且つ、このようなサービスに対して支払いしなければならない。
【0005】
特に、発行者からTSMへの一連の送信途中で、インターネットへ、携帯電話会社のネットワークを介して電話へ、チップへのロード・プロセスの一部が失敗に終わる時、ロード・プロセスの作業を円滑に行うために、技術的複雑度が多様にある。さらに、全ての規格によって解決しているわけではなく、多数の競合し合う製品があり、ユビキタスにすることはより困難になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、物理的環境及び仮想環境において、小売業者の従来の販売時点管理(POS)端末、及び、磁気ストライプ読み取り装置(MSR)又はチェックアウト・システムを有する他の装置への磁気ストライプ・カード・データの取り込み(capture)、記憶、及び、送信を行うためにモバイル・ウォレット・アプリケーションと併せて使用するための、磁気ストライプの取り込み、記憶及び送信装置を含む装置、システム、並びに、方法に関する。当該システムによって、消費者にとって便利な購買経験、小売業者にとってセキュアで有益なトランザクション、及び、場合によっては、ロイヤルティ、識別(ID)、又は、アクセス制御の目的でMSRに送信される追加データがもたらされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、磁気ストライプ支払いカード・データのセキュアな取り込み、記憶、及び、送信を行うためのシステムは、モバイル通信装置及びモバイル・アプリケーション、並びに、磁気ストライプ・トランスポータ(MST:Magnetic Stripe Transporter)・ドングル(dongle)を含む。MSTドングル及びMSTは、マイクロプロセッサ、ドライバ、及び可変の磁界を生成できるインダクタを含む磁界送信機、電池、充電回路、磁気ストライプ読み取り装置(MSR)、メモリ手段又はセキュア要素、オーディオ・ジャック・インターフェイス、並びに、物理的環境及び仮想環境において、磁気ストライプ・カード・データを取り込み、データをセキュアに記憶し、このようなデータを小売業者の販売時点管理(POS)又はチェックアウト・システムに送信するための消費者用モバイル装置及びウォレット・アプリケーションと併せて作動する通信インターフェイス(例えば、USBインターフェイス、30ピン又は9ピンのアップル・インターフェイス、ブルートゥース・インターフェイスなど)を含む。
【0008】
本開示の態様は、1つ又は複数の特徴を含むことができる。モバイル通信装置は、MSTを初期化して特定のウォレット・アカウントで使用し、且つ、MSTをロック解除して送信及び使用するモバイル・アプリケーションを含むことができる。モバイル通信装置を、MSTと相互作用するモバイル通信装置又はインターネット上の支払いチェックアウト・アプリケーションとともに使用して、支払いカード・データをMSTから受け入れ、当該支払いカード・データを支払いサーバに送信して、小売業者用POSアプリケーション又は消費者用チェックアウト・アプリケーションとしてのトランザクションを処理することができる。モバイル・ウォレット・アプリケーションは、例えば、初期化及び再設定モード、カードロード/カード削除モード、送信及び使用モード、切断送信モード、並びに、POSカード読み取りモードを含む種々の動作モードにおいて、オーディオ・ジャック又は他の通信インターフェイスを介してMSTと相互作用することができる。
【0009】
一態様では、初期化及び再設定モードで動作するMSTは、ユーザがモバイル・ウォレット・アカウントによって特定のMSTをペアリング及びペアリング解除/再設定できるようにし、且つ、1アカウントにつき1装置のみを可能にするように構成される。カードロード/カード削除モードで動作するMSTは、ユーザが、ユーザの既存のプラスチック製磁気ストライプ・カードをMST上のMSRによって読み取る(swipe)ことによって、磁気ストライプ・カード・データをロードし、且つ、メモリ手段又はセキュア要素においてカード・トラック・データを記憶することができるように構成される。支払いカードについて、アプリケーションは、モバイル・ウォレット・アプリケーションを介してオンライン・デジタル・ウォレットへ、当該カードの主口座番号(PAN:Primary Account Number)データをロードする。メモリ手段及び該アプリケーションを使用するサーバからカード情報を削除することもできる。送信及び使用モードで動作するMSTは、ユーザが、ボタンをアクティブにする又は押下する時、ウォレットの最上位又はデフォルト・カードとして特定の支払いカードを選択して、小売業者用POSシステムへの記憶したトラック・データの送信時にカードを使用することができるように構成される。別の態様では、非支払いカードがMSTに記憶される場合、1つの非支払いカードをデフォルト・カードとして記憶して、ウォレット・アプリケーションに対する認証を行わず、且つ、このようなカードを選択せずに送信することができる。非支払いカードには、ホテルのキー、出入口通行証、又は、別個のメモリ手段でMSTにロードして後に送信できるID及びロイヤルティ・カードが含まれる。
【0010】
POSカード読み取りモードで動作するMSTは、ユーザが、支払いカードをMSTのMSRによって読み取って、カード・データをモバイル通信装置上のPOSアプリケーションに、その後、支払いサーバ及びプロセッサに送信することができるように構成される。モバイル通信装置は、スマートフォン、タブレット、又は、パーソナル・コンピュータであってよい。MSTはさらに、電池及び充電回路を含む。マイクロプロセッサは、モバイル通信装置にセキュリティ及び通信をもたらすように構成される。メモリ手段は支払いカード・データをセキュアに記憶する。MSTは、モバイル通信装置上の小売業者用チェックアウト・アプリケーションにカード・トラック・データを送信して、小売業者のためのカード提示トランザクションをもたらすように構成される。MSTは、支払いカードを読み取るように、且つ、モバイル通信装置及び関連のPOSアプリケーションに支払いカード・データを送信し、当該POSアプリケーションは、さらには、そのトランザクション及びカード・データを、POSのような支払いサーバ及びプロセッサに送信するように構成されてもよい。
【0011】
別の態様では、本開示は、磁気ストライプ・カード・データをセキュアに取り込む、記憶する、及び、送信するための方法を特徴とする。磁気ストライプ・トランスポータ(MST)・ドングルは、マイクロプロセッサ、可変の磁界をもたらすインダクタに電流及び信号を送信するように構成されるドライバ、電池、充電回路、磁気ストライプ・カード読み取り装置、メモリ手段又はセキュア要素、オーディオ・ジャック・インターフェイス、並びに、物理的環境及び仮想環境において、磁気ストライプ・カード・データを取り込み、カード・データをセキュアに記憶し、このようなデータを小売業者の販売時点管理(POS)端末、チェックアウト・システム、又は、他のMSR装置に送信するための消費者用モバイル通信装置、及びウォレット・アプリケーション又はモバイル・アプリケーションと併せて作動する通信インターフェイス(例えば、USBインターフェイス、30ピン又は9ピンのアップル・インターフェイス、及び、ブルートゥース・インターフェイスなど)を含む。
【0012】
本明細書に開示されたシステム及び方法によって多数の利点がもたらされる。例えば、磁気カード・トラック・データを、磁気ストライプ・カード・データを改造することなく、ユーザによって又はサーバから直接MSTのセキュアなメモリ手段において取り込み且つ記憶して、後にMSR装置とともに使用することができる。支払いカードにおいて、非接触型POSによって正しく機能させるために、カード発行者によってコード化されなければならない特殊な磁界を有する非接触又はNFCトラック・データとは対照的に、磁気ストライプ・データを変更する必要はない。MSTはPOSへの磁気カード・データの送信を可能にするボタンを含むことができるが、一方でMSTはモバイル装置から切断されているか取り外されている。
【0013】
ある実施例では、MSTと特定のウォレット・アカウントとの一意のペアリングは、良好なセキュリティをもたらし、MSTを再設定する能力はMSTのペアリング解除及び再利用を可能にする。さらに、本開示によるシステム及び方法は、オーディオ・ジャック及びUSB以外の様々なインターフェイスを介してモバイル通信装置に接続する能力をもたらす。また、暗号化された磁気ストライプ・トラック・データをMSTのメモリ手段にロードするプロセスを後に解読してPOSのMSRに送信するか、当該データを暗号化してモバイル通信装置に送信し、次いで、支払いサーバに伝送して解読及び処理を行い、サーバ上のウォレット・アカウントをロードするかPOSトランザクションを処理することができる。
【0014】
本開示によるシステム及び方法は、仮想チェックアウト環境のための記憶されたトラック・データ又は読み取ったトラック・データを使用して小売業者にとってよりセキュアで低価格のトランザクションが行われる能力、及び、カード発行者からウォレット・サーバ・プロバイダへ、モバイル通信装置上のウォレット・アプリケーションへ、後に使用されるMSTのSE又はメモリ手段へのトラック・データの遠隔ロードをもたらす。さらにまた、システム及び方法は、ロイヤルティ・アカウント情報を支払いカード・データと共に、トランザクション時に発行者によって読み取られるトラック・データの任意のフィールドにロードすることで、支払いトランザクションと組み合わせたオファー及びロイヤルティ・プログラムにつながり得る能力をもたらす。
【0015】
消費者にとってのシームレスなユーザ体験において上記技術の全てを組み合わせて使用することによって、モバイル・ウォレットの使用頻度を高め、且つ、より説得力のあるものにして、消費者及び小売業者に価値をもたらすような、消費者に対するオファー及びロイヤルティといった多くのアプリケーション及び機能性を可能にすることができる。
【0016】
装置、システム、及び、方法の実施例は、添付の図面の図において示され、それらは例示であり限定するものではないことを意味する。当該図では、同様の参照符号は同様の又は対応する部分に言及することが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】磁気ストライプ・トランスポータ(MST)、モバイル通信装置、及び、販売時点管理(POS)装置の全体像の機能的なブロック図である。
【
図2】初期化及び再設定モードでの動作方法のフロー図である。
【
図3】カードロード/カード削除モードでの動作方法のフロー図である。
【
図4】送信及び使用モードでの動作方法のフロー図である。
【
図5】切断送信モードでの動作方法のフロー図である。
【
図6】POSカード読み取りモードでの動作方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
装置、システム、及び、方法の詳細な実施例が本明細書で開示されるが、開示された実施例は、種々の形で具現化可能な装置、システム、及び、方法の単なる例示であることは理解されたい。したがって、本明細書で開示される特定の機能詳細は限定するのとしてではなく、単に、特許請求の範囲にとってのベースとして、及び、本開示を種々に利用するために当業者に教示するための象徴的なベースとして解釈されるものとする。
【0019】
一般に、本明細書で開示される装置、システム、及び、方法は、例えば、汎用コンピューティング・システム、サーバ・クライアント・コンピューティング・システム、消費者−小売業者間コンピューティング・システム、メインフレーム・コンピューティング・システム、クラウド・コンピューティング・インフラストラクチャ、電話計算システム、ラップトップ・コンピュータ、デスクトップ・コンピュータ、スマートフォン、セルラーフォン、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)、タブレット・コンピュータ、及び、他のモバイル装置を含む多数の様々な装置及びコンピュータ・システムの範囲内のものを含むことができ、実装可能である。装置及びコンピューティング・システムは、1つ又は複数のデータベース及び他の記憶機器、サーバ、並びに、例えば、プロセッサ、モデム、端末及び表示装置、コンピュータ可読媒体、アルゴリズム、モジュール及びアプリケーション、及び、他のコンピュータ関連構成要素といったさらなる構成要素を有することができる。装置、並びに、コンピュータ・システム及び/又はコンピューティング・インフラストラクチャは、本明細書に開示されるような機能を果たし、システム及び方法の処理を行うように、構成され、プログラムされ、及び、適合される。
【0020】
説明的な実施例による、小売業者の従来の販売時点管理(POS)へ磁気ストライプ・カード・データを取り込み、記憶する、及び、送信するためのシステム10の全体像を、
図1を参照して説明する。システム10は、モバイル通信装置200とインターフェイスで接続するように適合された磁気ストライプ・トランスポータ(MST)100を含む。MST100及びモバイル通信装置200は、対応するオーディオ・ジャック102及び202を通して、及び/若しくは、対応する通信インターフェイス、例えばUSBポート104及び204それぞれを通して、又は、30ピン若しくは9ピンのアップル・インターフェイス、ブルートゥース・インターフェイス及び他のシリアル・インターフェイスを含むがこれらに限定されない他の通信インターフェイス通して通信することができる。MST100はまた、ドライバ及びインダクタを含む磁界送信機150から、小売業者用POS300の磁気ストライプ読み取り装置(MSR)302へ、磁気ストライプ・データを送信するように適応させることによって、小売業者用POS300と相互通信する。
【0021】
モバイル通信装置200は、モバイル・ウォレット・アプリケーション220、及び、POSアプリケーション又は支払いチェックアウト・アプリケーション230を含む。モバイル・ウォレット・アプリケーション220はMST100を初期化及びロック解除する。POS又はチェックアウト・アプリケーション230は、MST100と相互作用し、MST100からカード支払いデータを受け入れる。POS又はチェックアウト・アプリケーション230は、カード支払いデータがネットワーク170を介してウォレット・サーバ260に送信されるようにする。カード支払いデータはその後、ウォレット・サーバ260からトランザクション・プロセッサ270に送信されてよい。
【0022】
MST100は、マイクロプロセッサ112、発光ダイオード(LED:Light−emitting Diode)・インジケータ114、電池116、充電回路118、磁気ストライプ読み取り装置(MSR)106、メモリ記憶構成要素又はセキュア要素108、オーディオ・ジャック・インターフェイス102(例えば、3.5mm又は他の規格のオーディオ・ポート)、USBポート/ジャックインターフェイス104、又は、30ピン若しくは9ピンのアップル・インターフェイス、ブルートゥース・インターフェイス、及び、他のシリアル・インターフェイスを含むがこれらに限定されない他の通信インターフェイス、並びに、MSRを有する任意のPOS装置によって受信される磁気パルスを送信するためのドライバ及びインダクタを含む磁界送信機150を含む。
【0023】
マイクロプロセッサ112は、モバイル通信装置200に対するセキュリティ及び通信を扱う。マイクロプロセッサ112はまた、セキュア要素108に対して、暗号化されたカード・データの送受信を行うことができる。磁界送信機150は、磁気パルスをMSR302に送信することによって、カード保有者の磁気ストライプ・データをPOS装置300に送信する。MST100はまた、MSR106をPOS装置として使用することによって他の磁気ストライプ・カードを読み取るために使用されてよい。MSR106を使用して、支払いカード・データをセキュア要素108にロードし、且つ、モバイル通信装置200上のPOS又はチェックアウト・アプリケーション230のためにカード・トラック・データを取り込むことができる。
【0024】
モバイル通信装置200は、モバイル・ウォレット・アプリケーション220、POS又は支払いチェックアウト・アプリケーション230、オーディオ・ジャック・ポート202、並びに/或いは、例えば、USBポート204、又は、30ピン若しくは9ピンのアップル・インターフェイス、ブルートゥース・インターフェイス、及び、他のシリアル・インターフェイスを含むがこれらに限定されない他の通信インターフェイスといった通信インターフェイスを含む。モバイル通信装置200は、キーパッドを有する表示装置又はタッチパッド表示装置240、及び、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)250も含むことができる。
【0025】
各MST100は、最初は、ウォレット・アカウントとペアリングされるようにオープンになっている。MST100がペアリングされると、MST100はロックされ、MST100上のモード及びパラメータを変更するためにはロック解除されなけらばならないようにしても良い。MST100は、ウォレット・アカウントのセットアップ後にワイヤレス通信ネットワークを介してロードする、製造時の初期ロードによって、及び/又は、モバイル・ウォレット・アプリケーションを使用してMST100へ直接消費者が自身のカード(複数可)のデータをロードすることによって、カード所有者のデータを記憶することができる。一般に、ウォレット・ユーザは、例えば、クラウド・コンピューティング・インフラストラクチャを介して遠隔サーバ上で、デジタル・ウォレット・アカウントをセットアップし、且つ、自身のモバイル通信装置上のモバイル・ウォレット・アプリケーションを初期化した人物である。
【0026】
モバイル通信装置200上のモバイル・ウォレット・アプリケーション220は、様々な動作モードを与えるためにMST100と相互作用する。様々な動作モードには、例えば、初期化及び再設定モード、カードロード/カード削除モード、送信及び使用モード、切断送信モード、POSカード読み取りモード、並びに、オプションの他のモードが含まれる。
【0027】
説明的な実施例による初期化及び再設定モードでの動作方法を、
図2を参照して説明する。MSTは、最初に、「新規の」MST、又は、「再設定(reset)」する前に使用されていない若しくは「再設定」されており、且つ、関連のウォレットもカード・データも記憶されていないMSTを、ブロック400として示されるように、モバイル通信装置にプラグ接続或いは接続することによって、ウォレット・アカウントに対して初期化される。MSTをモバイル通信装置に接続すると、ブロック402として示されるように、ウォレット・アプリケーションは、ペアリング及びペアリング解除されたMSTの状態を認識又は判断する。
【0028】
MSTドングルが別のウォレット・アカウントに既にペアリングされている時、ブロック404として示されるように、ウォレット・アプリケーションは、そのMSTがペアリング解除されているが、別のウォレット・アカウントにペアリングされていると認識し、ブロック406として示されるように、「ドングルは使用不可、別のアカウントとペアリング済み」と表示することになる。ウォレット・アプリケーションは、ウォレットのユーザがMSTを不適切に使用しないようにするための不正管理のために、ブロック408として示されるように、許可されていないペアリングをサーバに報告することもできる。
【0029】
MSTドングルが適切なウォレット・アカウントにペアリングされている時、ブロック410として示されるように、ウォレット・アプリケーションはMSTがペアリングされていると認識する。ブロック412として示されるように、MSTを使用するか再設定することができる。適切なウォレット・アカウント・ユーザがMSTを再設定して、SEにおけるデータ全てを完全に消すことを所望する場合、ブロック414として示されるように、ユーザはウォレット・アプリケーションの設定セクションにアクセスして、「ドングルを再設定する」を選択することができる。適切なウォレット・アカウント・ユーザがMSTを再設定しないように所望する場合、ブロック416として示されるように、MSTを使用することができ、プロセスは終了する。一態様では、いずれのユーザに対しても、ユーザのそれぞれの認証済みウォレット・アプリケーションからのMSTドングルの再設定を可能とすることができる。あるユニットが再設定されると、ウォレット・アカウントに対して再び初期化又はペアリングする必要があり、同じユーザが装置を再設定する場合でも、完全に新規な装置のように、新しいカードがロードされる。
【0030】
MSTドングルがペアリングされておらず、MSTとペアリングしたウォレット・アカウントがない時、MSTをモバイル通信装置、例えば、ウォレット・アプリケーションを有するスマートフォンに接続されると、ブロック418として示されるように、ウォレット・アプリケーションは、MSTがペアリング解除されているとして認識する。その後、ウォレット・アプリケーションは、ブロック420として示されるように、MSTがウォレット・アカウントとペアリングすべきかどうかに関して判断しなければならない場合がある。適切なウォレット・アカウント・ユーザがMSTのペアリングを望まない場合、ブロック416として示されるように、プロセスは終了する。
【0031】
或いは、適切なウォレット・アカウント・ユーザがMSTのペアリングを所望する場合、ペアリング・プロセスが開始する。ペアリング・プロセスは、ブロック422として示されるように、MSTのシリアル番号を取り込むことと、ブロック424として示されるように、ウォレット・ユーザをもう一度認証することと、ブロック426として示されるように、MSTとウォレット・アカウントとを相互に関連付けることとを含むことができる。ペアリング・プロセスは、MSTドングルがウォレット・アプリケーションで使用されてMSTがオンになる度に、今後認証マッチングを行うために、ブロック428として示されるように、ウォレット・アカウントにおいて、ペアリング情報、例えば、MSTのシリアル番号を記憶することも含むことができる。この点において、MSTは、今後、適切なウォレット・アカウントによってのみロック解除且つ使用可能である。
【0032】
説明的な実施例による、カードロード/カード削除モードでの動作方法を、
図3を参照して説明する。ブロック430として示されるように、MSTはモバイル通信装置に接続され、ブロック432として示されるように、MSTはペアリング済みとして認識される。MSTがウォレット・アカウントと「ペアリング」されていると、ウォレット・ユーザはウォレット・アプリケーションを使用して、ブロック434として示されるように、MSTの内蔵磁気ストライプ読み取り装置(MSR)上で自身のカードを読み取ることによって、当該カードをロードすることができる。結果として生じるデータは、ブロック436として示されるように、デジタル化且つ暗号化されて、ブロック438として例示されるように、後に使用するために、MSTにおけるメモリ手段又はSEに記憶される。
【0033】
暗号化されたデータは、ブロック440として示されるように、モバイル通信装置に送信されてもよい。モバイル・ウォレット・アプリケーションは、ブロック442として示されるように、データをウォレット・サーバに送信することができる。ブロック444として示されるように、データはウォレット・サーバにおいて解読され、カード保有者の主口座番号(PAN)データ、カード番号、有効期限及び名前は、トラック・データから取り去られる(stripped)。
【0034】
モバイル・ウォレット・アプリケーション、又は、ウォレット・サーバは、ブロック445として示されるように、磁気カードが支払いカードか非支払いカードかどうかに関して判断することもできる。磁気カードが非支払いカードである場合、システムは、トラック・データを非支払い送信のメモリに自動的に記憶し、且つ、ユーザが、当該カードの名称をつけ、ブロック447として示されるように、例えばMST上のメモリ手段において非支払いカードを記憶することができる。
【0035】
磁気カードが、例えば、システムが認識できる特定のフォーマットを有する支払いカードである場合、当該カードを支払いカードとして検出することができ、ブロック449として示されるように、システムは、支払いカード上の名前がウォレット・アカウントの名前とマッチするかどうか判断する。名前がマッチしない場合、ブロック451として示されるように、エラー・メッセージとして、「カード上の名前はアカウントにマッチしていない」と表示することができる。支払いカード上の名前がウォレット・アカウントの名前とマッチする場合、システムは、PAN番号がサーバ上に既に記憶されている既存のカードにマッチするかどうかを判断し、新規のアカウントを作成するか、既存のアカウントのままにするかのどちらかを行うことができる。新規のカードが作成される場合、システムは、MSTのセキュアなメモリの支払いセクションにトラック・データを後述するように暗号化して記憶することができる。
【0036】
ブロック446として示されるように、取り去ったデータがウォレット・アカウントに記憶された、任意の先に記憶したカードとマッチするかどうかに関しての判断を行うこともできる。マッチしない時は、ブロック448として示されるように、サーバ上のウォレット・ユーザのアカウントにおいて新規のカードを作成する。新規のカードが作成されると、システムは、ブロック438に示されるように、MSTのセキュアなメモリの支払いセクションにトラック・データを暗号化した状態で記憶することもできる。マッチする場合、ブロック450として示されるように、カードは既存のものとして識別され、且つ、カードはロードされる。
【0037】
ある態様では、MSTは支払いカードだけでなく、任意のタイプの磁気ストライプ・カードをメモリ手段にロードする能力を有する。非支払いカードは、便宜上、セキュリティをあまり強化せずに別個に記憶することができる。例えば、いくつかの非支払いアプリケーションは、ドアを開けるためのカード、ロイヤルティ・カードなどを含むことができる。支払いデータと非支払いデータとは、2つの別個のフィールド又は記憶領域に分離してロードすることができる。ある実例では、支払いカードを非支払い記憶域にロードしないようにすることができる。例えば、支払いデータは、検出可能な特定のフォーマットを有することができ、非支払い記憶領域にロード不可能とすることができる。支払いカードは、送信前に、アプリケーションに対する認証を必要とするようにすることもできる。一方、デフォルト非支払いデータは認証なく送信されてよい。
【0038】
ある態様では、MSTがロードする別のプロセスは、モバイル装置及びアプリケーションを通してサーバからMSTへ磁気ストライプ・データを動的に送ることである。このやり方によって、動的磁気ストライプ・データをモバイル装置に送信できるように、ウォレット・ユーザの認証を行って、記憶及び/又は送信した後で、磁気ストライプ・データをサーバからMSTに送信することができる。ある態様では、サーバによって生成されたトラック・データを支払いの目的で動的にロードすることができ、そうすることで、1回限りで使用する支払い証明書を、支払い時にウォレット・ユーザに対して動的に生成することができる。
【0039】
別の態様では、ホテル又はカジノのルーム・キーをユーザのウォレット・アプリケーション又はデジタル・ウォレットに送信後、MSTに送信することができ、それによって、ユーザは、物理的にチェックインすることや列に並んで待たなくてもよくなる。ウォレット・ユーザは、ユーザのモバイル装置上のアプリケーションを介してホテルに「チェックイン」することができ(オプションで、さらなるセキュリティを確保するために、モバイル装置の場所を予約の住所とマッチさせることができる)、その後、予約サーバは、ウォレット・サーバに「キー」を送り、その後、当該「キー」は、ウォレット・アプリケーション又はデジタル・ウォレットに送信され、且つ、非支払い目的でMSTのメモリ手段にロードされる。ユーザは、MST上の送信キーを押して、ウォレット・アプリケーションに対する認証を行わずに非支払い目的でMSTに記憶された磁気ストライプ・データを送信することができる。ホテルからの「キー」又は磁気ストライプ・データは、ある期間後にサーバ側で有効期限が切れるようにすることができるため、この方法は比較的安全であり、当事者の磁気ストライプ・ホテル・キーを返し忘れても同等に対応することができる。
【0040】
これらの態様では、システムは、サーバからMSTを遠隔でロードする能力を有し、サード・パーティ、例えば、カード発行者が支払い又は非支払いカード・データを送信用にMSTに動的に送ることができるようにする。正しくペアリングされたMSTを、遠隔にロードするために使用しなければならない場合がある。システムは、磁気ストライプ・データが支払い又は非支払いカード・データとして記憶されるかどうか制御することができるため、システムを様々な方法において切断モードで使用することができる。この方法のアプリケーションは、1回限りの支払いに使用するためにサーバから動的支払いカードのトークンを送ること、及び、フロント・デスクに行かずにホテル・ルームのチェックインを遠隔で行うことを含むことができる。
【0041】
新規の「キー」又は磁気ストライプ・カード・データをMSTにロードし、且つ、メモリ手段のデフォルトの非支払いカード・コンテナに記憶後、さらに詳細に後述されるが「切断モード」で使用することができる。支払いカードがウォレット・アプリケーションによって選択されると、特定のカードをある期間の間、例えば、5分間有効にすることができ、この期間の間、非支払いデフォルト・カードは、MSTによって送信できなくなる。支払いカートと非支払いカードとを区別するために、支払いカードは、アプリケーションが支払いカードを検出する時に認識可能な特殊フォーマット及び銀行識別番号(BIN:Bank Identification Number)を有しても良い。BINは、アカウント名に対してチェック可能であり、そのアカウント名がマッチする場合、ユーザのために記憶可能である。
【0042】
いくつかの態様において、トラック・データはサーバ上に記憶されず、PANデータのみ記憶される。複数のカードをメモリ手段又はSEにロードして後で選択又は使用することができ、支払いカードと非支払いカードとに分離することができる。ある態様では、支払いカードをウォレット・アプリケーションに対して認証してからでしか送信できない場合があり、カードを選択して切断モードで送信した後の時間は限られている場合があるが、非支払いカードは、便宜上、ウォレット・アプリケーションに対する認証を行わずに切断モードで送信したデフォルト・カードとして選択可能である。
【0043】
一態様では、物理的な支払いカードから読み取ったカードのトラック・データ上の名前は、MST側とサーバ側との両方でカードをうまく記憶するために、ウォレット・アカウントの名前とマッチすべきであり、そうでない場合は、アプリケーションは、そのカードのロード・プロセスを終了せず、エラー・メッセージとしてユーザに「エラー:カード上の名前はアカウントとマッチしません」を表示する。トラック・データがSEに記憶されると、ユーザは、ウォレット・アプリケーションに記憶されたカードを閲覧し、且つ、支払い及び非支払いの送信のために、最上位のウォレット・カードをデフォルト・カードとして選択することができる。カード提示支払いのためにMST上に記憶されていないカード不提示方法(card-not-present methods)を介してクラウド・コンピューティング・アーキテクチャに記憶されたカードもあってよい。しかしながら、MSTに対して記憶されたどのカードも全て、クラウド・コンピューティング・インフラストラクチャにおいてのみPANデータの同等のコピーを有するべきであり、それらのカードは、アプリケーション又はウェブ/インターネットを介してクラウド・コンピューティング・インフラストラクチャから別個に削除されなければならない場合がある。MSTを再設定することは、クラウド・コンピューティング・インフラストラクチャにおけるカード・データを消去することではない。同じPANデータを有する複製カードは異なるカードとして現れず、つまり、ユーザがクラウド・コンピューティング・インフラストラクチャにおける自身のウォレット・アカウントにおいてカード番号を遠隔に既に入力し、後に自身が同じカードを読み取って物理的な使用のためにMSTにロードする場合、クラウド・コンピューティング・インフラストラクチャにおけるカードは、そのままの状態となり、PANデータが同じ場合複製する必要はない。
【0044】
カードがMST上にロードされると、ウォレット・アプリケーションによって選択可能である。選択されたカードを、MSTのメモリから、及び、アプリケーションから削除することもできる。
【0045】
さらに他の態様では、ウォレット・アカウントは、ウォレット・サーバから直接、MSTのセキュアなメモリ手段又はSE上への暗号化されたトラック・データのロードを可能にすることができ、それによって、発行者はウォレット・ユーザのカード・アカウントを作成することを選び、次いで、ウォレット・サーバからモバイル通信装置へ、及び、MSTへ通信されたウォレット・アプリケーションを介してトラック・データを有する最上位のウォレット・カードとしてSEをロードすることができるようにする。これは、物理的に容認された使用のためのウォレット・ユーザのMSTへのトラック・データの遠隔ロードの一種である。例えば、カードの発行者は、クレジットカード提供者若しくは銀行、又は、ホテル・カード、出入口通行証、若しくは、ロイヤルティ・カードの発行といった、非支払いカード提供者である可能性がある。支払いカードを、標準的な支払いカードとすることができる、又は、カード番号が、発行者のサーバ上で実際の支払いカード・アカウントを参照するトークンであるように、1回限りで使用する支払いカードとすることができる。これによって、数字は一度しか使用できないため、トークンが不正アクセスされたかコピーされたとしても、より強いセキュリティが提供可能である。
【0046】
磁気カード・トラック・データがMSTにロードされると、ウォレット・アプリケーションは、モバイル装置のカメラを使用して、カードの表面及び/又は裏面の画像を取り込み、ユーザが送信用に使用する自身のMSTにおけるカードを選択可能とするようにも構成可能である。アプリケーションで選択されたカードをウォレット・アプリケーションを使用して削除し、メモリ手段から抹消することもできる。ウォレット・アプリケーションを使用して、ウォレット・ユーザの識別カードを取り込み、ウォレット・アプリケーションにおけるボタンをタッチすることにより本人確認できるものを小売業者に示すこともできる。
【0047】
説明的な実施例による送信及び使用モードでの動作方法を、
図4を参照して説明する。POSによるトランザクションをブロック452において開始する。POSの対面トランザクションでは、メモリ手段又はSEにおいて記憶された暗号化されたトラック・データを、ブロック454として例示されるように、MSTによって解読することができ、次いで、ブロック456として例示されるように、POSへ送信することができる。POSは、ブロック458として示されるように、データをトランザクション・プロセッサに送信することもできる。
【0048】
遠隔トランザクションでは、ブロック460として示されるように、暗号化されたトラック・データを、モバイル通信装置のチェックアウト・アプリケーションに送信することができる。次いで、チェックアウト・アプリケーションは、ブロック462として示されるように、データを支払いサーバに送信することができる。ブロック464として示されるように、このデータを、チェックアウト時に対応する支払いサーバのみが解読することができ、その他の場合は、ワイヤレス若しくは有線インターネット・ネットワーク、又は、他の通信ネットワーク上での送信中にこのようなデータを傍受するモバイル・アプリケーション又は人物に対して有用としない。支払いサーバは、ブロック466として示されるように、解読されたデータをトランザクション・プロセッサに送信することもできる。
【0049】
説明的な実施例による切断送信モードでの動作方法を、
図5を参照して説明する。ブロック468として示されるように、ウォレット・ユーザは、例えば、オーディオ・ジャック又は他の通信インターフェイスを介して接続されたMSTによって自身のウォレット・アプリケーションにログインする。あるカード又は複数のカードがSE/セキュアなメモリにセキュアにロードされるとすると、2つ以上のカードがロードされる場合、ユーザは、MSTユニットがオンされる時POSに送信するために使用されるデフォルト/最上位のウォレット・カードを変更することができる。一態様では、特定のカードを最初に「選択済み」とすることができる。その後、MST上の「選択済みカード」は、MSTがもうこれ以上支払いカードを送信できなくなる前の特定期間内に、ブロック470として示されるように、プラグ接続済みMSTドングルによってウォレット・アプリケーションにおける「送信」ボタンを押すことによって、又は、MST自体における送信ボタンを押すことによって、POSに送信可能である。送信を終了しようと試みると、LEDインジケータは、ブロック472として示されるように、約500ms又は所望する他の時間の間、光、例えば、緑の光を点滅させることができる。MSTに記憶された非支払いカードのために、支払いカードがデフォルト・カード位置を無効にしない時はいつでも、デフォルト非支払いカードはMST上のボタンを単に押すことによって送信されて利用可能であり、LEDインジケータは送信が行われていることを示す。
【0050】
デフォルト送信モードで有効とするウォレット・アプリケーションによってMSTが認証され、ブロック474として示されるように、MSTがモバイル通信装置から外される場合、ブロック476として示されるように、ドングルはオンのままで、約4分以上の間ロック解除されたままとなる。これによって、ブロック478として示されるように、この期間の間MST上のボタンを押すことによって、MSTがPOSの付近にある時、カード・データの送信を終了するために、MSTドングルは小売業者又はユーザによって移送され且つ使用されることが可能になり、その後、ドングルは停止され、ウォレット・アプリケーションによって再びオンにされ且つロック解除されなければならない場合がある。この特徴は、ダイニング・テーブルから離れたPOSシステムにカードを戻す必要のある多くのレストランにとって有用である。この特徴によって、ウェイターは、消費者のモバイル通信装置をMSTドングルと共に利用する必要なく、ユニットがオンになる間に4分間、単にMSTドングルだけを利用してPOSへ移動することが可能になる。
【0051】
ある態様では、トラック・データを、製造時にメモリ手段に記憶する、サーバによって遠隔にロードする、特殊な手順を使用してウォレット・アプリケーションを介して、必要な場合、消費者が自身の磁気ストライプ・トラック・データを非接触トラック・データに変換することによってロードする、又は、後で使用するためにMSTのメモリ手段又はSEにそのまま直接記憶することができる。
【0052】
説明的な実施例によるPOSカード読み取りモードでの動作方法を、
図6を参照して説明する。このモードによって、MSTの磁気ストライプ読み取り装置(MSR)は、カードをロードするだけでなく、任意の小売業者用POSアプリケーションのように支払いを受け入れるために、モバイル装置上のPOSアプリケーションと共に使用される任意の磁気ストライプ・カードを読み出し且つ暗号化することによって、POSとしての役割を果たすことが可能になる。ブロック480として示されるように、ユーザは、MSTのMSR上で磁気カードを読み取ることができる。MSTは、ブロック482として示されるように、カード上のデータを読み且つ暗号化する。データは、ブロック484として示されるように、モバイル通信装置上のPOSアプリケーションに送信可能であり、その後、モバイル通信装置は、ブロック486として示されるように、データを支払いサーバに送信することができる。支払いサーバは、ブロック488として示されるように、支払いを処理するために、データをトランザクション・プロセッサに送信することもできる。
【0053】
本明細書において開示される装置、システム、及び、方法によって、改造することなくユーザによってMSTのセキュアなメモリ手段に取り込まれ且つ記憶され、及び、非接触型POSで作動させるためにカード発行者によってコード化される必要がある特殊なフィールドを有する接触型又はNFCトラック・データとは違って、POS又は他のMSR装置によって後で使用される、磁気カード・トラック・データが提供される。MSTは、磁気カード・データをPOSに送信できるようにするボタンを含むが、一方でMSTはモバイル装置から切断又は取り外されている。MSTが正しく送信を行う時、LEDインジケータがアクティブになる。MSTと特定のウォレット・アカウントとが一意にペアリングすることによって、MSTは、トラック・データを記憶するためにそのアカウントによってのみ使用可能となり、送信のための使用にはより良いセキュリティが与えられるようになり、MSTを再設定する能力によってMSTのペアリング解除及び再利用が可能となる。MSTは、オーディオ・ジャック及びUSB接続以外の、様々なインターフェイスを介したモバイル通信装置への接続が可能である。装置、システム、及び、方法によって、暗号化された磁気ストライプ・トラック・データをMSTのメモリ手段にロードすることができる。その暗号化された磁気ストライプ・トラック・データを、後で解読してPOSに送信することができる、又は、暗号化されたままモバイル通信装置に送信し、次いで支払いサーバに伝送して解読及び処理を行い、サーバ上のウォレット・アカウントをロードするかPOSトランザクションを処理することができる。装置、システム、及び、方法によって、小売業者がよりセキュア且つ低費用のトランザクションを行うように、仮想チェックアウト環境のために記憶されたトラック・データ又は読み取られたトラック・データを使用する能力が提供される。装置、システム、及び、方法によって、カード発行者からウォレット・サーバ・プロバイダへ、モバイル通信装置上のウォレット・アプリケーションへ、及び、後で使用するためにMSTのSE又はメモリ手段へトラック・データの遠隔ロード及び送信が行われる。装置、システム、及び、方法によって、支払いカード・データと共にロイヤルティ・アカウント情報をトランザクション中又は後に発行者によって読まれるトラック・データの1つ又は複数の任意のフィールドにロードする能力が提供され、これによって、オファー及びロイヤルティ・プログラムを支払いトランザクションと組み合わせることができる。
【0054】
モバイル通信装置は、ラップトップ・コンピュータ、セルラーフォン、携帯情報端末(PDA)、タブレット・コンピュータ、及び、そういったタイプの他のモバイル装置とすることができる。本明細書で開示されたシステム及び方法における構成要素間及び/又は装置間の通信は、有線若しくはワイヤレス構成又はネットワークを通した単方向又は双方向の電子通信であってよい。例えば、1つの構成要素又は装置を、インターネット上でサード・パーティが仲介することによって直接的に若しくは間接的に、有線接続又はワイヤレス・ネットワーク接続することができ、或いは、別の構成要素又は装置によって、構成要素間又は装置間の通信が可能になる。ワイヤレス通信の例は、無線周波数(RF:Radio Frequency)、赤外線、ブルートゥース、ワイヤレス・ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN:Wireless Local Area Network)(Wifiなど)、又は、ロング・ターム・エボリューション(LTE:Long Term Evolution)・ネットワーク、WiMAXネットワーク、3Gネットワーク、4Gネットワーク、及び、そのタイプの他の通信ネットワークなどのワイヤレス通信ネットワークによって通信可能な無線といったワイヤレス・ネットワーク無線を含むが、これらに限定されない。
【0055】
装置、システム、及び、方法を、ある実施例と関連して説明及び示してきたが、多くの変形及び改造は当業者によって明らかであり、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、行うことが可能である。よって、本開示は、このような変形及び改造などを本開示の範囲内に含ませることが意図されるため、上記で示したやり方又は構成の精確な詳細には限定されない。