(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表面変性層が芳香族シランを含み、該芳香族シランがフェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、および4−ペンタフルオロフェニルトリエトキシシランのうちの1つである、請求項1記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の詳細説明において、限定ではなく、説明の目的のために、特定の詳細を開示する実施例の実施形態を明示し、本発明の様々な原理の十分な理解を提供する。しかしながら、本開示の利点を有する当業者には、本発明は、本明細書に開示される特定の詳細から逸脱する他の実施形態で実施されてもよいことは明らかであろう。さらに周知のデバイス、方法および材料の記載は、本発明の様々な原理の説明を不明瞭にしないために、省略されてもよい。最終的に、適用可能な場合、同様の参照番号は同様の要素を指す。
【0019】
範囲は、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値まで本明細書に表すことができる。そのような範囲が表される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」の使用によって、値が近似値として表される場合、特定の値が別の実施形態を形成することは理解されよう。各範囲の終点が、他の終点に関して、および他の終点とは独立して、両方において有意であることがさらに理解されるであろう。
【0020】
本明細書で使用される方向的な用語、例えば、上、下、右、左、前、後、上部、底部は、図を参照する時にのみ使用され、絶対的な方向を暗示するようには意図されない。
【0021】
本明細書で使用される場合、名詞は、文脈上他に明示されない限り、複数の対象も含む。したがって、例えば、「成分」の参照には、文脈上他に明示されない限り、2種以上のそのような成分を有する態様が含まれる。
【0022】
「Processing Flexible Glass with a Carrier」という名称の2012年2月8日出願の特許文献1および(「Facilitated Processing for Controlling Bonding Between Sheet and Carrier」という名称の2012年12月13日出願の)特許文献2において、キャリア上での薄ガラスシートの加工を可能にする解決策が提供され、それによって、薄ガラスシートの少なくとも一部分が「結合されずに」残り、薄ガラスシート上で加工されるデバイスがキャリアから除去され得る。しかしながら、薄ガラスの周囲は、共有結合Si−O−Si結合の形成を通して、キャリアガラスに永久に(または共有結合的に、もしくは気密に)結合する。この共有結合された周辺部は、薄ガラスが、薄ガラスおよびキャリアにダメージを与えることなく、この永久結合領域において除去されることができないため、キャリアの再利用を妨げる。
【0023】
有利な表面形状特徴を維持するために、キャリアは典型的にディスプレイグレードガラス基板である。したがって、いくつかの状態において、1回の使用の後に単にキャリアを処分することは浪費的で、高価である。したがって、ディスプレイ製造のコストを削減するため、2回以上薄シート基材を加工するために、キャリアを再利用することが可能であることが望ましい。本開示は、400℃以上の温度での加工であって、製造されるデバイスの種類次第で変化し得、例えば、非晶質シリコンまたは非晶質酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)バックプレーン加工の場合のように約450℃まで、結晶質IGZO加工の場合のように約500〜550℃まで、またはLTPSプロセスにおいて典型的な約600〜650℃までの温度である高温加工を含む、FPD加工ラインの苛酷な環境を通して、薄シートが加工されることを可能にし、なお薄シートが、薄シートまたはキャリアにダメージ(例えば、キャリおよび薄シートの一方が破断または亀裂して、2つ以上の断片となること)を与えることなく、キャリアから容易に除去することを可能にし、それによってキャリアは再利用され得る、物品および方法を明示する。
【0024】
図1および2に示すように、ガラス物品2は厚さ8を有し、厚さ18を有するキャリア10、薄シート20(すなわち、限定されないが、例えば、10〜50マイクロメートル、50〜100マイクロメートル、100〜150マイクロメートル、150〜300マイクロメートル、300、250、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20もしくは10マイクロメートルの厚さを含む、300マイクロメートル以下の厚さを有するもの)、および厚さ38を有する表面変性層30を含む。薄シート20自体は300マイクロメートル以下であるが、ガラス物品2はより厚いシート(すなわち、.4mm以上の範囲、例えば、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mmまたは1.0mmのもの)のために設計された装置での薄シート20の加工を可能にするように設計されている。すなわち、厚さ18、28および38の合計である厚さ8は、装置、例えば、基材シート上へ電子デバイス部品を配置するように設計された装置がそれを加工するように設計された、より厚いシートのものと等しいように設計される。例えば、加工装置が700マイクロメートルのシートのために設計されており、そして薄シートが300マイクロメートルの厚さ28を有する場合、厚さ38は無視できることを仮定して、厚さ18は400マイクロメートルとして選択される。すなわち、表面変性層30は、一定の比率で示されず、その代わりに、例示のみのためのために非常に誇張される。追加的に、表面変性層は、切取図に示される。実際には、再利用できるキャリアを提供する場合、表面変性層は結合表面14上に一様に配置される。典型的に、厚さ38はナノメートルの範囲にあり、例えば、0.1〜2.0、または10nmまで、そしていくつかの場合、100nmまででもよい。厚さ38は、偏光解析装置で測定されてもよい。追加的に、表面変性層の存在は、表面化学分析によって、例えばToF Sims質量分析によって検出されてもよい。したがって、物品の厚さ8への厚さ38の寄与は無視することができ、また厚さ28を有する所与の薄シート20を加工するためのキャリア10の適切な厚さ18を決定するための計算において無視されてもよい。しかしながら、表面変性層30がいずれかの有意の厚さ38を有する範囲まで、それは、薄シート20の所与の厚さ28および加工装置が設計された所与の厚さに対するキャリア10の厚さ18を決定する際に説明されてもよい。
【0025】
キャリア10は、第1の表面12、結合表面14、周辺部16および厚さ18を有する。さらにキャリア10は、例えば、ガラスを含むいずれの適切な材料でもよい。キャリアは、ガラスである必要はないが、その代わり、セラミック、ガラスセラミックまたは金属であることが可能である(表面エネルギーおよび/または結合が、ガラスキャリアに関して以下に記載されるものと同様の方法で制御されてもよい)。ガラス製である場合、キャリア10は、アルミノシリケート、ボロシリケート、アルミノボロシリケート、ソーダ石灰シリケートを含む、いずれの適切な組成物であってもよく、そしてその最終用途次第で、アルカリを含有していても、またはアルカリを含有しなくてもよい。厚さ18は、約0.2〜3mmであるか、またはそれを超えてもよく、例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.65、0.7、1.0、2.0もしくは3mmであるか、またはそれを超えてもよく、これは厚さ28、および上記したように無視できない厚さ38次第である。追加的に、キャリア10は、示されるように1層で製造されていても、または一緒に結合した複数の層(複数の薄シートを含む)で製造されてもよい。さらに例えば、キャリアは、第一世代サイズ以上、例えば、第二世代、第三世代、第四世代、第五世代、第八世代またはそれを超えるものであってよい(例えば、100mm×100mm〜3メートル×3メートルまたはそれを超えるシートサイズ)。
【0026】
薄シート20は、第1の表面22、結合表面24、周辺部26および厚さ28を有する。周辺部16および26は、いずれの適切な形状のものであってもよく、互いに同一であっても、互いに異なってもよい。さらに、薄シート20は、例えば、ガラス、セラミックまたはガラスセラミックを含む、いずれの適切な材料でもよい。ガラス製である場合、薄シート20は、アルミノシリケート、ボロシリケート、アルミノボロシリケート、ソーダ石灰シリケートを含む、いずれの適切な組成物であってもよく、そしてその最終用途次第で、アルカリを含有していても、またはアルカリを含有しなくてもよい。薄シートの熱膨張係数は、高温加工の間、物品の湾曲を防ぐため、キャリアの熱膨張係数と比較的密接に適合することができるであろう。薄シート20の厚さ28は、上記の通り、300マイクロメートル以下である。さらに、薄シートは、第一世代サイズ以上、例えば、第二世代、第三世代、第四世代、第五世代、第八世代またはそれを超えるものであってよい(例えば、100mm×100mm〜3メートル×3メートルまたはそれを超えるシートサイズ)。
【0027】
物品2が、既存の装置で加工されるためには、正しい厚さを有することが必要であるのみならず、加工が実施される苛酷な環境に耐えることが可能であることも必要とされる。例えば、フラットパネルディスプレイ(FPD)加工は、湿潤、超音波、真空および高温(例えば、400℃以上)加工を含んでよい。上記のようないくつかのプロセスに関して、温度は、500℃以上または600℃以上、および650℃までであってもよい。
【0028】
例えば、FPD製造の間などの、物品2が加工される苛酷な環境に耐えるために、薄シート20がキャリア10から分離しないように十分な強度で、結合表面14は、結合表面24に結合されなければならない。そしてこの強度は、加工の間に薄シート20がキャリア10から分離しないように、加工を通して維持されなければならない。さらに、(キャリア10を再利用できるように)薄シート20がキャリア10から除去されることを可能にするため、結合表面14は、最初に設計された結合力によって、および/または例えば、物品が高温、例えば400℃以上の温度での加工を受ける時に生じ得る、最初に設計された結合力の変性から生じる結合力によって、あまりに強く結合表面24に結合されてはならない。表面変性層30は、これらの目的の両方を達成するために、結合表面14と結合表面24との間の結合の強度を制御するために使用されてもよい。制御された結合力は、全体の接着エネルギーに対するファンデルワールス(および/または水素結合)ならびに共有結合誘引エネルギーの寄与を制御することによって達成され、薄シート20およびキャリア10の極性および非極性表面エネルギー成分を調整することによって制御される。この制御された結合は、(湿潤、超音波、真空、ならびに400℃以上の温度、いくつかの場合、500℃以上または600℃以上、および650℃までの加工温度を含む熱プロセスを含む)FPD加工に耐えるために十分強く、十分な分離力の適用によって、ならびになお、薄シート20および/またはキャリア10への破滅的なダメージを引き起こさない力によって、剥離可能なままである。そのような剥離によって、薄シート20およびその上に製造されるデバイスの除去が可能となり、かつキャリア10の再利用も可能となる。
【0029】
表面変性層30は、薄シート20とキャリア10との間に固体層として示されるが、実際はそれとは異なってもよい。例えば、層30が厚さ0.1〜2nmの範囲にあってもよく、結合表面14の小部分ごとに完全に被覆しなくてもよい。例えば、被覆率は、100%以下、1%〜100%、10%〜100%、20%〜90%、または50%〜90%であってよい。他の実施形態において、層30は厚さ10nmまでであってもよく、あるいは他の実施形態において、厚さ100nmまでであってもよい。表面変性層30は、たとえそれが、キャリア10および薄シート20のどちらか一方と接触しない場合でも、キャリア10と薄シート20との間で配置されると考えられてもよい。いずれにしても、表面変性層30の重要な態様は、結合表面14が結合表面24と結合する能力を表面変性層30が変性し、それによって、キャリア10と薄シート20との間の結合強度が制御されるということである。表面変性層30の材料および厚さ、ならびに結合前の結合表面14、24の処理は、キャリア10と薄シート20との間の結合(接着エネルギー)の強度を制御するために使用することができる。
【0030】
一般に、2つの表面の間の接着のエネルギーは、(“A theory for the estimation of surface and interfacial energies.I.derivation and application to interfacial tension”,L.A.Girifalco and R.J.Good,J.Phys.Chem.,V 61,p904):
【0032】
(式中、γ
1、γ
2およびγ
12は、それぞれ、表面1、表面2の表面エネルギー、ならびに表面1および2の界面エネルギーである)によって与えられる。個々の表面エネルギーは、通常、2つの用語:分散成分γ
dおよび極性成分γ
pの組合せである。
【0034】
接着が、主にLondon分散力(γ
d)および極性力、例えば、水素結合(γ
p)による場合、界面エネルギーは、(GirifalcoおよびR.J.Good、上記の通り):
【0037】
(1)において(3)を置換した後、接着エネルギーは、おおよそ:
【0040】
上記の方程式(4)において、接着エネルギーのファンデルワールス(および/または水素結合)成分のみが考えられる。これらは、極性−極性相互作用(Keesom)、極性−非極性相互作用(Debye)および非極性−非極性相互作用(London)を含む。しかしながら、他の誘引エネルギー、例えば、共有結合および静電結合も存在してよい。したがって、より一般化された形態で、上記の方程式は以下のように記述される。
【0042】
(式中、w
cおよびw
eは、共有結合および静電接着エネルギーである)。共有結合接着エネルギーは、シリコンウエハ結合の場合のように、むしろ共通であり、最初のウエハの水素結合対を、多くのまたは全てのシラノール−シラノール水素結合をSi−O−Si共有結合に変換するためにより高い温度まで加熱する。最初の室温水素結合は、結合表面の分離を可能にする約100〜200mJ/m
2の範囲の接着エネルギーを生じるが、高温加工(400〜800℃の範囲)の間に達成される完全に共有結合したウエハ対は、結合表面の分離を可能にしない約1000〜3000mJ/m
2の接着エネルギーを有し、その代わりに、2つのウエハはモノリスとして作用する。他方では、両方の表面が低表面エネルギー材料、例えばフルオロポリマーで、下にある基材の効果を遮蔽するほど十分大きい厚さで、完全にコーティングされる場合、接着エネルギーは、コーティング材料のものであり、そして非常に低く、結合表面14、24間で低接着または無接着を導き、それによって、薄シート20をキャリア10上で加工することが不可能となる。2つの極度の場合を考える。(a)2スタンダードクリーン1(当該技術分野で既知である、SC1)は、水素結合を介して室温で一緒に結合したシラノール基によって飽和されたガラス表面を洗浄し(それによって、接着エネルギーは約100〜200mJ/m
2である)、続いて、シラノール基を共有結合Si−O−Si結合に変換する高温まで加熱する(それによって接着エネルギーは1000〜3000mJ/m
2となる)。この後者の接着エネルギーは、ガラス表面の対の分離に関しては高すぎる。(b)2つのガラス表面は、室温で結合された低表面接着エネルギー(表面あたり約12mJ/m
2)を有するフルオロポリマーで完全にコーティングされ、高温まで加熱される。後者の(b)の場合、表面が結合しないのみならず(表面が一緒になる時、約24mJ/m
2の全接着エネルギーは低すぎるため)、極性反応基がない(または非常に少ない)ため、それらは高温でも結合しない。これらの2つの極度の間で、接着エネルギーの範囲が、例えば、50〜1000mJ/m
2の間で存在し、これは所望の程度の制御された結合を生じることができる。したがって、本発明者らは、これらの2つの極度の間にあり、かつFPD加工の過酷さを通して互いに結合したガラス基材の対(例えば、ガラスキャリア10および薄ガラスシート20)を維持するために十分であるが、(例えば、400℃以上の高温加工後でも)、加工が完了した後、キャリア10から薄シート20を剥離することが可能でもある制御された結合を生じることができる接着エネルギーを導く表面変性層30を提供する様々な方法を発見した。そのうえ、キャリア10からの薄シート20の剥離は、少なくとも薄シート20への破滅的ダメージがなく、そして好ましくはキャリア10にも破滅的ダメージがないような方法において、機械的な力によって実施することが可能である。
【0043】
方程式(5)は、接着エネルギーが、もしあれば、共有結合および静電エネルギーをプラスした4つの表面エネルギーパラメーターの関数であることを説明する。
【0044】
適切な接着エネルギーは、表面変性剤、すなわち、表面変性層30の妥当な選択、および/または結合前の表面の熱処理によって達成することができる。適切な接着エネルギーは、次に、ファンデルワールス(および/または水素結合、これらの用語は本明細書を通して交換可能に使用される)接着エネルギー、ならびにおそらく、高温加工(例えば、400℃以上の範囲)から生じる共有結合接着エネルギーの両方を制御する、結合表面14および結合表面24の一方または両方の化学変性剤の選択によって達成されてもよい。例えば、ガラスの結合表面をSC1洗浄し(これは最初に表面エネルギーの高極性成分によってシラノール基で飽和される)、そしてそれを低エネルギーフルオロポリマーでコーティングすることによって、極性および非極性の基による表面の部分的被覆の制御が提供される。これは、室温での初期のファンデルワールス(および/または水素)結合の制御を提供するのみならず、より高い温度での共有結合の範囲/程度の制御も提供する。室温での初期のファンデルワールス(および/または水素)結合の制御は、一表面から他表面への結合を提供するために実行され、真空および/またはスピン−リンス−ドライ(SRD)型加工を可能にし、そしていくつかの例において、一表面から他表面への容易に形成された結合も可能となり、ここでは、容易に形成された結合は、スキージで、または減圧環境でキャリア10に薄シート20をプレスする際に行われるように、薄シート20の全領域上で外部的に適用される力を適用せずに、室温で実行されることができる。すなわち、初期のファンデルワールス結合は、一方が保持され、そして他方が重力を受ける場合、それらが分離しないように、一緒に薄シートおよびキャリアを保持する結合の少なくとも最小値程度を提供する。ほとんどの場合、初期のファンデルワールス(および/または水素)結合は、物品に、薄シートがキャリアから剥離することなく、真空、SRDおよび超音波加工を行ってもよいような範囲である。表面変性層30を介しての(それが製造される材料および/またはそれが適用される表面の表面処理を含む)、および/またはそれらを一緒に結合する前の結合表面の熱処理によっての、適切な水準でのファンデルワールス(および/または水素結合)、ならびに共有結合相互作用のこの正確な制御は、FPDスタイル加工を通して薄シート20をキャリア10に結合することを可能にすると同時に、薄シート20が、FPDスタイル加工の後、キャリア10から、(薄シート20および/またはキャリアへのダメージを回避する適切な力によって)分離されることを可能にする、所望の接着エネルギーを達成する。加えて、適切な状況において、別のレベルの接着エネルギーの制御を提供するために、一方または両方のガラス表面に静電電荷を適用することができる。
【0045】
FPD加工、例えば、p−Siおよび酸化物TFT製造には、典型的に、表面変性層30の不在下での、薄ガラスシート20とガラスキャリア10のガラス間結合を引き起こす、400℃超、500℃超、そしていくつかの例において、600℃以上、650℃までの温度での熱プロセスが関与する。したがって、Si−O−Si結合の形成を制御することは、再利用できるキャリアを導く。高温でのSi−O−Si結合の形成を制御する1つの方法は、接着する表面において、表面ヒドロキシルの濃度を低下させることである。
【0046】
温度の関数としてのシリカ上の表面ヒドロキシル濃度のIlerのプロット(R.K.Iller:The Chemistry of Silica(Wiley−Interscience,New York,1979)である
図3に示すように、1平方nmあたりのヒドロキシル(OH基)の数は、表面温度が増加すると、減少する。したがって、シリカ表面(および同様に、ガラス表面、例えば、結合表面14および/または結合表面24)を加熱することによって、表面ヒドロキシルの濃度が減少し、2つのガラス表面上のヒドロキシルが相互作用する確率を低下させる。表面ヒドロキシル濃度のこの低下は、次に単位面積あたり形成されるSi−O−Si結合を低下させ、接着力を低下させる。しかしながら、表面ヒドロキシルを排除することは、高温での長いアニール時間を必要とする(完全に表面ヒドロキシルを排除するためには750℃超)。そのような長いアニール時間および高いアニール温度は、高価なプロセスをもたらし、それは典型的なディスプレイガラスの歪点より高い可能性があるため、実際的ではない。
【0047】
上記の分析から、本発明者らは、FPD加工(LTPS加工を含む)のために適切な薄シートおよびキャリアを含む物品を、以下の3つの概念の釣合いをとることによって製造することができることを見出した。
【0048】
(1)初期の室温結合を促進するために中程度の、および非高温FPDプロセス、例えば、真空加工、SRD加工および/または超音波加工に耐えるために十分な接着エネルギーを作成するため(例えば、表面が結合される前に、表面あたり40mJ/m
2超の表面エネルギーを有すること)、ファンデルワールス(および/または水素)結合を制御することによって実行可能な、初期の室温結合を制御することによる、キャリアおよび/または薄シート結合表面の変性。
【0049】
(2)デバイス製造において層間剥離および/または許容できない汚染、例えば、本物品が使用され得る半導体および/またはディスプレイ製造プロセスに許容できない汚染を生じる可能性のある脱気を生じることのない、FPDプロセスに耐えるために熱的に安定である方法でのキャリアおよび/または薄シートの表面変性。
【0050】
(3)キャリア表面ヒドロキシル濃度および高温(例えば、400℃以上の温度)で強い共有結合を形成することが可能な他の種の濃度を制御することによって実行することができる高温での結合の制御であって、それによって、高温加工(特に、FPDプロセスの場合のように、500〜650℃の範囲の熱プロセスを通して)後でさえ、キャリアと薄シートとの間の接着力が、少なくとも薄シートにダメージを引き起こさない(そして好ましくは薄シートまたはキャリアのいずれかにダメージを引き起こさない)分離力によってキャリアから薄シートを剥離することを可能にし、かつ加工間にそれらが剥離しないようにキャリアと薄シート間の結合を維持するためになお十分である範囲内に残るように、キャリアと薄シートとの結合表面間の結合エネルギーを制御することができる、制御。
【0051】
さらに、本発明者らは、適切である結合表面調製と一緒に、表面変性層30の使用は、制御された結合領域、すなわち、物品2がFPD型プロセス(真空および湿潤プロセスを含む)において加工可能であるように、薄シート20とキャリア10との間で十分な室温結合を提供し、かつ物品2が高温加工、例えば、FPD型加工またはLTPS加工を終了した後、(少なくとも薄膜にダメージを与えることなく、好ましくはキャリアにダメージをあたえることなく)キャリア10から薄シート20が剥離されることを可能にするために、(400℃以上の高温であっても)薄シート20とキャリア10との間の共有結合を制御する結合領域を容易に達成するように、上記の概念の釣合いをとることができることを見出した。FPD加工のために適切な再利用できるキャリアを提供する、潜在的結合表面調製および表面変性層を評価するため、一連のテストを使用して、それぞれの適合性を評価した。異なるFPD適用は、異なる必要条件を有するが、LTPSおよび酸化物TFT加工は、この時点で最も厳しく見え、したがって、これらのプロセスのステップの試験代表は、これらが物品2のための所望の適用であるとして選択された。真空プロセス、湿潤洗浄(SRDおよび超音波型プロセスを含む)および湿潤エッチングは、多くのFPD適用に共通である。典型的なaSi TFT製造は、320℃までの加工を必要とする。400℃のアニールは、酸化物TFT加工で使用されるが、LTPS加工において、600℃超の結晶化およびドーパント活性化ステップが使用される。したがって、以下の5種の試験は、特定の結合表面調製および表面変性層30によって、薄シート20がFPD加工を通してキャリア10に結合したままにさせ、一方、そのような加工(400℃以上の温度での加工を含む)の後、(薄シート20および/またはキャリア10にダメージを与えることなく)キャリア10から薄シート20が除去され得る可能性を評価するために使用された。試験は順番で実行され、そして、その後の試験を許容できない種類の不合格がない限り、試料は1つの試験から次の試験まで移された。
【0052】
(1)真空試験
真空適合性試験は、STS Multiplex PECVDロードロック(SPTS,Newport,UKから入手可能)で実行した。ロードロックは、軟質ポンプバルブを有するEbara A10Sドライポンプ(Ebara Technologies Inc.,Sacramento,CA)から入手可能によってポンプされた。試料をロードロックに配置し、次いで、ロードロックを、45秒間で気圧から70mTorr(9.3Pa)までポンプした。下記の表の「真空」欄で「F」の表記によって示される不合格は、(a)キャリアと薄シートとの間の接着の損失(裸眼による視覚試験による、薄シートがキャリアから落下するか、または部分的に剥離する場合に、不合格が生じたと見なされた)、(b)キャリアと薄シートとの間の発泡(裸眼による視覚試験によって決定される。試料を加工の前後で撮影し、次いで、比較して、肉眼で見ることができる寸法によって、欠陥のサイズが増加した場合、不合格が生じたと決定された)、または(c)キャリアに対する薄シートの移動(裸眼による視覚観察によって決定される。試料を試験の前後で撮影し、結合の欠陥、例えば、気泡の移動があった場合、もしくは端部が剥離した場合、もしくはキャリア上の薄シートの移動があった場合、不合格が生じたと見なされた)があった場合に生じたと見なされた。下記の表中、「真空」欄の「P」の表記は、試料が上記の基準に従って不合格ではなかったことを示す。
【0053】
(2)湿潤プロセス試験
湿潤プロセス適合性試験は、SemitoolモデルSRD−470S(Applied Materials,Santa Clara,CAから入手可能)を使用して実行された。この試験は、60秒間、500rpmでのリンス、500rpmにおける15MOhm−cmへのQ−リンス、500rpmにおける10秒間のパージ、1800rpmにおける90秒間の乾燥、および温かい窒素流の下、2400rpmにおける180秒間の乾燥からなっていた。下記の表の「SRD」欄で「F」の表記によって示される不合格は、(a)キャリアと薄シートとの間の接着の損失(裸眼による視覚試験による、薄シートがキャリアから落下するか、または部分的に剥離する場合に、不合格が生じたと見なされた)、(b)キャリアと薄シートとの間の発泡(裸眼による視覚試験によって決定される。試料を加工の前後で撮影し、次いで、比較して、肉眼で見ることができる寸法によって、欠陥のサイズが増加した場合、不合格が生じたと決定された)、または(c)キャリアに対する薄シートの移動(裸眼による視覚観察によって決定される。試料を試験の前後で撮影し、結合の欠陥、例えば、気泡の移動があった場合、もしくは端部が剥離した場合、もしくはキャリア上の薄シートの移動があった場合、不合格が生じたと見なされた)、または(d)薄シート下の水の貫入(50倍の光学顕微鏡による視覚試験によって決定される。液体または残渣が観察可能であった場合、不合格が生じたと決定された)があった場合に生じたと見なされた。下記の表中、「SRD」欄の「P」の表記は、試料が上記の基準に従って不合格ではなかったことを示す。
【0054】
(3)400℃試験への温度
400℃プロセス適合性試験は、Alwin21 Accuthermo610 RTP(Alwin21,Santa Clara CA.から入手可能)を用いて実行した。結合した薄シートを有するキャリアを6.2℃/分で室温から400℃まで循環されるチャンバーで加熱し、400℃で600秒間保持し、1℃/分で300℃まで冷却した。次いで、キャリアおよび薄シートを室温まで冷却した。下記の表の「400℃」欄で「F」の表記によって示される不合格は、(a)キャリアと薄シートとの間の接着の損失(裸眼による視覚試験による、薄シートがキャリアから落下するか、または部分的に剥離する場合に、不合格が生じたと見なされた)、(b)キャリアと薄シートとの間の発泡(裸眼による視覚試験によって決定される。試料を加工の前後で撮影し、次いで、比較して、肉眼で見ることができる寸法によって、欠陥のサイズが増加した場合、不合格が生じたと決定された)、または(c)薄シートまたはキャリアへのダメージがないキャリアからの薄シートの剥離を妨げる(薄シートとキャリアとの間のかみそりの刃の挿入によって、および/または2〜3インチ(5.08〜7.62センチメートル)で100mmの正方形の薄ガラスに取り付けられた、幅1インチ(2.54センチメートル)×長さ6インチ(15.24センチメートル)のKapton(商標)テープ(Saint Gobain Performance Plastic,Hoosik NYからのK102シリーズ)の一片を、薄シートに張り付け、そしてテープを引っ張ることによって)、キャリアと薄シートとの間の接着の増加があった場合に生じたと見なされた。薄シートおよびキャリアを分離しようと試みた時に、薄シートまたはキャリアにダメージがあった場合、あるいはいずれかの剥離法の実施によって薄シートおよびキャリが剥離できなかった場合、不合格が生じたと見なされた。追加的に、薄シートがキャリアと結合された後、および熱サイクルの前、いずれの関連する表面処理も含む特定の材料が、温度循環の前にキャリアから薄シートの剥離を可能にしたことを決定するために、剥離テストを代表的な試料において実行した。下記の表中、「400℃」欄の「P」の表記は、試料が上記の基準に従って不合格ではなかったことを示す。
【0055】
(4)600℃試験への温度
600℃プロセス適合性試験は、Alwin21 Accuthermo610 RTPを用いて実行した。薄シートを有するキャリアを9.5℃/分で室温から600℃まで循環されるチャンバーで加熱し、600℃で600秒間保持し、次いで1℃/分で300℃まで冷却した。次いで、キャリアおよび薄シートを室温まで冷却した。下記の表の「600℃」欄で「F」の表記によって示される不合格は、(a)キャリアと薄シートとの間の接着の損失(裸眼による視覚試験による、薄シートがキャリアから落下するか、または部分的に剥離する場合に、不合格が生じたと見なされた)、(b)キャリアと薄シートとの間の発泡(裸眼による視覚試験によって決定される。試料を加工の前後で撮影し、次いで、比較して、肉眼で見ることができる寸法によって、欠陥のサイズが増加した場合、不合格が生じたと決定された)、または(c)薄シートまたはキャリアへのダメージがないキャリアからの薄シートの剥離を妨げる(薄シートとキャリアとの間のかみそりの刃の挿入によって、および/または上記Kapton(商標)テープの一片を、薄シートに張り付け、そしてテープを引っ張ることによって)、キャリアと薄シートとの間の接着の増加があった場合に生じたと見なされた。薄シートおよびキャリアを分離しようと試みた時に、薄シートまたはキャリアにダメージがあった場合、あるいはいずれかの剥離法の実施によって薄シートおよびキャリが剥離できなかった場合、不合格が生じたと見なされた。追加的に、薄シートがキャリアと結合された後、および熱サイクルの前、特定の材料およびいずれかの関連する表面処理が、温度循環の前にキャリアから薄シートの剥離を可能にしたことを決定するために、剥離テストを代表的な試料において実行した。下記の表中、「600℃」欄の「P」の表記は、試料が上記の基準に従って不合格ではなかったことを示す。
【0056】
(5)超音波試験
超音波適合性試験は、物品を4タンクラインで洗浄することによって実行し、物品はタンク#1からタンク#4までの連続するそれぞれのタンクで加工された。4つのタンクのそれぞれのタンク寸法は、長さ18.4インチ(46.7センチメートル)×幅10インチ(25.4センチメートル)×深さ15インチ(38.1センチメートル)であった。2つの洗浄タンク(#1および#2)は、50℃のDI水中、横浜油脂工業株式会社(日本、横浜)から入手可能な1%Semiclean KGを含有した。洗浄タンク#1はNEY prosonik 2 104kHz超音波発生器(Blackstone−NEY Ultrasonics,Jamestown,NYから入手可能)を用いて撹拌し、そして洗浄タンク#2はNEY prosonik 2 104kHz超音波発生器を用いて撹拌した。2つのリンスタンク(タンク#3およびタンク#4)は、50℃のDI水を含有した。リンスタンク#3はNEY sweepsonik 2D 72kHz超音波発生器を用いて撹拌し、そしてリンスタンク#4はNEY sweepsonik 2D 104kHz超音波発生器を用いて撹拌した。プロセスは、各タンク#1〜4で10分間実行され、続いて、試料がタンク#4から除去された後、スピンリンス乾燥(SRD)を実行した。下記の表の「超音波」欄で「F」の表記によって示される不合格は、(a)キャリアと薄シートとの間の接着の損失(裸眼による視覚試験による、薄シートがキャリアから落下するか、または部分的に剥離する場合に、不合格が生じたと見なされた)、(b)キャリアと薄シートとの間の発泡(裸眼による視覚試験によって決定される。試料を加工の前後で撮影し、次いで、比較して、肉眼で見ることができる寸法によって、欠陥のサイズが増加した場合、不合格が生じたと決定された)、または(c)他の著しい欠陥の形成(50倍の光学顕微鏡による視覚試験によって決定される。以前は観察されなかった、薄ガラスとキャリアとの間に捕捉された粒子があった場合、不合格が生じたと見なされた)、または(d)薄シート下の水の貫入(50倍の光学顕微鏡による視覚試験によって決定される。液体または残渣が観察可能であった場合、不合格が生じたと決定された)があった場合に生じたと見なされた。下記の表中、「超音波」欄の「P」の表記は、試料が上記の基準に従って不合格ではなかったことを示す。追加的に、下記の表中、「超音波」欄の空白または「?」は、試料がそのように試験されなかったことを示す。
【0057】
加熱によるヒドロキシル減少を経た結合表面の調製
物品2が首尾よくFPD加工を受けることが可能(すなわち、薄シート20が、加工の間、キャリア10に結合したまま残り、高温加工を含む加工の後、キャリア10から分離されてもよい)であるように、表面変性層30による結合表面14、24の1つ以上を変性することの利点は、その間に表面変性層30を含まないガラスキャリア10および薄ガラスシート20を有する物品2を加工することによって実証された。具体的には、最初に、表面変性層30を用いず、ヒドロキシル基を減少するための加熱による、結合表面14、24の調製を試みた。キャリア10および薄シート20を洗浄し、結合表面14および24を互いに結合し、次いで、物品2を試験した。結合のためにガラスを調製するための典型的な洗浄プロセスは、SC1洗浄プロセスであり、このプロセスでは、希釈した過酸化水素および塩基(一般に、水酸化アンモニウムであるが、水酸化テトラメチルアンモニウム溶液、例えば、JT Baker JTB−100またはJTB−111も使用されてよい)でガラスを洗浄する。洗浄によって結合表面から粒子が除去され、既知の表面エネルギーを生じる。すなわち、それは、表面エネルギーのベースラインを提供する。洗浄方法は、SC1である必要はなく、洗浄の種類が、表面のシラノール基に対する非常に軽度の影響のみを有するような、他の種類の洗浄が使用されてもよい。様々な試験の結果は、表1に明かにされる。
【0058】
強いが、分離可能な初期の室温またはファンデルワールスおよび/または水素結合は、100mm正方形×厚さ100マイクロメートルの薄ガラスシート、およびガラスキャリアの直径150mmシングルミーンフラット(single mean flat)(SMF)ウエハ、厚さ0.50または0.63mmを単に洗浄することによって作成された。それぞれ、Eagle XG(登録商標)ディスプレイガラス(0.2nmの範囲の平均表面粗さRaを有する、アルカリを含まないアルミノボロシリケートガラス、Corning Incorporated,Corning,NYから入手可能)を含んでなった。本実施例において、40:1:2のDI水:JTB−111:過酸化水素の65℃浴中でガラスを10分間洗浄した。薄ガラスまたはガラスキャリアは、残留水分を除去するために窒素中10分間、400℃でアニールされても、されなくてもよい。下記の表1の「キャリア」欄または「薄ガラス」欄の表記「400℃」は、試料が、400℃で10分間窒素中でアニールされたことを示す。FPDプロセス適合性試験は、SC1−SC1初期室温結合が、真空、SRDおよび超音波試験に合格するために十分、機械的に強いことを実証する。しかしながら、400℃以上での加熱では、薄ガラスとキャリアとの間で永続的な結合が生じ、すなわち、薄ガラスシートおよびキャリアの一方または両方にダメージを与えることなく、薄ガラスシートをキャリアから除去することができない。そしてこれは、キャリアおよび薄ガラスのそれぞれが、表面ヒドロキシルの濃度を減少させるためのアニールステップを有する実施例1cに関しても事実であった。したがって、表面変性層30を用いずに、キャリア10および薄シート20の加熱のみ、それに次ぐ、結合を経た結合表面14、24の上記調製は、温度が400℃以上であるFPDプロセスに関する適切な制御された結合ではない。
【0060】
ヒドロキシル減少および表面変性層による結合表面の調製
結合表面14、24の相互作用を制御するために、例えば、熱処理によるようなヒドロキシル減少および表面変性層30を一緒に使用してもよい。例えば、結合表面14、24の結合エネルギー(極性/分散エネルギー成分による室温におけるファンデルワールスおよび/または水素結合、ならびに共有結合エネルギー成分による高温における共有結合)は、室温結合が困難であるものから、容易な室温結合および高温加工後の結合表面の分離を可能にするものまで、高温加工後、表面がダメージを受けることなく分離することを妨げるものまで、様々な結合強度を提供するために制御されることができる。いくつかの用途において、非常に弱い結合がないか、または少ないことが望ましくてもよい(表面が「非結合」領域にある場合、「非結合」領域は特許文献1の薄シート/キャリア概念に記載されており、以下に記載されるとおりである)。他の用途において、例えば、FPDプロセスなど(500℃以上または600℃以上、および650℃までの加工温度が達成されてよい)用の再利用できるキャリアを提供する場合、最初に薄シートおよびキャリアを一緒に配置し、高温共有結合を防ぐか、または限定するために、室温で十分なファンデルワールスおよび/または水素結合を有することが望ましい。他の用途に関して、最初に薄シートおよびキャリアを一緒に配置し、そのうえ、高温で強い共有結合を発現させるために十分な室温結合を有することが望ましい(表面が「結合領域」にある場合、「結合領域」は特許文献1の薄シート/キャリア概念に記載されており、以下に記載されるとおりである)。理論に拘束されることを望まないが、いくつかの例において、それによって薄シートおよびキャリアが最初に一緒に配置される室温結合を制御するために、表面変性層が使用されてもよく、それに対して、共有結合、特に高温での共有結合を制御するために、表面上のヒドロキシル基の減少(例えば、表面の加熱によるか、またはヒドロキシル基と表面変性層との反応による)が使用されてもよい。
【0061】
表面変性層30のための材料は、それによって表面が弱い結合のみを生じるエネルギー(例えば、1表面に関して測定された、極性および分散成分を含む、40mJ/m
2未満のエネルギー)を有する結合表面14、24を提供し得る。一例において、トリメチルシリル(TMS)末端表面を残すために表面ヒドロキシルと反応させることによって、このような低エネルギー表面を作成するために、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)が使用されてもよい。表面変性層としてのHMDSは、室温および高温結合の両方を制御するために、ヒドロキシル濃度を減少するため、表面加熱と一緒に使用されてもよい。各結合表面14、24に関する適切な結合表面調製を選択することによって、能力の範囲を有する物品を達成することができる。より詳しくは、再利用できるキャリアをLTPS加工に提供することへの関心のため、真空SRD、400℃(パートaおよびc)、ならびに600℃(パートaおよびc)加工試験のそれぞれに耐える(または合格する)ために、薄ガラスシート20とガラスキャリア10との間の適切な結合を達成することができる。
【0062】
一例において、SC1洗浄に続いて、薄ガラスおよびキャリアの両方をHMDS処理することによって、ファンデルワールス(および/または水素結合)力による室温での結合が困難である、弱い結合表面が作成される。薄ガラスをキャリアに結合するために、機械的な力が適用される。表2の実施例2aに示すように、この結合は十分に弱く、真空試験およびSRD加工においてキャリアの撓みが観察され、気泡(おそらく脱気による)は400℃および600℃熱プロセスにおいて観察され、そして超音波加工の後、粒状欠陥が観察された。
【0063】
別の例において、1表面(記載される実施例においてはキャリア)のみのHMDS処理は、真空およびSRD加工に耐える、より強い室温接着を形成する。しかしながら、400℃以上での熱プロセスによって、薄ガラスはキャリアに永久的に結合された。これは、完全に水酸化されたシリカの4.6〜4.9/nm
2のヒドロキシル濃度に対して、シリカのトリメチルシリル基の最大表面被覆率がSindorfおよびMacielによってJ.Phys.Chem.1982,86,5208−5219において2.8/nm
2であるとして算出され、かつSuratwalaらによって、Journal of Non−Crystalline Solids 316(2003)349−363において2.7/nm
2であるとして測定されたため、予想外でない。すなわち、トリメチルシリル基がいくつかの表面ヒドロキシルと結合するが、いくつかの非結合ヒドロキシルは残存する。したがって、十分な時間および温度が与えられれば、薄ガラスおよびキャリアに永久的に結合するための表面シラノール基の濃度が予想される。
【0064】
様々な表面エネルギーは、表面エネルギーの極性の成分の増加を導く、HMDS曝露の前に表面ヒドロキシル濃度を減少させるためにガラス表面を加熱することによって作成されることができる。これは、高温での共有結合Si−O−Si結合の形成のための推進力を減少させ、そしてより強い室温結合、例えば、ファンデルワールス(および/または水素)結合を導く。
図4は、アニール後およびHMDS後のEagle XG(登録商標)ディスプレイガラスキャリアの表面エネルギーを示す。HMDS曝露より前のアニール温度の増加は、極性寄与(線404)の増加によって、HMDS曝露後、全体(極線および分散)表面エネルギー(線402)を増加させる。全体表面エネルギーへの分散寄与(線406)が、熱処理によってほとんど変化せずに残ることもわかる。理論に拘束されることを望まないが、HMDS処理後の表面における極性成分の増加、そしてそれによる全エネルギーの増加は、HMDSによる準単分子層TM被覆のため、HDMS処理後でさえ、いくらかの曝露したガラス表面領域があるためであるように思われる。
【0065】
実施例2bにおいて、HMDSのコーティングを有する非熱処理キャリアに結合させる前に1時間、真空中で150℃の温度で薄ガラスシートを加熱した。薄ガラスシートのこのような熱処理は、400℃以上の温度におけるキャリアへの薄ガラスシートの永久的な結合を防ぐために十分ではなかった。
【0066】
表2の実施例2c〜2eに示すように、HMDS曝露の前にガラス表面のアニール温度を変化させることによって、ガラスキャリアと薄ガラスシートとの間の結合が制御されるように、ガラス表面の結合エネルギーを変化させることができる。
【0067】
実施例2cにおいて、キャリアを190℃の温度で真空中で1時間、アニールし、続いて、HMDS曝露を行い、表面変性層30を提供した。追加的に、薄ガラスシートは、キャリアとの結合の前に1時間、真空中、450℃でアニールされた。得られた物品は、真空、SRD、ならびに400℃試験(パートaおよびc、気泡の増加のためbは不合格)に耐えたが、600℃試験は不合格であった。したがって、実施例2bと比較して、高温結合への耐性は増加したが、これは、キャリアを再利用できる600℃以上の温度における加工(例えば、LTPS加工)のための物品を製造するためには十分ではなかった。
【0068】
実施例2dにおいて、キャリアを340℃の温度で真空中で1時間、アニールし、続いて、HMDS曝露を行い、表面変性層30を提供した。再び、キャリアとの結合の前に、薄ガラスシートを450℃で真空中で1時間、アニールした。結果は、実施例2cと同様であり、物品は、真空、SRD、ならびに400℃試験(パートaおよびc、気泡の増加のためbは不合格)に耐えたが、600℃試験は不合格であった。
【0069】
実施例2eで示すように、1時間、真空中で450℃で薄ガラスおよびキャリアの両方をアニールし、続いて、キャリアをHMDS曝露し、次いで、キャリアおよび薄ガラスシートの結合を行うことによって、永久結合に対する温度耐性が改善する。両表面を450℃までアニールすることによって、600℃で10分間のRTPアニール後の永久結合が防がれ、すなわち、この試料は、600℃加工試験(パートaおよびc、気泡の増加のためbは不合格、400℃試験でも同様の結果が見られた)に合格した。
【0071】
上記の実施例2a〜2eにおいて、キャリアおよび薄シートのそれぞれは、Eagle XG(登録商標)ガラスであり、キャリアは、厚さ630マイクロメートル直径150mmのSMFウエハであり、そして薄シートは、厚さ100マイクロメートルの100mm正方形であった。HMDSは、YES−5 HMDSオーブン(Yield Engineering Systems,San Jose CAから入手可能)中でパルス蒸着によって適用され、1原子層の厚さ(すなわち、約0.2〜1nm)であったが、表面被覆率は、1単分子層より少なくてもよく、すなわち、Macielによって示され、上記で検討されるように、表面ヒドロキシルのいくらかはHMDSで被覆されない。表面変性層の厚さが小さいため、デバイス製造において汚染を引き起こす可能性のある脱気の危険性はほとんどない。また、「SC1」表記によって表2で示されるように、キャリアおよび薄シートのそれぞれは、熱処理またはいずれかのその後のHMDS処理の前にSC1プロセスを使用して洗浄された。
【0072】
実施例2aと実施例2bとの比較によって、薄シートとキャリアとの間の結合エネルギーは、表面変性層を含む表面の数を変更することによって制御することができることが示される。そして、結合エネルギーを制御することで、2つの結合表面の間の結合力を制御することができる。また実施例2b〜2eの比較によって、表面変性材料の適用の前に結合表面が受ける熱処理のパラメーターを変化させることによって、表面の結合エネルギーを制御することができることも示される。再び、熱処理を使用して、表面ヒドロキシルの数を減少させることができ、したがって、特に高温において、共有結合の程度を制御することができる。
【0073】
種々の方法で、結合表面上の表面エネルギーを制御するように作用する他の材料は、2つの表面間の室温および高温結合力を制御するために、表面変性層30のために使用されてもよい。例えば、高温でのキャリアと薄シートとの間の強い永久的な共有結合の形成を防ぐため、種、例えばヒドロキシルを被覆するか、または立体的に妨害する表面変性層との適度な結合力を作成するように、一方または両方の結合表面が変性される場合、再利用可能なキャリアも作成される。調節可能な表面エネルギーを作成するため、および表面ヒドロキシルを被覆して、共有結合の形成を防ぐための1つの方法は、プラズマポリマー膜、例えばフルオロポリマー膜の析出である。プラズマ重合は、大気または減圧下、およびプラズマ励起(DCまたはRFパラレルプレート、誘導結合プラズマ(ICP)電子サイクロトロン共鳴(ECR)下流マイクロ波またはRFプラズマ)で、供給源気体、例えば、フルオロカーボン供給源(CF4、CHF3、C2F6、C3F6、C2F2、CH3F、C4F8、クロロフルオロカーボンまたはヒドロクロロフルオロカーボンを含む)、炭化水素、例えば、アルカン(メタン、エタン、プロパン、ブタンを含む)、アルケン(エチレン、プロピレンを含む)、アルキン(アセチレンを含む)、および芳香族(ベンゼン、トルエンを含む)、水素および他の気体供給源、例えばSF6から薄ポリマー膜を析出する。プラズマ重合は、高度架橋材料の層を作成する。反応条件および供給源気体の制御は、所望の用途に官能基を調整するために、膜厚、密度および化学を制御するために使用することができる。
【0074】
図5は、Oxford ICP380エッチツール(Oxford Instruments,Oxfordshire UKから入手可能)によって、CF4−C4F8混合物から析出したプラズマ重合フルオロポリマー(PPFP)膜の全(線502)表面エネルギー(極性(線504)および分散(線506)成分を含む)を示す。膜は、Eagle XG(登録商標)ガラスのシート上に析出され、分光器偏光解析法によって、厚さ1〜10nmの膜が示された。
図5から参照されるように、40%未満のC4F8を含有するプラズマ重合フルオロポリマー膜で処理されたガラスキャリアは、40mJ/m
2超の表面エネルギーを示し、ファンデルワールスまたは水素結合による室温でのガラスとキャリアとの間の制御された結合を生じる。キャリアと薄ガラスとを室温で最初に結合した時に、促進された結合が観察される。すなわち、薄シートをキャリア上に配置し、それらを一点で一緒にプレスした時、波面はキャリア全体で移動するが、表面変性層を有さないSC1処理表面に関して観察されるものよりも低速である。制御された結合は、真空、湿潤、超音波および600℃までの熱処理を含む全ての標準FPDプロセスに耐えるために十分であり、すなわち、この制御された結合は、キャリアからの薄ガラスの移動または剥離が生じることなく、600℃加工試験に合格する。剥離は、上記のとおり、かみそりの刃および/またはKapton(商標)テープを用いて剥離することによって達成された。2つの異なるPPFP膜(上記のとおり析出された)のプロセス適合性は、表3に示される。実施例3aのPPFP1は、C4F8/(C4F8+CF4)=0で形成され、すなわち、C4F8を含まずにCF4/H2によって形成され、そして実施例3bのPPFP2は、C4F8/(C4F8+CF4)=0.38で析出された。両種類のPPFP膜は、真空、SRD、400℃および600℃加工試験に耐えた。しかしながら、PPFP2の20分間の超音波洗浄後、層間剥離が観察され、そのような加工に耐えるには十分な接着力が示される。それにもかかわらず、超音波加工が必要とされないいくつかの用途に関しては、PPFP2の表面変性層は有用となり得る。
【0076】
上記実施例3aおよび3bにおいて、キャリアおよび薄シートのそれぞれは、Eagle XG(登録商標)ガラスであり、キャリアは、厚さ630マイクロメートル直径150mmのSMFウエハであり、そして薄シートは、厚さ100マイクロメートルの100mm正方形であった。表面変性層の厚さが小さいため、デバイス製造において汚染を引き起こす可能性のある脱気の危険性はほとんどない。さらに、表面変性層が悪化しないように思われたため、再び、脱気の危険性はほとんどない。また、表3で示されるように、薄シートのそれぞれは、真空中で1時間、150℃の熱処理の前にSC1プロセスを使用して洗浄された。
【0077】
異なる方法で表面エネルギーを制御するように機能し得る他の材料は、薄シートおよびキャリアの間の室温および高温結合力を制御するために、表面変性層として使用されてもよい。例えば、制御された結合を生じることができる結合表面は、ガラスキャリアおよび/またはガラス薄シートをシラン処理することによって作成することができる。シランは、適切な表面エネルギーを生じるため、そして適用のために十分な熱安定性を有するように選択される。処理されるキャリアまたは薄ガラスは、表面シラノール基とのシラン反応に影響を与え得る有機物および他の不純物(例えば、金属)を除去するために、例えば、O2プラズマまたはUVオゾン、およびSC1またはスタンダードクリーン2(SC2、当該技術分野において既知のとおり)洗浄よって洗浄されてもよい。他の化学をベースとする洗浄、例えば、HF、またはH2SO4洗浄化学が使用されてもよい。キャリアまたは薄ガラスは、シラン適用の前に(上記の通り、HMDSの表面変性層と関連して)表面ヒドロキシル濃度を制御するために処理されてもよく、および/または表面ヒドロキシルとのシラン縮合を完了するために、シラン適用の後、加熱されてもよい。シラン化の後の未反応のヒドロキシル基の濃度は、400℃以上の温度での薄ガラスとキャリアとの間の永久的な結合を防ぐため、すなわち、制御された結合を形成するため、結合の前に十分低くされ得る。この方法は以下に記載される。
【0078】
実施例4a
結合表面がO2プラズマおよびSC1処理されたガラスキャリアを、次いで、トルエン中1%ドデシルトリエトキシシラン(DDTS)で処理し、1時間、真空中、150℃でアニールし、縮合を完了させた。DDTS処理表面は、45mJ/m
2の表面エネルギーを示す。表4に示すように、(SC1洗浄され、1時間、真空中で400℃で加熱された)ガラス薄シートは、その上にDDTS表面変性層を有するキャリア結合表面に結合した。この物品は、湿潤および真空プロセス試験に耐えたが、シランの熱分解のため、キャリア下に気泡が形成されることなく、400℃超の熱プロセスには耐えなかった。この熱分解は、良好な熱安定性のコーティングを生じるメチル、ジメチルおよびトリメチルシラン(x=1〜3、R1=CH
3)を除く、全ての直鎖アルコキシおよびクロロアルキルシランR1
xSi(OR2)
y(Cl)
z(式中、X=1〜3、およびy+z=4−x)に関して予想される。
【0079】
実施例4b
結合表面がO2プラズマおよびSC1処理されたガラスキャリアを、次いで、トルエン中1%3,3,3−トリフルオロプロピルトリセオキシシラン(TFTS)で処理し、1時間、真空中、150℃でアニールし、縮合を完了させた。TFTS処理表面は、47mJ/m
2の表面エネルギーを示す。表4に示すように、(SC1洗浄され、1時間、真空中で400℃で加熱された)ガラス薄シートは、その上にTFTS表面変性層を有するキャリア結合表面に結合した。この物品は、ガラスキャリアへのガラス薄シートの永久的結合が生じることなく、真空、SRDおよび400℃プロセス試験に耐えた。しかしながら、600℃試験は、シランの熱分解により、キャリアの下で気泡形成を生じた。この熱分解は、プロピル基の限定的な熱安定性のため、予想外ではなかった。この試料は気泡のため、600℃試験には不合格であったが、この実施例の材料および熱処理は、気泡およびそれらの悪影響、例えば、表面の平坦さの減少、または波動性の増加に耐えられ得るいくつかの用途に関して、使用されてもよい。
【0080】
実施例4c
結合表面がO2プラズマおよびSC1処理されたガラスキャリアを、次いで、トルエン中1%フェニルトリエトキシシラン(PTS)で処理し、1時間、真空中、200℃でアニールし、縮合を完了させた。PTS処理表面は、54mJ/m
2の表面エネルギーを示す。表4に示すように、(SC1洗浄され、1時間、真空中で400℃で加熱された)ガラス薄シートは、PTS表面変性層を有するキャリア結合表面に結合した。この物品は、ガラス薄シートとガラスキャリアの永久的な結合が生じることなく、真空、SRDおよび600℃までの熱プロセスに耐えた。
【0081】
実施例4d
結合表面がO2プラズマおよびSC1処理されたガラスキャリアを、次いで、トルエン中1%ジフェニルジエトキシシラン(DPDS)で処理し、1時間、真空中、200℃でアニールし、縮合を完了させた。DPDS処理表面は、47mJ/m
2の表面エネルギーを示す。表4に示すように、(SC1洗浄され、1時間、真空中で400℃で加熱された)ガラス薄シートは、DPDS表面変性層を有するキャリア結合表面に結合した。この物品は、ガラス薄シートとガラスキャリアの永久的な結合が生じることなく、真空およびSRD試験、ならびに600℃までの熱プロセスに耐えた。
【0082】
実施例4e
結合表面がO2プラズマおよびSC1処理されたガラスキャリアを、次いで、トルエン中1%4−ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン(PFPTS)で処理し、1時間、真空中、200℃でアニールし、縮合を完了させた。PFPTS処理表面は、57mJ/m
2の表面エネルギーを示す。表4に示すように、(SC1洗浄され、1時間、真空中で400℃で加熱された)ガラス薄シートは、PFPTS表面変性層を有するキャリア結合表面に結合した。この物品は、ガラス薄シートとガラスキャリアの永久的な結合が生じることなく、真空およびSRD試験、ならびに600℃までの熱プロセスに耐えた。
【0084】
上記実施例4a〜4eにおいて、キャリアおよび薄シートのそれぞれは、Eagle XG(登録商標)ガラスであり、キャリアは、厚さ630マイクロメートル直径150mmのSMFウエハであり、そして薄シートは、厚さ100マイクロメートルの100mm正方形であった。シラン層は自己集合単分子層(SAM)であって、したがって厚さ約2nm未満の範囲であった。上記の実施例において、SAMは、アリールまたはアルキル非極性テール基およびモノ、ジまたはトリアルコキシドヘッド基を有するオルガノシランを使用して作成された。これらは、ガラス上でシラノール表面と反応して、有機官能性を直接結合する。非極性ヘッド基間のより弱い相互作用は、有機層を組織化する。表面変性層の厚さが小さいため、デバイス製造において汚染を引き起こす可能性のある脱気の危険性はほとんどない。さらに、実施例4c、4dおよび4eにおいて、表面変性層が悪化しないように思われたため、再び、脱気の危険性はほとんどない。また、表4で示されるように、薄シートのそれぞれは、真空中で1時間、400℃の熱処理の前にSC1プロセスを使用して洗浄された。
【0085】
実施例4a〜4eの比較からわかるように、初期の室温結合を促進するために40mJ/m
2超となるように結合表面の表面エネルギーを制御することは、FPD加工に耐え、なお、ダメージを生じることなく、キャリアから薄シートが剥離されることを可能にする制御された結合を形成することが考えられるだけではない。具体的には、実施例4a〜4eからわかるように、各キャリアは40mJ/m
2超の表面エネルギーを有し、これは物品が真空およびSRD加工に耐えるように初期の室温結合を促進する。しかしながら、実施例4aおよび4bは、600℃加工試験には合格しなかった。また上記の通り、ある種の用途に関して、結合が、薄シートおよびキャリアが一緒に保持されるには不十分であるような点まで結合の分解が生じることなく、高温(例えば、物品が使用されることが設計されるプロセスに適切であるような400℃以上、500℃以上、または600℃以上、650℃まで)までの加工に耐えること、また薄シートとキャリアとの間で永久的な結合が生じないように、そのような高温で生じる共有結合を制御することも重要である。
【0086】
実施例4、3および2における上記分離は、薄シートとキャリアとの間の結合界面を変性するためのいずれかのさらなる熱または化学エネルギーの追加を必要とすることなく、室温で実行される。唯一のエネルギーインプットは、機械的な引張力および/または剥離力である。
【0087】
実施例3および4で上記された材料は、一緒に結合されるキャリア、薄シート、またはキャリアおよび薄シートの両表面に適用可能である。
【0088】
制御された結合の使用
再利用可能なキャリア
表面変性層(材料および関連する結合表面熱処理を含む)を経た制御された結合の1つの使用は、例えば、LTPS加工の場合のように600℃以上の温度を必要とするプロセスを受ける物品においてキャリアの再利用を提供することである。上記の実施例2e、3a、3b、4c、4dおよび4eによって例証されるような表面変性層(材料および結合表面熱処理を含む)は、そのような温度条件でキャリアの再利用を提供するために使用されてもよい。具体的には、これらの表面変性層は、薄シートとキャリアとの結合領域間で重複する領域の表面エネルギーを変性するために使用されてもよく、それによって、加工の後、全薄シートがキャリアから分離され得る。薄シートは、全て1回で分離されてもよく、または数部分で分離されてもよく、例えば、薄シートの一部分上に製造されたデバイスが最初に除去され、その後、残りの部分が除去されて、再利用のため、キャリアが洗浄される。全薄シートがキャリアから除去される場合、キャリアは、単にその上に別の薄シートを配置することによって、そのまま再利用することができる。あるいは、キャリアは洗浄されて、新たに表面変性層を形成することによって、薄シートを有するように調製されてもよい。表面変性層が薄シートとキャリアとの永久的な結合を防ぐため、それらは、温度が600℃以上であるプロセスのために使用されてもよい。当然のことながら、これらの表面変性層が600℃以上の温度での加工の間、結合表面エネルギーを制御してもよいが、それらは、結合を制御するためのより低温での加工に耐える薄シートとキャリアとの組合せを製造するために使用されてもよく、そしてそのようなより低温での用途に使用されてもよい。そのうえ、物品の熱加工が400℃未満である場合、この同様の方法で、実施例2c、2d、4bで例証されるような表面変性層も使用されてよい。
【0089】
制御された結合領域の提供
表面変性層を介した制御された結合の第2の使用(材料および関連する結合表面熱処理を含む)は、ガラスキャリアとガラス薄シートとの間で、制御された結合領域を提供することである。より詳しくは、表面変性層を使って、結合によって引き起こされる薄シートまたはキャリアのいずれかにダメージを生じることなく、十分な分離力によってキャリアから薄シート部分を分離することができ、なお、加工を通して、キャリアに対して薄シートを保持するための十分な結合力が保持される、制御された結合の領域を形成することができる。
図6を参照すると、ガラス薄シート20は、結合領域40によってガラスキャリア10に結合され得る。結合領域40において、キャリア10および薄シート20は互いに共有結合して、モノリスとして作用する。追加的に、周辺部52を有する制御された結合領域50があって、ここでは、高温加工、例えば、600℃以上の温度での加工の後でさえもキャリア10と薄シート20が連結するが、互いに分離していてもよい。10個の制御された結合領域50が
図6に示されるが、1を含むいずれの適切な数で提供されてもよい。上記実施例2a、2e、3a、3b、4c、4dおよび4eによって例示される材料および結合表面熱処理を含む表面変性層30は、キャリア10と薄シート20との間で制御された結合領域50を提供するために使用されてもよい。具体的には、これらの表面変性層は、キャリア10または薄シート20のいずれかにおいて制御された結合領域50の周辺部52内に形成されてもよい。したがって、結合領域40において共有結合を形成するため、またはデバイス加工の間のいずれかで物品2が高温で加工される場合、周辺部52が境界となる領域内で、キャリア10と薄シート20との間の制御された結合が提供されることができるが、分離力は、(薄シートまたはキャリアに破滅的なダメージを生じることなく)この領域で薄シートおよびキャリアを分離してもよく、なお、薄シートおよびキャリアは、超音波加工を含む加工の間、剥離しない。表面変性層およびいずれかの関連する熱処理によって提供される、本出願の制御された結合は、したがって、特許文献1のキャリア概念に改善を加えることが可能である。具体的には、特許文献1のキャリアは、それらの結合周囲および非結合中心領域によって約600℃以上の高温加工を含むFPD加工に耐えることが実証されたが、超音波プロセス、例えば、湿潤洗浄およびレジスト剥離加工は課題が残っていた。具体的には、溶液の圧力波が、その領域において薄ガラスとキャリアとを結合する接着力がほとんどないか、なかったため、非結合領域において薄ガラスにおいて共鳴振動を誘導するように見えた(非結合は特許文献1に記載された)。薄ガラスにおいて定存波が形成される可能性もあり、これらの波は、超音波振動が十分な強度である場合、結合および非結合領域の間の界面において薄ガラスの破壊を導く可能性がある振動を生じ得る。この問題は、薄ガラスとキャリアとの間の間隔を最小化することによって、そして十分な接着、またはこれらの領域50のキャリア10と薄ガラス20との間の制御された結合を提供することによって排除することができる。結合表面の表面変性層(上記実施例2a、2e、3a、3b、4c、4dおよび4eによって例示される材料およびいずれの関連する熱処理も含む)は、制御された結合領域においてこれらの望ましくは振動を回避するために薄シート20とキャリア10との間で十分な結合を提供するように、結合エネルギーを制御する。
【0090】
次いで、周辺部57を有する所望の部分56の抽出の間、周辺部52内の薄シート20の部分は、単に加工の後、そして周辺部57に沿った薄シートの分離の後、キャリア10から分離されてもよい。表面変性層が薄シートとキャリアとの永続的な結合を防ぐために結合エネルギーを制御するため、それらは、温度が600℃以上であるプロセスのために使用されてもよい。もちろん、これらの表面変性層が600℃以上の温度での加工の間、結合表面エネルギーを制御してもよいが、それらは、より低温での加工に耐える薄シートとキャリアとの組合せを製造するために使用されてもよく、そしてそのようなより低温での用途に使用されてもよい。そのうえ、物品の熱加工が400℃以下である場合、いくつかの例において、他のプロセス要件次第で、結合表面エネルギーを制御するこの同様の方法で、実施例2c、2d、4bで例証されるような表面変性層も使用されてよい。
【0091】
結合領域の提供
表面変性層を介した制御された結合の第3の使用(材料およびいずれの関連する結合表面熱処理も含む)は、ガラスキャリアとガラス薄シートとの間で結合領域を提供することである。
図6を参照すると、ガラス薄シート20は、結合領域40によってガラスキャリア10に結合されていてもよい。
【0092】
第3の使用の一実施形態において、結合領域40、キャリア10および薄シート20は、モノリスとしてそれらが作用するように、互いに共有結合していてもよい。追加的に、周辺部52を有する制御された結合領域50があり、ここでは、キャリア10および薄シート20は、加工に耐えるために十分に互いに結合して、そして高温加工、例えば、600℃以上の温度での加工後でさえ、キャリアから薄シートの分離が可能である。したがって、上記の実施例1a、1b、1c、2b、2c、2d、4aおよび4bで例証される表面変性層30(材料および結合表面熱処理を含む)は、キャリア10と薄シート20との間で結合領域40を提供するために使用されてもよい。具体的には、これらの表面変性層および熱処理は、キャリア10上または薄シート20上の制御された結合領域50の周辺部52の外側で形成されてもよい。したがって、物品2が高温で加工されるか、または共有結合を形成するために高温で処理される場合、キャリアおよび薄シート20は、周辺部52が境界となる領域の外側で、結合領域40内で互いに結合する。次いで、周辺部57を有する所望の部分56の抽出の間、薄シート20およびキャリア10を小立方体にすることが望ましい場合、これらの表面変性層および熱処理によって、薄シート20がキャリア10と共有結合して、それらはこの領域でモノリスのように作用するため、物品は線5に沿って分離されてもよい。表面変性層が、薄シートとキャリアとの永久的な共有結合を提供するため、それらは、温度が600℃以上であるプロセスのために使用されてもよい。そのうえ、物品の熱加工、または結合領域40の初期の形成の熱加工が400℃以上であるが、600度未満である場合、実施例4aにおいて材料および熱処理によって例示されるような表面変性層は、この同様の方法で使用されてもよい。
【0093】
第3の使用の第2の実施形態において、結合領域40において、キャリア10および薄シート20は、上記の様々な表面変性層を介して、制御された結合によって互いに結合されていてもよい。追加的に、周辺部52を有する制御された結合領域50があり、ここでは、キャリア10および薄シート20は、加工に耐えるために十分に互いに結合して、そして高温加工、例えば、600℃以上の温度での加工後でさえ、キャリアから薄シートの分離が可能である。したがって、加工が600℃までの温度で実行され、そして領域40において永久的結合または共有結合を有さないことが望ましい場合、上記の実施例2e、3a、3b、4c、4dおよび4eで例証される表面変性層30(材料および結合表面熱処理を含む)は、キャリア10と薄シート20との間で結合領域40を提供するために使用されてもよい。具体的には、これらの表面変性層および熱処理は、制御された結合領域50の周辺部52の外側で形成されてもよく、かつキャリア10上または薄シート20上で形成されてもよい。制御された結合領域50は、結合領域40において形成されたものと同一または異なる表面変性層から形成されてもよい。あるいは、加工が400℃までの温度で実行され、そして領域40において永久的結合または共有結合を有さないことが望ましい場合、上記の実施例2c、2d、2e、3a、3b、4b、4c、4d、4eで例証される表面変性層30(材料および結合表面熱処理を含む)は、キャリア10と薄シート20との間で結合領域40を提供するために使用されてもよい。
【0094】
領域50において制御された結合の代わりに、特許文献1に記載されるような表面粗さが増加した領域であってもよいか、または実施例2aによって例証される表面変性層によって提供されてもよい非結合領域が領域50にあってもよい。
【0095】
バルクアニールまたはバルク加工に関して
結合を制御する上記の方法の第4の使用は、ガラスシートの積層のバルクアニールに関する。アニールは、ガラスの圧密を達成する熱的な方法である。圧密には、ガラス軟化点未満であるが、その後の加工ステップにおいて達成される最大温度より高い温度までガラス体を再加熱することが関与する。これは、その後の加工の間よりも、その後の加工の前に、ガラスにおける構造再編成および寸法緩和を達成する。その後の加工より前のアニールは、高温環境を受けた後でも多くの層から製造された構造が、非常に厳しい耐性を有するように配列される必要があるフラットパネルディスプレイデバイスの製造の場合のように、その後の加工の間のガラス体における正確な配列および/または平坦さを維持するために有利である。ガラスが1つの高温加工において圧縮する場合、高温プロセスの前にガラスの上へ析出された構造の層は、高温プロセスの後に析出される構造の層によって、正しく配列され得ない。
【0096】
ガラスシートを積層して圧縮することは、経済的に魅力的である。しかしながら、これは、定着を防ぐため、隣接するシートを交互配置することまたは分離することを強制する。同時に、光学的品質または純粋な表面仕上げを有する極めて平坦なシートを維持することは有利である。追加的に、ガラスシートの特定の積層に関して、例えば、小さい表面積を有するシートに関して、シートが個々に利用され得るように、アニール
処理の後、それらが(例えば剥離によって)互いから分離することなく、単位として容易に移動させ得るように、アニール
処理の間、ガラスシートを一緒に「定着する」ことは有利であり得る。あるいは、ガラスシートの積層をアニールすることは有利であり得、ここでは、ガラスシートの選択されたものが、互いに永久的に結合することが防がれると同時に、ガラスシートの他のもの、またはそれらの他のガラスシートの一部、例えば、それらの周辺部が互いに永久的に結合することを可能にする。別の代替として、バルクで、積層中のシートの選択された隣接する対の周辺部を選択的に永久結合するために、ガラスシートを積層することは有利であり得る。ガラスシート間での結合を制御する上記の方法は、上記のバルクアニールおよび/または選択的結合を達成するために使用されてもよい。隣接するシートの間のいずれの特定の界面においても結合を制御するため、その界面に面する主要面において少なくとも1種の表面変性層が使用されてもよい。
【0097】
選択された領域(例えば、周辺部で)のバルクアニールまたはバルク永久結合のために適切なガラスシートの積層の一実施形態は、
図7および8を参照して記載される。式中、
図7は、ガラスシート770〜772の積層760の概略側面図であり、
図8は、さらなる説明の目的のためのその分解図である。
【0098】
ガラスシートの積層760は、ガラスシート770〜772、およびガラスシート770〜772間の結合を制御するための表面変性層790を含んでもよい。追加的に、積層760は、積層の上部および底部に配置されたカバーシート780、781を含んでもよく、そしてカバーと隣接するガラスシートの間に表面変性層790を含んでもよい。
【0099】
図8に示すように、ガラスシート770〜772のそれぞれは、第1の主要表面776および第2の主要表面778を含む。ガラスシートは、いずれかの適切なガラス材料、例えば、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラスまたはアルミノボロシリケートガラスから製造されてもよい。追加的に、ガラスはアルカリ含有であっても、またはアルカリを含有しないものであってもよい。ガラスシート770〜772のそれぞれは、同一組成であってもよく、またはシートは異なる組成のものであってもよい。さらにガラスシートは、いずれかの適切な種類であってもよい。すなわち、例えば、ガラスシート770〜772は、上記されたような全てのキャリアであってもよく、上記されたような全ての薄シートであってもよく、または交互にキャリアおよび薄シートであってもよい。バルクアニールが、キャリアに関して薄シートとは異なる時間−温度サイクルを必要とする場合、キャリアの積層、および薄シートの別の積層を有することは有利である。あるいは、正しい表面変性層材料および配置によって、交互のキャリアおよび薄シートの積層を有することは望ましくあり得、それによって、隣接する物品を互いから分離する能力を維持すると同時に、キャリアおよび薄シートの所望の対、すなわち、物品を形成するものが、その後の加工のために、バルクにおいて互いに共有結合し得る。なおさらに、いずれかの適切な数のガラスシートが積層にあってもよい。すなわち、3枚のガラスシート770〜772のみが
図7および8に示されるが、いずれかの適切な数のガラスシートが積層760に含まれてもよい。
【0100】
いずれの特定の積層760においても、いずれかの1つのガラスシートも、表面変性層を含まなくてもよく、1つの表面変性層または2つの表面変性層を含んでもよい。例えば、
図8に示されるように、シート770は、表面変性層を含まず、シート771は、その第2の主要表面778において1つの表面変性層790を含み、そしてシート772は、2つの表面変性層790を含み、そのような表面変性層の1つはその主要表面776、778のそれぞれにある。
【0101】
カバーシート780、781は、(時間および温度に関してのみならず、例えば、脱気などの他の関係する考慮すべき問題に関しても)所与のプロセスの間の時間−温度サイクルに適切に耐えるいずれの材料であってもよい。有利には、カバーシートは加工されるガラスシートと同一の材料から製造されてもよい。カバーシート780、781が存在し、それらが所与の時間−温度サイクルを通して積層する時にガラスシートと望ましくなく結合する材料から製造される場合、表面変性層790は、ガラスシート771とカバーシート781との間および/またはガラスシート772とカバーシート780との間で適切であるように含まれてもよい。カバーとガラスシートとの間で存在する場合、表面変性層は、カバー(カバー781および隣接するシート771と一緒に示される)の上にあってもよく、ガラスシート(カバー780およびシート772と一緒に示される)の上にあってもよく、あるいはカバーおよび隣接するシート(図示せず)の上にあってもよい。あるいはカバーシート780、781が存在するが、隣接するシート772、772と結合しない材料で製造される場合、表面変性層790がその間に存在する必要はない。
【0102】
積層において隣接するシート間に界面がある。例えば、ガラスシート770〜772の隣接するものの間で、界面は画定され、すなわち、シート770とシート771との間の界面791およびシート770とシート772との間の界面792がある。追加的に、カバーシート780、781が存在する場合、シート772とカバー780との間の界面794と同様に、カバー781とシート771との間に界面793がある。
【0103】
隣接するガラスシートの間の所与の界面791、792において、またはガラスシートとカバーシートとの間の所与の界面793、794において結合を制御するため、表面変性層790が使用されてもよい。例えば、示されるように、それぞれの界面791、792において、その界面に面する主要面の少なくとも1つにおいて表面変性層790が存在する。例えば、界面791に関して、ガラスシート771の第2の主要面778は、シート771および隣接するシート770の間で結合を制御するために、表面変性層790を含む。示されないが、シート770の第1の主要面776は、シート771との結合を制御するためのその上の表面変性層790を含むこともでき、すなわち、いずれかの特定の界面にも面する主要面のそれぞれに表面変性層があってもよい。
【0104】
いずれかの所与の界面791〜794における特定の表面変性層790(およびいずれかの関連する表面変性処理、例えばその表面への特定の表面変性層の適用より前の特定の表面における熱処理、または表面変性層が接触してもよい表面の表面熱処理)は、隣接するシートの間で結合を制御し、それによって、積層760が受ける所与の時間−温度サイクルに関して望ましい結果を達成するために、その特定の界面791〜794に面する主要面776、778に関して選択されてもよい。
【0105】
ガラスシート770〜772の積層を400℃までの温度でバルクアニールし、そしてアニール
処理の後、それぞれのガラスシートを互いから分離することが望ましい場合、いずれの特定の界面、例えば、界面791における結合は、いずれかの関連する表面調製と一緒に、実施例2a、2c、2d、2e、3a、3bまたは4b〜4eのいずれか1つによる材料を使用して制御することができる。より詳しくは、シート770の第1の表面776は、表2〜4の「薄ガラス」として処理されるのに対して、シート771の第2の表面778は、表2〜4の「キャリア」として処理されるか、またはその逆である。400℃までの温度を有する適切な時間−温度サイクルは、次いで、積層を通して必要な時間−温度を達成するために、所望の圧密の程度、積層中のシートの数、ならびにシートのサイズおよび厚さに基づき選択されることができる。
【0106】
同様に、ガラスシート770〜772の積層を600℃までの温度でバルクアニールし、そしてアニール
処理の後、それぞれのガラスシートを互いから分離することが望ましい場合、いずれの特定の界面、例えば、界面791における結合は、いずれかの関連する表面調製と一緒に、実施例2a、2e、3a、3b、4c、4d、4eのいずれか1つによる材料を使用して制御することができる。より詳しくは、シート770の第1の表面776は、表2〜4の「薄ガラス」として処理されるのに対して、シート771の第2の表面778は、表2〜4の「キャリア」として処理されるか、またはその逆である。600℃までの温度を有する適切な時間−温度サイクルは、次いで、積層を通して必要な時間−温度を達成するために、所望の圧密の程度、積層中のシートの数、ならびにシートのサイズおよび厚さに基づき選択されることができる。
【0107】
さらに、シートおよびそれらの各対の間の表面変性層の積層を適切に構成することによって、バルクアニールおよびバルク物品形成を実行することが可能である。400℃までの温度でガラスシート770〜772の積層をバルクアニールし、次いで、隣接するシートの対をバルク中で互いに共有結合し、物品2を形成する場合、適切な材料および関連する表面調製は、結合を制御するために選択することができる。例えば、周辺部(または他の所望の結合領域40)で、物品2へと形成されるガラスシートの対、例えば、シート770および771の間の界面において結合することは、(i)シート770、771の周辺部で(または他の所望の結合領域40)、いずれかの関連する表面調製と一緒に、実施例2c、2d、4bのいずれか1つによる材料;および(ii)シート770、771の内部領域で(すなわち、(i)で処理された周辺部の領域内部、または他からの1つのシートの分離が望ましい所望の制御された結合領域50において)、いずれかの関連する表面調製と一緒に、実施例2a、2e、3a、3b、4c、4d、4eのいずれか1つによる材料を使用して制御可能である。この場合、制御された結合領域50におけるデバイス加工は、600℃より高い温度で実行することができる。
【0108】
材料および熱処理は、互いとの適合性のために、適切に選択することができる。例えば、材料2c、2dまたは4bのいずれも、制御された結合領域のための実施例2aによる材料と一緒に、結合領域40のために使用することができる。あるいは、結合領域および制御された結合領域のための熱処理は、隣接する領域における所望の結合の程度に悪影響を与える1つの領域における熱処理の影響を最小化するために、適切に制御することができる。
【0109】
積層におけるガラスシートに関して、表面変性層790および関連する熱処理を適切に選択した後、それらシートの積層を適切に配置することができ、次いで、400℃まで加熱して、積層中の全てのシートを、互いに永久的に結合することなく、バルクアニールすることができる。次いで、積層を600℃まで加熱し、隣接するシートの対の所望の結合領域において共有結合を形成し、結合領域および制御された結合領域のパターンを有する物品2を形成することができる。物品2を形成するために、結合領域40によって共有結合するシートの1対、および別の隣接する物品2を形成するそのようなシートの別の対の間の界面における結合は、隣接する物品2が互いに共有結合しないように、実施例2a、2e、3a、3b、4c、4d、4eの材料および関連する熱処理によって制御することができる。隣接する物品の間で結合を制御するこの同様の方法で、物品と、積層に存在するいずれかのカバーシートとの間の結合を制御することができる。
【0110】
なおさらに、上記と同様に、予めその同一積層760をアニールすることなく、バルクにおいて積層760から物品2を形成することが可能である。その代わりに、バルクにおいて物品を製造するため、積層において所望の制御された結合のために、それらを構成する前に、シートを別々にアニールすることができるか、または別の積層においてアニールして、それらから分離することができる。上記の方法のバルクアニール、次いで、全く同一の積層からのバルクにおける物品の形成から、バルクアニールは省略される。
【0111】
界面791において結合を制御する方法のみが上記で詳細に説明されたが、当然のことながら、界面792において、あるいは積層に3枚より多いガラスシートがある場合、またはガラスシートに望ましくなく結合するカバーシートがある場合のように、特定の積層に存在し得る他のいずれかの界面のためにも同様に行われてよい。さらに、存在するいずれの界面791、792、793、794でも、結合を制御する同一の方法が使用されてもよいが、所望の結合の種類に関して、同一または異なる結果を生じるために、結合を制御する上記の方法の異なるものが、異なる界面で使用されてもよい。
【0112】
上記のバルクアニール、またはバルクにおいて物品2を形成するプロセスにおいて、HMDSが界面において結合を制御するための材料として使用され、そしてHMDSが積層の外側の周辺部に曝露される場合、HMDSの領域における共有結合を防ぐことが望ましい場合、約400℃より高い加熱は酸素を含まない雰囲気で実行されるべきである。すなわち、HMDSが、(約400℃より高い温度で)HMDSを酸化するために十分な量の雰囲気中の酸素に曝露される場合、HMDSが酸化されたいずれかのそのような領域における結合は、隣接するガラスシート間で共有結合になる。他のアルキル炭化水素シラン、例えば、エチル、プロピル、ブチル、またはステリルシランは、同様に、高温、例えば、400℃より高い温度での酸素への暴露によって影響を受ける可能性がある。同様に、表面変性層のために他の材料を使用する場合、バルクアニールの環境は、アニールの時間−温度サイクルの間に材料が分解しないように選択されるべきである。本明細書で使用される場合、酸素を含まないとは、体積で1000ppm未満、より好ましくは体積で100ppm未満の酸素濃度を意味し得る。
【0113】
シートの積層がバルクアニールされたら、個々のシートを積層から分離してもよい。個々のシートは、表面変性層790を除去するために、(例えば、酸素プラズマ、400℃以上の温度における酸素環境における加熱、または化学的酸化、SC1またはSC2によって)処理することができる。個々のシートは、所望により、例えば、電子デバイス基材、例えば、OLED、FPDまたはPVデバイスとして使用することができる。
【0114】
バルクアニールまたはバルク加工の上記方法は、経済的な方法で清浄なシート表面を維持することの利点を有する。より詳しくは、シートは、クリーンルームアニーリングレアの場合のように、開始から終了まで清浄な環境に保持されることは必要とされない。その代わりに、積層を清浄な環境で形成し、次いで、シート間に流体粒がないため、シート表面が粒子で汚染されることなく、標準的なアニーリングレア(すなわち、清浄さは制御されないもの)において加工することができる。したがって、シート表面は、シートの積層がアニールされる環境から保護される。アニールの後、シートはいくらかの程度の接着を維持し、シートにダメージを与えることなく十分な力において互いになお分離可能なままであるため、(同一または異なる設備の)さらなる加工領域へ、シートの積層を容易に輸送することができる。すなわち、(例えば)ガラス製造業者は、ガラスシートの積層を組み立てて、アニールし、次いで、積層としてシートを輸送することができるが、それらは輸送の間一緒のままであり(輸送時に分離するおそれがない)、それらの目的地に到達した時に、シートは、シートを個別に、またはより小さい群で使用し得る顧客によって積層から分離され得る。分離が必要であれば、シートの積層を再び清浄な環境において加工することができる(必要であれば、積層の洗浄後)。
【0115】
バルクアニールの実施例
ガラス基板は、フュージョンドロープロセスから受取ったまま使用された。フュージョンドローガラス組成は(モル%で):SiO2(67.7)、Al2O3(11.0)、B2O3(9.8)、CaO(8.7)、MgO(2.3)、SrO(0.5)であった。7枚の厚さ0.7mm×直径150mmのフュージョンドローガラス基板は、HFを使用する深さ200nmのフィデューシャル/バーニアを用いて、リソグラフィ法によってパターン化された。表面変性層としての2nmのプラズマ析出フルオロポリマーは、全てのガラス基板の全ての結合表面上でコーティングされ、すなわち、別の基板に面する基板のそれぞれの表面は、コーティングされ、それぞれのシート表面の得られた表面エネルギーは、約35mJ/m
2であった。7枚のコーティングされた個々のガラス基板を一緒に配置して、単一の厚い基板(「ガラス積層」と記載される)を形成した。ガラス積層は、15分間かけて30℃〜590℃の範囲の窒素パージされた管炉でアニールされ、30分間590℃で保持され、次いで、50分間かけて約230℃まで冷却され、次いで、炉からガラス積層を取り出し、約10分間、約30℃の室温まで冷却した。冷却後、基材を炉から取り出し、レイザーウェッジを使用して、個々のシートへと容易に分離した(すなわち、試料は全体的にも局所的にも永久的に結合していなかった)。圧密は、ガラスフィデューシャルをアニールされていない石英参照と比較することによって、各個の基板上で測定された。個々の基板が、約185ppm圧縮することが見出された。個々の試料(一緒に積層されていない)としての2枚の基板に、上記の第2のアニールサイクル(590℃/30分保持)を行った。圧密を再び測定し、そして基板は、第2の熱処理のため、10ppm未満(実際には0〜2.5ppm)までさらに圧縮することが見出された(最初のガラス寸法と比較しての第2の熱処理の後のガラス寸法の変化から第1の熱処理の後のガラス寸法の変化を差し引く)。このように、本発明者らは、個々のガラスシートが、コーティング、積層、圧縮を達成するための高温における熱処理、冷却、個々のシートへの分離が可能であり、かつ第2の熱処理後、10ppm未満、さらには5ppm未満の寸法変化(第1の熱処理後のそれらの寸法と比較して)を有することを実証した。
【0116】
上記アニールの実施例における炉は窒素パージされるが、アニールの炉は、アニール温度および特定の環境におけるこれらの温度における表面変性層材料の安定性次第で、空気、アルゴン、酸素、CO
2またはそれらの組合せを含む他の気体でパージされてもよい。
【0117】
追加的に、示されないが、ガラスは、シートの代わりに、スプールでアニールされてもよい。すなわち、適切な表面変性層はガラスリボンの片面または両面で形成されてもよく、次いで、リボンは巻き取られる。全ロールは、シートに関して上記されたものと同一の処理を受けることができ、その時、全スプールのガラスは、ガラスの1ラップが隣接するものに定着することなくアニールされる。ロールを広げると、表面変性層は、いずれかの適切なプロセスによって除去されてもよい。
【0118】
脱気
典型的なウエハ結合用途で使用されるポリマー接着剤は、一般に厚さ10〜100マイクロメートルであって、それらの温度限界またはその付近で、それらの質量の約5%を失う。厚いポリマー膜から放出されるそのような材料に関して、質量分析によって、質量損失または脱気の量を定量化することは容易である。他方では、厚さ10nm以下の範囲にある薄い表面処理、例えば、プラズマポリマーまたは上記の自己集合単分子層表面変性層、ならびに熱分解されたシリコーン油の薄層からの脱気を測定することはより困難である。そのような材料に関しては、質量分析は十分に感応性でない。しかしながら、脱気を測定するための多くの他の方法がある。
【0119】
少量の脱気を測定する第1の方法は、表面エネルギー測定に基づき、そして
図9を参照して記載される。この試験を実行するために、
図9に示す設備が使用されてもよい。その上に試験されるべき表面変性層を有する第1の基板またはキャリア900は、表面902、すなわち、組成および厚さにおいて試験される表面変性層30に相当する表面変性層を示す。第2の基板またはカバー910は、その表面912が、キャリア900の表面902の付近にあるが、それとは接触しないように配置される。表面912は、コーティングされていない表面、すなわち、むきだしの材料の表面であり、それからカバーが製造される。スペーサー920は、互いに間隔をあけた関係でそれらを保持するために、キャリア900とカバー910との間で様々な点で配置される。スペーサー920は、一方から他方への移動が可能となるように、カバー910をキャリア900から分離するために十分厚いが、試験の間、表面902および912におけるチャンバー雰囲気からの汚染の量を最小化するように薄くなければならない。キャリア900、スペーサー920およびカバー910は、一緒に試験物品901を形成する。
【0120】
試験物品901の組み立てる前に、むきだしの表面912の表面エネルギーは、表面902、すなわち、その上に提供される表面変性層を有しているキャリア900の表面のエネルギーのように測定される。
図10に示される、極性および分散成分の両方の表面エネルギーは、S.Wu(1971)によって開発された理論モデルを、3つの試験液体、水、ジヨードメタンおよびヘキサデカンの3つの接触角に適合させることで測定された。(参照:S.Wu,J.Polym.Sci.C,34,19,1971)。
【0121】
組み立てた後、試験物品901を加熱チャンバー930に配置し、時間−温度サイクルを通して加熱する。加熱は、気圧で、そして流動N2気体下、すなわち、1分あたり2標準リットルの速度で矢印940の方向に流動する気体下で実行される。
【0122】
加熱サイクルの間、表面902の変化(例えば、蒸発、熱分解、分解、重合、キャリアとの反応および脱湿潤を含む表面変性層への変化)は、表面902の表面エネルギーの変化によって明らかである。表面902自体の表面エネルギーの変化は、表面変性層が脱気したことを必ずしも意味しないが、その温度において、その特徴が、例えば、上記の機構のために変化するため、材料の一般的な不安定性を示す。したがって、表面902の表面エネルギーの変化がより少ないほど、表面変性層はより安定である。他方では、表面902に対する表面912の近さのため、表面902から脱気されるいずれの材料も、表面912において収集されて、表面912の表面エネルギーを変化させる。したがって、表面912の表面エネルギーの変化は、表面902に存在する表面変性層の脱気の代用である。
【0123】
したがって、脱気のための1つ試験は、カバー表面912の表面エネルギーの変化を使用する。具体的には、10mJ/m
2以上の表面912の表面エネルギーの変化がある場合、脱気が生じている。この大きさの表面エネルギーの変化は、膜接着の損失または材料特性およびデバイス性能の悪化を導く可能性のある汚染と一致する。5mJ/m
2以下の表面エネルギーの変化は、表面エネルギー測定の反復および表面エネルギーの不均質に近い。この小さい変化は、最小限の脱気と一致する。
【0124】
図10の結果を生じる試験の間、キャリア900、カバー910およびスペーサー920は、Corning Incorporated,Corning,NYから入手可能なアルカリを含まないアルミノボロシリケートディスプレイグレードガラスであるEagle XGガラス製であるが、それが必要ではない場合もある。キャリア900およびカバー910は、直径150mm、厚さ0.63mmであった。一般に、脱気試験が望ましい場合、キャリア910およびカバー920は、それぞれ、キャリア10および薄シート20と同一材料製である。この試験の間、厚さ0.63mm、幅2mm、および長さ8cmのシリコンスペーサーによって、表面902および912の間で、0.63mmの間隔が形成される。この試験の間、チャンバー930は、9.2℃/分の速度で室温から試験限界温度まで循環され、試験限界温度で「アニール時間」としてグラフに示される様々な時間で保持され、次いで、炉速度で200℃まで冷却されるMPT−RTP600s急速熱加工装置に組み込まれた。オーブンが200℃まで冷却された後、試験物品を取り出し、そして試験物品が室温まで冷却された後、それぞれの表面902および912の表面エネルギーを再び測定した。したがって、例証として、カバー表面エネルギーの変化に関するデータを使用して、450℃の限界温度まで試験した材料#1の線1003に関して、データは以下の通りに収集された。0分のデータポイントは、75mJ/m2(1平方メートルあたりのミリジュール)の表面エネルギーを示し、これは、むきだしのガラスの表面エネルギーであり、すなわち、時間−温度サイクルはまだ実行されていなかった。1分のデータポイントは、以下の通りに実行された時間−温度サイクルの後に測定された表面エネルギーを示す:物品901(表面902を示すキャリア900上で表面変性層として使用された材料#1を有する)を、室温および気圧において加熱チャンバー930に配置し、チャンバーを、1分あたり2標準リットルのN2気体流を用いて、1分あたり9.2℃の速度で、450℃の試験限界温度まで加熱し、そして1分間450℃の試験限界温度で保持し、次いで、チャンバーを、1分あたり1℃の速度で300℃まで冷却させて、次いで、物品901をチャンバー930から取り出し、次いで、(N2流雰囲気なしで)物品を室温まで冷却させ、次いで、表面912の表面エネルギーを測定し、線1003上で1分に対する点としてプロットした。次いで、材料#1の残りのデータポイント(線1003、1004)、ならびに材料#2(線1203、1204)、材料#3(線1303、1304)、材料#4(線1403、1404)、材料#5(線1503、1504)および材料#6(線1603および1604)のデータポイントを、適切であるように450℃または600℃の試験限界温度において保持時間に相当するアニール時間の分を用いて同様の方法で決定した。相当する表面変性層材料(材料#1〜6)の表面902の表面エネルギーを表す、線1001、1002、1201、1202、1301、1302、1401、1402、1501、1502、1601および1602のデータポイントは、表面902の表面エネルギーが、それぞれの時間−温度サイクルの後に測定されたことを除き、同様の方法で決定された。
【0125】
上記の組み立てプロセス、および時間−温度サイクルは、以下に明らかにされる6つの異なる材料に関して実行され、そして結果を
図10のグラフに示す。6つの材料のうち、材料#1〜4は、上記の表面変性層材料に相当する。材料#5および#6は、比較例である。
【0126】
材料#1は、CHF3−CF4プラズマ重合フルオロポリマーである。この材料は、上記実施例3bの表面変性層と一致する。
図10で示すように、線1001および1002は、キャリアの表面エネルギーが有意に変化しなかったことを示す。したがって、この材料は、450℃〜600℃の温度で非常に安定性である。追加的に、線1003および1004で示すように、カバーの表面エネルギーも有意に変化せず、すなわち、変化は5mJ/m
2以下である。したがって、450℃〜600℃で、この材料に関する脱気はなかった。
【0127】
材料#2は、フェニルシランであり、フェニルトリエトキシシランの1%トルエン溶液から析出され、そして190℃で30分間、真空オーブンで硬化された自己集合単分子層(SAM)である。この材料は、上記の実施例4cの表面変性層と一致する。
図10で示すように、線1201および1202は、キャリアにおける表面エネルギーのいくらかの変化を示す。上記したように、これは表面変性層のいくらかの変化を示し、そして比較上、材料#2は、材料#1より安定性が低い。しかしながら、線1203および1204で示されるように、キャリアの表面エネルギーの変化は5mJ/m
2以下であり、表面変性層への変化が脱気をもたらさなかったことを示す。
【0128】
材料#3は、ペンタフルオロフェニルシランであり、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシランの1%トルエン溶液から析出され、そして190℃で30分間、真空オーブンで硬化されたSAMである。この材料は、上記の実施例4eの表面変性層と一致する。
図10で示すように、線1301および1302は、キャリアにおける表面エネルギーのいくらかの変化を示す。上記したように、これは表面変性層のいくらかの変化を示し、そして比較上、材料#3は、材料#1より安定性が低い。しかしながら、線1303および1304で示されるように、キャリアの表面エネルギーの変化は5mJ/m
2以下であり、表面変性層への変化が脱気をもたらさなかったことを示す。
【0129】
材料#4は、140℃でYES HMDSオーブンにおいて蒸気から析出されたヘキサメチルジシラザン(HMDS)である。この材料は、上記の表2の実施例2bの表面変性層と一致する。
図10で示すように、線1401および1402は、キャリアにおける表面エネルギーのいくらかの変化を示す。上記したように、これは表面変性層のいくらかの変化を示し、そして比較上、材料#4は、材料#1より安定性が低い。追加的に、材料#4のキャリアの表面エネルギーの変化は、材料#2および#3のいずれに関する変化よりも大きく、比較上、材料#4は、材料#2および#3より安定性が低いことを示す。しかしながら、線1403および1404で示されるように、キャリアの表面エネルギーの変化は5mJ/m2以下であり、表面変性層への変化が、カバーの表面エネルギーに影響を及ぼす脱気をもたらさなかったことを示す。しかしながら、これはHMDSが脱気する方法と一致する。すなわち、HMDSは、カバーの表面エネルギーに影響を及ぼさず、かついくつかの電子機器製造装置および/または加工に影響を及ぼし得ないアンモニアおよび水を脱気する。他方では、脱気の生成物が薄シートとキャリアとの間で捕捉される場合、第2の脱気試験に関連して以下に記載されるような他の問題を生じ得る。
【0130】
材料#5は、グリシドキシプロピルシランであり、グリシドキシプロピルトリエトキシシランの1%トルエン溶液から析出され、そして190℃で30分間、真空オーブンで硬化されたSAMである。これは、比較例材料である。線1501および1502で示すように、キャリアの表面エネルギーの変化は比較的少ないが、線1503および1504で示すように、カバーの表面エネルギーの有意な変化がある。
図10を参照されたい。すなわち、材料#5はキャリア表面において比較的安定性であったが、それは実際には、カバー表面上へ有意な量の材料を脱気し、それによって、カバー表面エネルギーは、10mJ/m
2以上変化した。600℃での10分の終了時における表面エネルギーは10mJ/m
2の範囲内であるが、この時の変化は10mJ/m
2より高い。例えば、1分および5分のデータポイントを参照されたい。理論に拘束されることを望まないが、5分から10分への表面エネルギーのわずかな上昇は、おそらく、カバー表面から分解し、落下する、脱気したいくらかの材料による。
【0131】
材料#6は、DC704、キャリア上へ5mlのDow Corning 704拡散ポンプ油テトラメチルテトラフェニルトリシロキサン(Dow Corningから入手可能)を分配して、500℃のホットプレートに空気中で8分間配置することによって調製されるシリコーンコーティングである。試料調製の完了は、可視の発煙の終了によって示される。上記の方法で試料を調製した後に、上記の脱気試験を実行した。これは、比較例材料である。
図10で示すように、線1601および1602は、キャリア上の表面エネルギーのいくらかの変化を示す。上記したように、これは表面変性層のいくらかの変化を示し、そして比較上、材料#6は、材料#1より安定性が低い。追加的に、線1603および1604で示されるように、キャリアの表面エネルギーの変化は10mJ/m
2以上であり、著しい脱気を示す。とりわけ、450℃の試験−限界温度において、10分のデータポイントは、約15mJ/m
2の表面エネルギーの減少を示し、そして、1分および5分の点に関しては、さらに大きい表面エネルギーの減少が示される。同様に、600℃の試験−限界温度サイクルの間のカバーの表面エネルギーの変化、カバーの表面エネルギーの減少は、10分のデータポイントで約25mJ/m
2であり、5分よりいくぶん大きく、そして1分よりいくぶん小さかった。要するに、脱気の有意な量は、試験の全範囲において、この材料に関して示された。
【0132】
有意に、材料#1〜4に関して、時間−温度サイクルを通しての表面エネルギーは、カバー表面は、むきだしのガラスの表面エネルギーと一致する表面エネルギーのままであり、すなわち、キャリア表面から脱気される材料は収集されない。材料#4の場合、表2と関連して示されるように、キャリアおよび薄シート表面が調製される方法が、物品(表面変性層を介してキャリアと一緒に結合された薄シート)がPD加工に耐えるかどうかということにおいて大きな差異を生じる。したがって、
図10に示される材料#4の実施例は脱気しないが、この材料は、表2の説明と関連して示されるように、400℃または600℃試験に耐え得るか、または耐え得ない。
【0133】
少量の脱気を測定する第2の方法は、組みたてられた物品、すなわち、表面変性層を介して薄シートがキャリアに結合したものに基づき、脱気を決定するためにパーセントの気泡領域の変化を使用する。すなわち、物品の加熱の間、キャリアと薄シートの間で形成された気泡は、表面変性層の脱気を示す。第1の脱気試験に関連して上記された通り、非常に薄い表面変性層の脱気を測定することは困難である。この第2の試験において、薄シート下での脱気は、薄シートとキャリアとの間の強い接着によって制限され得る。それにもかかわらず、厚さ10nm以下の層(例えば、プラズマ重合材料、SAM、および熱分解されたシリコーン油表面処理)は、それらのより小さい絶対質量損失にもかかわらず、熱処理の間、気泡を生じ得る。薄シートとキャリアとの間の気泡の形成は、パターン生成、フォトリソグラフィー加工および/または薄シート上へのデバイス加工の間の配列に問題を生じ得る。追加的に、薄シートとキャリアとの間の結合領域の境界線での気泡は、1つのプロセスが下流プロセスを汚染することから、プロセス流体に問題を生じ得る。5%以上の気泡領域の変化は、有意であり、脱気を示し、望ましくない。他方では、1%以下の気泡領域の変化は重要ではなく、そして脱気がなかったことを示す。
【0134】
手動による結合によるクラス1000クリーンルームにおける結合された薄ガラスの平均気泡領域は1%である。結合されたキャリアの%気泡は、キャリア、薄ガラスシートおよび表面調製の清潔さの関数である。これらの初期の欠陥は、熱処理の後、気泡成長のための核形成部位として作用するため、1%未満の熱処理時の気泡領域のいずれの変化も試料調製の可変性の範囲内である。この試験を実行するために、トランスパレンシーユニットを備えた商業的に入手可能なデスクトップ型スキャナ(Epson Expression 10000XL Photo)を使用して、結合の直後に薄シートおよびキャリアを結合する領域の第1のスキャンイメージを作成した。この部分は、508dpi(50マイクロメートル/ピクセル)および24bit RGBを使用する標準Epsonソフトウェアを使用してスキャンした。イメージ加工ソフトウェアは、最初に、必要に応じて、試料の異なる部分のイメージを単一のイメージへとステッチし、そしてスキャナアーティファクトを除去することによってイメージを調製する(スキャナで試料なしで実行される検定標準スキャンを使用することにより)。次いで、結合領域は、閾値化、正孔充填物、浸食/膨張および小塊分析などの標準イメージ加工技術を使用して分析される。より新規のEpson Expression 11000XL Photoが、同様の方法で使用されてもよい。透過モードで、結合領域の気泡はスキャンされたイメージで可視であり、そして気泡領域の値を決定することができる。次いで、気泡領域を、全結合領域(すなわち、薄シートとキャリアとの間の全重複領域)と比較し、全結合領域に対する結合領域における気泡の%領域を算出する。次いで、試料をMPT−RTP600s Rapid Thermal Processingにおいて、窒素雰囲気下、300℃、450℃および600℃の試験−限界温度で、10分まで熱処理した。具体的には、実行される時間−温度サイクルには以下が含まれた:室温および気圧下で物品を加熱チャンバーに挿入し、次いで、チャンバーを、1分あたり9℃の速度で、試験−限界温度まで加熱し、チャンバーを、10分間、試験−限界温度で保持し、次いで、チャンバーを、200℃の炉速度で冷却し、物品をチャンバーから取り出して、室温まで冷却し、次いで、物品に、光学スキャナで2度目のスキャンを行った。第2のスキャンからの%気泡領域は、次いで、上記の通り算出され、第1のスキャンからの%気泡領域と比較して、%気泡領域の変化を決定した(Δ%気泡領域)。上記したように、5%以上の気泡領域の変化は有意であり、脱気を示す。%気泡領域の変化は、最初の%気泡領域における可変性のため、測定基準として選択された。すなわち、ほとんどの表面変性層は、薄シートおよびキャリアが調製された後、およびそれらが接着する前に、取り扱いおよび清潔さのため、第1のスキャンにおいて約2%の気泡領域を有する。しかしながら、変動は材料の間で生じてもよい。第1の脱気試験方法に関して明かにされるものと同一の材料#1〜6は、この第2の脱気試験方法で再び使用された。これらの材料の中でも、材料#1〜4は、第1のスキャンにおいて約2%の気泡領域を示したが、材料#5および#6は、第1のスキャンにおいて有意により大きい気泡領域(すなわち約4%)を示した。
【0135】
第2の脱気試験の結果は、
図11および12に関して記載される。材料#1〜3の脱気試験結果は
図11に示され、材料#4〜6の脱気試験結果は
図12に示される。
【0136】
材料#1の結果は、
図11中、正方形のデータポイントとして示される。図から分かるように、%気泡領域の変化は、300℃、450℃および600℃の試験−限界温度に関して、ゼロに近かった。したがって、材料#1は、これらの温度において脱気を示さない。
【0137】
材料#2の結果は、
図11中、ひし形のデータポイントとして示される。図から分かるように、%気泡領域の変化は、450℃および600℃の試験−限界温度に関して、1未満である。したがって、材料#2は、これらの温度において脱気を示さない。
【0138】
材料#3の結果は、
図11中、三角形のデータポイントとして示される。図から分かるように、材料#1の結果と同様に、%気泡領域の変化は、300℃、450℃および600℃の試験−限界温度に関して、ゼロに近かった。したがって、材料#1は、これらの温度において脱気を示さない。
【0139】
材料#4の結果は、
図12中、円形のデータポイントとして示される。図から分かるように、%気泡領域の変化は、300℃の試験−限界温度に関して、ゼロに近いが、450℃および600℃の試験−限界温度に関して、いくつかの試料ではほぼ1%であり、そして同材料のその他の試料に関して、450℃および600℃の試験限界温度で約5%である。材料#4の結果は非常に相反しており、そして薄シートおよびキャリア表面がHMDS材料との結合のために調製される方法次第である。試料が調製される方法次第で試料が機能する方法は、上記の表2に関して明らかにされるこの材料の実施例および関連する説明と一致する。この材料に関して、450℃および600℃試験−限界温度に関して、ほぼ1%の%気泡領域の変化を有する試料は、上記で明示された分離試験に従って、キャリアからの薄シートの分離を可能にしなかったことに留意すべきである。すなわち、薄シートとキャリアとの間の強い接着は、限定された気泡発生を有し得る。他方では、ほぼ5%の%気泡領域における変化を有する試料は、キャリアからの薄シートの分離を可能にした。すなわち、脱気のない試料は、キャリアと薄シートとを一緒に定着する(キャリアからの薄シートの除去を防ぐ)温度処理後の望ましくない接着増加の結果を有したが、薄シートおよびキャリアの除去を可能にする試料は、脱気の望ましくない結果を有した。
【0140】
材料#5の結果は、三角形のデータポインとして
図12に示される。図から分かるように、%気泡領域の変化は、300℃の試験−限界温度に関して、約15%であり、450℃および600℃のより高い試験−限界温度に関するものよりも十分高い。したがって、材料#5は、これらの温度において著しい脱気を示す。
【0141】
材料#6の結果は、四角形のデータポインとして
図12に示される。図から分かるように、%気泡領域の変化は、300℃の試験−限界温度に関して、2.5%より高く、450℃および600℃の試験−限界温度に関しては5%より高い。したがって、材料#6は、450℃および600℃の試験−限界温度において著しい脱気を示す。
【0142】
結論
上記の本発明の実施形態、特にいずれかの「好ましい」実施形態は、単に可能な実施例であり、単に本発明の様々な原理の明確な理解のために明らかにされているのみであることは強調されるべきである。本発明の趣旨および様々な原理から実質的に逸脱することなく、多くの変更形態および修正形態が上記の本発明の実施形態になされてもよい。全てのそのような修正形態および変更形態は、本明細書において本開示および本発明の範囲内に含まれることが意図され、また以下の請求の範囲によって保護される。
【0143】
例えば、多くの実施形態の表面変性層30は、キャリア10上で形成されるように示されて、検討されるが、代わりに、または加えて、薄シート20上で形成されてもよい。すなわち、実施例4および3に明示される材料は、キャリア10、薄シート20、またはキャリア10および薄シート20の両方に、一緒に結合される面において適用されてよい。
【0144】
さらに、いくつかの表面変性層30は、400℃または600℃の温度での物品2の加工後でさえもキャリア10から薄シート20を除去することが可能であるように、結合強度を制御するものとして記載されたが、もちろん、物品が合格した特定の試験の温度よりも低い温度で物品2を加工すること、そして薄シート20またはキャリア10のいずれにもダメージを与えることなく、キャリア10から薄シート20を除去する同様の能力を達成することが可能である。
【0145】
なおさらに、キャリアおよび薄シートに関して使用するものとして、制御された結合概念が本明細書に記載されたが、特定の状況において、互いにシート(またはそれらの一部分)を引き離すことが望ましい場合、より厚いガラスのシート、セラミック、またはガラスセラミックの間の結合を制御することに適用可能である。
【0146】
なおさらに、ガラスキャリアおよびガラス薄シートに関して有用であるものとして、制御された結合概念が本明細書に記載されたが、キャリアは、他の材料、例えば、セラミック、ガラスセラミックまたは金属製であってもよい。同様に、キャリアに制御可能に結合されたシートは、他の材料、例えば、セラミックまたはガラスセラミック製であってもよい。
【0147】
第1の態様によって、ガラスのアニール方法であって、
各々が2つの主要面を有する複数のガラス層を積層するステップであって、界面が、複数のガラス層において、ガラス層の隣接するものの間で画定され、界面の1つに面する主要面の少なくとも1つに表面変性層が配置されるステップと、
各ガラス層を圧縮するために十分な時間−温度サイクルに、ガラス層の積層を暴露するステップと、
を有してなり、
表面変性層が、時間−温度サイクルを通して、界面の1つを画定する積層におけるガラス層の隣接するものの間の結合を制御するために十分であり、結合が、一方が保持されて、他方が重力を受ける場合に、一方の層が他方から分離しないような力であるように制御されるが、層が、ガラス層の隣接するものの一方が2つ以上の断片に破断することなく分離され得る、ガラスのアニール方法が提供される。
【0148】
第2の態様によって、時間−温度サイクルが、400℃以上であるがガラスシートの歪点より低い温度を含む、態様1の方法が提供される。
【0149】
第3の態様によって、時間−温度サイクルが、600℃以上であるがガラスシートの歪点より低い温度を含む、態様1の方法が提供される。
【0150】
第4の態様によって、表面変性層が、HMDS、プラズマ重合フルオロポリマーおよび芳香族シランの1つである、態様1〜3のいずれか1つの方法が提供される。
【0151】
第5の態様によって、表面変性層が、プラズマ重合フルオロポリマーを含んでなる場合、表面変性層は、プラズマ重合ポリテトラフルオロエチレン、および40%以下のC4F8を有するCF4−C4F8混合物から析出されたプラズマ重合フルオロポリマー表面変性層の1つである、態様4の方法が提供される。
【0152】
第6の態様によって、表面変性層が芳香族シランを含んでなる場合、表面変性層が、フェニルシランである、態様4の方法が提供される。
【0153】
第7の態様によって、表面変性層が芳香族シランを含んでなる場合、表面変性層が、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、および4−ペンタフルオロフェニルトリエトキシシランの1つである、態様4の方法が提供される。
【0154】
第8の態様によって、時間−温度サイクルが無酸素環境で実行される、態様1〜7のいずれか1つの方法が提供される。
【0155】
第9の態様によって、ガラス層の積層が、ガラスのロールシートを含んでなる、態様1〜8のいずれか1つの方法が提供される。