(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記キャパシタが第1キャパシタ及び第2キャパシタにより構成されており、前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタの各々を充電させる際、前記第1キャパシタ、前記第2キャパシタのそれぞれを並列に接続して充電させ、エンジンを始動する際に始動トルクを増大させる場合、前記第1キャパシタと前記第2キャパシタとを直列に接続し、前記バッテリの電圧より高い電圧を発生させる
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の始動発電制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態の構成例を説明するための概略回路図である。
図1に示した始動発電システム1は、始動発電制御装置10と、バッテリBaと、ヒューズFsと、リレーRy1と、リレーRy2と、イグニッションスイッチIGNsと、スタータスイッチSTsとを備える。
【0014】
バッテリBaは直流12V定格の二次電池である。バッテリBaの正極は、ヒューズFsの一方の端子に接続されるとともに、リレーRy2の端子2に接続されている。バッテリBaの負極は、接地されている。ヒューズFsの他方の端子はとリレーRy1の一方の端子に接続されている。リレーRy1の他方の端子はリレーRy2の端子1と電装負荷とに接続されている。
【0015】
リレーRy1はa接点(メーク接点)のリレーであり、コイル無通電時に開路であり、コイル通電時に閉路である。リレーRy2はc接点のリレーであり、コイル無通電時に端子1と端子Cとが閉路であり、コイル通電時に端子2と端子Cとが閉路である。リレーRy2の端子Cは直流端子111に接続されている。リレーRy1のコイルとリレーRy2のコイルとは始動発電制御装置10内の制御部15によって通電制御される。
【0016】
イグニッションスイッチIGNsの一方の端子は、始動発電制御装置10内のダイオードD1を介してヒューズFsとリレーRy1との接続点に接続されるとともに、始動発電制御装置10内のダイオードD3を介して電気二重層キャパシタEDLC(以下、EDLCと呼称)に接続されている。イグニッションスイッチIGNsのその一方の端子は、ダイオードD1のカソードおよびダイオードD3のカソードに接続されている。イグニッションスイッチIGNsの他方の端子は、制御部15の電源端子VccとスタータスイッチSTsの一方の端子に接続されている。スタータスイッチSTsの他方の端子は制御部15に接続されている。イグニッションスイッチIGNsは自動車の電装品をオンまたはオフするためのスイッチであり、スタータスイッチSTsはエンジンを始動するためのスイッチである。
【0017】
始動発電制御装置10は、第1回路11と、第2回路12と、第3回路13と、第4回路15と、ダイオードD1〜D3と、トランジスタTr1およびTr2と、抵抗R1〜R4と、電動発電機ACG1と、電動発電機ACG2と、EDLCとを備える。なお、始動発電制御装置10は、
図1に示したように、電動発電機ACG1と、電動発電機ACG2と、EDLCとを含む構成であってもよいし、
図1に示したものと異なり、電動発電機ACG1と、電動発電機ACG2と、EDLCとを含まない構成であってもよい。また、電動発電機ACG1と、電動発電機ACG2とは、界磁部および電機子鉄心を共通とし、一体として構成されたものであり、1つの電動発電機としてとらえることができる。また、本願では、
図1に示した始動発電制御装置10から、EDLCを除いた構成を始動発電機と呼ぶ。この場合、始動発電機は、電動発電機ACG1と、電動発電機ACG2と、電動発電機ACG1および電動発電機ACG2を制御するための第1回路11、第2回路12、第3回路13、第4回路14、制御部15等とを備えている。
【0018】
電動発電機ACG1と電動発電機ACG2とは、図示していない永久磁石からなる共通の界磁部と、図示していない共通の電機子鉄心とを備える。図示していない界磁部は、複数組のN極の永久磁石およびS極の永久磁石から構成されている。また、共通の電機子鉄心には、電動発電機ACG1が備える多相巻線ACG1−Cと、電動発電機ACG2が備える多相巻線ACG2−Cとが巻かれている。すなわち、電動発電機ACG1と電動発電機ACG2とは、界磁部と、電機子鉄心とを共通に備え、多相巻線ACG1−Cまたは多相巻線ACG2−Cを独立に備えている。また、界磁部は、図示していないエンジンのクランクシャフトに直結されていて、エンジンの回転に同期して回転する。多相巻線ACG1−Cは、巻線U1と巻線V1と巻線W1とをスター結線またはデルタ結線した3相巻線である。多相巻線ACG2−Cは、巻線U2と巻線V2と巻線W2とをスター結線またはデルタ結線した3相巻線である。電動発電機ACG1と電動発電機ACG2とは、制御部15の制御によって、スタータモータ(始動電動機)として動作したり、ACG(交流発電機)として動作したりする。また、電動発電機ACG1(あるいは電動発電機ACG2)は、界磁部の角度を検知するために複数のホールセンサHsを備えている。ホールセンサHsの出力は制御部15へ入力される。
【0019】
第1回路11は、6個のnチャネルMOSFET(金属酸化物電界効果トランジスタ)(以下、MOSFETと記す)(Q1)〜(Q6)を備え、3相ブリッジ直交変換回路を構成する。MOSFET(Q1)〜(Q3)の各ドレインが、正側(ハイサイド)の直流端子111に接続されている。また、MOSFET(Q4)〜(Q6)の各ソースが、負側(ローサイド)の直流端子112に接続されている。直流端子111は、リレーRy2を介してまたはリレーRy2およびリレーRy1を介してバッテリBaに接続される。直流端子112は、接地されている。また、MOSFET(Q1)のソースとMOSFET(Q4)のドレインとが交流端子113に接続されている。また、MOSFET(Q2)のソースとMOSFET(Q5)のドレインとが交流端子114に接続されている。また、MOSFET(Q3)のソースとMOSFET(Q6)のドレインとが交流端子115に接続されている。そして、第1回路11の各交流端子113、114および115には、多相巻線ACG1−Cの巻線U1、V1およびW1の各端部が接続されている。また、MOSFET(Q1)〜(Q6)の各ゲートは、制御部15に接続されている。第1回路11は、制御部15によって、ホールセンサHsの出力に応じて所定のタイミングでオンまたはオフに制御されることで、交流および直流間で双方向に電力を変換する。
【0020】
第2回路12は、6個のMOSFET(Q7)〜(Q12)を備え、3相ブリッジ直交変換回路を構成する。MOSFET(Q7)〜(Q9)の各ドレインが、ハイサイドの直流端子121に接続されている。また、MOSFET(Q10)〜(Q12)の各ソースが、ローサイドの直流端子122に接続されている。直流端子122は、接地されている。また、MOSFET(Q7)のソースとMOSFET(Q10)のドレインとが交流端子123に接続されている。また、MOSFET(Q8)のソースとMOSFET(Q11)のドレインとが交流端子124に接続されている。また、MOSFET(Q9)のソースとMOSFET(Q12)のドレインとが交流端子125に接続されている。そして、第2回路12の各交流端子123、124および125には、多相巻線ACG2−Cの巻線U2、V2およびW2の各端部が接続されている。また、MOSFET(Q7)〜(Q12)の各ゲートは、制御部15に接続されている。第2回路12は、制御部15によって、ホールセンサHsの出力に応じて所定のタイミングでオンまたはオフに制御されることで、交流および直流間で双方向に電力を変換する。
【0021】
第3回路13は、MOSFET(Q13)とMOSFET(Q14)とを備える。MOSFET(Q13)のソースは直流端子111に接続され、ドレインはMOSFET(Q14)のドレインに接続されている。MOSFET(Q14)のソースは直流端子121に接続されている。第3回路13は、MOSFET(Q13)の寄生ダイオードとMOSFET(Q14)の寄生ダイオードとが対向するように直列接続することで、MOSFET(Q13)とMOSFET(Q14)とをオフした場合に、電流を双方向で遮断することができる。MOSFET(Q13)および(Q14)の各ゲートは制御部15に接続されている。第3回路13は、MOSFET(Q13)および(Q14)をオンすることで直流端子111と直流端子121との間を接続し、MOSFET(Q13)および(Q14)をオフすることで直流端子111と直流端子121との間を遮断する。
【0022】
第4回路14は、MOSFET(Q15)を備える。MOSFET(Q15)のドレインは直流端子121に接続され、ソースは直流端子131に接続されている。MOSFET(Q15)の寄生ダイオードのカソードを直流端子121に接続することで、MOSFET(Q15)をオフした場合に、直流端子121から直流端子131へ向かう電流を遮断することができる。この直流端子131にはEDLCの一方の端子が接続されている。MOSFET(Q15)のゲートは制御部15に接続されている。第4回路14は、MOSFET(Q15)をオンすることでEDLCに接続される直流端子131と直流端子121との間を接続し、MOSFET(Q15)をオフすることで直流端子121と直流端子131との間で直流端子121から直流端子131へ向かう電流を遮断する。なお、第4回路14は、第3回路13と同様に2個のMOSFETを備えることで、電流を双方向で接続または遮断する回路としてもよい。
【0023】
制御部15は、電源回路、MOSFETの駆動回路、マイクロコンピュータ等を備えて構成されていて、マイクロコンピュータ等のCPU(中央処理装置)によって所定のプログラムを実行することで各部を制御する。
【0024】
ダイオードD1は、アノードをリレーRy1とヒューズFsとの接続部に接続し、カソードをイグニッションスイッチIGNsの一方の端子とダイオードD2のカソードとダイオードD3のカソードとに接続する。ダイオードD2のアノードは、リレーRy2の端子Cと直流端子111とMOSFET(Q13)のソースとに接続する。ダイオードD3は、アノードを直流端子131とEDLCの一方の端子とMOSFET(Q15)のソースとに接続する。
【0025】
ダイオードD1は、キックスタート時にバッテリBaからイグニッションスイッチIGNsへ電源を供給する配線を介して、電動発電機ACG1等が発電した電力がバッテリBaを充電するために使われないようにするため、当該配線を介して直流端子111からバッテリBaへ向かう電流を遮断する。
【0026】
ダイオードD2は、直流端子111からイグニッションスイッチIGNsへ電源を供給する配線に挿入されていて、電流の向きを直流端子111からイグニッションスイッチIGNsへの向きに限定する。ダイオードD2が無い場合、後述する高トルク対応動作において、EDLCに充電された電装負荷の定格電圧より高い電圧が、電装負荷に印加してしまうことを防止する。
【0027】
ダイオードD3は、バッテリBaが充電状態でEDLCが未充電状態のとき、EDLCからイグニッションスイッチIGNsへ電源を供給する配線を介して、バッテリBaからEDLCに対して充電電流が流れ込まないようにするため、当該配線を介してバッテリBaからEDLCへ向かう電流を遮断する。
【0028】
トランジスタTr1はpnpトランジスタであり、エミッタをリレーRy1とヒューズFsとダイオードD1との接続部に接続し、コレクタを抵抗R1の一端に接続し、そして、ベースを制御部15に接続する。抵抗R1の他端は、抵抗R2の一端と制御部15とに接続されている。抵抗R2の他端は接地されている。制御部15は、バッテリBaの端子電圧を検知する期間にトランジスタTr1をオンし、抵抗R1と抵抗R2とによって分圧された電圧値を信号vb(以下、電圧値vbとも記す)として読み込む。電圧検出をしない期間にトランジスタTr1をオフすることで、バッテリBaからの抵抗R1および抵抗R2を介した放電電流を遮断する。
【0029】
トランジスタTr2はpnpトランジスタであり、エミッタを直流端子131とMOSFET(Q15)とダイオードD3との接続部に接続し、コレクタを抵抗R3の一端に接続し、そして、ベースを制御部15に接続する。抵抗R3の他端は、抵抗R4の一端と制御部15とに接続されている。抵抗R4の他端は接地されている。制御部15は、EDLCの端子電圧を検知する期間にトランジスタTr2をオンし、抵抗R3と抵抗R4とによって分圧された電圧値を信号sc(以下、電圧値scとも記す)として読み込む。電圧検出をしない期間にトランジスタTr2をオフすることで、EDLCからの抵抗R3および抵抗R4を介した放電電流を遮断する。
【0030】
イグニッションスイッチIGNsは、制御部15の電源をオンするためのスイッチである。ユーザがイグニッションスイッチIGNsをオンすると、ダイオードD1を介してバッテリBaから制御部15へ電力が供給される。また、イグニッションスイッチIGNsがオンすると、第1回路11およびダイオードD2を介して電動発電機ACG1が発電した電力が制御部15へ供給される。また、イグニッションスイッチIGNsがオンすると、第2回路12およびダイオードD3を介して電動発電機ACG2が発電した電力が制御部15へ供給される。また、イグニッションスイッチIGNsがオンすると、ダイオードD3を介してEDLCから制御部15へ電力が供給される。
【0031】
EDLCは、上述したように電気二重層キャパシタであり、一端を直流端子131に接続し、他端を接地している。EDLCは、例えば、同一の電気二重層キャパシタを複数直列接続した形態で構成されている。
【0032】
次に、
図1と、
図2〜
図8に示したフローチャートを参照して、始動発電システム1の動作について、制御項目毎に(1)〜(7)の処理に場合分けして説明する。
図2は、始動発電システム1におけるエンジン始動制御フローを示す。
図3は、始動発電システム1におけるキックエンジン始動制御フローを示す。
図4は、始動発電システム1におけるEDLCの充電制御フローを示す。
図5は、始動発電システム1におけるバッテリBaの充電制御フローを示す。
図6は、始動発電システム1におけるEDLCの急速充電制御フローを示す。そして、
図7は、始動発電システム1におけるバッテリBaの急速充電制御フローを示す。
図8は、始動発電システム1における高トルク始動制御フローを示す。
【0033】
(1)リレーRy1およびリレーRy2の初期状態と制御部15および電装負荷への給電について(イグニッションスイッチIGNsをオンした場合):
リレーRy1およびリレーRy2は非動作状態(コイル無通電)における接点位置はリレーRy1は開、リレーRy2は端子1側である。イグニッションスイッチIGNsをオンすることでバッテリBaまたはEDLCからダイオードD1またはダイオードD3経由で制御部15へ給電される。よってバッテリオープン時やバッテリBaの蓄電量が不足している場合はELDCからダイオードD3を経由して制御部15へ給電される。またキックスタートの場合は第1回路11からダイオードD2を経由して電動発電機ACG1の発電電力により制御部15へ給電され動作を開始する。スタータスイッチSTsは電動発電機ACG1および電動発電機ACG2をセルモータとして始動するためのスイッチである。電装負荷(点火、燃料噴射等)へは、リレーRy1とリレーRy2の端子1との間に接続することで、バッテリBaから給電する(リレーRy1をオンする)ことやEDLCから給電する(第3回路13および第4回路14をオンする)ことが可能で、両者の選択は各々の蓄電量により決定される。電装負荷は制御部15からの制御信号によって作動しエンジンを始動するよう動作する。
【0034】
制御部15は、電源Vccの立ち上がり後、所定の初期処理を行った後、
図2のステップS101で、バッテリ蓄電量検出用のトランジスタTr1をオン(ON)するとともに、EDLC蓄電量検出用のトランジスタTr2をオンする。そして、ステップS101で、制御部15は、信号vbと信号scとを読み込む。次に、制御部15は、読み込んだ信号vbの値に基づきバッテリBaの蓄電量を算出するとともに、読み込んだ信号scの値に基づきEDLCの蓄電量を算出する(ステップS101)。
【0035】
次に、制御部15は、スタータスイッチSTsがオンされるまで、
図2に示した処理を待機状態とする(ステップS102で「N」の繰り返し)。スタータスイッチSTsがオンされた場合(ステップS102で「Y」の場合)、制御部15は、ホールセンサHsの出力信号に基づき界磁部すなわちロータの位置がどのステージ(段階)にあるのかを判別する(ステップS103)。次に、制御部15は、ステップS104〜S111においてステップS101で算出されたバッテリBaの蓄電量とEDLCの蓄電量とに基づいて次の(2)〜(4)のいずれかの処理を実行する。
【0036】
(2)バッテリからのエンジン始動(バッテリ蓄電量が十分な場合):
制御部15は、ステップS104でバッテリBaの蓄電量が十分か否かを判定し、十分であると判定した場合(ステップS104で「Y」の場合)、次の処理を実行する。すなわち、制御部15は、ステップS105で、リレーRy2の接点を端子2側に切り換える。また、制御部15は、ステップS105で、第3回路13をオン、第4回路14はオフ(OFF)する。次に、制御部15は、電動発電機ACG1のホールセンサHsの出力信号に基づいて算出したロータ位置情報に基づいて、第1回路11および第2回路12に給電し、電動発電機ACG1および電動発電機ACG2を回転始動する(ステップS106)。
【0037】
(3)EDLCからのエンジン始動(バッテリ蓄電量が不足しEDLCの蓄電量が十分な場合):
制御部15は、ステップS104でバッテリBaの蓄電量が十分か否かを判定し、十分でないと判定した場合(ステップS104で「N」の場合)、EDLCの蓄電量が十分か否かを判定する(ステップS107)。制御部15は、EDLCの蓄電量が十分であると判定した場合(ステップS107で「Y」の場合)、次の処理を実行する。すなわち、制御部15は、ステップS108で、リレーRy1をオフするとともに、リレーRy2の接点を端子1側に切り換える。また、制御部15は、ステップS108で、第3回路13をオンし、第4回路14をオンする。次に、制御部15は、電動発電機ACG1のホールセンサHsの出力信号に基づいて算出したロータ位置情報に基づいて、第1回路11および第2回路12に給電し、電動発電機ACG1および電動発電機ACG2を回転始動する(ステップS109)。
【0038】
(4)バッテリ、EDLC各々からのエンジン始動(バッテリ、EDLC単独でのエンジン始動が出来ない場合):
制御部15は、ステップS104でバッテリBaの蓄電量が十分か否かを判定し、十分でないと判定した場合(ステップS104で「N」の場合)、EDLCの蓄電量が十分か否かを判定する(ステップS107)。制御部15は、EDLCの蓄電量が十分でないと判定した場合(ステップS107で「N」の場合)、次の処理を実行する。すなわち、制御部15は、ステップS110で、リレーRy2の接点を端子2側に切り換える。また、制御部15は、ステップS110で、第3回路13をオフし、第4回路14をオンする。次に、制御部15は、電動発電機ACG1のホールセンサHsの出力信号に基づいて算出したロータ位置情報に基づいて、第1回路11および第2回路12に給電し、電動発電機ACG1および電動発電機ACG2を回転始動する(ステップS109)。
【0039】
次に、
図3を参照して、キックスタート時の動作について説明する。
【0040】
(5)キックからのエンジン始動:
イグニッションスイッチIGNsがオンされた後(ステップS201で「Y」の後)、キックされるとホールセンサHsの信号により制御部15はキックされたことを認識する(ステップS202で「Y」)。制御部15は、第3回路13をオンするとともに、第4回路14をオフし、電動発電機ACG1および電動発電機ACG2が発電した電力を、第1回路11および第2回路12を介して、電装負荷へ供給する(ステップS203)。この場合、リレーRy1は開、リレーRy2の接点は端子1側であり、第1回路11の出力および第2回路12の出力はバッテリBaを充電しない。
【0041】
(6)発電:
エンジン始動後、電動発電機ACG1および電動発電機ACG2が発電機として動作する際の制御は次の通りである。バッテリBaおよびEDLCの充電の仕方には、通常の充電と急速充電とがある。通常の充電では、制御部15は、第3回路13をオフして第1回路11の出力によりバッテリBaを充電し、第2回路12の出力によりEDLCを充電する。一方、例えば、バッテリ充電が第1回路11の出力のみでは必要量が満たされない場合(つまりバッテリBaへの急速充電の場合)、第4回路14をオフして第3回路13をオンすることで第1回路11の出力と第2回路12の出力の合算でバッテリBaを充電する。またEDLCへの急速充電が必要な場合はリレーRy1をオフし、第3回路13および第4回路14をオンして、第1回路11の出力と第2回路12の出力の合算でEDLCを充電する。
【0042】
EDLCの通常の充電制御は、
図4に示したように、まず、制御部15は、エンジンが作動中か否かを判定する(ステップS301)。作動中でない場合(ステップS301で「N」の場合)、制御部15は、EDLCの充電を行わず
図4のフローを終了する。一方、作動中の場合(ステップS301で「Y」の場合)、制御部15は、EDLC電圧値scより、電圧値scが一定電圧となるように第2回路12のオン・オフ制御における遅角量を計算する(ステップS302)。次に、制御部15は、第3回路13をオフし、第4回路14をオンする(ステップS303)。次に、制御部15は、第2回路12をステップS302で求めた遅角パターンでオン・オフ制御することで、電動発電機ACG2の出力を制御する(ステップS304)。次に、制御部15は、電圧値scに基づき、EDLCの充電が完了したか否かを判定する(ステップS305)。EDLCの充電が完了したと判定した場合(ステップS305で「Y」の場合)、制御部15は、第3回路13および第4回路14をオフし(ステップS306)、処理を終了する。EDLCの充電が完了したと判定しなかった場合(ステップS305で「N」の場合)、制御部15は、ステップS301の処理を再度実行する。
【0043】
EDLC充電制御では、EDLCが規定電圧に充電完了後は第3回路13および第4回路14をオフして電動発電機ACG2を開放状態にすることで、フリクションの低減を図る。制御部15は、充電完了後は、第2回路12の位相制御による一定電圧制御は行わない。
【0044】
バッテリBaの通常の充電制御は、
図5に示したように、まず、制御部15は、エンジンが作動中か否かを判定する(ステップS401)。作動中でない場合(ステップS401で「N」の場合)、制御部15は、バッテリBaの充電を行わず
図5のフローを終了する。一方、作動中の場合(ステップS401で「Y」の場合)、制御部15は、リレーRy1をオンし、リレーRy2を端子1側に接続し、さらに、バッテリ電圧値vbより、電圧値vbが一定電圧となるように第1回路11のオン・オフ制御における遅角量を計算する(ステップS402)。次に、制御部15は、第3回路13をオフする(ステップS403)。次に、制御部15は、ステップS402で求めた遅角パターンで第1回路11をオン・オフ制御することで、電動発電機ACG1の出力を制御する(ステップS404)。次に、制御部15は、ステップS401の処理を再度実行する。
【0045】
EDLCの急速充電制御は、
図6に示したように、まず、制御部15は、エンジンが作動中か否かを判定する(ステップS601)。作動中でない場合(ステップS601で「N」の場合)、制御部15は、EDLCの急速充電を行わず
図6のフローを終了する。一方、作動中の場合(ステップS601で「Y」の場合)、制御部15は、EDLC電圧値scより、電圧値scが一定電圧となるよう第1回路11および第2回路12のオン・オフ制御における遅角量を計算する(ステップS602)。次に、制御部15は、リレーRy1をオフし、リレーRy2の接点を端子1側に接続し、第3回路13をオンし、そして、第4回路14をオンする(ステップS603)。次に、制御部15は、第1回路11および第2回路12をステップS602で求めた遅角パターンでオン・オフ制御することで、電動発電機ACG1および電動発電機ACG2の出力を制御する(ステップS604)。次に、制御部15は、電圧値scに基づき、EDLCの充電が完了したか否かを判定する(ステップS605)。EDLCの充電が完了したと判定した場合(ステップS605で「Y」の場合)、制御部15は、リレーRy1をオン、リレーRy2の接点を端子1側に接続し、そして、第3回路13および第4回路14をオフし(ステップS606)、処理を終了する。EDLCの充電が完了したと判定しなかった場合(ステップS605で「N」の場合)、制御部15は、ステップS601の処理を再度実行する。
【0046】
バッテリBaの急速充電制御は、
図7に示したように、まず、制御部15は、エンジンが作動中か否かを判定する(ステップS701)。作動中でない場合(ステップS701で「N」の場合)、制御部15は、バッテリBaの急速充電を行わず
図7のフローを終了する。一方、作動中の場合(ステップS701で「Y」の場合)、制御部15は、バッテリ電圧値vbより、電圧値vbが一定電圧となるよう第1回路11および第2回路12のオン・オフ制御における遅角量を計算する(ステップS702)。次に、制御部15は、リレーRy1をオンし、リレーRy2の接点を端子1側に接続し、第3回路13をオンし、そして、第4回路14をオフする(ステップS703)。次に、制御部15は、第1回路11および第2回路12をステップS702で求めた遅角パターンでオン・オフ制御することで、電動発電機ACG1および電動発電機ACG2の出力を制御する(ステップS704)。次に、制御部15は、電圧値vbに基づき、バッテリBaの充電が完了したか否かを判定する(ステップS705)。バッテリBaの充電が完了したと判定した場合(ステップS705で「Y」の場合)、制御部15は、第3回路13をオフし(ステップS706)、処理を終了する。バッテリBaの充電が完了したと判定しなかった場合(ステップS705で「N」の場合)、制御部15は、ステップS701の処理を再度実行する。
【0047】
(7)高トルク対応:
モータのトルクは巻線に流れる電流即ち巻線に印加される電圧に比例する。電動発電機ACG2に接続される第2回路12でEDLCを24Vに充電することにより、例えば第3回路13をオフし電動発電機ACG1はバッテリBaから給電し、電動発電機ACG2はEDLCから給電することにより電動発電機ACG2の始動トルクは50%増加する。これによれば、例えば、排気量の大きな二輪車に対し、電動発電機ACGを大型化することなく対応が可能となる。
【0048】
図8は、始動発電システム1における高トルク始動制御フローを示す。なお、
図8に示すフローを実行する場合、
図4に示したEDLCの充電制御フローにおいてEDLCの電圧規定値をバッテリBaの定格電圧よりも高い値に設定してEDLCを充電しておく。
【0049】
制御部15は、スタータスイッチSTsがオンされるまで、
図8に示した処理を待機状態とする(ステップS501で「N」の繰り返し)。スタータスイッチSTsがオンされた場合(ステップS501で「Y」の場合)、制御部15は、ホールセンサHsの出力信号に基づきロータの位置がどのステージにあるのかを判別する(ステップS502)。次に、制御部15は、ステップS503で、第3回路13をオフし、第4回路14をオンする。制御部15は、ステップS503で、リレーRy2の接点を端子2側に切り換える。次に、制御部15は、電動発電機ACG1のホールセンサHsの出力信号に基づいて算出したロータ位置情報に基づいて、第1回路11および第2回路12に給電し、電動発電機ACG1および電動発電機ACG2を回転始動する(ステップS504)。この場合、電動発電機ACG1はバッテリBaから第1回路11を介して給電され、また、電動発電機ACG2はEDLCから第2回路121を介して給電される。
【0050】
本実施形態では、エンジンスタータの機能と発電機の機能とを兼備えかつ巻線を複数もった電動発電機の制御装置である始動発電制御装置に、次の構成を設けた。すなわち、本実施形態の始動発電制御装置10は、エンジン始動とバッテリ充電を目的とした電動発電機ACG1および第1回路11と、エンジン始動とEDLCの充電を目的とした電動発電機ACG2および第2回路12と、第1回路11と第2回路12とを電気的に相互に接続、切り離しすることを目的とした第3回路13と、第2回路12からEDLCに向かう方向を電気的に切り離しすることを目的とした第4回路14とを備える。
【0051】
一般に、二輪用アイドルストップシステムでは、渋滞時の頻繁なエンジン再始動はバッテリの蓄電容量の低下を招く。極端な場合、エンジン始動が困難な状況に至って、ユーザはキックでエンジン始動せねばならず利便性を損なう可能性があった。それにともなってバッテリは大型化が進み車両レイアウト上,設置場所の確保が課題もあった。また排気量125cc以上の2輪車の場合エンジン始動時のクランキングに大きなトルクを必要とし、エンジンにデコンプ(デコンプレッション)を取付け圧縮トップを乗り越しできるよう特別な装置が必要であった。
【0052】
これに対し、本実施形態によれば、例えば車両の運行状況とバッテリの蓄電量とからバッテリとEDLCを適時切換えてバッテリの消費を最小限に抑えかつアイドルストップからのエンジン始動が確実に行われることで、ユーザの利便性の向上を図ることができる。またバッテリの容量はエンジン始動時に必要なエネルギーを供給する目的から決定されており、EDLCがその一部を補うことでバッテリ容量は、EDLCを用いない場合と比べて少なく済むため小型化が可能となり、バッテリを搭載する場所の確保が容易となる。また第2回路12の出力を例えば24Vに設定することで始動トルクの増大を図ることも可能でありエンジンピストンが圧縮上死点付近にあってもデコンプなしでのエンジン始動が容易に行えるメリットもある。
【0053】
次に、
図9および
図10を参照して、本発明の他の実施形態について説明する。
図9は、本発明の他の実施形態の構成例を説明するための概略回路図であり、
図1に示した始動発電システム1からの変更部分のみを示している。
図9に示した始動発電システム1aは、
図1に示した始動発電システム1と比較して次の点が異なる。すなわち、EDLCが、独立した1対の端子を有する電気二重層キャパシタEDLC−1と電気二重層キャパシタEDLC−2とに分けて構成されている(以下、EDLC−1およびEDLC−2と呼称)。また、リレーRy3とリレーRy4とが新たに設けられている。なお、
図9において、
図1と同一の構成には同一の符号を用いている。
【0054】
図9において、リレーRy3はc接点のリレーであり、コイル無通電時に端子1と端子Cとが閉路であり、コイル通電時に端子2と端子Cとが閉路である。リレーRy3の端子CはEDLC−1の端子142に接続されている。リレーRy3の端子2はリレーRy4の端子2に接続されている。リレーRy3の端子1は接地されている。リレーRy4はc接点のリレーであり、コイル無通電時に端子1と端子Cとが閉路であり、コイル通電時に端子2と端子Cとが閉路である。リレーRy4の端子CはEDLC−2の端子143に接続されている。リレーRy4の端子1はEDLC−1の端子141および直流端子131に接続されている。また、リレーRy3のコイルとリレーRy4のコイルとは制御部15によって通電制御される。
【0055】
図9に示した構成では、リレーRy3の接点とリレーRy4の接点とをともに端子1側に接続した場合に、EDLC−1とEDLC−2とが直流端子131と接地間に並列に接続される。一方、リレーRy3の接点とリレーRy4の接点とをともに端子2側に接続した場合に、EDLC−1とEDLC−2とが直流端子131と接地間に直列に接続される。したがって、リレーRy3の接点とリレーRy4の接点とをともに端子1側に接続した状態で、EDLC−1とEDLC−2とを12Vで充電しておき、始動時にリレーRy3の接点とリレーRy4の接点とをともに端子2側に接続することで、直流端子131と接地間に24Vの電圧を発生させることができる。
【0056】
図10は、
図9に示した始動発電システム1aにおける高トルク始動制御フローを説明するためのフローチャートである。
図8を参照して説明した高トルク始動制御フローと、ステップS503aの処理が異なる。すなわち、
図10に示したステップS503aでは、リレーRy3の接点を端子2側とする処理とリレーRy4の接点を端子2側とする処理とが追加されている。
【0057】
なお、本実施形態では、リレーRy3およびリレーRy4とそれに接続される配線とが新たに追加されるが、高トルク対応とする際にEDLCを前もって24Vに充電する処理が不要となる。
【0058】
なお、本発明の実施の形態は上記のものに限定されない。例えば、多相巻線ACG1−Cや多相巻線ACG2−Cは中性点の無いデルタ結線としてもよい。また、高トルク対応時の電圧値は、24Vに限らず、36V、48V等の電圧としてもよい。
【0059】
なお、本発明の実施形態は上記のものに限定されず、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。