特許第6186514号(P6186514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186514
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】光マイクロ波量子トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   G01J1/02 R
【請求項の数】17
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-546816(P2016-546816)
(86)(22)【出願日】2014年11月17日
(65)【公表番号】特表2017-514102(P2017-514102A)
(43)【公表日】2017年6月1日
(86)【国際出願番号】US2014065946
(87)【国際公開番号】WO2015108615
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2016年8月30日
(31)【優先権主張番号】14/158,317
(32)【優先日】2014年1月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503178185
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】NORTHROP GRUMMAN SYSTEMS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジェ アイ.
【審査官】 小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−49009(JP,A)
【文献】 特開2011−87435(JP,A)
【文献】 特表2013−500530(JP,A)
【文献】 J. BOCHMANN et al.,Nanomechanical coupling between microwave and optical photons,NATURE PHYSICS,2013年 9月15日,VOL. 9, NO. 11,pp. 712-716,DOI:10.1038/NPHYS2748
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00−1/60
11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光マイクロ波量子トランスデューサであって、
第1のナノフォトニック・スラブおよび第2のナノフォトニック・スラブを備え、前記第1および第2のナノフォトニック・スラブの各々は光学領域および超伝導領域を含み、
前記第1のナノフォトニック・スラブは、基板に固定されて回転軸を中心とした前記第1および第2のナノフォトニック・スラブ間の相対回転を促進する一対のねじり梁をさらに備え、
前記第1のナノフォトニック・スラブの光学領域と前記第2のナノフォトニック・スラブの光学領域との間のギャップは光信号に応じた光学キャビティを形成し、前記光学キャビティは、前記回転軸を中心とする前記第1のナノフォトニック・スラブの機械的振動を誘発し、
前記機械的振動は、前記第1のナノフォトニック・スラブの超伝導領域と前記第2のナノフォトニック・スラブの超伝導領域とに結合された超伝導キャビティ上にて電気変調を誘発する、光マイクロ波量子トランスデューサ。
【請求項2】
前記超伝導キャビティ上における電気変調が、前記回転軸を中心とした前記第1のナノフォトニック・スラブの機械的振動を誘発し、この機械的振動が、前記光学キャビティ内における励起を誘発する、請求項1に記載の光マイクロ波量子トランスデューサ。
【請求項3】
前記光学キャビティ内に誘発された前記励起が光チャネル上に光信号を誘発する、請求項2に記載の光マイクロ波量子トランスデューサ。
【請求項4】
前記超伝導キャビティが超伝導LC回路である、請求項2に記載の光マイクロ波量子トランスデューサ。
【請求項5】
前記超伝導LC回路のキャパシタは、前記第1のナノフォトニック・スラブを覆う超伝導材料の第1のプレートと、前記第2のナノフォトニック・スラブを覆う超伝導材料の第2のプレートとを含む、請求項4に記載の光マイクロ波量子トランスデューサ。
【請求項6】
前記超伝導LC回路のインダクタは、前記超伝導LC回路のキャパシタに導電的に結合されており前記キャパシタから空間的に分離されている、請求項4に記載の光マイクロ波量子トランスデューサ。
【請求項7】
前記超伝導LC回路のインダクタは、前記超伝導LC回路のキャパシタの第1のプレートに結合されたトレースによって中央にタップが設けられている、請求項に記載の光マイクロ波量子トランスデューサ。
【請求項8】
前記第2のナノフォトニック・スラブの光学領域が光チャネルに結合されている、請求項2に記載の光マイクロ波量子トランスデューサ。
【請求項9】
前記第1のナノフォトニック・スラブおよび前記第2のナノフォトニック・スラブの前記光学領域は、その内部に配置された格子孔を含む、請求項2に記載の光マイクロ波量子トランスデューサ。
【請求項10】
前記光マイクロ波量子トランスデューサは、
【数1】
によって特徴付けられる光機械結合率を有し、
ここで、
omは、前記光学キャビティ内における光子の周波数と、前記第1のナノフォトニック・スラブと前記第2のナノフォトニック・スラブとの間の直線変位との関係を特徴付ける前記光機械結合率であり、
ω0は、前記光学キャビティ内におけるラジアン単位での前記光子の周波数であり、
xは、前記第2のナノフォトニック・スラブに対する前記第1のナノフォトニック・スラブのナノメートル単位での前記直線変位の距離である、請求項1に記載の光マイクロ波量子トランスデューサ。
【請求項11】
前記光マイクロ波量子トランスデューサは、
【数2】
によって特徴付けられる電気機械結合率を有し、
ここで、
emは、前記超伝導キャビティ内における電気変調の周波数と、前記第1のナノフォトニック・スラブと前記第2のナノフォトニック・スラブとの間の直線変位との関係を特徴付ける前記電気機械結合率であり、
ωeは、前記超伝導キャビティ内におけるラジアン単位での前記電気変調の周波数であり、
xは、前記第2のナノフォトニック・スラブに対する前記第1のナノフォトニック・スラブのナノメートル単位での前記直線変位の距離である、請求項1に記載の光マイクロ波量子トランスデューサ。
【請求項12】
前記光マイクロ波量子トランスデューサは、
【数3】
によって特徴付けられるねじり周波数を有し、
ここで、
Ωmは、前記光マイクロ波量子トランスデューサの前記ねじり周波数であり、
κは、前記第1のナノフォトニック・スラブのねじりばね定数であり、
pは、前記第1のナノフォトニック・スラブの総慣性モーメントである、請求項1に記載の光マイクロ波量子トランスデューサ。
【請求項13】
前記第1のナノフォトニック・スラブの前記ねじりばね定数は、
【数4】
によって特徴付けられ、
ここで、
rは、前記一対のねじり梁のうちの所与のねじり梁の長さであり、
rおよびwrは、前記所与のねじり梁の断面寸法であってhr>wrであり、
μは、
【数5】
によって特徴付けられ、
ここで、
Yは、前記第1のナノフォトニック・スラブを形成するために用いられる材料のヤング係数であり、
νは、前記第1のナノフォトニック・スラブを形成するために用いられる材料のポアソン比である、請求項12に記載の光マイクロ波量子トランスデューサ。
【請求項14】
請求項1に記載の光マイクロ波量子トランスデューサを備える集積回路(IC)チップ。
【請求項15】
光マイクロ波量子トランスデューサであって、
超伝導キャビティに電気的に結合されるとともに、光学キャビティに光学的に結合されたナノフォトニック・スラブを備え、
前記ナノフォトニック・スラブは、前記光学キャビティ内における励起または前記超伝導キャビティ内における電気変調に応じて回転軸を中心として機械的に振動するように構成されており、
励起によって誘発された機械的振動が前記超伝導キャビティ内に電気変調を誘発し、
電気変調によって誘発された機械的振動が前記光学キャビティ内に励起を誘発する、光マイクロ波量子トランスデューサ。
【請求項16】
システムであって、
光マイクロ波量子トランスデューサを超伝導温度において格納する冷却ユニットであって、
前記光マイクロ波量子トランスデューサは、超伝導キャビティに電気的に結合されるとともに、光学キャビティに光学的に結合されたナノフォトニック・スラブを備え、前記ナノフォトニック・スラブは、前記光学キャビティ内における励起または前記超伝導キャビティ内における電気変調に応じて回転軸を中心として機械的に振動するように構成されており、
前記光学キャビティは、光チャネルに光学的に結合されており、
前記超伝導キャビティは、空間的に分離された真空ギャップキャパシタおよびインダクタを含み、前記真空ギャップキャパシタのプレートが前記ナノフォトニック・スラブ上に形成されている、前記冷却ユニットと、
光ファイバを含む前記光チャネル上における光信号を送信および受信するように構成されたノードであって、前記冷却ユニットの外部に位置する前記ノードと、
を備えるシステム。
【請求項17】
前記ノードが、別の光量子トランスデューサを超伝導温度において格納する別の冷却ユニットを含む、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、光マイクロ波量子トランスデューサに関する。具体的には、この開示は、ナノフォトニック・スラブを有する光マイクロ波量子トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
ナノフォトニクス(またはナノ光学)は、ナノメートルスケールの光の挙動に関する。ナノフォトニクスは、深くサブ波長に及ぶ長さスケールにおける、粒子または物質との光の相互作用に関する光工学の一部門と見なされている。ナノ光学の領域における技術としては、近接場走査光学顕微鏡(NSOM:near-field scanning optical microscopy)、光アシスト走査型トンネル顕微鏡、および表面プラズモン光学素子が挙げられる。産業界が数ナノメートルのスケールの材料および現象の特性評価により関心を持つようになるにつれて、ナノフォトニクスに対する関心は高まり続けている。
【0003】
超伝導マイクロ波工学は、光の波長が通例、回路構成要素の空間スケールをはるかに超える、GHz周波数またはその付近における電磁励起の挙動に関する。超伝導体回路の構成要素は超伝導材料から作製され、ほぼ零抵抗で動作させることができる。超伝導工学はマイクロ波工学と同様の特徴を多く共有している。
【0004】
マイクロメカニックスおよびナノメカニックスは、マイクロメートルおよびナノメートルスケールにおける機械共振器の研究に関する。主たる関心は、機械モード周波数が減衰率、例えば、高い品質係数(quality factor)よりもはるかに大きい時の動作にある。機械共振器のこのような研究は、メゾスケールにおける量子限定測定および量子動力学に対する見識をもたらしている。
【発明の概要】
【0005】
一実施例は、第1のナノフォトニック・スラブおよび第2のナノフォトニック・スラブを含み得る光マイクロ波量子トランスデューサに関する。第1および第2のナノフォトニック・スラブの各々は光学領域および超伝導領域を含み得る。第1のナノフォトニック・スラブは、基板に固定されて回転軸を中心とした第1および第2のナノフォトニック・スラブ間の相対回転を促進する一対のねじり梁を含み得る。光マイクロ波量子トランスデューサは、第1のナノフォトニック・スラブの光学領域と第2のナノフォトニック・スラブの光学領域との間のギャップを含み得る。このギャップは光信号に応じた光学キャビティを形成する。この光学キャビティは、回転軸を中心とする第1のナノフォトニック・スラブの機械的振動を誘発することができる。この機械的振動は、第1のナノフォトニック・スラブの超伝導領域と第2のナノフォトニック・スラブの超伝導領域とに結合された超伝導キャビティ上にて電気変調を誘発することができる。
【0006】
別の実施例は、超伝導キャビティに電気的に結合されるとともに、光学キャビティに光学的に結合されたナノフォトニック・スラブを含み得る光マイクロ波量子トランスデューサに関する。ナノフォトニック・スラブは、光学キャビティ内における励起または超伝導キャビティ内における電気変調に応じて回転軸を中心として機械的に振動するように構成され得る。励起によって誘発された機械的振動は超伝導キャビティ内における電気変調を誘発することができる。電気変調によって誘発された機械的振動は光学キャビティ内における励起を誘発することができる。
【0007】
さらに別の実施例は、光マイクロ波量子トランスデューサを超伝導温度において格納する冷却ユニットを含むシステムに関する。光マイクロ波量子トランスデューサは、超伝導キャビティに電気的に結合されるとともに、光学キャビティに光学的に結合されたナノフォトニック・スラブを含み得る。ナノフォトニック・スラブは、光学キャビティ内における励起または超伝導キャビティ内における電気変調に応じて回転軸を中心として機械的に振動するように構成され得る。光学キャビティは光チャネルに光学的に結合され得る。超伝導キャビティは、空間的に分離された真空ギャップキャパシタおよびインダクタを含み得る。真空ギャップキャパシタのプレートは、ナノフォトニック・スラブ上に形成され得る。システムはまた、光ファイバを含む光チャネル上における光信号を送信および受信するように構成されたノードを含む。ノードは冷却ユニットの外部に位置し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】光チャネルに沿って伝搬する光信号を超伝導回路内で伝搬される電気信号に変換するための、およびその逆を行うためのシステムの一例を示す図である。
図2】光マイクロ波量子トランスデューサの一例を示す図である。
図3図2に示される光マイクロ波量子トランスデューサの側面図である。
図4】光マイクロ波量子トランスデューサの一例を示す3次元図である。
図5】ねじり梁の長さおよび幅に応じたねじり周波数をプロットしたグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
光マイクロ波量子トランスデューサは、光チャネルから放出された光信号を機械エネルギー(例えば、軸を中心とする振動)に変換するように構成され得る。また、このような機械エネルギーによって、光マイクロ波量子トランスデューサは超伝導キャビティ(例えば、超伝導回路)における電気(量子)変調を誘発し、これにより機械エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。同様に、超伝導キャビティにおける電気変調を光マイクロ波量子トランスデューサにおける機械エネルギーに変換することができる。それにより、光マイクロ波量子トランスデューサは、光チャネル上に光信号を誘発することができる。このようにして、超伝導キャビティは冷却ユニット内に格納され、光チャネルを介して別のノードと通信することができる。
【0010】
光マイクロ波量子トランスデューサは、ナノフォトニック・スラブ(例えば、2次元ナノフォトニック結晶)を有する光学キャビティを含むことができる。ナノフォトニック・スラブは、基板に固定されたねじり梁(torsional beams)によって分離された光学領域および超伝導領域を含むことができる。光学キャビティまたは超伝導キャビティ内における励起によって、ナノフォトニック・スラブは軸を中心として回転することができる。光マイクロ波量子トランスデューサは、単一光子の、完全に可逆なレベルで動作することができる。
【0011】
図1は、光チャネル6に沿って伝搬する光信号を、超伝導キャビティ7(例えば、超伝導回路)内で伝搬される電気信号に変換するため、およびその逆を行うための光マイクロ波量子トランスデューサ4を含む変換システム2の一例を示す。変換システム2は、内部に回路構成要素を収容可能な冷却ユニット8を含むことができる。いくつかの例では、冷却ユニット8は、回路構成要素の温度を、臨界温度(T)を下回る温度に低下させることができる。回路構成要素を形成する材料の臨界温度は、その温度以下にて回路構成要素が超伝導を達成するという温度である。いくつかの例では、超伝導のために必要な臨界温度は、約10〜約30ミリケルビン(mK)の温度とすることができる。
【0012】
光チャネル6は光ファイバから形成され得る。いくつかの例では、光チャネル6は、ナノフォトニック・スラブなどのナノフォトニック結晶12に結合され得る放出領域10を含むことができる。放出領域10は、例えば、テーパ状の光学領域や、劈開された光ファイバの研磨端部などとして実装することができる。ナノフォトニック結晶12は、半透明ミラーとすることができる。ナノフォトニック結晶12は、例えば、窒化ケイ素(Si)などの、約2の屈折率を有する材料を用いて形成することができる。一例では、ナノフォトニック結晶12を貫いて格子孔をくり抜くことができる。このような場合、光チャネル6の放出領域10から放出された光子は、ナノフォトニック結晶12の第1の側14からナノフォトニック結晶12の第2の側16へ伝達され得る。ナノフォトニック結晶12は約100マイクロメートル(μm)×100μmの面積を有することができ、格子孔における各孔は約10ナノメートル(nm)〜約20nmの半径を有することができる。ナノフォトニック結晶12は、ナノフォトニック・スラブ18(例えば、2次元ナノフォトニック結晶)と平行に位置付けることができる。さらに言えば、ナノフォトニック結晶12もナノフォトニック・スラブ18と見なし得ることが理解される。ナノフォトニック・スラブ18は、ナノフォトニック結晶12と同じ材料から形成することができる。
【0013】
ナノフォトニック・スラブ18は、別の格子孔を有する光学領域20を含むことができる。いくつかの例では、ナノフォトニック結晶12およびナノフォトニック・スラブ18内の格子孔は同じパターンを有することができる。ナノフォトニック結晶12およびナノフォトニック・スラブ18内の格子孔は、約10nm〜約20nmの半径を有することができる。ナノフォトニック・スラブ18はまた、超伝導キャビティ7に結合可能な超伝導領域22を含むことができる。超伝導キャビティ7は、ナノフォトニック・スラブ18の超伝導領域22を覆うキャパシタ26の第1のプレートを含むことができる。キャパシタ26の第2のプレートは、第1のプレートから約10〜30nmの距離だけ離間して配置されて、真空ギャップキャパシタを形成することができる。キャパシタ26はインダクタ28と並列に結合され得る。インダクタ28は、例えば、中央タップが設けられたスパイラルインダクタであってよい。キャパシタ26およびインダクタ28は、超伝導キャビティ7を形成する超伝導LC回路となり得る。ナノフォトニック・スラブ18は、ナノフォトニック・スラブ18の光学領域20と超伝導領域22との間に位置付けられたねじり梁30によって基板に固定することができる。ねじり梁30は、ナノフォトニック・スラブの本体から垂直に延在するカンチレバーとして形成することができる。
【0014】
いくつかの例では、ナノフォトニック結晶12およびキャパシタ26の第2のプレートは基板上にエッチングすることができる。他の例では、ナノフォトニック結晶12および第2のプレートは、基板を覆うかまたは基板と一体化された共通のナノフォトニック・スラブ上にエッチングすることができる。
【0015】
ナノフォトニック結晶12からナノフォトニック・スラブ18へ伝達された光子は、ナノフォトニック結晶12とナノフォトニック・スラブ18との間に捕捉されて、光学キャビティ32を形成することができる。光学キャビティ32内における励起は光圧力を介してナノフォトニック・スラブ18上にトルクを誘発し、ナノフォトニック・スラブ18の光学領域20を矢印34によって示された方向に回転させることで、ナノフォトニック・スラブ18の機械的振動を生じさせることができる。その結果、ナノフォトニック・スラブ18の超伝導領域22は矢印36によって示された方向に回転し、それによりキャパシタ26の第1および第2のプレート間の相対運動(例えば、矢印38によって示されるような、ねじり梁30を中心とした相対回転)が生じる。このような相対運動(例えば、振動)は、キャパシタ26およびインダクタ28上に(矢印40によって示された)電流を誘発させるなどの超伝導キャビティ7上における電気変調を誘発し、これにより、機械エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0016】
逆に、超伝導LC回路(例えば、超伝導キャビティ7)によって電気変調(例えば、電流)を誘発することができる。電気変調は、ナノフォトニック・スラブ18の超伝導領域22上に機械的力を誘発して、ナノフォトニック・スラブ18を振動させることができる。ナノフォトニック・スラブ18の振動は、光学キャビティ32内に、ナノフォトニック・スラブ18の光学領域20からナノフォトニック結晶12の第2の側14へ伝達される光子(例えば、励起)を誘発することができる。誘発された光子は、ナノフォトニック結晶12の第2の側14から光チャネル6上へ伝達することができる。
【0017】
いくつかの例では、変換システム2は量子状態の伝達を可能にする。具体的には、変換システム2は、光チャネル6における光学モードの量子状態を、超伝導LC回路における電気モードに対して対応付けること、またはその逆を可能にする。このような量子状態の伝達は、2つの異なるモード間の通信を可能にする。加えてまたは代替的に、変換システム2は、反復する光子伝達を可能にし、これは、光学モードにおける散乱が電気モードにおいて反映されること、またはその逆をもたらす。
【0018】
光チャネル6はノード42に結合することができる。ノード42は光入力/出力(I/O)ポートを含むことができる。いくつかの例では、ノード42は、超伝導キャビティ7(例えば、別の超伝導LC回路)を有する別の変換システム2とすることができる。このように、ノード42の超伝導キャビティ7は、光チャネル6によって分離された距離(例えば、最大10キロメートル以上)を隔てて変換システム2の超伝導キャビティ7と通信することができる。代替的に、ノード42は、例えば、コンピュータとして実装することができる。この場合には、ノード42は、変換システム2を介して制御信号を超伝導キャビティ7へ光学的に送ることができる。
【0019】
ナノフォトニック・スラブ18は2つの点(ねじり梁30)において固定されるのみであるため、変換システム2は低いクランピング損失を達成する。さらに、キャパシタ26は、超伝導キャビティ7を形成する超伝導LC回路のキャパシタ26とインダクタ28との間の比較的大きな関与率を有し得る平行板キャパシタ(例えば、真空ギャップキャパシタ)として実装することができる。
【0020】
光マイクロ波量子トランスデューサ4の構成要素は共通の集積回路(IC)チップ上に製造することができる。すなわち、光学構成要素および電気構成要素は両方とも、同じICチップ上に一体化することができる。さらに、このようなICチップは最新の製造技術を用いることによって、外的位置合わせを必要とすることなく製造することができる。
【0021】
図2は、例えば、図1の光マイクロ波量子トランスデューサ4を実装するために用いることができる光マイクロ波量子トランスデューサ50の別の例を示す。図3は、図2の光マイクロ波量子トランスデューサ50の側面図を示す。説明を簡単にするために、図2および図3では、同じ構造を表すものには同じ参照符号を用いている。光マイクロ波量子トランスデューサ50は、例えば、約10nmの距離だけ分離される平行ナノフォトニック・スラブ52,54を含むことができる。光マイクロ波量子トランスデューサ50は、光マイクロ波量子トランスデューサ50の周囲温度を、超伝導のために必要な臨界温度(例えば、約10ミリケルビン(mK)〜約30mKの温度)を下回る温度に低下させることができる冷却ユニット内に収容することができる。
【0022】
各ナノフォトニック・スラブ52,54は光学領域56および超伝導領域58を含むことができる。平行ナノフォトニック・スラブ52,54の各々は、例えば、窒化ケイ素(Si)などの約2の屈折率を有する材料から形成することができる。平行ナノフォトニック・スラブの光学領域56および超伝導領域は対称的であるように示されているが、他の例では、光学領域56および超伝導領域58は非対称的であってもよい。平行ナノフォトニック・スラブ52,54のうち、第1のナノフォトニック・スラブ52は、支柱62を介して基板に固定されたねじり梁60を含むことができる。ねじり梁60は、第1のナノフォトニック・スラブ52の本体から延在するカンチレバーとすることができる。さらに、第1のナノフォトニック・スラブ52は、平行ナノフォトニック・スラブ52,54の第2のナノフォトニック・スラブ54を覆うことができる。いくつかの例では、第2のナノフォトニック・スラブ54は基板内にエッチングすることができる。他の例では、第2のナノフォトニック・スラブ54は、基板を覆うかまたはそれと一体化されることができる。
【0023】
ねじり梁60は軸64に沿って延在する。さらに、第1のナノフォトニック・スラブ52のねじり梁60は、平行ナノフォトニック・スラブ52,54間の相対運動(例えば、相対回転)を可能にする。より具体的には、ねじり梁60は、矢印66によって示された方向における第1のナノフォトニック・スラブ52の光学領域56の(トルクを通じた)運動を可能とすることにより、矢印68によって示された方向における第1のナノフォトニック・スラブ52の超伝導領域58内の運動を生じさせるとともに、軸62を中心とした矢印70,72の方向における逆の運動を可能にする(例えば、「シーソー」運動を可能にする)。このように、第1のナノフォトニック・スラブ52は機械的振動を提供することができる。
【0024】
第1のナノフォトニック・スラブ52および第2のナノフォトニック・スラブ54の光学領域56は、最大約10μm×約10μmの面積を有することができる。第1のナノフォトニック・スラブ52および第2のナノフォトニック・スラブ54の光学領域56は、その内部に凹設されるかまたはエッチングされた格子孔74を含むことができる。第1のナノフォトニック・スラブ52および第2のナノフォトニック・スラブ54内の各孔74は、約10nm〜約100nmの半径を有することができる。格子孔74は、図2に示されるように、六角形パターンなどの特定のパターンを有するように配置することができる。他の例では、格子孔74の異なるパターンを用いることができる。
【0025】
第2のナノフォトニック・スラブ54の光学領域56は、半透明ミラーによって形成することができる。第2のナノフォトニック・スラブ54の光学領域56は、光I/Oポート76から発する光信号を受信することができる。いくつかの例では、光I/Oポート76は、光チャネル77(例えば、光ファイバ)に沿って伝達されるレーザなどの送信機を含むことができる。加えて、I/Oポート76は、フォトダイオードなどの受信器を含むことができる。いくつかの例では、光チャネル77を省くことができる。このような場合には、I/Oポート76は、フォトニック結晶、誘電体導波管などの延長部として実装することができる。光信号は、約100THz〜約500THz(例えば、約200THz)の周波数を有することができる。第2のナノフォトニック・スラブ54の光学領域56の第1の表面内に伝達される光子の一部は、第2のナノフォトニック・スラブ54を通して第1のナノフォトニック・スラブ52の光学領域56の第1の表面へ伝達され得る。光子は、第1および第2のナノフォトニック・スラブ52,54の光学領域56の間に捕捉されて、これにより、矢印78によって示された領域内に光学キャビティ(例えば、共振キャビティ)を形成することができる。
【0026】
光学キャビティ78内における励起は、第1のナノフォトニック・スラブ52の光学領域56に対する光圧力を生じさせることができる。このような光圧力は、矢印66,68,70,72によって示された方向における機械的振動を誘発することができる。振動の間に、第1のナノフォトニック・スラブ52は、例えば、約0.5nm〜約2nmの距離にて運動することができる。したがって、光マイクロ波量子トランスデューサ50は、光エネルギーを機械エネルギーに変換することができる。式1は、光学キャビティ78と第1のナノフォトニック・スラブ52(例えば、機械振動子)との間の光機械結合率を特徴付ける。式1が示すように、光機械結合率は1ナノメートル当たり約5THz(5THz/nm)とすることができる。
【0027】
【数1】
ここで、Gomは、光学キャビティ78内における光子の周波数と、第1のナノフォトニック・スラブ52と第2のナノフォトニック・スラブ54との間の直線変位との関係を特徴付ける光機械結合率である。
【0028】
ω0は、光学キャビティ78内におけるラジアン単位での光子の周波数である。
xは、第2のナノフォトニック・スラブ54に対する第1のナノフォトニック・スラブ52のナノメートル単位での直線変位の距離である。
【0029】
平行ナノフォトニック・スラブ52,54の超伝導領域58は、超伝導アルミニウムまたはその他の超伝導材料80などの、超伝導材料80の層(例えば、プレート)によってコーティングすることができる。平行ナノフォトニック・スラブ52,54の超伝導領域58上の超伝導材料80の各層は、真空ギャップキャパシタ82のプレートを形成することができる。真空ギャップキャパシタ82のキャパシタンスは式2によって定義することができる。
【0030】
【数2】
ここで、Cは、真空ギャップキャパシタ82のキャパシタンスである。
【0031】
ε0は、自由空間の誘電率である。
dは、真空ギャップキャパシタ82の第1のプレートと第2のプレートとの間の距離である。
【0032】
Aは、真空ギャップキャパシタ82の第1のプレートの面積である。
真空ギャップキャパシタ82の第1のプレートの面積は、約10μm(例えば、約2〜5μm×約2〜5μm)〜約100μm(例えば、約10μm×約10μm)以上とすることができる。真空ギャップキャパシタ82は、基板ならびに平行ナノフォトニック・スラブ52,54上にエッチングすることができる導電性トレース86を介してインダクタ84に並列に結合され得る。インダクタ84は、例えば、低キャパシタンス誘発要素として実装することができる。いくつかの例では、導電性トレース86のうちの1つは、ねじり梁60に沿ってエッチングすることができる。インダクタは、例えば、正方形スパイラルインダクタとすることができる。真空ギャップキャパシタ82およびインダクタ84は、約10MHz〜約1GHzの周波数において共振することができる超伝導LC回路(例えば、LC共振器)となる超伝導キャビティを形成することができる。例えば、LC回路が約10〜100MHzの共振周波数を有する場合には、真空ギャップキャパシタ82の第1のプレートは、約10〜100マイクロメートル程度の辺長および幅を有することができる。また、LC回路が約1GHzの共振周波数を有する場合には、真空ギャップキャパシタ82の第1のプレートは、約2〜3マイクロメートル程度の辺長および幅を有することができる。
【0033】
第2のナノフォトニック・スラブ54に対する第1のナノフォトニック・スラブ52の振動は、真空ギャップキャパシタ82のプレート上に電気変調(例えば、電荷)を誘発し、この電気変調が超伝導LC回路内に電流を誘発する。したがって、光マイクロ波量子トランスデューサ50は機械エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0034】
式3は、機械振動子と超伝導キャビティとの間の電気機械結合率を特徴付けることができる。式3が示すように、電気機械結合率は1ナノメートル当たり約100MHz(100MHz/nm)とすることができる。
【0035】
【数3】
ここで、Gemは、超伝導キャビティ内における電気変調の周波数(例えば、LC回路内における電流の周波数)と、第1のナノフォトニック・スラブ52と第2のナノフォトニック・スラブ54との間の直線変位との関係を特徴付ける電気機械結合率である。
【0036】
ωeは、超伝導キャビティにおけるラジアン単位での電気変調の周波数(例えば、LC回路内における電流の周波数)である。
xは、第2のナノフォトニック・スラブ54に対する第1のナノフォトニック・スラブ52のナノメートル単位での直線変位の距離である。
【0037】
光マイクロ波量子トランスデューサ50のねじり周波数は、式4〜式6を用いて計算することができる。
【0038】
【数4】
ここで、Ωmは、光マイクロ波量子トランスデューサ50のねじり周波数である。
【0039】
κは、第1のナノフォトニック・スラブ52(パドル振動子)のねじりばね定数である。
pは、第1のナノフォトニック・スラブ52(パドル振動子)の総慣性モーメントである。
【0040】
ばね定数κは、式5を用いて計算することができる。
【0041】
【数5】
ここで、lrは各ねじり梁60の長さである。
【0042】
rおよびwrは、各ねじり梁60の断面寸法であってhr>wrである。
μは式6によって特徴付けられる。
【0043】
【数6】
ここで、Yは、第1のナノフォトニック・スラブ52を形成するために用いられる材料のヤング係数である(Siの場合、約100〜250GPa)。
【0044】
νは、第1のナノフォトニック・スラブ52を形成するために用いられる材料のポアソン比である(Siの場合、約0.22〜0.27)。
逆に、超伝導キャビティにおける電気変調(例えば、電流)は、矢印72,68の方向における第2のナノフォトニック・スラブ54に対する第1のナノフォトニック・スラブ52の超伝導領域58の運動(例えば、相対回転)を誘発することができる。このような運動は、矢印70,66によって示された方向における第1のナノフォトニック・スラブ52の光学領域56の対応する運動を生じさせることができる。運動は、平行ナノフォトニック・スラブ52,54の光学領域56の間の光学キャビティ78内に光学光子(例えば、励起)を誘発することができる。光学キャビティ78内における励起は、光の光子を第2のナノフォトニック・スラブ54の第1の表面を通して光チャネル77内に伝達させることができ、これにより、光チャネル77上に光信号を誘発することができる。光信号は、例えば、光I/Oポート76において受信される。他の例では、光I/Oポート76は、光チャネル77を通じて比較的長い距離にて分離される第2の光マイクロ波量子トランスデューサ上に実装することができる。
【0045】
いくつかの例では、光マイクロ波量子トランスデューサ50は量子状態の伝達を促進する。具体的には、変換システムは、光チャネル77(光学モード)内の量子状態を超伝導キャビティ(電気モード)へ対応付けること、またはその逆を可能にする。このような量子状態の伝達は、2つの異なるモード間の通信を可能にする。加えてまたは代替的に、光マイクロ波量子トランスデューサ50のシステムは、反復する光子伝達を可能にし、これは、光学モードにおける散乱が電気モードにおいて反映されること、またはその逆をもたらす。
【0046】
さらに、光マイクロ波量子トランスデューサ50の第1のナノフォトニック・スラブ52は、2つの点、すなわちねじり梁60において基板に固定されているのみであるため、光マイクロ波量子トランスデューサ50は比較的低いクランピング損失を有する。また、真空ギャップキャパシタ82の第1のプレートおよび第2のプレートは比較的大きくすることができるため、大きな電気機械結合に対応可能な比較的大きなキャパシタンスを達成することができる。さらに、図示されているように、LC超伝導回路の真空ギャップキャパシタ82およびインダクタは空間的に分離することができる。このような空間的分離は比較的大きな関与率および高い協同性を可能にし、電気機械結合率をさらに増大させる。さらに、高い関与率のおかげで、光マイクロ波量子トランスデューサ50は準粒子ノイズを受けにくくなる。
【0047】
光マイクロ波量子トランスデューサ50の構成要素は共通のICチップ上に製造することができる。すなわち、光学構成要素および電気構成要素は両方とも、同じICチップ上に一体化することができる。さらに、このようなICチップは、最新の製造技術を用いることによって、外的位置合わせを必要とすることなく製造することができる。
【0048】
図4は、光マイクロ波量子トランスデューサ100の別の例の3次元図を示す。光マイクロ波量子トランスデューサ100は、図1および図2に示される光マイクロ波量子トランスデューサ4および/または50を実装するために用いることができる。
【0049】
光マイクロ波量子トランスデューサ100は、図2に示される平行ナノフォトニック・スラブ52,54を実装するために用いることができる2つの平行ナノフォトニック・スラブ102,104を含むことができる。光マイクロ波量子トランスデューサ100は、冷却ユニット内に、超伝導のために必要な臨界温度(例えば、約10mK〜約30mK)を下回る温度において格納することができる。
【0050】
平行ナノフォトニック・スラブ102,104の第1のナノフォトニック・スラブ102は、平行ナノフォトニック・スラブ102,104の第2のナノフォトニック・スラブ104を覆うことができる。平行ナノフォトニック・スラブ102,104の各々は、例えば、窒化ケイ素(Si)または同様の材料を用いて実装することができる。いくつかの例では、第2のナノフォトニック・スラブ104は基板内にエッチングすることができる。平行ナノフォトニック・スラブ102,104の各々は光学領域106および超伝導領域108を有することができる。図4は、光学領域106および超伝導領域108を対称的なサイズを有するように示しているが、他の例では、光学領域106および超伝導領域108は非対称的であることができる。
【0051】
第1のナノフォトニック・スラブ102は、支柱を介して基板に固定可能な2つのねじり梁105を含むことができる。ねじり梁105は、第1のナノフォトニック・スラブ102の本体から垂直に延在するカンチレバーとして形成することができる。したがって、第1のナノフォトニック・スラブ102は、本明細書において説明されている方法で、第1のナノフォトニック・スラブ102と第2のナノフォトニック・スラブ104との間の相対運動を提供するべく、軸107を中心として部分的に回転することができる。したがって、第1のナノフォトニック・スラブは、矢印109によって示された方向に部分的に回転する(例えば、ねじれる)ことができる。
【0052】
平行ナノフォトニック・スラブ102,104の光学領域106は、格子孔110(例えば、孔のアレイ)をそれぞれ含むことができる。本例では、格子孔110は六角形状を有する。他の例では、格子のための他の形状を用いることもできる。
【0053】
平行ナノフォトニック・スラブ102,104の超伝導領域108は、超伝導アルミニウムなどの、その上に配置された超伝導材料110の層を有することができる。第1のナノフォトニック・スラブ102上に配置された超伝導材料110は、真空ギャップキャパシタ112の第1のプレートになることができ、第2のナノフォトニック・スラブ104上に配置された超伝導材料110は、真空ギャップキャパシタ112の第2のプレートになることができる。真空ギャップキャパシタ112のキャパシタンスは式2から計算することができる。真空ギャップキャパシタ112の第1のプレートはインダクタ116の第1の端子114に導電的に結合されることができ、真空ギャップキャパシタ112の第2のプレートはインダクタ116の第2の端子118に導電的に結合されることができ、それにより、真空ギャップキャパシタ112およびインダクタ116は並列に接続される。真空ギャップキャパシタ112およびインダクタ116はLC超伝導回路(超伝導キャビティ)を形成することができる。
【0054】
いくつかの例では、インダクタ116は正方形スパイラル形状を有することができる。さらに、本例では、インダクタ116は中央タップが設けられ、真空ギャップキャパシタ112の第1のプレートに導電的に結合される。他の例では、インダクタ116の異なる構成を用いることができる。
【0055】
光信号(例えば、光信号)は、矢印120によって示された方向に第2のナノフォトニック・スラブ104の光学領域106内へ伝達され得る。光信号の光子は、第2のナノフォトニック・スラブ104を通して第1のナノフォトニック・スラブ102へ伝達されて光学キャビティを形成することができる。光学キャビティ内における励起は、第1のナノフォトニック・スラブ102に光圧力を印加することができ、この光圧力は、第1のナノフォトニック・スラブ102を、本明細書において説明されている方法で振動させることができる。したがって、光マイクロ波量子トランスデューサ100は光エネルギーを機械エネルギーに変換することができる。光マイクロ波量子トランスデューサ100の光機械結合率は、式1を用いることによって計算することができる。
【0056】
第1のナノフォトニック・スラブ102の振動は超伝導キャビティ内における電気変調を誘発することができる。すなわち、第1のナノフォトニック・スラブ102の振動は、真空ギャップキャパシタ112上に電荷を生じさせ、それにより、超伝導LC回路上に電流を生じさせることができる。このように、光マイクロ波量子トランスデューサ100は機械エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。光マイクロ波量子トランスデューサ100の電気機械結合率は、式3から求めることができる。光マイクロ波量子トランスデューサ100のねじり周波数は、式4〜式6を用いることによって計算することができる。図4では、ねじり梁の長さは「l」で示され、ねじり梁の幅は「w」で示され、ねじり梁の高さは「h」で示されている。
【0057】
逆に、超伝導LC回路における電流は第1のナノフォトニック・スラブ102を振動させ、これにより電気エネルギーを機械エネルギーに変換することができる。それにより、第1のナノフォトニック・スラブ102の振動は、光マイクロ波量子トランスデューサ100の光学キャビティ内に光子(例えば、励起)を誘発することができる。光子のこのような誘発は光信号を発生させることができ、その光信号は、第2のナノフォトニック・スラブ104を通して光チャネルへ伝達される。
【0058】
光マイクロ波量子トランスデューサ100は量子状態の伝達を促進することができる。具体的には、光マイクロ波量子トランスデューサ100のシステムは、光学モードにおける量子状態(光信号に対応する)を超伝導キャビティ(電気モード)へ対応付けること、またはその逆を可能にする。このような量子状態の伝達は、2つの異なるモード間の通信を可能にする。加えてまたは代替的に、光マイクロ波量子トランスデューサ100のシステムは、反復する光子伝達を可能にし、これは、光学モードにおける散乱が電気モードにおいて反映されること、またはその逆をもたらす。
【0059】
さらに、光マイクロ波量子トランスデューサ100の第1のナノフォトニック・スラブ102は、2つの点、すなわちねじり梁において基板に固定されているのみであるため、光マイクロ波量子トランスデューサ100は比較的低いクランピング損失を有する。加えて、真空ギャップキャパシタ112の第1のプレートおよび第2のプレートは比較的大きくなり得るため、大きな電気機械結合に対応可能な比較的大きなキャパシタンスを達成することができる。さらに、図示されているように、LC超伝導回路の真空ギャップキャパシタ112およびインダクタ116は空間的に分離することができる。このような空間的分離は、比較的大きな関与率および高い協同性を可能にし、電気機械結合率をさらに増大させる。さらに、高い関与率のおかげで、光マイクロ波量子トランスデューサ100は準粒子ノイズを受けにくくなる。
【0060】
図5は、図2に示される第1のナノフォトニック・スラブ52および/または図4に示される第1のナノフォトニック・スラブ102などのナノフォトニック・スラブの各ねじり梁の長さおよび幅(μm単位)に応じて光マイクロ波量子トランスデューサ(例えば、図1図4に示される光マイクロ波量子トランスデューサ4,50,および/または100)のねじり周波数(Ω:MHz)(例えば、振動周波数)をプロットしたグラフ200を示す。図示されているように、各ねじり梁の長さおよび/または幅を増大させると、ねじり周波数は増大する。多くの運用において、所望のねじり周波数は100MHz〜約1GHzになる。図示されているように、また、本明細書に説明されているように、光マイクロ波量子トランスデューサを用いることにより、ねじり周波数のこのような所望の範囲を達成することができる。
【0061】
以上の説明は一例である。構成要素または方法の考え得る組み合わせを全て説明することは無論不可能であり、当業者は、多くのさらなる組み合わせおよび置換が可能であることを認識し得る。それゆえ、この開示は、添付の特許請求の範囲内に含まれるそのような改変、変更、および変形を全て包含することを意図する。本明細書にて使用する「〜を含む」という用語はそれらの構成に限定されないことを意味し、「〜に基づく」という用語は少なくとも一部に基づくことを意味する。加えて、この開示または特許請求の範囲において、「1つの〜」、「第1の〜」、もしくは「別の〜」といった用語により要素、またはその同等物を挙げる場合には、このような要素を1つまたは複数含み、2つ以上のこのような要素を必須とせず、また、除外もしないと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5