【実施例】
【0016】
図1は、実施例1で、本発明の一実施例であり、とんぼの翅構造の一部を模した翼断面図である。
図1中、1は翼上部外板、2は翼下部外板、3は翼前縁、4は翼後縁、5は翼構造体、6は翼である。あらゆる翼構造やプロペラ構造を持つ機械に本発明を設けることが可能であるが、その要は、とんぼの翅構造の一部を模した翼上部外板1と航空機の翼下部の形状を持つ外板2とを合体させ、該両外板の内部を構造体としてなるものである。なお、航空機の該翼下部外板2は、本図のようにほぼ平板のもの、あるいは下に若干膨らんだもの、逆に若干上に膨らんだものなどがある。これらのどれを用いるかは、それらの用途によって適宜使用するのが望ましい。いずれの場合にも翼構造体5に支柱、桁、制御装置、高揚力装置などを構造体として組み込むことが可能であり、また、航空機など大きな翼に本発明を使う場合にあっては燃料タンク、高揚力装置、格納スペースなども設けることも可能である。ちなみに本図は後述する
図3のとんぼの翅構造の一部を模した翼上部外板1と
図7を合体し、その内部を構造体にしてなるものである。本図の翼がいかにして翼として機能するかについて以下のとおり説明する。
【0017】
図2は、とんぼの右前翅の平面図である。7は前縁脈、8は結節、9は縁紋、10は透明膜、11は翅脈、12は三角室、13はとんぼの翅である。このようにとんぼの翅13は大まかにいえば翅脈11に透明幕10を張ったようなもので華奢に出来ている。
【0018】
図3は、
図2のA-A線断面図である。図中13は
図2と同様である。とんぼの翅13の断面図はこのように、想像もつかないような形をしており、このような形でなぜ飛ぶことができるのかと思うほどである。本発明においては、本図のとんぼの翅構造の一部を模した翼上部外板1を要とている。なお、
図2のA-A線の切り取り方によっては若干断面の形が変化するので、使用目的に合った部分を模倣して実用化する。
【0019】
図4は、
図3のとんぼの翅13の断面図により該翅が気流中での作用についての説明図である。
図4中、14は気流、15は渦で、13は
図3と同様である。とんぼが飛行中、とんぼの翅13が気流14の中を
図4に向かって左側に飛行すると、気流14はとんぼの翅13の上部ではとんぼの翅13の凹部に大きな渦15が多数発生してとんぼの翅13と気流14は直接触れ合う部分が少ないため摩擦が非常に少なくなり、とんぼの翅13の上部の気流14は更に非常に速度が速くなるが、逆にとんぼの翅13下部では作られる渦15は小さなものしか発生しないためにとんぼの翅13の下部気流14よりも上部気流14の方が速度が速くなり、ベルヌーイの定理に基づき上方に浮き上がる。また、同時にとんぼの翅13をはばたかせることにより前方にも進むこととなる。なお、とんぼの翅13は前後に2対計4枚あるが、全ての翅を別々の筋肉で働かせることが可能であるために自由自在の飛行が可能となっている。通常の航空機では翼の上下を気流14が流れる場合、気流14と翼は直接触れ合い、摩擦を生ずることから飛行中にはサーッという音が発生する。
しかしながら、とんぼが飛行する場合、その音はほとんど発生しない。これは、前述のように気流14によって渦15が発生することにより、少なくともその部分は気流14ととんぼの翅13が直接触れ合うのではなく、渦15があたかもボールベアリングのように回転して両者間の摩擦が減少するため音が極力抑えられていることと、また、気流14速度も従来の航空機の翼よりも速くなり、従って、揚力も大きくなる。このことから、とんぼの翅13構造は失速しずらく、揚力の大きなものとなっている。このため、航空機などの翼の上部外板をとんぼの翅13構造とすると、さらに燃料も少なくすることが可能となるという大きな利点がある。
【0020】
図5は、航空機の右翼の平面図である。図中、16は補助翼で、6は
図1と同様である。
【0021】
図6は、
図5の航空機の翼のB-B線断面図の一例である。図中、1〜6は
図1と同様である。本図で示す翼6の断面図の翼下部外板は平面部が多く比較的低速の航空機や風車によく見られるタイプで広く使用されている。
【0022】
図7は、
図6の航空機の翼6の翼下部形状を持つ外板2の断面図である。図中、2〜4は
図6と同様である。また、
図1は、本図の翼下部外板2と
図3のとんぼの翅13構造の一部を模した翼上部外板1を合体させたものである。
【0023】
図8は、
図5の翼6のB-B線断面図による説明図である。翼前縁3と翼後縁4を結んだ線の下が膨らんだ翼の例であり、最も一般的な翼の例である。図中、17は翼弦長、18は中心線、19は最大翼厚、20は最大キャンパ、21は翼弦線である。1〜4、6は
図6と同様である。ここで、通常の航空機等の翼6と比較してみたい。航空機の翼やプロペラ、風力発電の翼、タービン翼、スクリュー、扇風機の羽根、へりコプターやオートジャイロの回転翼、ドローンのプロペラなどをはじめ翼構造が使われている機械は多く存在する。これらに使用されている翼の構造を説明する。本図は、主翼の翼型のモデルと各部の名称である。翼前縁3は翼6の前側のふちを指し、翼後縁4は翼6の後ろ側のふちを指す。翼弦線21は翼前縁3と翼後縁4を結んだ直線のことであり、この部分の長さは翼弦長17という。また、翼型は、翼6を翼弦に沿って縦に切った断面のことで翼断面ともいい、流れの速度・粘性などの性質に応じて様々なかたちが存在し、翼6の性能を大きく特徴づける重要な要素となる。中心線18は、翼6の上面と下面から等しい距離にある点を翼前縁3から翼後縁4まで繋いだ線である。翼厚は、翼の最大の厚さを最大翼厚19という。キャンバー20 は、中心線18の反りの大きさを表すもので、中心線18と翼弦線21の差を表す。
【0024】
また、飛行の際に生ずる迎角、揚力、抗力、失速はそれぞれ次のとおりである。迎角は、翼弦線21と流れのなす角度で、揚力の大きさは概ね迎え角に比例して増大する。揚力は、翼6に生じる空気力のうち、流れと垂直な成分である。抗力は、翼に生じる空気力のうち、流れと平行な成分をいう。失速は、翼上面から流れが剥離する現象で、失速状態に陥ると抗力が増大し、揚抗比が小さくなり、また気流の乱れによって安定性が悪化する。上記のことを全て制御して初めて飛行が可能となる。このように航空機や風力発電等の翼は長年の技術革新の積み重ねで現在のものとなっているが、今なお、世界各地でトラブルを起こすことがしばしばある。
【0025】
図9は
図8の翼下部の形状を持つ外板2断面図である。 本図は、通常の航空機の中では厚い翼のものを示す。図中、2〜4は
図7と同様である。
【0026】
図10は実施例2で、本発明の一実施例であり、
図3のとんぼの翅構造の一部を模した翼上部外板1と、
図9の翼下部外板2を合体させ、該両外板の内部を構造体とした翼6の断面図である。図中、1〜6は
図1と同様である。
【0027】
図11は、
図5の翼のB-B線断面図で翼下部外板2が上側に反っている翼6の断面図である。この翼6は厚さが薄く高速飛行をする場合に多く見られるものである。図中、1〜6は
図6と同様である。
【0028】
図12は
図11の翼6の翼下部形状を持つ外板2の断面図である。2〜4は
図9と同様である。
【0029】
図13は、実施例3で、本発明の一実施例であり、
図3のとんぼの翅構造の一部を模した翼上部外板1と、
図12の翼下部外板2を合体させた翼6の断面図である。図中、1〜6は
図10と同様である。
【0030】
図14は実施例4であり、本発明の一実施例である。本発明の翼6を取り付けた垂直軸式風力発電用風車の平面図である。図中、22はブレード、23は風、24は回転軸、25は支持具である。6は
図10と同様である。垂直軸回転式発電用風車の回転軸24に支持具25を設け、その先端に本発明のブレード22(翼6)を設けて風23の通り道に設置すると、ブレード22(翼6)は支持具25とともに回転軸24を中心として回転するが、通常の同風車と比較すると、風速1m以下の風23でも軽く回転する。その理由は
図4で説明したように、とんぼの翅13の凹部に出来る渦がボールベアリングのような役割を果たし、風23とブレード22(翼6)の間の抵抗を著しく低減させるためである。
【0031】
図15は実施例5である。本発明の翼6を取り付けた航空機の一実施例で、更にとんぼと同様に四枚の翼6を取り付けたものの正面図である。図中、26は垂直尾翼、27は胴体、28は水平尾翼で、6は
図10と同様である。本図においては、2対の翼6を前後に配置したもので、前部の1対の翼6は上反角をつけ、後部の1対の翼6は下反角をつけて設置するととんぼと同様にさらに省エネルギーで安定した飛行が出来る。
【0032】
図16は
図15の平面図である。図中、6、26〜28は
図15と同様である。このとき、水平尾翼28にも本発明のとんぼの翅構造の一部を模した翼6を用いると浮力が大きくなるとともに安定した飛行が出来る。
【0033】
図17は実施例6であり、本発明の一実施例である。風力発電用風車に本発明のブレード22(翼6)を取り付けた部分説明図で、風下側から見た場合の状態を示している。図中、6、22、24は
図14と同様である。ブレード22(翼6)として回転軸24に本発明の翼を取り付けたもので、微風でも前述の理由で軽く回転して発電に寄与することが出来る。なお、本説明図を風上側から見た場合、ブレード22(翼6)の下部外板2が風上側に向くことになる。
【0034】
図18は
図17のブレード22(翼6)のC-C線断面図である。図中、1〜6は
図1と同様である。このブレード22(翼6)は風力発電用風車の規模等によって
図1、
図10、
図13のいずれか一を選択出来る。この場合、本図の上部外板1は風下側となり、下部外板2は風上側となる。
【0035】
図19は実施例7であり、本発明の一実施例である。
図10の本発明のブレード22(翼6)等の端部にウイングチップフェンスを設け、さらにブレード22(翼6)の翼下部外板1の一部にフクロウの翼にあるセレーションを模した突起を設けたものの右側面図である。図中、29はウイングチップフェンス、30は突起である。1〜6は
図18と同様である。一般的に翼6の上方と下方を流れる気流の流速が著しく異なるため圧力差が出来る。このため、翼6の上では翼6の下よりも気圧が低くなる。したがって、飛行中の翼6の下側から上側に渦となって気流が回り込むという現象が起き揚力が減少する原因となる。そこで、この減少を食い止めるため、翼6の端部にウイングチップフェンス29を設けることにより、揚力の減少がある程度抑えられ効率的になる。このことは、風力発電用風車の翼や、プロペラなどでも同様におきることから、ウイングチップフェンス29は翼構造を持つものに対しては非常に有効であり、省エネルギーにつながる。なお、ウイングチップフェンス29に換えてレイクドウイングチップまたは後述のウイングレットを設けても良い。また、ふくろうの翼に並ぶセレーションと呼ばれる細かなやや曲がった櫛のような突起30は翼6が飛行中に風を切る音を消すので、これを風力発電用風車のブレード22(翼6)の一部に設けると、近隣住民が現在騒音に悩まされているが緩和されるというメリットがある。この該セレーションは非常に細かなため、
図19〜
図23において記載の該突起30は理解のため誇張略記してある。
【0036】
図20は、
図19の底面図である。図中、2〜4、6、22、29、30は
図19と同様である。なお、本図のウイングチップフェンス29の一部にも突起30を設けても良い。
【0037】
図21は実施例8で、本発明の一実施例である。。
図10の翼の端部にウイングレットを設けたことを示す右側面図である。図中、31はウイングレットであり、1〜6、22、30は
図19と同様である。本図に使用するウイングレット31は、
図19の説明と同様に航空機等の翼端に発生する渦が翼6の上では翼6の下側よりも気流の流れが早くなり気圧が低くなるため翼6の下から上に気流が渦となって上側に回りこみ折角の揚力を減少させてしまうが、翼端に本図のようにウイングレット31を設けると、翼6の上側に回りこむ渦を減少させることが出来るという利点がある。また、本図のブレード22(翼6)にも
図19と同様に突起30を設けてある。この突起30は前述のようにフクロウの翼のセレーションという突起30で、風切り音を低減するという効果がある。
【0038】
図22は、
図21の正面図で翼端部分である。図中、1、2、6、22、30、31は
図21と同様である。本図にあるように、本発明のブレード22(翼6)端部にウイングレット31を設けてある。また、翼6とウイングレット31の下側には
図21と同様に突起30を設けてある。
【0039】
図23は、実施例9で、本発明の一実施例である。図中、1、2、6、22、30、31は
図22と同様で、24、25は
図14と同様である。本発明のブレード22(翼6)に突起30とウイングレット31を設けた風力発電用風車の正面図である。本図の風力発電用風車はとんぼの翅構造を生かした効率的なものであるため、微風でも回転して電気エネルギーを生み出すことが可能である。また、ブレード22(翼6)が2枚であるが、それ以上のブレード枚数を増やすことも可能である。