【文献】
Adv. Drug Deliv. Rev., 2003, Vol.55, No.12, p.1651-1677
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溶液の各成分の濃度は、塩化カリウム:0.5mM〜50mM、塩化カルシウム:0.5mM〜50mM、塩化ナトリウム:1.0mM〜500mM、炭酸水素ナトリウム:1.0 mM〜100mM、塩化マグネシウム:0.1mM〜50mM、クエン酸三ナトリウム:0.1mM〜50mMである、請求項13に記載の薬剤徐放担体。
前記溶液の各成分の濃度は、塩化カリウム:0.5mM〜50mM、塩化カルシウム:0.5mM〜50mM、塩化ナトリウム:1.0mM〜500mM、乳酸ナトリウム:1.0 mM〜100mMである、請求項15に記載の薬剤徐放担体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、従来のコラーゲンを含む薬剤徐放担体又は薬剤徐放方法と比較して、ゲル化速度、徐放作用及び細胞の導入効率が高い徐放担体又は薬剤徐放方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために研究した結果、コラーゲン又はコラーゲン誘導体並びにリンゲル液を含む薬剤徐放担体は、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成した。
【0009】
本発明は以下の通りである。
「1.以下を含む薬剤徐放担体。
(1)コラーゲン又はコラーゲン誘導体
(2)カリウム塩、カルシウム塩及びナトリウム塩を含む溶液
2.前記カリウム塩は塩化カリウム、前記カルシウム塩は塩化カルシウム及び前記ナトリウム塩は塩化ナトリウムである前項1に記載の薬剤徐放担体。
3.前記溶液は、リンゲル液である前項1又は2に記載の薬剤徐放担体。
4.前記リンゲル液は、重炭酸リンゲル液、乳酸リンゲル液、リンゲル基礎液、又は酢酸リンゲル液である前項3に記載の薬剤徐放担体。
5.前記リンゲル液は、重炭酸リンゲル液である前項3に記載の薬剤徐放担体。
6.前記リンゲル液は、乳酸リンゲル液である前項3に記載の薬剤徐放担体。
7.前記溶液は、以下のいずれか1から選択される前項1〜6のいずれか1に記載の薬剤徐放担体。
(1)塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化マグネシウム及びクエン酸三ナトリウムを含む溶液
(2)塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム及び乳酸ナトリウムを含む溶液
(3)塩化カリウム、塩化カルシウム及び塩化ナトリウムを含む溶液
(4)塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム及び酢酸ナトリウム含む溶液
8.前記溶液の各成分の濃度は、以下である前項1〜7のいずれか1に記載の薬剤徐放担体。
塩化カリウム:0.001mM 〜5.00M
塩化カルシウム:0.001mM 〜10.00M
塩化ナトリウム:0.001mM 〜10.00M
炭酸水素ナトリウム:0.001mM 〜2.00M
塩化マグネシウム:0.001mM 〜5.00M
クエン酸三ナトリウム:0.001mM 〜2.00M
乳酸ナトリウム:0.001mM 〜10.00M
酢酸ナトリウム:0.001mM 〜10.00M
9.前記コラーゲン又はコラーゲン誘導体がアテロコラーゲンである前項1〜8のいずれか1に記載の薬剤徐放担体。
10.前記薬剤徐放担体がゲル形成能を有する前項1〜9のいずれか1に記載の薬剤徐放担体。
11.前記薬剤が、核酸、タンパク質、ペプチド、及び/又は低分子化合物である前項1〜10のいずれか1に記載の薬剤徐放担体。
12.前記リンゲル液は、重炭酸リンゲル液であり、かつ前記薬剤が核酸である前項4〜11のいずれか1に記載の薬剤徐放担体。
13.前記リンゲル液は、乳酸リンゲル液であり、かつ前記薬剤が核酸である前項4〜11のいずれか1に記載の薬剤徐放担体。
14.前項1〜13のいずれか1に記載の薬剤徐放担体が表面に塗布されている医療用具。
15.前項1〜13のいずれか1に記載の薬剤徐放担体が細胞培養面に塗布されている細胞培養器具。
16.前項1〜13のいずれか1に記載の薬剤徐放担体を含む薬剤。
17.前項1〜13のいずれか1に記載の薬剤徐放担体又は前項13に記載の薬剤を、ヒトを除く哺乳動物に投与する、薬剤徐放担体の使用。
18.以下の工程を含む薬剤徐放方法、
(1)薬剤と、コラーゲン若しくはコラーゲン誘導体並びにカリウム塩、カルシウム塩及びナトリウム塩を含む溶液を混合して、混合溶液を作成する工程、及び
(2)該混合溶液を、該薬剤を必要とする患者に投与する工程。
19.前記カリウム塩は塩化カリウム、前記カルシウム塩は塩化カルシウム及び前記ナトリウム塩は塩化ナトリウムである前項18に記載の薬剤徐放方法。
20.前記溶液は、リンゲル液である前項18又は19に記載の薬剤徐放方法。
21.前記リンゲル液は、重炭酸リンゲル液、乳酸リンゲル液、リンゲル基礎液、又は酢酸リンゲル液である前項20に記載の薬剤徐放方法。
22.前記リンゲル液は、重炭酸リンゲル液である前項20載の薬剤徐放方法。
23.前記リンゲル液は、乳酸リンゲル液である前項20載の薬剤徐放方法。
24.前記溶液は、以下のいずれか1から選択される前項18〜23のいずれか1に記載の薬剤徐放方法。
(1)塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化マグネシウム及びクエン酸三ナトリウムを含む溶液
(2)塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム及び乳酸ナトリウムを含む溶液
(3)塩化カリウム、塩化カルシウム及び塩化ナトリウムを含む溶液
(4)塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム及び酢酸ナトリウム含む溶液
25.前記溶液の各成分の濃度は、以下である前項18〜24のいずれか1に記載の薬剤徐放方法。
塩化カリウム:0.001mM 〜5.00M
塩化カルシウム:0.001mM 〜10.00M
塩化ナトリウム:0.001mM 〜10.00M
炭酸水素ナトリウム:0.001mM 〜2.00M
塩化マグネシウム:0.001mM 〜5.00M
クエン酸三ナトリウム:0.001mM 〜2.00M
乳酸ナトリウム:0.001mM 〜10.00M
酢酸ナトリウム:0.001mM 〜10.00M
26.前記コラーゲン又はコラーゲン誘導体がアテロコラーゲンである前項18〜25のいずれか1に記載の薬剤徐放方法。
27.前記薬剤徐放担体がゲル形成能を有する前項18〜26のいずれか1に記載の薬剤徐放方法。
28.前記薬剤が、核酸、タンパク質、ペプチド、及び/又は低分子化合物である前項18〜27のいずれか1に記載の薬剤徐放方法。
29.前記リンゲル液は、重炭酸リンゲル液であり、かつ前記薬剤が核酸である前項21〜28のいずれか1に記載の薬剤徐放方法。
30.前記リンゲル液は、乳酸リンゲル液であり、かつ前記薬剤が核酸である前項21〜28のいずれか1に記載の薬剤徐放方法。」
【発明の効果】
【0010】
本発明の薬剤徐放担体又は薬剤徐放方法は、従来の薬剤担体又は薬剤徐放方法と比較して、下記の効果を有する。
(1)ゲル形成能が高いので高濃度の運搬対象(薬剤)を長時間保持することができる。
(2)徐放作用能が高いので長時間薬剤を標的細胞に供給することができる。
(3)薬剤の標的細胞内導入効率が高いので薬効効果が高い。
(4)局所に投与した場合の薬剤流出量を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の薬剤徐放担体)
本発明の「薬剤徐放担体」は、コラーゲン又はコラーゲン誘導体並びにリンゲル液を含む溶液を含む運搬体(担体)である。
【0013】
本発明の「薬剤徐放担体」は、運搬対象を細胞{標的細胞(運搬対象を導入する細胞)}に運搬する作用を有する。さらに、本発明の薬剤徐放担体は、単に運搬対象を細胞に運搬するだけでなく、ゲル形成能が高いので高濃度の運搬対象(薬剤)を長時間保持することができ、徐放作用能が高いので長時間薬剤を標的細胞に供給することができ、さらに薬剤の標的細胞内導入効率が高いので薬効効果が高い。
【0014】
(本発明の薬剤徐放方法)
本発明の「薬剤徐放方法」は、コラーゲン又はコラーゲン誘導体並びにリンゲル液を使用して、運搬対象を細胞{標的細胞(運搬対象を導入する細胞)}に運搬する方法である。さらに、本発明の薬剤徐放方法は、単に運搬対象を細胞に運搬するだけでなく、ゲル形成能が高いので高濃度の運搬対象(薬剤)を長時間保持することができ、徐放作用能が高いので長時間薬剤を標的細胞に供給することができ、さらに薬剤の標的細胞内導入効率が高いので薬効効果が高い。
【0015】
(カリウム塩、カルシウム塩及びナトリウム塩を含む溶液)
本発明の「カリウム塩、カルシウム塩及びナトリウム塩を含む溶液」は、細胞外液補充に用いるために、イオン組成、浸透圧、及び水素イオン濃度を有する生理的電解質溶液を示し、特定の一組成に限定されないが、リンゲル液が好ましい。
カリウム塩としては、塩化カリウム、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硫酸カリウム、それらの水和物等を例示することができるが、好ましくは、塩化カリウムである。
カルシウム塩としては、塩化カルシウム、ヨウ化カルシウム、臭化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、それらの水和物等を例示することができるが、好ましくは、塩化カルシウムである。
ナトリウム塩としては、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、それらの水和物等を例示することができるが、好ましくは、塩化ナトリウムである。
本溶液のpH値は、4.0〜10.0、より好ましくは 6.0〜8.5、さらに好ましくは6.7〜7.8である。さらに、本溶液は、必要に応じて、pH値を調整するために、リン酸緩衝液、HEPES、Na
2 HPO
4 /NaH
2 PO
4等 を含んでも良い。
【0016】
(リンゲル液)
本発明のリンゲル液は、好ましくは、リンゲル基礎液、重炭酸リンゲル液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、又はそれらのリンゲル液に糖質を加えたものを例示することができるが特に限定されない。
糖類としては、キシロース、アラビノース、リボース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、フコース、イノシトール、グルコサミン、エリスリトールが例示され、二糖類としては、スクロース、マルトース、ラクトース、トレハロース、イソマルトースが例示され、三糖類としては、ラフィノース、及び四糖類としてはスタキオースが例示される。
【0017】
(リンゲル基礎液)
本発明で使用するリンゲル基礎液は、少なくとも、塩化カリウム、塩化カルシウム及び塩化ナトリウムを含む、以下の濃度範囲を例示することができる。
塩化カリウムの濃度は、0.001mM〜5.00M、好ましくは0.01mM〜1.00M、より好ましくは0.1mM〜100mM、さらにより好ましくは0.5mM〜50mM、最も好ましくは1.0mM〜10mMである。
塩化カルシウムの濃度は、0.001mM〜10.00M、好ましくは0.01mM〜1.00M、より好ましくは0.1mM〜100mM、さらにより好ましくは0.5mM〜50mM、最も好ましくは1.0mM〜10mMである。
塩化ナトリウムの濃度は、0.001mM〜10.00M、好ましくは0.01mM〜5.00M、より好ましくは0.1mM〜1.00M、さらにより好ましくは1.0mM〜500mM、最も好ましくは50mM〜200mMである。
【0018】
(乳酸リンゲル液)
本発明で使用する「乳酸リンゲル液」は、乳酸ナトリウムを必須とし、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムのいずれかから2以上又は3以上を含めば良い。各成分の濃度は、特に限定されないが、下記を例示することができる。
乳酸ナトリウムの濃度は、0.001mM〜10.00M、好ましくは0.01mM〜1.00M、より好ましくは0.1mM〜500mM、さらにより好ましくは1.0mM〜100mM、最も好ましくは10mM〜50mMである。
塩化カリウムの濃度は、0.001mM〜5.00M、好ましくは0.01mM〜1.00M、より好ましくは0.1mM〜100mM、さらにより好ましくは0.5mM〜50mM、最も好ましくは1.0mM〜10mMである。
塩化カルシウムの濃度は、0.001mM〜10.00M、好ましくは0.01mM〜1.00M、より好ましくは0.1mM〜100mM、さらにより好ましくは0.5mM〜50mM、最も好ましくは1.0mM〜10mMである。
塩化ナトリウムの濃度は、0.001mM〜10.00M、好ましくは0.01mM〜5.00M、より好ましくは0.1mM〜1.00M、さらにより好ましくは1.0mM〜500mM、最も好ましくは50mM〜200mMである。
【0019】
(重炭酸リンゲル液)
本発明で使用する「重炭酸リンゲル液」は、炭酸水素ナトリウムを必須とし、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、クエン酸三ナトリウムのいずれかから3以上又は4以上を含めば良い。各成分の濃度は、特に限定されないが、下記を例示することができる。
炭酸水素ナトリウムの濃度は、0.001mM〜2.00M、好ましくは0.01mM〜1.00M、より好ましくは0.1mM〜500mM、さらにより好ましくは1.0mM〜100mM、最も好ましくは10mM〜50mMである。
塩化カリウムの濃度は、0.001mM〜5.00M、好ましくは0.01mM〜1.00M、より好ましくは0.1mM〜100mM、さらにより好ましくは0.5mM〜50mM、最も好ましくは1.0mM〜10mMである。
塩化カルシウムの濃度は、0.001mM〜10.00M、好ましくは0.01mM〜1.00M、より好ましくは0.1mM〜100mM、さらにより好ましくは0.5mM〜50mM、最も好ましくは1.0mM〜10mMである。
塩化ナトリウムの濃度は、0.001mM〜10.00M、好ましくは0.01mM〜5.00M、より好ましくは0.1mM〜1.00M、さらにより好ましくは1.0mM〜500mM、最も好ましくは50mM〜200mMである。
塩化マグネシウムの濃度は、0.001mM〜5.00M、好ましくは0.005mM〜1.00M、より好ましくは0.01mM〜500mM、さらにより好ましくは0.1mM〜50mM、最も好ましくは0.5mM〜5mMである。
クエン酸三ナトリウムの濃度は、0.001mM〜2.00M、好ましくは0.005mM〜1.00M、より好ましくは0.01mM〜500mM、さらにより好ましくは0.1mM〜50mM、最も好ましくは0.5mM〜5mMである。
【0020】
(酢酸リンゲル液)
本発明で使用する「酢酸リンゲル液」は、酢酸ナトリウムを必須とし、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムのいずれかから2以上又は3以上を含めば良い。各成分の濃度は、特に限定されないが、下記を例示することができる。
酢酸ナトリウムの濃度は、0.001mM〜10.00M、好ましくは0.01mM〜1.00M、より好ましくは0.1mM〜500mM、さらにより好ましくは1.0mM〜100mM、最も好ましくは10mM〜50mMである。
塩化カリウムの濃度は、0.001mM〜5.00M、好ましくは0.01mM〜1.00M、より好ましくは0.1mM〜100mM、さらにより好ましくは0.5mM〜50mM、最も好ましくは1.0mM〜10mMである。
塩化カルシウムの濃度は、0.001mM〜10.00M、好ましくは0.01mM〜1.00M、より好ましくは0.1mM〜100mM、さらにより好ましくは0.5mM〜50mM、最も好ましくは1.0mM〜10mMである。
塩化ナトリウムの濃度は、0.001mM〜10.00M、好ましくは0.01mM〜5.00M、より好ましくは0.1mM〜1.00M、さらにより好ましくは1.0mM〜500mM、最も好ましくは50mM〜200mMである。
【0021】
(コラーゲン又はコラーゲン誘導体)
本発明の「コラーゲン又はコラーゲン誘導体」とは、通常、医療分野、化粧品分野、工業分野及び食品分野で用いられているあらゆる「コラーゲン又はコラーゲン誘導体」を意味する。コラーゲンは、可溶性又は可溶化コラーゲンを用いることが好ましい。
可溶性コラーゲンとは、酸性又は中性の水や塩溶液に可溶であり、可溶化コラーゲンとは、酵素により可溶化される酵素可溶化コラーゲン、アルカリにより可溶化されるアルカリ可溶化コラーゲンがあり、いずれも孔サイズが1マイクロメートルのメンブレンフィルターを通過できることが好ましい。また、コラーゲンは、いかなる動物種から抽出されたものでも用いることが出来るが、好ましくは脊椎動物から抽出されたもの、さらに好ましくは哺乳類、鳥類、魚類から抽出されたもの、より好ましくは変性温度が高い哺乳類、鳥類から抽出されたコラーゲンが望ましい。コラーゲンのタイプもいかなるタイプのコラーゲンでも良いが、動物体内の存在量からI〜V型が好ましい。具体的には例えば、哺乳動物の真皮から酸抽出したI型コラーゲンが挙げられ、より好ましくは例えば、仔牛の真皮から酸抽出したI型コラーゲン、遺伝子工学的に生産されるI型コラーゲンなどが挙げられる。
また、安全性の面から抗原性の高いテロペプチドを酵素的に除去したアテロコラーゲン又は遺伝子工学的に生産されるアテロコラーゲンが望ましく、1000残基あたりチロシン残基が3以下であるアテロコラーゲンがより好ましい。
なお、本発明の好ましいコラーゲン又はコラーゲン誘導体は、アテロコラーゲンである。
【0022】
さらに、上記コラーゲン又はコラーゲン誘導体は、下記の細胞膜透過性ペプチドを付加しても良い。下記のペプチドを付加することにより、標的細胞の導入率を向上させることができる。
(1)TAT(GRKKRRQRRRPQ:配列番号1)
(2)r8{rrrrrrrr (D体-R):配列番号2}
(3)MPG-8(βAFLGWLGAWGTMGWSPKKKRK:配列番号3)
【0023】
(本発明の薬剤徐放担体の作製方法)
本発明の薬剤徐放担体は、自体公知の方法により、コラーゲン又はコラーゲン誘導体、カリウム塩、カルシウム塩及びナトリウム塩を含む溶液、並びに薬剤を混合することにより作製できる。
【0024】
(本発明の薬剤徐放担体の組成)
本発明の薬剤徐放担体は、コラーゲン又はコラーゲン誘導体、並びにカリウム塩、カルシウム塩及びナトリウム塩を含む溶液に加えて、生体親和性材料、添加剤等も含むこともできる。
生体親和性材料としては、例えば、ゼラチン、フィブリン、アルブミン、ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、キチン、キトサン、アルギン酸、ペクチン、アガロース、ハイドロキシアパタイト、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリジメチルシロキサン、又はグリコール酸、乳酸もしくはアミノ酸の重合体もしくはこれらの共重合体、又はこれらの生体親和性材料の2種類以上の混合物等が挙げられる。
添加剤としては、注射剤として用いる場合の等張化剤、pH調節剤、無痛化剤、又は固形剤として用いる場合の賦形剤、崩壊剤、コーティング剤が挙げられる。具体的にはpHを6〜8に保つため、又は細胞と等張に保つために用いられる塩類や糖類が挙げられる。さらに、本発明の薬剤徐放担体は、固体状であっても溶液状であってもよい。本発明の薬剤徐放担体が固体状である場合、そのままの状態又は精製水、生理的食塩水、生体と等張な緩衝液等を用いて溶液状とし、所望の細胞に導入する。
【0025】
さらに、本発明の薬剤徐放担体では、さらに、徐放作用能力を向上させるために、単糖類、二糖類、三糖類及び四糖類から選択される1以上の糖を含んでも良い(参照:特許文献3)。
【0026】
(本発明の薬剤徐放担体の用途)
本発明の薬剤徐放担体の用途は、特に限定されないが、薬剤、医療器具、細胞培養器具、標識剤等に使用することができる。
【0027】
(本発明の薬剤徐放担体の投与方法)
本発明の薬剤徐放担体を生体(ヒトを含む動物、特に、ヒトを含む哺乳類、例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ)に投与する方法としては、経口、注射、点眼、点鼻、経肺、皮膚を介した吸収のいずれでも良く、好ましくは注射である。投与部位は疾患に応じて選択できるが、手術時に必要な部位に直接留置することもできる。例えば、本発明の薬剤徐放担体を、静脈注射(点滴等)による全身投与、患部(癌細胞等)に注射することによる局所投与等が挙げられる。
【0028】
(薬剤徐放方法)
本発明の「薬剤徐放方法」は、少なくとも以下の工程を有する。
(1)薬剤と、コラーゲン若しくはコラーゲン誘導体並びにカリウム塩、カルシウム塩及びナトリウム塩を含む溶液を混合して、混合溶液を作成する工程。
(2)該混合溶液を、該薬剤を必要とする患者に投与する工程。
なお、「薬剤」と「該薬剤を必要とする患者」の組合せは、以下を例示することができるが特に限定されない。
・癌治療剤−癌患者
・筋疾患治療剤−筋疾患患者(筋損傷、筋ジストロフィー)
・骨再生誘導剤−骨欠損患者(軟骨)
・線維症治療剤−線維症患者
・抗炎症剤−炎症疾患患者
・黄斑変性症治療剤−黄斑変性症患者
・皮膚疾患治療剤−皮膚疾患患者
【0029】
(ゲル形成能)
本発明の薬剤徐放担体又は薬剤徐放方法は、下記実施例2の結果により、公知のコラーゲン(アテロコラーゲン)を含む薬剤担体又は薬剤徐放方法と比較して、ゲル形成能が高い。本発明の薬剤徐放担体又は薬剤徐放方法の高いゲル形成能により、高濃度の運搬対象を長期保持することができる。
【0030】
(徐放作用能)
本発明の薬剤徐放担体又は薬剤徐放方法は、下記実施例3の結果により、公知のコラーゲン(アテロコラーゲン)を含む薬剤担体又は薬剤徐放方法と比較して、徐放作用能が高い。本発明の薬剤徐放担体又は薬剤徐放方法の高い徐放作用能により、長時間薬剤を供給することができる。
【0031】
(薬効効果)
本発明の薬剤徐放担体又は薬剤徐放方法は、下記実施例4の結果により、公知のコラーゲン(アテロコラーゲン)を含む薬剤担体又は薬剤徐放方法と比較して、標的細胞内導入効率が高い。本発明の薬剤徐放担体又は薬剤徐放方法の高い細胞導入効率により、薬効効果が高い。
【0032】
(薬剤)
本発明における「薬剤」は、特に限定されないが、核酸、タンパク質、ペプチド、低分子化合物等である。
【0033】
(タンパク質)
酵素や標的受容体に対するアゴニスト・アンタゴニスト、受容体そのもの、抗体等が挙げられるが、特に限定されるものでは無い。
(ペプチド)
低分子のタンパクであり酵素活性を有するものや機能性タンパク質の一部分を合成したもの、標的受容体に対するアゴニスト・アンタゴニスト等が挙げられるが、特に限定されるものでは無い。
(低分子化合物)
低分子医薬である抗癌剤等の腫瘍細胞の死滅に特異的に効果を示すものや、細胞の生理的活性を亢進又は抑制させるものが挙げられるが、特に限定されるものでは無い。
(核酸)
本発明における「運搬対象である核酸」は、ポリヌクレオチドであってもオリゴヌクレオチドであってもよく、またDNAでもRNA分子でもあり得る。DNA分子の場合、プラスミドDNA、cDNA、ゲノミックDNA又は合成DNAであってもよい。またDNA及びRNAはいずれも2本鎖でも1本鎖でもあり得る。1本鎖の場合、コード鎖又は非コード鎖であり得る。「核酸」にはDNA誘導体又はRNA誘導体が含まれ、該誘導体とはホスホロチオエート結合を有する核酸、又は酵素による分解を避ける為にインターヌクレオチドのリン酸部位、糖部分、塩基部分に化学修飾を施した核酸を意味する。また、「核酸」にはアデノウイルス、レトロウイルス等のウイルスも含まれる。
核酸がプラスミドDNA又はウイルス等の遺伝子治療に用いられるベクターである場合、細胞内に導入されたとき、コードした遺伝情報を細胞内で発現するように構成された形態が好ましく、プロモーター等、目的遺伝子の発現に必要な要素を含有する、又は染色体への組み込みを可能とする要素を含有するベクター等である。
【0034】
(医療用具又は細胞培養器具)
本発明は、本発明の薬剤徐放担体が表面に塗布されている医療用具又は細胞培養器具も対象とする。
本発明の薬剤徐放担体を固相表面に塗布し、そこへ標的細胞を接触させると、標的細胞の上から本発明の薬剤徐放担体を滴加するよりも、運搬対象の導入効率が向上する。
本発明の医療用具とは、人工臓器、より具体的には、人工血管、血管を補強する医療用具ステント、粘着シート又は人工心臓が含まれる。
本発明の細胞培養器具とは、細胞培養実験に通常用いられているシャーレ、フラスコ、96穴マイクロプレート、三次元培養担体等が挙げられる。
【0035】
(標的細胞における遺伝子又はタンパク質の機能を調べる方法)
本発明の薬剤徐放担体又は薬剤徐放方法を使用すれば、遺伝子又はタンパク質の標的細胞内での機能を容易に調べることができる。例えば、細胞内に機能を調べたい遺伝子を組み込んだプラスミドDNAを導入して発現させることによってその遺伝子の機能を調べる方法、又は機能を調べたい遺伝子の発現を抑制するsiRNA核酸を細胞内に導入して遺伝子の発現を抑制することによってその遺伝子の機能を調べる方法が有用である。
具体的な測定方法としては、機能を解明したい遺伝子を発現するプラスミドDNA、アデノウイルスベクター又は機能を解明したい遺伝子の発現を抑制するsiRNA核酸と本発明の薬剤徐放担体を混合し、培養プレート固相上に塗布、整列配置する。塗布した薬剤徐放担体を乾燥して固相上に固定した後、細胞を播種し、数日間プレート上で培養する。塗布された薬剤徐放担体は、塗布された部分に接着した細胞に効率的に導入され、機能を調べたい遺伝子を発現又はその発現を長期間抑制する。数日後、細胞の増殖率、形態(表現型)や細胞内での遺伝子発現の状態(遺伝子発現レベル)、又は細胞から産生されたタンパク質の種類や量を調べることによって標的とした遺伝子の機能を明らかにすることができる。
【0036】
(疾患を処置できる運搬対象をスクリーニングする方法)
本発明の薬剤徐放担体又は薬剤徐放方法を使用すれば、遺伝子疾患、癌、AIDS、慢性関節リウマチ、生活習慣病等の様々な疾患を処置し得る候補物質をスクリーニングすることができる。例えば、固相上に疾患の治療効果を調べたい候補物質(例、核酸)と本発明の薬剤徐放担体を混合し、培養プレート固相上に塗布、整列配置する。塗布した薬剤徐放担体を乾燥して固相上に固定した後、細胞を播種し、数日間プレート上で培養する。
候補物質(例、核酸)の効果は、細胞の表現型の変化、細胞死、細胞の増殖、細胞内での遺伝子発現のパターン、産生されるタンパク質の種類や量により解析することができる。
【0037】
(薬剤徐放担体を使用した標的細胞の性質を変える方法)
本発明の薬剤徐放担体又は薬剤徐放方法を使用すれば、標的細胞の性質を変えることができる。例えば、特定の細胞内受容体の活性を抑えるアンタゴニストを運搬対象として、標的細胞に投与すれば、該標的細胞は、該アンタゴニストが投与されていない標的細胞と比較して、受容体の活性を低くすることができる(標的細胞の性質を変えることができる)。
加えて、特定のmRNAを分解できるsiRNAを運搬対象として標的細胞に投与すれば、該mRNAを分解し、そのmRNAがコードする機能性タンパク質の発現量を低減させた細胞を得ることができる。
【0038】
(標識剤)
本発明は、本発明の薬剤徐放担体を含む標識剤も対象とする。例えば、標的細胞等を特異的に認識する物質(標的細胞に特異的に結合するペプチド、タンパク質等)に標識物質を結合させた運搬対象を生体に投与すれば、標的細胞を標識することができる。
【0039】
(薬剤徐放担体又は薬剤徐放方法の具体例)
本発明の薬剤徐放担体又は薬剤徐放方法の好ましい組み合わせは、以下の通りであるが特に限定されず、さらに、必要に応じて、生体親和性材料及び/又は添加剤を含むこともできる。
核酸(薬剤)、コラーゲン又はコラーゲン誘導体、重炭酸リンゲル液
核酸(薬剤)、コラーゲン又はコラーゲン誘導体、乳酸リンゲル液
核酸(薬剤)、コラーゲン又はコラーゲン誘導体、重炭酸リンゲル液及び乳酸リンゲル液
ペプチド(薬剤)、コラーゲン又はコラーゲン誘導体、重炭酸リンゲル液
ペプチド(薬剤)、コラーゲン又はコラーゲン誘導体、乳酸リンゲル液
ペプチド(薬剤)、コラーゲン又はコラーゲン誘導体、重炭酸リンゲル液及び乳酸リンゲル液
タンパク質(薬剤)、コラーゲン又はコラーゲン誘導体、重炭酸リンゲル液
タンパク質(薬剤)、コラーゲン又はコラーゲン誘導体、乳酸リンゲル液
タンパク質(薬剤)、コラーゲン又はコラーゲン誘導体、重炭酸リンゲル液及び乳酸リンゲル液
低分子化合物(薬剤)、コラーゲン又はコラーゲン誘導体、重炭酸リンゲル液
低分子化合物(薬剤)、コラーゲン又はコラーゲン誘導体、乳酸リンゲル液
低分子化合物(薬剤)、コラーゲン又はコラーゲン誘導体、重炭酸リンゲル液及び乳酸リンゲル液
【0040】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
(コラーゲン又はコラーゲン誘導体並びにリンゲル液を含む薬剤徐放担体の作製)
本実施例では、コラーゲン又はコラーゲン誘導体並びにカリウム塩、カルシウム塩及びナトリウム塩を含む溶液を含む薬剤徐放担体の作製をした。詳細は、以下の通りである。
【0042】
(使用した試薬)
使用した試薬は、以下の通りである。
・siRNA:GL3 siRNA ( ホタルルシフェラーゼに対するsiRNA )
配列 ( sense側 ):5'-CUUACGCUGAGUACUUCGA-3'(配列番号4)
・アテロコラーゲン(高研社製品、以下ACと記載)
・塩化ナトリウム(Wako)
・塩化カリウム(Wako)
・塩化カルシウム(Wako)
・塩化マグネシウム・六水和物(Wako)
・炭酸水素ナトリウム(Wako)
・クエン酸三ナトリウム・二水和物(Wako)
・乳酸ナトリウム溶液(50%)(Wako)
・PBS(リン酸緩衝生理食塩水、DSファーマ)
・pH 7.2 リン酸緩衝液(以下PBと記載)
【0043】
重炭酸リンゲル液の組成は、以下の通りである。
塩化ナトリウム:103 mM
塩化カリウム:4 mM
塩化カルシウム:3 mM
炭酸水素ナトリウム:25 mM
塩化マグネシウム:1 mM
クエン酸三ナトリウム:2 mM
【0044】
乳酸リンゲル液の組成は、以下の通りである。
塩化ナトリウム:103 mM
塩化カリウム:4 mM
塩化カルシウム:3 mM
乳酸ナトリウム:28 mM
【0045】
(薬剤徐放担体の作製)
1.1%ACと50 mM GL3 siRNA及び2.2倍濃度の重炭酸又は乳酸リンゲル液を45:10:45の割合で混合した。混合にはローテーターを用い、12rpmで10分間、転倒混和した。
これにより、下記の組成の徐放担体を作製した。
○重炭酸リンゲル液/siRNA画分:0.5%AC/ 5μM GL3 siRNA /重炭酸リンゲル液
○乳酸リンゲル液/siRNA画分:0.5%AC/ 5μM GL3 siRNA /乳酸リンゲル液
コントロールとして、以下も作製した。
○従来バッファー/siRNA画分::0.5%AC/ 5μM GL3 siRNA /50 mM PB/ 0.5×PBS
○乳酸リンゲル液画分:0.5%AC/乳酸リンゲル液
○重炭酸リンゲル液画分:0.5%AC/重炭酸リンゲル液
【実施例2】
【0046】
(本発明の薬剤徐放担体のゲル形成能の確認)
本実施例では、本発明の薬剤徐放担体は、リンゲル液を含むことによりアテロコラーゲンのゲル形成能が変化するかどうかを確認した。詳細は、以下の通りである。
【0047】
(本発明の薬剤徐放担体のゲル形成能の測定)
実施例1で作製した重炭酸リンゲル液/siRNA画分(0.5%AC/ 5μM GL3 siRNA /重炭酸リンゲル液)、乳酸リンゲル液/siRNA画分(0.5%AC/ 5μM GL3 siRNA /乳酸リンゲル液)及び従来バッファー/siRNA画分(0.5%AC/ 5μM GL3 siRNA /50 mM PB/ 0.5×PBS)を撹拌しながら、96wellプレートに全量100μL/wellになるように分注した。
その後、吸光マイクロプレートリーダー(TECAN、サンライズサーモRC-R)を用いて、ゲル化試験を行った(測定温度:37℃、測定波長:400 nm、測定間隔:30秒、測定時間)。測定後、各時間における測定値の平均(n=3)をゲル化試験結果とし、この際の最大勾配時間をゲル形成時間として算出した。
【0048】
(薬剤徐放担体のゲル形成能の測定結果)
薬剤徐放担体のゲル形成能の測定結果を
図1に示す。重炭酸リンゲル液/siRNA画分及び乳酸リンゲル液/siRNA画分のゲル形成時間は約10分であった。一方、コントロールである従来バッファー/siRNA画分のゲル形成時間は60分以上であった。
すなわち、重炭酸リンゲル液/siRNA画分及び乳酸リンゲル液/siRNA画分のゲル形成能は、コントロールである従来バッファー/siRNA画分のゲル形成能と比較して、約6倍であることを確認した。
ゲル形成能が高いことは、「迅速にゲル化するので、運搬対象がゲルに封入されている割合が高く、該運搬対象を長期間保持できる」ことを意味する。一方、ゲル形成能が低いことは、「ゲル化が遅いので、ゲル形成時間内に運搬対象が担体から一部抜けていき、該運搬対象を高濃度で保持できない」ことを意味する。
以上により、本発明の薬剤徐放担体は、従来の薬剤担体と比較して、高濃度の運搬対象を長期間保持することができる。
【実施例3】
【0049】
(本発明の薬剤徐放担体の徐放作用能の確認)
本実施例では、本発明の薬剤徐放担体は、リンゲル液を含むことによりアテロコラーゲンの徐放作用能が変化するかどうかを確認した。詳細は、以下の通りである。
【0050】
(本発明の薬剤徐放担体の徐放作用能の測定)
徐放作用能を測定するために、フィルターチューブ(Millipore, ultra-free-MC, 0.22μm, PVDF, 参照:
図2)を使用した。
4℃下で、該フィルターチューブのフィルター上槽に重炭酸リンゲル液/siRNA画分(0.3%AC/ 50μM GL3 siRNA /重炭酸リンゲル液)又は従来バッファー/siRNA画分(0.3%AC/ 50μM GL3 siRNA /50 mM PB/ 0.5×PBS)を100μl、フィルター下槽にPBS溶液を700μl添加後、37℃下で静置した。上槽のAC中のsiRNAがフィルターを通過して下槽のPBSに放出される様子を調査するために、PBS中のsiRNA濃度を経時的に分光光度計(Thermo scientific, NanoDrop 2000)を用いて測定した。
【0051】
(薬剤徐放担体の徐放作用能の測定結果)
薬剤徐放担体の徐放作用能の測定結果を
図3に示す。重炭酸リンゲル液/siRNA画分は、コントロールである従来バッファー/siRNA画分と比較して、初期に放出する核酸量が少なく核酸を徐々に放出した。重炭酸リンゲル液/siRNA画分のゲルから放出される核酸量が半分になるまでの時間は、従来バッファー/siRNA画分のゲルから放出される核酸量が半分になるまでの時間と比較して、約2倍であった。
すなわち、本発明の薬剤徐放担体の徐放作用能は、従来の薬剤担体の徐放作用能と比較して、約2倍であることを確認した。
【実施例4】
【0052】
(本発明の薬剤徐放担体の運搬対象の標的細胞内導入効率の確認)
本実施例では、実施例1で作製した重炭酸リンゲル液/siRNA画分及び乳酸リンゲル液/siRNA画分が、従来の薬剤担体と比較して、運搬対象の標的細胞内導入効率が向上するかどうかを確認した。詳細は、以下の通りである。
【0053】
(本発明の薬剤徐放担体の運搬対象の標的細胞内導入効率の確認方法)
使用したマウス及び試薬は、以下の通りである。
・マウス:C57BL/6NCrSlc、7-week-old、♀、日本SLC
・細胞:B16F10-C2 SV40 Dual Luc ♯8-4(ルシフェラーゼを恒常発現する細胞株)
・培地:D-MEM +10%FBS+1 mg/ml G418 ( Promega )
D-MEM (Invitrogen)
G418 Sulfate Solution(Invitrogen)
・Dual-Luciferase Reporter Assay System ( Promega )
・1 mlシリンジ ( TERUMO )
・26 G注射針 ( TERUMO )
使用した薬剤担体は、以下の通りである。
○重炭酸リンゲル液/siRNA画分:0.5%AC/ 5μM GL3 siRNA /重炭酸リンゲル液
○乳酸リンゲル液/siRNA画分:0.5%AC/ 5μM GL3 siRNA /乳酸リンゲル液
コントロールとして、以下も使用した。
○PBS (従来バッファー)/siRNA画分:0.5%AC/ 5μM GL3 siRNA /50 mM PB/ 0.5×PBS
○乳酸リンゲル液画分:0.5%AC/乳酸リンゲル液
○重炭酸リンゲル液画分:0.5%AC/重炭酸リンゲル液
○非投与画分:何も投与しない
【0054】
(局所投与方法)
1.
マウスの準備:バリカンでマウスの腰のやや上から後ろ肢の付け根まで毛刈りをした。
2.
細胞液の調整:DMEM(+10%FBS)を使用し、6×10
6 cells/mLに懸濁した。
3.
細胞の移植:調整した細胞液(ルシフェラーゼを恒常発現する細胞を含む液)を、腰の辺りの左右2か所に各50 μL/site(3.0×10
5 cells/site)で移植した。
4.
サンプル投与:細胞を移植してから48時間後、以下の濃度に調整した各画分をマウスの左右の腫瘍に26G注射針を用いてラッピング法で(200 μL /site)投与した。
○重炭酸リンゲル液/siRNA画分:0.5%AC/ 5 μM GL3 siRNA /重炭酸リンゲル液
○乳酸リンゲル液/siRNA画分:0.5%AC/ 5 μM GL3 siRNA /乳酸リンゲル液
○PBS/siRNA画分(コントロール):0.5%AC/ 5 μM GL3 siRNA /50 mM PB/ 0.5×D-PBS
○乳酸リンゲル液画分(コントロール):0.5%AC/乳酸リンゲル液
○重炭酸リンゲル液画分(コントロール):0.5%AC/重炭酸リンゲル液
5.
摘出:画分を投与してから48時間後、腫瘍を摘出した。
6.
ルシフェラーゼアッセイ: Dual-Luciferase Reporter Assay Systemキットを用いてルシフェラーゼ発現抑制率を測定した。具体的には、細胞溶解溶液(該キットに添付)中で腫瘍をホモジナイズし、遠心分離後、上清を採取し、サンプル溶液とした。サンプル溶液20 μLに反応基質試薬(該キットに添付)を100 μLを加え、混合後すぐにマイクロプレートリーダーにて発光光度を測定した。この発光度をホタルの発光光度とした。続いて、反応停止試薬(該キットに添付) を100 μL加え、混合後すぐにマイクロプレートリーダーにて発光光度を測定した。この発光度をウミシイタケの発光光度とした。
測定結果値は、(ホタルの発光光度/ウミシイタケの発光光度)を使用して算出した。
【0055】
(本発明の薬剤徐放担体の運搬対象の標的細胞内導入効率の確認結果)
本発明の薬剤徐放担体の運搬対象の標的細胞内導入効率の確認結果を
図4に示す。
図4の結果から明らかなように、重炭酸リンゲル液画分及び乳酸リンゲル液画分の抑制率は、それぞれ、73.2%及び61.2%であった。一方、PBS画分の抑制率は、49.7%であった。
本発明の薬剤徐放担体が、従来の薬剤担体と比較して、高い増殖抑制効果(高い運搬対象の標的細胞内導入効率)を示した。より詳しくは、重炭酸リンゲル液画分及び乳酸リンゲル液画分の運搬対象の標的細胞内導入効率は、従来の薬剤担体の運搬対象の標的細胞内導入効率と比較して、それぞれ、1.47倍及び1.23倍であった。
加えて、重炭酸リンゲル液画分及び乳酸リンゲル液画分を腫瘍(局所)に投与した場合の流出量(腫瘍内部に入らなかった画分)は、PBS画分を腫瘍(局所)に投与した場合の流出量と比較して、抑えることができた。
【0056】
(総論)
上記すべての実施例の結果より、本発明の薬剤徐放担体又は薬剤徐放方法は、従来の薬剤担体又は薬剤徐放方法と比較して、以下の効果を有することを確認した。
(1)ゲル形成能が高いので高濃度の運搬対象(薬剤)を長時間保持することができる。
(2)徐放作用能が高いので長時間薬剤を標的細胞に供給することができる。
(3)薬剤の標的細胞内導入効率が高いので薬効効果が高い。
(4)局所に投与した場合の薬剤流出量を抑えることができる。