【文献】
守 裕也 外4名,“抵抗低減効果を有する周期的拡大縮小円管内の流れの直接数値計算”,日本機械学会流体工学部門講演会講演論文集,日本,一般社団法人 日本機械学会,2013年11月 9日,第91期
【文献】
柳澤 英希 外3名,“周期的拡大縮小管形状の抵抗低減効果に与える影響”,日本機械学会関東支部20期総会講演会講演論文集,日本,一般社団法人 日本機械学会,2014年 3月13日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記流体輸送管は、前記第1単位流路と前記第2単位流路とが交互に組み合わされて得られる管を内管として備え、前記内管において前記最大面積部の外壁と嵌合する内壁を有する管を外管として備える2重管であることを特徴とする請求項1に記載の流体輸送管。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図面において、同一または類似の構成要素には同一の符号を付している。本発明は、以下に示す実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0018】
実施の形態1.
以下、
図1〜
図5を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る流体輸送管10の一部を当該流体輸送管10の外管14の中心線を通る位置で切断した縦断面図である。
図2は、
図1中の最大面積部16の位置(A−A線)および最小面積部18の位置(B−B線)で流体輸送管10をそれぞれ切断した断面図である。すなわち、
図2は、流体の進行方向に垂直な断面を示している。
図3は、
図1中の一組の第1単位流路12aおよび第2単位流路12bを拡大して示す図である。
【0019】
本実施形態の流体輸送管10の用途は、特に限定されるものではないが、一例として、内燃機関の運転に必要な流体を輸送する管に好適に適用することができる。また、本実施形態では、一例として、流体輸送管10による輸送対象の流体として気体が用いられているものとする。流体が気体である場合には、内燃機関であれば、流体輸送管10は、例えば、空気を輸送する吸気管、排気ガスを輸送する排気管もしくはEGR管、または、気体燃料を輸送する燃料管に適用することができる。
【0020】
本明細書中においては、
図1に示すように、流体が流体輸送管10内を上流側から下流側に向けて移動する方向のことを、「流体の進行方向」と称する。また、本明細書中においては、流体の進行方向に垂直な断面およびその面積を、単に「流路断面」および「流路断面積」と称する。なお、流体輸送管10の外管14のように流路断面積に変化のない直管の場合には、「流体の進行方向」は、直管の中心線と平行な方向となる。
【0021】
流体輸送管10は、内管12と外管14とからなる2重管として構成されている。
図1に示すように、内管12の内部には、第1単位流路12aと第2単位流路12bとを交互に繰り返し連結して得られる流路が形成されている。
【0022】
第1単位流路12aは、流路断面積が下流に向かって連続的に縮小するように形成されている。一方、第2単位流路12bは、流路断面積が下流に向かって連続的に拡大するように形成されている。すなわち、内管12は、流路断面積が周期的に拡大縮小する管として構成されている。本実施形態の構成例では、内管12の流路断面積が最大面積Smaxとなる最大面積部16の断面形状は、
図2(A)に示すように円であり、当該流路断面積が最小面積Sminとなる最小面積部18の断面形状も
図2(B)に示すように円である。
【0023】
外管14は、内管12の最大面積部16の外壁と嵌合する内壁を有する管として構成されている。すなわち、本実施形態の構成例では、最大面積部16の断面形状が円であることと合わせて、外管14の断面形状も円であり、最大面積部16の外径と外管14の内径とが等しくなっている。そして、外管14の流路断面積は、流体の進行方向の位置変化に伴って変化せずに一定である。すなわち、本実施形態の外管14は直管であって円管である。
【0024】
流体輸送管10の内管12では、
図2に示すように、最大面積部16の流路中心と最小面積部18の流路中心とが流体の進行方向と平行な同一直線上にはなく、鉛直方向において偏心している。より具体的には、単位流路12a、12bの各流路断面における重力方向の下端位置P1が流体の進行方向と平行な直線上で揃うように内管12の流路が形成されている。言い換えると、内管12では、重力方向の下端位置P1での流路壁が流体の進行方向と平行になっている。なお、ここでは、重力方向の下端位置P1での流路壁が水平方向に延びる構成例を示しているが、重力方向の下端位置P1での流路壁は、流体の進行方向と平行であるものであれば、水平方向に限らず、鉛直方向に対して傾斜した方向に延びるものであってもよい。
【0025】
(抵抗低減率R
Dと比Aとの関係に基づく比Aの設定)
図4は、
図1に示す流体輸送管10の内管12の流路形状に関する設定を説明するための図である。
図4は、流体輸送管10内に働く全抵抗の低減率(以下、単に「抵抗低減率」と称する)R
Dと比A(=L/((Smax)
1/2-(Smin)
1/2))との関係を示している。ここで、比Aは、第1単位流路12aおよび第2単位流路12bの合計の流路長さLを最大面積Smaxの1/2乗と最小面積Sminの1/2乗との差で除して得られるものである。
【0026】
図4に示すように、比Aの分母(流路長さL)および分子((Smax)
1/2-(Smin)
1/2)の何れか一方もしくは双方を変化させて流体輸送管の形状を変更することによって、抵抗低減率R
Dが変化する。抵抗低減率R
Dを指標とする流体輸送管10の形状評価の基準となる基準管の形状(すなわち、抵抗低減率R
Dがゼロとなる時の流体輸送管の形状)は、次のように定義される。すなわち、一組の単位流路12a、12bにおいて最大面積Smaxから最小面積Sminまでの範囲内で流路断面積が連続的に変化する流路断面の平均流路断面積で流路断面積が一定であり、流路中心線が直線となり、かつ、管の全体の流路長さが流体輸送管10と等しい管が、上記基準管に相当する。
【0027】
図4より、比Aをある範囲(以下、「対象範囲B」と称する)内に設定すると、抵抗低減率R
Dが正の値を示すことが分かる。すなわち、対象範囲B内の比Aが選択された流体輸送管によれば、上記基準管と比べて全抵抗の低減を図れることが分かる。このような抵抗低減が可能となる理由の概要は次の通りである。比Aが小さいということは、一組の単位流路の流路形状が、流路断面積の変化率の大きなものとなることを意味する。比Aが小さくなると、圧力抵抗が増加する。その一方で、対象範囲Bでは摩擦抵抗の減少が圧力抵抗の増加よりも上回る。このため、対象範囲Bでは、全抵抗の低減が可能となる。比Aの調整による全抵抗の低減に関する詳細については、既述した非特許文献1および2において報告されている。
【0028】
本実施形態の流体輸送管10は、
図4を参照して説明した抵抗低減率R
Dと比Aとの関係に関する知見を利用して、抵抗低減率R
Dが正の値となる対象範囲B内に比Aが設定されている。より具体的には、
図4に示すように対象範囲Bの中には特に抵抗低減率R
Dが大きくなる範囲があり、そのような好ましい範囲はシミュレーションもしくは実験によって把握することができる。したがって、上記知見を利用したシミュレーション等の結果に基づいて、抵抗低減を図れる比Aを用いて流体輸送管10の形状を決定することができる。また、抵抗低減率R
Dと比Aとの関係は、輸送対象の流体の如何によらずに基本的な傾向としては同様のものとなる。ただし、対象範囲B自体は、対象となる流れ場のレイノルズ数に応じて変化する。レイノルズ数は、流速、ならびに流体の粘度および密度に基づいて定まる。このため、対象となる流れ場のレイノルズ数を考慮して比Aが決定されることになる。
【0029】
(さらなる抵抗低減効果を得るための構成)
図1〜
図3を再び参照して、流体輸送管10の構成についての説明を継続する。既述したように構成された2重管構造を有する流体輸送管10の内部には、内管12の外壁と外管14の内壁とによって囲まれた空間が存在する。本実施形態の流体輸送管10では、この空間が第1単位流路12aから第2単位流路12bに向かう流れのバイパス流路20として利用される。
【0030】
より具体的には、上記空間をバイパス流路20として利用するために、第1単位流路12aの流路壁には、最大面積部16の内壁よりも径方向の内側に位置する部位に、第1スリット22aが形成されており、第2単位流路12bの流路壁には、最大面積部16の内壁よりも径方向の内側に位置する部位に、第2スリット22bが形成されている。既述したように、流体輸送管10では、重力方向の下端位置P1での流路壁が流体の進行方向と平行になっている。このため、第1単位流路12aのうちで下端位置P1以外の部位での流路壁の形状は、流体の進行方向の位置変化に伴って変化する(より具体的には、下流に向かうにつれて流路をより絞るように変化する)。本実施形態では、このような流路壁のうちで流れの進行に伴う流路断面の変化が周方向において最も大きくなる部位(流体輸送管10では、重力方向上端側の部位)に、第1スリット22aが形成されている。第2単位流路12bに関しても、同様の部位に第2スリット22bが形成されている。ただし、第2単位流路12bの場合には、下端位置P1以外の部位での流路壁の形状は、下流に向かうにつれて流路をより広げるように変化する。これらのスリット22aおよび22bは、流体の進行方向(換言すると、内管12内を流れる流体の主流方向)に沿った方向に延びる開口として形成されている。なお、ここでは、スリット22aおよび22bをそれぞれ1つ備えた構成を例示しているが、スリット22aおよび22bの数は、流体輸送管の仕様に応じて、複数としてもよい。
【0031】
上記のように構成されたバイパス流路20は、第1スリット22aと第2スリット22bとの間に最小面積部18が介在する態様で隣り合う第1スリット22aと第2スリット22bとを連通している。その結果、第1単位流路12aを流れる流体の一部が、第1スリット22aを通ってバイパス流路20に流入し、その後、第2スリット22bを通って第2単位流路12bを流れる流体に合流するようになる。このように、スリット22aおよび22bの存在によって、上記空間が単位流路12aおよび12bと連通し、バイパス流路20として機能するようになる。
【0032】
(実施の形態1に係る流体輸送管の効果)
流体輸送管10の内管12のように流路断面積が周期的に拡大縮小する管形状を備える流体輸送管によれば、主流を脈動化することで流れを層流に近づけて抵抗低減を図ることができる。より具体的には、流路断面の縮小側の流路は、乱れの生成をできるだけ抑制して流れの層流化を図りたい部位である。一方、流路断面の拡大側の流路は、流れの進行とともに乱れが成長していくので、この乱れの成長による乱流化を抑制したい部位である。本実施形態の流体輸送管10では、バイパス流路20を備えたことにより、以下に説明するように、縮小側の第1単位流路12aによる流れの層流化の効果を良好に維持しつつ、拡大側の第2単位流路12b内での乱れの成長を抑制することができる。その結果、さらなる抵抗低減効果を図ることができる。
【0033】
図5は、バイパス流路20を備えたことにより得られる効果を説明するための図である。
図5(A)は、本実施形態の流体輸送管10との対比のために参照する流体輸送管の構成を表した図である。
図5(A)に示すようにバイパス流路を備えていない流体輸送管の場合には、流路断面積の縮小のために流路壁面の傾斜が大きくなる部位があると、流れ方向が変更される成分(
図5(A)中の下向きの成分)が大きくなる。このように流れの向きが大きく曲げられてしまうことは圧力抵抗の増加を招く。また、その後に流路断面積が再び拡大し始める部位において壁面近傍での流れに剥離が生成され易くなる。
【0034】
これに対し、本実施形態の流体輸送管10の場合には、
図5(B)に示すように、第1単位流路12a内の流れの一部が第1スリット22aを介してバイパス流路20に流入する。これにより、流れ方向が変更される成分(
図5(B)中の下向きの成分)が小さくなる。このため、圧力抵抗(形状抵抗)の増加を抑制することができる。これにより、その後に流路断面積が再び拡大し始める第2単位流路12bの壁面近傍において流れの剥離を抑制し、摩擦抵抗の増加を抑制することができる。
【0035】
また、一般に、管内の壁面近傍の部位は、壁面から離れた位置での流れ(すなわち、主流)と比べて乱れが大きくなる部位である。上記構成のバイパス流路20を備えたことにより、流路断面の縮小側の第1単位流路12aでは、乱れが相対的に大きい壁面近傍の流れの一部をバイパス流路20に取り出すことができる(より具体的には、流体の動圧によってバイパス流路20に押し込むことができる)。これにより、乱れの成長に繋がる要素を第1単位流路12a内から取り除けるようになる。このため、第1単位流路12a内の乱れをさらに抑制できるようになる。
【0036】
さらに、第2単位流路12bでは、バイパス流路20を備えたことにより、次のような効果を得ることができる。すなわち、流路断面の拡大側の第2単位流路12bでは、下流に向かうにつれ流速が下がっていくことに伴って壁面近傍の速度境界層が成長していく。バイパス流路20によれば、壁面近傍の速度境界層に対してバイパス流路20から流れを吹き出すことができる(より具体的には、第2スリット22bの出口は負圧となっているので、この負圧によってバイパス流路20内の流体が第2単位流路12b内に吸い出される)。このようなバイパス流路20からの第2単位流路12bへの流体の流入によって壁面近傍の流れが速くなるので、速度境界層が薄くなる。このため、第2単位流路12b内の乱れをさらに抑制できるようになる。
【0037】
また、本実施形態の流体輸送管10は、流路断面積が周期的に拡大縮小する管を内管12とし、この内管12の最大面積部16の外壁と嵌合する内壁を有する管を外管14として備える2重管構造を採用している。これにより、内管12の外壁と外管14の内壁との間に形成される空間を利用してバイパス流路20を形成することができる。このため、バイパス流路を備える流体輸送管の製造が容易となる。また、2重管構造の採用により、内管12に相当する単管を流体輸送管として備える場合と比べて、流体輸送管10の剛性を高く確保することもできる。
【0038】
また、流体輸送管10の内管12では、
図2に示すように、最大面積部16の流路中心と最小面積部18の流路中心とが鉛直方向において偏心している。これにより、後述の
図11に示す流体輸送管80の内管82のように最大面積部の流路中心と最小面積部の流路中心とが流体の進行方向と平行な同一直線上にある管形状を備える場合と比べて、流路断面の変化に伴う水平方向の流路壁形状の変化が小さくなる。このため、水平方向の曲げ強度を改善することができる。
【0039】
また、流体輸送管10の内管12では、重力方向の下端位置P1での流路壁が流体の進行方向と平行になっている。その結果、内管12における重力方向の下部の流路壁から凹凸を無くすことができる。これにより、輸送対象の流体が気体である場合には、例えば内燃機関の吸気管のように管内に凝縮水が生じ得る管を内管12として備える場合に、内管12の重力方向の下部に凝縮水が滞留することなく気体が流れるようにすることができる。このことは、見かけ上の流路断面積の減少による性能低下を抑制することができ、また、凝縮水の集中に起因する管壁の腐食も抑制することができる。
【0040】
また、流体輸送管10では、第1スリット22aは流体の進行方向に沿った開口として形成されている。これにより、流体の動圧を利用して流れの一部をバイパス流路20に好適に導入できるようになる。
【0041】
また、流体輸送管10では、スリット22aおよび22bは、流路断面の変化が相対的に緩やかな最大面積部16の近傍の部位ではなく、当該変化が相対的に急な部位(最小面積部18に近い部位)に形成されている。これにより、
図5を参照して上述した圧力抵抗の増加の抑制効果、および、さらなる乱れの抑制の効果をより効果的に得ることができる。
【0042】
実施の形態2.
次に、
図6を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。
図6は、本発明の実施の形態2に係る流体輸送管30の一部を示す縦断面図である。実施の形態2の流体輸送管30は、基本的な形状については実施の形態1の流体輸送管10と同一である。実施の形態2の流体輸送管30の輸送対象の流体は、一例として、気体ではなく液体とされている。具体的な適用例は、内燃機関であれば、例えば、液体燃料を輸送する燃料管、エンジン冷却水を輸送する冷却水管、または、エンジン潤滑油を輸送する潤滑油管に適用することができる。
【0043】
また、本実施形態の流体輸送管30は、使用時(内燃機関などの機器に用いる場合には搭載時)の管の向きにおいて、実施の形態1の流体輸送管10と相違している。すなわち、
図6に示すように、流体輸送管30は、流体輸送管10とは重力方向における上下が逆となる向きで使用(搭載)されている。その結果、流体輸送管30の内管12では、一組の単位流路12a、12bの各流路断面における重力方向の上端位置P2が流体の進行方向と平行な直線上で揃うように流路が形成されているといえる。言い換えると、内管12では、重力方向の上端位置P2での流路壁が流体の進行方向と平行になっているといえる。なお、ここでは、重力方向の上端位置P2での流路壁が水平方向に延びる構成例を示しているが、重力方向の上端位置P2での流路壁は、流体の進行方向と平行であるものであれば、水平方向に限らず、鉛直方向に対して傾斜した方向に延びるものであってもよい。
【0044】
上記の構成によれば、内管12における重力方向の上部の流路壁から凹凸を無くすことができる。これにより、輸送対象の流体が液体である場合において流れの中にエアが混入もしくは生成することがあっても、内管12の重力方向の上部にエアが滞留することなく液体が流れるようにすることができる。このことは、見かけ上の流路断面積の減少による性能低下を抑制することができる。
【0045】
実施の形態3.
次に、
図7を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。
図7は、本発明の実施の形態3に係る流体輸送管40の特徴部分を説明するための図である。実施の形態3の流体輸送管40は、以下の相違点を除き、実施の形態1または2の流体輸送管10または30と同じ構造を有している。すなわち、流体輸送管40の外管42には、バイパス流路20を流れる流体(気体または液体)のパラメータ(温度、圧力または流量など)を検出するセンサ44が取り付けられている。より具体的には、好ましい配置例として、
図7では、センサ44は、その先端が流体の進行方向における第1スリット22aから第2スリット22bまでの区間においてバイパス流路20内に挿入されている。
【0046】
基本的には、流れの中にセンサ等の突起物を設置すると乱れが増加する。本実施形態の流体輸送管40では、センサ44を備える必要がある場合に当該センサ44はバイパス流路20側に備えられることになる。このため、単位流路12aおよび12b内の主流に乱れを与えることなく、流体のパラメータの検出を行えるようになる。
【0047】
実施の形態4.
次に、
図8を参照して、本発明の実施の形態4について説明する。
図8は、本発明の実施の形態4に係る流体輸送管50の特徴部分を説明するための図である。実施の形態4の流体輸送管50は、以下の相違点を除き、実施の形態1または2の流体輸送管10または30と同じ構造を有している。すなわち、流体輸送管50の外管52には、バイパス流路20から分岐する分岐流路54aを有する分岐管54が接続されている。分岐管54には、流体輸送管50を内燃機関の排気管に適用した場合であれば、例えばEGR管が該当する。より具体的には、好ましい構成例として、分岐管54の開口54bは、流体の進行方向における第1スリット22aから第2スリット22bまでの区間において外管52の壁面に形成されている。
【0048】
流れを分岐させる場合には、分岐する流れは吸い出し流となる。流れに対する垂直方向において当該流れの一部を取り出す場合には、分岐流路には静圧分のみが作用するため、分流量は少なく、かつ、分岐流路のエッジ部にて剥離が発生し、摩擦抵抗の増加要因となる。本実施形態の流体輸送管50によれば、バイパス流路20から流れを分岐させている。これにより、内管12内の流れに対して剥離の影響を与えることなく、流れを分岐させることができる。また、本構成によれば、第1スリット22aの向きを適切に調整することで、第1スリット22aに作用する動圧を利用して効率的な分流を行うことも可能である。なお、第2スリット22b側には負圧が作用しているので、第2スリット22bからバイパス流路20への流れの流入は少ない。したがって、第2単位流路12b側での乱れの増加はないと考えられる。
【0049】
実施の形態5.
次に、
図9を参照して、本発明の実施の形態5について説明する。
図9は、本発明の実施の形態5に係る流体輸送管60の特徴部分を説明するための図である。実施の形態5の流体輸送管60は、以下の相違点を除き、実施の形態1または2の流体輸送管10または30と同じ構造を有している。すなわち、流体輸送管60の外管62には、バイパス流路20に合流する合流流路64aを有する合流管64が接続されている。合流管64には、流体輸送管60を内燃機関の吸気管に適用した場合であれば、例えばEGR管が該当する。より具体的には、好ましい構成例として、合流管64の開口64bは、流体の進行方向における第1スリット22aから第2スリット22bまでの区間において外管
62の壁面に形成されている。
【0050】
流れを合流させる場合には、合流する流れは吹き出し流となる。このような吹き出し流の場合には、流れの中に突起物を設置する場合と同様に、乱れの増加要因となる。したがって、乱れの影響をなるべく小さくしつつ合流させるためには、流れに沿って合流させる必要がある。本実施形態の流体輸送管60によれば、バイパス流路20に流れを合流させることにより、合流した流れは第2スリット22bを介して第2単位流路12b内に導入されることになる。これにより、内管12内の流れの向きをできるだけ阻害することなく流れを合流させることができる。なお、縮小側の第1スリット22aには第1単位流路12a側からの流れの動圧が作用する。このため、合流した流れが第1スリット22aを介して吹き出すことはほとんど無く、第1単位流路12a側での乱れの増加がないと考えられる。
【0051】
その他実施の形態.
図10は、本発明の変形例に係る流体輸送管70を示す図である。
図10に示す流体輸送管70は、2重管構造を採用することなく第1単位流路12aと第2単位流路12bとを交互に連結して構成された管である。この例に示すように、第1スリット22aと第2スリット22bとを連通するバイパス流路72aは、第1単位流路12aおよび第2単位流路12bの外側に形成された流路であって、第1単位流路12aの壁と第2単位流路12bの壁とを接続するバイパス管72によって構成されていてもよい。このようなバイパス管72の一例として、ここでは直線的に延びる直管を例示している。直管であれば、第1スリット22aと第2スリット22bとの間が最短距離で結ばれることになる。ただし、本発明におけるバイパス流路は、必ずしも、第1開口と第2開口との間を上記の直管の例のように最短距離で結ぶものに限られない。なお、バイパス管72の数は、流体輸送管の仕様に応じて、1または複数の任意の数とされる。
【0052】
図11は、本発明の変形例に係る流体輸送管80を示す図である。
図11に示す流体輸送管80は、第1単位流路82aと第2単位流路82bとを交互に連結して得られる管を内管82として備え、内管82の最大面積部86の外壁と嵌合する内壁を有する管を外管84として備える2重管である。この例は、流路断面の中心線が直線となる態様で内管82の流路断面が周期的に拡大縮小するようになっているという点において、実施の形態1の流体輸送管10と相違している。また、この例では、内管82の外壁と外管84の内壁とによって囲まれた空間をバイパス流路88として利用している。しかしながら、この例の態様で流路断面が変化する流体輸送管のバイパス流路は、2重管構造を採用することなく例えば
図10に示す例と同様の手法で構成されたものであってもよい。
【0053】
図12は、本発明の変形例に係る流体輸送管90の流路断面を示す図である。
図12に示す流体輸送管90は、内管92の流路断面形状が楕円であるという点において、内管12の流路断面形状が円である流体輸送管10と相違している。この例に示すように、本発明において流路断面が周期的に拡大縮小する管の流路断面形状は、円以外の任意の形状であってもよい。このことは、流体輸送管が2重管構造を採用しているか否かには関係なく、また、流路断面の変化の態様が
図11に示すものであっても同様である。
【0054】
内管92の流路断面形状を楕円とすることで、円形状を用いる内管12と比べて、流路断面の変化に伴う水平方向の流路壁形状の変化をより小さくすることができる。このため、水平方向の曲げ強度を効果的に改善することができる。
【0055】
図13は、本発明の変形例に係る流体輸送管100の流路断面を示す図である。
図13に示す流体輸送管100は、第1および第2単位流路12aおよび12bの壁面にそれぞれ形成される第1および第2開口が円形状の第1連通孔102aおよび第2連通孔102bであるという点において、角断面のスリット22aおよび22bを利用する流体輸送管10と相違している。
【0056】
図14は、本発明の変形例に係る流体輸送管110の流路断面を示す図である。
図14に示す流体輸送管110は、内管112に形成される第1スリット114aおよび第2スリット114bの方向が実施の形態1の流体輸送管10と相違している。より具体的には、上述した例のスリット22aおよび22b、もしくは連通孔102aおよび102bは流体の進行方向に沿った開口として形成されているのに対し、この例のスリット114aおよび114bは内管112の厚さ方向に沿った開口として形成されている。この例のスリット114aおよび114bの形成手法によれば、板状の材料に対してスリット114aおよび114bを形成したうえで内管112の形状を得るための加工を行うことで内管112を製造できるようになる。このため、内管112の生産性を高めることができる。ただし、スリット114aおよび114bの形成方向が流れの進行方向と合っていないため、同一断面積で比較すると、スリット22aおよび22bと比べてスリット114aおよび114bを通過するガス量が少なくなる。したがって、スリット22aおよび22bと比べてスリットの数を多くする必要がある。なお、第1および第2開口としてスリットに代えて連通孔を利用する場合にも、この例の手法を用いてもよい。
【0057】
また、本発明における第1および第2開口は、スリットもしくは連通孔に限らず、例えば、多孔質体(例えば、スチールウール)を流路壁に備えることによって得られるものであってもよい。
【0058】
図15は、本発明の変形例に係る流体輸送管120の流路断面を示す図である。
図15に示す流体輸送管120は、一例として内管122と外管124とによる2重管構造を有しており、流体の進行方向が変化する基本形状を有する曲がり管として構成されている。このように、本発明の流体輸送管は、流体の進行方向が直線的となる直管である流体輸送管10等に限らず、曲がり管に適用してもよく、曲がり管への適用時であっても、摩擦抵抗の低減を主因とする抵抗低減効果を得ることができる。なお、曲がり管を対象とした場合における本発明の「基準管」は、例えば、以下のように設定することができる。すなわち、この場合の基準管としては、一組の単位流路122a、122bにおいて最大面積Smaxから最小面積Sminまでの範囲内で流路断面積が連続的に変化する流路断面の平均流路断面積で流路断面積が一定であり、流路中心線が流体輸送管120の流体の進行方向と平行な曲線となり、かつ、管の全体の流路長さが流体輸送管120と等しい管を挙げることができる。