(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
抗がん剤が、PI3Kをモジュレートする化合物、RTKをモジュレートする化合物及びその組合せからなる群から選択される、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
前記少なくとも2つのRTKが、HER1/HER2二量体、HER1/HER3二量体、HER2/HER3二量体、HER2/HER2二量体、HER2/HER4二量体、p95HER2/HER3二量体及びp95HER2/HER2二量体からなる群から選択されるメンバーである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
i)第1の活性化状態非依存性抗体が促進部分で直接標識され、かつii)第2の活性化状態非依存性抗体がシグナル増幅対の第1のメンバーで直接標識される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
i)第2の活性化状態非依存性抗体が、活性化状態非依存性抗体にコンジュゲートされる結合対の第1のメンバーと、シグナル増幅対の第1のメンバーにコンジュゲートされる結合対の第2のメンバーの間の結合を介してシグナル増幅対の第1のメンバーで標識され、かつii)結合対の第1のメンバーがビオチンであり、及び/又は結合対の第2のメンバーがストレプトアビジンである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
PI3K複合体のレベルを、i)少なくとも2つの受容体チロシンキナーゼ(RTK)の二量体化、ii)PI3Kp85サブユニット及びPI3Kp110サブユニットを含む前記PI3K複合体のために生成される標準曲線に対して較正することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
前記少なくとも2つのRTKが、HER1/HER2二量体、HER1/HER3二量体、HER2/HER3二量体、HER2/HER2二量体、HER2/HER4二量体、p95HER2/HER3二量体及びp95HER2/HER2二量体からなる群から選択されるメンバーである、請求項10〜11のいずれか一項に記載の方法。
第2の検出抗体が、第2の検出抗体にコンジュゲートされる結合対の第1のメンバーと、シグナル増幅対の第1のメンバーにコンジュゲートされる結合対の第2のメンバーの間の結合を介して、シグナル増幅対の第1のメンバーで標識される、請求項10〜15のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0010]一態様では、本発明は、それらに限定されないが、HER1/HER2二量体、HER1/HER3二量体、HER2/HER3二量体、HER2/HER2二量体、HER2/HER4二量体、p95HER2/HER3二量体、p95HER2/HER2二量体などを含む、受容体チロシンキナーゼのホモ又はヘテロ二量体化(例えば、二量体対)を検出及び/又は定量化するためのアッセイを提供する。
【0011】
[0011]特定の態様では、アッセイは以下の3つの抗体を含む:
(1)二量体対の1つのメンバーに特異的な捕捉抗体、
(2)二量体対の第1のメンバーに特異的で、捕捉抗体と異なるドメインに特異的である第1の検出抗体、及び
(3)二量体対の第2のメンバーに特異的な第2の検出抗体。
【0012】
[0012]特定の一実施形態では、受容体チロシンキナーゼの二量体化を検出及び/又は定量化するための近接アッセイは、以下を含む。
(i)細胞抽出物を捕捉抗体の1つ又は複数の希釈系列と共にインキュベートして複数の捕捉された分析物を形成すること、
(ii)複数の捕捉された分析物を、二量体化される分析物の対の第1のメンバー及び第2のメンバーにそれぞれ特異的な、第1の又は複数の第1の活性化状態非依存性抗体及び第2の又は複数の第2の活性化状態非依存性抗体を含む検出抗体と共にインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された二量体化分析物を形成することであって、
第1の検出抗体が促進部分で標識され、第2の検出抗体がシグナル増幅対の第1のメンバーで標識され、促進部分が、シグナル増幅対の第1のメンバーへ導かれてそれと反応する酸化剤を生成すること、
(iii)複数の検出可能な捕捉された二量体化分析物をシグナル増幅対の第2のメンバーと共にインキュベートして増幅されたシグナルを生成すること、並びに
(iv)シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから生成される増幅されたシグナルを検出すること。
【0013】
[0013]好ましい態様では、増幅されるシグナルの量は、二量体化される受容体チロシンキナーゼの量と相関する。
【0014】
[0014]捕捉抗体及び検出抗体は、好ましくは、分析物との結合(すなわち、捕捉及び検出抗体の両方はそれらの対応するシグナル伝達分子に同時に結合することができる)に関してそれらの間の競合を最小にするように選択される。
【0015】
[0015]一部の実施形態では、本発明の方法は、乳房、結腸直腸、胃、肺又はすい臓のがんなどの固形腫瘍がんを発症する危険にあるか、それが疑われるか、それと診断される患者で、1つ又は複数の発癌性RTK(例えば、HER1、HER2、HER3、p95HER2、cMET及びIGF−1R)のRTK活性化(例えば、リン酸化)状態を判定するために用いられる。
【0016】
[0016]一態様では、本発明は、がんを有するか有することが疑われる対象のための治療を選択する方法を提供し、そこで、この方法は:
(a)少なくとも2つの受容体チロシンキナーゼ(RTK)の二量体化の測定であって、(i)細胞抽出物を捕捉抗体の1つ又は複数の希釈系列と共にインキュベートして複数の捕捉された分析物を形成することと、(ii)複数の捕捉された分析物を、二量体化される分析物の対の第1のメンバー及び第2のメンバーにそれぞれ特異的な、第1の又は複数の第1の活性化状態非依存性抗体及び第2の又は複数の第2の活性化状態非依存性抗体を含む検出抗体と共にインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された二量体化分析物を形成することであり、第1の活性化状態非依存性抗体は促進する部分で標識され、第2の活性化状態非依存性抗体はシグナル増幅対の第1のメンバーで標識され、促進する部分はシグナル増幅対の第1のメンバーへ導かれてそれと反応する酸化剤を生成することと、(iii)複数の検出可能な捕捉された二量体化分析物をシグナル増幅対の第2のメンバーと共にインキュベートして増幅されたシグナルを生成することと;(iv)シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから生成される増幅されたシグナルを検出することとを含む測定と、
(b)少なくとも2つのRTKの二量体化を同じ2つのRTKの参照二量体化プロファイルと比較することによる抗がん剤の選択であって、参照二量体化プロファイルが抗がん剤の非存在下で生成される選択とを含む。
【0017】
[0017]一部の実施形態では、本方法は、少なくとも2つのRTKの二量体化のレベルを、前記少なくとも2つのRTKについて生成される標準曲線に対して較正することをさらに含む。
【0018】
[0018]一部の実施形態では、抗がん剤の投与の後に、がんを有する対象から細胞抽出物が単離される。一部の実施形態では、細胞抽出物は抗がん剤と接触させる。一部の実施形態では、抗がん剤は、PI3Kをモジュレートする化合物、RTKをモジュレートする化合物及びその組合せからなる群から選択される。
【0019】
[0019]一部の実施形態では、細胞抽出物は、乳房、肺、すい臓、結腸直腸及び胃のがんからなる群から選択されるがんを有するか有することが疑われる対象から単離される。
【0020】
[0020]一部の実施形態では、少なくとも2つのRTKは、HER1/HER2二量体、HER1/HER3二量体、HER2/HER3二量体、HER2/HER2二量体、HER2/HER4二量体、p95HER2/HER3二量体及びp95HER2/HER2二量体からなる群から選択されるメンバーである。
【0021】
[0021]一部の実施形態では、第1の活性化状態非依存性抗体は、促進部分で直接に標識される。一部の実施形態では、促進部分はグルコースオキシダーゼである。一部の実施形態では、グルコースオキシダーゼ及び活性化状態非依存性抗体は、スルフヒドリル活性化デキストラン分子とコンジュゲートされる。一部の実施形態では、スルフヒドリル活性化デキストラン分子は、約500kDaの分子量を有する。一部の実施形態では、結合対の第1のメンバーはビオチンであり、及び/又は結合対の第2のメンバーはストレプトアビジンである。
【0022】
[0022]一部の実施形態では、第2の活性化状態非依存性抗体は、シグナル増幅対の第1のメンバーで直接に標識される。
【0023】
[0023]一部の実施形態では、第2の活性化状態非依存性抗体は、活性化状態非依存性抗体にコンジュゲートされる結合対の第1のメンバーと、シグナル増幅対の第1のメンバーにコンジュゲートされる結合対の第2のメンバーの間の結合を通して、シグナル増幅対の第1のメンバーで標識される。
【0024】
[0024]一部の実施形態では、捕捉抗体は、ガラス、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ、紙、膜、繊維束及びその組合せからなる群から選択される固体支持体の上にある。一部の実施形態では、捕捉抗体は、アドレス可能なアレイの固体支持体に固定される。
【0025】
[0025]一部の実施形態では、シグナル増幅対の第1のメンバーはペルオキシダーゼである。一部の実施形態では、ペルオキシダーゼは西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)である。一部の実施形態では、シグナル増幅対の第2のメンバーはチラミド試薬である。一部の実施形態では、チラミド試薬はビオチン−チラミドである。
【0026】
[0026]一部の実施形態では、増幅されるシグナルは、活性化チラミドを生成するための、ビオチン−チラミドのペルオキシダーゼ酸化によって生成される。
【0027】
[0027]一部の実施形態では、活性化チラミドは、直接に検出される。一部の実施形態では、活性化チラミドは、シグナル検出試薬の添加により検出される。
【0028】
[0028]一部の実施形態では、シグナル検出試薬は、ストレプトアビジン標識蛍光団である。一部の実施形態では、シグナル検出試薬は、ストレプトアビジン標識ペルオキシダーゼと発色性試薬の組合せである。一部の実施形態では、発色性試薬は、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)である。
【0029】
[0029]他の実施形態では、本発明の方法は、療法を最適化し、毒性を低減し、治療の有効性を監視し、及び/又は療法への適応性の非応答性を検出するために、1つ又は複数の発癌タンパク質を発現すると既に判定されている対象で実施される。
【0030】
[0030]一部の実施形態では、本発明の方法は、乳房、結腸直腸、胃、肺又はすい臓のがんなどの固形腫瘍がんを発症する危険があるか、それを有すると疑われるか、それと診断される対象で、RTK活性化又はリン酸化状態を測定するために用いられる。
【0031】
[0031]他の実施形態では、本発明の方法は、乳房、結腸直腸、胃、肺又はすい臓のがんなどの固形腫瘍がんを発症する危険があるか、それを有すると疑われるか、それと診断される対象で、RTK二量体化状態を測定するために用いられる。
【0032】
[0032]特定の実施形態では、本発明の方法は、抗がん療法において再発した対象におけるRTKの二量体化及び/又は活性化状態を測定するために、並びに、腫瘍細胞が既存の抗がん療法に適応したかどうか、又は対象がPI3K阻害剤若しくはPI3K阻害剤併用療法を受けるべきかどうかについて判定するために用いられる。
【0033】
[0033]一部の実施形態では、本発明の方法は、抗がん療法において再発した対象におけるRTKの二量体化及び/又は活性化状態を測定するために、並びに、腫瘍細胞が既存の抗がん療法に適応したかどうか、又は対象がRTK阻害剤若しくはRTK阻害剤併用療法を受けるべきかどうかについて判定するために用いられる。
【0034】
[0034]別の態様では、本発明は、PI3K複合体の量並びにPI3K複合体の活性化及び/又はリン酸化の量を検出及び/又は定量化(例えば測定)する方法を提供する。PI3K複合体は、以下を含む:i)二量体化された受容体チロシンキナーゼ対;ii)PI3K p85サブユニット及びPI3K p110(例えば、α又はβサブユニット)。
【0035】
[0035]特定の態様では、アッセイは以下の3つの抗体を含む:
(1)PI3K p85又はPI3K p110サブユニットのいずれかに特異的な捕捉抗体、
(2)二量体対の第1のメンバー、又はPI3Kサブユニットに特異的であり、捕捉抗体と異なるドメインに特異的である第1の検出抗体であって、PI3Kサブユニットは活性化されてよい第1の検出抗体、及び
(3)二量体対の第2のメンバー、又はPI3Kサブユニットに特異的な第2の検出抗体。
【0036】
[0036]一態様では、本発明は、がんを有するか有することが疑われる対象のための治療を選択する方法を提供し、この方法は:
(a)PI3K複合体の活性化のレベルの測定であって、前記PI3K複合体が、i)少なくとも2つの受容体チロシンキナーゼ(RTK)の二量体化、ii)PI3K p85サブユニット及びPI3K p110サブユニットを含み、前記測定が:(i)細胞抽出物を捕捉抗体の1つ又は複数の希釈系列と共にインキュベートして複数の捕捉された分析物を形成することと、(ii)複数の捕捉された分析物を、a)二量体化受容体チロシンキナーゼ対の1つのメンバーに特異的な第1の又は複数の第1の活性化状態非依存性抗体を含む第1の検出抗体又はb)PI3K p110サブユニットに特異的な第1の又は複数の第1の活性化状態非依存性抗体を含む第1の検出抗体、並びに、a)二量体化受容体チロシンキナーゼ対の1つのメンバー、PI3K p85若しくはPI3K p110サブユニットに特異的な第2の若しくは複数の第2の活性化状態非依存性抗体、又はb)PI3K p85サブユニット及び/若しくはPI3K p110サブユニットに特異的な活性化状態依存性抗体のいずれかを含む第1の検出抗体と共にインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された二量体化複合型分析物を形成することであって、第1の検出抗体が促進部分で標識され、第2の検出抗体がシグナル増幅対の第1のメンバーで標識され、促進部分が、シグナル増幅対の第1のメンバーへ導かれてそれと反応する酸化剤を生成することと、複数の検出可能な捕捉された二量体化分析物をシグナル増幅対の第2のメンバーと共にインキュベートして増幅されたシグナルを生成することと、シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから生成される増幅されたシグナルを検出することとを含む測定、並びに
(b)PI3K複合体の活性化のレベルを参照PI3K複合体の活性化プロファイルと比較することによる抗がん剤の選択であって、参照二量体化プロファイルが抗がん剤の非存在下で生成される選択とを含む。
【0037】
[0037]一部の実施形態では、PI3K複合体のレベルは、i)少なくとも2つの受容体チロシンキナーゼ(RTK)の二量体化;ii)PI3K p85サブユニット及びPI3K p110サブユニットを含む前記PI3K複合体のために生成される標準曲線に対して較正される。
【0038】
[0038]一部の実施形態では、抗がん剤の投与の後に、がんを有する対象から細胞抽出物が単離される。一部の実施形態では、細胞抽出物は抗がん剤と接触させる。一部の実施形態では、抗がん剤は、PI3Kをモジュレートする化合物、RTKをモジュレートする化合物及びその組合せからなる群から選択される。
【0039】
[0039]一部の実施形態では、少なくとも2つのRTKは、HER1/HER2二量体、HER1/HER3二量体、HER2/HER3二量体、HER2/HER2二量体、HER2/HER4二量体、p95HER2/HER3二量体及びp95HER2/HER2二量体からなる群から選択されるメンバーである。
【0040】
[0040]一部の実施形態では、第1の活性化状態非依存性抗体は、促進部分で直接に標識される。一部の実施形態では、促進部分はグルコースオキシダーゼである。一部の実施形態では、グルコースオキシダーゼ及び活性化状態非依存性抗体は、スルフヒドリル活性化デキストラン分子とコンジュゲートされる。一部の実施形態では、スルフヒドリル活性化デキストラン分子は、約500kDaの分子量を有する。
【0041】
[0041]一部の実施形態では、結合対の第1のメンバーはビオチンであり、及び/又は結合対の第2のメンバーはストレプトアビジンである。
【0042】
[0042]一部の実施形態では、第2の活性化状態非依存性抗体は、シグナル増幅対の第1のメンバーで直接に標識される。
【0043】
[0043]一部の実施形態では、第2の活性化状態非依存性抗体は、活性化状態非依存性抗体にコンジュゲートされる結合対の第1のメンバーと、シグナル増幅対の第1のメンバーにコンジュゲートされる結合対の第2のメンバーとの間の結合を通して、シグナル増幅対の第1のメンバーで標識される。
【0044】
[0044]一部の実施形態では、捕捉抗体は、ガラス、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ、紙、膜、繊維束及びその組合せからなる群から選択される固体支持体の上にある。一部の実施形態では、捕捉抗体は、アドレス可能なアレイの固体支持体に固定される。
【0045】
[0045]一部の実施形態では、シグナル増幅対の第1のメンバーはペルオキシダーゼである。一部の実施形態では、ペルオキシダーゼは西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)である。一部の実施形態では、シグナル増幅対の第2のメンバーはチラミド試薬である。一部の実施形態では、チラミド試薬は、ビオチン−チラミドである。
【0046】
[0046]一部の実施形態では、増幅されるシグナルは、活性化チラミドを生成するための、ビオチン−チラミドのペルオキシダーゼ酸化によって生成される。
【0047】
[0047]一部の実施形態では、活性化チラミドは直接に検出される。一部の実施形態では、活性化チラミドは、シグナル検出試薬の添加により検出される。
【0048】
[0048]一部の実施形態では、シグナル検出試薬は、ストレプトアビジン標識蛍光団である。一部の実施形態では、シグナル検出試薬は、ストレプトアビジン標識ペルオキシダーゼと発色性試薬の組合せである。一部の実施形態では、発色性試薬は、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)である。
【0049】
[0049]一態様では、本発明は、対象がPI3K阻害剤又はPI3K阻害剤併用療法を受けるべきかどうかについて判定するために用いられる方法を提供する。
【0050】
[0050]別の態様では、本発明は、抗がん療法において再発した対象がPI3K阻害剤又はPI3K阻害剤併用療法を受けるべきかどうかについて判定するために用いられる方法を提供する。
【0051】
[0051]別の態様では、本発明は、療法を最適化し、毒性を低減し、治療の有効性を監視し、及び/又は療法への適応性の非応答性を検出するために、1つ又は複数の発癌タンパク質を発現すると既に判定されている対象で実施されるべき方法を提供する。
【0052】
[0052]一部の実施形態では、本発明の方法は、乳房、結腸直腸、胃、肺又はすい臓のがんなどの固形腫瘍がんを発症する危険があるか、それを有すると疑われるか、それと診断される対象で、PI3Kの活性化又はリン酸化状態を測定するために用いられる。
【0053】
[0053]一部の実施形態では、本発明の方法は、乳房、結腸直腸、胃、肺又はすい臓のがんなどの固形腫瘍がんを発症する危険があるか、それを有すると疑われるか、それと診断される対象で、PI3Kの複合体生成状態を測定するために用いられる。
【0054】
[0054]一部の実施形態では、本発明の方法は、抗がん療法において再発した対象におけるPI3Kの複合体生成及び/又は活性化状態を測定するために、並びに、腫瘍細胞が既存の抗がん療法に適応したかどうか、又は対象がPI3K阻害剤若しくはPI3K阻害剤併用療法を受けるべきかどうかについて判定するために用いられる。
【0055】
[0055]一部の実施形態では、本発明の方法は、抗がん療法において再発した対象におけるPI3Kの複合体生成及び/又は活性化状態を測定するために、並びに、腫瘍細胞が既存の抗がん療法に適応したかどうか、又は対象がRTK阻害剤若しくはRTK阻害剤併用療法を受けるべきかどうかについて判定するために用いられる。
【0056】
[0056]本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から当業者に明らかになる。
[発明の詳細な説明]
【0057】
I.序論
[0109]PI3Kシグナル伝達経路は正常な生理的細胞代謝及び生存機能を媒介することが公知であるが、経路の異常な活性化は腫瘍形成又は腫瘍転移につながることがある。多くのがん細胞では、特に化学療法の後、PI3K経路を通してのシグナル伝達は上方制御される。さらに、PI3K活性化は、広範囲の抗がん療法に対する治療抵抗性を予測する。他の鍵となる発癌経路が収束して、PI3K経路と影響し合うことも示されている。
【0058】
[0110]腫瘍治療の開発の1つのアプローチは、これらの経路を通しての細胞内シグナル伝達をブロックすることである。PI3K経路阻害剤の使用がPI3K活性化を有する乳がん患者で劇的な抗がん応答を導き出すことができることを、前臨床モデルは実証した。PIK3CA突然変異の存在がPI3K療法に応答した患者と相関しなかったことは最も興味深い。本発明の方法は、PI3K経路活性化及びPI3Kシグナル伝達と収束する他のシグナル伝達経路を測定する(例えば、検出して定量化する)ために用いられる。これらの方法は、PI3K阻害剤及びPI3K阻害剤併用療法に臨床的に感受性になるがん患者の選択で有益である。治療の進行に従って、がん細胞で活性であるシグナル伝達経路を連続して監視することは、治療の有効性に関する追加の情報を医師に提供して、例えば、同じか別のシグナル伝達経路を活性化するさらなる異常を通してがん細胞が治療に対して抵抗性になった場合に、特定の治療クールを続けるか、別の系列の治療に切り替えるかを医師に促すことができる。
【0059】
[0111]本明細書で本方法は、抗がん療法に応じて腫瘍細胞が1つ又は複数の代償のシグナル伝達経路を活性化することができることを確かめるために用いられた。いかなる特定の理論によっても縛られないが、阻害剤の直接の標的でない関連シグナル伝達経路を活性化することによって、腫瘍細胞は特定の経路阻害剤に適応すると考えられている。したがって、一部のがんでは、治療への最適応答を達成するようにPI3K阻害剤の併用療法に要求することができる。さらに、これらの知見は、臨床状況で活性化シグナル伝達経路を監視する方法の必要性を鮮明にする。
【0060】
II.定義
[0112]本明細書で用いるように、以下の用語は、特に明記しない限りそれらに帰される意味を有する。
【0061】
[0113]用語「がん」は、異常な細胞の無制御の増殖を特徴とする疾患のクラスのあらゆるメンバーを含む。この用語は、悪性、良性、軟組織又は固形と特徴づけられようが全ての既知のがん及び新生物状態、並びに転移前後のがんを含む全ての段階及びグレードのがんを含む。異なる種類のがんの例には、それらに限定されないが、乳がん;肺がん(例えば、非小細胞肺がん);消化器及び胃腸のがん、例えば結腸直腸がん、消化管間質腫瘍、胃腸カルチノイド腫瘍、結腸がん、直腸がん、肛門がん、胆管がん、小腸がん及び胃(胃部)がん;食道がん;胆嚢がん;肝がん;膵がん;虫垂がん;卵巣がん;腎臓がん(例えば、腎細胞がん);中枢神経系のがん;皮膚がん;リンパ腫;絨毛がん;頭けい部がん;骨原性肉腫;並びに血液がんが含まれる。本明細書で用いるように、「腫瘍」は1つ又は複数のがん性細胞を含む。一実施形態では、乳房腫瘍は、侵襲性であるかin situ形の腺管がん又は小葉がんの対象に由来する。別の実施形態では、乳房腫瘍は、再発性であるか転移性の乳がんの対象に由来する。
【0062】
[0114]用語「分析物」には、その存在、量(発現レベル)、活性化状態及び/又は同一性が判定される対象の任意の分子、一般的にはポリペプチドなどの巨大分子が含まれる。特定の例では、分析物は、例えばHER2(ErbB2)シグナル伝達経路の構成要素などのシグナル伝達分子である。
【0063】
[0115]用語「シグナル伝達分子」又は「シグナルトランスデューサ」には、細胞の中での順序良く連続した生化学反応を一般的に含む、細胞外のシグナル又は刺激を細胞が応答に変換する過程を実行するタンパク質及び他の分子が含まれる。シグナル伝達分子の例には、それらに限定されないが、受容体チロシンキナーゼ、例えばEGFR(例えば、EGFR/HER1/ErbB1、HER2/Neu/ErbB2、HER3/ErbB3、HER4/ErbB4)、VEGFR1/FLT1、VEGFR2/FLK1/KDR、VEGFR3/FLT4、FLT3/FLK2、PDGFR(例えば、PDGFRA、PDGFRB)、c−KIT/SCFR、INSR(インスリン受容体)、IGF−IR、IGF−IIR、IRR(インスリン受容体関連受容体)、CSF−1R、FGFR1〜4、HGFR1〜2、CCK4、TRK A〜C、c−MET、RON、EPHA1〜8、EPHB1〜6、AXL、MER、TYRO3、TIE1〜2、TEK、RYK、DDR1〜2、RET、c−ROS、V−カドヘリン、LTK(白血球チロシンキナーゼ)、ALK(未分化リンパ腫キナーゼ)、ROR1〜2、MUSK、AATYK1〜3及びRTK106;受容体チロシンキナーゼのトランケーション形、例えばアミノ末端細胞外ドメインの欠落しているトランケーションされたHER2受容体(例えば、p95ErbB2(p95m)、p110、p95c、p95nなど);受容体チロシンキナーゼ二量体(例えば、p95HER2/HER3、p95HER2/HER2、HER2/HER2、HER2/HER3、HER1/HER2、HER2/HER3、HER2/HER4など);非受容器チロシンキナーゼ、例えばBCR−ABL、Src、Frk、Btk、Csk、Abl、Zap70、Fes/Fps、Fak、Jak、Ack及びLIMK;チロシンキナーゼシグナル伝達カスケードの構成要素、例えばAKT(例えば、AKT1、AKT2、AKT3)、MEK(MAP2K1)、ERK2(MAPK1)、ERK1(MAPK3)、PI3K(例えば、PIK3CA(p110)、PIK3R1(p85))、PDK1、PDK2、ホスファターゼ及びテンシン同族体(PTEN)、SGK3、4E−BP1、P70S6K(例えば、p70 S6キナーゼスプライス変異体アルファI)、タンパク質チロシンホスファターゼ(例えば、PTP1B、PTPN13、BDP1など)、RAF、PLA2、MEKK、JNKK、JNK、p38、Shc(p66)、Ras(例えば、K−Ras、N−Ras、H−Ras)、Rho、Rac1、Cdc42、PLC、PKC、p53、サイクリンD1、STAT1、STAT3、ホスファチジルイノシトール4,5−二リン酸(PIP2)、ホスファチジルイノシトール3,4,5−三リン酸(PIP3)、mTOR、BAD、p21、p27、ROCK、IP3、TSP−1、NOS、GSK−3β、RSK1〜3、JNK、c−Jun、Rb、CREB、Ki67及びパキシリン;核ホルモン受容体、例えばエストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、アンドロゲン受容体、糖質コルチコイド受容体、無機質コルチコイド受容体、ビタミンA受容体、ビタミンD受容体、レチノイド受容体、甲状腺ホルモン受容体及びオーファン受容体;核内受容体活性化補助因子及びリプレッサー、例えば、それぞれ乳がん1(AIB1)及び核内受容体コリプレッサー1(NCOR)で増幅されるもの;並びにその組合せが含まれる。
【0064】
[0116]用語「PI3K経路変化」は、PI3K遺伝子突然変異、PI3K遺伝子増幅及び/又はPTEN喪失による、PI3Kシグナル伝達経路の異常な調節不全を指す。
【0065】
[0117]用語「受容体型チロシンキナーゼ」又は「RTK」は、細胞外の、膜貫通型の細胞内部分を有すると各々特徴づけられる、受容体ファミリーの任意のメンバーを含むが、非受容体型チロシンキナーゼは完全に細胞内である。受容体ファミリーは、多様な生物学的活性を有する多数の膜貫通受容体で構成される。実際、受容体型チロシンキナーゼの約20個の異なるサブファミリーが同定されている。HER(ErbB)サブファミリーと称される1つのチロシンキナーゼサブファミリーは、EGFR(HER1)、HER2、HER3及びHER4で構成される。これまでに同定されたこのサブファミリーの受容体のリガンドには、上皮増殖因子、TGF−アルファ、アンフィレグリン、HB−EGF、ベータセルリン及びヘレグリンが含まれる。これらの受容体型チロシンキナーゼの別のサブファミリーはインスリンサブファミリーであり、それにはINS−R、IGF−IR及びIR−Rが含まれる。PDGFサブファミリーには、PDGF−アルファ及びベータ受容体、CSFIR、c−kit及びFLK−IIが含まれる。
【0066】
[0118]用語「HER2シグナル伝達経路の構成要素」には、HER2の上流リガンド、HER2の結合パートナー及び/又はHER2を通してモジュレートされる下流エフェクター分子のいずれか1つ又は複数が含まれる。HER2シグナル伝達経路の構成要素の例には、それらに限定されないが、ヘレグリン、HER1/ErbB1、HER2/ErbB2、HER3/ErbB3、HER4/ErbB4、AKT(例えば、AKT1、AKT2、AKT3)、MEK(MAP2K1)、ERK2(MAPK1)、ERK1(MAPK3)、PI3K(例えば、PIK3CA(p110)、PIK3R1(p85))、PDK1、PDK2、PTEN、SGK3、4E−BP1、P70S6K(例えば、スプライス変異体アルファI)、タンパク質チロシンホスファターゼ(例えば、PTP1B、PTPN13、BDP1など)、HER2二量体(例えば、p95HER2/HER3、p95HER2/HER2、HER2/HER2、HER2/HER3、HER1/HER2、HER2/HER3、HER2/HER4など)、GSK−3β、PIP2、PIP3、p27及びその組合せが含まれる。
【0067】
[0119]用語「HER3シグナル伝達経路の構成要素」には、HER3の上流リガンド、HER3の結合パートナー及び/又はHER3を通してモジュレートされる下流エフェクター分子のいずれか1つ又は複数が含まれる。HER3シグナル伝達経路の構成要素の例には、それらに限定されないが、ヘレグリン、HER1/ErbB1、HER2/ErbB2、HER3/ErbB3、HER4/ErbB4、AKT(例えば、AKT1、AKT2、AKT3)、MEK(MAP2K1)、ERK2(MAPK1)、ERK1(MAPK3)、PI3K(例えば、PIK3CA(p110)、PIK3R1(p85))、PDK1、PDK2、PTEN、SGK3、4E−BP1、P70S6K(例えば、スプライス変異体アルファI)、タンパク質チロシンホスファターゼ(例えば、PTP1B、PTPN13、BDP1など)、HER2二量体(例えば、p95HER2/HER3、p95HER2/HER2、HER2/HER2、HER2/HER3、HER1/HER2、HER2/HER3、HER2/HER4など)、GSK−3β、PIP2、PIP3、p27及びその組合せが含まれる。
【0068】
[0120]用語「腫瘍適応」には、腫瘍の細胞が抗がん療法に曝露させられ、治療薬の直接の標的であるシグナル伝達経路に関連するかその近くのシグナル伝達経路を活性化する過程が含まれる。腫瘍細胞は、標的特異的療法によってもたらされる妨害又は阻害を補償する機構として、関連する/近くのシグナル伝達経路を活性化する。
【0069】
[0121]用語「活性化状態」は、その活性化形のHER2シグナル伝達経路構成要素などの特定のシグナル伝達分子を含む。同様に、用語「活性化レベル」は、HER2シグナル伝達経路構成要素などの特定のシグナル伝達分子がどの程度活性化されるかを指す。活性化状態は、1つ又は複数のシグナル伝達分子のリン酸化、ユビキチン化及び/又は複合体生成状態に一般的に対応する。活性化状態(括弧中に記載される)の非限定例には、以下のものが含まれる。EGFR(EGFRvIII、リン酸化(p−)EGFR、EGFR:Shc、ユビキチン化(u−)EGFR、p−EGFRvIII);ErbB2(p−ErbB2、p95HER2(トランケーションされたErbB2)、p−p95HER2、ErbB2:Shc、ErbB2:PI3K、ErbB2:EGFR、ErbB2:ErbB3、ErbB2:ErbB4);ErbB3(p−ErbB3、ErbB3:PI3K、p−ErbB3:PI3K、ErbB3:Shc);ErbB4(p−ErbB4、ErbB4:Shc);c−MET(p−c−MET);AKT1(p−AKT1);AKT2(p−AKT2);AKT3(p−AKT3);PTEN(p−PTEN);P70S6K(p−P70S6K);MEK(p−MEK);ERK1(p−ERK1);ERK2(p−ERK2);PDK1(p−PDK1);PDK2(p−PDK2);SGK3(p−SGK3);4E−BP1(p−4E−BP1);PIK3R1(p−PIK3R1);c−KIT(p−c−KIT);ER(p−ER);IGF−1R(p−IGF−1R、IGF−1R:IRS、IRS:PI3K、p−IRS、IGF−1R:PI3K);INSR(p−INSR);FLT3(p−FLT3);HGFR1(p−HGFR1);HGFR2(p−HGFR2);RET(p−RET);PDGFRA(p−PDGFRA);PDGFRB(p−PDGFRB);VEGFR1(p−VEGFR1、VEGFR1:PLCγ、VEGFR1:Src);VEGFR2(p−VEGFR2、VEGFR2:PLCγ、VEGFR2:Src、VEGFR2:硫酸ヘパリン、VEGFR2:VE−カドヘリン);VEGFR3(p−VEGFR3);FGFR1(p−FGFR1);FGFR2(p−FGFR2);FGFR3(p−FGFR3);FGFR4(p−FGFR4);TIE1(p−TIE1);TIE2(p−TIE2);EPHA(p−EPHA);EPHB(p−EPHB);GSK−3β(p−GSK−3β);NFKB(p−NFKB)、IKB(p−IKB、p−P65:IKB);BAD(p−BAD、BAD:14−3−3);mTOR(p−mTOR);Rsk−1(p−Rsk−1);Jnk(p−Jnk);P38(p−P38);STAT3(p−STAT3);Fak(p−Fak);Rb(p−Rb);Ki67;p53(p−p53);CREB(p−CREB);c−Jun(p−c−Jun);c−Src(p−c−Src);及びパキシリン(p−パキシリン)。
【0070】
[0122]本明細書で用いるように、用語「希釈系列」は、特定の試料(例えば、細胞溶解物)又は試薬(例えば、抗体)の一連の下降濃度を含むものとする。希釈系列は、試料又は試薬の開始濃度の測定された量と希釈剤(例えば、希釈緩衝液)とを混合して、より低い濃度の試料又は試薬を作製する過程、及び所望の数の連続希釈を得るのに十分な回数までこの過程を繰り返すことによって一般的に生成される。試料又は試薬は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、500又は1000倍に連続希釈して、試料又は試薬の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45又は50段階の下降濃度を含む希釈系列を生成することができる。例えば、1mg/mlの開始濃度の捕捉抗体試薬の2倍連続希釈を含む希釈系列は、捕捉抗体の開始濃度の量と希釈緩衝液の等量を混合して0.5mg/ml濃度の捕捉抗体を作製し、この過程を繰り返して0.25mg/ml、0.125mg/ml、0.0625mg/ml、0.0325mg/mlなどの捕捉抗体濃度を得ることによって生成することができる。
【0071】
[0123]本明細書で用いられる用語「優れたダイナミックレンジ」は、わずか1つの細胞又は何千もの細胞で特定の分析物を検出するアッセイの能力を含む。例えば、本明細書に記載されるイムノアッセイは、捕捉抗体濃度の希釈系列を用いて、約1〜10,000個の細胞(例えば、約1、5、10、25、50、75、100、250、500、750、1000、2500、5000、7500又は10,000個の細胞)で対象の特定のシグナル伝達分子を有利に検出するので、優れたダイナミックレンジを有する。
【0072】
[0124]本明細書で用いるように、用語「循環細胞」は、固形腫瘍から転移又は微小転移した腫瘍外細胞を含む。循環細胞の例には、それらに限定されないが、循環する腫瘍細胞、がん幹細胞及び/又は腫瘍へ移動する細胞(例えば、循環する内皮始原細胞、循環する内皮細胞、循環する血管新生促進骨髄細胞、循環する樹状細胞など)が含まれる。循環細胞を含有する患者試料は、いかなる入手可能な生物体液(例えば、全血、血清、血漿、痰、気管支洗浄液、尿、乳首吸引液、リンパ、唾液、微細針吸引液など)から得ることができる。特定の例では、全血試料は、血漿又は血清分画及び細胞性分画(すなわち、細胞ペレット)に分離される。細胞性分画は、赤血球、白血球及び/又は固形腫瘍の循環細胞、例えば循環腫瘍細胞(CTC)、循環内皮細胞(CEC)、循環内皮始原細胞(CEPC)、がん幹細胞(CSC)、リンパ節の播種性腫瘍細胞及びその組合せを一般に含有する。血漿又は血清分画は、なかでも、固形腫瘍の循環細胞によって放出される核酸(例えば、DNA、RNA)及びタンパク質を通常含有する。
【0073】
[0125]一般的に、循環細胞は、例えば免疫磁気分離(例えば、Racilaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95巻:4589〜4594頁(1998年);Bilkenrothら、Int.J.Cancer、92巻:577〜582頁(2001年)を参照)、Immunicon(Huntingdon Valley、PA)によるCellTracks(登録商標)システム、微流動分離(例えば、Mohamedら、IEEE Trans.Nanobiosci.、3巻:251〜256頁(2004年);Linら、要旨第5147号、第97回AACR年次総会、Washington,D.C.(2006年)を参照)、FACS(例えば、Mancusoら、Blood、97巻:3658〜3661頁(2001年)を参照)、密度勾配遠心法(例えば、Bakerら、Clin.Cancer Res.、13巻:4865〜4871頁(2003年)を参照)、及び消耗方法(例えば、Meyeら、Int.J.Oncol.、21巻:521〜530頁(2002年)を参照)を含む1つ又は複数の分離法を用いて患者試料から単離される。
【0074】
[0126]本明細書で用いられる用語「試料」には、患者から得られる任意の生物検体が含まれる。試料には、限定されずに、全血、血漿、血清、赤血球、白血球(例えば、末梢血単核細胞)、管洗浄液、乳首吸引液、リンパ(例えば、リンパ節の播種性腫瘍細胞)、骨髄穿刺液、唾液、尿、大便(すなわち、糞便)、痰、気管支洗浄液、涙、微細針吸引液(例えば、ランダムな乳輪周囲微細針吸引によって収集されるもの)、任意の他の体液、組織試料(例えば、腫瘍組織)、例えば腫瘍(例えば、針生検)若しくはリンパ節(例えば、センチネルリンパ節生検)の生検材料、及びその細胞抽出物が含まれる。一部の実施形態では、試料は、全血又はその分画構成要素、例えば血漿、血清又は細胞ペレットである。好ましい実施形態では、試料は、当技術分野で公知である任意の技術を用いて、全血又はその細胞分画から固形腫瘍の循環細胞を単離することによって得られる。他の実施形態では、試料は、例えば乳房の固形腫瘍からの、ホルマリンで固定され、パラフィン包埋された(FFPE)腫瘍組織試料である。
【0075】
[0127]「生検」は、診断又は予後診断評価のための組織試料を取り出す過程、及び組織検体それ自体を指す。本発明の方法及び組成物へ、当技術分野で公知である任意の生検技術を適用することができる。適用される生検技術は、他の要素の中でも、評価される組織型並びに腫瘍のサイズ及び型(すなわち、固形又は懸濁状(すなわち、血液又は腹水))によって一般に決まる。代表的な生検技術には、切採生検、切開生検、針生検(例えば、コア針生検、微細針吸引生検など)、外科生検及び骨髄生検が含まれる。生検技術は、例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine、Kasperら編、第16版、2005年、第70章及びパートV全体で議論される。当業者は、所与の組織試料でがん性及び/又は前がん性の細胞を同定するために、生検技術を実施することができることを理解するであろう。
【0076】
[0128]用語「対象」又は「患者」又は「個体」には一般的にヒトが含まれるが、他の動物、例えば他の霊長類、齧歯動物、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ブタなどが含まれてもよい。
【0077】
[0129]「アレイ」又は「マイクロアレイ」は、固体支持体、例えばガラス(例えば、ガラススライド)、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ(例えば、磁気ビーズ、ポリスチレンビーズなど)、紙、膜(例えば、ナイロン、ニトロセルロース、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)、繊維束、又は他の任意の適する基材に固定化されるか固定される捕捉抗体の異なるセット及び/又は希釈系列を含む。捕捉抗体は、共有結合性又は非共有結合性の相互作用(例えば、イオン結合、疎水性の相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、双極子双極子結合)を通して固体支持体に一般に固定化されるか固定される。特定の例では、捕捉抗体は、固体支持体に結合している捕捉剤と相互作用する捕捉タグを含む。本明細書に記載されるアッセイで用いられるアレイは、異なる既知の/アドレス可能な場所の固体支持体の表面に結合している複数の異なる捕捉抗体及び/又は捕捉抗体濃度を一般的に含む。
【0078】
[0130]用語「捕捉抗体」は、細胞抽出物などの試料中の対象の1つ又は複数の分析物に特異的な(すなわち、結合するか、結合されるか複合体を形成する)固定化抗体を含むものとする。特定の実施形態では、捕捉抗体は、アレイの固体支持体に固定される。様々なシグナル伝達分子のいずれかを固体支持体に固定化するのに適する捕捉抗体は、Upstate(Temecula、CA)、Biosource(Camarillo、CA)、Cell Signaling Technologies(Danvers、MA)、R&D Systems(Minneapolis、MN)、Lab Vision(Fremont、CA)、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz、CA)、Sigma(St.Louis、MO)及びBD Biosciences(San Jose、CA)から入手可能である。
【0079】
[0131]本明細書で用いられる用語「検出抗体」には、試料中の対象の1つ又は複数の分析物に特異的な(すなわち、結合するか、結合されるか複合体を形成する)検出可能な標識を含む抗体が含まれる。本用語は、検出可能な標識を含む別の種がその抗体に結合することができる、対象の1つ又は複数の分析物に特異的である抗体も包含する。検出可能な標識の例には、それらに限定されないが、ビオチン/ストレプトアビジン標識、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)標識、化学反応性標識、蛍光性標識、酵素標識、放射性標識及びその組合せが含まれる。様々なシグナル伝達分子のいずれかの活性化状態及び/又は総量を検出するのに適する検出抗体は、Upstate(Temecula、CA)、Biosource(Camarillo、CA)、Cell Signaling Technologies(Danvers、MA)、R&D Systems(Minneapolis、MN)、Lab Vision(Fremont、CA)、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz、CA)、Sigma(St.Louis、MO)及びBD Biosciences(San Jose、CA)から入手可能である。非限定例として、EGFR、c−KIT、c−Src、FLK−1、PDGFRA、PDGFRB、AKT、MAPK、PTEN、Raf及びMEKなどのシグナル伝達分子の様々なリン酸化形に対するホスホ特異抗体はSanta Cruz Biotechnologyから入手可能である。
【0080】
[0132]用語「活性化状態依存性抗体」には、試料中の対象の1つ又は複数の分析物の特定の活性化状態に特異的な(すなわち、結合するか、結合されるか複合体を形成する)検出抗体が含まれる。好ましい実施形態では、活性化状態依存性抗体は、1つ又は複数のシグナル伝達分子などの1つ又は複数の分析物のリン酸化、ユビキチン化及び/又は複合体生成状態を検出する。一部の実施形態では、受容体チロシンキナーゼのEGFRファミリーのメンバーのリン酸化及び/又はEGFRファミリーメンバーの間のヘテロダイマー複合体の形成は、活性化状態依存性抗体を用いて検出される。特定の実施形態では、活性化状態依存性抗体は、以下のシグナル伝達分子の1つ又は複数で1つ又は複数のリン酸化部位を検出するのに有益である(リン酸化部位はヒトタンパク質配列のアミノ酸の位置に対応する):EGFR/HER1/ErbB1(例えば、チロシン(Y)1068);ErbB2/HER2(例えば、Y1248);ErbB3/HER3(例えば、Y1289);ErbB4/HER4(例えば、Y1284);SGK3(例えば、トレオニン(T)256及び/又はセリン(S)422);4E−BP1(例えば、T70);ERK1(例えば、T202及び/又はY204);ERK2(例えば、T202);MEK(例えば、S217及び/又はS221);PIK3R1(例えば、Y688);PDK1(例えば、S241);P70S6K(例えば、T229、T389及び/又はS421);c−MET(例えば、Y1349);PTEN(例えば、S380);AKT1(例えば、S473及び/又はT308);AKT2(例えば、S474及び/又はT309);AKT3(例えば、S472及び/又はT305);GSK−3β(例えば、S9);NFKB(例えば、S536);IKB(例えば、S32);BAD(例えば、S112及び/又はS136);mTOR(例えば、S2448);Rsk−1(例えば、T357及び/又はS363);Jnk(例えば、T183及び/又はY185);P38(例えば、T180及び/又はY182);STAT3(例えば、Y705及び/又はS727);FAK(例えば、Y576);Rb(例えば、S249、T252及び/又はS780);p53(例えば、S392及び/又はS20);CREB(例えば、S133);c−Jun(例えば、S63);c−Src(例えば、Y416);並びにパキシリン(例えば、Y118)。
【0081】
[0133]用語「活性化状態非依存性抗体」には、それらの活性化状態に関係なく試料中の対象の1つ又は複数の分析物に特異的な(すなわち、結合するか、結合されるか複合体を形成する)検出抗体が含まれる。例えば、活性化状態非依存性抗体は、1つ又は複数のシグナル伝達分子などの1つ又は複数の分析物のリン酸化形と非リン酸化形の両方を検出することができる。
【0082】
III.実施形態の説明
[0134]本発明は、腫瘍組織に由来する腫瘍細胞又は固形腫瘍の循環細胞でシグナル伝達経路の構成要素の状態(例えば、発現及び/又は活性化レベル)を、本明細書に記載される特異的な多重ハイスループット近接性アッセイで検出するための組成物及び方法を提供する。
【0083】
[0135]一実施形態では、本発明は、少なくとも2つの受容体チロシンキナーゼ(RTK)の二量体化を検出及び/又は定量化するための方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、RTK二量体、PI3K p85調節サブユニット及びPI3K p110触媒サブユニットを含むPI3K複合体のレベルを測定する(例えば、検出及び又は定量化する)ための方法を提供する。
【0084】
[0136]PI3K p85調節サブユニットは、p85α(配列番号1)、p85β(配列番号2)、p55γ(配列番号3)、p150(配列番号4)及びp101(配列番号5)と命名される5つの変異体のいずれか1つを含む。PI3K p110サブユニットは、p110α(配列番号6)、110β(配列番号7)、p110γ(配列番号8)及びp110δ(配列番号9)と命名される変異体のいずれか1つを含む。
【0085】
[0137]さらに別の実施形態では、本発明は、腫瘍細胞又は固形腫瘍からの循環細胞で活性化PI3Kのレベルを測定する(例えば、検出及び定量化する)ための方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、PI3K複合体生成、PI3K活性化(例えば、リン酸化)、PI3K経路の下流タンパク質(例えば、アダプター、エフェクター、キナーゼタンパク質)の活性化、及びPI3K経路と関連する経路の他のシグナルトランスデューサを監視する方法を提供する。
【0086】
[0138]本発明は、特異的抗がん療法(例えば、RTK及びPI3Kをモジュレートする化合物又はその組合せ)への患者の腫瘍の応答を判定又は予測するための組成物及び方法を提供する。一部の例では、これらの方法は、PI3K阻害剤療法又はPI3K阻害剤併用療法の臨床上の恩恵を予測するために用いられる。例えば、本明細書に記載される方法を用いることによる、患者の腫瘍細胞のPI3Kシグナル伝達経路でのPI3K活性化又は活性化構成要素の上昇レベルの測定は、PI3K阻害剤療法又はPI3K併用療法から患者が臨床上の恩恵を受けることができることを予測する。本発明は、1つ又は複数の脱調節されたシグナル伝達経路を下方制御又は閉鎖するために適当な療法を選択するための組成物及び方法も提供する。したがって、本発明の特定の実施形態は、所与の患者の腫瘍で全体の及び活性化されたシグナル伝達タンパク質の集合によって提供される特定の分子サインに基づいて、カスタマイズされた療法の設計を容易にするために用いられる。
【0087】
[0139]一実施形態では、本発明は、抗がん療法において再発した患者からの腫瘍試料で、PI3K及びRTK、その基質及び/又は他のシグナル伝達分子の発現レベル及び/又は活性化(例えば、リン酸化)の程度の測定(例えば、検出及び定量化)のための方法を提供する。このように、有利には本発明は、療法の全期間を通して彼らをスクリーニング及び監視し、彼らを代替の標的特異的療法又は併用療法に切り替えるべきかどうか評価することによって、1つ又は複数の標的特異的療法を受けている、固形腫瘍、例えば乳がん、非小細胞肺がん、胃がん、膵がん及び結腸直腸がんの患者に恩恵を提供する。特定の態様では、本発明は、がん又は腫瘍が既存の抗がん療法に適応したかどうかについて判定する方法を提供する。特定の例では、療法への腫瘍適応は、本発明の方法を用いて検出することができる代償のシグナル伝達経路の活性化をもたらす。他の例では、患者での腫瘍適応の決定は、患者の治療を代替の標的特異的療法又は併用療法に切り替えるべきであることを示す。
【0088】
[0140]別の実施形態では、本発明は、抗がん剤の存在下又は非存在下で、腫瘍試料中のRTK二量体化及び/又はPI3K複合体生成の検出及び/又は定量化を比較することによって、固形腫瘍がん患者のために抗がん剤治療を選択する方法を提供する。さらに別の実施形態では、有利なことに、本発明の組成物及び方法は、標的タンパク質キナーゼの突然変異、治療薬への獲得抵抗性、シグナル伝達分子による療法適応、治療処方計画の服薬不履行及び/又は最適以下の薬量投与のために抗がん療法に抵抗性である患者を同定する。
【0089】
[0141]特定の態様では、本明細書に記載される方法は、既存の抗がん療法へのがん又は腫瘍の適応を監視及び追跡する。特定の例では、CEER技術を用いて経路プロファイルの活性化を追跡及び監視することによって、既存の療法の経路補償、例えば関連経路へのバイパス活性化及び/又は発現があるかどうかを確かめることができる。これらの技術は、療法の有効性の評価を可能にする。元の経路活性化が停止又は低減される場合は、別の経路に経路補償があるかどうかを確かめるために、関連経路を調べることが重要である。これらの例では、併用療法処方計画を推奨することができるか、療法全体の切り替えを推奨することができる。例えば、本明細書に記載の実施例3、4及び6で例示されるように、本発明の方法は、抗がん療法において再発した患者からの腫瘍細胞で活性化PI3K、HER1、HER2、HER3、IGF−1R、AKT及び/又はERKのレベルを監視するために用いられる。これらの患者の腫瘍では、療法の直接標的でない代償のシグナル伝達経路が活性化された(
図14〜17及び25を参照)。有利なことに、本明細書の方法を用いて、経路プロファイリング分析は、PI3K阻害剤療法又はPI3K阻害剤併用療法から患者が臨床上の恩恵を受けることができることを示す。
【0090】
[0142]標的タンパク質又は遺伝子突然変異の発現の分析だけでは、がんを有するかがんを有することが疑われる対象のために、最大臨床有効性のある適当な治療処方計画を選択するのに限界を有する。RTK二量体化及びPI3K複合体生成の包括的プロファイリングは、それらの意図する標的タンパク質に対する特異的抗がん剤の有効性に関する洞察に富む情報を提供する。本発明の方法は、代償の経路の活性化などの潜在的な薬物抵抗性機構に関する価値ある情報も提供し、がん患者のための有効な治療及び処方計画への手引きを提供する。
【0091】
IV.PI3Kシグナル伝達及びがん
[0143]本発明により、乳房、結腸直腸、胃、肺又はすい臓のがんなどの固形腫瘍がんの患者に由来する腫瘍細胞で、PI3K経路及び/又はRTK経路(例えば、HER1、HER2、HER3、HER4、cMET及びIGF−1R経路)の活性化状態を定量的に測定することができる。本発明は、腫瘍試料中のPI3K経路の多数のタンパク質の活性化レベルの同時数量化のための方法を提供する。
【0092】
[0144]ホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)は、細胞の生存、増殖、分化、代謝及び運動性を含む多くの細胞過程で、鍵となる役割を演ずることが見出された。受容体チロシンキナーゼ(RTK)及びGタンパク質結合受容体の下流の主要なエフェクターとして、PI3Kはリン脂質を生成することによって様々な増殖因子及びサイトカインからのシグナルを細胞内メッセージに変換し、それはセリン/トレオニンキナーゼAKT及び他のエフェクター経路を次に活性化する。他の下流エフェクターの例には、それらに限定されないが、RAC1、SGK、PKC、Mdm2、FKHR、NF−κB、BAD、MEK、PTEN、GSK3β、mTOR及びS6Kが含まれる。
【0093】
[0145]PI3KがRTK(例えば、HER1、HER2、HER3及びHER4)を通して増殖因子刺激によって活性化されるとき、PI3K p85サブユニットはRTK及び/又はアダプタータンパク質の上のホスホチロシン残基に直接に結合する。この結合はp85によるPI3K p110サブユニットの分子間阻害を軽減し、PI3Kを細胞の原形質膜に局在化する。そこでは、PI3KはPIP3へのPIP2のリン酸化を触媒し、それはAKTのリン酸化を次に促進する。活性化AKTは、細胞生存、アポトーシスの抑制及び細胞周期制御を可能にするための過程を開始する、関連/近隣経路の他の多くのタンパク質をリン酸化する。
【0094】
[0146]PI3K経路の複雑性に加えて、他の細胞性シグナル伝達ネットワークとの多大なクロストークが存在する。これらの関連する又は近隣のシグナル伝達ネットワークには、mTOR、p53、RAS及びMAPK経路が含まれるが、これらに限定されない。PI3K経路及びErbBファミリー経路の構成要素の異常な発現及び/又は活性化は、乳房、卵巣、胃、肺及び結腸直腸のがんを含むいくつかのヒト腫瘍で報告されている。一実施形態では、本発明の方法は、腫瘍細胞、例えば乳房、肺、すい臓、胃、結腸直腸又は他のがんの細胞の細胞抽出物で、1つ又は複数のシグナル伝達分子(例えば、ErbBファミリーのメンバーなどの受容体チロシンキナーゼ又はPI3Kなどのシグナル伝達経路構成要素)の二量体化の存在、発現レベル及び/又は活性化状態を検出するために用いられる。
【0095】
[0147]本発明の一部の実施形態では、本方法は、腫瘍細胞、例えば乳房、肺、すい臓、胃、結腸直腸又は他のがんの細胞の細胞抽出物で、1つ又は複数の希少体細胞突然変異の存在を検出するための体細胞突然変異(例えば、対立遺伝子変異体)分析をさらに含む。体細胞突然変異を運ぶ遺伝子の非限定例には、PI3K、KRAS及びBRAFが含まれる。例えば、PIK3CA遺伝子での体細胞突然変異には、E542K、E545D、E545K及びH1047R突然変異が含まれる。対立遺伝子変異体を検出する方法は、米国特許仮出願第61/525,137号及びPCT/US2012/051442で開示され、その開示はここに参照によりその全体が組み込まれる。
【0096】
[0148]1つの非限定例として、対立遺伝子特異的配列を増幅するための体細胞突然変異(例えば、対立遺伝子変異体)分析は、以下を含むことができる:(a)対立遺伝子特異的プライマーを標的対立遺伝子を含む第1の核酸分子とハイブリダイズすること;(b)対立遺伝子特異的遮断薬プローブを代替の対立遺伝子を含む第2の核酸分子とハイブリダイズすることであって、代替の対立遺伝子が標的対立遺伝子と同じ遺伝子座に対応すること;(c)遺伝子座特異的検出器プローブを第1の核酸分子とハイブリダイズすること;(d)遺伝子座特異的プライマーを対立遺伝子特異的プライマーの伸長生成物とハイブリダイズすること;及び(e)標的対立遺伝子をPCR増幅すること。特定の実施形態では、対立遺伝子特異的遮断薬プローブは、3’末端に伸長不能な遮断薬部分を含む。他の特定の実施形態では、対立遺伝子特異的プライマー及び対立遺伝子特異的遮断薬プローブの両方は、それぞれ標的対立遺伝子及び代替対立遺伝子の位置に修飾塩基を含む。例えば、その開示はここに参照によりその全体が組み込まれる、米国特許仮出願第61/525,137号及びPCT/US2012/051442を参照されたい。
【0097】
V.抗体アレイ
[0149]特定の態様では、腫瘍細胞、例えば乳房、肺又は他のがんの細胞の細胞抽出物で、1つ以上(例えば複数)のシグナル伝達分子(例えば、受容体チロシンキナーゼ、例えばHER2若しくはErbBファミリーの他のメンバー、又はPI3Kなどのシグナル伝達経路構成要素)の二量体化の存在、発現レベル及び/又は活性化状態は、固体支持体に固定される捕捉抗体の希釈系列を含む抗体ベースのアレイを用いて検出される。アレイは、異なるアドレス可能な場所の固体支持体の表面に結合している、広範囲の捕捉抗体濃度の複数の異なる捕捉抗体を一般的に含む。
【0098】
[0150]特定の一実施形態では、本発明は、固体支持体に固定された捕捉抗体の複数の希釈系列を含む優れたダイナミックレンジを有するアドレス可能なアレイを提供し、そこで、各希釈系列の捕捉抗体は、シグナル伝達経路の構成要素及び他の標的タンパク質に対応する1つ又は複数の分析物に特異的である。様々な態様では、この実施形態は、特定の腫瘍に特徴的なシグナル伝達経路、例えば乳がん細胞で活性であるシグナル伝達経路(例えば、HER経路)の構成要素を含むアレイを含む。したがって、本発明は、がんを引き起こす潜在的な発現又は活性化の欠陥を有する対象の各シグナル伝達分子又は他のタンパク質が単一のアレイ又はチップの上で表示される場合に、有利に実施することができる。一部の態様では、特定の腫瘍細胞で活性である所与のシグナル伝達経路の構成要素は、細胞内のシグナル伝達経路を通して情報が伝達される配列に対応する線状配列に整列させられる。そのようなアレイの例は本明細書に記載され、米国特許第8,163,499号及びPCT公開番号WO2009/108637に開示され、その開示は本明細書において参照によりその全てが組み込まれる。表面関連のいかなるアーチファクトも最小にするために、特定の腫瘍細胞で活性である所与のシグナル伝達経路の1つ又は複数の構成要素に特異的な捕捉抗体をランダムに印刷することもできる。
【0099】
[0151]固体支持体は、タンパク質を固定化するための任意の適する基質を含むことができる。固体支持体の例には、それらに限定されないが、ガラス(例えば、ガラススライド)、プラスチック、チップ、ピン、フィルター、ビーズ、紙、膜、繊維束、ゲル、金属、セラミックなどが含まれる。膜、例えばナイロン(ビオトランス(Biotrans)(商標)、ICN Biomedicals,Inc.(Costa Mesa、CA)、ゼータプローブ(Zeta−Probe)(登録商標)、Bio−Rad Laboratories(Hercules、CA))、ニトロセルロース(プロトラン(Protran)(登録商標)、Whatman Inc.(Florham Park、NJ))、及びPVDF(イモビロン(Immobilon)(商標)、Millipore Corp.(Billerica、MA))は、本発明のアレイで固体支持体として適する。好ましくは、捕捉抗体は、ニトロセルロースポリマーでコーティングされたガラススライド、例えばWhatman Inc.(Florham Park、NJ)から市販されているFAST(登録商標)スライドの上に固定される。
【0100】
[0152]望ましい固体支持体の特定の態様は、大量の捕捉抗体に結合する能力及び最小限の変性で捕捉抗体に結合する能力を含む。別の適する態様は、捕捉抗体を含有する抗体溶液が支持体に加えられるときに、固体支持体が最小限の「ウィッキング」を提示することである。最小限のウィッキングの固体支持体は、支持体に加えられる捕捉抗体溶液の小分量が、固定化捕捉抗体の小さく明確なスポットをもたらすことを可能にする。
【0101】
[0153]捕捉抗体は、共有結合性又は非共有結合性の相互作用(例えば、イオン結合、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、双極子双極子結合)を通して、固体支持体に一般に直接か間接的に(例えば、捕捉タグを通して)固定される。一部の実施形態では、捕捉抗体は、標準の架橋の方法及び条件を用いて、ホモ二官能基であるかヘテロ二官能基の架橋剤を用いて固体支持体に共有結合される。適する架橋剤は、例えばPierce Biotechnology(Rockford、IL)などの販売会社から市販されている。
【0102】
[0154]本発明で使用するのに適するアレイを生成する方法には、それらに限定されないが、タンパク質又は核酸のアレイを構築するために用いられる任意の技術が含まれる。一部の実施形態では、捕捉抗体は、一般的にスプリットピン、ブラントピン又はインクジェット印刷を備えているロボット印刷機である、マイクロスポッターを用いてアレイの上へスポットされる。本明細書に記載される抗体アレイを印刷するのに適するロボットシステムには、ChipMaker2スプリットピン(TeleChem International;Sunnyvale、CA)を備えたPixSys5000ロボット(Cartesian Technologies;Irvine、CA)、並びにBioRobics(Woburn、MA)及びPackard Instrument Co.(Meriden、CT)から入手可能な他のロボット印刷機が含まれる。好ましくは、少なくとも2、3、4、5又は6反復の各捕捉抗体希釈溶液がアレイの上へスポットされる。
【0103】
[0155]本発明で使用するのに適するアレイを生成するための別の方法は、支持体の上に規定量の液体を引き抜くのに有効な条件の下で固体支持体の上へ毛細管ディスペンサーを接触させることによって、選択された各アレイ位置で既知の量の捕捉抗体希釈溶液を分注することを含み、そこで、完全なアレイを作製するために、選択された各アレイ位置で選択された捕捉抗体希釈溶液を用いてこの方法が繰り返される。この方法は、複数のそのようなアレイの形成で実施することができ、そこでは、各反復サイクルで、溶液沈着ステップが複数の固体支持体の各々の上の選択された位置へ適用される。そのような方法のさらなる記載は、例えば、米国特許第5,807,522号に見出すことができる。
【0104】
[0156]特定の例では、抗体アレイを生成するために、紙に印刷する装置を用いることができる。例えば、所望の捕捉抗体希釈溶液をデスクトップジェットプリンターのプリントヘッドに詰めて、適する固体支持体に印刷することができる(例えば、Silzelら、Clin.Chem.、44巻:2036〜2043頁(1998年)を参照)。
【0105】
[0157]一部の実施形態では、固体支持体上に生成されたアレイは、少なくとも約5スポット/cm
2、好ましくは少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000又は9000、又は10,000スポット/cm
2の密度を有する。
【0106】
[0158]特定の例では、固体支持体上のスポットは、各々異なる捕捉抗体を表す。特定の他の例では、固体支持体上の複数のスポットは、例えば、一連の下行する捕捉抗体濃度を含む希釈系列として同じ捕捉抗体を表す。
【0107】
[0159]固体支持体の上に抗体アレイを調製及び構築する方法のさらなる例は、米国特許第6,197,599号、第6,777,239号、第6,780,582号、第6,897,073号、第7,179,638号、第7,192,720号及び第7,771,955号;米国特許出願公開第20060115810号、第20060263837号及び第20070054326号;及びVarnumら、Methods Mol.Biol.、264巻:161〜172頁(2004年)に記載される。
【0108】
[0160]抗体アレイのスキャン方法は当技術分野で公知であり、それらに限定されないがタンパク質又は核酸のアレイをスキャンするために用いられるあらゆる技術が含まれる。本発明で使用するのに適するマイクロアレイスキャナは、PerkinElmer(Boston、MA)、Agilent Technologies(Palo Alto、CA)、Applied Precision(Issaquah、WA)、GSI Lumonics Inc.(Billerica、MA)及びAxon Instruments(Union City、CA)から入手できる。非限定例として、定量化のために、蛍光検出のためのGSI ScanArray3000をImaGeneソフトウェアと共に用いることができる。
【0109】
A.二量体化のための検出アッセイ
[0161]一実施形態では、本発明は、それらに限定されないが、HER1/HER2二量体、HER1/HER3二量体、HER2/HER3二量体、HER2/HER2二量体、HER2/HER4二量体、p95HER2/HER3二量体、p95HER2/HER2二量体などを含む、受容体チロシンキナーゼのホモ又はヘテロ二量体化を検出及び/又は定量化するためのアッセイを提供する。ホモダイマーはホモ二量体化と呼ばれる過程でHER2/HER2などの2つの同一の分子によって形成されるが、ヘテロダイマーはヘテロ二量体化と呼ばれる過程でHER1/HER3などの2つの異なる巨大分子によって形成される。この態様では、アッセイは以下の3つの抗体を含む:(1)二量体対の1つのメンバーに特異的な捕捉抗体;(2)二量体対の第1のメンバーに特異的で、捕捉抗体と異なるドメインに特異的である第1の検出抗体;及び(3)二量体対の第2のメンバーに特異的な第2の検出抗体。
【0110】
[0162]CEER技術のあるものは、米国特許第8,163,299号、米国特許出願公開第20080261829号、第20090035792号、第20100167945号、第20110071042号及び第20110281748号に開示される。さらなる詳細は、例えばWO2010/132723及びWO2011/008990に見出すことができ、その開示はこれにより参照によってその全体が組み込まれる。
【0111】
[0163]
図1A〜Cは、受容体チロシンキナーゼの二量体化の検出のための上記近接アッセイの一実施形態を示す。
図1Aに示すように、RTK二量体のメンバー、例えばHER2 113を捕捉するために、捕捉抗体112が用いられる。第1の検出抗体115は、HER2の異なる部分(例えば、エピトープ)への結合のために次に用いられる。その後第2の検出抗体120が、二量体化された第2の受容体チロシン1キナーゼ、例えばHER3 125への結合のために用いられる。第1の検出抗体は、二量体の1つのメンバーに特異的な第1の活性化状態非依存性抗体の1つ又は複数を含み、第2の検出抗体又は複数の第2の検出抗体は二量体の他のメンバーに特異的である。第1の検出抗体は促進部分、例えばグルコースオキシダーゼ(GO)で標識され、第2の検出抗体はシグナル増幅対の第1のメンバー、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識される。促進部分は酸化剤、例えば過酸化水素を生成し、それはシグナル増幅対の第1のメンバーへ導かれてそれと反応する。その後、複数の検出可能な捕捉された分析物をシグナル増幅対の第2のメンバー、例えばチラミド又はチラミドビオチンと共にインキュベートして増幅されたシグナルを生成し、その後それは検出される。HER2/HER1二量体及びHER3/HER1二量体などの他のヘテロダイマーの例は、それぞれ
図1B及び
図1Cに示す。
【0112】
[0164]受容体チロシンキナーゼの二量体化を測定するのに適する活性化状態非依存性抗体には、活性化(例えば、リン酸化)されていないアミノ酸残基を有する受容体チロシンキナーゼの上のエピトープに結合するあらゆる抗体が含まれる。本発明で使用するのに適する、RTK、例えばErbBファミリーのメンバー、cMET、IGF−1Rなどに結合する活性化状態非依存性抗体は、それらに限定されないが、Cell Signaling Technology(Danvers、MA)、Thermo Scientific(Waltham、MA)、Abcam(Cambridge、MA)、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz、CA)、Sigma−Aldrich(St.Louis、MO)及びEMD Millipore(Billerica、MA)から市販されている。
【0113】
[0165]受容体チロシンキナーゼの二量体化を測定するのに適する活性化状態依存性抗体には、活性化(例えば、リン酸化)されたアミノ酸残基を有する受容体チロシンキナーゼのエピトープに結合するあらゆる抗体が含まれる。本発明で使用するのに適する、RTK、例えばErbBファミリーのメンバー、cMET、IGF−1Rなどに結合する活性化状態依存性抗体は、それらに限定されないが、Cell Signaling Technology(Danvers、MA)、Thermo Scientific(Waltham、MA)、Abcam(Cambridge、MA)、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz、CA)、Sigma−Aldrich(St.Louis、MO)及びEMD Millipore(Billerica、MA)から市販されている。
【0114】
[0166]一実施形態では、本発明は、がんを有するか有することが疑われる対象のための治療を選択するための方法を証明し、この方法は:
(a)少なくとも2つの受容体チロシンキナーゼ(RTK)の二量体化の測定であって、(i)細胞抽出物を捕捉抗体の1つ又は複数の希釈系列と共にインキュベートして複数の捕捉された分析物を形成することと、(ii)複数の捕捉された分析物を、二量体化される分析物の対の第1のメンバー及び第2のメンバーにそれぞれ特異的な、第1の又は複数の第1の活性化状態非依存性抗体及び第2の又は複数の第2の活性化状態非依存性抗体を含む検出抗体と共にインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された二量体化分析物を形成することであって、第1の活性化状態非依存性抗体は促進部分で標識され、第2の活性化状態非依存性抗体はシグナル増幅対の第1のメンバーで標識され、促進部分はシグナル増幅対の第1のメンバーへ導かれてそれと反応する酸化剤を生成することと、(iii)複数の検出可能な捕捉された二量体化分析物をシグナル増幅対の第2のメンバーと共にインキュベートして増幅されたシグナルを生成することと、(iv)シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから生成される増幅されたシグナルを検出することとを含む測定、並びに
(b)少なくとも2つのRTKの二量体化を同じ2つのRTKの参照二量体化プロファイルと比較することによる抗がん剤の選択であって、参照二量体化プロファイルが抗がん剤の非存在下で生成される選択とを含む。
【0115】
[0167]一部の実施形態では、本方法は、少なくとも2つのRTKの二量体化のレベルを、少なくとも2つのRTKについて生成される標準曲線に対して較正することをさらに含む。
【0116】
[0168]一部の実施形態では、抗がん剤の投与の後に、がんを有する対象から細胞抽出物が単離される。一部の実施形態では、細胞抽出物は抗がん剤と接触させる。一部の実施形態では、抗がん剤は、PI3Kをモジュレートする化合物、RTKをモジュレートする化合物及びその組合せからなる群から選択される。
【0117】
[0169]好ましい態様では、増幅されるシグナルの量は、二量体化される受容体チロシンキナーゼの量と相関する。
【0118】
[0170]捕捉抗体及び検出抗体は、好ましくは、分析物との結合(すなわち、捕捉及び検出抗体の両方はそれらの対応するシグナル伝達分子に同時に結合することができる)に関してそれらの間の競合を最小にするように選択される。
【0119】
[0171]様々な促進部分が本発明で有益である。本発明で用いるのに適する促進部分には、促進部分に近接する(すなわち、空間的に近いか近接する)別の分子へ導かれ(すなわち、向けられ)、それと反応する(すなわち、結合するか、結合されるか、複合体を形成する)酸化剤を生成することが可能ないかなる分子も含まれる。促進部分の例には、それらに限定されないが、酵素、例えばグルコースオキシダーゼ、又は電子受容体として分子酸素(O
2)を含む酸化/還元反応を触媒する他の任意の酵素、及び光増感剤、例えばメチレンブルー、ローズベンガル、ポルフィリン、スクアラート色素、フタロシアニンなどが含まれる。酸化剤の非限定例には、過酸化水素(H
2O
2)、一重項酸素、及び酸化/還元反応で酸素原子を渡すか電子を得る他の任意の化合物が含まれる。適する基質(例えば、グルコース、光など)の存在下では、促進部分(例えば、グルコースオキシダーゼ、光増感剤など)は、その2つの部分が互いに近接する場合にシグナル増幅対の第1のメンバー(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、保護基で保護されるハプテン、酵素阻害剤へのチオエーテル結合によって不活性化される酵素など)へ導かれてそれと反応する酸化剤(例えば、過酸化水素(H
2O
2)、単一酸素など)を生成するのが好ましい。
【0120】
[0172]適するシグナル増幅対メンバーには、それらに限定されないが、ペルオキシダーゼ、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、カタラーゼ、クロロペルオキシダーゼ、チトクロームcペルオキシダーゼ、好酸球ペルオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、甲状腺ペルオキシダーゼ、デヨージナーゼなどが含まれる。シグナル増幅対メンバーの他の例には、保護基によって保護されるハプテン、及び酵素阻害剤へのチオエーテル結合によって不活性化される酵素が含まれる。
【0121】
[0173]近接性チャネリングの1つの例では、促進部分はグルコースオキシダーゼ(GO)であり、シグナル増幅対の第1のメンバーは西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)である。GOをグルコースなどの基質と接触させると、それは酸化剤(すなわち、過酸化水素(H
2O
2))を生成する。HRPがGOに近接するチャネリングの中にある場合、GOによって生成されるH
2O
2はHRPとつながって複合体化し、HRP−H
2O
2複合体を形成するが、それは、シグナル増幅対の第2のメンバー(例えば、化学発光基質、例えばルミノール若しくはイソルミノール、又は蛍光原基質、例えばチラミド(例えば、ビオチン−チラミド)、ホモバニリン酸、又は4−ヒドロキシフェニル酢酸)の存在下で、増幅されたシグナルを生成する。ビオチン−チラミドがシグナル増幅対の第2のメンバーとして用いられる場合は、HRP−H
2O
2複合体はチラミドを酸化して、近くの求核残基と共有結合する反応性チラミドラジカルを生成する。活性化チラミドは直接に検出されるか、シグナル検出試薬、例えばストレプトアビジン標識蛍光団又はストレプトアビジン標識ペルオキシダーゼと発色性試薬の組合せの添加の結果検出される。本発明で使用するのに適する蛍光団の例には、それらに限定されないが、アレクサフルオール(Alexa Fluor)(登録商標)色素(例えば、アレクサフルオール(登録商標)555)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、オレゴングリーン(Oregon Green)(商標)、ローダミン、テキサスレッド、テトラローダミンイソチオシアネート(isothiocynate)(TRITC)、CyDye(商標)フルオール(例えば、Cy2、Cy3、Cy5)などが含まれる。ストレプトアビジン標識は、当分野で周知である方法を用いて蛍光団又はペルオキシダーゼに直接又は間接に結合することができる。本発明で使用するのに適する発色性試薬の非限定例には、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、4−クロロ−1−ナフトール(4CN)及び/又はポルフィリノーゲンが含まれる。
【0122】
[0174]近接チャネリングの別の例では、促進部分は光増感剤であり、シグナル増幅対の第1のメンバーは特異的な結合パートナー(例えば、リガンド、抗体など)へのそのハプテンの結合を阻止する保護基で保護されている複数のハプテンで標識される大きな分子である。例えば、シグナル増幅対メンバーは、保護されたビオチン、クマリン及び/又はフルオレセイン分子で標識されるデキストラン分子であってよい。適する保護基には、それらに限定されないが、フェノキシ、アナリノ、オレフィン、チオエーテル及びセレノエーテル保護基が含まれる。本発明の近接アッセイで使用するのに適する追加の光増感剤及び保護されたハプテン分子は、米国特許第5,807,675号に記載される。光増感剤が光によって励起されるとき、それは酸化剤(すなわち、一重項酸素)を生成する。ハプテン分子が光増感剤に近接したチャネリングの中にある場合は、光増感剤によって生成される一重項酸素はハプテンの保護基の上のチオエーテルにつながってそれと反応して、カルボニル基(ケトン又はアルデヒド)及びスルフィン酸を生じ、ハプテンから保護基を放出する。保護されていないハプテンは、次にシグナル増幅対の第2のメンバー(例えば、検出可能なシグナルを生成することができる特異的な結合パートナー)に特異的に結合するのに有効である。例えば、ハプテンがビオチンである場合は、特異的な結合パートナーは酵素標識ストレプトアビジンであってよい。例示的な酵素には、アルカリ性ホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、HRPなどが含まれる。未結合の試薬を除去するために洗浄した後、検出可能なシグナルは、酵素の検出可能な(例えば、蛍光性、化学発光性、発色性など)基質を加えることによって生成することができ、当技術分野で公知の適する方法及び装置を用いて検出することができる。或いは、検出可能なシグナルは、チラミドシグナル増幅を用いて増幅することができ、活性化チラミドは、前記のように直接に検出するかシグナル検出試薬の添加により検出することができる。
【0123】
[0175]近接性チャネリングのさらに別の例では、促進部分は光増感剤であり、シグナル増幅対の第1のメンバーは酵素−阻害剤複合体である。酵素及び阻害剤(例えば、ホスホン酸標識デキストラン)は、切断可能なリンカー(例えば、チオエーテル)によって一緒に連結される。光増感剤が光によって励起されるとき、それは酸化剤(すなわち、一重項酸素)を生成する。酵素−阻害剤複合体が光増感剤に近接するチャネリングの中にある場合は、光増感剤によって生成される一重項酸素は切断可能なリンカーにつながってそれと反応し、酵素から阻害剤を放出し、それによって酵素を活性化する。検出可能なシグナルを生成するために酵素基質が添加され、或いは、増幅されたシグナルを生成するために増幅試薬が添加される。
【0124】
[0176]近接性チャネリングのさらなる例では、促進部分はHRPであり、シグナル増幅対の第1のメンバーは前記のように保護されたハプテン又は酵素−阻害剤複合体であり、保護基はp−アルコキシフェノールを含む。フェニレンジアミン及びH
2O
2の添加は反応性フェニレンジイミンを生成し、それは、保護されたハプテン又は酵素−阻害剤複合体につながり、p−アルコキシフェノール保護基と反応して露出したハプテン又は反応性酵素を生じる。前記のように増幅されたシグナルが生成され、検出される(例えば、米国特許第5,532,138号及び第5,445,944号を参照)。
【0125】
[0177]一実施形態では、細胞抽出物は、試料から単離される細胞の抽出物を含む。特定の例では、試料は、全血液、血清、血漿、微細針吸引液(FNA)、尿、痰、気管支洗浄液、涙、乳首吸引液、リンパ、唾液及びその組合せから選択される。別の実施形態では、試料は、固形腫瘍がんを有する患者から得られる。そのようながんの例には、乳がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん)、胃がん、膵がん、結腸直腸がん及びその組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0126】
[0178]一部の例では、抗がん剤療法を受けた後に、がん患者から細胞抽出物が単離される。特定の例では、単離細胞は抗がん剤又は抗がん剤の組合せと接触している。場合によっては、抗がん剤にはPI3K阻害剤、又はRTKをモジュレートする化合物、例えばHER1、HER2、HER3、cMET若しくはIGF−1R阻害剤が含まれる。他の例では、単離細胞は、増殖因子刺激の前に抗がん剤又は抗がん剤の組合せと共にインキュベートされる。さらに他の例では、細胞抽出物を生成するために、単離細胞は増殖因子刺激の後に溶解される。
【0127】
[0179]本発明の方法は、乳房、結腸直腸、胃、肺又はすい臓のがんなどの固形腫瘍がんを発症する危険にあるか、それが疑われるか、それと診断される患者で、1つ又は複数の発癌性RTK(例えば、HER1、HER2、HER3、p95HER2、cMET及びIGF−1R)のRTK活性化(例えば、リン酸化)状態を判定するために特に有益である。特定の例では、本発明の方法は、対象がRTKファミリーのタンパク質の1つ又は複数の活性形を発現する(例えば、HER2陽性患者)かどうか判定するために、活性化(例えば、リン酸化)RTK(例えば、ホスホ−HER2レベル)を測定することによって、対象のがんの診断及び予後診断を助けるか、支援するか、容易にする。他の実施形態では、本発明の方法は、療法を最適化し、毒性を低減し、治療の有効性を監視し、及び/又は療法への適応性の非応答性を検出するために、1つ又は複数の発癌タンパク質を発現すると既に判定されている対象で実施される。
【0128】
[0180]一部の実施形態では、本方法は、RTK経路及び/又は関連するか代償の経路の1つ又は複数のエフェクター及びアダプタータンパク質の活性化状態を判定することをさらに含む。場合によっては、関連するか代償の経路は、抗がん療法への腫瘍適応の結果脱調節される。
【0129】
B.PI3K複合体の検出アッセイ
[0181]例えば、HER3活性化はPI3K活性化をもたらすことが公知である。しかし、今では驚くべきことに、特定の例及び特定の条件下では、HER3リン酸化及びPI3Kリン酸化が一緒に起こることが発見されている。本発明に記載されるアッセイを用いて、PI3K複合体の量並びにPI3K複合体の活性化及び/又はリン酸化の量を検出及び定量化することが可能である。PI3K複合体は、i)二量体化受容体チロシンキナーゼ対、ii)PI3K p85サブユニット及びPI3K p110(例えば、α又はβ)サブユニットを含む。アッセイは、以下の3つの抗体を含む:(1)PI3K p85又はPI3K p110サブユニットのいずれかに特異的な捕捉抗体、(2)二量体対の第1のメンバー、又はPI3Kサブユニットに特異的であり、捕捉抗体と異なるドメインに特異的である第1の検出抗体であって、PI3Kサブユニットは活性化されてよい第1の検出抗体、及び(3)二量体対の第2のメンバー又はPI3Kサブユニットに特異的な第2の検出抗体。
【0130】
[0182]
図2は、本明細書に記載される方法及びアッセイによって検出可能なPI3K複合体210の一実施形態を示す。この実施形態では、(1)PI3K p85サブユニット212は、捕捉抗体220が結合し;(2)第1の検出抗体250は、PI3K p110α又はβサブユニットに特異的であり;(3)第2の検出抗体230は、二量体対の第1のメンバーに特異的である。
【0131】
[0183]
図3は、本明細書に記載される方法及びアッセイによって検出可能な活性化PI3K複合体310の別の実施形態を示す。この実施形態では、(1)PI3K p85サブユニットは、捕捉抗体320が結合し;(2)第1の検出抗体360は、PI3K p110α又はβサブユニットに特異的であり;(3)第2の検出抗体は、p85などのPI3Kサブユニット上のリン酸化部位(例えば、Y452、Y458、Y460、Y463、Y467、Y688、Y470又は他のpTyr部位)に特異的な活性化状態依存性抗体330を含む。
【0132】
[0184]
図4Aは、本明細書に記載される方法及びアッセイによって検出可能な活性化PI3K複合体のさらに別の実施形態を示す。
図4Aに示す実施形態では、(1)PI3K p85サブユニットは、捕捉抗体421が結合し;(2)第1の検出抗体430は、二量体化受容体チロシンキナーゼ(例えば、HER1、HER2、HER3、cMET、IGF−1Rなど)の1つのメンバーに特異的な活性化状態非依存性抗体を含み;(3)第2の検出抗体450は、p85などのPI3Kサブユニット上のリン酸化部位(例えば、Y452、Y458、Y460、Y463、Y467、Y688、Y470又は他のpTyr部位)に特異的な活性化状態依存性抗体を含む。
【0133】
[0185]
図4Bは、本明細書に記載される方法及びアッセイによって検出可能なPI3K複合体のさらに別の実施形態を示す。
図4Bに示す実施形態では、(1)PI3K p85サブユニットは、捕捉抗体452が結合し;(2)第1の検出抗体471は、二量体化受容体チロシンキナーゼ(例えば、HER1、HER2、HER3、cMET、IGF−1Rなど)の1つのメンバーに特異的な活性化状態非依存性抗体を含み;(3)第2の検出抗体491は、二量体化された対の他のメンバーに特異的な活性化状態非依存性抗体を含む。
【0134】
[0186]
図4Cは、無処理細胞と比較して、ヘレグリン(HRG)で処理されたT47D細胞(ヒト乳房管上皮腫瘍細胞株)での活性化PI3K複合体の検出を例示する。一部の実施形態では、PI3K複合体の検出は、活性化(例えば、リン酸化)PI3Kの検出とも相関する。
【0135】
[0187]
図5Aは、本明細書に記載される方法及びアッセイによって検出可能なPI3K複合体の別の実施形態を示す。
図5Aに示す実施形態では、(1)PI3K p110サブユニットは、捕捉抗体501が結合し;(2)第1の検出抗体515は、二量体化受容体チロシンキナーゼ(例えば、HER1、HER2、HER3、cMET、IGF−1Rなど)の1つのメンバーに特異的な活性化状態非依存性抗体を含み;(3)第2の検出抗体525は、p85などのPI3Kサブユニット上のリン酸化部位(例えば、Y452、Y458、Y460、Y463、Y467、Y688、Y470又は他のpTyr部位)に特異的な活性化状態依存性抗体を含む。特定の態様では、ホスホ−PI3Kを検出するためのp85捕捉は、p110捕捉より高感度である。
【0136】
[0188]
図5Bは、本明細書に記載される方法及びアッセイによって検出可能なPI3K複合体の一実施形態を示す。
図5Bに示す実施形態では、(1)PI3K p85サブユニットは、捕捉抗体530が結合し;(2)第1の検出抗体550は、受容体チロシンキナーゼ(例えば、HER1、HER2、HER3、cMET、IGF−1Rなど)の二量体の1つのメンバーに特異的な活性化状態非依存性抗体を含み;(3)第2の検出抗体562は、p85などのPI3Kサブユニット上のリン酸化部位(例えば、Y452、Y458、Y460、Y463、Y467、Y688、Y470又は他のpTyr部位)に特異的な活性化状態依存性抗体を含む。
【0137】
[0189]PI3K複合体のレベルを測定するのに適する抗体には、PI3K p110サブユニット(例えば、α又はβ)、PI3K p85サブユニット、又は二量体化された受容体チロシンキナーゼ対のエピトープに特異的である(すなわち、認識するか、結合するか、複合体を形成する)あらゆる抗体が含まれる。
【0138】
[0190]適する活性化状態非依存性抗体は、PI3K p110サブユニット、PI3K p85サブユニット又は二量体化された受容体チロシンキナーゼ対のエピトープに結合し、そこで、エピトープはリン酸化されたアミノ酸残基がない。そのような活性化状態非依存性抗体には、PI3K p85サブユニット抗体(Cell Signaling Technologyからのカタログ#4257、#4292;Santa Cruz Biotechnologyからのカタログ番号sc−12929、sc−56934、sc−56938、sc−71892、sc−71891及びsc−376112、sc−292114及びsc−131325;Abcamからのカタログ番号ab86714、ab22653、ab40755、ab250、ab135253、ab71925、ab63040、ab90578、ab133595、ab135952、ab65261及びab71522)、PI3K p110αサブユニット抗体(Cell Signaling Technologyからのカタログ#4249及び#4249;カタログ番号sc−7248、sc−7189、sc−8010、sc−7174、sc−1332、sc−1331)、並びにPI3K p110βサブユニット抗体(Cell Signaling Technologyからのカタログ#3011;Santa Cruz Biotechnologyからのカタログ番号sc−7248、sc−7189、sc−8010、sc−376641、sc−376412、sc−376492、sc−603、sc−7175、sc−602;Abcamからのカタログ番号ab32569、ab55593、ab97322及びab32874)が含まれる。
【0139】
[0191]二量体化RTKに特異的な適する活性化状態非依存性抗体には、HER1に対する抗体(Cell Signaling Technologyからのカタログ#2646、#2239、#2239、#2963、#3265及び#2232;Santa Cruz Biotechnologyからのカタログ番号sc−374607、sc−365829、sc−80543、sc−120、sc−03、sc−101、sc−373476、sc−31155、sc−71031、sc−81451及びsc−71037)、HER2に対する抗体(Cell Signaling Technologyからのカタログ#2165、#2248、#3250及び#2242)、HER3に対する抗体(Cell Signaling Technologyからのカタログ#4754;Santa Cruz Biotechnologyからのカタログ番号sc−415、sc−7390、sc−292557、sc−81455、sc−81454、sc−71067、sc−53279及びsc−285)、並びにHER4に対する抗体(Cell Signaling Technologyからのカタログ#4795;Santa Cruz Biotechnologyからのカタログ番号sc−31150、sc−8050、sc−81456、sc−71071、sc−71070、sc−53280、sc31151、sc−283及びsc−31149)が含まれる。
【0140】
[0192]一部の実施形態では、p110αサブユニットに結合する抗体が本発明で用いられる。一部の実施形態では、p110βサブユニットに結合する抗体が本発明で用いられる。PI3Kに対する好適な活性化依存性抗体は、米国特許出願公開第20080014595号に記載され、その開示はこれにより本明細書において参照によりその全てが組み込まれる。PI3Kに対する抗体は、それらに限定されないが、Upstate(Temecula、CA)、Biosource(Camarillo、CA)、Cell Signaling Technologies(Danvers、MA)、R&D Systems(Minneapolis、MN)、Lab Vision(Fremont、CA)、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz、CA)、BD Biosciences(San Jose、CA)、Thermo Scientific(Waltham、MA)、Abcam(Cambridge、MA)、Sigma−Aldrich(St.Louis、MO)及びEMD Millipore(Billerica、MA)からも市販されている。
【0141】
[0193]例えば、適する活性化状態依存性抗体は、PI3K p110サブユニット又はp85サブユニットの上のエピトープに結合し、そこで、エピトープは少なくとも1つのリン酸化されたアミノ酸残基(例えば、p85のY688、又はpTyr)を有する。そのような活性化状態依存性抗体には、p−PI3K p85(Tyr458)/p55(Tyr199)抗体(Cell Signaling Technologyからのカタログ#4228)、p−PI3K p85(Tyr67)抗体(Santa Cruz Biotechnologyからのカタログ#sc−293115)、及びp−PI3K p85(Tyr607)抗体(Abcamからのカタログ番号ab61801)が含まれる。本発明で有益なホスホ−PI3K p85抗体は、米国特許出願公開第20080014595号に記載され、その開示はこれにより本明細書において参照によりその全てが組み込まれる。同様に、本発明で有益なPI3K p110抗体は、米国特許第6,274,327号に記載され、その開示はこれにより本明細書において参照によりその全てが組み込まれる。
【0142】
[0194]一部の実施形態では、PI3K抗原(配列番号10〜12)又はその断片に特異的な抗体は、PI3K複合体生成を測定する方法で用いることができる。
【0143】
[0195]受容体チロシンキナーゼの二量体化を測定するのに適する活性化状態依存性抗体には、活性化(例えば、リン酸化)されたアミノ酸残基を有する受容体チロシンキナーゼのエピトープに結合するあらゆる抗体が含まれる。本発明で用いるのに適する、ErbBファミリーのメンバー、cMET、IGF−1RなどのRTKに結合する活性化状態依存性抗体は、それらに限定されないが、Upstate(Temecula、CA)、Biosource(Camarillo、CA)、Cell Signaling Technologies(Danvers、MA)、R&D Systems(Minneapolis、MN)、Lab Vision(Fremont、CA)、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz、CA)、BD Biosciences(San Jose、CA)、Thermo Scientific(Waltham、MA)、Abcam(Cambridge、MA)、Sigma−Aldrich(St.Louis、MO)及びEMD Millipore(Billerica、MA)から市販されている。
【0144】
[0196]例えば、二量体化RTKに特異的な適する活性化状態依存性抗体には、HER1に対する抗体(Cell Signaling Technologyからのカタログ#8808、#3056、#6963、#2231、#2641、#2235、#2237、#2238、#2236、#2234、#2220、#4404及び#4407;Santa Cruz Biotechnologyからのカタログ番号sc−16802、sc−12351、sc−16804、sc−16803、sc−101665、sc101668、sc−101667及びsc−101669)、HER2に対する抗体(Cell Signaling Technologyからのカタログ#2244、#2241、#6942、#2249及び#2247)、HER3に対する抗体(Cell Signaling Technologyからのカタログ#4561、#4787、#4791、#2842及び#8017;Santa Cruz Biotechnologyからのカタログ番号sc−135654)、並びにHER4に対する抗体(CellSignalingTechnologyからのカタログ#3790及び#4757;Santa Cruz Biotechnologyからのカタログ番号sc−33040及びsc−81491)が含まれる。
【0145】
[0197]特定の一実施形態では、PI3K複合体のレベルを測定する(例えば、検出及び定量化する)ための近接性アッセイであって、PI3K複合体がa)二量体化受容体チロシンキナーゼ対、b)PI3K p85サブユニット及びPI3K p110サブユニットを含む近接性アッセイは:
【0146】
(i)細胞抽出物を捕捉抗体の1つ又は複数の希釈系列と共にインキュベートして複数の捕捉された分析物を形成することと、
【0147】
(ii)複数の捕捉された分析物を、a)二量体化受容体チロシンキナーゼ対の1つのメンバーに特異的な第1の又は複数の第1の活性化状態非依存性抗体又はb)PI3K p110サブユニットに特異的な第1の又は複数の第1の活性化状態非依存性抗体を含む第1の検出抗体、並びに、a)二量体化受容体チロシンキナーゼ対の1つのメンバー、PI3K p85若しくはPI3K p110サブユニットに特異的な第2の若しくは複数の第2の活性化状態非依存性抗体、又はb)PI3K p85サブユニット及び/若しくはPI3K p110サブユニットに特異的な活性化状態依存性抗体のいずれかを含む第1の検出抗体と共にインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された二量体化複合型分析物を形成することであって、
【0148】
第1の検出抗体が促進部分で標識され、第2の検出抗体がシグナル増幅対の第1のメンバーで標識され、促進部分が、シグナル増幅対の第1のメンバーへ導かれてそれと反応する酸化剤を生成することと、
【0149】
(iii)複数の検出可能な捕捉された二量体化分析物をシグナル増幅対の第2のメンバーと共にインキュベートして増幅されたシグナルを生成することと、
(iv)シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから生成される増幅されたシグナルを検出することとを含む。
【0150】
[0198]別の実施形態では、本発明は、がんを有するか有することが疑われる対象のための治療を選択するための方法を提供し、この方法は:
(a)PI3K複合体の活性化レベルの測定であって、前記PI3K複合体が、i)少なくとも2つの受容体チロシンキナーゼ(RTK)の二量体化;ii)PI3K p85サブユニット及びPI3K p110サブユニットを含み、前記測定が、(i)細胞抽出物を捕捉抗体の1つ又は複数の希釈系列と共にインキュベートして複数の捕捉された分析物を形成することと、(ii)複数の捕捉された分析物を、a)二量体化受容体チロシンキナーゼ対の1つのメンバーに特異的な第1の又は複数の第1の活性化状態非依存性抗体又はb)PI3K p110サブユニットに特異的な第1の又は複数の第1の活性化状態非依存性抗体を含む第1の検出抗体、並びに、a)二量体化受容体チロシンキナーゼ対の1つのメンバー、PI3K p85若しくはPI3K p110サブユニットに特異的な第2の若しくは複数の第2の活性化状態非依存性抗体、又はb)PI3K p85サブユニット及び/若しくはPI3K p110サブユニットに特異的な活性化状態依存性抗体のいずれかを含む第2の検出抗体と共にインキュベートして、複数の検出可能な捕捉された二量体化複合型分析物を形成することであって、第1の検出抗体が促進部分で標識され、第2の検出抗体がシグナル増幅対の第1のメンバーで標識され、促進部分が、シグナル増幅対の第1のメンバーへ導かれてそれと反応する酸化剤を生成することと、複数の検出可能な捕捉された二量体化分析物をシグナル増幅対の第2のメンバーと共にインキュベートして増幅されたシグナルを生成することと、シグナル増幅対の第1及び第2のメンバーから生成される増幅されたシグナルを検出することとを含む測定と、
(b)PI3K複合体の活性化のレベルを参照PI3K複合体の活性化プロファイルと比較することによる抗がん剤の選択であって、参照複合体のプロファイルが抗がん剤の非存在下で生成される選択とを含む。
【0151】
[0199]好ましい態様では、増幅されるシグナルの量は、PI3K複合体の量と相関する。
【0152】
[0200]一部の実施形態では、PI3K複合体のレベルは、i)少なくとも2つの受容体チロシンキナーゼ(RTK)の二量体化;ii)PI3K p85サブユニット及びPI3K p110サブユニットを含む前記PI3K複合体のために生成される標準曲線に対して較正される。
【0153】
[0201]一部の実施形態では、PI3K複合体の活性化のレベルは、a)ホスホ−PI3Kの量を試料中に存在するPI3Kの全レベルと比較し、b)活性化PI3K複合体と全PI3Kの比を確立することによって判定される。PI3K複合体の活性化のレベルは、その比に基づいて判定される。場合によっては、PI3K複合体の活性化のレベルはカットオフ閾値の下であり、そのことは対象がPI3K阻害剤治療から恩恵を受けないことを示す。場合によっては、PI3K複合体の活性化のレベルはカットオフ閾値を超え、そのことは対象がPI3K阻害剤治療から恩恵を受けるであろうことを示す。
【0154】
[0092]一部の実施形態では、約3〜1000CUのPI3K複合体活性化のレベルは、がん対象がPI3K阻害剤から恩恵を受けることの指標となる。例えば、3〜1000CUのPI3K活性化レベルを有するがん対象は、PI3K阻害剤に応答する可能性がある。好ましい実施形態では、約20〜500CUのPI3K複合体活性化のレベルは、がん対象がPI3K阻害剤から恩恵を受けることの指標となる。例えば、20〜500CUのPI3K複合体活性化レベルを有するがん対象は、PI3K阻害剤に応答する可能性がある。一部の実施形態では、1CUのPI3K複合体生成を有する試料は、参照細胞株又は試料を用いて確立される1標準参照のRFU値に等しいRFU値を有する。
【0155】
[0202]一部の実施形態では、PI3K複合体の活性化(例えば、リン酸化PI3K複合体)のレベルは、対象のためにPI3K阻害剤だけが選択されるべきことを示す。他の実施形態では、PI3K複合体の活性化のレベルは、対象のためにPI3K阻害剤及び別の抗がん剤を含む併用療法が選択されるべきことを示す。
【0156】
[0203]一部の実施形態では、抗がん剤の投与の後に、がんを有する対象から細胞抽出物が単離される。一部の実施形態では、細胞抽出物は抗がん剤と接触させる。一部の実施形態では、抗がん剤は、PI3Kをモジュレートする化合物、RTKをモジュレートする化合物及びその組合せからなる群から選択される。
【0157】
[0204]一部の実施形態では、少なくとも2つのRTKは、HER1/HER2二量体、HER1/HER3二量体、HER2/HER3二量体、HER2/HER2二量体、HER2/HER4二量体、p95HER2/HER3二量体及びp95HER2/HER2二量体からなる群から選択されるメンバーである。
【0158】
[0205]上で議論したように、近接性チャネリングの一例では、促進部分はグルコースオキシダーゼ(GO)であり、シグナル増幅対の第1のメンバーは西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)である。GOをグルコースなどの基質と接触させると、それは酸化剤(すなわち、過酸化水素(H
2O
2))を生成する。HRPがGOに近接するチャネリングの中にある場合、GOによって生成されるH
2O
2はHRPへ導かれて複合体化し、HRP−H
2O
2複合体を形成するが、それは、シグナル増幅対の第2のメンバー(例えば、化学発光基質、例えばルミノール若しくはイソルミノール、又は蛍光原基質、例えばチラミド(例えば、ビオチン−チラミド)、ホモバニリン酸、又は4−ヒドロキシフェニル酢酸)の存在下で、増幅されたシグナルを生成する。ビオチン−チラミドがシグナル増幅対の第2のメンバーとして用いられる場合は、HRP−H
2O
2複合体はチラミドを酸化して、近くの求核残基と共有結合する反応性チラミドラジカルを生成する。活性化チラミドは直接に検出されるか、シグナル検出試薬、例えばストレプトアビジン標識蛍光団又はストレプトアビジン標識ペルオキシダーゼと発色性試薬の組合せの添加の結果検出される。本発明で使用するのに適する蛍光団の例には、それらに限定されないが、アレクサフルオール(登録商標)色素(例えば、アレクサフルオール(登録商標)555)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、オレゴングリーン(商標)、ローダミン、テキサスレッド、テトラローダミンイソチオシアネート(isothiocynate)(TRITC)、CyDye(商標)フルオール(例えば、Cy2、Cy3、Cy5)などが含まれる。ストレプトアビジン標識は、当分野で周知である方法を用いて蛍光団又はペルオキシダーゼに直接又は間接に結合することができる。本発明で使用するのに適する発色性試薬の非限定例には、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、4−クロロ−1−ナフトール(4CN)及び/又はポルフィリノーゲンが含まれる。
【0159】
[0206]一実施形態では、細胞抽出物は、試料から単離される細胞の抽出物を含む。特定の例では、試料は、全血液、血清、血漿、微細針吸引液(FNA)、尿、痰、気管支洗浄液、涙、乳首吸引液、リンパ、唾液及びその組合せから選択される。別の実施形態では、試料は、固形腫瘍がんを有する患者から得られる。そのようながんの例には、乳がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん)、胃がん、膵がん、結腸直腸がん及びその組合せが含まれるが、これらに限定されない。一部の例では、抗がん剤療法を受けた後に、がん患者から細胞抽出物が単離される。特定の例では、単離細胞は抗がん剤又は抗がん剤の組合せと接触している。場合によっては、抗がん剤にはPI3K阻害剤、又はRTK阻害剤、例えばHER1、HER2、HER3、cMET若しくはIGF−1R阻害剤が含まれる。他の例では、単離細胞は、増殖因子刺激の前に抗がん剤又は抗がん剤の組合せと共にインキュベートされる。さらに他の例では、細胞抽出物を生成するために、単離細胞は増殖因子刺激の後に溶解される。
【0160】
[0207]本発明の方法は、乳房、結腸直腸、胃、肺又はすい臓のがんなどの固形腫瘍がんを発症する危険があるか、それを有すると疑われるか、それと診断される患者で、PI3K複合体の活性化(例えばリン酸化)状態を判定するのに特に有益である。場合によっては、PI3K複合体の活性化は、1つ又は複数の活性化RTK(例えば、HER1、HER2、HER3、p95HER2、cMET及びIGF−1R)、PI3K p85サブユニット及びPI3K p110サブユニットを含む。特定の例では、本発明の方法は、対象の腫瘍細胞が活性化PI3K複合体を発現するかどうか判定するために、活性化PI3K複合体を測定することによって、対象でがんの診断及び予後診断を助けるか、支援するか、促進する。他の実施形態では、本発明の方法は、療法を最適化し、毒性を低減し、治療の有効性を監視し、及び/又は療法への適応性の非応答性を検出するために、1つ又は複数の発癌タンパク質を発現すると既に判定されている対象で実施される。
【0161】
[0208]一部の態様では、本方法は、PI3K経路又は関連する及び/若しくは代償の経路の1つ又は複数のシグナルトランスデューサ−タンパク質の活性化状態を判定することをさらに含む。場合によっては、関連するか代償の経路は、抗がん療法への腫瘍適応の結果脱調節される。
【0162】
[0209]別の実施形態では、PI3K複合体アッセイは、以下のものを含む:(1)PI3Kのp85サブユニットに特異的な捕捉抗体、(2)RTKの活性化形又は下流タンパク質(例えば、アダプタータンパク質、エフェクター又はキナーゼタンパク質)に結合する特異的検出抗体、(3)別のRTKの活性化形又は下流タンパク質を認識する検出抗体。下流タンパク質(例えば、アダプタータンパク質、エフェクター又はキナーゼタンパク質)の非限定例には、CK、Shc、AKT、CRKL、PDK1、MEK、FAK、PTEN、ERK/MAPK、BRAF、KRAS、PRAS40及びp70S6Kが含まれる。
【0163】
C.抗体生成
[0210]本発明に従う、腫瘍細胞などの細胞でシグナル伝達分子(例えば、HER2シグナル伝達経路構成要素及びPI3K)の発現及び/又は活性化レベルを分析するための、まだ市販されていない抗体の生成及び選択は、いくつかの方法で達成することができる。例えば、1つの方法は当技術分野で公知のタンパク質発現及び精製方法を用いて対象のポリペプチド(すなわち、抗原)を発現及び/又は精製することであり、別の方法は、当技術分野で公知の固層ペプチド合成方法を用いて対象のポリペプチドを合成することである。例えば、Guide to Protein Purification、Murray P.Deutcher編、Meth.Enzymol.、182巻(1990年);Solid Phase Peptide Synthesis、Greg B.Fields編、Meth.Enzymol.、289巻(1997年);Kisoら、Chem.Pharm.Bull.、38巻:1192〜99頁(1990年);Mostafaviら、Biomed.Pept.Proteins Nucleic Acids、1巻:255〜60頁(1995年);及びFujiwaraら、Chem.Pharm.Bull.、44巻:1326〜31頁(1996年)を参照。精製又は合成されたポリペプチドは、例えばマウス又はウサギに次に注射して、ポリクローナル又はモノクローナルの抗体を生成することができる。例えば、Antibodies、A Laboratory Manual、Harlow and Lane編、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.(1988年)に記載されているように、抗体作製のために多くの手法が利用できることを当業者は認めるであろう。例えば、配列番号10〜12のそれらなどのPI3K抗原は、本発明の方法で用いるのに適する抗体を生成するために用いることができる。当業者は、抗体を模倣する(例えば、その機能的結合領域を保持する)結合断片又はFab断片は、遺伝情報から様々な手法によって調製することもできることも理解する。例えば、Antibody Engineering:A Practical Approach、Borrebaeck編、Oxford University Press、Oxford(1995年);及びHuseら、J.Immunol.、149巻:3914〜3920頁(1992年)を参照。
【0164】
[0211]さらに、選択された標的抗原への結合についてポリペプチドのライブラリーを生成してスクリーニングするためのファージディスプレイ技術の使用を多数の刊行物が報告している(例えば、Cwirlaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87巻:6378〜6382頁(1990年);Devlinら、Science、249巻:404〜406頁(1990年);Scottら、Science、249巻:386〜388頁(1990年);及びLadnerら、米国特許第5,571,698号を参照)。ファージディスプレイ法の基礎概念は、ファージDNAによってコードされるポリペプチドと標的抗原の間の物理的関係の確立である。この物理的関係はファージ粒子によって提供され、それは、ポリペプチドをコードするファージゲノムを封入するカプシドの一部としてポリペプチドを提示する。ポリペプチドとそれらの遺伝物質の間の物理的関係の確立は、異なるポリペプチドを抱えている極めて多数のファージの同時マススクリーニングを可能にする。標的抗原への親和性を有するポリペプチドを提示するファージは、標的抗原に結合し、これらのファージは標的抗原への親和性スクリーニングによって濃縮される。これらのファージから提示されるポリペプチドの同一性は、それらのそれぞれのゲノムから判定することができる。これらの方法を用いて、次に、所望の標的抗原に対する結合親和性を有すると同定されるポリペプチドを、従来の手段(例えば、米国特許第6,057,098号を参照)によって大量に合成することができる。
【0165】
[0212]これらの方法によって生成される抗体は、次に、精製された対象のポリペプチド抗原との親和性及び特異性について先ずスクリーニングし、必要な場合は、結合から排除することが望ましい他のポリペプチド抗原との抗体の親和性及び特異性とその結果を比較することによって選択することができる。スクリーニング手法は、マイクロタイタープレートの別々のウェルでの精製されたポリペプチド抗原の固定化を含むことができる。潜在的抗体又は抗体群を含有する溶液は、次にそれぞれのマイクロタイターウェルに入れられ、約30分から2時間の間インキュベートされる。マイクロタイターウェルを次に洗浄し、標識二次抗体(例えば、作製した抗体がマウス抗体である場合はアルカリ性ホスファターゼにコンジュゲートした抗マウス抗体)をウェルに追加して約30分の間インキュベートし、次に洗浄する。基質をウェルに追加し、固定化ポリペプチド抗原に対する抗体が存在する場合は呈色反応が現れる。
【0166】
[0213]このように同定される抗体は、次に親和性及び特異性についてさらに分析することができる。標的タンパク質のためのイムノアッセイの開発では、精製された標的タンパク質は、選択された抗体を用いてイムノアッセイの感度及び特異性を判定するための標準としての働きをする。様々な抗体の結合親和性は異なる可能性があり、例えば、特定の抗体組合せは立体配置的にお互いに干渉することがあるので、抗体のアッセイ性能はその抗体の絶対的親和性及び特異性よりも重要な測定手段であるかもしれない。
【0167】
[0214]当業者は、抗体又は結合断片の生成で、並びに対象の様々なポリペプチドの親和性及び特異性についてのスクリーニング及び選択で多くの方法をとることができるが、これらの方法は本発明の範囲を変更しないことを認識するであろう。
【0168】
1.ポリクローナル抗体
[0215]ポリクローナル抗体は、好ましくは対象のポリペプチド及びアジュバントの複数の皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射によって動物で作製される。二官能性であるか誘導体化剤を用いて、対象のポリペプチドを、免疫化する種で免疫原性であるタンパク質担体、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシのサイログロブリン又はダイズのトリプシンインヒビターにコンジュゲートすることが有益であるかもしれない。二官能性であるか誘導体化する剤の非限定例には、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を通してのコンジュゲーション)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を通してのコンジュゲーション)、グルタルアルデヒド、コハク酸無水物、SOCl
2及びR
1N=C=NRが含まれ、そこでR及びR
1は異なるアルキル基である。
【0169】
[0216]例えば、抗原又はコンジュゲートの100μg(ウサギの場合)又は5μg(マウスの場合)を3容のフロインド完全アジュバントと合わせ、溶液を複数の部位に皮内注射することによって、対象のポリペプチド又はその免疫原性コンジュゲート若しくは誘導体に対して動物を免疫化する。1カ月後に、複数部位での皮下注射によってフロインド不完全アジュバント中のポリペプチド又はコンジュゲートの元の量の約1/5〜1/10で動物をブーストする。7〜14日後に、動物を放血させ、血清を抗体価について検定する。一般的に、力価がプラトーに達するまで動物をブーストする。好ましくは、動物は同じポリペプチドのコンジュゲートでブーストされるが、異なる免疫原性タンパク質への及び/又は異なる架橋試薬を通してのコンジュゲーションを用いることができる。コンジュゲートは、組換え体細胞培養で融合タンパク質として作製することもできる。特定の例では、免疫応答を増強するためにミョウバンなどの凝集剤を用いることができる。
【0170】
2.モノクローナル抗体
[0217]モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団から一般に得られ、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量存在するかもしれない可能な天然に存在する突然変異を除いて同一である。したがって、修飾語「モノクローナル」は、抗体の特徴が別個の抗体の混合物でないことを示す。例えば、モノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature、256巻:495頁(1975年)に記載されるハイブリドーマ法を用いて、又は当技術分野(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)で公知である任意の組換え体DNA方法によって作製することができる。
【0171】
[0218]ハイブリドーマ法では、免疫化のために用いられる対象のポリペプチドに特異的に結合する抗体を生成するか生成することが可能なリンパ球を導き出すために、上記のようにマウス又は他の適当な宿主動物(例えば、ハムスター)が免疫化される。或いは、リンパ球はin vitroで免疫化される。免疫化されたリンパ球は、ポリエチレングリコールなどの適する融合剤を用いて骨髄腫細胞と次に融合され、ハイブリドーマ細胞を形成する(例えば、Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、Academic Press、59〜103頁(1986年)を参照)。このように調製されるハイブリドーマ細胞は、未融合の親の骨髄腫細胞の増殖又は生存を抑制する1つ又は複数の物質を好ましくは含む適する培地に播種され、増殖させられる。例えば、親の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスフォリボシル転移酵素(HGPRT)を欠く場合は、ハイブリドーマ細胞のための培地はヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを一般的に含み(HAT培地)、それらはHGPRT欠損細胞の増殖を阻止する。
【0172】
[0219]好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定したハイレベルの生成を支え、及び/又はHAT培地などの培地に感受性であるものである。ヒトモノクローナル抗体の生成のためのそのような好ましい骨髄腫細胞株の例には、それらに限定されないが、マウス骨髄腫株、例えばMOPC−21及びMPC−11マウス腫瘍に由来するもの(Salk Institute Cell Distribution Center;San Diego、CAから入手可能)、SP−2又はX63−Ag8−653細胞(アメリカ基準株保存機構;Rockville、MDから入手可能)、並びにヒト骨髄腫又はマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株(例えば、Kozbor、J.Immunol.、133巻:3001頁(1984年);及びBrodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、Marcel Dekker,Inc.、New York、51〜63頁(1987年)を参照)が含まれる。
【0173】
[0220]ハイブリドーマ細胞が増殖している培地は、対象のポリペプチドに対するモノクローナル抗体の生成について分析することができる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はin vitro結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)若しくは酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって判定される。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunsonら、Anal.Biochem.、107巻:220頁(1980年)のスキャチャード解析を用いて判定することができる。
【0174】
[0221]所望の特異性、親和性及び/又は活性の抗体を生成するハイブリドーマ細胞の同定の後、クローンは、限界希釈法によってサブクローニングし、標準方法によって増殖させることができる(例えば、Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、Academic Press、59〜103頁(1986年)を参照)。この目的のための適する培地には、例えば、D−MEM又はRPMI−1640培地が含まれる。さらに、ハイブリドーマ細胞は動物で腹水がんとしてin vivoで増殖させることができる。サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、従来の抗体精製手法、例えばプロテインA−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又は親和性クロマトグラフィーによって、培地、腹水液又は血清から分離することができる。
【0175】
[0222]モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能であるオリゴヌクレオチドプローブを用いて)、容易に単離し、配列決定をすることができる。ハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源の役割をする。単離されると、DNAは発現ベクターに入れることができ、それは、さもなければ抗体を生成しない大腸菌細胞、サルのCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は骨髄腫細胞などの宿主細胞に次にトランスフェクトされて、組換え体宿主細胞でモノクローナル抗体の合成を誘導する。例えば、Skerraら、Curr.Opin.Immunolo.、5巻:256〜262頁(1993年);及びPluckthun、Immunol Rev.、130巻:151〜188頁(1992年)を参照。DNAは、例えば、相同的マウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することによって(例えば、米国特許第4,816,567号及びMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81巻:6851頁(1984年)を参照)、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全て若しくは一部を共有結合することによって改変することもできる。
【0176】
[0223]さらなる実施形態では、モノクローナル抗体又は抗体断片は、例えば、McCaffertyら、Nature、348巻:552〜554頁(1990年);Clacksonら、Nature、352巻:624〜628頁(1991年);及びMarksら、J.Mol.Biol.、222巻:581〜597頁(1991年)に記載される技術を用いて生成される抗体ファージライブラリーから単離することができる。鎖シャフリングによる高親和性(nM範囲)ヒトモノクローナル抗体の生成は、Marksら、BioTechnology、10巻:779〜783頁(1992年)に記載される。非常に大きなファージライブラリーを構築するための戦略としての組合せ感染及びin vivo組換えの使用は、Waterhouseら、Nuc.Acids Res.、21巻:2265〜2266頁(1993年)に記載される。したがって、これらの技術は、モノクローナル抗体の生成のための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法の実行可能な代替手段である。
【0177】
3.ヒト化抗体
[0224]ヒト以外の抗体をヒト化する方法は、当技術分野で公知である。好ましくは、ヒト化抗体は、ヒト以外の供給源からそれに導入される1つ又は複数のアミノ酸残基を有する。これらのヒト以外のアミノ酸残基は、しばしば「インポート」残基と呼ばれ、それらは「インポート」可変ドメインから一般的にとられる。ヒト化は、ヒト以外の抗体の超可変領域配列をヒト抗体の対応配列に置換することによって事実上実施することができる。例えば、Jonesら、Nature、321巻:522〜525頁(1986年);Riechmannら、Nature、332巻:323〜327頁(1988年);及びVerhoeyenら、Science、239巻:1534〜1536頁(1988年)を参照。したがって、そのような「ヒト化」抗体は、実質的に完全未満のヒト可変ドメインがヒト以外の種からの対応配列によって置換されているキメラ抗体である(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)。実際には、一般的に、ヒト化抗体は、一部の超可変領域残基及びおそらく一部の枠組み領域(FR)残基が齧歯動物の抗体の類似部位からの残基によって置換されるヒト抗体である。
【0178】
[0225]本明細書に記載されるヒト化抗体の作製で用いられる軽鎖と重鎖の両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性の低減のための重要な考慮事項である。いわゆる「最良適合」法により、齧歯動物の抗体の可変ドメインの配列は、既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングされる。次に、齧歯動物のそれに最も近いヒト配列が、ヒト化抗体のためのヒトFRとして認められる(例えば、Simsら、J.Immunol.、151巻:2296頁(1993年);及びChothiaら、J.Mol.Biol.、196巻:901頁(1987年)を参照)。別の方法では、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体の共通配列に由来する特定のFRを用いる。いくつかの異なるヒト化抗体のために、同じFRを用いることができる(例えば、Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89巻:4285頁(1992年);及びPrestaら、J.Immunol.、151巻:2623頁(1993年)を参照)。
【0179】
[0226]抗原への高い親和性及び他の好都合の生物学的特性を保持して抗体がヒト化されることも重要である。この目標を達成するために、ヒト化抗体は、親の及びヒト化配列の三次元モデルを用いることによる親の配列及び様々な概念上のヒト化生成物の分析過程によって調製することができる。三次元免疫グロブリンモデルは一般に入手でき、当業者によく知られている。選択される候補免疫グロブリン配列の可能な三次元立体配置構造を図示し、提示する、コンピュータプログラムが利用できる。これらの提示の検査は、候補免疫グロブリン配列の機能での残基のありそうな役割の分析、すなわち、その抗原に結合する候補免疫グロブリンの能力に影響する残基の分析を可能にする。この方法で、所望の抗体特性、例えば標的抗原(複数可)への増加した親和性が達成されるように、レシピエント及びインポート配列からFR残基を選択し、組み合わせることができる。一般に、超可変領域残基は、抗原結合に及ぼす影響に直接及び特異的に関与する。
【0180】
[0227]様々な形のヒト化抗体が、本発明に従って企図される。例えば、ヒト化抗体は、Fab断片などの抗体断片であってよい。或いは、ヒト化抗体は完全な抗体、例えば完全なIgA、IgG又はIgM抗体であってよい。
【0181】
4.ヒト抗体
[0228]ヒト化に代わるものとして、ヒト抗体を生成することができる。一部の実施形態では、内在性免疫グロブリンの生成の非存在下で、免疫化の後にヒト抗体の完全なレパートリーを生成することが可能であるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を生成することができる。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスでの抗体重鎖結合域(JH)遺伝子のホモ接合性欠失が、内在性抗体産生の完全な阻止をもたらすことが記載されている。そのような生殖系列突然変異体マウスでのヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの移入は、抗原刺激の後にヒト抗体の生成をもたらす。例えば、Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90巻:2551頁(1993年);Jakobovitsら、Nature、362巻:255〜258頁(1993年);Bruggermannら、Year in Immun.、7巻:33頁(1993年);並びに米国特許第5,591,669号、第5,589,369号及び第5,545,807号を参照。
【0182】
[0229]或いは、非免疫化ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーを用いて、in vitroでヒト抗体及び抗体断片を生成するために、ファージディスプレイ技術(例えば、McCaffertyら、Nature、348巻:552〜553頁(1990年)を参照)を用いることができる。この技術により、抗体Vドメイン遺伝子は、M13又はfdなどの繊維状バクテリオファージの主要又は副次的なコートタンパク質遺伝子にインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面に機能的抗体断片として提示される。糸状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するので、抗体の機能的特性に基づく選択は、それらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択ももたらす。したがって、ファージはB細胞の特性のいくつかを模倣する。ファージディスプレイは、例えばJohnsonら、Curr.Opin.Struct.Biol.、3巻:564〜571頁(1993年)に記載される様々なフォーマットで実施することができる。ファージディスプレイのために、V遺伝子セグメントのいくつかの供給源を用いることができる。例えば、Clacksonら、Nature、352巻:624〜628頁(1991年)を参照。非免疫化ヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーを構築することができ、抗原(自己抗原を含む)の多様なアレイに対する抗体は、Marksら、J.Mol.Biol.、222巻:581〜597頁(1991年)、Griffithら、EMBO J.、12巻:725〜734頁(1993年)、並びに米国特許第5,565,332号及び第5,573,905号に記載される技術に事実上従って単離することができる。
【0183】
[0230]特定の例では、ヒト抗体は、例えば米国特許第5,567,610号及び第5,229,275号に記載されるin vitro活性化B細胞によって生成することができる。
【0184】
5.抗体断片
[0231]抗体断片の生成のために様々な技術が開発されている。伝統的に、これらの断片は、完全な抗体のタンパク分解を通して誘導された(例えば、Morimotoら、J.Biochem.Biophys.Meth.、24巻:107〜117頁(1992年);及びBrennanら、Science、229巻:81頁(1985年)を参照)。しかし、現在、これらの断片は、組換え体宿主細胞を用いて直接に生成することができる。例えば、抗体断片は、上述の抗体ファージライブラリーから単離することができる。或いは、Fab’−SH断片を大腸菌細胞から直接に回収するか、化学的に結合してF(ab’)
2断片を形成することができる(例えば、Carterら、BioTechnology、10巻:163〜167頁(1992年)を参照)。別の方法により、F(ab’)
2断片を組換え体宿主細胞培養から直接に単離することができる。抗体断片を生成するための他の技術は、当業者に明らかになる。他の実施形態では、最良の抗体は単一鎖のFv断片(scFv)である。例えば、PCT公開番号WO93/16185;及び米国特許第5,571,894号及び第5,587,458号を参照。抗体断片は、例えば米国特許第5,641,870号に記載される線状抗体であってもよい。そのような線状抗体断片は、単一特異的又は二重特異的であってよい。
【0185】
6.二重特異的抗体
[0232]二重特異的抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異的抗体は、同じ対象のポリペプチドの2つの異なるエピトープに結合することができる。他の二重特異的抗体は、対象のポリペプチドの結合部位を1つ又は複数の追加の抗原のための結合部位(複数可)と組み合わせることができる。二重特異的抗体は、完全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab’)
2二重特異性抗体)として調製することができる。
【0186】
[0233]二重特異的抗体の作製方法は、当技術分野で公知である。完全長二重特異的抗体の伝統的な生成は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の同時発現に基づき、そこで2つの鎖は異なる特異性を有する(例えば、Millsteinら、Nature、305巻:537〜539頁(1983年)を参照)。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の任意組合せのため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は10個の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その中で1つだけが正しい二重特異的構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィーによって通常実施される。類似した手法は、PCT公開番号WO93/08829及びTrauneckerら、EMBO J.、10巻:3655〜3659頁(1991年)に開示される。
【0187】
[0234]異なるアプローチにより、所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインが、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインに対してである。融合の少なくとも1つに存在する軽鎖結合に必要な部位を含む、第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合、及び所望により免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別々の発現ベクターに挿入され、適する宿主生物体に同時トランスフェクトされる。これは、構築で用いられる3つのポリペプチド鎖の不等な比が最適な収量を提供するときの実施形態で3つのポリペプチド断片の相互の割合を調整することにおいて、大きな柔軟性を可能にする。しかし、同等の比の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高収量をもたらす場合、又は比が特に重要でない場合は、2つ又は全3つのポリペプチド鎖のコード配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0188】
[0235]このアプローチの好ましい実施形態では、二重特異的抗体は、一方の腕の第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、他方の腕のハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)で構成される。二重特異的分子の片方の半分だけへの免疫グロブリン軽鎖の存在が分離の容易な方法を可能にするので、この非対称構造は望ましくない免疫グロブリン鎖組合せからの所望の二重特異的化合物の分離を促進する。例えば、PCT公開番号WO94/04690及びSureshら、Meth.Enzymol.121巻:210頁(1986年)を参照。
【0189】
[0236]米国特許第5,731,168号に記載される別のアプローチにより、一対の抗体分子の間の界面は、組換え体細胞培養から回収されるヘテロダイマーの百分率を最大にするように操作することができる。好ましい界面は、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の界面からの1つ又は複数の小さなアミノ酸側鎖が、より大きな側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)と交換される。大きなアミノ酸側鎖をより小さなもの(例えば、アラニン又はトレオニン)と交換することによって、大きな側鎖(複数可)と同一であるか類似したサイズの代償の「空洞」が、第2の抗体分子の界面に形成される。これは、ホモダイマーなどの他の望ましくない最終産物よりもヘテロダイマーの収量を増加させる機構を提供する。
【0190】
[0237]二重特異的抗体には、架橋された又は「ヘテロコンジュゲート」の抗体が含まれる。例えば、ヘテロコンジュゲート中の抗体の1つはアビジンに、他はビオチンに結合することができる。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の都合のよい架橋方法を用いて作製することができる。適する架橋剤及び技術は当技術分野で周知であり、例えば米国特許第4,676,980号に開示される。
【0191】
[0238]抗体断片から二重特異的抗体を生成するのに適する技術も、当技術分野で公知である。例えば、化学結合を用いて二重特異的抗体を調製することができる。特定の例では、二重特異的抗体は、完全な抗体がタンパク分解的に切断されてF(ab’)
2断片を生成する手法によって生成することができる(例えば、Brennanら、Science、229巻:81頁(1985年)を参照)。近接のジチオールを安定させて、分子間ジスルフィド形成を阻止するために、これらの断片はジチオール複合体形成剤亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元される。生成されるFab’断片は、次にチオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換される。Fab’−TNB誘導体の1つは、次にメルカプトエチルアミンによる還元によってFab’−チオールに再変換され、等モル量の他のFab’−TNB誘導体と混合されて二重特異的抗体を形成する。
【0192】
[0239]一部の実施形態では、Fab’−SH断片を大腸菌から直接に回収し、化学的に結合して二重特異的抗体を形成することができる。例えば、Shalabyら、J.Exp.Med.、175巻:217〜225頁(1992年)に記載される方法によって、完全ヒト化二重特異的抗体F(ab’)
2分子を生成することができる。各Fab’断片は大腸菌から別々に分泌され、in vitroでの誘導化学結合を受けて二重特異的抗体を形成した。
【0193】
[0240]二重特異的抗体断片を組換え体細胞培養から直接に作製して単離する様々な技術も、記載されている。例えば、ロイシンジッパーを用いて二重特異的抗体が生成されている。例えば、Kostelnyら、J.Immunol.、148巻:1547〜1553頁(1992年)を参照。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドが、遺伝子融合によって2つの異なる抗体のFab’部分に連結された。抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、次に再酸化して抗体ヘテロダイマーを形成した。この方法は、抗体ホモダイマーの生成のために利用することもできる。Hollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90巻:6444〜6448頁(1993年)に記載される「ダイアボディ」技術は、二重特異的抗体断片を作製するための代替機構を提供している。断片は、同じ鎖の上の2つのドメインの間での対形成を可能にするには短すぎるリンカーによって軽鎖可変ドメイン(VL)に接続されている、重鎖可変ドメイン(VH)を含む。したがって、1つの断片のVH及びVLドメインは別の断片の相補的なVL及びVHドメインと対を形成するように強制され、それによって2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)二量体を用いることによる二重特異的抗体断片を作製するための別の戦略は、Gruberら、J.Immunol.、152巻:5368頁(1994年)に記載される。
【0194】
[0241]2つを超える結合価の抗体も、企図される。例えば、三重特異的抗体を調製することができる。例えば、Tuttら、J.Immunol.、147巻:60頁(1991年)を参照。
【0195】
7.抗体精製
[0242]組換え技術を用いる場合、抗体は、単離された宿主細胞の中、宿主細胞のペリプラズム間隙に生成することができるか、宿主細胞から培地に直接に分泌させることができる。抗体が細胞内に生成される場合は、粒状細片が、例えば遠心分離又は限外濾過によって先ず除去される。Carterら、BioTech、10巻:163〜167頁(1992年)は、大腸菌のペリプラズム間隙に分泌される抗体を単離する手順を記載する。簡潔には、細胞ペーストは、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA及びフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で約30分間解凍される。細胞細片は、遠心分離によって除去することができる。抗体が培地に分泌される場合、そのような発現系からの上清は、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はMillipore Pellicon限外濾過ユニットを用いて一般に濃縮される。タンパク質分解を抑制するために上記ステップのいずれかにPMSFなどのプロテアーゼ阻害剤が含まれてもよく、偶発汚染菌の増殖を阻止するために抗生物質が含まれてもよい。
【0196】
[0243]細胞から調製される抗体組成物は、例えばヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製することができる。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種類及びアイソタイプによって決まる。プロテインAは、ヒトγ1、γ2又はγ4重鎖に基づく抗体を精製するために用いることができる(例えば、Lindmarkら、J.Immunol.Meth.、62巻:1〜13頁(1983年)を参照)。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプのために、及びヒトγ3のために推奨される(例えば、Gussら、EMBO J.、5巻:1567〜1575頁(1986年)を参照)。親和性リガンドが結合するマトリックスはほとんどの場合アガロースであるが、他のマトリックスを利用できる。制御された細孔ガラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定したマトリックスは、アガロースで達成することができるものより速い流速及びより短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker;Phillipsburg、N.J.)が精製のために有益である。回収する抗体に従い、タンパク質精製のための他の技術、例えばイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカクロマトグラフィー、ヘパリンセファロース(SEPHAROSE)(商標)でのクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE及び硫安沈殿も利用できる。
【0197】
[0244]任意の予備精製ステップ(複数可)の後、対象の抗体及び汚染物を含む混合物は、好ましくは低塩濃度(例えば、約0〜0.25Mの塩)で実施される、約2.5〜4.5のpHの溶出緩衝液を用いる低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーにかけることができる。
【0198】
[0245]当業者は、抗体に類似した機能を有する任意の結合分子、例えば試料中の対象の1つ又は複数の分析物に特異的である結合分子又は結合パートナーも、本発明の方法及び組成物で用いることができることを理解する。適する抗体様分子の例には、それらに限定されないが、ドメイン抗体、ユニボディ、ナノボディ、サメ抗原反応性タンパク質、アビマー、アドネクチン、アンチカーム、親和性リガンド、フィロマー、アプタマー、アフィボディ、トリネクチンなどが含まれる。
【0199】
D.投与の方法
[0246]本発明の方法により、本明細書に記載される抗がん剤は、当技術分野で公知である任意の都合のよい手段によって対象に投与される。本発明の方法は、1つ又は複数の抗がん剤による治療への腫瘍(例えば、原発性であるか転移性の乳腫瘍)の応答を判定、予測、同定及び/又は監視するために用いることができる。本発明の方法は、対象で腫瘍(例えば、原発性であるか転移性の乳腫瘍)の治療のための1つ又は複数の適する抗がん剤を選択するために用いることもできる。当業者は、抗がん剤(複数可)は、単独で、又は従来の化学療法、放射線療法、ホルモン療法、免疫療法及び/又は外科手術と組み合わせた治療法の一部として投与することができることを理解する。
【0200】
[0247]特定の実施形態では、抗がん剤は、抗シグナル伝達剤(すなわち、細胞増殖抑制剤)、例えばモノクローナル抗体若しくはチロシンキナーゼ阻害剤;増殖抑制剤;化学療法剤(すなわち、細胞毒性薬);ホルモン治療剤;放射線治療剤;ワクチン;及び/又は癌性細胞などの異常な細胞の無制御の増殖を低減又は抑止する能力を有する他の任意の化合物を含む。一部の実施形態では、対象は、少なくとも1つの化学療法剤と一緒の、1つ又は複数の抗シグナル伝達剤、増殖抑制剤及び/又はホルモン治療剤で治療される。例示的なモノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、増殖抑制剤、化学療法剤、ホルモン治療剤、放射線治療剤及びワクチンは本明細書に記載される。
【0201】
[0248]特定の実施形態では、抗がん剤は、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤及びその組合せを含む、HER2活性をモジュレートする1つ又は複数の化合物を含む。HER2をモジュレートする化合物の非限定例には、モノクローナル抗体、例えばトラスツズマブ(ハーセプチン(Herceptin)(登録商標))、トラスツズマブ−DM1、エルツマキソマブ及びペルツズマブ(2C4;オムニタルグ(Omnitarg)(商標));小分子チロシンキナーゼ阻害剤、例えばゲフィチニブ(イレッサ(Iressa)(登録商標))、エルロチニブ(タルセバ(Tarceva)(登録商標))、ペリチニブ、CP−654577、CP−724714、カネルチニブ(CI1033)、HKI−272、ラパチニブ(GW−572016;チケルブ(Tykerb)(登録商標))、PKI−166、AEE788、BMS−599626、HKI−357、BIBW2992、ARRY−334543、JNJ−26483327及びJNJ−26483327;並びにその組合せが含まれる。特定の実施形態では、HER2をモジュレートする化合物は、本明細書に記載されるか当業者に公知である1つ又は複数の他の抗がん剤と併用することができる。
【0202】
[0249]他の実施形態では、抗がん剤は、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤及びその組合せを含む、HER3及び他のErbBファミリーメンバーの活性をモジュレートする1つ又は複数の化合物を含む。これらの化合物の非限定例には、モノクローナル抗体、例えばMM−121、AMG−888(U3−1287)、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))、ペルツズマブ(2C4;オムニタルグ(商標))、セツキシマブ(アービタックス(Erbitux)(登録商標));小分子チロシンキナーゼ阻害剤、例えばゲフィチニブ(イレッサ(登録商標))、エルロチニブ(タルセバ(登録商標))、カネルチニブ(CI1033)、ラパチニブ(GW−572016;チケルブ(登録商標))、MP−470、AZD8931、PF00299804;及びその組合せが含まれる。一部の実施形態では、RTKをモジュレートする化合物には、HER1、HER2及びHER3をモジュレートする化合物、cMETをモジュレートする化合物、並びにIGF−1Rをモジュレートする化合物が含まれる。特定の実施形態では、HER1、HER2及びHER3をモジュレートする化合物は、本明細書に記載されるか当業者に公知である1つ又は複数の他の抗がん剤と併用することができる。
【0203】
[0250]他の実施形態では、抗がん剤は、モノクローナル抗体、阻害剤及びその組合せを含む、PI3K活性をモジュレートする1つ又は複数の化合物を含む。これらの化合物の非限定例には、阻害剤、例えばSF1126(Semaphore Pharmaceuticals)、XL147(Exelixis)、XL765(Exelixis)、NVP−BEZ235(Novartis)、NVP−BGT226(Novartis)、NVP−BKM120(Novartis)、GDC−0941(Genentech/Piramed Pharma)、PX−866(ProIX Pharmaceuticals)、GSK1059615(GlaxoSithKline)、CAL−101(Calistoga Pharmaceuticals)及びその組合せが含まれる。
【0204】
[0251]本発明で使用するのに適する抗シグナル伝達剤の例には、それらに限定されないが、モノクローナル抗体、例えばトラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))、ペルツズマブ(2C4;オムニタルグ(商標))、アレムツズマブ(カンパス(Campath)(登録商標))、ベバシズマブ(アバスチン(Avastin)(登録商標))、セツキシマブ(アービタックス(登録商標))、ゲムツズマブ(ミロタルグ(Mylotarg)(登録商標))、パニツムマブ(ベクチビックス(Vectibix)(商標))、リツキシマブ(リツキサン(Rituxan)(登録商標))及びトシツモマブ(BEXXAR(登録商標));チロシンキナーゼ阻害剤、例えばゲフィチニブ(イレッサ(登録商標))、スニチニブ(ステント(Sutent)(登録商標))、エルロチニブ(タルセバ(登録商標))、ラパチニブ(GW−572016;チケルブ(登録商標))、カネルチニブ(CI1033)、セマキシニブ(SU5416)、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、ソラフェニブ(BAY43−9006;ネクサバー(Nexavar)(登録商標))、イマチニブメシレート(グリーベック(Gleevec)(登録商標))、レフルノミド(SU101))バンデタニブ(ザクチマ(ZACTIMA)(商標);ZD6474)、ピリチニブ、CP−654577、CP−724714、HKI−272、PKI−166、AEE788、BMS−599626、HKI−357、BIBW2992、ARRY−334543、JNJ−26483327及びJNJ−26483327;並びにその組合せが含まれる。
【0205】
[0252]例示的な増殖抑制剤には、mTOR阻害剤、例えばシロリムス(ラパマイシン)、テムシロリムス(CCI−779)及びエベロリムス(RAD001);AKT阻害剤、例えば1L6−ヒドロキシメチル−カイロ−イノシトール−2−(R)−2−O−メチル−3−O−オクタデシル−sn−グリセロカーボネート、9−メトキシ−2−メチルエリプチシニウムアセテート、1,3−ジヒドロ−1−(1−((4−(6−フェニル−1H−イミダゾ[4,5−g]キノキサリン−7−イル)フェニル)メチル)−4−ピペリジニル)−2H−ベンズイミダゾール−2−オン、10−(4’−(N−ジエチルアミノ)ブチル)−2−クロロフェノキサジン、3−ホルミルクロモンチオセミカルバゾン(Cu(II)Cl
2複合体)、API−2、プロトオンコジーンTCL1のアミノ酸10〜24に由来する15量体ペプチド(Hiromuraら、J.Biol.Chem.、279巻:53407〜53418頁(2004年)、KP372−1、並びにKozikowskiら、J.Am.Chem.Soc.、125巻:1144〜1145頁(2003年)及びKauら、CancerCell、4巻:463〜476頁(2003年)に記載される化合物;並びにその組合せが含まれる。
【0206】
[0253]化学療法剤の非限定例には、白金をベースとした薬剤(例えば、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、スピロプラチン、イプロプラチン、サトラプラチンなど)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メルファラン、メクロレタミン、ウラムスチン、チオテパ、ニトロソ尿素など)、代謝拮抗物質(例えば、5−フルオロウラシル、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、メトトレキセート、ロイコボリン、カペシタビン、シタラビン、フロクシウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン(ゲムザール(Gemzar)(登録商標))、ペメトレキセド(アリムタ(ALIMTA)(登録商標))、ラルチトレキセドなど)、植物アルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ポドフィロトキシン、パクリタキセル(タキソール(Taxol)(登録商標))、ドセタキセル(タキソテール(Taxotere)(登録商標))など)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、イリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシド(VP16)、リン酸エトポシド、テニポシドなど)、抗腫瘍抗生物質(例えば、ドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシンなど)、薬学的に許容されるその塩、その立体異性体、その誘導体、その類似体及びその組合せが含まれる。
【0207】
[0254]ホルモン治療剤の例には、それらに限定されないが、アロマターゼ阻害剤(例えば、アミノグルテチミド、アナストロゾール(アリミデックス(Arimidex)(登録商標))、レトロゾール(フェマラ(Femara)(登録商標))、ボロゾール、エクセメスタン(アロマシン(Aromasin)(登録商標))、4−アンドロステン−3,6,17−トリオン(6−OXO)、1,4,6−アンドロスタトリエン−3,17−ジオン(ATD)、ホルメスタン(レンタロン(Lentaron)(登録商標))など)、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(例えば、バゼドキシフェン、クロミフェン、フルベストラント、ラソホキシフェン、ラロキシフェン、タモキシフェン、トレミフェンなど)、ステロイド(例えば、デキサメタゾン)、フィナステリド及びゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト(GnRH)、例えばゴセレリン、薬学的に許容されるその塩、その立体異性体、その誘導体、その類似体及びその組合せが含まれる。
【0208】
[0255]本発明で有益ながんワクチンの非限定例には、Active BiotechからのANYARA、Northwest BiotherapeuticsからのDCVax−LB、IDM PharmaからのEP−2101、PharmexaからのGV1001、Idera PharmaceuticalsからのIO−2055、Introgen TherapeuticsからのINGN225及びBiomira/MerckからのStimuvaxが含まれる。
【0209】
[0256]放射線治療剤の例には、それらに限定されないが、腫瘍抗原に対する抗体に任意選択でコンジュゲートされる、
47Sc、
64Cu、
67Cu、
89Sr、
86Y、
87Y、
90Y、
105Rh、
111Ag、
111In、
117mSn、
149Pm、
153Sm、
166Ho、
177Lu、
186Re、
188Re、
211At及び
212Biなどの放射性核種が含まれる。
【0210】
[0257]一部の実施形態では、本明細書に記載される抗がん剤は、従来の免疫療法剤、例えば、それらに限定されないが免疫活性化剤(例えば、カルメット−ゲラン菌(BCG)、レバミゾール、インターロイキン2、アルファインターフェロンなど)、免疫毒素(例えば、抗CD33モノクローナル抗体−カリケアマイシンコンジュゲート、抗CD22モノクローナル抗体−シュードモナス外毒素コンジュゲートなど)及び放射線免疫治療(例えば、
111In、
90Y又は
131Iにコンジュゲートした抗CD20モノクローナル抗体など)と同時投与されてもよい。
【0211】
[0258]抗がん剤は必要に応じて適する医薬賦形剤と共に投与されてもよく、容認された投与様式のいずれかで実施することができる。したがって、投与は、例えば経口、口内、舌下、歯肉、口蓋、静脈内、局所、皮下、経皮、経真皮、筋肉内、関節内、非経口、小動脈内、皮内、心室内、脳内、腹腔内、膀胱内、鞘内、病巣内、鼻腔内、直腸、膣投与であるか、吸入によってもよい。「同時投与」は、抗がん剤が、第2の薬剤(例えば、別の抗がん剤、抗がん剤療法と関連する副作用を低減するのに有益な薬剤、放射線治療薬、ホルモン治療薬、免疫療法剤など)の投与と同時に、その直前に、又はその直後に投与されることを意味する。
【0212】
[0259]抗がん剤の治療的有効量は、繰り返し、例えば少なくとも2、3、4、5、6、7、8回又はそれ以上の回数投与することができるか、又は用量を連続注入によって投与することができる。用量は、好ましくは正確な投薬量の単回投与に適する単位用量剤形での、固体、半固体、凍結乾燥粉末又は液体剤形、例えば錠剤、ピル剤、ペレット剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、坐薬、停留浣腸、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、ゲル剤、エアゾール剤、フォーム剤などの形をとることができる。
【0213】
[0260]本明細書で用いるように、用語「単位用量剤形」は、ヒト対象及び他の哺乳動物のための単一投薬量として適する物理的に別個の単位を指し、各単位は、所望の開始、耐容性及び/又は治療効果を生むように計算された抗がん剤の所定量を、適する医薬用賦形剤と共に含有する(例えば、アンプル)。さらに、より希釈された単位用量剤形を次に生成することができる、より濃縮された剤形を調製することができる。したがって、より濃縮された剤形は、例えば少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10倍又はそれ以上より実質的に多くの量の抗がん剤を含有する。
【0214】
[0261]そのような剤形の調製方法は、当業者に公知である(例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、18版、Mack Publishing Co.、Easton、PA(1990年)を参照)。剤形は、従来の薬用担体又は賦形剤を一般的に含み、他の薬剤、担体、アジュバント、希釈剤、組織浸透増強剤、可溶化剤などをさらに含むことができる。適当な賦形剤は、当技術分野で周知である方法によって、特定の剤形及び投与経路に適合するように調整することができる(例えば、上記REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCESを参照)。
【0215】
[0262]適する賦形剤の例には、それらに限定されないが、ラクトース、ブドウ糖、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカンタ、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、食塩水、シロップ、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリアクリル酸、例えばカーボポール(Carbopol)、例えばカーボポール941、カーボポール980、カーボポール981などが含まれる。剤形は、滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油;湿展剤;乳化剤;懸濁剤;保存剤、例えばメチル−、エチル−及びプロピル−ヒドロキシベンゾエート(すなわち、パラベン);pH調整剤、例えば無機酸及び有機酸及び塩基;甘味料;並びに香味料をさらに含むことができる。剤形は、生分解性ポリマービーズ、デキストラン及びシクロデキストリン封入複合体を含むこともできる。
【0216】
[0263]経口投与については、治療的有効用量は、錠剤、カプセル剤、乳剤、懸濁剤、液剤、シロップ剤、噴霧剤、ロゼンジ剤、散剤及び徐放性製剤の形であってよい。経口投与に適する賦形剤には、医薬用のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウムなどが含まれる。
【0217】
[0264]一部の実施形態では、治療的有効用量は、ピル剤、錠剤又はカプセル剤の形をとり、したがって、剤形は抗がん剤と共に以下のいずれかを含有することができる:希釈剤、例えばラクトース、スクロース、リン酸二カルシウムなど;崩壊剤、例えばデンプン又はその誘導体;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムなど;及び結合剤、例えばデンプン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロース及びその誘導体。抗がん剤は、例えばポリエチレングリコール(PEG)担体中に置かれる坐薬に製剤化されてもよい。
【0218】
[0265]液体剤形は、抗がん剤及び任意選択で1つ又は複数の薬学的に許容されるアジュバントを担体に、例えば食塩水(例えば、0.9w/v%塩化ナトリウム)、水性デキストロース、グリセロール、エタノールなどに溶解するか分散させ、例えば経口、局所又は静脈内投与のための溶液又は懸濁液を形成することによって調製することができる。抗がん剤は、停留浣腸に製剤化されてもよい。
【0219】
[0266]局所投与については、治療的有効用量は、乳剤、ローション剤、ゲル剤、フォーム剤、クリーム剤、ゼリー剤、液剤、懸濁剤、軟膏及び経皮パッチの形であってよい。吸入による投与については、抗がん剤は乾燥粉末として、又はネブライザーを通す液剤形で送達することができる。非経口投与については、治療的有効用量は無菌注射液及び無菌のパッケージされた粉末の形であってよい。注射液は、約4.5〜約7.5のpHで製剤化されるのが好ましい。
【0220】
[0267]治療的有効用量は、凍結乾燥形で提供することもできる。そのような剤形は、投与前の再構成のための緩衝剤、例えば重炭酸塩を含むことができ、又は、緩衝剤は、例えば水による再構成のために凍結乾燥剤形で含まれてもよい。凍結乾燥剤形は、適する血管収縮剤、例えばエピネフリンをさらに含むことができる。凍結乾燥剤形は、再構成される剤形を対象に直ちに投与することができるように、任意選択で再構成のための緩衝剤と共にパッケージされた注射器で提供することができる。
【0221】
[0268]特定の治療計画の有効性を評価するために、対象を定期時間間隔で監視してもよい。例えば、特定のシグナル伝達分子の活性化状態は、本明細書に記載される抗がん剤の1つ又は複数による治療の治療効果に基づいて変わることができる。個人別に設定された方法で特定の薬剤又は治療の応答を評価し、効果を理解するために、対象を監視することができる。さらに、特定の抗がん剤又は抗がん剤の組合せに最初に応答する対象は、薬剤又は薬剤の組合せに不応性になることがあり、これらの対象が後天的な薬剤抵抗性を発達させたことを示す。これらの対象では、彼らの現在の療法を中止し、本発明の方法に従って代替治療を処方することができる。
【0222】
[0269]特定の態様では、本明細書に記載される方法は、例えば結節陰性疾患を有する様々な女性集団において、乳がんの予後及び/又は再発の見込みを予測する遺伝子発現マーカーパネルと共に用いることができる。これらの遺伝子パネルは、再発を経験する可能性が低く、したがって補助化学療法が有益である可能性が低い女性を同定するために役立つことができる。発現パネルは、無症候生存率及び全生存率の結果に負の影響を及ぼさずに補助化学療法を安全に避けることができる女性を同定するために用いることができる。適する系には、それらに限定されないが、Genomic Health,Inc.からの21遺伝子パネルであるオンコタイプ(Oncotype)DX(商標)、Agendiaからの70遺伝子パネルであるMammaPrint(登録商標)及びVeridexからの76遺伝子パネルが含まれる。
【0223】
[0270]さらに、他の特定の態様では、本明細書に記載される方法は、未知の原発がん(CUP)の元の腫瘍を同定する遺伝子発現マーカーパネルと共に用いることができる。これらの遺伝子パネルは、最初に乳がんと診断された女性に与えられるものと一貫した療法が有益となるであろう転移がんを有する女性を同定するのに役立つことができる。適する系には、それらに限定されないが、Aviara CancerTYPE IDアッセイ、39個の腫瘍型の起源の原発部位を同定するために92個の遺伝子を測定するRT−PCRをベースとした発現アッセイ、及び、マイクロアレイ上の1600個を超える遺伝子の発現を測定して、15個の既知の組織型のそれらに対して腫瘍の遺伝子発現「サイン」を比較する、パスワーク(Pathwork)(登録商標)始原組織検査が含まれる。
【実施例】
【0224】
[0271]以下の実施例は請求される発明を例示するために提供され、限定するためではない。
【0225】
実施例1:PI3Kをモジュレートする化合物について患者を選択するためのPI3K活性化の定量分析。
[0272]この実施例は、活性化(リン酸化)PI3K複合体の存在が、それらに限定されないがAKT、mTOR及びS6Kを含む、活性化PI3K複合体経路構成要素の存在と相関することを実証する。この実施例は、特定の例では、PI3K活性化の上昇レベルを有する乳がん患者が、活性化(リン酸化)AKTも発現することを示す。活性化PI3Kを有する21人の患者のうち、19人はホスホ−AKTの上昇レベルも有していた。このことは、ホスホ−AKTがPI3Kの下流に作用し、PI3Kの活性化がAKTの活性化をもたらすことができるとの発見を裏づける。乳がん患者試料でのPI3K活性化とリン酸化AKTの間での高い相関度(p値=0.0222;
図6)は、PI3K経路の活性化が腫瘍形成に生物学的に関連することを確認する。
【0226】
[0273]乳がん患者から回収された60個のFNA試料で、経路プロファイリング分析を実施した。経路タンパク質の発現及びリン酸化のレベルを判定するために、多重化イムノアレイCEER(共同酵素強化反応性イムノアッセイ)プラットホームを利用した。DNAを試料から抽出し、体細胞突然変異のパネルについて分析した。検出された活性化経路は、HER1、HER2、HER3、IGF−1R、cMET、PI3K及び関連する下流タンパク質を含む。
【0227】
[0274]この実施例は、PI3K活性化を有する21人の患者のわずか5人が、PI3KCA突然変異を有していたことを示す。ほとんどの乳がん患者では、活性化(リン酸化)AKTは、PI3KCAの野生型状態に対応する。PI3KCA突然変異とPI3K阻害剤への応答の間に相関があるが、この実施例は、PI3K経路に変化のないがん患者もPI3K阻害剤療法から恩恵を受けることができることを示す。
図6は、乳がん患者の経路プロファイリング分析での、ホスホ−AKT及びホスホ−PI3Kの比較を例示する。
図7は、乳がん患者からの60個のFNA試料で、ホスホ−PI3Kの存在がホスホ−AKTと相関することを例示する。活性化AKTは、PI3KCA突然変異のない患者で検出された。
図8は、活性化AKTがPI3KCA体細胞突然変異と相関しないことを例示する。
【0228】
実施例2:乳がん患者からのFNA試料でのPI3K活性化及びErbBファミリーの受容体チロシンキナーゼ(RTK)活性化の定量分析。
[0275]この実施例は、乳がん患者でのPI3K経路活性化と共にErbB活性化及び二量体形成の分析を例示する。詳細には、この実施例は、活性化されたリン酸化ErbB、例えばリン酸化HER2及びリン酸化HER3の上昇レベルが、p−AKT及びp−PI3Kの上昇レベルと関連することを示す。さらに、この実施例は、ErbBの活性化及び二量体化のレベルが上昇した患者が、PI3K阻害剤による治療から恩恵を受けることができることを示す。活性化HER2、HER3、PI3K及び/又はAKTのレベルのいかなる変化の存在又は非存在を検出することによって、PI3K阻害剤への臨床感受性を評価することができる。
【0229】
[0276]乳がん患者から回収された60個のFNA試料で、経路分析を実施した。経路タンパク質の発現及びリン酸化のレベルを判定するために、多重化イムノアレイCEER(共同酵素強化反応性イムノアッセイ)プラットホームを利用した。DNAを試料から抽出し、体細胞突然変異のパネルについて分析した。検出された活性化経路は、HER1、HER2、HER3、IGF−1R、cMET、PI3K及び関連する下流タンパク質(例えば、アダプター及びエフェクタータンパク質)を含む。
【0230】
[0277]この実施例は、乳がん患者からの60個のFNA試料での、活性化HER2、HER3、PI3K及びAKTの間の高い相関度を例示する。詳細には、活性化ホスホ−PI3Kを有する21人の患者のうち20人で、ホスホ−HER3が活性化される(p=0.00001、
図9)。この実施例は、ErbB活性化(すなわち、ヘレグリン(HRG)又はTGFαの存在下でのHER3:PI3K複合体、ホスホ−HER3、総HER3、HER2/HER3ヘテロダイマー、HER1/HER3ヘテロダイマー、HER4/HER3ヘテロダイマーのレベルの上昇)を有する患者が、PI3K阻害剤治療から恩恵を受けることができることも示す。
図9は、乳がん患者からの60個のFNA試料での、ホスホ−HER3の存在とホスホ−PI3Kの存在の間の高い相関度を例示する。アッセイで用いられるPI3Kのカットオフ値に関係なく、試料中のホスホ−HER3とホスホ−PI3Kの間に相関がある。
図10は、乳がん患者でのホスホ−HER3の存在とホスホ−AKTの存在の間の相関を例示する。
図11は、活性化PI3Kが活性化AKT及びホスホ−HER3と関連することを示す。
図6は、PI3K活性化の非存在下で活性化AKTがホスホ−HER3と相関することも示す。
図12は、乳がん患者からのFNA試料で、ホスホ−HER2が活性化PI3K及び活性化AKTと関連することを示す。
図13は、HER2遺伝子の突然変異又は増幅を有しない乳がん患者試料での、ホスホ−HER2、ホスホ−PI3K及びホスホ−AKTの同時活性化を示す。
【0231】
実施例3:ハーセプチン併用療法で再発した患者でのPI3K活性化及びHER3活性化の定量分析。
[0278]抗がん療法において再発した乳がん(BCA)患者の転移部位から回収された微細針吸引液(FNA)試料における、HER1、HER2、p95HER2、HER3、cMET、IGF−1Rを含むキーサイン受容体チロシンキナーゼ、並びにPI3K、Shc、AKT及びERKを含む下流キナーゼ及びアダプタータンパク質の包括的分析がここに報告される。
【0232】
[0279]この試験では、ハーセプチン併用療法で再発した乳がん患者の内視鏡的超音波(EUS)ガイド肝生検試料で、CEER−FNA経路プロファイリング分析を実施した。HER1、HER2、HER3、p95、PI3K、AKT、ERK/MAPK及びShcタンパク質の活性形の高いレベルを試料で検出した。経路活性化プロファイルは、患者がpan−HER阻害剤及びPI3K阻害剤を含む併用治療に臨床的に感受性であることを示唆する。
【0233】
[0280]別の試験では、ハーセプチン併用療法の再発乳がん患者の腋窩リンパ節からの生検試料で、CEER−FNA経路プロファイリング分析を実施した。体細胞突然変異分析は、患者がH1047R PIK3CA突然変異を有することを示す。HER1、HER2、HER3、cMET、Shc、ERK/MAPK、PI3K及びAKTタンパク質の活性形の高いレベルが検出された。経路活性化プロファイルは、患者がPI3K阻害剤併用療法に応答性であることを示唆する。
【0234】
[0281]この実施例は、ErbB活性化(すなわち、HER3:PI3K複合体、ホスホ−HER3、総HER3、HER2/HER3ヘテロダイマー、HER1/HER3ヘテロダイマー、HER4/HER3ヘテロダイマー、ヘレグリン(HRG)又はTGFのレベルの上昇)を有する患者が、併用治療から恩恵を受けることができることも示す。一実施形態では、HER3/PI3K複合体の上昇レベルを有する固形腫瘍がん患者は、PI3K阻害剤及び抗HER3抗体療法を含む治療計画から恩恵を受けることができる。別の実施形態では、HER2/HER3ヘテロダイマーの上昇レベルを有する固形腫瘍がん患者は、PI3K阻害剤及びペルツズマブ又は抗HER2抗体若しくはTKIのいずれかとの併用治療に臨床的に感受性であろう。
図14は、ハーセプチン併用療法で再発した乳がん患者からの試料での、活性化HER1、HER2、HER3、p95、ERK、Shc、PI3K、AKT及びERKタンパク質を示す。
図15は、ハーセプチン併用療法で再発したH1047RPIK3CA体細胞突然変異を有する乳がん患者からの試料での、活性化HER2、HER3、cMet、ERK、PI3K及びAKTタンパク質を示す。
【0235】
実施例4:抗がん療法に曝露させた腫瘍試料の経路活性化プロファイリング。
[0282]この実施例は、CEERアッセイプラットホームによって判定された、腫瘍細胞試料でのRTK経路、並びに下流キナーゼ、エフェクター及びアダプタータンパク質の全体の及び活性化(リン酸化)されたレベルの検出を実証する。リン酸化PI3K、AKT、ERK(下流エフェクター標的)、並びに活性化HER1、HER2、HER3及びIGF−1R(PI3K膜リクルータータンパク質としても知られる)のより高いレベルが検出された。一部の実施形態では、非小細胞肺がん腫瘍細胞試料は、AKT阻害剤及び/又はHER1阻害剤療法に曝露させられる。リン酸化PI3K、AKT、ERK(下流エフェクター標的)、並びに活性化HER1、HER2、HER3及びIGF−1R(PI3K膜リクルータータンパク質としても知られる)のより高いレベルが検出された。乳がん腫瘍試料は、AKT阻害剤及び/又はラパチニブ(チロシンキナーゼ阻害剤)に曝露させられた。この実施例は、がん細胞が薬物療法による治療圧に適応することができることを例示する。それは、ErbBをモジュレートする化合物(すなわち、抗HER2抗体、例えばペルツズマブ、抗HER3抗体及びチロシンキナーゼ阻害剤)と併用されるPI3K阻害剤療法が、ErbBをモジュレートする化合物単独にはもはや応答性でない患者に恩恵をもたらすことができることも示す。
図16は、AKT阻害剤、HER1阻害剤又は併用療法による治療の後のNSCLC腫瘍細胞試料でのPI3K経路活性化のCEER−FNA分析を示す。
図17は、AKT阻害剤、ラパチニブ(チロシンキナーゼ阻害剤)又は併用療法による治療の後の乳がん細胞試料の経路プロファイリングでのバイオマーカーのCEER−FNA分析を例示する。
【0236】
実施例5:HERの活性化及び二量体化を測定するための新規の近接性に基づく複合体アッセイ。
[0283]この実施例は、感度が単一細胞レベルである、シグナル伝達複合体での活性化事象を特異的に検出することが可能な新規の近接性二量体化及び複合体生成アッセイを例示する。CEERプラットホームを含むアッセイは、限定された量の試料を扱うのに極めて有益であり、回収された循環腫瘍細胞及び転移性FNA腫瘍試料について、キナーゼ及び他のシグナル伝達経路分子の発現/活性化プロファイリングを有利に提供する。
【0237】
[0284]一実施形態では、新規の近接性に基づく二量体アッセイは、患者腫瘍試料でErbBヘテロダイマー複合体を検出することができる。それは、抗がん剤及び/又は経路活性化リガンド、例えばそれらに限定されないがHRG及びEGFに曝露させたがん細胞でこれらの複合体を検出することもできる。
【0238】
[0285]別の実施形態では、新規の近接性に基づく複合体アッセイは、膵がん腫瘍試料でHER3/PI3K複合体を検出する。
【0239】
[0286]この実施例は、近接アッセイで用いられる3つの抗体は以下を含むことができることを例示する:(1)二量体対の1つのメンバーに特異的な捕捉抗体、(2)二量体対の第1のメンバーに特異的で、捕捉抗体と異なるドメインに特異的である第1の検出抗体、及び(3)二量体対の第2のメンバーに特異的な第2の検出抗体。一部の実施形態では、新規の近接性に基づく二量体アッセイは、それらに限定されないが、HER1/HER2二量体、HER1/HER3二量体、HER2/HER3二量体、HER2/HER2二量体、HER2/HER4二量体、p95HER2/HER3二量体、p95HER2/HER2二量体などを含む、受容体チロシンキナーゼのホモ又はヘテロ二量体化を検出及び定量化するために用いられる。
【0240】
[0287]一実施形態では、PI3K複合体アッセイは、以下のものを含む:(1)PI3Kのp85サブユニットに特異的な捕捉抗体、(2)RTKの活性形又はアダプタータンパク質に結合する特異的検出抗体、及び(3)PI3Kのp85サブユニットの活性形を認識する検出抗体。別の実施形態では、PI3K複合体アッセイは、以下のものを含む:(1)PI3Kのp85サブユニットに特異的な捕捉抗体、(2)RTKの活性形又はアダプタータンパク質に結合する特異的検出抗体、及び(3)別のRTKの活性形又はアダプタータンパク質を認識する検出抗体。別の実施形態では、PI3K複合体アッセイは、以下のものを含む:(1)PI3Kのp110サブユニットに特異的な捕捉抗体、(2)RTKの活性形又はアダプタータンパク質に結合する特異的検出抗体、及び(3)PI3Kのp85サブユニットの活性形を認識する検出抗体。さらに別の実施形態では、PI3K複合体アッセイは、以下のものを含む:(1)PI3Kのp85サブユニットに特異的な捕捉抗体、(2)RTKの活性形又はアダプタータンパク質に結合する特異的検出抗体、及び(3)PI3Kのp110サブユニットの活性形を認識する検出抗体。一実施形態では、PI3K複合体アッセイは、以下のものを含む:(1)PI3Kのp85サブユニットに特異的な捕捉抗体、(2)PI3Kのp85サブユニットの活性形に結合する特異的検出抗体、及び(3)PI3Kのp110サブユニットの活性形を認識する検出抗体。
図18は、新規の近接性に基づく二量体アッセイを用いて検出された、MCF7細胞の上のHER1/2及びHER2/3ヘテロ複合体の生データを示す。
図19は、すい臓腫瘍試料及びHDPE細胞でのHER3ヘテロダイマー複合体及びHER3/PI3K複合体の活性化を示す。CEER二量体アッセイは、捕捉抗体及び複数の検出抗体の組合せを用いて、10μg、5μg及び2μgで実施される。10μgでのHER3/PI3K複合体以外の全てについて、5μgデータを示す。HPDE細胞及び腫瘍試料10−494は、それぞれ1:2及び2:3の複合体を形成する。HPDE細胞と比較して、腫瘍試料はより高いレベルのホスホ−HER3を有し、PI3Kと結合してHER3/PI3K複合体を形成する。
図20は、MCF7細胞(ヒト乳房腺がん細胞株)での、HRG又はEGFに応じるHER2ヘテロダイマー及びPI3Kの活性化を示す。
【0241】
実施例6:乳がん患者からのFNAでのRTK及びPI3K経路活性化の検出。
[0288]この実施例は、59人の乳がん患者のCEER−FNA経路分析を例示する。固形腫瘍を有する乳がん患者群において、CEERアッセイで測定した、RTK経路活性化並びに下流エフェクター及びアダプタータンパク質の発生率を調査した。いくつかの試料で、リン酸化されたHER2、HER3、PI3K及びAKTの高いレベルが検出された。この実施例は、ErbBをモジュレートする化合物(すなわち、抗HER2抗体、例えばペルツズマブ、抗HER3抗体及びチロシンキナーゼ阻害剤)と併用されるPI3K阻害剤療法が、この経路プロファイルを有する患者に恩恵をもたらすことができることを示す。固形腫瘍患者のCEER−FNA経路分析は、経路活性化プロファイルによって各患者のための疾患治療選択肢の評価において臨床医を支援するための、価値ある臨床情報を提供する。
図21は、乳がん患者のCEER−FNA経路分析を例示する。
図22は、より多くの乳がん患者のCEER−FNA経路分析を例示する。
図23は、さらにより多くの乳がん患者のCEER−FNA経路分析を例示する。
図24は、乳がん患者のCEER−FNA経路分析を例示する。
【0242】
実施例7:乳がん患者でのPI3K及びIGF−1R活性化の定量分析。
[0289]この実施例は、ホルモン療法で再発した乳がん患者から回収されたFNA試料における、HER1、HER2、p95HER2、HER3、cMET、IGF1Rを含むキーサイン受容体チロシンキナーゼ、並びにPI3K、Shc、AKT及びERKを含む下流キナーゼ及びアダプタータンパク質の包括的分析を例示する。我々は、活性化IGF−1R、PI3K AKT及びERK/MAPKタンパク質の高いレベルを検出した。注目すべきことに、患者でのPI3K活性化は、PIK3CA突然変異によるものではなかった。驚くべきことに、既存の療法(例えば、ホルモン療法)は、その療法によって停止されたがその直接の標的でなかったホルモン経路と関連する代償経路を活性化した。経路活性化プロファイルは、IGF−1R阻害剤及びPI3K阻害剤を含む併用治療から、患者が臨床的に恩恵を受けることができることを示唆する。経路プロファイルは、IGF−1R経路を標的にする治療剤がER陽性乳がん患者の治療で効果を発揮することができることも示唆する。
図25は、乳がん患者でのIGF−1R、PI3K、AKT及びERK活性化を例示する。
図26は、乳がん患者でのIGF−1R及びAKT活性化を例示する。活性化IGF−1Rレベルは、ホスホ−AKTレベルと相関する。さらに、総IGF−1Rの上昇レベルもホスホ−AKTと相関する。
【0243】
実施例8:非小細胞肺がん患者でのIGF−1R又はcMET活性化と一緒のPI3K活性化の定量分析。
[0290]この実施例は、抗がん治療の前のNSCLC患者から回収されたFNA試料における、HER1、HER2、p95HER2、HER3、cMET、IGF−1Rを含むキーサイン受容体チロシンキナーゼ、並びにPI3K、Shc、AKT及びERKを含む下流キナーゼ及びアダプタータンパク質の包括的分析を例示する。特定の一実施形態では、本方法は、複数の発癌タンパク質(例えば、FGFR1、FGFR2、IGF−1R、cMET、HER1、HER2、HER3、VEGFR2、PI3K、SHC、FAK、CRKL)の発現レベル、並びに患者腫瘍組織から収集された生体試料でのそれらの活性化(例えば、リン酸化)された形の発現レベルの検出及び測定を可能にする。特定の例では、NSCLC患者からの腫瘍試料は、KRAS突然変異(例えば、G12C、G12D、G12R、G12S、G12V、G13C及びG13R)を有する。
【0244】
[0291]肺がん患者からの腫瘍試料のPI3K活性化プロファイリングを実施するために、本明細書に記載される方法を用いた。PI3K及びAKTの活性化の上昇レベル並びにHER1/2、HER1/3、HER2/3及びHER3/PI3Kの複合体生成が検出された。興味深いことに、ERKの活性化も見られた。
図27は、NSCLC患者でのIGF−1R又はcMET活性化と一緒のPI3K活性化を例示する。G12C KRAS突然変異を有する患者1からの腫瘍試料は、高レベルのPI3K複合体及びホスホ−PI3Kと一緒の、高レベルの総IGF−1R及びリン酸化IGF−1Rを有する。経路プロファイリング分析は、患者2からの腫瘍試料も、高レベルの総IGF−1R及びリン酸化IGF−1R、PI3K複合体並びにホスホ−PI3Kを発現することを示す。
図28は、肺がん患者では、HER3及び/又はcMET活性化と共にPI3K活性化が検出されることを示す。
図29は、G12C KRAS突然変異を有するNSCLC患者での、HER3、cMET及びPI3Kの同時活性化を例示する。活性化された他の下流エフェクタータンパク質(例えばFAK及びCRKL)が検出された。VEGFR2発現は高く、FGFR1及びFGFR2の両方が試料中で活性化された。経路分析プロファイリングは、治療の前の腫瘍試料で実施した。
図30は、NSCLC患者でのPI3K活性化及びHERヘテロダイマーの「ヒートマップ」を示す。ErbB二量体化及びPI3K経路活性化が、腫瘍試料で検出された。
図31は、NSCLC患者からのKRAS及びEGFR体細胞突然変異のない腫瘍試料でのHER3及びPI3Kの同時活性化を例示する。活性化CRKL、FAK及びShcのレベルも検出された。全VEGFR2発現も、同様に高かった。
【0245】
実施例9:胃がん患者でのErbBファミリー受容体チロシンキナーゼ活性化及びPI3K活性化の定量化。
[0292]この実施例は、胃がん患者から回収されたFNA試料における、HER1、HER2、HER3、cMET、IGF−1R、cKITを含むキーサイン受容体チロシンキナーゼ、並びにPI3K、Shc、AKT及びERKを含む下流エフェクタータンパク質の包括的分析を例示する。特定の一実施形態では、高レベルのErbBファミリーのRTKの活性化及び二量体形成が、いくつかの腫瘍試料で検出された。一部の試料では、cMET活性化は、ホスホ−HER1レベルと相関した。
【0246】
[0293]固形腫瘍がんの予測バイオマーカー間の一致又は相関を評価するために、マーカー分類分析を実施した。主成分分析に類似する多次元尺度法を用いて、cMET及びHER1のリン酸化された形が、胃がん患者からの腫瘍試料で高度の一致を有すると判定された。一致は、これらの試料中のHER2とShc、並びにIGF−1RとPI3Kの間にも存在した。興味深いことに、HER3はHER2及びPI3Kの両方と緊密な関係を有する。このことは、胃腫瘍試料の疾患状態又は経路プロファイルを判定するために、HER2、HER3及びPI3Kを含む活性化PI3K複合体の検出を用いることができるという考えを支持する。
図32は、胃がん患者試料でのホスホ−HER3の存在を例示する。一部の試料では、活性化HER3は、活性化cMETの存在と相関した。いくつかの胃腫瘍試料では、活性化ErbB受容体が検出された。
図33は、リン酸化経路マーカーの一致を提示する多次元尺度法(MDS)グラフを示す。
図34は、胃がん患者の経路プロファイリング分析での、ホスホ−PI3K及びホスホ−AKT/ERKの比較を例示する。FGFR1、FGFR2、FGFR3及びFGFR4を含むFGFRファミリーの活性化が、試料の一部で検出された。
【0247】
実施例10:治療前の結腸直腸がん患者からの固形腫瘍試料からのPI3K経路活性化の検出。
[0294]この実施例は、結腸直腸がん患者から回収されたFNA試料における、HER1、HER2、HER3、cMET、IGF−1R、cKITを含むキーサイン受容体チロシンキナーゼ、並びにPI3K、Shc、AKT及びERKを含む下流エフェクタータンパク質の包括的分析を例示する。一実施形態では、腫瘍試料は、G13D KRAS突然変異を有する。別の実施形態では、腫瘍試料は、野生型KRAS遺伝子を発現する。
図35は、治療前の結腸直腸がん患者での、PI3K経路活性化及びHER経路活性化を例示する。
図36は、治療前の結腸直腸がん患者からとられたG13D KRAS突然変異を有する試料での、PI3K経路活性化及びHER経路活性化を例示する。
図36は、HER1(EGFR)、HER2、Shc、ERK及びAKTタンパク質が高度に活性化されることを示す。
図37は、治療前のG12D KRAS突然変異を有する結腸直腸がん患者での、PI3K経路活性化及びHER経路活性化を例示する。
図38は、結腸直腸がん患者からの試料の経路プロファイリングのバイオマーカーのFNA分析を例示する。
【0248】
実施例11:膵がん患者の固形腫瘍からPI3K経路活性化を検出する方法。
[0295]標的タンパク質又は突然変異の発現の分析だけでは、最大臨床有効性のある正しい治療処方計画を選択するのに限界がある。最も有効な標的特異的薬物組合せに焦点を当てた臨床戦略の開発では、それらの発現レベル及びリン酸化レベルを含む経路タンパク質の包括的機能分析が重要である。すい臓がん患者から回収されたFNA試料における、HER1、HER2、p95HER2、HER3、cMET、IGF−1Rを含む鍵となる受容体チロシンキナーゼ、並びにPI3K、Shc、AKT及びERKを含む下流エフェクタータンパク質で、経路プロファイリング分析を実行した。患者試料でのHER3、IGF−1R及び/又はcMETと一緒のPI3Kの同時活性化は驚くべきことである。PIK3CA突然変異及びKRAS突然変異(例えば、G12V又はG12D)が、このコホートで見出された。
図39は、KRAS突然変異を有するすい臓がん患者の経路プロファイリングでの、バイオマーカーのFNA分析を例示する。
図40は、KRAS突然変異を有するすい臓患者及び有しないすい臓患者の経路プロファイリングでの、バイオマーカーのFNA分析を例示する。
【0249】
実施例12:核酸及び機能的タンパク質分析を併用した乳がん患者の包括的疾患プロファイリング。
[0296]この実施例は、核酸及び機能的タンパク質分析を併用した包括的疾患プロファイリングの方法を例示する。
図41は、例示的な方法の模式図を示す。本発明の方法は、患者(610)から得られた約100個の少数の細胞を用いる。一部の実施形態では、試料は、微細針吸引液(FNA)、循環腫瘍細胞(CTC)、腹水、内視鏡的超音波ガイド生検試料又は患者から収集された他の細胞に由来する。収集された患者試料は単一の試料供給源(620)を表し、参照により本明細書に組み込まれる国際特許公開番号WO2011/008149に記載される方法によって保存し、出荷することができる。試料の一定分量は、CEERプラットホーム(635)などの自動化プラットホーム(630)で、機能的経路プロファイルを判定するための方法を用いて分析することができる。試料の別の一定分量は、希少体細胞突然変異(640)の存在を判定する方法を用いて分析することができる。体細胞突然変異を検出する方法の非限定例には、対立遺伝子変異体の定量化及びSNP遺伝子タイピング(645)が含まれる。本発明の方法は、機能的経路プロファイリング及び体細胞突然変異分析から得られたデータを組み込んで、包括的疾患プロファイル(650)を提供する。一部の実施形態では、疾患プロファイルは、報告として提示することができる。
【0250】
[0297]この実施例は、乳がん患者のCEER−FNA経路プロファイリング及び体細胞突然変異分析の組合せの多国籍及び多施設研究からの結果を記載する。研究の詳細は、
図42及び43に示す。患者からの組織は、一次免疫組織化学(IHC)及び/又は蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)によってHER2過剰発現についてスクリーニングした。疾患再発を経験し、IIIB期又はIV期乳がんと診断された患者(124人の患者)が試験に登録された。FNA試料は、各患者から様々な及び/又は複数の転移部位から回収した。転移部位の非限定例には、肝臓、骨、腋窩及び他のリンパ節、肺、皮膚、室壁、脳及び胸骨質が含まれる。一部の実施形態では、FNAを23ゲージ針で100μlのProteinLater(Prometheus Laboratories;San Diego、CA)に回収し、保存し、周囲温度で運んだ。他の実施形態では、患者のFNA試料を内視鏡的超音波(EUS)ガイド生検によって100μlのProteinLaterに回収し、保存し、周囲温度で運んだ。
【0251】
[0298]この実施例は、58人の患者で、HER1、HER2、p95HER2、HER3、cMET、IGF−1R、CK、SHC、AKT、ERK及びPI3Kなどの複数の経路タンパク質、並びにPIK3CA、KRAS及びBRAFなどの遺伝子の体細胞突然変異について実施された中間分析を記載する。CEERアッセイは、総タンパク及び/又はシグナル伝達経路(例えば、RTK及びPI3K経路)の活性化(リン酸化)タンパク質のレベルを検出するために用いることができる。RTK及び下流シグナル伝達タンパク質のプロファイルは、試験したFNA溶解物の100%(58人の患者中58人)で得られた。これは、RNAをベースとした分析で達成された約70%の成功率よりかなり高い。一部の実施形態では、経路プロファイリング分析のために、約100μlのFNA溶解物の4〜8μlで十分である。FNA溶解物中のタンパク質は、機能的経路プロファイリング及び遺伝子タイピングスクリーニングの両方のためによく維持される。詳細には、リン酸化部位は、タンパク質上で維持される。したがって、包括的疾患プロファイルを確立するために、突然変異及び経路プロファイリングの両方のために単一の試料供給源を用いることができる。
【0252】
[0299]一部の実施形態では、経路プロファイリングは、抗がん治療薬を受けている患者からの乳がん吸引液で実施することができる。
図44は、HER1阻害剤に曝露させた試料からの乳がん吸引液のPI3K経路プロファイリングの使用を例示する。
【0253】
[0300]一部の実施形態では、本発明の方法は、最少量の試料からの患者の原発腫瘍及び二次腫瘍のシグナル伝達経路及び体細胞突然変異プロファイルを判定し、比較することを含む。
図45は、乳房腫瘍のFNA及びリンパ節腫瘍のFNAの活性化(リン酸化)PI3K経路プロファイルを例示する。FNA試料は、リンパ節又は腋窩領域のいずれかのために23ゲージ又は25ゲージ針を用いて得られた。他の例では、試料はEUS−FNAであった。
図46Aは、CEERアッセイで判定されるPI3K経路の構成要素のタンパク質発現レベルを例示する。
図46Bは、HER1、HER2、HER3、cMET、IGF1R及びCKのタンパク質レベルが患者の乳房腫瘍及びリンパ節腫瘍で類似していることを示す。
【0254】
[0301]一部の実施形態では、本発明の方法は、患者コホートでシグナル伝達経路プロファイルを分析し、複数のバイオマーカーと疾患プロファイルの間の相関を確立するために用いることができる。場合によっては、PI3K阻害剤を含む治療から患者が恩恵を受けるかどうか判定するために、乳がん患者の包括的疾患プロファイリングを実施することができる。
図47は、試験の乳がん患者のコホートでは、活性化PI3K経路タンパク質、活性化PI3K突然変異及びその組合せの間に統計的に有意な相関があることを示す。
図48は、試験の中間分析の患者14003−3004の包括的疾患プロファイリングから得られたデータを例示する。本明細書に記載の方法を用いて、患者はHER2を過剰発現し、高いHER3及びPI3K活性を有する乳がん腫瘍を有すると判定された。疾患プロファイルは、患者がPI3K阻害剤療法から恩恵を受けることができることを示す。
【0255】
[0302]一部の実施形態では、本発明の方法は、腫瘍及び正常な隣接組織(NAT)の経路プロファイルを比較するために用いることができる。
図49Aは、抗pan−CK抗体で染色した組織の免疫組織化学像を示す。腫瘍細胞はCKが陽性であるが、正常な隣接組織はCKを発現しない。
図49Bは、乳がん腫瘍試料及び正常な隣接組織試料のPI3K経路プロファイルを例示する。
図49Cは、本明細書に記載されるCEER−FNAアッセイからの結果を示す。腫瘍試料の経路プロファイルが、正常な隣接組織のそれと比較して異なることをグラフは示す。詳細には、HER2、HER3、IGF−1R及びCKは、正常な隣接組織と比較して腫瘍で過剰発現される。
【0256】
[0303]本発明の方法は、乳がんFNA試料において、免疫組織化学(IHC)で測定されるHER2タンパク質の発生率が、CEERアッセイで測定される総p95HER2タンパク質及びホスホ−p95HER2タンパク質の両方の上昇レベルと相関することを実証するために用いることができる。
図50Aは、乳がん吸引液試料中のHER2タンパク質及びp95HER2タンパク質のウェスタンブロットを示す。
図50Bは、IHCで測定するときにHER2を高度に発現する(例えば、3+)腫瘍試料が、HER2を2+又は1+/0レベルで発現するものと比較して、総p95HER2タンパク質及び活性化(リン酸化)p95HER2タンパク質を過剰発現する可能性がより高いことを示す。
図50Cは、IHCで測定されたHER2発現によって分類された総p95HER2タンパク質発現のグラフを表す。
【0257】
[0304]試験の中間分析は、CEERでIHC HER2(例えば、3+)試料の高い一致(100%)も示した。
図51は、CEERによってHER2陽性であった6つのFNA試料が、一次IHCで測定したときにHER2陽性細胞を発現した患者に由来することを示す。CEERでIHC HER2陰性腫瘍でも、90.5%の一致があった。注目すべきことに、8つの患者試料がPI3KCA体細胞突然変異を有した。
【0258】
[0305]本発明の方法は、乳がん患者の包括的疾患プロファイルを判定するために用いることができる。
図52は、機能的経路プロファイリングと遺伝子タイピングの組合せを用いる、本明細書に記載される包括的経路分析からのデータを例示する。CEERアッセイによって全体の及び活性化(すなわち、リン酸化)されたシグナル伝達経路構成要素(例えば、HER1、HER2、p95HER2、HER3、cMET、IGF−1R、CK、PI3K、SHC、AKT及び/又はERK)を検出し、PIK3CA、KRAS及び/又はBRAFなどの遺伝子で体細胞突然変異を検出するために、FNA試料を分析した。
【0259】
実施例13:CEERによる乳がんCTC試料でのHER2の発現及びリン酸化の検出。
[0306]この実施例は、CEERプラットホームなどの多重化イムノマイクロアレイプラットホームで、活性化HER2タンパク質及び/又は総HER2タンパク質のレベルを監視及び定量化するための、本発明の方法の使用を例示する。
【0260】
[0307]転移性乳がんの生存率は、かなり低い。原発部位の腫瘍細胞は、再発疾患での腫瘍細胞集団のプロファイルをしばしば反映しない。患者の末梢血中の循環腫瘍細胞(CTC)を評価することは、疾患監視の非侵襲性の方法を提供する。再発疾患患者からのCTC中の信頼できる分子マーカーの同定及び評価は、乳がん生存をさらに向上させることができる。
【0261】
[0308]共同酵素強化反応性イムノアッセイ(CEER)技術は、イムノアレイに固定化される捕捉抗体に近接する2つの検出抗体の共局在性を必要とする、特異な免疫複合体の形成を利用する。近接する2つの検出抗体の上でコンジュゲートする2つのチャネリング酵素の間の共同は、極度の感受性及び特異性を有する標的タンパク質のプロファイリングを可能にする。
【0262】
[0309]この試験では、HER2陰性原発疾患を有するIII期からIV期の76人の乳がん患者から単離されたCTCにおいて、活性化HER2タンパク質及び/又は総HER2タンパク質のレベルを分析するために、CEERを利用した。このコホートのHER2陰性BCA患者のおよそ25%は、再発疾患から単離されたCTCでHER2活性化(リン酸化)の様々なレベルを示した。HER2活性化を有すると判定された患者の約8%は、総HER2タンパク質の有意な過剰発現も示した。
【0263】
[0310]結果は、HER2活性化がHER2過剰発現の存在下又は非存在下で起こることを示す。場合によっては、HER2活性化は、いずれかのHER2ヘテロダイマー(例えば、p95HER2/HER2、HER1/HER2、HER2/HER3、HER2/HER4など)の形成から起こることができ、したがって、総HER2タンパク質のレベルは上昇しない。他の例では、HER2活性化は、HER2過剰発現及びHER2ホモダイマー(例えば、HER2/HER2)形成から起こることができる。結果は、活性化HER2タンパク質及び総HER2タンパク質のレベルを検出することが、再発疾患を有する乳がん患者で疾患を監視する向上した方法を提供することを示す。
【0264】
[0311]HER2プロファイルは患者の原発腫瘍及び再発疾患で異なることがあるので、転移性乳がん患者のCTCでHER2状態を日常監視する緊急の必要性がある。さらに、CEERを用いてCTCでHER2の変化の発生を監視することは、再発疾患を有するBCA患者のための、有効な治療計画の選択を助けることもできる。さらに、他のドラッガブル標的タンパク質のプロファイリングのために、及び有効な臨床療法の開発を導くためにCEERを用いることができる。
【0265】
実施例14:微細針吸引液での経路活性化及び体細胞突然変異分析は、乳がんの有効な治療のための候補薬物を同定することができる。
[0312]この実施例は、58人の乳がん(BCA)患者の転移部位から回収された微細針吸引液(FNA)試料の包括的遺伝子及び分子分析を例示する。この実施例は、RTK経路活性化及び発癌性体細胞突然変異プロファイリングを評価するために、CEER−FNA経路分析の実施などの、本発明の方法の使用を例示する。詳細には、この実施例は、限られた量の患者試料から疾患プロファイルを作成するために、本発明の方法を用いることができることを例示する。
【0266】
[0313]この試験では、CEER−FNA経路分析は、鍵となる受容体チロシンキナーゼ並びにHER1、HER2、p95HER2、HER3、cMET、IGF−1R、PI3K、Shc、AKT及びERKを含むそれらの下流シグナル伝達分子のインタロゲーションに加えて、発癌遺伝子(例えば、PI3KCA、KRAS、BRAF及びEGFR)の体細胞突然変異プロファイリングを含んだ。経路タンパク質の発現及び活性化(例えば、リン酸化)のレベルを判定するために、多重化イムノアレイCEER(共同酵素強化反応性イムノアッセイ)プラットホームを利用した。全てのFNA試料は、多重化経路発現/活性化及び体細胞突然変異分析の組合せ分析のために、十分な材料を提供した。
【0267】
[0314]非盲検試料のために、IHCによって判定されたHER2陽性原発腫瘍から回収された転移部位からの全てのFNA(mFNA)は、CEER分析によってHER2陽性であることが確認された。HER2陰性原発腫瘍を有する乳がん患者から回収されたmFNAの10%で、HER2の過剰発現が見出された。このコホートの試料の20%で、PIK3CA突然変異が見出された。統計的に有意に高いレベルのリン酸化されたAKT、ERK、並びにHER1、HER2、HER3及びIGF−1Rが、PIK3CA突然変異も有するmFNAで見出された。かなりの数のPIK3CA野生型患者は、経路活性化を示す頑強な経路サインも示した。試験結果は、乳がん患者でのバイオマーカーの評価は、経路タンパク質並びに突然変異分析の両方を含むべきであることを示す。
【0268】
[0315]包括的疾患プロファイリングは、それらの意図する標的タンパク質に対する特異的薬剤の有効性に関する洞察に富む情報を提供することができる。本発明の多重化経路分析は、可能な薬物抵抗性機構に関して価値ある情報を提供することもできる。さらに、本明細書に記載される組み合わせた突然変異及び経路活性化のプロファイリングは、臨床状況で治療戦略を導くのを助けることができる。
【0269】
[0316]本明細書で引用される全ての刊行物及び特許出願は、各個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的に及び個々に示されるかのように、参照により本明細書に組み込まれる。上記の発明は理解の明快性のために例示及び例として多少詳細に記載されたが、本発明の教示を考慮して、添付の請求項の精神又は範囲から逸脱せずに、特定の変更及び改変をそれに加えることができることは当業者に容易に明らかになる。
[関連出願への相互参照]
【0270】
[0001]本出願は、2011年9月2日に出願の米国特許仮出願第61/530,621号、2011年10月28日に出願の第61/553,124号、及び2011年11月21日に出願の第61/562,338号の優先権を主張し、これにより、その開示は本明細書において参照によりその全てが組み込まれる。