【実施例】
【0163】
以下、本発明を実施例等により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等により限定されるものではない。
【0164】
〔比較例1〕(従来の測定対象物質の比色測定方法による乳試料中の測定対象物質の測定)
従来の試料中の測定対象物質の比色測定方法による乳試料中の測定対象物質の測定結果を確認するため、従来の試料中の亜鉛の比色測定方法により乳試料中の亜鉛の測定を行なった。
【0165】
1.試薬の調製
(1)亜鉛測定用第1試薬
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、亜鉛測定用第1試薬を調製した。
【0166】
ビス−トリスプロパン 30mM
非イオン性界面活性剤 1%(w/v)
【0167】
(2)亜鉛測定用第2試薬
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、亜鉛測定用第2試薬を調製した。
【0168】
2−(5−ブロモ−2−ピリジルアゾ)−5(N−プロピル−N−スルホプロピルアミノ)フェノールナトリウム 〔5−Br−PAPS〕 <キレート発色剤> 0.13mM
【0169】
2.標準液及び精製水
(1)標準液
1g/Lの亜鉛標準液を、0.01N塩酸で亜鉛濃度が200μg/dLになるように希釈したものを標準液とした。
【0170】
(2)精製水
試薬盲検(試薬ブランク)を測定するため、対照として精製水を用いた。
【0171】
3.乳試料
下記のヒトの乳(ヒト母乳)11種類及び人工乳1種類をそれぞれ乳試料として用いた。
【0172】
(1) 乳試料a 〔ヒトの乳(ヒト母乳)〕
(2) 乳試料b 〔ヒトの乳(ヒト母乳)〕
(3) 乳試料c 〔ヒトの乳(ヒト母乳)〕
(4) 乳試料d 〔ヒトの乳(ヒト母乳)〕
(5) 乳試料e 〔ヒトの乳(ヒト母乳)〕
(6) 乳試料f 〔ヒトの乳(ヒト母乳)〕
(7) 乳試料g 〔ヒトの乳(ヒト母乳)〕
(8) 乳試料h 〔ヒトの乳(ヒト母乳)〕
(9) 乳試料i 〔ヒトの乳(ヒト母乳)〕
(10) 乳試料j 〔ヒトの乳(ヒト母乳)〕
(11) 乳試料k 〔ヒトの乳(ヒト母乳)〕
(12) 人工乳a 〔明治社(日本国)の粉ミルク「明治ほほえみ」をメーカー指定の方法により溶解し調製したもの〕
【0173】
4.従来の試料中の亜鉛の比色測定方法による乳試料中の亜鉛の測定
前記3の12種類の乳試料中の亜鉛の濃度を、前記1で調製した亜鉛測定用第1試薬及び亜鉛測定用第2試薬にて測定した。
【0174】
この乳試料中の亜鉛の測定は、日立ハイテクノロジーズ社(日本国)の7180形自動分析装置にて行い、前記3の12種類の乳試料のそれぞれについて、この乳試料の10μLに前記1の(1)で調製した亜鉛測定用第1試薬150μLを添加し混和した後37℃で5分間反応させ、この後、前記1の(2)で調製した亜鉛測定用第2試薬50μLを添加し、37℃で5分間反応させた。
【0175】
そして、亜鉛測定用第1試薬の添加後4分30秒目(16ポイント目)及び亜鉛測定用第2試薬の添加後5分8秒目(34ポイント目)の主波長546nm及び副波長700nmにおける吸光度をそれぞれ測定し、この亜鉛測定用第2試薬の添加後5分8秒目(34ポイント目)の吸光度(主波長の吸光度から副波長の吸光度を差し引いたもの)から亜鉛測定用第1試薬の添加後4分30秒目(16ポイント目)の吸光度(主波長の吸光度から副波長の吸光度を差し引いたもの)を差し引いて吸光度差を求めた。
【0176】
次に、この前記3の12種類の乳試料について求めた吸光度差の値から、前記2の(2)の精製水について前記の通り測定を行って求めた吸光度差の値〔試薬盲検(試薬ブランク)〕を差し引いて、吸光度差を求めた。
【0177】
次に、この前記3の12種類の乳試料について求めた吸光度差の値と、亜鉛の濃度が分かっている前記2の(1)の標準液について前記の通り測定を行って求めた吸光度差の値とを、それぞれ比較することにより、前記3の12種類の乳試料中の亜鉛の濃度を算出した。
【0178】
5.ICP発光分析法による乳試料中の亜鉛の測定
前記3の12種類の乳試料中の亜鉛の濃度を、ICP発光分析法にて測定した。
【0179】
この乳試料中の亜鉛の濃度の測定は、前記3の12種類の乳試料のそれぞれについて、この乳試料の60μLに、1ppmのイットリウムを含む0.1M塩酸水溶液の3.00mLを添加し混和し混合液を調製した。
なお、この混合液の調製により、当該乳試料は、51倍の希釈倍率で希釈されたことになる。
次に、前記の混合液の3.06mLについて、イットリウムを内部標準物質として、島津製作所(日本国)のICPS−8100型ICP発光分析装置により測定を行なった。
【0180】
また、亜鉛の濃度が分かっている前記2の標準液について、前記の通り測定を行い、この標準液について求めた値と、前記の12種類の乳試料について求めた値とをそれぞれ比較することにより、前記12種類の乳試料中の亜鉛の濃度を算出した。
【0181】
6.測定結果
前記4における従来の試料中の亜鉛の比色測定方法による測定結果及び前記5におけるICP発光分析法による測定結果の各々を表1に示した。
【0182】
なお、前記5におけるICP発光分析法による測定結果は、容積置換補正後の値を示している。
【0183】
なお、この表において、各欄の数値はそれぞれの乳試料中の亜鉛の濃度の測定値(単位:μg/dL)を示す。
但し、従来の試料中の亜鉛の比色測定方法による測定結果の欄に「測定不能」と表したものは、吸光度が当該自動分析装置の分光光度計の測定上限を超えてしまい、当該自動分析装置の測定結果の出力に測定不能である旨が表示されたものを示す。
また、従来の試料中の亜鉛の比色測定方法による測定結果の欄の(カッコ)内のパーセントの値は、従来の試料中の亜鉛の比色測定方法による測定値を、同一の乳試料におけるICP発光分析法による測定値で除したときの百分率を示す。
【0184】
【表1】
【0185】
この表から分かるように、12種類の乳試料の内、半数に当たる6種類の乳試料においては、測定により得られた吸光度が、用いた自動分析装置の分光光度計の測定上限を超えてしまい、測定不能であった。
【0186】
また、この表より、従来の試料中の亜鉛の比色測定方法により測定不能と表示されずに測定値が得られた6種類の乳試料においても、その内4種類の乳試料においてはICP発光分析法による測定値より5%以上測定値がかい離してしまっていることが分かる。
【0187】
本比較例の測定結果から分かるように、従来の試料中の測定対象物質の比色測定方法においては、その測定結果(測定値)が乳試料に由来する影響を受けてしまい、乳試料中の測定対象物質の比色測定において、正確な測定結果(測定値)を得ることができないものであることが確認できた。
【0188】
なお、ICP発光分析法は、乳試料に由来する影響を受けることなく、乳試料においても正確な測定結果(測定値)を得ることができるものであるが、このICP発光分析法に用いるICP発光分析装置は、非常に高価であり、かつ大きいものであって、スペースを取り、容易に導入できるものではなく、これを設置、使用できる施設は限られるものである。
【0189】
〔実施例1〕(本発明の乳試料の前処理方法及び前処理試薬等の効果の確認−1)
本発明の乳試料の前処理方法及び前処理試薬等の効果を確かめた。
【0190】
1.試薬の調製
(1)乳試料の前処理試薬
(a)乳試料の前処理試薬〔精製水〕
乳試料の前処理試薬の効果を確認するための対照として、精製水を用いた。
この精製水を、乳試料の前処理試薬〔精製水〕とした。
【0191】
(b)乳試料の前処理試薬〔ブリッジ−35(2.5%)〕
下記の試薬成分を記載の濃度になるように純水に溶解して、乳試料の前処理試薬〔ブリッジ−35(2.5%)〕を調製した。
【0192】
ポリオキシエチレンラウリルエーテル〔商品名:ブリッジ−35〕 2.5%(w/v)
【0193】
なお、このポリオキシエチレンラウリルエーテルは、そのHLB値が15.3であり、そのポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン)の平均付加モル数が23.0である、ポリオキシエチレンアルキルエーテルである。
このポリオキシエチレンラウリルエーテルは、商品名ブリッジ−35(Brij−35)等として供給される。
【0194】
(c)乳試料の前処理試薬〔トリトンX−100(2.5%)〕
下記の試薬成分を記載の濃度になるように純水に溶解して、乳試料の前処理試薬〔トリトンX−100(2.5%)〕を調製した。
【0195】
ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル〔商品名:トリトンX−100〕 2.5%(w/v)
【0196】
なお、このポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルは、INCI名がOctoxynol−9であり、そのHLB値が13.5であり、そのポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン)の平均付加モル数が10.0である、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルである。
このポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルは、商品名トリトンX−100(Triton X−100)等として供給される。
【0197】
(d)乳試料の前処理試薬〔SDS(2.5%)〕
下記の試薬成分を記載の濃度になるように純水に溶解して、乳試料の前処理試薬〔SDS(2.5%)〕を調製した。
【0198】
ドデシル硫酸ナトリウム〔SDS〕 2.5%(w/v)
【0199】
なお、このドデシル硫酸ナトリウムは、そのHLB値が40である、陰イオン性界面活性剤である。
このドデシル硫酸ナトリウムは、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、又はSDSとして供給される。
【0200】
(e)乳試料の前処理試薬〔BT−12(2.5%)〕
下記の試薬成分を記載の濃度になるように純水に溶解して、乳試料の前処理試薬〔BT−12(2.5%)〕を調製した。
【0201】
ポリオキシエチレン(12)2級アルキルエーテル〔商品名:NIKKOL BT−12〕 2.5%(w/v)
【0202】
なお、このポリオキシエチレン(12)2級アルキルエーテルは、その構造式が「RO(CH
2CH
2O)
nH」〔R:C
12H
25〜C
14H
29、n(ポリオキシエチレンの平均付加モル数):12〕と表され、医薬部外品成分表示名称としてはポリオキシエチレンアルキル(12〜14)エーテル(12E.O.)と表され、医薬部外品原料規格2006成分名としてはポリオキシエチレンアルキル(12〜14)エーテルと表され、化粧品表示名称が(C12−14)s−パレス−12であり、INCI名がC12−14 SEC−PARETH−12であり、ケミカルアブストラクト(CAS)の登録番号(RN)が84133−50−6であり、そのHLB値が14.5であり、そのポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン)の平均付加モル数が12.0である、2級のポリオキシエチレンアルキルエーテルである。
【0203】
このポリオキシエチレン(12)2級アルキルエーテルは、日光ケミカルズ社(日本国)〔商品名:NIKKOL BT−12〕、青木油脂工業社(日本国)〔商品名:ファインサーフ 320〕、又は第一工業製薬社(日本国)〔商品名:ノイゲン ET−165〕等より供給される。
【0204】
(f)乳試料の前処理試薬〔BT−9(2.5%)〕
下記の試薬成分を記載の濃度になるように純水に溶解して、乳試料の前処理試薬〔BT−9(2.5%)〕を調製した。
【0205】
ポリオキシエチレン(9)2級アルキルエーテル〔商品名:NIKKOL BT−9〕 2.5%(w/v)
【0206】
なお、このポリオキシエチレン(9)2級アルキルエーテルは、その構造式が「RO(CH
2CH
2O)
nH」〔R:C
12H
25〜C
14H
29、n(ポリオキシエチレンの平均付加モル数):9〕と表され、医薬部外品成分表示名称としてはポリオキシエチレンアルキル(12〜14)エーテルと表され、医薬部外品原料規格2006成分名としてはポリオキシエチレンアルキル(12〜14)エーテルと表され、化粧品表示名称が(C12−14)s−パレス−9であり、INCI名がC12−14 SEC−PARETH−9であり、ケミカルアブストラクト(CAS)の登録番号(RN)が84133−50−6であり、そのHLB値が13.5であり、そのポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン)の平均付加モル数が9.0である、2級のポリオキシエチレンアルキルエーテルである。
【0207】
このポリオキシエチレン(9)2級アルキルエーテルは、日光ケミカルズ社(日本国)〔商品名:NIKKOL BT−9〕、青木油脂工業社(日本国)〔商品名:ファインサーフ 290〕、又は第一工業製薬社(日本国)〔商品名:ノイゲン ET−135〕等より供給される。
【0208】
(g)乳試料の前処理試薬〔BT−7(2.5%)〕
下記の試薬成分を記載の濃度になるように純水に溶解して、乳試料の前処理試薬〔BT−7(2.5%)〕を調製した。
【0209】
ポリオキシエチレン(7)2級アルキルエーテル〔商品名:NIKKOL BT−7〕 2.5%(w/v)
【0210】
なお、このポリオキシエチレン(7)2級アルキルエーテルは、その構造式が「RO(CH
2CH
2O)
nH」〔R:C
12H
25〜C
14H
29、n(ポリオキシエチレンの平均付加モル数):7〕と表され、医薬部外品成分表示名称としてはポリオキシエチレンアルキル(12〜14)エーテルと表され、医薬部外品原料規格2006成分名としてはポリオキシエチレンアルキル(12〜14)エーテルと表され、化粧品表示名称が(C12−14)s−パレス−7であり、INCI名がC12−14 SEC−PARETH−7であり、ケミカルアブストラクト(CAS)の登録番号(RN)が84133−50−6であり、そのHLB値が12.0であり、そのポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン)の平均付加モル数が7.0である、2級のポリオキシエチレンアルキルエーテルである。
【0211】
このポリオキシエチレン(7)2級アルキルエーテルは、日光ケミカルズ社(日本国)〔商品名:NIKKOL BT−7〕、青木油脂工業社(日本国)〔商品名:ファインサーフ 270〕、又は第一工業製薬社(日本国)〔商品名:ノイゲン ET−115〕等より供給される。
【0212】
(h)乳試料の前処理試薬〔BT−5(2.5%)〕
下記の試薬成分を記載の濃度になるように純水に溶解して、乳試料の前処理試薬〔BT−5(2.5%)〕を調製した。
【0213】
ポリオキシエチレン(5)2級アルキルエーテル〔商品名:NIKKOL BT−5〕 2.5%(w/v)
【0214】
なお、このポリオキシエチレン(5)2級アルキルエーテルは、その構造式が「RO(CH
2CH
2O)
nH」〔R:C
12H
25〜C
14H
29、n(ポリオキシエチレンの平均付加モル数):5〕と表され、医薬部外品成分表示名称としてはポリオキシエチレンアルキル(12〜14)エーテルと表され、医薬部外品原料規格2006成分名としてはポリオキシエチレンアルキル(12〜14)エーテルと表され、化粧品表示名称が(C12−14)s−パレス−5であり、INCI名がC12−14 SEC−PARETH−5であり、ケミカルアブストラクト(CAS)の登録番号(RN)が84133−50−6であり、そのHLB値が10.5であり、そのポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン)の平均付加モル数が5.0である、2級のポリオキシエチレンアルキルエーテルである。
【0215】
このポリオキシエチレン(5)2級アルキルエーテルは、日光ケミカルズ社(日本国)〔商品名:NIKKOL BT−5〕、青木油脂工業社(日本国)〔商品名:ファインサーフ 250〕、又は第一工業製薬社(日本国)〔商品名:ノイゲン ET−95〕等より供給される。
【0216】
(i)乳試料の前処理試薬〔BC−7(2.5%)〕
下記の試薬成分を記載の濃度になるように純水に溶解して、乳試料の前処理試薬〔BC−7(2.5%)〕を調製した。
【0217】
ポリオキシエチレン(7)セチルエーテル〔商品名:NIKKOL BC−7〕 2.5%(w/v)
【0218】
なお、このポリオキシエチレン(7)セチルエーテルは、その構造式が「RO(CH
2CH
2O)
nH」〔R:C
16H
33、n(ポリオキシエチレンの平均付加モル数):7〕と表され、医薬部外品成分表示名称としてはポリオキシエチレンセチルエーテルと表され、化粧品表示名称がセテス−7であり、INCI名がCeteth−7であり、ケミカルアブストラクト(CAS)の登録番号(RN)が9004−95−9であり、そのHLB値が11.5であり、そのポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン)の平均付加モル数が7.0である、ポリオキシエチレンアルキルエーテルである。
【0219】
このポリオキシエチレン(7)セチルエーテルは、日光ケミカルズ社(日本国)〔商品名:NIKKOL BC−7〕等より供給される。
【0220】
(j)乳試料の前処理試薬〔BL−4.2(2.5%)〕
下記の試薬成分を記載の濃度になるように純水に溶解して、乳試料の前処理試薬〔BL−4.2(2.5%)〕を調製した。
【0221】
ポリオキシエチレン(4.2)ラウリルエーテル〔商品名:NIKKOL BL−4.2〕 2.5%(w/v)
【0222】
なお、このポリオキシエチレン(4.2)ラウリルエーテルは、その構造式が「RO(CH
2CH
2O)
nH」〔R:C
12H
25、n(ポリオキシエチレンの平均付加モル数):4.2〕と表され、医薬部外品成分表示名称としてはポリオキシエチレンラウリルエーテルと表され、化粧品表示名称がラウレス−4であり、INCI名がLaureth−4であり、ケミカルアブストラクト(CAS)の登録番号(RN)が5274−68−0であり、そのHLB値が11.5であり、そのポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン)の平均付加モル数が4.2である、ポリオキシエチレンアルキルエーテルである。
【0223】
このポリオキシエチレン(4.2)ラウリルエーテルは、日光ケミカルズ社(日本国)〔商品名:NIKKOL BL−4.2〕等より供給される。
【0224】
(k)乳試料の前処理試薬〔NP−5(2.5%)〕
下記の試薬成分を記載の濃度になるように純水に溶解して、乳試料の前処理試薬〔NP−5(2.5%)〕を調製した。
【0225】
ポリオキシエチレン(5)ノニルフェニルエーテル〔商品名:NIKKOL NP−5〕 2.5%(w/v)
【0226】
なお、このポリオキシエチレン(5)ノニルフェニルエーテルは、その構造式が「RO(CH
2CH
2O)
nH」〔R:C
9H
19−C
6H
4、n(ポリオキシエチレンの平均付加モル数):5〕と表され、化粧品種別許可基準収載成分名がポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルであり、INCI名がNonoxynol−5であり、そのHLB値が8.0であり、そのポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン)の平均付加モル数が5.0である、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルである。
【0227】
このポリオキシエチレン(5)ノニルフェニルエーテルは、日光ケミカルズ社(日本国)〔商品名:NIKKOL NP−5〕等より供給される。
【0228】
(l)乳試料の前処理試薬〔NP−7.5(2.5%)〕
下記の試薬成分を記載の濃度になるように純水に溶解して、乳試料の前処理試薬〔NP−7.5(2.5%)〕を調製した。
【0229】
ポリオキシエチレン(7.5)ノニルフェニルエーテル〔商品名:NIKKOL NP−7.5〕 2.5%(w/v)
【0230】
なお、このポリオキシエチレン(7.5)ノニルフェニルエーテルは、その構造式が「RO(CH
2CH
2O)
nH」〔R:C
9H
19−C
6H
4、n(ポリオキシエチレンの平均付加モル数):7.5〕と表され、化粧品種別許可基準収載成分名がポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルであり、INCI名がNonoxynol−8であり、そのHLB値が14.0であり、そのポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン)の平均付加モル数が7.5である、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルである。
【0231】
このポリオキシエチレン(7.5)ノニルフェニルエーテルは、日光ケミカルズ社(日本国)〔商品名:NIKKOL NP−7.5〕等より供給される。
【0232】
(m)乳試料の前処理試薬〔NP−10(2.5%)〕
下記の試薬成分を記載の濃度になるように純水に溶解して、乳試料の前処理試薬〔NP−10(2.5%)〕を調製した。
【0233】
ポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル〔商品名:NIKKOL NP−10〕 2.5%(w/v)
【0234】
なお、このポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテルは、その構造式が「RO(CH
2CH
2O)
nH」〔R:C
9H
19−C
6H
4、n(ポリオキシエチレンの平均付加モル数):10〕と表され、化粧品種別許可基準収載成分名がポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルであり、INCI名がNonoxynol−10であり、そのHLB値が16.5であり、そのポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン)の平均付加モル数が10.0である、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルである。
【0235】
このポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテルは、日光ケミカルズ社(日本国)〔商品名:NIKKOL NP−10〕等より供給される。
【0236】
(n)乳試料の前処理試薬〔OP−8(2.5%)〕
下記の試薬成分を記載の濃度になるように純水に溶解して、乳試料の前処理試薬〔OP−8〕を調製した。
【0237】
ポリオキシエチレン(8)オクチルフェニルエーテル〔商品名:NIKKOL OP−8(2.5%)〕 2.5%(w/v)
【0238】
なお、このポリオキシエチレン(8)オクチルフェニルエーテルは、その構造式が「RO(CH
2CH
2O)
nH」〔R:C
8H
17−C
6H
4、n(ポリオキシエチレンの平均付加モル数):8〕と表され、化粧品種別許可基準収載成分名がポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルであり、INCI名がOctoxynol−8であり、そのポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン)の平均付加モル数が8.0である、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルである。
【0239】
このポリオキシエチレン(8)オクチルフェニルエーテルは、日光ケミカルズ社(日本国)〔商品名:NIKKOL OP−8〕等より供給される。
【0240】
(o)乳試料の前処理試薬〔OP−10(2.5%)〕
下記の試薬成分を記載の濃度になるように純水に溶解して、乳試料の前処理試薬〔OP−10(2.5%)〕を調製した。
【0241】
ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル〔商品名:NIKKOL OP−10〕 2.5%(w/v)
【0242】
なお、このポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルは、その構造式が「RO(CH
2CH
2O)
nH」〔R:C
8H
17−C
6H
4、n(ポリオキシエチレンの平均付加モル数):10〕と表され、化粧品種別許可基準収載成分名がポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルであり、INCI名がOctoxynol−10であり、そのHLB値が16.5であり、そのポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン)の平均付加モル数が10.0である、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルである。
【0243】
このポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルは、日光ケミカルズ社(日本国)〔商品名:NIKKOL OP−10〕等より供給される。
【0244】
(p)乳試料の前処理試薬〔BC−10NR(2.5%)〕
下記の試薬成分を記載の濃度になるように純水に溶解して、乳試料の前処理試薬〔BC−10NR(2.5%)〕を調製した。
【0245】
ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル〔商品名:NIKKOL BC−10NR〕 2.5%(w/v)
【0246】
なお、このポリオキシエチレン(10)セチルエーテルは、その構造式が「RO(CH
2CH
2O)
nH」〔R:C
16H
33、n(ポリオキシエチレンの平均付加モル数):10〕と表され、医薬部外品成分表示名称としてはポリオキシエチレンセチルエーテルと表され、化粧品表示名称がセテス−10であり、INCI名がCeteth−10であり、ケミカルアブストラクト(CAS)の登録番号(RN)が9004−95−9であり、そのHLB値が13.5であり、そのポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン)の平均付加モル数が10.0である、ポリオキシエチレンアルキルエーテルである。
【0247】
このポリオキシエチレン(10)セチルエーテルは、日光ケミカルズ社(日本国)〔商品名:NIKKOL BC−10NR〕等より供給される。
【0248】
(q)乳試料の前処理試薬〔Decaglyn 1−LV EX(2.5%)〕
下記の試薬成分を記載の濃度になるように純水に溶解して、乳試料の前処理試薬〔Decaglyn 1−LV EX(2.5%)〕を調製した。
【0249】
モノラウリン酸ポリグリセリル〔商品名:NIKKOL Decaglyn 1−LV EX〕 2.5%(w/v)
【0250】
なお、このモノラウリン酸ポリグリセリルは、医薬部外品成分表示名称としてはモノラウリン酸ポリグリセリルと表され、化粧品表示名称がラウリン酸ポリグリセリル−10であり、INCI名がPolyglyceryl−10 Laurateであり、ケミカルアブストラクト(CAS)の登録番号(RN)が34406−66−1であり、そのHLB値が15.5である、ポリグリセリン脂肪酸エステルである。
【0251】
このモノラウリン酸ポリグリセリルは、日光ケミカルズ社(日本国)〔商品名:NIKKOL Decaglyn 1−LV EX〕等より供給される。
【0252】
(2)亜鉛測定用第1試薬
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、亜鉛測定用第1試薬を調製した。
【0253】
ビス−トリスプロパン 30mM
非イオン性界面活性剤 1%(w/v)
【0254】
(3)亜鉛測定用第2試薬
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、亜鉛測定用第2試薬を調製した。
【0255】
2−(5−ブロモ−2−ピリジルアゾ)−5(N−プロピル−N−スルホプロピルアミノ)フェノールナトリウム 〔5−Br−PAPS〕 <キレート発色剤> 0.13mM
【0256】
2.標準液及び精製水
(1)標準液
1g/Lの亜鉛標準液を、0.01N塩酸で亜鉛濃度が200μg/dLになるように希釈したものを標準液とした。
【0257】
(2)精製水
試薬盲検(試薬ブランク)を測定するため、対照として精製水を用いた。
【0258】
3.乳試料
ヒトの乳(ヒト母乳)を乳試料として用いた。
【0259】
4.乳試料中の亜鉛の比色測定
前記3の乳試料について、前記1で調製した、17種類の乳試料の前処理試薬のそれぞれ、亜鉛測定用第1試薬及び亜鉛測定用第2試薬にて比色測定した。
【0260】
(1)乳試料の前処理
前記1の(1)の(a)〜(q)で調製した乳試料の前処理試薬のそれぞれについて、その200μLを前記3の乳試料の50μLと混合し、乳試料と乳試料の前処理試薬の混合液(計17種類)を調製した。
これにより、乳試料と、乳試料の前処理試薬に含まれていた界面活性物質を接触させ、乳試料の前処理を行った。
なお、この乳試料の前処理により、当該乳試料は、5倍の希釈倍率で希釈されたことになる。
【0261】
(2)亜鉛測定用第1試薬及び亜鉛測定用第2試薬の順次混合
前記(1)の乳試料と乳試料の前処理試薬に含まれていた界面活性物質の接触に続き、日立ハイテクノロジーズ社(日本国)の7180形自動分析装置を用い、前記(1)の17種類の乳試料と乳試料の前処理試薬の混合液のそれぞれについて、当該混合液の10μLに前記1の(2)で調製した亜鉛測定用第1試薬150μLを添加し混和した後37℃で5分間反応させ、この後、前記1の(3)で調製した亜鉛測定用第2試薬50μLを添加し、37℃で5分間反応させた。
【0262】
そして、亜鉛測定用第1試薬の添加後4分30秒目(16ポイント目)及び亜鉛測定用第2試薬の添加後5分8秒目(34ポイント目)の主波長546nm及び副波長700nmにおける吸光度をそれぞれ測定し、この亜鉛測定用第2試薬の添加後5分8秒目(34ポイント目)の吸光度(主波長の吸光度から副波長の吸光度を差し引いたもの)から亜鉛測定用第1試薬の添加後4分30秒目(16ポイント目)の吸光度(主波長の吸光度から副波長の吸光度を差し引いたもの)を差し引いて吸光度差を求めた。
【0263】
次に、この前記3の乳試料について求めた吸光度差の値から、前記2の(2)の精製水について前記の通り測定を行って求めた吸光度差の値〔試薬盲検(試薬ブランク)〕を差し引いて、吸光度差を求めた。
【0264】
次に、この前記3の乳試料について求めた吸光度差の値と、亜鉛の濃度が分かっている前記2の(1)の標準液について前記の通り測定を行って求めた吸光度差の値とを、それぞれ比較することにより、前記3の乳試料中の亜鉛の濃度を算出した。
【0265】
5.測定結果
前記4における乳試料の前処理に用いたそれぞれの乳試料の前処理試薬の効果を確認するため、前記4の(2)において測定した亜鉛測定用第1試薬の添加後4分30秒目(16ポイント目)の吸光度(主波長546nmにおける吸光度)の各々を表2に示した。
【0266】
なお、この表において、前記4における乳試料の前処理に用いたそれぞれの乳試料の前処理試薬毎に、左側より、前記4の(2)において測定した亜鉛測定用第1試薬の添加後4分30秒目(16ポイント目)の吸光度(主波長546nmにおける吸光度)、この吸光度を「乳試料の前処理試薬(精製水)」を用いたときの吸光度で除したときの百分率、用いた界面活性物質のHLB値、及び、用いた界面活性物質がポリオキシアルキレン化合物(ポリオキシエチレン化合物等)である場合のポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン等)の平均付加モル数を順次示した。(なお、該当しない場合は、「***」と示した。)
【0267】
【表2】
【0268】
この表から分かるように、「乳試料の前処理試薬〔BT−7(2.5%)〕」を用いた場合の吸光度の値は、対照である「乳試料の前処理試薬(精製水)」を用いた場合の吸光度の値の37%となっており、顕著に低減していることが分かる。
【0269】
また、この表より、「乳試料の前処理試薬〔NP−7.5(2.5%)〕」を用いた場合の吸光度の値は、対照である「乳試料の前処理試薬(精製水)」を用いた場合の吸光度の値の74%となっており、大きく低減していることが分かる。
【0270】
これに対して、この表より、対照である「乳試料の前処理試薬(精製水)」を用いたときの吸光度と比較して、他の乳試料の前処理試薬を用いた場合の吸光度は、大差ないか又は逆に増加してしまっていることが分かる。
【0271】
これらのことより、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル又はポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルであって、そのHLB値が12〜14であり、そのポリオキシアルキレンの平均付加モル数が7.0〜7.5である界面活性物質を、乳試料の前処理試薬に含有させ、乳試料の前処理を行った場合、すなわち、乳試料と前記の界面活性物質を接触させる場合には、乳試料に由来する比色測定への影響を抑制することができることが確かめられた。
【0272】
〔実施例2〕(本発明の乳試料の前処理方法及び前処理試薬等の効果の確認−2)
本発明の乳試料の前処理方法及び前処理試薬等の効果を再度確かめた。
【0273】
1.乳試料の前処理試薬
(a)乳試料の前処理試薬〔精製水〕
前記の実施例1の1の(1)の(a)の乳試料の前処理試薬〔精製水〕を用いた。
【0274】
(b)乳試料の前処理試薬〔ブリッジ−35(2.5%)〕
前記の実施例1の1の(1)の(b)の乳試料の前処理試薬〔ブリッジ−35(2.5%)〕を用いた。
【0275】
(c)乳試料の前処理試薬〔トリトンX−100(2.5%)〕
前記の実施例1の1の(1)の(c)の乳試料の前処理試薬〔トリトンX−100(2.5%)〕を用いた。
【0276】
(d)乳試料の前処理試薬〔SDS(2.5%)〕
前記の実施例1の1の(1)の(d)の乳試料の前処理試薬〔SDS(2.5%)〕を用いた。
【0277】
(e)乳試料の前処理試薬〔BT−12(2.5%)〕
前記の実施例1の1の(1)の(e)の乳試料の前処理試薬〔BT−12(2.5%)〕を用いた。
【0278】
(f)乳試料の前処理試薬〔BT−9(2.5%)〕
前記の実施例1の1の(1)の(f)の乳試料の前処理試薬〔BT−9(2.5%)〕を用いた。
【0279】
(g)乳試料の前処理試薬〔BT−7(2.5%)〕
前記の実施例1の1の(1)の(g)の乳試料の前処理試薬〔BT−7(2.5%)〕を用いた。
【0280】
(h)乳試料の前処理試薬〔BC−7(2.5%)〕
前記の実施例1の1の(1)の(i)の乳試料の前処理試薬〔BC−7(2.5%)〕を用いた。
【0281】
(i)乳試料の前処理試薬〔BL−4.2(2.5%)〕
前記の実施例1の1の(1)の(j)の乳試料の前処理試薬〔BL−4.2(2.5%)〕を用いた。
【0282】
(j)乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕
その濃度を5.0%(w/v)になるように純水に溶解すること以外は、前記の実施例1の1の(1)の(g)の記載の通りに行い、乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕を調製した。
【0283】
(k)乳試料の前処理試薬〔NP−5(5%)〕
その濃度を5.0%(w/v)になるように純水に溶解すること以外は、前記の実施例1の1の(1)の(k)の記載の通りに行い、乳試料の前処理試薬〔NP−5(5%)〕を調製した。
【0284】
(l)乳試料の前処理試薬〔NP−7.5(5%)〕
その濃度を5.0%(w/v)になるように純水に溶解すること以外は、前記の実施例1の1の(1)の(l)の記載の通りに行い、乳試料の前処理試薬〔NP−7.5(5%)〕を調製した。
【0285】
(m)乳試料の前処理試薬〔BC−10NR(5%)〕
その濃度を5.0%(w/v)になるように純水に溶解すること以外は、前記の実施例1の1の(1)の(p)の記載の通りに行い、乳試料の前処理試薬〔BC−10NR(5%)〕を調製した。
【0286】
(n)乳試料の前処理試薬〔NP−10(5%)〕
その濃度を5.0%(w/v)になるように純水に溶解すること以外は、前記の実施例1の1の(1)の(m)の記載の通りに行い、乳試料の前処理試薬〔NP−10(5%)〕を調製した。
【0287】
(o)乳試料の前処理試薬〔Decaglyn 1−LV EX(5%)〕
その濃度を5.0%(w/v)になるように純水に溶解すること以外は、前記の実施例1の1の(1)の(q)の記載の通りに行い、乳試料の前処理試薬〔Decaglyn 1−LV EX(5%)〕を調製した。
【0288】
(p)乳試料の前処理試薬〔OP−10(5%)〕
その濃度を5.0%(w/v)になるように純水に溶解すること以外は、前記の実施例1の1の(1)の(o)の記載の通りに行い、乳試料の前処理試薬〔OP−10(5%)〕を調製した。
【0289】
(q)乳試料の前処理試薬〔OP−8(5%)〕
その濃度を5.0%(w/v)になるように純水に溶解すること以外は、前記の実施例1の1の(1)の(n)の記載の通りに行い、乳試料の前処理試薬〔OP−8(5%)〕を調製した。
【0290】
(r)乳試料の前処理試薬〔BT−5(0.3125%)〕
その濃度を0.3125%(w/v)になるように純水に溶解すること以外は、前記の実施例1の1の(1)の(h)の記載の通りに行い、乳試料の前処理試薬〔BT−5(0.3125%)〕を調製した。
【0291】
(s)乳試料の前処理試薬〔BT−5(0.625%)〕
その濃度を0.625%(w/v)になるように純水に溶解すること以外は、前記の実施例1の1の(1)の(h)の記載の通りに行い、乳試料の前処理試薬〔BT−5(0.625%)〕を調製した。
【0292】
(t)乳試料の前処理試薬〔BT−5(1.25%)〕
その濃度を1.25%(w/v)になるように純水に溶解すること以外は、前記の実施例1の1の(1)の(h)の記載の通りに行い、乳試料の前処理試薬〔BT−5(1.25%)〕を調製した。
【0293】
(u)乳試料の前処理試薬〔BT−5(2.5%)〕
その濃度を2.5%(w/v)になるように純水に溶解すること以外は、前記の実施例1の1の(1)の(h)の記載の通りに行い、乳試料の前処理試薬〔BT−5(2.5%)〕を調製した。
【0294】
(v)乳試料の前処理試薬〔BT−5(5%)〕
その濃度を5.0%(w/v)になるように純水に溶解すること以外は、前記の実施例1の1の(1)の(h)の記載の通りに行い、乳試料の前処理試薬〔BT−5(5%)〕を調製した。
【0295】
(w)乳試料の前処理試薬〔BT−5(10%)〕
その濃度を10.0%(w/v)になるように純水に溶解すること以外は、前記の実施例1の1の(1)の(h)の記載の通りに行い、乳試料の前処理試薬〔BT−5(10%)〕を調製した。
【0296】
2.試料
(1) 精製水 〔対照として精製水を用いた〕
(2) 乳試料l 〔ヒトの乳(ヒト母乳)〕
(3) 乳試料m〔人工乳である明治社(日本国)の粉ミルク「明治ほほえみ」をメーカー指定の方法により溶解し調製した場合の1/2の濃度になるように調製したもの〕
(4) 乳試料n〔人工乳である明治社(日本国)の粉ミルク「明治ほほえみ」をメーカー指定の方法により溶解し調製したもの〕
【0297】
3.乳試料の前処理
前記2の試料について、前記1で調製した23種類の乳試料の前処理試薬のそれぞれにより前処理を行った。
【0298】
(1)乳試料の前処理
前記1の(a)〜(w)で調製した乳試料の前処理試薬のそれぞれについて、その200μLを前記2の試料の50μLとマイクロチューブの中で混合し、乳試料等と乳試料の前処理試薬の混合液を調製した。
これにより、乳試料等と、乳試料の前処理試薬に含まれていた界面活性物質を接触させ、乳試料等の前処理を行った。
なお、この乳試料等の前処理により、当該乳試料等は、5倍の希釈倍率で希釈されたことになる。
【0299】
(2)混合液の色調等の観察
前記(1)において調製した、乳試料等と乳試料の前処理試薬の混合液の色調等を目視にて観察し、またこれを写真にて記録した。
【0300】
4.結果
前記3における乳試料等の前処理に用いたそれぞれの乳試料の前処理試薬の効果を確認するため、乳試料等と乳試料の前処理試薬の混合液の色調等を観察した結果の写真を
図1〜
図6に示した。
【0301】
なお、
図1において、付した番号が「1」のものは前記2の(2)の乳試料lそのものを対照として置いたものであり、「2」は前記の乳試料lと前記の乳試料の前処理試薬〔精製水〕の組み合わせによるものであり、「3」は前記の乳試料lと前記の乳試料の前処理試薬〔Brij−35(2.5%)〕の組み合わせによるものであり、「4」は前記の乳試料lと前記の乳試料の前処理試薬〔トリトンX−100(2.5%)〕の組み合わせによるものであり、「5」は前記の乳試料lと前記の乳試料の前処理試薬〔SDS(2.5%)〕の組み合わせによるものであり、「6」は前記の乳試料lと前記の乳試料の前処理試薬〔BT−12(2.5%)〕の組み合わせによるものであり、「7」は前記の乳試料lと前記の乳試料の前処理試薬〔BT−9(2.5%)〕の組み合わせによるものであり、「8」は前記の乳試料lと前記の乳試料の前処理試薬〔BT−7(2.5%)〕の組み合わせによるものであり、「9」は前記の乳試料lと前記の乳試料の前処理試薬〔BC−7(2.5%)〕の組み合わせによるものであり、「10」は前記の乳試料lと前記の乳試料の前処理試薬〔BL−4.2(2.5%)〕の組み合わせによるものであり、そして、「11」は前記の乳試料lと前記の乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕の組み合わせによるものである。
【0302】
また、
図2において、付した番号が「1」のものは前記2の(1)の精製水と前記の乳試料の前処理試薬〔精製水〕の組み合わせによるものであり、「2」は前記2の(3)の乳試料mと前記の乳試料の前処理試薬〔精製水〕の組み合わせによるものであり、「3」は前記2の(4)の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔精製水〕の組み合わせによるものであり、「4」は前記の精製水と前記の乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕の組み合わせによるものであり、「5」は前記の乳試料mと前記の乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕の組み合わせによるものであり、「6」は前記の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕の組み合わせによるものであり、「7」は前記の精製水と前記の乳試料の前処理試薬〔NP−5(5%)〕の組み合わせによるものであり、「8」は前記の乳試料mと前記の乳試料の前処理試薬〔NP−5(5%)〕の組み合わせによるものであり、「9」は前記の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔NP−5(5%)〕の組み合わせによるものであり、「10」は前記の精製水と前記の乳試料の前処理試薬〔NP−7.5(5%)〕の組み合わせによるものであり、「11」は前記の乳試料mと前記の乳試料の前処理試薬〔NP−7.5(5%)〕の組み合わせによるものであり、「12」は前記の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔NP−7.5(5%)〕の組み合わせによるものである。
【0303】
また、
図3において、付した番号が「1」のものは前記2の(1)の精製水と前記の乳試料の前処理試薬〔精製水〕の組み合わせによるものであり、「2」は前記2の(3)の乳試料mと前記の乳試料の前処理試薬〔精製水〕の組み合わせによるものであり、「3」は前記2の(4)の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔精製水〕の組み合わせによるものであり、「4」は前記の精製水と前記の乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕の組み合わせによるものであり、「5」は前記の乳試料mと前記の乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕の組み合わせによるものであり、「6」は前記の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕の組み合わせによるものであり、「7」は前記の精製水と前記の乳試料の前処理試薬〔BC−10NR(5%)〕の組み合わせによるものであり、「8」は前記の乳試料mと前記の乳試料の前処理試薬〔BC−10NR(5%)〕の組み合わせによるものであり、「9」は前記の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔BC−10NR(5%)〕の組み合わせによるものである。
【0304】
また、
図4において、付した番号が「1」のものは前記2の(1)の精製水と前記の乳試料の前処理試薬〔精製水〕の組み合わせによるものであり、「2」は前記2の(3)の乳試料mと前記の乳試料の前処理試薬〔精製水〕の組み合わせによるものであり、「3」は前記2の(4)の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔精製水〕の組み合わせによるものであり、「4」は前記の精製水と前記の乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕の組み合わせによるものであり、「5」は前記の乳試料mと前記の乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕の組み合わせによるものであり、「6」は前記の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕の組み合わせによるものであり、「7」は前記の精製水と前記の乳試料の前処理試薬〔NP−10(5%)〕の組み合わせによるものであり、「8」は前記の乳試料mと前記の乳試料の前処理試薬〔NP−10(5%)〕の組み合わせによるものであり、「9」は前記の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔NP−10(5%)〕の組み合わせによるものであり、「10」は前記の精製水と前記の乳試料の前処理試薬〔Decaglyn 1−LV EX(5%)〕の組み合わせによるものであり、「11」は前記の乳試料mと前記の乳試料の前処理試薬〔Decaglyn 1−LV EX(5%)〕の組み合わせによるものであり、「12」は前記の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔Decaglyn 1−LV EX(5%)〕の組み合わせによるものである。
【0305】
また、
図5において、付した番号が「1」のものは前記2の(1)の精製水と前記の乳試料の前処理試薬〔精製水〕の組み合わせによるものであり、「2」は前記2の(3)の乳試料mと前記の乳試料の前処理試薬〔精製水〕の組み合わせによるものであり、「3」は前記2の(4)の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔精製水〕の組み合わせによるものであり、「4」は前記の精製水と前記の乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕の組み合わせによるものであり、「5」は前記の乳試料mと前記の乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕の組み合わせによるものであり、「6」は前記の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕の組み合わせによるものであり、「7」は前記の精製水と前記の乳試料の前処理試薬〔OP−10(5%)〕の組み合わせによるものであり、「8」は前記の乳試料mと前記の乳試料の前処理試薬〔OP−10(5%)〕の組み合わせによるものであり、「9」は前記の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔OP−10(5%)〕の組み合わせによるものであり、「10」は前記の精製水と前記の乳試料の前処理試薬〔OP−8(5%)〕の組み合わせによるものであり、「11」は前記の乳試料mと前記の乳試料の前処理試薬〔OP−8(5%)〕の組み合わせによるものであり、「12」は前記の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔OP−8(5%)〕の組み合わせによるものである。
【0306】
また、
図6において、付した番号が「1」のものは前記2の(4)の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔精製水〕の組み合わせによるものであり、「2」は前記の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔BT−5(0.3125%)〕の組み合わせによるものであり、「3」は前記の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔BT−5(0.625%)〕の組み合わせによるものであり、「4」は前記の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔BT−5(1.25%)〕の組み合わせによるものであり、「5」は前記の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔BT−5(2.5%)〕の組み合わせによるものであり、「6」は前記の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔BT−5(5%)〕の組み合わせによるものであり、「7」は前記の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔BT−5(10%)〕の組み合わせによるものであり、そして、「8」は前記の乳試料nと前記の乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕の組み合わせによるものである。
【0307】
これらの図から分かるように、対照である「乳試料の前処理試薬(精製水)」を用いたときに比べて、乳試料の前処理試薬として、「乳試料の前処理試薬〔BT−7(2.5%)〕」、「乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕」及び「乳試料の前処理試薬〔NP−7.5(5%)〕」をそれぞれ用いた場合は、乳試料等と乳試料の前処理試薬の混合液の色調が澄明になっていることが分かる。
【0308】
これに対して、これらの図より、他の乳試料の前処理試薬を用いた場合は、乳試料等と乳試料の前処理試薬の混合液の色調において、対照である「乳試料の前処理試薬(精製水)」を用いたときに比べて、その混濁度が大差ないか又は逆に増加してしまっていることが分かる。
【0309】
これらのことより、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル又はポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルであって、そのHLB値が12〜14であり、そのポリオキシアルキレンの平均付加モル数が7.0〜7.5である界面活性物質を、乳試料の前処理試薬に含有させ、乳試料の前処理を行った場合、すなわち、乳試料と前記の界面活性物質を接触させる場合には、乳試料に由来する比色測定への影響を抑制することができることが、この検討においても確かめられた。
【0310】
〔実施例3〕(本発明の乳試料の前処理方法及び前処理試薬等の効果の確認−3)
本発明の乳試料の前処理方法及び前処理試薬等の効果を更に確かめた。
【0311】
1.試薬の調製
(1)乳試料の前処理試薬
(a)乳試料の前処理試薬〔BT−7(0%)〕
乳試料の前処理試薬の効果を確認するための対照として、精製水を用いた。
この精製水を、乳試料の前処理試薬〔BT−7(0%)〕とした。
なお、この乳試料の前処理試薬〔BT−7(0%)〕は、前記の乳試料の前処理試薬〔精製水〕と同一内容のものである。
【0312】
(b)乳試料の前処理試薬〔BT−7(2.5%)〕
前記の実施例1の1の(1)の(g)の乳試料の前処理試薬〔BT−7(2.5%)〕を用いた。
【0313】
(c)乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕
その濃度を5.0%(w/v)になるように純水に溶解すること以外は、前記の実施例1の1の(1)の(g)の記載の通りに行い、乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕を調製した。
【0314】
(d)乳試料の前処理試薬〔BT−7(10%)〕
その濃度を10.0%(w/v)になるように純水に溶解すること以外は、前記の実施例1の1の(1)の(g)の記載の通りに行い、乳試料の前処理試薬〔BT−7(10%)〕を調製した。
【0315】
(2)亜鉛測定用第1試薬
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、亜鉛測定用第1試薬を調製した。
【0316】
ビス−トリスプロパン 30mM
非イオン性界面活性剤 1%(w/v)
【0317】
(3)亜鉛測定用第2試薬
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、亜鉛測定用第2試薬を調製した。
【0318】
2−(5−ブロモ−2−ピリジルアゾ)−5(N−プロピル−N−スルホプロピルアミノ)フェノールナトリウム 〔5−Br−PAPS〕 <キレート発色剤> 0.13mM
【0319】
2.標準液及び精製水
(1)標準液
1g/Lの亜鉛標準液を、0.01N塩酸で亜鉛濃度が200μg/dLになるように希釈したものを標準液とした。
【0320】
(2)精製水
試薬盲検(試薬ブランク)を測定するため、対照として精製水を用いた。
【0321】
3.乳試料
ヒトの乳(ヒト母乳)を乳試料として用いた。
【0322】
4.乳試料中の亜鉛の比色測定
前記3の乳試料について、前記1で調製した、4種類の乳試料の前処理試薬のそれぞれ、亜鉛測定用第1試薬、及び亜鉛測定用第2試薬にて比色測定した。
【0323】
(1)乳試料の前処理
前記1の(1)の(a)〜(d)で調製した乳試料の前処理試薬のそれぞれについて、その50μLを前記3の乳試料の50μLと混合し、乳試料と乳試料の前処理試薬の混合液(計4種類)を調製した。
これにより、乳試料と、乳試料の前処理試薬に含まれていた界面活性物質を接触させ、乳試料の前処理を行った。
なお、この乳試料の前処理により、当該乳試料は、2倍の希釈倍率で希釈されたことになる。
【0324】
(2)亜鉛測定用第1試薬及び亜鉛測定用第2試薬の順次混合
前記(1)の乳試料と乳試料の前処理試薬に含まれていた界面活性物質の接触に続き、日立ハイテクノロジーズ社(日本国)の7180形自動分析装置を用い、前記(1)の17種類の乳試料と乳試料の前処理試薬の混合液のそれぞれについて、当該混合液の10μLに前記1の(2)で調製した亜鉛測定用第1試薬150μLを添加し混和した後37℃で5分間反応させ、この後、前記1の(3)で調製した亜鉛測定用第2試薬50μLを添加し、37℃で5分間反応させた。
【0325】
そして、亜鉛測定用第1試薬の添加後4分30秒目(16ポイント目)及び亜鉛測定用第2試薬の添加後5分8秒目(34ポイント目)の主波長546nm及び副波長700nmにおける吸光度をそれぞれ測定し、この亜鉛測定用第2試薬の添加後5分8秒目(34ポイント目)の吸光度(主波長の吸光度から副波長の吸光度を差し引いたもの)から亜鉛測定用第1試薬の添加後4分30秒目(16ポイント目)の吸光度(主波長の吸光度から副波長の吸光度を差し引いたもの)を差し引いて吸光度差を求めた。
【0326】
次に、この前記3の乳試料について求めた吸光度差の値から、前記2の(2)の精製水について前記の通り測定を行って求めた吸光度差の値〔試薬盲検(試薬ブランク)〕を差し引いて、吸光度差を求めた。
【0327】
次に、この前記3の乳試料について求めた吸光度差の値と、亜鉛の濃度が分かっている前記2の(1)の標準液について前記の通り測定を行って求めた吸光度差の値とを、それぞれ比較することにより、前記3の乳試料中の亜鉛の濃度を算出した。
【0328】
(3) また、前記(1)において前記1の(1)の(a)〜(d)で調製した乳試料の前処理試薬のそれぞれについて、その100μLを前記3の乳試料の50μLと混合し、乳試料と乳試料の前処理試薬の混合液(計4種類)を調製すること以外は、前記(1)〜(2)の記載の通りに操作を行い、前記3の乳試料中の亜鉛の濃度の測定を行った。
なお、この場合、当該混合液の調製により、前記の乳試料は、3倍の希釈倍率で希釈されたことになる。
【0329】
(4) 更に、前記(1)において前記1の(1)の(a)〜(d)で調製した乳試料の前処理試薬のそれぞれについて、その200μLを前記3の乳試料の50μLと混合し、乳試料と乳試料の前処理試薬の混合液(計4種類)を調製すること以外は、前記(1)〜(2)の記載の通りに操作を行い、前記3の乳試料中の亜鉛の濃度の測定を行った。
なお、この場合、当該混合液の調製により、前記の乳試料は、5倍の希釈倍率で希釈されたことになる。
【0330】
5.測定結果
前記4における乳試料の前処理試薬による乳試料の前処理の効果を確認するため、前記4において測定した亜鉛測定用第1試薬の添加後4分30秒目(16ポイント目)の吸光度(主波長546nmにおける吸光度)を
図7に示した。
【0331】
なお、この図において、横軸は、乳試料と乳試料の前処理試薬を混合して混合液を調製した際に希釈された乳試料の希釈倍率を示す。
【0332】
また、この図において、縦軸は、前記4において測定した亜鉛測定用第1試薬の添加後4分30秒目(16ポイント目)の吸光度(主波長546nmにおける吸光度)を示す。
【0333】
そして、この図において、「◆」は乳試料の前処理試薬として乳試料の前処理試薬〔BT−7(0%)〕を用いた場合の吸光度の値を、「□」は乳試料の前処理試薬〔BT−7(2.5%)〕を用いた場合の吸光度の値を、「△」は乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕を用いた場合の吸光度の値を、そして、「×」は乳試料の前処理試薬〔BT−7(10%)〕を用いた場合の吸光度の値を示す。
【0334】
この図から分かるように、対照である「乳試料の前処理試薬〔BT−7(0%)〕」を用いた場合の吸光度に対して、「乳試料の前処理試薬〔BT−7(2.5%)〕」を用いた場合の吸光度の値は、低減していることが分かる。
これは、用いる乳試料の前処理試薬が「乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕」、そして「乳試料の前処理試薬〔BT−7(10%)〕」となるに従い顕著である。
【0335】
また、この図より、前記の乳試料の希釈倍率が、2倍、3倍、そして5倍となるに従い、吸光度の値の低減度が顕著であることが分かる。
【0336】
これらのことより、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルであって、そのHLB値が12〜14であり、そのポリオキシアルキレンの平均付加モル数が7.0〜7.5である界面活性物質を、乳試料の前処理試薬に含有させ、乳試料の前処理を行った場合、すなわち、乳試料と前記の界面活性物質を接触させる場合には、乳試料に由来する比色測定への影響を抑制することができることが再度確かめられた。
【0337】
〔実施例4〕(本発明の乳試料中の測定対象物質の測定方法とICP発光分析法との相関)
ICP発光分析法との相関により、本発明の乳試料中の測定対象物質の測定方法の正確性を確かめた。
【0338】
1.試薬の調製
(1)乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕
その濃度を5.0%(w/v)になるように純水に溶解すること以外は、前記の実施例1の1の(1)の(g)の記載の通りに行い、乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕を調製した。
【0339】
(2)亜鉛測定用第1試薬
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、亜鉛測定用第1試薬を調製した。
【0340】
ビス−トリスプロパン 30mM
非イオン性界面活性剤 1%(w/v)
【0341】
(3)亜鉛測定用第2試薬
下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、亜鉛測定用第2試薬を調製した。
【0342】
2−(5−ブロモ−2−ピリジルアゾ)−5(N−プロピル−N−スルホプロピルアミノ)フェノールナトリウム 〔5−Br−PAPS〕 <キレート発色剤> 0.13mM
【0343】
2.標準液及び精製水
(1)標準液
1g/Lの亜鉛標準液を、0.01N塩酸で亜鉛濃度が200μg/dLになるように希釈したものを標準液とした。
【0344】
(2)精製水
試薬盲検(試薬ブランク)を測定するため、対照として精製水を用いた。
【0345】
3.乳試料
24種類のヒトの乳(ヒト母乳)をそれぞれ乳試料として用いた。
【0346】
4.乳試料中の亜鉛の比色測定
前記3の乳試料について、前記1で調製した、乳試料の前処理試〔BT−7(5%)〕、亜鉛測定用第1試薬、及び亜鉛測定用第2試薬にて比色測定した。
【0347】
(1)乳試料の前処理
前記3の24種類の乳試料のそれぞれについて、その50μLを、前記1の(1)の乳試料の前処理試薬〔BT−7(5%)〕の200μLと混合し、乳試料と乳試料の前処理試薬の混合液(計24種類)を調製した。
これにより、乳試料と、乳試料の前処理試薬に含まれていた界面活性物質を接触させ、乳試料の前処理を行った。
なお、この乳試料の前処理により、当該乳試料は、5倍の希釈倍率で希釈されたことになる。
【0348】
(2)亜鉛測定用第1試薬及び亜鉛測定用第2試薬の順次混合
前記(1)の乳試料と乳試料の前処理試薬に含まれていた界面活性物質の接触に続き、日立ハイテクノロジーズ社(日本国)の7180形自動分析装置を用い、前記(1)の24種類の乳試料と乳試料の前処理試薬の混合液のそれぞれについて、当該混合液の10μLに前記1の(2)で調製した亜鉛測定用第1試薬150μLを添加し混和した後37℃で5分間反応させ、この後、前記1の(3)で調製した亜鉛測定用第2試薬50μLを添加し、37℃で5分間反応させた。
【0349】
そして、亜鉛測定用第1試薬の添加後4分30秒目(16ポイント目)及び亜鉛測定用第2試薬の添加後5分8秒目(34ポイント目)の主波長546nm及び副波長700nmにおける吸光度をそれぞれ測定し、この亜鉛測定用第2試薬の添加後5分8秒目(34ポイント目)の吸光度(主波長の吸光度から副波長の吸光度を差し引いたもの)から亜鉛測定用第1試薬の添加後4分30秒目(16ポイント目)の吸光度(主波長の吸光度から副波長の吸光度を差し引いたもの)を差し引いて吸光度差を求めた。
【0350】
次に、この前記3の24種類の乳試料について求めた吸光度差の値から、前記2の(2)の精製水について前記の通り測定を行って求めた吸光度差の値〔試薬盲検(試薬ブランク)〕を差し引いて、吸光度差を求めた。
【0351】
次に、この前記3の24種類の乳試料について求めた吸光度差の値と、亜鉛の濃度が分かっている前記2の(1)の標準液について前記の通り測定を行って求めた吸光度差の値とを、それぞれ比較することにより、前記3の24種類の乳試料中の亜鉛の濃度を算出した。
【0352】
5.ICP発光分析法による乳試料中の亜鉛の測定
前記3の24種類の乳試料中の亜鉛の濃度を、ICP発光分析法にて測定した。
【0353】
この乳試料中の亜鉛の濃度の測定は、前記3の24種類の乳試料のそれぞれについて、この乳試料の60μLに、1ppmのイットリウムを含む0.1M塩酸水溶液の3.00mLを添加し混和し混合液を調製した。
なお、この混合液の調製により、当該乳試料は、51倍の希釈倍率で希釈されたことになる。
次に、前記の混合液の3.06mLについて、イットリウムを内部標準物質として、島津製作所(日本国)のICPS−8100型ICP発光分析装置により測定を行なった。
【0354】
また、亜鉛の濃度が分かっている前記2の(1)の標準液について、前記の通り測定を行い、この標準液について求めた値と、前記3の24種類の乳試料について求めた値とをそれぞれ比較することにより、前記3の24種類の乳試料中の亜鉛の濃度を算出した。
【0355】
6.測定結果
前記4における本発明の乳試料中の亜鉛の比色測定方法による測定結果(測定値)と前記5におけるICP発光分析法による測定結果(測定値)の相関のグラフを
図8に示した。
【0356】
なお、この図において、横軸は、前記5におけるICP発光分析法による乳試料中の亜鉛の測定値(単位:μg/dL)を示す。
【0357】
また、この図において、縦軸は、前記4における本発明の乳試料中の亜鉛の比色測定方法による乳試料中の亜鉛の測定値(単位:μg/dL)を示す。
【0358】
なお、この相関の回帰式は、本発明の乳試料中の亜鉛の比色測定方法による測定値をy、ICP発光分析法による測定値をxとした場合、y=1.00x−0.3で示される。
また、この相関の相関係数であるが、r=0.999である。
【0359】
これらのことから、乳試料中の亜鉛の測定において、本発明の乳試料中の亜鉛の比色測定方法とICP発光分析法とは、相関の回帰式及び相関係数とも非常に良好なものであることが分かる。
【0360】
ところで、ICP発光分析法は、乳試料に由来する影響を受けることなく、乳試料においても正確な測定結果(測定値)を得ることができるものである。
【0361】
従って、前記の相関の結果より、本発明の乳試料中の亜鉛の比色測定方法は、乳試料に由来する影響を受けることなく、乳試料においても正確な測定結果(測定値)を得ることができるものであることが確かめられた。