特許第6186612号(P6186612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186612
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】香味香気配合物(V)
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20170821BHJP
   C11D 3/50 20060101ALI20170821BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20170821BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20170821BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20170821BHJP
   A61L 9/04 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   C11B9/00 S
   C11D3/50
   A61K8/37
   A61Q13/00 101
   A61L9/01 Q
   A61L9/04
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-535047(P2015-535047)
(86)(22)【出願日】2013年10月7日
(65)【公表番号】特表2016-500717(P2016-500717A)
(43)【公表日】2016年1月14日
(86)【国際出願番号】EP2013070833
(87)【国際公開番号】WO2014056850
(87)【国際公開日】20140417
【審査請求日】2016年9月7日
(31)【優先権主張番号】12187650.2
(32)【優先日】2012年10月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ボイマー, ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】チュミ, ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】グレスリー, ミハエル
【審査官】 吉田 邦久
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−036417(JP,A)
【文献】 特開昭46−001350(JP,A)
【文献】 特開平08−157862(JP,A)
【文献】 特開平09−052864(JP,A)
【文献】 特開昭64−009993(JP,A)
【文献】 米国特許第04820879(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 9/00
A61K 8/37
A61L 9/01
A61L 9/04
A61Q 13/00
C11D 3/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

の化合物の、香味香気材料としての使用。
【請求項2】
(i)式(I):
【化2】

の化合物を含む香味香気配合物。
【請求項3】
式(I)の化合物を、前記香味香気配合物の総重量に対し0.0001〜10wt%含む、請求項2に記載の香味香気配合物。
【請求項4】
固体、ゲル様または液体である、請求項3に記載の香味香気配合物。
【請求項5】
香水、空気清浄化用製品、家庭用製品、洗濯用製品、ボディケア用製品または香粧品である、請求項3または4に記載の香味香気配合物。
【請求項6】
香味香気配合物を改善、増強または修正する方法であって、式(I)の化合物を嗅覚的に許容される量でそこに添加することによる、方法。
【化3】

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、特定の有機化合物の香味香気材料としての使用に関する。さらに本発明は、この種の特定の有機化合物を含む香味香気配合物に関する。
【0002】
香味香気産業においては、香り立ちを増強、修正、改善するかまたはそれ以外の形で香り立ちに好ましい影響を与える化合物、したがって、香味香気材料を含有する香水、コロン、パーソナルケア製品、家庭用製品または他の任意の製品に付香するための新しい香りを調香師等が創生できるようにする化合物が絶えず求められ続けている。
【0003】
驚くべきことに、式(I)の化合物が香味香気材料として非常に有用であることが見出された。
【0004】
したがって本発明は、式(I):
【化1】

の化合物の香味香気材料としての使用に関する。
【0005】
式(I)の化合物は、そのまま使用することもできるし、式(I)の他の化合物または香気香味材料として知られている他の化合物と組み合わせて使用することもできる。
【0006】
香味香気材料として知られているこの種の他の化合物としては、現時点において入手可能な幅広い種類の天然産物および合成分子から選択されるあらゆる周知の匂い分子(精油、アルコール、アルデヒドおよびケトン、エーテルおよびアセタール、エステルおよびラクトン、大環状化合物および複素環式化合物)ならびに/または従来香味香気配合物中に匂い物質と一緒に使用されている1種以上の成分もしくは賦形剤(例えば、担体材料)および当該技術分野において一般に使用されている他の補佐剤と混合したものが挙げられる。
【0007】
本発明の香味香気材料は、香味香気配合物に使用される。
【0008】
このような香味香気配合物は、他の成分を含む。
【0009】
本発明による香味香気配合物は任意の形態とすることができる。通常は、固体、ゲル様または液体(またはこれらの組合せ)形態とすることができる。これはまた、カプセル化形態(すなわち、液体配合物を好適なマトリクス材料でカプセル化したもの)とすることもできる。
【0010】
したがって本発明は、
(i)式(I):
【化2】

の化合物を含む香味香気配合物にも関する。
【0011】
式(I)の化合物が香味香気配合物に使用される場合、その量は、香味香気配合物の総重量に対し0.0001〜10重量%(wt%)の範囲にある。0.01〜5wt%の範囲の量が好ましい。
【0012】
したがって本発明は、
(i)式(I)の化合物を、香味香気配合物の総重量に対し0.0001〜10wt%(好ましくは0.01〜5wt%)含む液体香味香気配合物に関する。
【0013】
本発明による香味香気配合物は、さらなる任意の付香化合物の溶剤、補佐剤(adjuvant)、増粘剤、界面活性剤、顔料、体質顔料、レオロジー調整剤、染料、酸化防止剤、フィラー等のさらなる成分(=助剤化合物)を含むことができる。
【0014】
多くの香味香気配合物は液体形態(香水やコロン等)にある。したがって、この種の液体配合物には(希釈)溶媒が存在する。この種の一般的な希釈剤は、すなわちジプロピレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、クエン酸トリエチルおよびアルコール(エタノール等)である。
【0015】
高級香水類のさらなる例は、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロンおよびスプラッシュコロン(Splash Cologne)である。高級香水製品は、一般に、希釈剤であるアルコール性溶液をベースとしている。しかしながら、オイルまたはワックスを希釈剤として使用している高級香水製品も本発明の趣旨の範囲内に包含される。化合物は、具体的な用途ならびに他の匂い成分の性質および量に応じて幅広い範囲の量で用いることができる。
【0016】
(高級)香水に使用する場合、量は、通常、(高級)香水の総重量を基準として0.01〜10wt%である。
【0017】
しかしながら、これらの値および範囲は例示のみを目的とするものである。それは、熟練の調香師はこれよりも低いまたは高い濃度で効果を達成することも、新たなアコードを生み出すこともできるためである。
【0018】
さらに本発明は、
(i)式(I)の化合物と、
(ii)ジプロピレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、クエン酸トリエチルおよびアルコール(エタノール等)からなる群から選択される少なくとも1種の希釈剤と、
任意選択で、
(iii)付香化合物溶剤、補佐剤、増粘剤、界面活性剤、顔料、体質顔料、レオロジー調整剤、染料、酸化防止剤およびフィラーからなる群から選択される少なくとも1種の助剤化合物と
を含む、液体香味香気配合物に関する。
【0019】
さらに本発明は、
(i)式(I)の化合物と、
(ii)付香化合物の溶剤、補佐剤、増粘剤、界面活性剤、顔料、体質顔料、レオロジー調整剤、染料、酸化防止剤およびフィラーからなる群から選択される少なくとも1種の助剤化合物と
を含む固体香味香気配合物に関する。
【0020】
式(I)の化合物は、幅広い範囲の香味香気配合物、例えば、高級香水類および実用的な香水類のあらゆる分野(香水、空気清浄化用製品(air care product)、家庭用製品、洗濯用製品、ボディケア用製品、香粧品等)に使用することができる。
【0021】
本明細書に上述した化合物は、式(I)の化合物、これらの混合物または最終製品に使用される他の成分を含む香気組成物に単純に直接混合することによって香味香気配合物に用いることもできるし、あるいはそれよりも前の段階で、捕捉材料(例えば、ポリマー、カプセル、マイクロカプセルおよびナノカプセル、リポソーム、皮膜形成剤、吸収材(炭素やゼオライト等)、環状オリゴ糖ならびにこれらの混合物)で捕捉しておくこともできるし、あるいは光や酵素等の外部刺激を与えることにより香気分子を放出させるように適合された基材に化学的に結合させた後、最終製品に用いられる他の成分と混合することもできる。
【0022】
したがって、さらに本発明は、香味香気配合物の製造方法であって、香気成分としての式(I)の化合物を、最終製品に使用される他の成分に当該化合物を直接混合することによるか、または式(I)の化合物を含む香気組成物を混合する(次いでこれは、最終製品に使用される他の成分と従来の技術および方法を用いて混合することができる)ことによるかのいずれかによって混ぜ込むことを含む、方法を提供する。
【0023】
上述した本発明の化合物またはその混合物を嗅覚的に許容される量で添加することにより、消費者製品の基材の香り立ちが改善、増強または修正されるであろう。
【0024】
したがって本発明は、式(I)の化合物を嗅覚的に許容される量で添加することによる、消費者製品(=最終製品)の基材を改善、増強または修正するための方法をさらに提供する。
【0025】
本発明との関連における嗅覚的に有効な量とは、香味香気配合物中における式(I)の化合物が、その香味香気配合物の特定の嗅覚的特徴(olfactory characteristics)に寄与するであろう量と理解すべきである。但し、香味香気配合物の嗅覚的効果は各香水または香気成分の効果の総和となるであろう。したがって、本発明の化合物は、香味香気配合物の香気特性を変更するために使用することができ、あるいは、組成物中の他の成分が寄与する嗅覚反応を修正することによる。その量は、他の成分、その相対的な量および所望の効果を含む多くの要素に応じて変化するであろう。
【0026】
本明細書において用いられる「消費者製品(=最終製品)」とは、清浄化、柔軟化、手入れ等の特定の機能を果たすために消費者製品として使用される組成物を意味する。この種の製品の例としては、高級香水類(例えば、香水およびオードトワレ);衣類手入れ剤、家庭用製品、パーソナルケア製品(衣類ケア洗浄剤、リンスコンディショナー、身体清浄化用組成物(personal cleansing composition)、食洗機用洗剤、表面洗浄剤等);洗濯用製品(例えば、柔軟剤、漂白剤、洗剤);ボディケア製品(例えば、シャンプー、シャワージェル);空気清浄化用製品および香粧品(例えば、消臭剤、バニシングクリーム)が挙げられる。この製品の一覧は例示を目的とするものであって、何らかの限定を意図するものと見なすべきではない。
【0027】
式(I)の化合物は、有機合成の当業者に周知の方法を用いて調製することができる。
【0028】
ここで次に示す非限定的な実施例を用いて本発明をさらに説明する。
【0029】
[実施例]
化合物の香りの強さを1から10までの尺度(1=非常に弱い;10=非常に強い)を用いて4人のパネルに評価させた。さらに、この4人には化合物の香りについても記述させた。1人に3、6、8、24、48、72および96時間後の持続性を評価させた。このような評価は、単体の液体化合物のそれぞれの原液に紙片を浸して行った。
【0030】
[実施例1:式Ibの化合物の香気官能特性]
香りの記述:フレッシュ;ジューシー;ウッディ;ミント;樟脳
強さ:6
持続性:3〜6時間