特許第6186644号(P6186644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186644
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】T字型同軸管
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/12 20060101AFI20170821BHJP
   H01P 3/06 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   H01P5/12 A
   H01P3/06
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-23765(P2013-23765)
(22)【出願日】2013年2月8日
(65)【公開番号】特開2014-155066(P2014-155066A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智恭
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼瀬 崇行
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 西独国特許出願公告第01226177(DE,B)
【文献】 実公昭29−011601(JP,Y1)
【文献】 米国特許第04081768(US,A)
【文献】 特開昭57−068901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 3/06
H01P 5/12− 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径の中空円筒状の外部導体の内部に小径の中実円柱状の内部導体が同軸上に配置されており、前記外部導体および前記内部導体がT字型に形成されているT字型同軸管であって、
前記内部導体は、それぞれ直線状の円柱状の第一線部および第二線部を有しており、前記第一線部の一端までの途中の外周面に前記第二線部の一端がT字型に連結されており、
前記第一線部の周面方向で前記第二線部が連結されている部分と逆側に、底部が平面形状の所定の深さの凹部が、第二線部の軸線に対して線対称に形成されている、
T字型同軸管。
【請求項2】
前記凹部の前記深さ及び前記底部の幅の各々が、前記第一線部及び前記第二線部の上記連結された部分における高周波の反射を抑制させるため、伝搬させる前記高周波の波長λに対応して設定される
請求項1に記載のT軸型同軸管。
【請求項3】
前記凹部が形成された前記第一線部と、前記第二線部との各々を樹脂で形成し、金属メッキを行うことにより形成された
請求項1または請求項2に記載のT軸型同軸管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大径の中空円筒状の外部導体の内部に、小径の中実円柱状の内部導体が同軸上に配置されており、外部導体および内部導体がT字型に形成されている、T字型同軸管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、大電力の高周波を低損失で伝送する手段として、導波管や同軸管が利用されている。導波管は周波数が高い場合には、小さい寸法で形成することができる。しかしながら、周波数が低い場合、たとえば、3GHzなどでは、寸法が極端に大型化する。このため、このような周波数の伝送には同軸管が利用されている。しかしながら、同軸管は同軸ケーブルのように自由に曲折させることが不能である。そこで、同軸管の伝送方向を直角に偏向する場合、詳細に関しては後述するが、図5(a)に示すように、T字型同軸管20を利用している。
【0003】
このT字型同軸管20は、大径の中空円筒状の外部導体200の内部に小径の中実円柱状の内部導体300が同軸上に配置されており、外部導体200および内部導体300がT字型に形成されている。このようなT字型同軸管20では、内部導体300は、それぞれ直線状の円柱状の第一線部310および第二線部320を有しており、第一線部310の一端までの途中の外周面に第二線部320の一端がT字型に連結されている。
【0004】
しかしながら、このようなT字型同軸管20では、T字型に分岐しているためにインピーダンスが整合しないので不要な反射が発生し、高周波の直角方向に偏向された伝送が阻害されやすい。そこで、上述のようなT字型同軸管20でインピーダンスを整合させる手法としては、第二線部320より手前で第一線部310の外周面を円環状に切除することや(図示せず)、このような切除を二箇所で実行して円環状の誘電体で補強すること(図示せず)、などが実施されている。
【0005】
なお、小幅の周波数制御幅でインピーダンス整合が可能な領域を十分に広く保つ高周波加熱装置の提案はある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−159562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のようにT字型同軸管20でも、第二線部320より手前で第一線部310の外周面を円環状に切除することや、このような切除を二箇所で実行して円環状の誘電体で補強することなどにより、インピーダンスを整合させることはできる。しかしながら、一般的に第一線部310は円柱状の金属棒からなる。このような第一線部310の外周面を円環状に切除するためには、回転加工が必要となり、その加工が困難で生産性が低下している。
【0008】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、特性が良好で製造も容易なT字型同軸管を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述のような課題を解決するため、本発明のT字型同軸管は、大径の中空円筒状の外部導体の内部に小径の中実円柱状の内部導体が同軸上に配置されており、前記外部導体および前記内部導体がT字型に形成されているT字型同軸管であって、前記内部導体は、それぞれ直線状の円柱状の第一線部および第二線部を有しており、前記第一線部の一端までの途中の外周面に前記第二線部の一端がT字型に連結されており、前記第一線部の周面方向で前記第二線部が連結されている部分と逆側に、底部が平面形状の所定の深さの凹部が、第二線部の軸線に対して線対称に形成されている。
【0010】
したがって、このT字型同軸管では、T字型に連結されている第一線部と第二線部からなる内部導体の、第二線部が連結されている部分と周面方向で逆側に第一線部に少なくとも一つの凹部が形成されている。このため、この凹部により第一線部および第二線部のT字型の連結部に発生する不要な反射を抑制することができる。このために必要な加工は、第二線部の連結部分と逆側に第一線部に凹部を形成するだけなので、たとえば、円柱状の金属棒からなる第一線部を加工する場合でも、その外周面の全体を回転加工するような必要がない。
【発明の効果】
【0011】
本発明に記載のT字型同軸管では、T字型に連結されている第一線部と第二線部からなる内部導体の、第二線部が連結されている部分と周面方向で逆側に第一線部に少なくとも一つの凹部が形成されている。このため、この凹部により第一線部および第二線部のT字型の連結部に発生する不要な反射を抑制し、インピーダンスを整合させることができる。このようにインピーダンスを整合させるために必要な加工は、第二線部の連結部分と逆側に第一線部に凹部を形成するだけなので、たとえば、円柱状の金属棒からなる第一線部を加工する場合でも、その外周面の全体を回転加工するような必要はなく、一面を切削加工するだけで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態におけるT字型同軸管の内部構造を示す模式的な縦断側面図である。
図2】本発明の実施の形態におけるT字型同軸管の構造を示す模式的な斜視図である。
図3】本発明の実施の形態におけるT字型同軸管による電界分布を示すシミュレーション結果の電界分布図である。
図4】本発明の実施の形態におけるT字型同軸管による反射損失特性を示すシミュレーション結果の特性図である。
図5】本発明の比較例のT字型同軸管の内部構造と反射損失特性を示し、(a)は模式的な縦断側面図、(b)はシミュレーション結果の特性図である。
図6】本発明の実施の形態におけるT字型同軸管の凹部の深さによる反射損失特性の違いを示し、(a)は模式的な縦断側面図、(b)はシミュレーション結果の特性図である。
図7】本発明の実施の形態におけるT字型同軸管の凹部の管軸方向の位置による反射損失特性の違いを示し、(a)は模式的な縦断側面図、(b)はシミュレーション結果の特性図である。
図8】本発明の実施の形態におけるT字型同軸管の凹部の管軸方向の全長による反射損失特性の違いを示し、(a)は模式的な縦断側面図、(b)はシミュレーション結果の特性図である。
図9】本発明の実施の形態におけるT字型同軸管の実際の反射損失特性を示し、(a)は模式的な縦断側面図、(b)は特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施の一形態に関して図面を参照して以下に説明する。本実施の形態のT字型同軸管10は、図1および図2に示すように、大径の中空円筒状の外部導体200の内部に小径の中実円柱状の内部導体100が同軸上に配置されており、外部導体200および内部導体100がT字型に形成されている。つまり、外部導体200は、それぞれ直線状の円筒状の第一管部210および第二管部220を有しており、第一管部210の一端までの途中の外周面に、第二管部220の一端がT字型に連結されている。
【0014】
同様に、内部導体100は、それぞれ直線状の円柱状の第一線部110および第二線部120を有しており、第一線部110の一端までの途中の外周面に第二線部120の一端がT字型に連結されている。外部導体200の第一管部210の一端は円盤状の閉塞端部230で閉塞されており、この閉塞端部230に、内部導体100の第一線部110の一端も接続されている。
【0015】
本実施の形態のT字型同軸管10の外部導体200および内部導体100は、黄銅やアルミなどの良導体の金属で形成されており、外部導体200の第一管部210および第二管部220は、内径19.94mmで肉厚2.28mmに形成されている。第二管部220は、たとえば、図3に示すように、導波管11に接続されており、この導波管11の内部に、第二線部120の先端に接続されているトランスデューサ121が配置されている。
【0016】
そして、本実施の形態のT字型同軸管10では、第一線部110の周面方向で第二線部120が連結されている部分と逆側に凹部111が形成されている。この凹部111は、伝送させる高周波の波長λに対し、第一線部110の直径方向に、λ/100〜λ/9である約λ/40の深さまで形成されている。また、この凹部111は、伝送させる高周波の波長λに対し、第一線部110の管軸方向で、λ/12〜λ/3である、約λ/4の全長に形成されている。
【0017】
より具体的には、本実施の形態のT字型同軸管10は、仕様的に3.0〜3.1GHzの高周波を伝送する。このため、第一線部110の直径は9.96mmであり、凹部111は直径方向に2.5mmの深さに形成されている。さらに、凹部111は管軸方向に25mmの全長に形成されている。そして、このような凹部111は、第二線部120の軸線を中心に管軸方向に略対称に形成されている。
【0018】
つまり、第二線部120の軸線を中心に管軸方向に±12.5mmに形成されている。このような凹部111は、前述のように金属棒からなる第一線部110を、図中下方から切削すればよい。なお、本実施の形態のT字型同軸管10では、第二線部120の軸線から第一線部110の図中右端までも約λ/4の全長に形成されている。ただし、この部分は実際には、T字型の連結部に凹部111が形成されている影響で複雑な反射波が発生するため、約λ/4ではない長さで形成されている。
【0019】
上述のような構成において、本実施の形態のT字型同軸管10は、図3に示すように、たとえば、内部導体100の第二線部120の図中上端にトランスデューサ121が接続され、外部導体200の第二管部220の図中上端が導波管11に接続されて、3.0〜3.1GHzの高周波の伝送に利用される。その場合の反射損失特性のシミュレーション結果が、図3および図4に示されている。
【0020】
図4に示すように、3.0〜3.1GHzの帯域において、S11が−30[dB]以下と、良好なシミュレーション結果が得られている。つまり、第一線部110に、適切な直径方向の深さ、適切な管軸方向の全長、適切な管軸方向の位置に、第二線部120と逆側に凹部111が形成されているため、結果的にインピーダンスが整合して不要な反射が抑制されている。
【0021】
そして、このような良好な特性のT字型同軸管10を実現するためには、金属棒からなる第一線部110の一面を切削して凹部111を形成するだけでよい。このため、本実施の形態のT字型同軸管10は、インピーダンスが整合していて不要な反射が抑制されており、それでいて構造が簡単で製造も容易である。
【0022】
ここで本実施の形態のT字型同軸管10と比較するため、凹部111が形成されていない従来型のT字型同軸管20を図5(a)に例示する。このT字型同軸管20では、内部導体300の第一管部310の一端までの途中に第二管部320の一端がT字型に連結されているが、その逆側に凹部111は形成されていない。このようなT字型同軸管20で3.0〜3.1GHzの高周波の伝送をシミュレートしたところ、図5(b)に示すように、その帯域でS11が−25[dB]以上と、良好なシミュレーション結果が得られなかった。
【0023】
つぎに、本実施の形態のT字型同軸管10の凹部111の深さを検証するため、図6(a)に示すように、深さD=2.5mm、D=2.0mm、D=3.0mm、の場合で、3.0〜3.1GHzの高周波の伝送をシミュレートした。なお、凹部111の管軸方向の全長は25mm、管軸方向の位置は第二線部120の軸線を中心に管軸方向に±12.5mm、に固定した。
【0024】
すると、図6(b)に示すように、深さD=2.5mmの場合は、前述のようにS11が−30[dB]以下と良好なシミュレーション結果が得られたが、これより深さDが2.0mmと浅い場合でも、3.0mmと深い場合でも、シミュレーション結果は悪化した。ただし、Dが2.0mmと浅い場合と3.0mmと深い場合とは、本実施の形態のT字型同軸管10の仕様を満足する許容範囲であることも確認された。つまり、凹部111の深さDは、第一線部110の直径9.96mmの約1/4である2.5mmが最良であるが、2.0mm〜3.0mmも許容する。
【0025】
つぎに、本実施の形態のT字型同軸管10の凹部111の管軸方向の位置を検証するため、図7(a)に示すように、第二線部120の軸線から図中右側に12.5mmの位置に、凹部111の図中右端の位置X=0.0mm、X=−2.5mm、X=+2.5mm、の場合で、3.0〜3.1GHzの高周波の伝送をシミュレートした。なお、凹部111の直径方向の深さは2.5mm、管軸方向の全長は25mm、に固定した。
【0026】
すると、図7(b)に示すように、位置X=0.0mmの場合は、前述のようにS11が−30[dB]以下と良好なシミュレーション結果が得られたが、これより位置Xが−2.5mmと図中右方に変位した場合でも、+2.5mmと図中左方に変位した場合でも、シミュレーション結果は悪化した。ただし、この場合も、図中左右に±2.5mmが、本実施の形態のT字型同軸管10の仕様を満足する許容範囲であることも確認された。つまり、凹部111の位置Xは、第二線部120の軸線を中心に図中左右に12.5mmと対称であることが最良であるが、左右に±2.5mmの変位も許容する。
【0027】
つぎに、本実施の形態のT字型同軸管10の凹部111の管軸方向の全長を検証するため、図8(a)に示すように、第二線部120の軸線を中心に、全長W=25mm、W=24mm、W=26mm、の場合で、3.0〜3.1GHzの高周波の伝送をシミュレートした。なお、凹部111の直径方向の深さは2.5mmに固定した。
【0028】
すると、図8(b)に示すように、全長W=25mmの場合は、前述のようにS11が−30[dB]以下と良好なシミュレーション結果が得られたが、これより全長Wが24mmと短縮された場合でも、26mmと延長された場合でも、シミュレーション結果は悪化した。ただし、この場合も、全長W=25mm±1mmが、本実施の形態のT字型同軸管10の仕様を満足する許容範囲であることも確認された。つまり、凹部111の全長Wは、約λ/4の25mmが最良であるが、±1mmの誤差も許容する。
【0029】
そして、上述のようなシミュレーション結果に基づいて、本発明者は実際に、図3に示すように、導波管11やトランスデューサ121などが接続された(図示せず)、図9(a)に示すようなT字型同軸管10を試作し、その3.0〜3.1GHzの高周波の伝送の周波数特性を測定した。すると、図9(b)に示すように、シミュレーション結果とは多少は相違するものの、3.0〜3.1GHzの高周波帯域で、S11が−30[dB]以下と良好な実測結果が得られた。
【0030】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。たとえば、上記形態では金属棒からなる第一線部110の下面を切削加工することにより、凹部111を形成することを例示した。しかしながら、最初から凹部が形成されている第一線部および第二線部を樹脂で成形し、その表面を金属メッキすることなどにより、本実施の形態のT字型同軸管10を実現することも可能である。
【0031】
なお、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 T字型同軸管、11 導波管、20 T字型同軸管、100 内部導体、110 第一線部、111 凹部、120 第二線部、121 トランスデューサ、200 外部導体、210 第一管部、220 第二管部、230 閉塞端部、300 内部導体、310 第一線部、320 第二線部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9