(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の提案による転写型インクジェットプリンタ装置では、記録媒体の種類や表面性状によっては、高品質な印刷画像を記録媒体表面に形成することが困難であることが多かった。すなわち、印刷画像としては、緻密で鮮明であり、また色調や濃淡のムラが少なくて画像再現性に優れており、しかも記録媒体表面に対するインク層の密着性が高くて耐久性に優れていることが望まれるが、従来の転写型インクジェットプリンタ装置では、記録媒体の種類や表面性状によっては、これらの要求を充分に満たす高品質な印刷画像を記録媒体表面に形成することが困難であることが多かったのが実状である。例えば、インクジェット用インクの濡れ性が悪い記録媒体、あるいは表面性が悪く毛羽立った記録媒体などの場合には、これらの要求をすべて満たす高品質の印刷画像を形成できないことが多かった。
【0006】
本発明は、以上のような事情を背景としてなされたものであって、基本的には、記録媒体の種類や表面性状を問わず、印刷画像が緻密で鮮明であり、また色調や濃淡のムラが少なくて画像再現性に優れており、しかも記録媒体表面に対するインク層の密着性が高くて耐久性に優れている印刷画像を、確実かつ安定して形成し得る転写型インクジェットプリンタ装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述のような課題を解決するため、本発明者等が鋭意実験、検討を重ねた結果、顔料系インクを用いた転写型インクジェットプリンタ装置において、転写ベルトなどの中間転写体表面にインクジェット方式によって形成された中間画像を記録媒体に転写する際に、単にインク層を加圧するだけではなく、中間画像のインク層中のトナー粒子(帯電粒子)を電気泳動によって記録媒体の表面に向けて凝集させることによって、前述の課題を解決し得ることを見い出し、本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、インクジェット方式のプリント装置では、インクジェットヘッドからインクを吐出する際に、分散媒中のトナー粒子(着色顔料粒子)自体が帯電されていて、中間画像のインク層中においてもトナー粒子が荷電された状態となるから、その中間画像を記録媒体に転写する際に電界を印加することによって、トナー粒子をインク層中で電気泳動により記録媒体の側に凝集させることが可能となるのである。
【0009】
したがって本発明の基本的な態様(第1の態様)による転写型インクジェットプリンタ装置は、
所定の循環経路に沿って連続的に循環移動し得る中間転写面を有する中間転写体と、
前記循環経路中における所定の第1の領域において、帯電性を有するトナー粒子を分散媒に分散させてなるインクを、トナー粒子が帯電された状態で、前記中間転写体の中間転写面に吐出して、中間転写面上にインク層からなる中間像を形成するためのインクジェットヘッドと、
前記循環経路中における前記第1の領域よりも下流側の第2の領域において、前記中間転写面上の中間画像のインク層を記録媒体の表面に押し付けるための加圧手段と、
前記第2の領域において前記中間転写面上の中間画像のインク層中の帯電トナー粒子を前記記録媒体側に向けて電気泳動させ、前記インク層の前記記録媒体側に凝集させるための電界印加手段と、
前記循環経路における前記第2の領域よりも下流側でかつ前記第1の領域よりも上流側の位置において前記中間転写体の中間転写面の残留インクを除去するためのクリーナ装置と、
を有し、
前記中間転写面に、インクが収容される凹形状は形成されて
おらず、
前記電界印加手段によって前記トナー粒子が前記インク層中の前記記録媒体側に凝集された状態で、前記加圧手段が前記中間転写面上の前記インク層を前記第2の領域の記録媒体の表面に押し付けるように構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
また本発明の第2の態様による転写型インクジェットプリンタ装置は、前記第1の態様による転写型インクジェットプリンタ装置において、
さらに、前記循環経路中における前記第1の領域よりも下流側でかつ前記第2の領域よりも上流側の位置において、前記中間転写面上の中間画像のインク層中のトナー粒子を帯電させるための帯電器を有することを特徴とするものである。
【0011】
さらに本発明の第3の態様による転写型インクジェットプリンタ装置は、前記第1もしくは第2の態様の転写型インクジェットプリンタ装置において、
前記中間転写体が、無端環状の転写ベルトからなり、その転写ベルトの外周側の帯状面が前記中間転写面とされ、かつ前記加圧手段が、前記第2の領域において前記転写ベルトおよび前記記録媒体を重ねた状態で挟んで回転する加圧ロールおよび支持ロールからなり、前記電界印加手段が、前記加圧ロールと支持ロールとの間に電界を印加する手段であることを特徴とするものである。
【0012】
また本発明の第4の態様の転写型インクジェットプリンタ装置は、前記第3の態様の転写型インクジェットプリンタ装置において、
前記転写ベルトが、ウレタンゴムからなる基材の表面をフッ素系樹脂によって被覆した構成とされていることを特徴とするものである。
【0013】
また本発明の第5の態様の転写型インクジェットプリンタ装置は、前記第1もしくは第2の態様の転写型インクジェットプリンタ装置において、
前記中間転写体が、転写ロールからなり、その転写ロールの外周面が前記中間転写面とされ、かつ前記加圧手段が加圧ロールからなり、前記第2の領域において転写ロールの外周面と加圧ロールの外周面との間に、前記記録媒体を挟んで回転するように構成され、前記電界印加手段が、前記転写ロールと加圧ロールとの間に電界を印加する手段であることを特徴とするものである。
【0014】
また本発明の第6の態様の転写型インクジェットプリンタ装置は、前記第5の態様の転写型インクジェットプリンタ装置において、
前記転写ロールが、導電性ロール基体の外周上にウレタンゴムからなる弾性層を形成し、その弾性層の表面をフッ素系樹脂によって被覆した構成とされていることを特徴とするものである。
また本発明の第7の態様の転写型インクジェットプリンタ装置は、前記第1の態様の転写型インクジェットプリンタ装置において、
前記加圧手段は、前記第2の領域で前記中間転写面と前記記録媒体とを重ねた状態で挟みつつ回転する2つのロールを備え、
前記第2の領域において、前記2つのロールのうち一方のロールは、前記記録媒体の、前記中間転写面との逆側に配置され、
前記電界印加手段は、前記2つのロールのそれぞれに、帯電された前記トナー粒子と同極性の電圧を印加することでこれらのロールの間に電界が形成されるように構成されており、前記2つのロールのうち他方のロールの電位は、前記一方のロールの電位よりも高いことを特徴とするものである。
また本発明の第8の態様の転写型インクジェットプリンタ装置は、前記第7の態様の転写型インクジェットプリンタ装置において、
電界印加手段は、前記2つのロールにそれぞれ接続される2つの電源を備え、これら2つの電源は帯電されたトナー粒子と同極性の電圧を前記2つのロールにそれぞれ印加することを特徴とするものである
。
【発明の効果】
【0015】
本発明の転写型インクジェットプリンタ装置によれば、緻密かつ鮮明でしかも色調や濃淡のムラが少なく、しかも耐久性に優れた高品質の印刷画像を形成することができ、とりわけ、記録媒体の種類や表面性状を問わず、種々の記録媒体上に上述のような高品質の印刷画像を、確実かつ安定して形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の転写型インクジェットプリンタ装置について、図面を参照してより詳細に説明する。
【0018】
図1〜
図3には、中間転写体として転写ベルト1を用いて、板紙やカートン紙、あるいは樹脂シート、布などの印刷対象物(記録媒体)Mの表面に画像や文字などの印刷像を形成するための本発明の第1の実施形態の転写型インクジェットプリンタ装置を示す。
【0019】
図1において、転写ベルト1は、全体として無端環状の弾性を有する帯状体からなるものであり、後述する第1のガイドロール3、第2のガイドロール5、および支持ロール7に巻き掛けられて、概ね逆三角形状の経路(循環経路)に沿って連続循環移動し得るように支持されている。そしてその循環経路の外側を向く帯状の表面が、中間転写面11となっている。
【0020】
ここで、転写ベルト1の材料構成は特に限定されるものではないが、非導電性であって、適度な弾性と、強度、耐インク性、耐久性を有し、しかも表面(中間転写面11)のインク剥離性が優れていることが望ましく、その観点から、基材を
ウレタンゴムとし、中間転写面11側の基材表面をフッ素系樹脂によって被覆した構成とすることが望ましい。
【0021】
前記転写ベルト1の循環経路のうち、第1のガイドロール3と第2のガイドロール5との間の中間の領域は、インクジェットヘッド13によって転写ベルト1の中間転写面11に中間像を形成するための中間像形成領域(第1の領域)9Aとされている。また転写ベルト1の循環経路のうち、支持ロール7に接する領域は、記録媒体Mに中間転写面11上の中間像を転写する転写領域(第2の領域)9Bとされている。
【0022】
前記インクジェットヘッド13は、第1のガイドロール3と第2のガイドロール5との間の中間像形成領域(第1の領域)9Aにおいて、転写ベルト1の表面(中間転写面11)に対向するように配設されている。このインクジェットヘッド13は、帯電性を有するトナー粒子(着色粒子)を液体分散媒に分散させたインクを、所定の画像パターン、印字パターンに従って転写ベルト1の中間転写面11に向けて吐出して、中間転写面11の表面に中間像としてのインク層を形成するためのものである。
【0023】
インクジェットヘッド13の具体的構成は、一般の多色もしくは単色インクジェット印刷方式に使用されているものと同様な構成であればよい。例えば、
図1に示しているように、多色印刷のためのCMYK方式に従い、Y(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)、K(黒)の4色の単位色ヘッド13Y、13M、13C、13Kを、転写ベルト1の走行方向に沿って並べた構成とすればよく、また単色印刷のために1基のヘッドのみによって構成しても良い。なお
図1では、インクジェットヘッド13は、固定されたヘッドの下を転写ベルト1が通過するラインヘッドとして示しているが、転写ベルト1の幅方向に移動(スキャン)させるように構成するシリアルタイプでもよい。
【0024】
ここで、本実施形態では、インクジェットヘッド13から吐出されて中間転写面11の表面に中間像として形成されたインク層10(
図2、
図3参照)においては、そのインク層10中のトナー粒子(着色粒子)が、正(+)の電荷に予め帯電されているものとする。すなわち、本発明のインクジェットプリント装置のインクジェットヘッドは、ピエゾ素子などの圧電素子を用いた記録ヘッドであって、記録信号に応じて予め帯電させたインク滴を複数のノズルから選択的に対象物(本実施形態の転写ベルト1に相当)上に吐出させる構成とされている。したがって転写ベルト1の表面のインク層10中のトナー粒子も、予め帯電されているものとする。
【0025】
なお、インクに使用されるトナー粒子は、いわゆる顔料系のインクに用いられている帯電性を有する顔料粒子であればよく、具体的な種類や成分組成は特に限定されない。またトナー粒子を分散させる分散媒は、インクジェットヘッドのノズルから吐出させる関係と、後に改めて説明するように転写領域(第2の領域)9Bにおいてインク層の分散媒中でトナー粒子を電気泳動させる関係から、10cps程度以下の低粘度であってかつ非導電性であることが望ましい。
【0026】
転写ベルト1の循環経路のうち、中間像形成領域(第1の領域)9Aと中間転写面11上の中間像を転写する転写領域(第2の領域)9Bとの中間の位置、すなわちインクジェットヘッド13よりも転写ベルト走行方向下流側でかつ支持ロール7よりも転写ベルト走行方向上流側には、帯電器15が配設されている。この帯電器15は、転写ベルト1の表面(中間転写面)11に形成された中間像を構成しているインク層10中のトナー粒子の帯電量(電荷量)を増し、また同時に帯電状態を確実かつ安定化するためのものであり、本実施形態では、第2のガイドロール5に巻き掛けられた転写ベルト1の表面に、第2のガイドロール5ヘの巻き掛け位置に配置されている。
【0027】
帯電器15の具体的構成は特に限定されないが、一般にはコロナ放電を利用した構成とすることが適切である。例えば
図2に示すように、転写ベルト1の幅方向に平行に伸びる線状電極15Aを備えた構成として、その線状電極15Aに対する対極を導電性(例えば金属製)の第2のガイドロール5とし、線状電極15Aと第2のガイドロール5との間に、電源装置15Bによって高電圧を印加して、線状電極15Aと第2のガイドロール5の外周面との間でコロナ放電を生起させ、そのコロナ放電電界中に位置している転写ベルト表面のインク層10中のトナー粒子を帯電させる構成とすればよい。
【0028】
そのほか、図示はしないが、それぞれ先端が転写ベルト表面に向く複数の針状電極を、転写ベルト幅方向に配列して、その複数の針状電極の先端と第2のガイドロール5の外周面との間でコロナ放電を生起させ、そのコロナ放電電界中に位置している転写ベルト表面のトナー粒子を帯電させる構成としてもよい。
【0029】
なお、第2のガイドロール5としては、導電性を有する金属などからなるロール基体の外周面に、非導電性の表面被膜層を形成したものを用いることも許容され、その場合導電性のロール基体を対極とし、線状電極15A(もしくは針状電極)と前記ロール基体の間に高電圧を印加する構成とすればよい。
【0030】
ここで、帯電器15によるトナー粒子の帯電は、インクジェットヘッド13から吐出されて形成された中間画像のインク層10におけるトナー粒子の荷電極性と同じ極性の電荷を帯電させる。すなわち、本実施形態では、前述のように中間像のインク層10中のトナー粒子は正(+)の電荷を有しているから、帯電器15においてもトナー粒子を正(+)の電荷に帯電させる。
【0031】
転写ベルト1の循環経路のうち、中間転写面11上の中間像を転写する転写領域(第2の領域)9B、すなわち転写ベルト1が支持ロール7に巻き掛けられる領域には、加圧手段として、軸線方向が支持ロール7の軸線方向と平行となる加圧ロール17が配設されている。この加圧ロール17は、一般的な転写印刷方式において圧胴と称されているものであり、この加圧ロール17と支持ロール7との間に、転写ベルト1および紙などの記録媒体Mが重なり合った状態で挟まれて機械的に加圧され、転写ベルト1の中間転写面11上の中間像が記録媒体Mの表面に転写される。
【0032】
また転写領域(第2の領域)9Bには、転写ベルト1の中間転写面11上の中間像を構成しているインク中の帯電されたトナー粒子に電界を与えて、そのトナー粒子を記憶媒体Mの表面に向けて電気泳動させるための電界印加手段19が設けられている。本実施形態の場合、直流電源19A、19Bによって支持ロール7と加圧ロール17との間に電位差を与えてその間に電界を形成するように構成されている。なお本実施形態では、電界印加手段19は、支持ロール7の側が加圧ロール17の側よりも高い電位となるように定められている。例えば、支持ロール7が1000〜2000V、加圧ロール17が100〜800Vにそれぞれプラス側の電圧が加えられ、その間の電位差によって、正(+)に帯電されたトナー粒子が支持ロール7の側から加圧ロール17の側に電気泳動するように構成される。
【0033】
このように電界印加手段19の直流電源19A、19Bの電位差を定めておくことによって、中間像のインク層10中の正(+)に帯電されたトナー粒子が、電界中において加圧ロール17に向かう方向、したがって記録媒体Mの表面に向かう方向に電気的に泳動し、そのためインク層10中でトナー粒子が記録媒体Mの側に凝集される。そしてこのような電気泳動による記録媒体Mの側への凝集効果と、前述の機械的な加圧による効果とが相俟って、後に改めて詳細に説明するように、記録媒体Mの表面に中間像が確実かつ安定して転写され、記録媒体M上に、最終的な印刷像として、緻密かつ鮮明でかつ耐久性も高い高品質衣の像が形成される。
【0034】
さらに転写ベルト1の循環経路のうち、加圧ロール17と支持ロール7が位置する転写領域(第2の領域)9Bの下流側でかつインクジェットヘッド13が位置する中間像形成領域(第1の領域)9Aの上流側には、転写ベルト1の表面(中間転写面11)に残留するインクを除去するためのクリーナ装置21が配設されている。本実施形態では、クリーナ装置21は、第1のガイドロール3に対向する位置に配置されている。
【0035】
クリーナ装置21の具体的構成は特に限定されるものではなく、従来の転写型インクジェットプリンタに使用されているクリーナと同様な構成とすれば良い。例えば、転写ベルト11の表面に洗浄剤もしくは溶剤をロールコーターなどにより塗布もしくは吹き付け、続いて拭き取りロールもしくは柔軟性を有するブレードなどによって拭き取り、さらに必要に応じて乾燥空気を吹き付けたりする構成とすれば良い。
【0036】
以上のような第1の実施形態の転写型プリンタ装置における全体的な転写・印刷プロセスについて次に説明する。
【0037】
転写ベルト1は、その循環経路中において、第1のガイドロール3、第2のガイドロール5、および支持ロール7に巻き掛けられて
図1の時計方向に循環走行し、かつ支持ロール7の位置、すなわち転写領域(第2の領域)9Bの位置では支持ロール7と加圧ロール17との間に挟まれる。
一方、板紙やカートン紙、樹脂シート、布などの連続したシート状の記録媒体Mは、
図1の右方から転写領域(第2の領域)9Bに連続的に供給され、支持ロール7と加圧ロール17との間の転写ベルト1における加圧ロール17の側に挟まれて加圧され、さらに加圧ロール17の反時計方向回転および転写ベルト1の左方への走行に伴って、左方に連続的に移送(排出)される。
【0038】
転写ベルト1が中間像形成領域(第1の領域)9Aに差し掛かれば、予め例えば、正(+)の電荷に帯電されているトナー粒子(着色粒子)が液体分散媒に分散されているインクが、インクジェットヘッド13(例えば4色の単位色ヘッド13Y、13M、13C、13K)から所定の画像パターン、印字パターンに従って転写ベルト1の表面(中間転写面11)に向けて吐出されて、中間転写面11の表面に中間像が形成される。すなわち、中間転写面11の表面に、正(+)の電荷に帯電されているトナー粒子(着色粒子)を含むインク層10が所定のパターンで形成される。
【0039】
上述のようにして転写ベルト1における中間像が形成された部分が、帯電器15に差し掛かれば、中間像を構成しているインク層10中のトナー粒子の帯電量(電荷量)が増し、また同時に帯電状態が確実かつ安定化される。
【0040】
さらに転写ベルト1における中間像が形成された部分が、転写領域(第2の領域)9Bに差し掛かれば、加圧ロール17と支持ロール7との間に、転写ベルト1および紙などの記録媒体Mが重なり合った状態で挟まれて機械的に加圧され、転写ベルト1の中間転写面11上の中間像が記録媒体Mの表面に転写される。また同時に、電界印加手段19によって加圧ロール17と支持ロール7との間に電界が形成され、その電界によって、中間像のインク層10中の正(+)に帯電されたトナー粒子が加圧ロール17に向かう方向、すなわち記録媒体Mの表面に向かう方向に電気的に泳動し、そのためインク層中でトナー粒子が記録媒体Mの側に凝集される。そしてこのような電気泳動による記録媒体Mの側への凝集効果と、前述の機械的な加圧による効果とが相俟って、記録媒体Mの表面に中間像が確実かつ安定して転写され、記録媒体M上に、最終的な印刷像として、緻密(鮮明)で記録媒体に対する密着性が良好な印刷像が形成される。
【0041】
すなわち転写ベルト1の表面(中間転写面)から、記録媒体表面に中間画像のインク層10を転写するに際しては、前述のようにインク層10中の帯電されたトナー粒子を電気泳動によって記録媒体表面の側に凝集させ(したがってインク層10中における記録媒体表面に接する領域のトナー粒子の密度を高密度化し)、その状態でインク層10を加圧するため、記録媒体表面に転写されたインク層も、トナー粒子が高密度化された緻密な層となる。その結果、記録媒体の最終印刷画像も緻密で鮮明なものとなり、また記録媒体表面に対する密着性も高く、耐久性に優れた画像となる。またこのように緻密に高密度でインク層が記録媒体表面に転写されるため、従来方式(加圧力のみによって転写する方式)による場合には高品質な印刷が困難であったような種類もしくは表面性状の記録媒体でも、緻密かつ鮮明で耐久性の良好な印刷画像を形成することが可能となる。
【0042】
例えば、表面性が悪く毛羽立っているような記録媒体であっても、電気泳動によってトナー粒子を表面の凹凸や毛羽の間の微細な隙間に進入させることができ、またインクの濡れ性が悪い表面を有する記録媒体であっても、電気泳動によってトナー粒子を記録媒体表面の微細な凹部に進入させることができ、そのため緻密かつ鮮明で耐久性の優れた印刷画像を形成することができる。したがって、記録媒体の種類や表面性状に如何にかかわらず、幅広く各種の記録媒体に高品質の印刷を行なうことができる。
【0043】
印刷画像が形成された紙などの記録媒体Mは、そのまま左方に排出される。一方転写領域(第2の領域)9Bを通過して、中間像転写済みの転写ベルト1は、クリーナ装置21を通過する。このクリーナ装置21において、転写ベルト1の表面(中間転写面11)に残留しているインクが除去される。そしてそのクリーナ装置21を通過して洗浄された転写ベルト1は、再び中間像形成領域(第1の領域)9Aに至り、前記のように帯電されたトナー粒子が液体分散媒に分散されているインクが、インクジェットヘッド13から所定の画像パターン、印字パターンに従って転写ベルト1の表面(中間転写面11)に向けて吐出されて、中間転写面11の表面に中間像が形成される。このようにして、転写ベルト1が循環経路に沿って連続的に循環走行しながら、紙などの記録媒体Mに対する連続的な印刷がなされる。
【0044】
なお上記の実施形態では、帯電器15を第2のガイドロール5の位置において転写ベルト1の表面に対向するように配置しているが、帯電器15は、要は中間像形成領域(第1の領域)9Aと転写領域(第2の領域)9Bとの間に配設されていれば良く、したがって例えば第2のガイドロール5とインクジェットヘッド13との間、あるいは第2のガイドロール5と支持ロール7および加圧ロール17との間に配置しても良い。その場合、第2のガイドロール5とは別に、金属などからなる導電性を有する対極(金属ロールあるいは金属板など)を、前述の線状電極もしくは針状電極に対して間隔を置いて対向配置しておき、その対極と線状電極もしくは針状電極との間に転写ベルト1を通過させるとともに、その対極と線状電極もしくは針状電極との間に高電圧を印加する構成とすれば良い。
【0045】
図4には、中間転写体として転写ロール31を用いて、紙や樹脂シート、布などの印刷対象物(記録媒体)Mの表面に画像や文字などの印刷像を形成するための本発明の第2の実施形態の転写型インクジェットプリンタ装置を示す。なお
図4において転写ロール31は、例えば時計方向に回転するものとする。
【0046】
図4において、転写ロール31は、金属などの導電性を有するロール基体(ドラム基体)の少なくとも表面層の部分を、弾性および電気絶縁性を有する材料によって構成したものであり、その外周面が、前述の中間転写面11となっている。すなわち、中間転写体が転写ロール31である場合は、前述の循環経路とは、転写ロール31の外周面に沿った経路に相当することになる。
【0047】
転写ロール31は、具体的には、例えば鉄系材料やアルミ合金からなるロール基体(ドラム基体)の外周面に、適度な弾性を有しかつ電気絶縁性の材料としてウレタンゴムからなる弾性層を形成し、さらにインク剥離性を付与するために、前記弾性層の表面をフッ素系樹脂によって被覆した構成とすることが望ましい。
【0048】
転写ロール31の全外周面(循環経路)のうち、
図4において上方に示される領域は、中間像形成領域(第1の領域)9Aとされており、また
図4において下方に示される領域は、転写領域(第2の領域)9Bとされている。
前記中間像形成領域(第1の領域)9Aには、転写ロール31の表面(中間転写面11)に対向するように、インクジェットヘッド13が配設されている。このインクジェットヘッド13は、
図1に示した第1の実施形態におけるインクジェットヘッドと同様であれば良い。すなわち
図4に示す第2の実施形態の場合も、帯電されたトナー粒子を含むインクが転写ロール31の表面(中間転写面11)に所定のパターンで吐出され、中間画像として、帯電されたトナー粒子を含むインク層が転写ロール31の表面に形成される。
【0049】
さらに中間像形成領域(第1の領域)9Aよりも転写ロール回転方向前方でかつ転写領域(第2の領域)9Bよりも転写ロール回転方向後方の位置には、帯電器15が、転写ロール31の表面(中間転写面11)に対向するように配置されている。例えば前記と同様な線状電極15Aが、転写ロール31の軸線方向と平行な方向に沿って、転写ロール31の表面に対して所定の間隔を置いて配設され、その線状電極5Aと、対極としての転写ロール31の導電性ロール基体部分との間に電源装置15Bにより高電圧を印加して、その間にコロナ放電を発生させ、そのコロナ放電電界中に位置している転写ロール表面のトナー粒子を帯電させる構成とすればよい。また、既に述べたと同様に、線状電極15Aの代わりに、それぞれ先端が転写ロール表面に向く複数の針状電極を、転写ロールの軸線方向と平行な方向に配列して、その複数の針状電極の先端と転写ロールとの間でコロナ放電を生起させ、そのコロナ放電電界中に位置しているトナー粒子を帯電させる構成としてもよい。
【0050】
転写ロール31の全外周面(循環経路)のうち、
図4において下方に示される転写領域(第2の領域)9Bには、軸線方向が転写ロール31の軸線方向と平行となる加圧ロール(圧胴)17が配設されている。そして加圧ロール17と転写ロール31との間に紙などの記録媒体Mが重なり合った状態で挟まれて機械的に加圧され、転写ロール31の中間転写面11上の中間像が記録媒体Mの表面に転写される。
【0051】
また転写領域(第2の領域)9Bには、転写ロール31の中間転写面11上の中間像を構成しているインク層中の帯電されたトナー粒子に電界を与えて、そのトナー粒子を記憶媒体Mの表面に向けて電気泳動させるための電界印加手段19が設けられている。本実施形態の場合、直流電源19A、19Bによって転写ロール31と加圧ロール17の導電性基体部分との間に電位差を与えてその間に電界を形成するように構成されている。
【0052】
さらに転写ロール31の外周面(循環経路)のうち、転写領域(第2の領域)9Bよりも転写ロール回転方向前方でかつ中間像形成領域(第1の領域)9Aよりも転写ロール回転方向後方の位置には、転写ロール31の表面(中間転写面11)に残留するインクを除去するためのクリーナ装置21が配設されている。このクリーナ装置21は、第1の実施形態において説明したものと同様であれば良い。
【0053】
図4に示される第2の実施形態は、
図1に示す実施形態とは、中間転写体が転写ベルト1から転写ロール31に変更されただけであり、印刷時の全体的な具体的プロセス、および作用・効果も、実質的に第1の実施形態と同様であるから、その説明は省略する。
【0054】
なお前述の各実施形態においては、中間像形成領域(第1の領域)9Aと転写領域(第2の領域)9Bとの中間の位置に帯電器15を配置しているが、インクジェットヘッド13から転写ベルト1に吐出されたインク層中のトナー粒子が充分に帯電されている場合、また中間像のインク層が中間像形成領域(第1の領域)9Aから転写領域(第2の領域)9Bに至るまでの間にトナー粒子の電荷があまり消失しないと考えられる場合には、帯電器15を省くことも可能である。
但し、各実施形態に示しているように、中間像形成領域(第1の領域)9Aと転写領域(第2の領域)9Bとの中間の位置に帯電器15を配置している場合には、中間転写体上の中間画像が記録媒体に転写される前に、帯電器15による帯電によって、中間画像を構成しているインク層10中のトナー粒子の帯電状態が安定化され、また帯電量も増加するため、転写時におけるトナー粒子の電気泳動を確実かつ安定して生起させることが可能となり、その結果、トナー粒子の記録媒体表面に向かっての凝集が促進されて、最終印刷画像の緻密化、耐久性向上の効果がいっそう助長されるのである。