(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186663
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】指先血管観測方法、観測装置、観測サーバ、観測システム及び観測プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/01 20060101AFI20170821BHJP
A61B 5/107 20060101ALI20170821BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
A61B5/00 101H
A61B5/10 300Z
A61B5/00 NZDM
A61B5/00ZJP
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-164235(P2015-164235)
(22)【出願日】2015年8月21日
(65)【公開番号】特開2017-38889(P2017-38889A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2017年4月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514034021
【氏名又は名称】あっと株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000822
【氏名又は名称】特許業務法人グローバル知財
(72)【発明者】
【氏名】武野 團
【審査官】
伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−113191(JP,A)
【文献】
特開2006−325714(JP,A)
【文献】
特開平11−299761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 − 5/01
A61B 5/02 − 5/03
A61B 5/06 − 5/22
A61B 9/00 − 10/06
CSDB(日本国特許庁)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指先の爪上皮の毛細血管を拡大し撮影した毛細血管画像の観測方法において、
前記毛細血管画像における指の長手方向(縦方向)を横切る横方向に走る乳頭下血管叢の有無について判別することを特徴とする指先血管観測方法。
【請求項2】
前記毛細血管画像における体液の濁り度合いを更に判定することを特徴とする請求項1に記載の指先血管観測方法。
【請求項3】
前記毛細血管画像における指の長手方向に走る血管の先端部の曲がり度合いを更に判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の指先血管観測方法。
【請求項4】
指先の爪上皮の血管を拡大し撮影した毛細血管画像の観測装置において、
前記毛細血管画像における指の長手方向(縦方向)を横切る横方向に走る乳頭下血管叢の有無について判別する手段が設けられたことを特徴とする指先血管観測装置。
【請求項5】
前記毛細血管画像における体液の濁り度合いを判定する手段が更に設けられたことを特徴とする請求項4に記載の指先血管観測装置。
【請求項6】
前記毛細血管画像における指の長手方向に走る血管の先端部の曲がり度合いを判定する手段が更に設けられたことを特徴とする請求項4又は5に記載の指先血管観測装置。
【請求項7】
指先の爪上皮の血管を拡大し毛細血管画像を撮影する観測装置とネットワークを介して接続される指先血管観測サーバであって、
前記観測装置から前記毛細血管画像を取得する画像取得手段と、
取得した前記毛細血管画像における指の長手方向(縦方向)を横切る横方向に走る乳頭下血管叢の有無について判別する有無判別手段と、
前記毛細血管画像における体液の濁り度合いを判定する濁り度合い判定手段と、
前記有無判別手段の判別結果と前記濁り度合い判定手段の判定結果に基づいて、健康状態を評価する評価手段と、
前記評価手段の評価結果を指定されたクライアント端末に送信するデータ送信手段、
を備えたことを特徴とする指先血管観測サーバ。
【請求項8】
指先の爪上皮の血管を拡大し毛細血管画像を撮影する観測装置と通信ケーブルを介して接続される指先血管観測コンピュータ、或は、前記観測装置とネットワークを介して接続される指先血管観測サーバコンピュータに搭載されるプログラムであって、
コンピュータを、
前記観測装置から前記毛細血管画像を取得する画像取得手段、
取得した前記毛細血管画像における指の長手方向(縦方向)を横切る横方向に走る乳頭下血管叢の有無について判別する有無判別手段、
前記毛細血管画像における体液の濁り度合いを判定する濁り度合い判定手段、
前記有無判別手段の判別結果と前記濁り度合い判定手段の判定結果に基づいて、健康状態を評価する評価手段、
前記評価手段の評価結果を指定されたコンピュータ端末に送信するデータ送信手段、
として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
指先の爪上皮の血管を拡大し毛細血管画像を撮影する観測クライアントとネットワークを介して接続される観測サーバから構成されるシステムであって、
前記観測クライアントは、
指先の爪上皮の血管を拡大し毛細血管画像を撮影する観測手段と、
撮像した前記毛細血管画像を前記観測サーバに送信する画像データ送信手段と、
前記観測サーバから受信した評価データを表示する表示手段、
を備え、
前記観測サーバは、
前記観測クライアントから前記毛細血管画像を取得する画像取得手段と、
取得した前記毛細血管画像における指の長手方向(縦方向)を横切る横方向に走る乳頭下血管叢の有無について判別する有無判別手段と、
前記毛細血管画像における体液の濁り度合いを判定する濁り度合い判定手段と、
前記有無判別手段の判別結果と前記濁り度合い判定手段の判定結果に基づいて、健康状態を評価する評価手段と、
前記評価手段の評価結果を指定された前記観測クライアント端末に送信するデータ送信手段、を備えたことを特徴とする指先血管観測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指先血管画像の評価方法を分類し画像判定方法を行う指先血管観測方法、観測装置、観測サーバ、観測システム及び観測プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、サイレントキラーと呼ばれる動脈硬化をはじめとした血管の病は年々増加傾向にあり、循環器系疾患まで広げると、死亡原因第1位である癌、第2位の心筋梗塞などの心疾患、第3位の脳血管障害は全て循環器系疾患である。毎年90万人の死亡者数の内、約60万人がこの3つの生活習慣病で命を落としており、年々増加傾向にある。
このような疾患の予防には、病院で検査を受けるだけではなく、日々の生活の中での健康に対する意識を強く持つ必要があるところ、指先の毛細血管画像を撮影し、健康状態を判定するという方法が、非侵襲で被曝がないことから注目されている。
【0003】
かかる状況下、従来から、診断情報を簡易に取得することができる診断情報取得システムが知られている(特許文献1を参照)。
これは、毛細血管中を流れる血液に係る診断情報を取得する診断情報取得システムであって、毛細血管が分布する分布部位を撮像する撮像装置と、撮像手段により撮像された毛細血管の撮像画像を解析する解析装置とを備え、解析装置は、撮像画像における1つの毛細血管上の測定部位を少なくとも1つ設定する測定部位設定部と、選択された測定部位における色調を取得する色調取得部と、取得された色調の経時変化に基づいて、診断情報を取得する診断情報取得部を備えるものである。そして、指の爪上皮部分の毛細血管における色調およびその経時変化情報を取得し、得られた情報から、糖尿病、心筋梗塞及び狭心症などの生活習慣病の疾患の発症危険度を診断するものである。
しかしながら、特許文献1に開示された診断情報取得システムは、測定部位における色調の変化を基に血液の流速値を取得するものであるが、毛細血管の形状パターンから被験者の健康状態をデータ化し管理するものではなく、特に、毛細血管画像における指の長手方向(縦方向)を横切る横方向に走る乳頭下血管叢の有無について判別するものではない。
【0004】
また、指先の毛細血管画像を観測するための装置としては、倍率調整部による倍率の変更を行っても焦点がずれることがなく、簡単にズームアップを行うことができる毛細血管血流観察装置が知られている(特許文献2を参照)。
これは、指先を光で照らす照明部と、指先を拡大して撮影する光学処理撮影部とを少なくとも備え、光学処理撮影部が、鏡筒と、鏡筒の下端に設けられた対物レンズを有する倍率調整部と、鏡筒の上端に設けられたCCDを有する撮影部とで構成されており、撮影部と鏡筒との間に両者の間隔を調節する間隔調節機構が設けられているものである。特許文献2に開示された毛細血管血流観察装置は、間隔調節機構によって倍率変更を行っても焦点がずれることなく簡単にズームアップでき、毛細血管の形状パターンの画像を鮮明に取得できるものであるが、得られた毛細血管画像を解析する機構を持っていない。
【0005】
図12は、上記特許文献2の毛細血管血流観察装置の斜視図を示している。装置1は、照明部302と光学処理撮影部303とを備えている。照明部302は指先を光で照らすものである。光学処理撮影部303は指先を拡大して撮影するものである。撮影された映像は、ディスプレイ(図示せず)に表示されるようになっている。光学処理撮影部303は、基板341に立設された垂直ポール342に、支持アーム305によって、支持されている。照明部302は、取付けアーム306によって、基板341上に、取付けられている。光学処理撮影部303は、内部が空洞の鏡筒331と、対物レンズ(図示せず)を有する倍率調整部332と、CCDを有する撮影部333とで、構成されている。そして、更に、本発明の装置は、光学処理撮影部303において、鏡筒331と撮影部333との間に、両者の間隔を調節する間隔調節機構307を備えている。装置を使用する際は、指固定部309に被観察者の指先を置いて使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−302136号公報
【特許文献2】特開2005−261494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記内容に鑑みて、本発明は、指先の爪上皮の血管を拡大し撮影した毛細血管画像に関し、乳頭下血管叢の有無を判別、並びに、毛細血管画像における体液の濁り度合いを判定できる観測方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、上記課題を解決すべく、本発明の指先血管観測方法は、指先の爪上皮の毛細血管を拡大し撮影した毛細血管画像の観測方法において、毛細血管画像における指の長手方向(縦方向)を横切る横方向に走る乳頭下血管叢の有無について判別する。横切る横方向に走る乳頭下血管叢の有無を判別することにより健康状態を評価する。具体的には、横切る横方向に走る乳頭下血管叢が見られる場合は、ストレスや心臓への負担が推察される。ここで、観測に用いる画像は、カラー画像であっても、モノクロ画像であっても構わない。
【0009】
本発明の指先血管観測方法は、毛細血管画像における体液の濁り度合いを更に判定することが好ましい。体液の濁り度合いを判定することにより、健康状態を評価する。具体的には、横切る横方向に走る乳頭下血管叢が見られる場合は、代謝不良や運動不足が推察される。
【0010】
本発明の指先血管観測方法は、毛細血管画像における指の長手方向に走る血管の先端部の曲がり度合いを更に判定することが好ましい。血管の先端部の曲がり度合いを判定することにより、健康状態を評価する。具体的には、捩れが有る原因としては、主に生活習慣の乱れが推察される。
【0011】
本発明の指先血管観測装置は、指先の爪上皮の毛細血管を拡大し撮影した毛細血管画像の観測装置において、毛細血管画像における指の長手方向(縦方向)を横切る横方向に走る乳頭下血管叢の有無について判別するものである。ここで、本発明の指先血管観測装置は、毛細血管画像における体液の濁り度合いを判定する手段を更に設けたことが好ましい。また、本発明の指先血管観測装置は、毛細血管画像における指の長手方向に走る血管の先端部の曲がり度合いを判定する手段を更に設けたことが好ましい。
【0012】
本発明の指先血管観測サーバは、指先の爪上皮の毛細血管を拡大し毛細血管画像を撮影する観測装置とネットワークを介して接続される指先血管観測サーバであって、観測装置から毛細血管画像を取得する画像取得手段と、取得した毛細血管画像における指の長手方向(縦方向)を横切る横方向に走る乳頭下血管叢の有無について判別する有無判別手段と、毛細血管画像における体液の濁り度合いを判定する濁り度合い判定手段と、有無判別手段の判別結果と濁り度合い判定手段の判定結果に基づいて健康状態を評価する評価手段と、評価手段の評価結果を指定されたクライアント端末に送信するデータ送信手段を備えたものである。
【0013】
本発明のプログラムは、指先の爪上皮の毛細血管を拡大し毛細血管画像を撮影する観測装置と通信ケーブルを介して接続される指先血管観測コンピュータ、或は、観測装置とネットワークを介して接続される指先血管観測サーバコンピュータに搭載されるプログラムであって、コンピュータを下記1)〜5)として機能させるためのものである。
1)観測装置から毛細血管画像を取得する画像取得手段
2)取得した毛細血管画像における指の長手方向(縦方向)を横切る横方向に走る乳頭下血管叢の有無について判別する有無判別手段
3)毛細血管画像における体液の濁り度合いを判定する濁り度合い判定手段
4)有無判別手段の判別結果と濁り度合い判定手段の判定結果に基づいて、健康状態を評価する評価手段
5)評価手段の評価結果を指定されたクライアント端末に送信するデータ送信手段
【0014】
本発明のシステムは、指先の爪上皮の血管を拡大し毛細血管画像を撮影する観測クライアントとネットワークを介して接続される観測サーバから構成されるシステムであって、観測クライアントと観測サーバはそれぞれ以下の構成を成す。
観測クライアントは、指先の爪上皮の血管を拡大し毛細血管画像を撮影する観測手段と、撮像した毛細血管画像を観測サーバに送信する画像データ送信手段と、観測サーバから受信した評価データを表示する表示手段を備える。
一方、観測サーバは、観測クライアントから毛細血管画像を取得する画像取得手段と、取得した毛細血管画像における指の長手方向(縦方向)を横切る横方向に走る乳頭下血管叢の有無について判別する有無判別手段と、毛細血管画像における体液の濁り度合いを判定する濁り度合い判定手段と、有無判別手段の判別結果と前記濁り度合い判定手段の判定結果に基づいて、健康状態を評価する評価手段と、評価手段の評価結果を指定された前記観測クライアント端末に送信するデータ送信手段を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、指先の爪上皮の毛細血管を拡大し撮影した毛細血管画像に関し、指の長手方向(縦方向)を横切る横方向に走る乳頭下血管叢の有無を判別することにより、健康状態の評価が行えるといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1の指先血管観測を行う左手薬指の指先部分の模式図
【
図2】実施例1の指先血管観測装置の使用イメージ図
【
図4】実施例1において指先血管観測装置により撮影された画像を示し、形状につき、指の長手方向(縦方向)を横切る横方向に走る乳頭下血管叢が有る場合を示している。
【
図5】実施例1において指先血管観測装置により撮影された画像を示し、形状につき、体液の濁りが有る場合を示している。
【
図6】実施例1において指先血管観測装置により撮影された画像を示し、形状につき、指の長手方向に走る血管の先端部に捩れが有る場合を示している。
【
図7】実施例2の指先血管観測システムのシステム構成図
【
図8】実施例2の指先血管観測システムの処理フロー図
【
図10】実施例1のコンピュータと指先血管観測装置本体のハードウェア構成図
【
図11】実施例2の観測クライアントと観測サーバのハードウェア構成図
【
図12】特許文献2の毛細血管血流観察装置の斜視図
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例1】
【0018】
図1は、指先血管観測を行う左手薬指の指先部分の模式図を示している。
図1に示されるように、指先血管観測においては、左手薬指4の爪上皮8、具体的には爪と皮膚の境より少し下の位置を観測する。指先血管観測は基本的に10指全てについて観測は可能であるが、左手薬指は血管内皮細胞像のみならず広く基底部にある動静脈網を観測するために最も適しているからである。
図1に観測する血管内皮細胞3のイメージを描いている。毛細血管画像を撮影する際には、爪上皮8に専用の植物油を塗ることにより、鮮明な画像を取得する。
【0019】
図2は、実施例1の指先血管観測装置の使用イメージ図を示している。
図2に示すように、指先血管観測装置1を用いて左手薬指の指先をカメラで観測して、植物油を塗った爪上皮8の拡大画像を取得する。ここで、指先血管観測装置1は、カメラ部5を有する装置本体2、コンピュータ6及びデータ通信ケーブル7から成り、装置本体2とコンピュータ6はデータ通信ケーブル7によって接続されている。被験者はオイルを塗った左手薬指4をカメラ部5の下に挿入し撮影を行う。装置本体2は、カラー画像を撮影することができる装置であり、カメラ部5によって撮影された画像は、データ通信ケーブル7によってコンピュータ6に送られる。
【0020】
コンピュータ6と指先血管観測装置本体2のハードウェア構成を
図10に示す。コンピュータ6は、CPU24、メモリ25、ハードディスク26、キーボード27、マウス21、ディスプレイ29、光学式ドライブ22及びデータ通信部28を有している。CPU24は、ハードディスク26に記録されているオペレーティング・システム(OS)、クライアントプログラム等その他のアプリケーションに基づいた処理を行う。メモリ25は、CPU24に対して作業領域を提供する。ハードディスク26は、オペレーティング・システム(OS)、クライアントプログラム等その他のアプリケーションを記録保持する。キーボード27、マウス21は、外部からの命令を受け付ける。ディスプレイ29は、ユーザーインタフェース等の画像を表示する。光学式ドライブ22は、データ通信クライアントプログラムが記録されている光学式メディア23からアプリケーション処理プログラムを読み取り、また、他の光学式メディアからその他のアプリケーションのプログラムを読み取る等、光学式メディアからのデータの読み取りを行う。装置本体2は、データ通信部20及びカメラ5を有しており、カメラ5において取得されたデータは、データ通信部20により、データ通信ケーブル7を介してコンピュータ6へと送信される。データ通信部28は、データ通信ケーブル7を介して、装置本体2からデータを受信する。
【0021】
図3は、正常な状態の指先血管画像の一例を示している。
図3(1)及び(2)に示されるように、正常な状態の血管内皮細胞(9a,9b)の場合、横方向に走る乳頭下血管叢、体液の濁り及び長手方向に走る血管の先端部の曲がりは、ほとんど見られない。
【0022】
図4は、実施例1において指先血管観測装置により撮影された画像を示し、画像中に指の長手方向(縦方向)を横切る横方向に走る乳頭下血管叢が有る場合を示している。コンピュータ6に送られた画像は、指の長手方向(縦方向)を横切る横方向に走る乳頭下血管叢の有無について判別がなされる。判別に当たっては、乳頭下血管叢の有無だけではなく、乳頭下血管叢の血流が見えているか、乳頭下血管叢が上の方にあるか、乳頭下血管叢の太さ、色合い、本数は何本か(3本以下,4〜7本,8本以上の別)、といった要素についても判別がなされる。判別結果は、データベースと照合されて、健康状態の評価がなされる。
【0023】
図4(1)〜(4)に示されるように、撮影画像中には何れも乳頭下血管叢(10a,10b,10c,10d)が存在する。
図4(1)では、乳頭下血管叢の血流が見え辛く、乳頭下血管叢が上の方には無いと判別される。乳頭下血管叢の太さについては細く、色合いは黒く(但し、色合いは図示していない。以下、同様である。)、本数は8本以上と判別される。
図4(2)では、乳頭下血管叢の血流が見え易く、乳頭下血管叢が上の方には無いと判別される。乳頭下血管叢の太さについては太く、色合いは赤く、本数は3本以下と判別される。
図4(3)では、乳頭下血管叢の血流が見え辛く、乳頭下血管叢が上の方には有ると判別される。乳頭下血管叢の太さについては太く、色合いは赤く、本数は4〜7本と判別される。
図4(4)では、乳頭下血管叢の血流が見え易く、乳頭下血管叢が上の方には有ると判別される。乳頭下血管叢の太さについては太く、色合いは赤黒く、本数は4〜7本と判別される。
以上の如く、判別は、撮影された画像を目視にて観察し横方向に走る乳頭下血管叢の有無を判別してもよいし、或は、撮影された画像をコンピュータで画像処理を行って自動で横方向に走る乳頭下血管叢の有無を判別してもよい。
【0024】
図5は、実施例1において指先血管観測装置により撮影された画像を示し、画像中に体液の濁りが有る場合を示している。コンピュータ6に送られた画像は、体液の濁り度合いについて判定がなされる。判定に当たっては、濁り度合いの強さだけではなく、鱗状の濁りの有無といった要素についても判定がなされる。判定結果は、データベースと照合されて、健康状態の評価がなされる。
【0025】
図5(1)〜(3)に示されるように、撮影画像中には何れも体液の濁り(11a,11b,11c)が存在する。
図5(1)では、濁り度合いはやや弱く、鱗状の濁りは無いと判定される。
図5(2)では、濁り度合いは強く、鱗状の濁りは無いと判定される。
図5(3)では、濁り度合いは弱く、鱗状の濁りが有ると判定される。
なお、判定は、撮影された画像を目視にて観察し体液の濁り度合いを判定してもよいし、或は、撮影された画像をコンピュータで画像処理を行って自動で体液の濁り度合いを判定してもよい。
【0026】
図6は、実施例1において指先血管観測装置により撮影された画像を示し、画像中に指の長手方向に走る血管の先端部に曲がりが有る場合を示している。
コンピュータ6に送られた画像は、指の長手方向に走る血管の先端部の曲がり度合いについて判定がなされる。判定に当たっては、曲がり度合いだけではなく、曲がりのある血管内皮細胞の本数の割合、血管内皮細胞の先端の太さ、先端のみの細かい捩れといった要素についても判定がなされる。判定結果は、データベースと照合されて、健康状態の評価がなされる。
【0027】
図6(1)〜(3)に示されるように、撮影画像中の血管内皮細胞には何れも指の長手方向に走る血管の先端部に曲がり(12a,12b,12c)が存在する。
図6(1)では、曲がり度合いがやや強く、曲がりのある血管内皮細胞の本数の割合は高いと判定される。血管内皮細胞の先端の太さはやや太く、先端のみの細かい捩れは存在しないと判定される。
図6(2)では、曲がり度合いがやや強く、曲がりのある血管内皮細胞の本数の割合は低いと判定される。血管内皮細胞の先端の太さはやや細く、先端のみの細かい捩れはほとんど存在しないと判定される。
図6(3)では、曲がり度合いがやや強く、曲がりのある血管内皮細胞の本数の割合は高いと判定される。血管内皮細胞の先端の太さは太く、先端のみの細かい捩れは存在すると判定される。
なお、判定は、撮影された画像を目視にて観察し指の長手方向に走る血管の先端部の曲がり度合いを判定してもよいし、或は、撮影された画像をコンピュータで画像処理を行って自動で指の長手方向に走る血管の先端部の曲がり度合いを判定してもよい。
【実施例2】
【0028】
実施例2では、観測クライアントと観測サーバがネットワークで接続された指先血管観測システムが行う処理について説明する。
図7は、実施例2の指先血管観測システムのシステム構成図を示している。指先血管観察装置本体2と観測クライアント102a(PC1)及観測クライアント102b(PC2)が、それぞれ接続されている。PC1及びPC2は、観測サーバ100とネットワーク103を介して接続されている。観測クライアントによって撮影された毛細血管画像は、指先血管観察装置本体2からそれぞれ観測クライアント(PC1、或は、PC2)にデータ接続ケーブルを介してデータ伝送され、そしてネットワーク103を介して観測サーバ100に送られる。観測サーバ100には、データベース101が保存されている。
【0029】
データベース101に保存されている内容は、健康状態の経時的な変化を捉えるために、個人情報に関連して経時的に保存される毛細血管のパターンである。具体的には、血管に濁りがある場合、主な原因として、新陳代謝が悪いことが推察されるということや、横方向の血管がある場合、主な原因として、ストレスが推察されるということや、捩れがある場合、主な原因として、生活習慣が悪い、食生活が悪い、動脈圧縮などが考えられることや、血管が太い場合、食生活が悪いことが推察されることや、血管に歪みが有る場合、血清血中コレステロールが高い、食生活が悪い、肝機能低下が推察されるなど、毛細血管の状態と健康状態の関連付けられた事項であり、テキスト情報などで保存されている。
【0030】
図11は、実施例2の観測クライアントと観測サーバのハードウェア構成図を示している。
図11に示すように、観測クライアント102aは、CPU104、メモリ105、ハードディスク106、キーボード107、ネットワークI/F109、マウス111、ディスプレイ110、光学式ドライブ112及びデータ通信部108を有し、装置本体2は、データ通信部20及びカメラ5を有している。また、観測サーバ100は、CPU114、メモリ115、ハードディスク116、キーボード117、ネットワークI/F119、マウス121及びディスプレイ120を有している。CPU104は、ハードディスク106に記録されているオペレーティング・システム(OS)、クライアントプログラム等その他のアプリケーションに基づいた処理を行う。メモリ105は、CPU104に対して作業領域を提供する。ハードディスク106は、オペレーティング・システム(OS)、クライアントプログラム等その他のアプリケーションを記録保持する。キーボード107、マウス111は、外部からの命令を受け付ける。ディスプレイ110は、ユーザーインタフェース等の画像を表示する。光学式ドライブ112は、データ通信クライアントプログラムが記録されている光学式メディア113からアプリケーション処理プログラムを読み取り、また、他の光学式メディアからその他のアプリケーションのプログラムを読み取る等、光学式メディアからのデータの読み取りを行う。装置本体2は、データ通信部20及びカメラ5を有しており、カメラ5において取得されたデータは、データ通信部20により、データ通信ケーブル7を介して観測クライアント102aへと送信される。データ通信部108は、データ通信ケーブル7を介して、装置本体2からデータを受信する。ネットワークI/F109は、ネットワーク103に接続する通信回路を有しており、外部の通信機器とデータの送受信を行う。
【0031】
一方、観測サーバ100は、ハードディスク116に記録されているオペレーティング・システム(OS)、クライアントプログラム等その他のアプリケーションに基づいた処理を行う。メモリ115は、CPU114に対して作業領域を提供する。ハードディスク116は、オペレーティング・システム(OS)、クライアントプログラム等その他のアプリケーションを記録保持する。キーボード117、マウス121は、外部からの命令を受け付ける。ディスプレイ120は、ユーザーインタフェース等の画像を表示する。ネットワークI/F119は、ネットワーク103に接続する通信回路を有しており、外部の通信機器とデータの送受信を行う。
【0032】
図8は、実施例2のシステムフロー図を示している。撮影された毛細血管画像は装置本体2からPC1へと送られ、PC1は毛細血管画像を取得する(S101)。PC1から観測サーバ100へデータが送信され(S102)、観測サーバはデータを受信する(S103)。データを受信した観測サーバ100は、指の長手方向(縦方向)を横切る横方向に走る乳頭下血管叢の有無を判別する(S104)。次に、体液の濁り度合いを判定する(S105)。さらに、指の長手方向に走る血管の先端部の曲がり度合いを判定する(S106)。観測サーバ100に保存されたデータベースとの照合がなされる(S107)。計測されたデータについて観測サーバ100に保存されたデータベースとの照合結果を元に健康状態の判別がなされ(S108)、観測サーバ100からPC1へとデータが送信される(S109)。PC1は観測サーバ100から送られるデータを受信し(S110)、受信した判別結果がPC1の画面上に表示される(S111)。
【0033】
図9は、実施例2の観測サーバの機能ブロック図を示している。観測サーバ100は、観測クライアントから毛細血管画像を取得する画像取得手段201、取得した毛細血管画像における指の長手方向(縦方向)を横切る横方向に走る乳頭下血管叢の有無について判別する乳頭下血管叢の有無判別手段202、毛細血管画像における体液の濁り度合いを判定する濁り度合い判定手段203、有無判別手段の判別結果と濁り度合い判定手段の判定結果に基づいて健康状態を評価する健康状態評価手段204、評価手段の評価結果を指定された端末に送信するデータ送信手段205を備えている。
【0034】
画像取得手段201において取得された画像は、乳頭下血管叢の有無判別手段202による判別のみで健康状態評価手段204へと移行する場合だけではなく、乳頭下血管叢の有無判別手段202による判別を行った後に、濁り度合い判定手段203による判定を行った上で、健康状態評価手段204へと移行する場合、さらには、濁り度合い判定手段203による判定のみを行い、健康状態評価手段204へと移行する場合も存在する。
健康状態評価手段204において健康状態が評価されるとデータ送信手段205により指定された観測クライアントへデータが送信される。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、指先血管画像を用いた健康管理の判別装置として有用である。
【符号の説明】
【0036】
1 指先血管観測装置
2 装置本体
3,9a,9b 血管内皮細胞
4 左手薬指
5 カメラ部
6 コンピュータ
7 データ通信ケーブル
8 爪上皮
10a,10b,10c,10d 乳頭下血管叢
11a,11b,11c 濁り
12a,12b,12c 曲がり
20,28 108データ通信部
21,111,121 マウス
22,112 光学式ドライブ
23,113 光学式メディア
24,104,114 CPU
25,105,115 メモリ
26,106,116 ハードディスク
27,107,117 キーボード
29,110,120 ディスプレイ 100 観測サーバ
101 データベース
102a,102b 観測クライアント
103 ネットワーク
109,119 ネットワークI/F
201 画像取得手段
202 乳頭下血管層の有無判別手段
203 濁り度合い判定手段
204 健康状態評価手段
205 データ送信手段