(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、不特定多数の人が利用する屋内施設等に、室内の空調と共に分煙を行う給排気システムを設け、非喫煙者が喫煙者のタバコの煙を吸う受動喫煙を防止している(例えば、下記特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1の給排気システムは、複数の遊技台が表裏にそれぞれ複数取り付けられてなる複数の島が、並列に配列されたパチンコ店に設けられ、給排気装置と、給気ダクトと、給気ファンと、排気ダクトと、排気ファンと、外気用給気ダクトと、外気用給気ファンと、空調機とを備えている。
【0004】
給排気装置は、各島の間の中程の領域に複数設けられ、真下に空気を吹き出す給気口と、該給気口を挟むように設けられて両側の島付近の空気を吸い込む一対の排気口とをそれぞれ有している。各給気口には、各島の長手方向の外側の外側領域において開口する給気ダクトの他端が接続されている。一方、各排気口には、一端が屋外で開口する排気ダクトの他端が接続されている。外気用給気ダクトは、外気用給気ファンによって屋外の新鮮な空気を外側領域に導くように設けられ、空調機は、外側領域の新鮮な空気を吸い込んで温度調節して各島とその反対側の壁とに向かって吹き出すように設けられている。
【0005】
上記給排気システムでは、外気用給気ダクトを介して外側領域に取り込まれて空調機において温度調節された新鮮な空気が、給気ファンによって給気ダクトを介して各給気口に導かれ、各給気口から鉛直下方に向かって吹き出される。一方、各島付近の空気は、排気ファンによって排気口に吸い込まれる。このような給排気により、各島の間には、中程の領域において各給気口から鉛直下方に向かい、床に当接して両側の島に沿って上昇する空気流れが形成される。各島付近で発生したタバコの煙は、この空気流れと共に各排気口に吸い込まれて屋外へ排出される。このように、上記給排気システムでは、タバコの煙を空気流れと共に速やかに上昇させて排出することで、非喫煙者が着座する領域に煙が侵入しないように分煙している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記給排気システムでは、タバコの煙が空気流れと共に上昇する際に、隣席の非喫煙者に降り掛かるおそれがあった。また、タバコの煙を全て排気口に吸い込ませることは不可能であるため、外側領域に至ったタバコの煙が、給気ダクトや空調機を介して各島が配列された領域に吹き出されて非喫煙者に降り掛かるおそれもあった。つまり、上記給排気システムでは、分煙の精度が低く、受動喫煙を防止できなかった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、不特定多数の人が利用する屋内施設等において、分煙の精度を向上させて受動喫煙を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、室内の空調を行うと共に該室内を禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)とに分煙する分煙空調システムであって、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う第1冷媒回路を有し、該第1冷媒回路に接続された第1利用側熱交換器を有する第1利用側ユニット(11)が屋内に設けられ、上記禁煙ゾーン(Z1)の空調を行う禁煙側空調装置(10)と、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う第2冷媒回路を有し、該第2冷媒回路に接続された第2利用側熱交換器を有する第2利用側ユニット(21)が屋内に設けられ、上記禁煙ゾーン(Z1)の空調を行う喫煙側空調装置(20)と、
上記禁煙ゾーン(Z1)と上記喫煙ゾーン(Z2)との境界(70)において、該禁煙ゾーン(Z1)側から上記喫煙ゾーン(Z2)側へ空気流れが形成されるように、上記禁煙ゾーン(Z1)内の圧力を上記喫煙ゾーン(Z2)内の圧力よりも高くする圧力調整機構とを備え、上記圧力調整機構は、
平面視において上記喫煙ゾーン(Z2)
を上記境界(70)に直交する面で区分した複数の排気ゾーン(Z21〜Z27)のそれぞれに1つずつ設けられ、各排気ゾーン(Z21〜Z27)において開口する複数の排気口(31)と、該複数の排気口(31)と室外とを
それぞれ繋ぐ
複数の排気ダクト(33)と、該
複数の排気ダクト(33)
のそれぞれに
1つずつ設けられた
複数の排気ファン(32)とを有し、該
複数の排気ファン(32)によって上記喫煙ゾーン(Z2)の空気を室外へ排出する排気機構(30)を備え、上記複数の排気口(31)は、
平面視において上記境界(70)に平行
な一直線上に配列されている。
【0010】
第1の発明では、室内の禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)との空調が別個の空調装置(10,20)を用いて個別に行われる。つまり、禁煙ゾーン(Z1)の空気と喫煙ゾーン(Z2)の空気とが空調装置を介して混ざることがない。また、圧力調整機構により、禁煙ゾーン(Z1)内の圧力が喫煙ゾーン(Z2)内の圧力よりも高くなるため、禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)との境界(70)(以下、単にゾーン境界(70)と称する。)では、禁煙ゾーン(Z1)側から喫煙ゾーン(Z2)側へ空気流れが形成される。その結果、喫煙ゾーン(Z2)で発生したタバコの煙が、ゾーン境界(70)の開口部を介して禁煙ゾーン(Z1)に侵入することがない。そのため、禁煙ゾーン(Z1)にいる非喫煙者にタバコの煙が降り掛かるおそれがない。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、
上記境界(70)には、垂れ壁(71)が形成されている。
【0012】
ところで、分煙を確実に行うためには、禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)との圧力差によってゾーン境界(70)において生じる空気流れの風速を所定風速以上とする必要がある。所定風速以上の風速を確保するためには、圧力調整機構によって禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)との圧力差を大きくしなければならず、消費エネルギーが増大してしまう。
【0013】
第2の発明では、ゾーン境界(70)に垂れ壁(71)が形成されているため、ゾーン境界(70)の開口面積が小さくなる。これにより、禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)との圧力差が同等である場合、垂れ壁(71)を形成しないものに比べて、ゾーン境界(70)における空気流れの風速が速くなる。
【0014】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記喫煙側空調装置(20)は、上記喫煙ゾーン(Z2)の天井に設けられた上記第2利用側ユニット(21)を複数有し、上記喫煙ゾーン(Z2)における
上記境界(70)の近傍に設けられた上記第2利用側ユニット(21)は、吹き出し空気が上記境界(70)の開口部に至らないように設けられている。
【0015】
第3の発明では、喫煙ゾーン(Z2)のゾーン境界(70)近傍に第2利用側ユニット(21)が設けられていても、吹き出し空気が境界(70)の開口部に至らないため、喫煙ゾーン(Z2)に侵入しない。
【0016】
第4の発明は、第3の発明において、上記境界(70)には什器(2)が設けられ、上記喫煙ゾーン(Z2)における上記境界(70)の近傍に設けられた上記第2利用側ユニット(21)は、上記境界(70)に向かって吹き出される空気が上記什器(2)に当たるような風向又は設置位置になっている。
【0017】
第4の発明では、喫煙ゾーン(Z2)のゾーン境界(70)近傍に第2利用側ユニット(21)が設けられていても、ゾーン境界(70)に向かって吹き出される空気は、ゾーン境界(70)に設けられた什器(2)に当たるため、ゾーン境界(70)の開口部に至らず、喫煙ゾーン(Z2)に侵入しない。
【0018】
第5の発明は、第1乃至第4のいずれか1つの発明において、
上記圧力調整機構は、上記各排気ゾーン(Z21〜Z27)における排気風量が、上記境界(70)における上記各排気ゾーン(Z21〜Z27)の開口面積の比率に応じた風量になるように上記各排気ファン(32)を制御するように構成されている。
【0019】
第6の発明は、第1乃至第5のいずれか1つの発明において、上記複数の排気口(31)は、上記喫煙ゾーン(72)の上記境界(70)に直交する方向の中央部において、該境界(70)に平行な方向に配列されている。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明によれば、室内の禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)との空調を別個の空調装置(10,20)を用いて個別に行うこととした。そのため、喫煙ゾーン(Z2)で発生したタバコの煙が空調装置を介して禁煙ゾーンに侵入することを阻止することができる。また、禁煙ゾーン(Z1)内の圧力を喫煙ゾーン(Z2)内の圧力よりも高くする圧力調整機構を設けたため、ゾーン境界(70)において禁煙ゾーン(Z1)側から喫煙ゾーン(Z2)側へ向かう空気流れを形成することができる。これにより、喫煙ゾーン(Z2)で発生したタバコの煙がゾーン境界(70)の開口部を介して禁煙ゾーン(Z1)へ侵入することを阻止することができる。このように2つの空調装置(10,20)と圧力調整機構とを設けて禁煙ゾーン(Z1)内の圧力を喫煙ゾーン(Z2)内の圧力よりも高くするだけで、2つのゾーン(Z1,Z2)を壁等によって完全に分断することなく、室内における分煙の精度を向上させることができる。従って、禁煙ゾーン(Z1)にいる非喫煙者にタバコの煙が降り掛かるおそれがなく、受動喫煙を防止することができる。
【0021】
また、第2の発明によれば、ゾーン境界(70)に垂れ壁を形成して、ゾーン境界(70)の開口面積を小さくしたため、圧力調整機構によって禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)との圧力差を大きくしなくても、ゾーン境界(70)における空気流れの風速を、分煙可能な風速にすることができる。従って、消費エネルギーを低減することができる。
【0022】
また、第3の発明によれば、喫煙ゾーン(Z2)のゾーン境界(70)近傍に、吹き出し空気がゾーン境界(70)の開口部に至らないように第2利用側ユニット(21)を設けることにより、喫煙ゾーン(Z2)において吹き出される空気の禁煙ゾーン(Z1)への侵入を阻止することができる。従って、喫煙ゾーン(Z2)のゾーン境界(70)近傍に第2利用側ユニット(21)を設けても、分煙の精度の低下を防止することができる。
【0023】
また、第4の発明によれば、喫煙ゾーン(Z2)のゾーン境界(70)近傍に、ゾーン境界(70)に向かって吹き出される空気が、ゾーン境界(70)に設けられた什器(2)に当たるように第2利用側ユニット(21)を設けることにより、喫煙ゾーン(Z2)においてゾーン境界(70)に向かって吹き出される空気の禁煙ゾーン(Z1)への侵入を阻止することができる。従って、喫煙ゾーン(Z2)のゾーン境界(70)近傍に第2利用側ユニット(21)を設けても、分煙の精度の低下を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の分煙空調システム(1)は、室内の空調を行うと共に、室内を禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)とに分煙するものである。本実施形態では、分煙空調システム(1)は、パチンコ台等の遊技台が複数台ずつ表裏にそれぞれ取り付けられた複数の什器(2)が並列に配列された遊戯室内に設けられている。什器(2)は、禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)とにそれぞれ設置されると共に、禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)との境界(70)(以下、単にゾーン境界(70)と称する。)にも設置されている。また、本実施形態では、複数の什器(2)は、平面視において長方形状となる直方体状に構成され、長手方向がゾーン境界(70)に平行な方向となるように配置されている。
【0027】
分煙空調システム(1)は、第1空調装置(禁煙側空調装置)(10)と、第2空調装置(喫煙側空調装置)(20)と、排気機構(30)と、第1外気導入機構(40)と、第2外気導入機構(50)と、制御部(60)とを備えている。
【0028】
第1空調装置(10)は、冷媒が循環して蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う第1冷媒回路(図示省略)を有し、禁煙ゾーン(Z1)側の空調を行う。具体的には、第1空調装置(10)は、第1熱源側ユニット(図示省略)と、複数の第1利用側ユニット(11)とを備えている。図示を省略するが、第1熱源側ユニットは、屋外に設置され、上記第1冷媒回路に接続された第1圧縮機、第1室外熱交換器、第1膨張機構等を有している。一方、複数の第1利用側ユニット(11)は、遊戯室の禁煙ゾーン(Z1)の天井に埋め込まれて設置される天井埋め込み型に構成され、図示を省略するが、上記第1冷媒回路に接続された第1室内熱交換器(第1利用側熱交換器)と、第1室内ファンとを有している。
【0029】
第1利用側ユニット(11)は、禁煙ゾーン(Z1)においてゾーン境界(70)に平行に配列されている。本実施形態では、ゾーン境界(70)に平行な3つの第1利用側ユニット(11)の列が2列設けられている。各第1利用側ユニット(11)は、第1室内ファンの駆動により、禁煙ゾーン(Z1)内の空気を吸い込み、第1利用側熱交換器において所望の温度に調節した後、禁煙ゾーン(Z1)へ吹き出すように構成されている。また、各第1利用側ユニット(11)は、矩形を形成するように配置された4つの吹出口を有し、4つの方向に調和空気を吹き出す所謂4方吹き型に構成されている。4つの吹出口には、揺動可能に構成された吹き出し羽根がそれぞれ設けられている。また、各第1利用側ユニット(11)は、吹き出し羽根の角度を調節することによって、吹き出し空気の風向が変更されるように構成されている。
【0030】
一方、第2空調装置(20)は、冷媒が循環して蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う第2冷媒回路(図示省略)を有し、喫煙ゾーン(Z2)側の空調を行う。具体的には、第2空調装置(20)は、第2熱源側ユニット(図示省略)と、複数の第2利用側ユニット(21)とを備えている。図示を省略するが、第2熱源側ユニットは、屋外に設置され、上記第2冷媒回路に接続された第2圧縮機、第2室外熱交換器、第2膨張機構等を有している。一方、複数の第2利用側ユニット(21)は、遊戯室の喫煙ゾーン(Z2)の天井に埋め込まれて設置される天井埋め込み型に構成され、図示を省略するが、上記第2冷媒回路に接続された第2室内熱交換器(第2利用側熱交換器)と、第2室内ファンとを有している。
【0031】
第2利用側ユニット(21)は、喫煙ゾーン(Z2)においてゾーン境界(70)に平行に配列されている。本実施形態では、ゾーン境界(70)に平行な3つの第2利用側ユニット(21)の列が2列設けられている。各第2利用側ユニット(21)は、第2室内ファンの駆動により、喫煙ゾーン(Z2)内の空気を吸い込み、第2利用側熱交換器において所望の温度に調節した後、喫煙ゾーン(Z2)へ吹き出すように構成されている。また、各第2利用側ユニット(21)は、矩形を形成するように配置された4つの吹出口を有し、4つの方向に調和空気を吹き出す所謂4方吹き型に構成されている。4つの吹出口には、揺動可能に構成された吹き出し羽根がそれぞれ設けられている。また、各第2利用側ユニット(21)は、吹き出し羽根の角度を調節することによって、吹き出し空気の風向が変更されるように構成されている。
【0032】
また、複数の第2利用側ユニット(21)のうちのゾーン境界(70)の近傍に設けられた3つの第2利用側ユニット(21)は、ゾーン境界(70)側への吹き出し空気の風向範囲(本実施形態では、吹き出し羽根の揺動範囲)が、ゾーン境界(70)に設置された什器(2)に当たるような範囲となるように設定されている。これにより、例えば、
図2に示すように、ゾーン境界(70)の近傍に設けられた3つの第2利用側ユニット(21)において、吹き出し空気の風向が比較的上向きである場合、ゾーン境界(70)側への吹き出し空気の風向は、逆側への吹き出し空気の風向よりも下向きになる。これにより、ゾーン境界(70)側への吹き出し空気が什器(2)に当たる。
【0033】
排気機構(30)は、
図2及び
図3に示すように、複数の排気口(31)と、複数の排気ファン(32)と、複数の排気ダクト(33)とを有している。本実施形態では、排気口(31)、排気ファン(32)及び排気ダクト(33)は、それぞれ7つずつ設けられている。
【0034】
7つの排気口(31)は、喫煙ゾーン(Z2)の天井に設けられている。
図4及び
図5に示すように、7つの排気口(31)は、喫煙ゾーン(Z2)をゾーン境界(70)に直交する面で区分した7つの排気ゾーン(Z21〜Z27)のそれぞれに1つずつ設けられている。また、
図4に示すように、7つの排気口(31)は、ゾーン境界(70)に直交する方向を幅方向とすると、各排気ゾーン(Z21〜Z27)の幅方向の中央部に設けられ、ゾーン境界(70)に平行に配列されている。
図2及び
図3に示すように、各排気口(31)には、それぞれ一端が屋外において開口する排気ダクト(33)の他端が接続されている。また、各排気ダクト(33)には、1つずつ排気ファン(32)が設けられている。このような構成により、各排気ファン(32)が駆動されると、各排気口(31)を介して喫煙ゾーン(Z2)内の空気が各排気ダクト(33)に取り込まれ、屋外へ排出される。
【0035】
第1外気導入機構(40)は、本実施形態では、外気導入口(41)と、吸気ファン(42)とを有している。外気導入口(41)は、禁煙ゾーン(Z1)の外壁部分に形成され、吸気ファン(42)は、屋外から吸い込んだ外気を、外気導入口(41)を介して禁煙ゾーン(Z1)へ押し込むように設けられている。
【0036】
第2外気導入機構(50)は、本実施形態では、喫煙ゾーン(Z2)の外壁部分に形成され、屋外に開口する外気導入口(51)によって構成されている。
【0037】
また、ゾーン境界(70)には、垂れ壁(71)が設けられている。本実施形態では、天井高が3.5m程度であり、垂れ壁(71)は1m程度の長さに形成されている。また、各什器(2)は、2m程度の高さに形成されている。そのため、ゾーン境界(70)では、什器(2)が設置された部分では、開口部の高さが1.5m程度となり、什器(2)が設置されていない部分では、開口部の高さが3.5m程度となる。
【0038】
制御部(60)は、複数の排気ファン(32)と吸気ファン(42)とを制御するように構成されている。具体的には、制御部(60)は、禁煙ゾーン(Z1)内の圧力が喫煙ゾーン(Z2)内の圧力よりも高くなるように、複数の排気ファン(32)と吸気ファン(42)とを制御する。さらに、制御部(60)は、各排気ゾーン(Z21〜Z27)における排気風量が、ゾーン境界(70)における各排気ゾーン(Z21〜Z27)の開口面積(什器(2)と垂れ壁(71)を除く開口部の面積)の比率に応じた風量となるように各排気ファン(32)を制御する。つまり、制御部は、各排気ゾーン(Z21〜Z27)間における排気風量比が開口面積比に等しくなるように、各排気ファン(32)の風量を制御している。
【0039】
具体的には、
図5に示すように、各排気ゾーン(Z21〜Z27)のゾーン境界(70)における開口面積をS1〜S7、ゾーン境界(70)の全体の開口面積をS、各排気ゾーン(Z21〜Z27)に対応する排気ファン(32)の風量をQ1〜Q7、全体の風量をQとすると、例えば、排気ゾーン(Z21)では、全体の風量Qに対する排気ファン(32)の風量Q1の比率が、全体の開口面積Sに対する開口面積S1の比率と等しくなる(Q:Q1=S:S1となる)ように、排気ファン(32)の風量が制御される。また、その他の排気ゾーン(Z22〜Z27)に対応する排気ファン(32)の風量も同様に制御される。
【0040】
詳細については後述するが、排気機構(30)と第1外気導入機構(40)と第2外気導入機構(50)と制御部(60)とは、禁煙ゾーン(Z1)内の圧力を喫煙ゾーン(Z2)内の圧力よりも高くする圧力調整機構を構成する。
【0041】
−動作−
第1空調装置(10)及び第2空調装置(20)により、室内の空気温度が所望の温度に調節される。具体的には、第1空調装置(10)は、禁煙ゾーン(Z1)の空気を各第1利用側ユニット(11)に吸い込み、所望の温度に調節して禁煙ゾーン(Z1)に吹き出す。一方、第2空調装置(20)は、喫煙ゾーン(Z2)の空気を各第2利用側ユニット(21)に吸い込み、所望の温度に調節して喫煙ゾーン(Z2)に吹き出す。このように第1空調装置(10)が禁煙ゾーン(Z1)の空調を行う一方、第2空調装置(20)が喫煙ゾーン(Z2)の空調を行うことによって室内の空気温度が所望の温度に調節される。
【0042】
また、圧力調整機構を構成する排気機構(30)と第1外気導入機構(40)と第2外気導入機構(50)と制御部(60)とによって、室内の換気が行われると共に、禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)とが分煙される。
【0043】
具体的には、排気機構(30)の排気ファン(32)が駆動されると、喫煙ゾーン(Z2)の空気が複数の排気口(31)を介して排気ダクト(33)に取り込まれて屋外へ排出される。このとき、喫煙ゾーン(Z2)で発生したタバコの煙が喫煙ゾーン(Z2)の空気と共に屋外へ排出される。排気機構(30)によって喫煙ゾーン(Z2)の空気が排出されると、喫煙ゾーン(Z2)内の圧力が屋外よりも低くなるため、第2外気導入機構(50)を構成する外気導入口(51)から外気が喫煙ゾーン(Z2)に流入する。このように、喫煙ゾーン(Z2)の空気が排気機構(30)によって排出される一方、第2外気導入機構(50)によって外気が導入されることにより、喫煙ゾーン(Z2)の換気が行われる。
【0044】
一方、第1外気導入機構(40)の吸気ファン(42)が駆動されると、外気導入口(41)を介して外気が禁煙ゾーン(Z1)に押し込まれる。これにより、禁煙ゾーン(Z1)内の圧力が屋外よりも高くなる。このように、第1外気導入機構(40)によって禁煙ゾーン(Z1)内の圧力が屋外よりも高くなる一方、排気機構(30)によって喫煙ゾーン(Z2)内の圧力が屋外よりも低くなることにより、禁煙ゾーン(Z1)内の圧力が喫煙ゾーン(Z2)内の圧力よりも高くなる。その結果、ゾーン境界(70)では、禁煙ゾーン(Z1)側から喫煙ゾーン(Z2)側へ空気流れが形成される。この空気流れにより、喫煙ゾーン(Z2)で発生したタバコの煙がゾーン境界(70)の開口部を介して禁煙ゾーン(Z1)へ侵入することが阻止される。つまり、禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)とが分煙される。
【0045】
ところで、本実施形態では、複数の排気口(31)は、ゾーン境界(70)に直交する方向を幅方向とすると、喫煙ゾーン(Z2)の天井の幅方向の中央部に設けられている。そのため、喫煙ゾーン(Z2)では、複数の排気口(31)の幅方向の両側の空気が均等に排気口(31)に吸い込まれて室外へ排出される。これにより、喫煙ゾーン(Z2)内が満遍なく換気される。
【0046】
また、本実施形態では、複数の排気口(31)が、ゾーン境界(70)に平行に配列されている。つまり、複数の排気口(31)は、ゾーン境界(70)との距離が等しくなるように配列されている。そして、制御部(60)により、各排気ファン(32)の風量が、各排気ゾーン(Z21〜Z27)における排気風量が、ゾーン境界(70)における各排気ゾーン(Z21〜Z27)の開口面積(開口部の面積)の比率に応じた風量となるように制御される。その結果、本実施形態では、禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)との圧力差によってゾーン境界(70)において生じる空気流れの風速が、該ゾーン境界(70)の開口部において均一になる。つまり、本実施形態では、ゾーン境界(70)に形成される一様な風速の空気流れによって禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)とが分煙される。
【0047】
−実施形態の効果−
本分煙空調システム(1)によれば、室内の禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)との空調を別個の空調装置(第1空調装置(10)及び第2空調装置(20))を用いて個別に行うこととした。そのため、喫煙ゾーン(Z2)で発生したタバコの煙が空調装置を介して禁煙ゾーン(Z1)に侵入することを阻止することができる。また、禁煙ゾーン(Z1)内の圧力を喫煙ゾーン(Z2)内の圧力よりも高くする圧力調整機構を設けたため、ゾーン境界(70)において禁煙ゾーン(Z1)側から喫煙ゾーン(Z2)側へ向かう空気流れを形成することができる。これにより、喫煙ゾーン(Z2)で発生したタバコの煙がゾーン境界(70)の開口部を介して禁煙ゾーン(Z1)へ侵入することを阻止することができる。このように2つの空調装置(10,20)と圧力調整機構とを設けて禁煙ゾーン(Z1)内の圧力を喫煙ゾーン(Z2)内の圧力よりも高くするだけで、2つのゾーン(Z1,Z2)を壁等によって完全に分断することなく、室内における分煙の精度を向上させることができる。従って、禁煙ゾーン(Z1)にいる非喫煙者にタバコの煙が降り掛かるおそれがなく、受動喫煙を防止することができる。
【0048】
ところで、分煙を確実に行うためには、禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)との圧力差によってゾーン境界(70)において生じる空気流れの風速を、所定風速以上とする必要がある。所定風速以上の風速を確保するためには、圧力調整機構によって禁煙ゾーン(Z1)の外気導入量を増大させて禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)との圧力差を大きくしなければならず、消費エネルギーが増大してしまう。
【0049】
これに対し、本分煙空調システム(1)では、ゾーン境界(70)に垂れ壁(71)を形成して、ゾーン境界(70)の開口面積を小さくした。そのため、禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)との圧力差が同等である場合、垂れ壁(71)を形成しないものに比べて、ゾーン境界(70)における空気流れの風速が速くなる。言い換えると、圧力調整機構によって禁煙ゾーン(Z1)への外気導入量を増大させて禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)との圧力差を大きくしなくても、ゾーン境界(70)における空気流れの風速を、分煙可能な風速にすることができる。従って、消費エネルギーを低減することができる。
【0050】
また、本分煙空調システム(1)によれば、ゾーン境界(70)に什器(2)を設けて、ゾーン境界(70)の開口面積を小さくしている。そのため、圧力調整機構によって禁煙ゾーン(Z1)への外気導入量を増大させて禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)との圧力差を大きくしなくても、ゾーン境界(70)における空気流れの風速を、分煙可能な風速にすることができる。従って、消費エネルギーを低減することができる。
【0051】
また、本分煙空調システム(1)では、喫煙ゾーン(Z2)のゾーン境界(70)近傍には、ゾーン境界(70)に向かって吹き出される空気が、ゾーン境界(70)に設けられた什器(2)に当たるように第2利用側ユニット(21)を設けることとした。これにより、喫煙ゾーン(Z2)のゾーン境界(70)近傍に第2利用側ユニット(21)が設けられていても、ゾーン境界(70)に向かって吹き出される空気は、ゾーン境界(70)の開口部に至らない。よって、喫煙ゾーン(Z2)においてゾーン境界(70)に向かって吹き出される空気の禁煙ゾーン(Z1)への侵入を阻止することができる。従って、喫煙ゾーン(Z2)のゾーン境界(70)近傍に第2利用側ユニット(21)を設けても、分煙の精度の低下を防止することができる。
【0052】
また、本分煙空調システム(1)では、禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)との圧力差によってゾーン境界(70)において生じる空気流れの風速が該ゾーン境界(70)の開口部において均一になるように、圧力調整機構を構成している。具体的には、複数の排気口(31)を、喫煙ゾーン(Z2)をゾーン境界(70)に直交する面で区分した7つの排気ゾーン(Z21〜Z27)のそれぞれに1つずつ設け、ゾーン境界(70)に平行に配列している。そして、各排気ゾーン(Z21〜Z27)における排気風量がゾーン境界(70)における各排気ゾーン(Z21〜Z27)の開口面積(開口部の面積)の比率に応じた風量となるように、各排気ファン(32)の風量を制御部(60)によって制御することとしている。
【0053】
ここで、ゾーン境界(70)における空気流れの風速が均一でない場合、風速の遅い箇所においても分煙が実現可能となるように、禁煙ゾーン(Z1)への外気導入量を多くして禁煙ゾーン(Z1)と喫煙ゾーン(Z2)との圧力差をある程度大きくしなければならず、消費エネルギーが増大してしまう。
【0054】
これに対し、本分煙空調システム(1)では、上述のように、ゾーン境界(70)における空気流れの風速を均一にすることとしている。そのため、ゾーン境界(70)に分煙が実現可能な最小限の風速となる空気流れを形成すればよく、ゾーン境界(70)における空気流れの風速が均一でない場合に比べて、禁煙ゾーン(Z1)への外気導入量を低減することができる。よって、消費エネルギーを増大させることなく効率よく分煙を行うことができる。
【0055】
また、本分煙空調システム(1)によれば、各排気口(31)がゾーン境界(70)に直交する幅方向の中央部に設けられている。これにより、喫煙ゾーン(Z2)において、複数の排気口(31)の幅方向の両側の空気が均等に排気口(31)に吸い込まれて室外へ排出される。従って、喫煙ゾーン(Z2)内を満遍なく換気することができる。
【0056】
また、本分煙空調システム(1)によれば、複数の什器(2)が、平面視において長方形状となる直方体状に構成され、長手方向がゾーン境界(70)に平行な方向となるように配置されている。これにより、ゾーン境界(70)では、少ない数の什器(2)で開口面積を小さくすることができる。つまり、複数の什器(2)を、長手方向がゾーン境界(70)に垂直な方向となるように配置することとすると、1つの什器(2)によるゾーン境界(70)の閉塞面積が小さくなるため、より多くの什器(2)をゾーン境界(70)に配置しなければならなくなる。しかし、上述のように、複数の什器(2)を、長手方向がゾーン境界(70)に平行な方向となるように配置することにより、1つの什器(2)によるゾーン境界(70)の閉塞面積が大きくなるため、少ない数の什器(2)で開口面積を小さくすることができる。その結果、少ない数の什器(2)で効率よくゾーン境界(70)における空気流れの風速を上げることができる。つまり、什器(2)の形状を利用してゾーン境界(70)における空気流れの風速を効果的に上げることができる。
【0057】
《その他の実施形態》
上記実施形態では、ゾーン境界(70)の近傍に設けられた3つの第2利用側ユニット(21)は、ゾーン境界(70)側への吹き出し空気の風向範囲が、ゾーン境界(70)に設置された什器(2)に当たるような範囲となるように設定されていた。しかし、上記3つの第2利用側ユニット(21)は、ゾーン境界(70)側への吹き出し空気の風向範囲を特別に設定することなく、通常の風向範囲においてゾーン境界(70)側への吹き出し空気が什器(2)に当たるような位置に設置されていてもよい。このように上記3つの第2利用側ユニット(21)を設置することによっても、喫煙ゾーン(Z2)においてゾーン境界(70)に向かって吹き出される空気の禁煙ゾーン(Z1)への侵入を阻止することができる。
【0058】
また、上記実施形態において、各排気ゾーン(Z21〜Z27)のゾーン境界(70)における開口面積が等しくなるようにゾーン境界(70)を形成することとしてもよい。このような場合、複数の排気ファン(32)の間において風量を変更することなく、ゾーン境界(70)における空気流れの風速を均一にすることができる。
【0059】
さらに、例えば、各排気ダクト(33)が、各排気口(31)から7つの排気口(31)の配列方向の片側(例えば、
図1の上側)に向かって延び、屋外において開口しているような場合には、各排気ダクト(33)の長さが異なる。このような場合には、制御部(60)によって、各排気ファン(32)を、各排気ダクト(33)の長さの比率に応じた風量となるように制御することとしてもよい。これにより、各排気ダクト(33)の長さが異なるために、圧力損失が排気ダクト(33)毎に異なるところ、各排気口(31)における排気風量が等しくなる。よって、ゾーン境界(70)において生じる空気流れの風速を均一にすることができる。
【0060】
また、上記実施形態では、複数の排気口(31)は、ゾーン境界(70)に平行に配列され、ゾーン境界(70)との距離が互いに等しくなるように設けられていた。しかし、複数の排気口(31)は、ゾーン境界(70)に平行に配列されていなくてもよい。このような場合、例えば、各排気ゾーン(Z21〜Z27)における排気風量を、各排気ゾーン(Z21〜Z27)における排気口(31)とゾーン境界(70)との距離の比率に応じた風量となるように、各排気ファン(32)の風量を制御することとすれば、ゾーン境界(70)において生じる空気流れの風速を均一にすることができる。
【0061】
また、上記実施形態では、各排気口(31)は、ゾーン境界(70)に直交する幅方向の中央部に設けられていたが、中央部以外の箇所に設けられていてももちろんよい。
【0062】
また、圧力調整機構は、禁煙ゾーン(Z1)内の圧力を喫煙ゾーン(Z2)内の圧力よりも高くすることができる構成であれば、上記実施形態のものに限られない。
【0063】
また、上記実施形態では、第1及び第2利用側ユニット(11,21)は、4つの方向に調和空気を吹き出す所謂4方吹き型に構成されていた。しかしながら、第1及び第2利用側ユニット(11,21)の構成は、4方吹き型に限られない。第1及び第2利用側ユニット(11,21)は、例えば、2つの方向に調和空気を吹き出す所謂2方吹き型のものであってもよく、1つの方向に調和空気を吹き出す所謂1方吹き型のものであってもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、第1及び第2利用側ユニット(11,21)は、天井に埋め込まれて設置される天井埋め込み型に構成されていた。しかしながら、第1及び第2利用側ユニット(11,21)の構成は、天井埋め込み型に限られない。第1及び第2利用側ユニット(11,21)は、例えば、天井から吊り下げられる所謂天井吊り下げ型のものであってもよく、床上に設置される所謂床置き型のものであってもよい。また、第1及び第2利用側ユニット(11,21)は、屋内の室内に面さない箇所に設置され、ダクトを介して室内に調和空気を供給するように構成された所謂ダクト型のものであってもよい。
【0065】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。