(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
移動体に設けられた移動端末から送信される、前記移動端末の位置を標定するための無線信号である位置標定信号を受信する、第1のアンテナ対と第2のアンテナ対とを備え、
前記第1のアンテナ対と前記第2のアンテナ対は、前記第1のアンテナ対の各アンテナによって受信される前記位置標定信号の経路差と前記第2のアンテナ対の各アンテナによって受信される前記位置標定信号の経路差とが一致するように設けられ、
前記第1のアンテナ対の各アンテナ又は前記第2のアンテナ対の各アンテナによって受信される前記位置標定信号の位相差Δθに基づき前記移動端末が存在する方向を求め、求めた前記方向に基づき前記移動体の位置を求める、位置標定部と、
前記第1のアンテナ対の各アンテナによって受信される前記位置標定信号の位相差Δθ1を求める、第1位相差測定部と、
前記第2のアンテナ対の各アンテナによって受信される前記位置標定信号の位相差Δθ2を求める、第2位相差測定部と、
前記移動端末がある位置から送信した前記位置標定信号について測定した前記位相差Δθ1と前記移動端末が前記位置から送信した前記位置標定信号について測定した前記位相差Δθ2との第1の組み合わせ、
前記移動端末がある位置から送信した前記位置標定信号について測定した第1の前記位相差Δθ1と前記移動端末が前記位置とは異なる位置から送信した前記位置標定信号について測定した第2の前記位相差Δθ1との第2の組み合わせ、
前記移動端末がある位置から送信した前記位置標定信号について測定した第1の前記位相差Δθ2と前記移動端末が前記位置とは異なる位置から送信した前記位置標定信号について測定した第2の前記位相差Δθ2との第3の組み合わせ、
及び前記移動端末がある位置から送信した前記位置標定信号について測定した第1の前記位相差Δθ1と前記移動端末が前記位置とは異なる位置から送信した前記位置標定信号について測定した第2の前記位相差Δθ2との第4の組み合わせ、
のうちの少なくとも2つ以上について、前記移動端末から受信する前記位置標定信号のマルチパスの影響度合いを、
前記第1の組み合わせについては、前記位相差Δθ1と前記位相差Δθ2との差を取ることにより、
前記第2の組み合わせについては、前記第1の位相差Δθ1と前記第2の位相差Δθ1との差を取ることにより、
前記第3の組み合わせについては、前記第1の位相差Δθ2と前記第2の位相差Δθ2との差を取ることにより、
前記第4の組み合わせについては、前記第1の位相差Δθ1と前記第2の位相差Δθ2との差を取ることにより、
夫々求める、マルチパス評価情報取得部と、
前記マルチパスの影響度合いが最も少ないと判断される前記組み合わせに基づき標定される位置を前記移動体の位置として出力する、位置標定結果出力部と
を備えることを特徴とする位置標定システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1等に開示されているように、無線信号を用いて実現される測位システムにおいては、マルチパスや反射波の影響が大きな無線信号によって位置標定が行われてしまうと位置の標定精度が著しく低下する。とくに測位システムを障害物の多い屋内等に設ける場合は、壁や床等によって位置標定信号が反射され、マルチパスや反射波の影響が大きくなる。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、位置の標定精度を向上することが可能な、位置標定方法、及び位置標定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の一つは、移動体の位置を標定する方法であって、
移動体に設けられた移動端末から、当該移動端末の位置を標定するための無線信号である位置標定信号を送信し、
基地局に、第1のアンテナ対と第2のアンテナ対とを、前記第1のアンテナ対の各アンテナによって受信される前記位置標定信号の経路差と前記第2のアンテナ対の各アンテナによって受信される前記位置標定信号の経路差とが一致するように設け、
前記基地局は、
前記第1のアンテナ対の各アンテナ又は前記第2のアンテナ対の各アンテナによって受信される前記位置標定信号の位相差Δθに基づき前記移動端末が存在する方向を求め、求めた前記方向に基づき前記移動体の位置を標定し、
前記第1のアンテナ対の各アンテナによって受信される前記位置標定信号の位相差Δθ1を測定し、
前記第2のアンテナ対の各アンテナによって受信される前記位置標定信号の位相差Δθ2を測定し、
前記移動端末がある位置から送信した前記位置標定信号について測定した前記位相差Δθ1又は前記位相差Δθ2と前記移動端末が前記位置から送信した前記位置標定信号について測定した前記位相差Δθ1又は前記位相差Δθ2との組み合わせ、及び、前記移動端末が第1の位置から送信した前記位置標定信号について測定した前記位相差Δθ1又は前記位相差Δθ2と前記移動端末が前記第1の位置とは異なる第2の位置から送信した前記位置標定信号について測定した前記位相差Δθ1又は前記位相差Δθ2との組み合わせについて、前記移動端末から受信する前記位置標定信号の前記マルチパスの影響度合いを求め、
前記マルチパスの影響度合いが最も少ないと判断される前記組み合わせに基づき標定される位置を前記移動体の位置として出力する。
【0010】
本発明によれば、基地局が、移動体の位置が変化することによって得られる位相差Δθ1又は位相差Δθ2の組み合わせを含む多数の組み合わせについてマルチパスの影響度合いを求め、そのうちマルチパスの影響度合いが最も少ないと判断される組み合わせに基づき標定される位置を移動体の位置として出力するので、選択肢にマルチパスの影響度合いのより少ない組み合わせが含まれる可能性が高まり、移動体の位置の標定精度を向上させることができる。
【0011】
本発明のうちの他の一つは、上記位置標定方法であって、
移動体に設けられた移動端末から、当該移動端末の位置を標定するための無線信号である位置標定信号を送信し、
基地局に、第1のアンテナ対と第2のアンテナ対とを、前記第1のアンテナ対の各アンテナによって受信される前記位置標定信号の経路差と前記第2のアンテナ対の各アンテナによって受信される前記位置標定信号の経路差とが一致するように設け、
前記基地局は、
前記第1のアンテナ対の各アンテナ又は前記第2のアンテナ対の各アンテナによって受信される前記位置標定信号の位相差Δθに基づき前記移動端末が存在する方向を求め、求めた前記方向に基づき前記移動体の位置を標定し、
前記第1のアンテナ対の各アンテナによって受信される前記位置標定信号の位相差Δθ1を測定し、
前記第2のアンテナ対の各アンテナによって受信される前記位置標定信号の位相差Δθ2を測定し、
前記移動端末がある位置から送信した前記位置標定信号について測定した前記位相差Δθ1と前記移動端末が前記位置から送信した前記位置標定信号について測定した前記位相差Δθ2との第1の組み合わせ、
前記移動端末がある位置から送信した前記位置標定信号について測定した第1の前記位相差Δθ1と前記移動端末が前記位置とは異なる位置から送信した前記位置標定信号について測定した第2の前記位相差Δθ1との第2の組み合わせ、
前記移動端末がある位置から送信した前記位置標定信号について測定した第1の前記位相差Δθ2と前記移動端末が前記位置とは異なる位置から送信した前記位置標定信号について測定した第2の前記位相差Δθ2との第3の組み合わせ、
及び前記移動端末がある位置から送信した前記位置標定信号について測定した第1の前記位相差Δθ1と前記移動端末が前記位置とは異なる位置から送信した前記位置標定信号について測定した第2の前記位相差Δθ2との第4の組み合わせ、
のうちの少なくとも2つ以上について、前記移動端末から受信する前記位置標定信号の前記マルチパスの影響度合いを求め、前記マルチパスの影響度合いが最も少ないと判断される前記組み合わせに基づき標定される位置を前記移動体の位置として出力する。
【0012】
本発明によれば、基地局が、上記第1乃至第4の4つの組み合わせのうちの少なくとも2つ以上について、移動端末から受信する位置標定信号のマルチパスの影響度合いを求め、そのうちマルチパスの影響度合いが最も少ないと判断される組み合わせに基づき標定される位置を移動体の位置として出力するので、選択肢にマルチパスの影響度合いのより少ない組み合わせが含まれる可能性が高まり、移動体の位置の標定精度を向上させることができる。
【0013】
本発明のうちの他の一つは、上記位置標定方法であって、
前記基地局は、
前記第1の組み合わせに基づく前記マルチパスの影響度合いを、前記位相差Δθ1と前記位相差Δθ2との差を取ることにより求め、
前記第2の組み合わせに基づく前記マルチパスの影響度合いを、前記第1の位相差Δθ1と前記第2の位相差Δθ1との差を取ることにより求め、
前記第3の組み合わせに基づく前記マルチパスの影響度合いを、前記第1の位相差Δθ2と前記第2の位相差Δθ2との差を取ることにより求め、
前記第4の組み合わせに基づく前記マルチパスの影響度合いを、前記第1の位相差Δθ1と前記第2の位相差Δθ2との差を取ることにより求める、
というものである。
【0014】
このように、位相差Δθ1と位相差Δθ2との差、第1の位相差Δθ1と第2の位相差Δθ1との差、第1の位相差Δθ2と第2の位相差Δθ2との差、及び第1の位相差Δθ1と第2の位相差Δθ2との差をとることによりマルチパスの影響度合いの評価指標を求めるようにすることで、マルチパスの影響度合いの評価指標として有意な値を得ることができる。
【0015】
本発明のうちの他の一つは、上記位置標定方法であって、
前記基地局は、
前記第1の組み合わせに基づく前記移動体の位置を、前記位相差Δθ1と前記位相差Δθ2との和を取ることにより求め、
前記第2の組み合わせに基づく前記移動体の位置を、前記第1の位相差Δθ1と前記第2の位相差Δθ1との和を取ることにより求め、
前記第3の組み合わせに基づく前記移動体の位置を、前記第1の位相差Δθ2と前記第2の位相差Δθ2との和を取ることにより求め、
前記第4の組み合わせに基づく前記移動体の位置を、前記第1の位相差Δθ1と前記第2の位相差Δθ2との和を取ることにより求める。
【0016】
このように位相差Δθ1と位相差Δθ2との和、第1の位相差Δθ1と第2の位相差Δθ1との和、第1の位相差Δθ2と第2の位相差Δθ2との和、及び第1の位相差Δθ1と第2の位相差Δθ2との和をとることにより移動体の位置を求めるようにすることで、マルチパスの影響が平均化され、位置標定の精度を高めることができる。
【0017】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、位置標定システムによる位置の標定精度を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に実施形態として説明する位置標定システム1の概略的な構成を示している。位置標定システム1は、例えば、移動体3(車両や歩行者等)の現在位置を監視するシステム、移動体3の安全確保に関するシステム、移動体3に対して道案内や目的地までの誘導を行うシステム、移動体3に対して現在地周辺の情報等を提供するシステム、地下街やビル街等における移動体3(人)の避難誘導システム、倉庫や工場等における移動体3(商品や搬送車両等)の流れを管理するシステム、工場等における移動体3(ロボット、搬送車両等)の誘導システムなどに適用される。
【0021】
位置標定システム1は、データセンタやシステムセンタなどに設けられたサーバ装置10、位置標定システム1が適用される地域の各所に設けられる複数の基地局20、及び移動体3に搭載もしくは携帯される移動端末30などを含んで構成されている。
【0022】
基地局20は、構造物2(屋内であれば柱や建物の壁等、屋外であれば電柱や鉄塔等)の所定の高さ位置に設けられる。基地局20及び移動端末30は、有線もしくは無線(電磁波を用いた通信等)による通信ネットワーク5(専用線、公衆回線、インターネット等)を介してサーバ装置10と通信可能に接続している。
【0023】
図2にサーバ装置10のハードウエア構成を示している。同図に示すように、サーバ装置10は、CPUやMPUなどを用いて構成される中央処理装置11、半導体メモリ(RAM、ROM、NVRAM等)やハードディスク装置などで構成される記憶装置12、キーボードやマウスなどの入力装置13、液晶ディスプレイなどの表示装置14、サーバ装置10を通信ネットワーク5に接続するための通信インタフェース15などを備える。尚、これらの構成要素はバス18を介して互いに通信可能に接続されている。表示装置14には、例えば、移動体3(移動端末30)の現在位置や移動方向などを示す情報がリアルタイムに表示される。
【0024】
図3にサーバ装置10が備える主な機能を示している。同図に示すように、サーバ装置10は、情報収集部101、情報提供部102、及び設定情報記憶部103を備える。これらの機能は、サーバ装置10が備えるハードウエアによって、もしくは、サーバ装置10の中央処理装置11が記憶装置12に格納されているプログラムを読み出して実行することによって実現される。
【0025】
情報収集部101は、基地局20もしくは移動端末30から、移動端末30の現在位置等の情報を随時収集する。情報提供部102は、例えば、移動端末30や基地局20に対して、道案内情報、目的地までの誘導情報、現在位置周辺の地理情報、移動体3の現在位置や移動方向等の監視情報、移動体3の安全確保に関する情報などの各種の情報を提供する。設定情報記憶部103は、例えば、基地局20の設置位置を示す情報(緯度、経度、設置高さ等)などを設定情報として記憶する。
【0026】
図4に移動端末30のハードウエア構成を示している。同図に示すように、移動端末30は、CPUやMPUなどを用いて構成される中央処理装置31、半導体メモリ(RAM、ROM、NVRAM等)やハードディスク装置などで構成される記憶装置32、後述する位置標定信号の送信や他の装置との間での無線通信を行う無線通信インタフェース33、無線通信インタフェース33によって行われる無線通信に用いられるアンテナ34、タッチパネルや操作ボタンなどの入力装置35、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示装置36、RTC(Real Time Clock)等を用いて構成される計時装置37、及び変位取得装置38を備える。これらの構成要素はバス39を介して互いに通信可能に接続されている。
【0027】
アンテナ34は例えば指向性アンテナである。アンテナ34は移動端末30の筐体と一体に設けられていてもよいし、移動端末30の筐体とは別体に設けられていてもよい。尚、移動端末30を壁等の障害物が存在する屋内等で用いる場合には、アンテナ34は円偏波指向性アンテナであることが望ましい。円偏波の反射波(又は定在波)の偏波面は、壁等の障害物で反射した際に反転するが、円偏波指向性アンテナを用いることで、反射波や定在波を効果的に減衰させることができるからである。
【0028】
変位取得装置38は、移動端末30の変位を取得するセンサを備える。センサは、例えば、移動体3が備える車輪の回転(回転角)を検出する回転センサ(ロータリーエンコーダ、レゾルバ等)、移動体3の移動速度を検出する速度センサ、移動体3の加速度を検出する加速度センサ、移動体3に設けられている車輪の角速度を検出する角速度センサ、移動体3に設けられている車輪の角加速度を検出する角加速度センサなどである。変位取得装置38は、センサの計測値に基づき、例えば、所定の基準時刻からの移動端末30の変位(移動量、位置の変化量)を取得する。
【0029】
図5に移動端末30が備える主な機能を示している。同図に示すように、移動端末30は、位置標定信号送信部301、情報送受信部302、及び情報表示部303を備える。これらの機能は、移動端末30が備えるハードウエアによって、もしくは、移動端末30の中央処理装置31が記憶装置32に格納されているプログラムを読み出して実行することによって実現される。
【0030】
上記機能のうち、位置標定信号送信部301は、移動端末30の位置の標定に用いられる無線信号(以下、位置標定信号と称する)を無線通信インタフェース33から送信する。また位置標定信号送信部301は、予め設定されたタイミング(例えば、一定時間ごと、ユーザによって登録された時間等)が到来すると位置標定信号を自動的に送信する機能を有する。後述するように、この位置標定信号には、変位計測装置38によって計測された移動端末30の変位を示す情報(以下、変位情報と称する。)が含まれている。
【0031】
情報送受信部302は、無線通信インタフェース33による無線通信や通信ネットワーク5による有線通信によりサーバ装置10もしくは基地局20と通信し、移動体3に提示するための情報の受信(ダウンロード)や、サーバ装置10もしくは基地局20において用いられる各種情報の送信(アップロード)などを行う。例えば、情報表示部303は、移動体3である人などに提示する情報を表示装置36に出力する。
【0032】
図6に基地局20のハードウエア構成を示している。基地局20は、CPUやMPUなどを用いて構成される中央処理装置21、半導体メモリ(RAM、ROM、NVRAM等)やハードディスク装置などで構成される記憶装置22、基地局20を通信ネットワーク5に接続するための通信インタフェース23、無線通信を行う無線通信インタフェース24、アンテナ群25、及びアンテナ切替スイッチ26などを備える。各構成要素は、バス28を介して通信可能に接続されている。
【0033】
中央処理装置21は、記憶装置22に格納されているプログラムを読み出して実行することにより基地局20が備える各種の機能を実現する。無線通信インタフェース24は、移動端末30から送信された位置標定信号を受信する。
【0034】
アンテナ群25は、少なくとも4つのアンテナ251(指向性アンテナ、円偏波指向性アンテナ等)を含む。アンテナ切替スイッチ26は、アンテナ群25を構成しているいずれかのアンテナ251を選択し、選択したアンテナ251を無線通信インタフェース24に接続する。尚、位置標定システム1を壁等の障害物が存在する屋内等で用いる場合には、アンテナ251として円偏波指向性アンテナを用いることが好ましい。円偏波の反射波(又は定在波)の偏波面は壁等での反射時に反転するので、アンテナ25として円偏波指向性アンテナを用いることで反射波(又は定在波)を効果的に減衰させることができるからである。
【0035】
図7に基地局20が備える主な機能を示している。同図に示すように、基地局20は、通信処理部201、位置標定信号受信部202、設定情報記憶部203、位置標定部204、マルチパス評価情報取得部205、端末変位判定部206、位置標定信号選択部207、及び位置標定結果出力部208を備える。尚、これらの機能は、基地局20が備えるハードウエアによって、もしくは、基地局20の中央処理装置21が記憶装置22に格納されているプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0036】
通信処理部201は、通信インタフェース23や無線通信インタフェース24によって移動端末30やサーバ装置10との間でデータの送信又は受信を行う。
【0037】
位置標定信号受信部202は、無線通信インタフェース24及びアンテナ切替スイッチ26を制御して移動端末30から送信される位置標定信号を受信する。
【0038】
設定情報記憶部203は、前述した設定情報(例えば、当該基地局20の設置位置を示す情報(緯度、経度、設置高さ等))を記憶する。
【0039】
位置標定部204は、位置標定信号受信部202が受信した位置標定信号に基づき移動端末30の位置を標定する。位置標定部204によって標定された移動体の位置を示す情報(標定結果)は、マルチパス評価情報取得部205によって位置標定信号の識別子に対応づけて記憶される。
【0040】
マルチパス評価情報取得部205は、移動端末30から送信された位置標定信号についてのマルチパスや反射波の影響(以下、マルチパスの影響と略記する。)の度合いを判定するための基礎となる情報(後述するマルチパス評価情報)を取得する。
【0041】
図8にマルチパス評価情報取得部205の詳細を示している。同図に示すように、マルチパス評価情報取得部205は、第1位相差測定部2051、第2位相差測定部2052、及び評価情報生成記憶部2053を備える。
【0042】
第1位相差測定部2051は、基地局20の4つのアンテナ251のうち第1アンテナ251及び第2アンテナ251(以下、第1アンテナ251及び第2アンテナ251の組み合わせのことを第1のアンテナ対と称する。)により移動端末30から送られてくる位置標定信号を受信し、第1アンテナ251及び第2アンテナ251の夫々が受信した位置標定信号の位相差Δθ1を測定する。
【0043】
第2位相差測定部2052は、基地局20の4つのアンテナ251のうち第3アンテナ251及び第4アンテナ251(以下、第3アンテナ251及び第4アンテナ251の組み合わせのことを第2のアンテナ対と称する。)により移動端末30から送られてくる位置標定信号を受信し、第3アンテナ251及び第4アンテナ251の夫々が受信した位置標定信号の位相差Δθ2を測定する。
【0044】
尚、第1のアンテナ対と第2のアンテナ対は、第1のアンテナ対の各アンテナ251によって受信される位置標定信号の経路差と第2のアンテナ対の各アンテナ251によって受信される位置標定信号の経路差とが一致するように位置決めされて設けられる。
【0045】
評価情報生成記憶部2053は、第1位相差測定部2051によって取得される位相差Δθ1もしくは第2位相差測定部2052によって取得される位相差Δθ2に基づき、後述するマルチパス評価情報を生成し、生成したマルチパス評価情報を、受信した位置標定信号ごとに付与される識別子、その位置標定信号を用いて位置標定部204によって標定された移動体3の位置の標定結果、及びその位置標定信号を当該基地局20が受信した時刻と対応づけて記憶する。
【0046】
図7に戻り、端末変位判定部206は、移動端末30から送られてくる変位情報に基づき、移動端末30の変位が、ある時点における移動端末30の位置から予め設定された所定の長さ(例えば、位置標定信号の1/4〜1波長程度の範囲の所定長さ)を超えたか否かを判定する。ここで上記のある時点は、例えば、基地局20が移動端末30から最初に位置標定信号を受信した時刻に設定される。
【0047】
位置標定信号選択部207は、マルチパス評価情報取得部205によって記憶された、受信した位置標定信号の夫々に基づくマルチパス評価情報を比較し、マルチパスの影響度合いが最小の位置標定信号を選択する。
【0048】
位置標定結果出力部208は、位置標定信号選択部207によって選択された位置標定信号に基づき位置標定部204が標定した結果を移動体3の位置として出力する。尚、位置標定結果出力部208が出力した移動体3の位置は、通信処理部201によってサーバ装置10や移動端末30に随時送信される。
【0049】
=位置標定の原理=
次に位置標定システムによる位置標定の原理について説明する。
【0050】
移動端末30の位置標定信号送信部301は、自身に備えられているアンテナ34から位置標定信号を送信する。一方、基地局20の無線通信インタフェース24は、アンテナ群25を構成している複数のアンテナ251を周期的に切り換えながら、スペクトル拡散された無線信号からなる位置標定信号を受信する。
【0051】
図9に移動端末30から送信される位置標定信号のデータフォーマットの一例を示している。同図に示すように、位置標定信号900には、制御信号911、測定信号912、端末情報913、及び変位情報914などの信号及び情報が含まれている。
【0052】
このうち制御信号911には、変調波や各種の制御信号が含まれている。測定信号912には、数m秒程度の無変調波(例えば、基地局20に対する移動端末30の存在する方向や基地局20に対する移動端末30までの相対距離の検出に用いる信号(例えば、2048チップの拡散符号))が含まれている。端末情報913には、移動端末30を識別する情報(以下、移動端末IDと称する。)が含まれている。
【0053】
変位情報914には、前述した変位情報(センサ取得値9142、計測時刻9141)が含まれている。センサ取得値9142には、変位取得装置38が備えるセンサの計測値(以下、センサ計測値とも称する。)が設定される。計測時刻9142には、そのセンサ取得値9141が計測された時刻(以下、計測時刻とも称する。)が設定される。
【0054】
図10に基地局20と移動端末30の位置関係を例示している。同図に示すように、移動端末30は地上高h(m)の位置にあり、基地局20は地上高H(m)の位置に固定されている。基地局20の直下から移動端末30までの直線距離はL(m)である。
【0055】
図11に基地局20のアンテナ群25を構成している複数のアンテナ251と移動端末30との関係を示している。同図に示すように、アンテナ群25は、位置標定信号900の1波長(例えば、位置標定信号900として2.4GHz帯の電波を用いた場合は波長λ=12.5cm)以下の間隔をあけて平面的に略正方形状に等間隔で隣接配置された4つの円偏波指向性アンテナ(以下、アンテナ251a〜251dと称する。)を含んで構成されている。尚、各アンテナ251a〜251dは、例えば、いずれも指向方向を斜め下方向に向けて設置されている。
【0056】
尚、本実施形態では、前述した第1アンテナ251はアンテナ251aであるものとし、第2アンテナ251はアンテナ251bであるものとし、第3アンテナ251はアンテナ251cであるものとし、第4アンテナ251はアンテナ251dであるものとする。
【0057】
同図において、アンテナ群25の高さ位置における水平方向とアンテナ群25に対する移動端末30の方向とのなす角をαとすると、
α=arcTan(D(m)/L(m))=arcSin(ΔL(cm)/3(cm))
の関係がある。尚、上記のΔL(cm)は、アンテナ群25を構成しているアンテナ251のうち、特定の2つのアンテナ251と移動端末30との間の伝搬路長の差(以下、経路差とも称する。)である。
【0058】
ここでアンテナ群25を構成している特定の2つのアンテナ251で受信される位置標定信号900の位相差をΔθとすると、
ΔL(cm)=Δθ/(2π/λ(cm))
の関係がある。また位置標定信号900として、例えば、2.4GHz帯の電波を用いた場合はλ=12.5(cm)であるので、
α=arcSin(Δθ/π)
の関係がある。また測定可能範囲(−π/2<Δθ<π/2)内では、αはΔθ(ラジアン)から算出できるので、上式から基地局20が存在する方向を特定することができる。
【0059】
図12に基地局20の設置現場における、基地局20と移動端末30の位置関係を示している。同図に示すように、基地局20のアンテナ群25の地上高をH(m)、移動端末30の地上高をh(m)、基地局20の直下の地表面の位置を原点として直交座標系(x、y、z)を設定した場合における、方向αのxz平面への射影をΔΦ(x)、方向αのyz平面への射影をΔΦ(y)とすれば、原点に対する移動端末30の相対座標は次式から求めることができる。
Δd(x)=(H−h)×Tan(ΔΦ(x))
Δd(y)=(H−h)×Tan(ΔΦ(y))
そして原点の絶対座標を(X1,Y1,0)とすれば、移動端末30の相対座標
(Xx,Yy,0)は次式から求めることができる。
Xx=X1+Δd(x)
Yy=Y1+Δd(y)
【0060】
以上に説明した位置標定の方法については、例えば、特開2004−184078号公報、特開2005−351877号公報、特開2005−351878号公報、及び特開2006−23261号公報等にも詳述されている。
【0061】
=測定精度の向上=
ところで、以上に説明した方法で行われる位置標定に際しては、基地局20と移動端末30が備える水晶発振器に生じる周波数偏差に起因する誤差が問題となる。例えば、水晶発振器の周波数安定度が±0.5ppmである場合、基地局20と移動端末30との間に最大1ppmの周波数偏差(2400Hz)が生じる。例えば、アンテナ切替スイッチ26の切替周期が32μsである場合、2400Hz×32μs×360°=27.65°の位相差(誤差)が生じることになる。そこで本実施形態の位置標定システム1では、この測定誤差を次のようにして相殺することにより測定精度の向上を図っている。
【0062】
まず第1のアンテナ対の各アンテナ(第1アンテナ251a及び第2アンテナ251b)が受信する位置標定信号900の位相差Δθ1(第1アンテナ251aを基準として第2アンテナ251bの位相を測定した結果(=測定値))は、移動端末30から第1アンテナ251aまでの位置標定信号900の伝搬経路と、移動端末30から第2アンテナ251bまでの位置標定信号900の伝搬経路との差(経路差)によって生じる位相差の真値をΔθt1とし、上述の測定誤差をF1とすれば、次式で表すことができる。
Δθ1=Δθt1+F1 ・・・式1
【0063】
一方、第2のアンテナ対の各アンテナ(第3アンテナ251c及び第4アンテナ251d)が受信する位置標定信号900の位相差Δθ2(第3アンテナ251cを基準として第4アンテナ251dの位相を測定した結果(=測定値))は、移動端末30から第3アンテナ251cまでの位置標定信号900の伝搬経路と、移動端末30から第4アンテナ251dまでの位置標定信号900の伝搬経路との差(経路差)によって生じる位相差の真値をΔθt2とし、測定誤差をF2とすれば、次式で表すことができる。
Δθ2=−Δθt2+F2 ・・・式2
【0064】
次いで式1と式2の両辺の差を取ると次のようになる。
Δθ1−Δθ2=(Δθt1−(−Δθt2))+(F1−F2) ・・・式3
【0065】
ここで前述したように、第1のアンテナ対と第2のアンテナ対とは、第1のアンテナ対の各アンテナ251a,251bによって受信される位置標定信号900の経路差と第2のアンテナ対の各アンテナ251c,251dによって受信される位置標定信号900の経路差とが一致するように、即ち位相差Δθt1と位相差Δθt2とが一致するように設けられている。そこでこの一致する値をθt=Δθt1=Δθt2とすれば、右辺の(Δθt1−(−Δθt2))の値は2θtとなる。
【0066】
一方、誤差F1,F2は、第1のアンテナ対の測定時と第2のアンテナ対の測定時とで通常はほぼ一致しており、右辺の(F1−F2)の値は限りなく0に近くなる。以上より、式3は次のようになる。
θt=(Δθ1−Δθ2)/2 ・・・式4
【0067】
式4から理解されるように、第1のアンテナ対と第2のアンテナ対の夫々によって位相差を測定することにより、式1、式2における測定誤差F1,F2を相殺することができる。このため、第1のアンテナ対と第2のアンテナ対の夫々によって位相差を測定することにより、位相差θtを高い精度で取得することができる。
【0068】
尚、位相を測定する側(本実施形態では基地局20側)に、例えば、AGC(Automatic Gain Controller)を設けて周波数偏差の減少させるようにすれば、右辺の(F1−F2)の値をさらに0に近づけることができ、位相差θtの測定精度をさらに向上させることができる。
【0069】
=マルチパスの影響について=
前述した式1及び式2はマルチパスの影響を考慮していない。マルチパスの影響を考慮すれば、式1は次のようになる。
Δθ1=Δθt1+F1+M1(第1アンテナ対についてのマルチパスの影響分)
・・・式1’
また式2は次のようになる。
Δθ2=−Δθt2+F2−M2(第2アンテナ対についてのマルチパスの影響分)
・・・式2’
【0070】
次いで式1’と式2’の両辺の差を取れば式3は次のようになる。
Δθ1−Δθ2=(Δθt1−(−Δθt2))+(F1−F2)+(M1+M2)
・・・式3’
【0071】
また前述したθtを導入すると、式3’は次のようになる。
θt=(Δθ1−Δθ2)/2−(M1+M2)/2 ・・・式4’
【0072】
上式から理解されるように、第1のアンテナ対と第2のアンテナ対の夫々によって位相差を測定することにより求められる位相差θtには、マルチパスの影響が(M1+M2)/2として作用するが、位相差θtには、マルチパスの影響分が、第1のアンテナ対のマルチパスの影響分M1と第2のアンテナ対のマルチパスの影響分M2との平均値(=(M1+M2)/2)として作用するので、位相差Δθtに与えるマルチパスの影響は緩和されることになる。
=直接波か否かの判定原理=
移動体3の位置の標定精度を確保するには、移動端末30から直接波として受信した位置標定信号900に基づき基地局20が位置標定を行う必要がある。このため、移動端末30から送られてくる位置標定信号900が直接波であるか否か(マルチパスの影響を受けているか否か)を判定する仕組みが必要となる。そこで位置標定システム1では、以下に示す方法により、移動端末30から送られてくる位置標定信号900が直接波であるか否かを判定する。
【0073】
まず第1のアンテナ対の各アンテナ(第1アンテナ251a及び第2アンテナ251b)が受信する位置標定信号900の位相差Δθ1(第1アンテナ251aを基準として第2アンテナ251bの位相を測定した結果(=測定値))は、移動端末30から第1アンテナ251aまでの位置標定信号900の伝搬経路と、移動端末30から第2アンテナ251bまでの位置標定信号900の伝搬経路との差(経路差)によって生じる位相差の真値をΔθt1とし、測定誤差をF1、マルチパスや反射波の影響分をM1とすれば、次式で表すことができる。
Δθ1=Δθt1+F1+M1 ・・・式5
【0074】
一方、第2のアンテナ対の各アンテナ(第3アンテナ251c及び第4アンテナ251d)が受信する位置標定信号900の位相差Δθ2(第4アンテナ251dを基準として第3アンテナ251cの位相を測定した結果(=測定値))は、移動端末30から第3アンテナ251cまでの位置標定信号900の伝搬経路と、移動端末30から第4アンテナ251dまでの位置標定信号900の伝搬経路との差(経路差)によって生じる位相差の真値をΔθt2(位相の測定に際して基準を逆にしているため、前述した位置標定の場合(式2)とΔθt2の符号が反転している。)とし、測定誤差をF2、マルチパスや反射波の影響分をM2とすれば、次式で表すことができる。
Δθ2=Δθt2+F2+M2 ・・・式6
【0075】
次に式5と式6の両辺の差を取れば次のようになる。
Δθ1−Δθ2=(Δθt1−Δθt2)+(F1−F2)+(M1−M2)
・・・式7
【0076】
ここで前述したように、第1のアンテナ対と第2のアンテナ対とは、第1のアンテナ対の各アンテナ251a,251bによって受信される位置標定信号900の経路差と第2のアンテナ対の各アンテナ251c,251dによって受信される位置標定信号900の経路差とが一致するように、即ち位相差Δθt1と位相差Δθt2とが一致するように設けられている。このため、式7の右辺の(Δθt1−Δθt2)の値は限りなく0に近くなる。
【0077】
一方、誤差F1,F2は、第1のアンテナ対の測定時と第2のアンテナ対の測定時とで通常はほぼ一致しており、式7の右辺の(F1−F2)の値は限りなく0に近くなる。以上より、式7は次のようになる。
Δθ1−Δθ2=M1−M2 ・・・式8
【0078】
ここで第1のアンテナ対の各アンテナ251と第2のアンテナ対の各アンテナ251は、
図11に示したように物理的な配置位置が異なっているので、各アンテナ251の夫々に対するマルチパスの影響が夫々異なっており、もし位置標定信号900がマルチパスの影響を受けていた場合はM1≠M2となる。逆に位置標定信号900が直接波であった場合はM1=M2となる。従って、位相差Δθ1と位相差Δθ2とが一致するか否か(両者の差が0か否か、あるいは少なくとも予め設定された基準値以下であるか否か)を調べることで、受信した位置標定信号900が直接波であるか否かを判定することができる。またM1−M2の絶対値はマルチパスの影響の大きさと相関がある(マルチパスの影響が大きい程、絶対値が大きくなり、マルチパスの影響が小さい程、絶対値が小さくなる。)ので、上記絶対値はマルチパスの影響の大きさを評価する指標(以下、マルチパス評価情報と称する。)として用いることができる。
【0079】
=位置標定精度の向上=
ところで、以上に説明した位相差θtを求めるための関係(式4’)及びマルチパス評価情報を得るための関係(式8)は、いずれも移動端末30が「ある地点」から送信した位置標定信号900を第1のアンテナ対が受信することにより得られる関係(式1’、式5)、及び移動端末30が「上記地点」から送信した位置標定信号900を第2のアンテナ対々が受信することにより得られる関係(式2’、式6)から導出したものであるが(以下、この方法のことを第1の方法と称する。)、これに限らず、位相差θtを求めるための関係式及びマルチパス評価情報を得るための関係は、次に示すような方法(以下、第2の方法、第3の方法、第4の方法と称する。)によっても導出することができる。以下、順に説明する。
【0080】
<第2の方法>
まず第1のアンテナ対に基づき関係式を導出する。第1のアンテナ対の各アンテナ(第1アンテナ251a及び第2アンテナ251b)が受信する位置標定信号900の位相差Δθ1
M1(第1アンテナ251aを基準として第2アンテナ251bの位相を測定した結果(=測定値))は、移動端末30から第1アンテナ251aまでの位置標定信号900の伝搬経路と、移動端末30から第2アンテナ251bまでの位置標定信号900の伝搬経路との差(経路差)によって生じる位相差の真値をΔθt1とし、上述の測定誤差をF1、第1のアンテナ対についてのマルチパスの影響分をM1とすれば、次式で表すことができる。
Δθ1
M1=Δθt1+F1+M1 ・・・式9
【0081】
一方、第1のアンテナ対の各アンテナ(第2アンテナ251b及び第1アンテナ251a)が受信する位置標定信号900の位相差Δθ2
M1(第2アンテナ251bを基準として第1アンテナ251aの位相を測定した結果(=測定値))は、移動端末30から第2アンテナ251bまでの位置標定信号900の伝搬経路と、移動端末30から第1アンテナ251aまでの位置標定信号900の伝搬経路との差(経路差)によって生じる位相差の真値をΔθt2とし、測定誤差をF2、第1のアンテナ対についてのマルチパスの影響分をM
1とすれば、次式で表すことができる。
Δθ2
M1=−Δθt2+F2−M1 ・・・式10
【0082】
次いで式9と式10の両辺の差を取れば次のようになる。
Δθ1
M1−Δθ2
M1=(Δθt1−(−Δθt2))+(F1−F2)+(M1+M1)
・・・式11
【0083】
ここで式9及び式10はいずれも第1アンテナ251a及び第2アンテナ251bに基づくものであるので、Δθt1=Δθt2であり、また(F1−F2)の値は限りなく0に近くなる。そこでΔθt1=Δθt2=Δθtとおけば、式11は次のようになる。
(Δθ1
M1−Δθ2
M1)/2=Δθt+M1 ・・・式12
【0084】
次に第2のアンテナ対に基づき関係式を導出する。第2のアンテナ対の各アンテナ(第3アンテナ251c及び第4アンテナ251d)が受信する位置標定信号900の位相差Δθ1
M2(第4アンテナ251dを基準として第3アンテナ251cの位相を測定した結果(=測定値))は、移動端末30から第4アンテナ251dまでの位置標定信号900の伝搬経路と、移動端末30から第3アンテナ251cまでの位置標定信号900の伝搬経路との差(経路差)によって生じる位相差の真値をΔθt3とし、上述の測定誤差をF3、第2のアンテナ対についてのマルチパスの影響分をM2とすれば、次式で表すことができる。
Δθ1
M2=Δθt3+F3+M2 ・・・式13
【0085】
一方、第2のアンテナ対の各アンテナ(第3アンテナ251b及び第4アンテナ251d)が受信する位置標定信号900の位相差Δθ2
M2(第3アンテナ251cを基準として第4アンテナ251dの位相を測定した結果(=測定値))は、移動端末30から第3アンテナ251cまでの位置標定信号900の伝搬経路と、移動端末30から第4アンテナ251dまでの位置標定信号900の伝搬経路との差(経路差)によって生じる位相差の真値をΔθt4とし、測定誤差をF4、第2のアンテナ対についてのマルチパスの影響分をM2とすれば、次式で表すことができる。
Δθ2
M2=−Δθt4+F4−M2 ・・・式14
【0086】
次いで式13と式14の両辺の差を取れば次のようになる。
Δθ1
M2−Δθ2
M2=(Δθt3−(−Δθt4))+(F3−F4)+(M2+M2)
・・・式15
【0087】
ここで式13及び式14はいずれも第3アンテナ251c及び第4アンテナ251dに基づくものであるので、Δθt3=Δθt4であり、(F3−F4)の値は限りなく0に近くなる。そこでΔθt3=Δθt4=Δθtとおけば、式15は次のようになる。
(Δθ1
M2−Δθ2
M2)/2=Δθt+M2 ・・・式16
【0088】
続いて式12と式16の両辺の和を取れば次式が得られる。
(Δθ1
M1−Δθ2
M1)/2+(Δθ1
M2−Δθ2
M2)/2
=
2×Δθt+
M1+M2 ・・・式17
【0089】
ここで上式は、位相差Δθ1
M1、Δθ2
M1、Δθ1
M2、Δθ2
M2から位相差θtを求めることができることを示している。また上式により位相差θtを求めた場合、マルチパスの影響分が平均化され、位相差Δθtに与えるマルチパスの影響が緩和されることを示している。
【0090】
一方、式12と式16の両辺の差を取れば次式が得られる。
(Δθ1
M1−Δθ2
M1)/2−(Δθ1
M2−Δθ2
M2)/2=M1−M2
・・・式18
【0091】
上式は、測定値である位相差Δθ1
M1、Δθ2
M1、Δθ1
M2、Δθ2
M2から、マルチパス評価情報M1−M2が得られることを示している。
【0092】
<第3の方法>
第3の方法では、移動端末30が第1の位置から送信した位置標定信号900を第1のアンテナ対で受信することにより得られる関係と、移動端末30が上記第1の位置とは異なる第2の位置から送信した位置標定信号900を第1のアンテナ対で受信することにより得られる関係とに基づき、位相差θt及びマルチパス評価情報を得るための関係を導出する。
【0093】
尚、以上に説明した第3の方法において、例えば、第1の位置と第2の位置
との間の距離が大き過ぎると判定結果(=M1−M2)に対する位相差Δθの変化の影響が無視できなくなる。ここで空間ダイバーシティの原理によれば、複数の反射波と直接波との合成波からなる間接波において、移動端末30の物理的位置が位置標定信号900の1/4波長〜1波長程度変化すると、位置標定信号900に与えるマルチパスの影響度合いが変化する。そこで、第1の位置と第2の位置は、例えば、位置標定信号900の1/4波長〜1波長程度の距離とすることが好ましい。
【0094】
第3の方法では、まず移動端末30が第1の位置から送信した位置標定信号900を受信する場合について第1のアンテナ対に基づき関係式を導出する。第1のアンテナ対の各アンテナ(第1アンテナ251a及び第2アンテナ251b)が受信する位置標定信号900の位相差Δθ1
M1(第1アンテナ251aを基準として第2アンテナ251bの位相を測定した結果(=測定値))は、移動端末30から第1アンテナ251aまでの位置標定信号900の伝搬経路と、移動端末30から第2アンテナ251bまでの位置標定信号900の伝搬経路との差(経路差)によって生じる位相差の真値をΔθt1とし、上述の測定誤差をF1、移動端末30が第1の位置から送信した位置標定信号900を受信する場合の第1のアンテナ対のマルチパスの影響分をM1とすれば、次式で表すことができる。
Δθ1
M1=Δθt1+F1+M1 ・・・式19
【0095】
一方、第1の位置において第1のアンテナ対の各アンテナ(第2アンテナ251b及び第1アンテナ251a)が受信する位置標定信号900の位相差Δθ2
M1(第2アンテナ251bを基準として第1アンテナ251aの位相を測定した結果(=測定値))は、移動端末30から第2アンテナ251bまでの位置標定信号900の伝搬経路と、移動端末30から第1アンテナ251aまでの位置標定信号900の伝搬経路との差(経路差)によって生じる位相差の真値をΔθt2とし、測定誤差をF2、移動端末30が第1の位置から送信した位置標定信号900を受信する場合の第1のアンテナ対のマルチパスの影響分をM2とすれば、次式で表すことができる。
Δθ2
M1=−Δθt2+F2−M1 ・・・式20
【0096】
次いで式19と式20の両辺の差を取れば次のようになる。
Δθ1
M1−Δθ2
M1=(Δθt1−(−Δθt2))+(F1−F2)+(M1+M1)
・・・式21
【0097】
ここで式19及び式20はいずれも第1アンテナ251a及び第2アンテナ251bに基づくものであるのでΔθt1=Δθt2であり、また(F1−F2)の値は限りなく0に近くなる。そこでΔθt1=Δθt2=Δθtとおけば、式21は次のようになる。
(Δθ1
M1−Δθ2
M1)/2=Δθt+M1 ・・・式22
【0098】
続いて、移動端末30が第2の位置から送信した位置標定信号900を受信する場合について第1のアンテナ対に基づき関係式を導出する。第1のアンテナ対の各アンテナ(第1アンテナ251a及び第2アンテナ251b)が受信する位置標定信号900の位相差Δθ1
M2(第1アンテナ251aを基準として第2アンテナ251bの位相を測定した結果(=測定値))は、移動端末30から第1アンテナ251aまでの位置標定信号900の伝搬経路と、移動端末30から第2アンテナ251bまでの位置標定信号900の伝搬経路との差(経路差)によって生じる位相差の真値をΔθt3とし、上述の測定誤差をF3、移動端末30が第2の位置から送信した位置標定信号900を受信する場合の第1のアンテナ対のマルチパスの影響分をM2とすれば、次式で表すことができる。
Δθ1
M2=Δθt3+F3+M2 ・・・式23
【0099】
一方、第2の位置において第1のアンテナ対の各アンテナ(第2アンテナ251b及び第1アンテナ251a)が受信する位置標定信号900の位相差Δθ2
M2(第2アンテナ251bを基準として第1アンテナ251aの位相を測定した結果(=測定値))は、移動端末30から第2アンテナ251bまでの位置標定信号900の伝搬経路と、移動端末30から第1アンテナ251aまでの位置標定信号900の伝搬経路との差(経路差)によって生じる位相差の真値をΔθt4とし、測定誤差をF4、移動端末30が第2の位置から送信した位置標定信号900を受信する場合の第1アンテナ対のマルチパスの影響分をM2とすれば、次式で表すことができる。
Δθ2
M2=−Δθt4+F4−M2 ・・・式24
【0100】
次に式23と式24の両辺の差を取れば次のようになる。
Δθ1
M2−Δθ2
M2=(Δθt3−(−Δθt4))+(F3−F4)+(M2+M2)
・・・式25
【0101】
ここで前述したように、式23及び式24はいずれも第1アンテナ251a及び第2アンテナ251bに基づくものであるのでΔθt3=Δθt4であり、また(F3−F4)の値は限りなく0に近くなる。そこでΔθt3=Δθt4=Δθtとおけば、式25は次のようになる。
(Δθ1
M2−Δθ2
M2)/2=Δθt+M2 ・・・式26
【0102】
続いて式22と式26の両辺の和を取れば次式が得られる。
(Δθ1
M1−Δθ2
M1)/2+(Δθ1
M2−Δθ2
M2)/2
=Δθt+(M1+M2)/2 ・・・式27
【0103】
ここで上式は、位相差Δθ1
M1、Δθ2
M1、Δθ1
M2、Δθ2
M2から位相差θtを求めることができることを示している。また上式により位相差θtを求めた場合、マルチパスの影響分が平均化され、位相差Δθtに与えるマルチパスの影響が緩和されることを示している。
【0104】
一方、式22と式26の両辺の差を取れば次式が得られる。
(Δθ1
M1−Δθ2
M1)/2−(Δθ1
M2−Δθ2
M2)/2=M1−M2
・・・式28
【0105】
上式は、位相差Δθ1
M1、Δθ2
M1、Δθ1
M2、Δθ2
M2からマルチパス評価情報M1−M2が得られることを示している。
【0106】
尚、以上は、移動端末30が第1の位置から送信した位置標定信号900を第1のアンテナ対で受信することにより得られる関係と、移動端末30が上記第1の位置とは異なる第2の位置から送信した位置標定信号900を第1のアンテナ対で受信することにより得られる関係に基づき、位相差θt及びマルチパス評価情報を得るための関係を導出する場合であるが、移動端末30が第1の位置から送信した位置標定信号900を第2のアンテナ対で受信することにより得られる関係と、移動端末30が上記第1の位置とは異なる第2の位置から送信した位置標定信号900を第2のアンテナ対で受信することにより得られる関係に基づく場合も、以上と同様にして位相差θt及びマルチパス評価情報を得るための関係を導出することができる。
【0107】
以上に説明した第3の方法を実施する場合、基地局20は、例えば、移動端末30の移動速度を一定とみなすことにより、移動端末30の物理的位置が1/4波長〜1波長程度変化したか否かを判定する。また例えば、基地局20は、位置標定信号900に含まれている変位情報914によって移動端末30の物理的位置が1/4波長〜1波長程度変化したか否かを判定する。
【0108】
<第4の方法>
第
4の方法では、移動端末30が第1の位置から送信した位置標定信号900を第1のアンテナ対で受信することにより得られる関係と、移動端末30が上記第1の位置とは異なる第2の位置から送信した位置標定信号900を第2のアンテナ対で受信することにより得られる関係とに基づき、位相差θt及びマルチパス評価情報を得るための関係を導出する。
【0109】
まず移動端末30が第1の位置から送信した位置標定信号900を受信する場合について第1のアンテナ対に基づき関係式を導出する。第1のアンテナ対の各アンテナ(第1アンテナ251a及び第2アンテナ251b)が受信する位置標定信号900の位相差Δθ1
M1(第1アンテナ251aを基準として第2アンテナ251bの位相を測定した結果(=測定値))は、移動端末30から第1アンテナ251aまでの位置標定信号900の伝搬経路と、移動端末30から第2アンテナ251bまでの位置標定信号900の伝搬経路との差(経路差)によって生じる位相差の真値をΔθt1とし、上述の測定誤差をF1、移動端末30が第1の位置から送信した位置標定信号900を受信する場合の第1アンテナ対のマルチパスの影響分をM1とすれば、次式で表すことができる。
Δθ1
M1=Δθt1+F1+M1 ・・・式29
【0110】
一方、第1の位置において第1のアンテナ対の各アンテナ(第2アンテナ251b及び第1アンテナ251a)が受信する位置標定信号900の位相差Δθ2
M1(第2アンテナ251bを基準として第1アンテナ251aの位相を測定した結果(=測定値))は、移動端末30から第2アンテナ251bまでの位置標定信号900の伝搬経路と、移動端末30から第1アンテナ251aまでの位置標定信号900の伝搬経路との差(経路差)によって生じる位相差の真値をΔθt2とし、測定誤差をF2、移動端末30が第1の位置から送信した位置標定信号900を受信する場合の第1アンテナ対のマルチパスの影響分をM2とすれば、次式で表すことができる。
Δθ2
M1=−Δθt2+F2−M1 ・・・式30
【0111】
次に式29と式30の両辺の差を取れば次のようになる。
Δθ1
M1−Δθ2
M1=(Δθt1−(−Δθt2))+(F1−F2)+(M1+M1)
・・・式31
【0112】
ここで式29及び式30はいずれも第1アンテナ251a及び第2アンテナ251bに基づくものであるのでΔθt1=Δθt2であり、また(F1−F2)の値は限りなく0に近くなる。そこでΔθt1=Δθt2=Δθtとおけば、式31は次のようになる。
(Δθ1
M1−Δθ2
M1)/2=Δθt+M1 ・・・式32
【0113】
続いて、移動端末30が第2の位置から送信した位置標定信号900を受信する場合について第2のアンテナ対に基づき関係式を導出する。第2のアンテナ対の各アンテナ(第3アンテナ251c及び第4アンテナ251d)が受信する位置標定信号900の位相差Δθ1
M2(第4アンテナ251dを基準として第3アンテナ251cの位相を測定した結果(=測定値))は、移動端末30から第4アンテナ251dまでの位置標定信号900の伝搬経路と、移動端末30から第3アンテナ251cまでの位置標定信号900の伝搬経路との差(経路差)によって生じる位相差の真値をΔθt3とし、上述の測定誤差をF3、移動端末30が第2の位置から送信した位置標定信号900を受信する場合の第2のアンテナ対のマルチパスの影響分をM2とすれば、次式で表すことができる。
Δθ1
M2=Δθt3+F3+M2 ・・・式33
【0114】
一方、第2の位置において、第2のアンテナ対の各アンテナ(第3アンテナ251b及び第4アンテナ251d)が受信する位置標定信号900の位相差Δθ2
M2(第3アンテナ251cを基準として第4アンテナ251dの位相を測定した結果(=測定値)))は、移動端末30から第3アンテナ251cまでの位置標定信号900の伝搬経路と、移動端末30から第4アンテナ251dまでの位置標定信号900の伝搬経路との差(経路差)によって生じる位相差の真値をΔθt4とし、測定誤差をF4、移動端末30が第2の位置から送信した位置標定信号900を受信する場合の第2のアンテナ対のマルチパスの影響分をM2とすれば、次式で表すことができる。
Δθ2
M2=−Δθt4+F4−M2 ・・・式34
【0115】
次に式33と式34の両辺の差を取れば次のようになる。
Δθ1
M2−Δθ2
M2=(Δθt3−(−Δθt4))+(F3−F4)+(M2+M2)
・・・式35
【0116】
ここで前述したように、式33及び式34はいずれも第3アンテナ251c及び第4アンテナ251dに基づくものであるのでΔθt3=Δθt4であり、また式33及び式34の値は限りなく0に近くなる。そこでΔθt3=Δθt4=Δθtとおけば、式35は次のようになる。
(Δθ1
M2−Δθ2
M2)/2=Δθt+M2 ・・・式36
【0117】
続いて式32と式36の両辺の和を取れば次式が得られる。
(Δθ1
M1−Δθ2
M1)/2+(Δθ1
M2−Δθ2
M2)/2
=θt+(M1+M2)/2 ・・・式37
【0118】
ここで上式は、位相差Δθ1
M1、Δθ2
M1、Δθ1
M2、Δθ2
M2から位相差θtを求めることができることを示している。また上式により位相差θtを求めた場合、マルチパスの影響分が平均化され、位相差Δθtに与えるマルチパスの影響が緩和されることを示している。
【0119】
一方、式32と式36の両辺の差を取れば次式が得られる。
(Δθ1
M1−Δθ2
M1)/2−(Δθ1
M2−Δθ2
M2)/2=M1−M2
・・・式38
【0120】
上式は、位相差Δθ1
M1、Δθ2
M1、Δθ1
M2、Δθ2
M2からマルチパス評価情報M1−M2が得られることを示している。
【0121】
<マルチパス評価情報に基づく結果の選択>
以上に説明したように、位相差θt及びマルチパス評価情報は、アンテナ対の組み合わせ(第1のアンテナ対同士、第2のアンテナ対同士、第1のアンテナ対と第2のアンテナ対の組み合わせ)や、移動端末30が位置標定信号900を送信した位置の組み合わせ(第1の位置から送信した位置標定信号900のみを用いる場合、第2の位置から送信した位置標定信号900のみを用いる場合、第1の位置から送信した位置標定信号900と第2の位置から送信した位置標定信号900の双方を組み合わせる場合)の異なる、様々なバリエーションによって求めることができる。
【0122】
ここで前述したように、マルチパス評価情報は、その絶対値が大きいほど、マルチパスの影響が大きいことを示しているので、上記のように組み合わせを変えることにより得られる複数のバリエーションの夫々によってマルチパス評価情報を求め、求めたマルチパス評価情報のうち、その絶対値が最小となるバリエーションを特定し、特定したバリエーションによって求められる位相差Δθtを用いて位置標定を行うようにすれば、マルチパスの影響のより少ない位置標定信号900によって位置標定が行われる可能性が高まり、位置標定の精度の向上を図ることができる。
【0123】
図13は組み合わせのバリエーション一例であり、移動端末30が、地点A、地点B、地点Cの3つの地点を移動する場合に得られる組み合わせを示している。一般にNを地点数とすれば、(2N−1)+(2N−2)+(2N−3)+・・・+1通りのバリエーションが存在する。同図の場合は地点数が3であるので、5+4+3+2+1=15通りのバリエーションが存在することになる。
【0124】
同図において、例えば「1A−2A」との表記は、移動端末30が地点Aから送信した位置標定信号900を第1のアンテナ対によって受信した結果と、移動端末30が地点Aから送信した位置標定信号900を第2のアンテナ対によって受信した結果とに基づき、位相差Δθt及びマルチパス評価情報を求めることを示している。この場合は第1の方法によってマルチパス評価情報を求めることになる。
【0125】
また例えば「1A−1B」との表記は、移動端末30が地点Aから送信した位置標定信号900を第1のアンテナ対によって受信した結果と、移動端末30が地点Bから送信した位置標定信号900を第2のアンテナ対によって受信した結果とに基づき、位相差Δθt及びマルチパス評価情報を求めることを示している。この場合は第4の方法によってマルチパス評価情報を求めることになる。
【0126】
また例えば「2A−2B」との表記は、移動端末30が地点Aから送信した位置標定信号900を第2のアンテナ対によって受信した結果と、移動端末30が地点Bから送信した位置標定信号900を第2のアンテナ対によって受信した結果とに基づき、位相差Δθt及びマルチパス評価情報を求めることを示している。この場合は第3の方法によってマルチパス評価情報を求めることになる。
【0127】
また例えば「1A−2B」との表記は、移動端末30が地点Aから送信した位置標定信号900を第1のアンテナ対によって受信した結果と、移動端末30が地点Bから送信した位置標定信号900を第2のアンテナ対によって受信した結果とに基づき、位相差Δθt及びマルチパス評価情報を求めることを示している。この場合は第4の方法によってマルチパス評価情報を求めることになる。
【0128】
=位置標定処理=
続いて
図14とともに、以上の方法を適用して位置標定を行う場合に位置標定システム1において行われる処理(以下、位置標定処理S1400と称する。)について説明する。
【0129】
同図に示すように、移動端末30は、位置標定信号900の送信タイミング(例えば、連続的、一定時間ごと(周期的)、予め設定された時間等)が到来すると(S1411:YES)、位置標定信号900を送信する(S1412)。
【0130】
基地局20は、位置標定信号900を受信すると(S1421)、受信した位置標定信号900により移動体3の位置を標定する(S1422)。
【0131】
次いで基地局20は、前述した組み合わせのうちの少なくとも2つ以上についてマルチパス評価情報を生成し(S1423)、生成したマルチパス評価情報を、S1422で行った位置標定の結果とその位置標定信号900を特定する識別子(例えば、位置標定信号900の受信時刻)とを付帯させて記憶する(S1424)。
【0132】
次に基地局20は、位置標定の結果を出力するか否かを判定する(S1425)。位置標定の結果を出力する場合は(S1425:YES)S1426に進み、出力しない場合は(S1425:NO)S1421に戻る。尚、基地局20は、例えば、移動端末30が1/4波長〜1波長程度移動してその移動の前後における位置標定信号900を受信している場合(複数の反射波による影響の差が表れている可能性のある複数の位置標定信号900を受信している場合)に位置標定の結果を出力すると判定する。
【0133】
S1426では、基地局20は、S1424にて記憶した複数の評価情報に基づきマルチパスの影響が最小の組み合わせを選択する。
【0134】
続いて基地局20は、選択した組み合わせに基づき、移動端末30の位置標定を行い、その結果を、移動体3の位置標定の結果として出力する(S1427)。
【0135】
以上に説明したように、基地局20は、アンテナ対の組み合わせや、移動端末30が位置標定信号900を送信した位置の組み合わせの異なる、複数のバリエーションのうちの少なくとも2つ以上に基づき、移動端末30から受信する位置標定信号900のマルチパスの影響度合いを求め、そのうちマルチパスの影響度合いが最も少ないと判断される組み合わせによって標定される位相差を用いて標定される位置を移動体3の位置として出力するので、選択肢にマルチパスの影響度合いのより少ない組み合わせが含まれる可能性が高まり、これによりマルチパスの影響のより少ない位置標定信号900によって位置標定が行われる可能性が高まり、位置標定精度の向上を図ることができる。
【0136】
また本実施形態の位置標定システム1おいては、移動体3の位置が変化することによってバリエーションの数を増やすことができるので、特別な仕組みを設けることなく(例えば、アンテナ34の数を増やしたりすることなく)、位置標定精度の向上を図ることができる。
【0137】
また第1乃至第4のいずれの方法においても、位相差を求める際にマルチパスの影響による誤差が相殺されるので、マルチパスの影響の評価を制度よく行うことができる。
【0138】
また第1乃至第4のいずれの方法においても、マルチパス評価情報をマルチパスの影響(マルチパスによる誤差)の差(=M1−M2)として求めるので、マルチパス評価情報として有効な値(マルチパスの影響を適切に表現した値)を得ることができる。例えば、マルチパスによる誤差が正負双方向に振れるような場合、マルチパスの影響を和(=M1+M2)として求めてしまうと、実際にはマルチパスの影響が大きいにも拘わらず、マルチパスの影響が過小評価されてしまう可能性があるが、マルチパス評価情報をマルチパスの影響(マルチパスによる誤差)の差(=M1−M2)としてs求めることでこれを回避することができる。)。
【0139】
また第1乃至第4のいずれの方法においても、位置標定の結果にマルチパスの影響が和の形(=M1+M2)で作用するので、マルチパスの影響が平均化され、位置標定の精度を高めることができる。
【0140】
尚、以上の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0141】
例えば、以上の実施形態では、移動端末30のアンテナ34から位置標定信号900を送信し、基地局20のアンテナ群25でこれを受信して、基地局20にて位置標定信号900が直接波であるか否かの判定や移動端末30の位置標定を行うようにしているが、位置標定信号900を基地局20から送信するようにし、移動端末30が位置標定信号900を受信し、移動端末30にて位置標定信号900のマルチパスの影響度合いを判断し、マルチパスの影響が最も少ない位置標定信号900として選択し、選択した位置標定信号900に基づき移動端末30にて自身の位置標定を行うようにしてもよい。尚、この場合、移動端末30にて標定した位置を示す情報を通信ネットワーク5や無線通信によりサーバ装置10や基地局20に送信するようにすれば、サーバ装置10や基地局20においても移動体3の位置を把握することができる。
【0142】
移動端末30に設ける位置標定信号900の送信手段として、例えば、アクティブ型もしくはパッシブ型のRFIDタグを用いてもよい。この場合、位置標定信号900は、RFIDタグが備えるアンテナコイルから自発的に送信するようにしてもよいし、送信側から電磁誘導により供給される電力を利用して受動的に送信するようにしてもよい。