(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、この光変調器及び光送信機の好適な実施の形態を詳細に説明する。以下の各実施例の説明においては、同様の構成要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
・光変調器の第1の例
図1は、実施の形態にかかる光変調器の第1の例を示す図である。
図1に示すように、光変調器は第1のマッハツェンダ型光導波路1、第1の分岐導波路2及び第1の受光部3を有する。
図1において、第1の受光部3はPD−Aと表されている。第1のマッハツェンダ型光導波路1及び第1の分岐導波路2は例えば光変調器チップの基板4に形成されていてもよい。
【0012】
第1のマッハツェンダ型光導波路1は第1の入力導波路5、1入力2出力型の第1の光分岐部6、第1の平行導波路7、第2の平行導波路8、2入力1出力型の第1の光合波部9を有する。
【0013】
第1の光分岐部6は第1の入力導波路5に連結されている。第1の平行導波路7は第1の光分岐部6の一方の出力端に連結されている。第2の平行導波路8は第1の光分岐部6のもう一方の出力端に連結されている。
【0014】
第1の光合波部9の一方の入力端は第1の平行導波路7に連結されている。第1の光合波部9のもう一方の入力端は第2の平行導波路8に連結されている。第1の平行導波路7と第2の平行導波路8とは、第1の光分岐部6と第1の光合波部9との間に平行に配置される。第1及び第2の平行導波路7,8は例えば基板4の長手方向に平行に配置されていてもよい。
【0015】
第1の光合波部9の出力端の向きは第1及び第2の平行導波路7,8に対して斜めに傾いている。
図1に示す例では、第1の光合波部9の出力端の向きは、第1及び第2の平行導波路7,8に対して0よりも大きいθcの角度をなして、基板4の
図1における上側の長辺側に傾いている。第1の光合波部9の出力端の向きは、第1の光合波部9の、第1の平行導波路7に連結される導波路部分と第2の平行導波路8に連結される導波路部分とのなす角の二等分線の方向に一致していてもよい。
【0016】
第1の分岐導波路2は第1の光合波部9の出力端に連結されている。第1の分岐導波路2から出力される2つの光の出力比をa:[1−a]とする。ただし、aは0.5よりも小さい正の実数である。
【0017】
第1の分岐導波路2の、出力比の値が[1−a]である導波路(以下、第1の出力[1−a]導波路と表す)10は、例えば第1及び第2の平行導波路7,8と同じ方向に伸びていてもよい。第1の出力[1−a]導波路10は基板4の端、例えば
図1における左端まで伸びていてもよい。
【0018】
第1の分岐導波路2の、出力比の値がaである導波路(以下、第1の出力a導波路と表す)11は、第1及び第2の平行導波路7,8に対して斜めに傾いている。
図1に示す例では、第1の出力a導波路11は、第1及び第2の平行導波路7,8に対して0よりも大きいθmの角度をなして、基板4の
図1における下側の長辺側に傾いている。
【0019】
つまり、第1の光合波部9の出力端と第1の出力a導波路11とは、第1及び第2の平行導波路7,8に対して互いに反対側に斜めに傾いている。第1の出力a導波路11は基板4の端、例えば
図1における左端まで伸びていてもよい。
【0020】
第1の受光部3は、第1の出力a導波路11から出射される光を受光可能な位置、すなわち第1の出力a導波路11の延長線上に配置される。フォトダイオード(PD:Photodiode)は第1の受光部3の一例である。本実施例では、第1の受光部3はフォトダイオードであるとする。
【0021】
光変調器は、上述する第1のマッハツェンダ型光導波路1、第1の分岐導波路2及び第1の受光部3の含む光変調部を複数、有していてもよい。例えば
図1に示す例では、光変調器は2つの光変調部を有する。なお、光変調器は3つ以上の光変調部を有していてもよい。以下の説明では、2つの光変調部が並列に配置されているとし、第1のマッハツェンダ型光導波路1、第1の分岐導波路2及び第1の受光部3を含む光変調部を第1の光変調部とし、もう一方の光変調部を第2の光変調部として説明する。
【0022】
第2の光変調部は第1の光変調部と同様である。第2の光変調部は第2のマッハツェンダ型光導波路21、第2の分岐導波路22及び第2の受光部23を有する。
図1において、第2の受光部23はPD−Bと表されている。
【0023】
第2の光変調部については、上述する第1の光変調部の説明において、第1のマッハツェンダ型光導波路1、第1の分岐導波路2及び第1の受光部3を、それぞれ第2のマッハツェンダ型光導波路21、第2の分岐導波路22及び第2の受光部23と読み替えるものとする。また、第1の入力導波路5、第1の光分岐部6、第1の平行導波路7、第2の平行導波路8及び第1の光合波部9を、それぞれ第2の入力導波路25、第2の光分岐部26、第3の平行導波路27、第4の平行導波路28及び第2の光合波部29と読み替えるものとする。
【0024】
また、第1の出力[1−a]導波路10及び第1の出力a導波路11を、それぞれ第2の出力[1−a]導波路30及び第2の出力a導波路31と読み替えるものとする。第2の出力[1−a]導波路30は、第2の分岐導波路22の、出力比の値が[1−a]である導波路のことである。第2の出力a導波路31は、第2の分岐導波路22の、出力比の値がaである導波路のことである。
【0025】
各光変調部において、マッハツェンダ型光導波路1,21の平行導波路7,8,27,28は基板4に互いに平行に配置されてもよい。また、基板4の端、例えば
図1における右端に、1入力2出力型の入力光分岐部36が配置されていてもよい。入力光分岐部36の入力端には例えば図示しないコネクタを介して光ファイバが接続されてもよい。
【0026】
入力光分岐部36の一方の出力端には第1のマッハツェンダ型光導波路1の第1の入力導波路5が接続されてもよい。入力光分岐部36のもう一方の出力端には第2のマッハツェンダ型光導波路21の第2の入力導波路25が接続されてもよい。入力光分岐部36から出力される2つの光の出力比は例えば1:1であってもよい。
【0027】
基板4は、例えばLiNbO
3(以下、LNと略す)またはLiTaO
2などの電気光学効果を有するZ−カットの結晶基板であってもよい。このような電気光学結晶を用いる光導波路デバイスは、結晶基板上の一部にTiなどの金属膜を形成して熱拡散させたり、パターニング後に安息香酸中でプロトン交換したりすることによって光導波路を形成し、光導波路の近傍に電極を設けることによって形成されてもよい。
【0028】
第1のマッハツェンダ型光導波路1において、第1の平行導波路7に沿って第1の信号電極41が設けられ、第2の平行導波路8に沿って接地電極43が設けられる。第1の信号電極41、及び第1の信号電極41を挟む接地電極42,43はコプレーナ電極を形成する。
【0029】
第2のマッハツェンダ型光導波路21において、第3の平行導波路27に沿って第2の信号電極51が設けられ、第4の平行導波路28に沿って接地電極52が設けられる。第2の信号電極51、及び第2の信号電極51を挟む接地電極52,43はコプレーナ電極を形成する。
【0030】
基板4にZカット基板を用いる場合には、第1の平行導波路7の真上に第1の信号電極41が配置され、第2の平行導波路8の真上に接地電極43が配置される。第3の平行導波路27の真上に第2の信号電極51が配置され、第4の平行導波路28の真上に接地電極52が配置される。それによって、Z方向の電界による屈折率変化を利用することができる。
【0031】
電気光学結晶と、第1の信号電極41、第2の信号電極51及び接地電極42,43,52との間には、例えば厚さ0.2〜2μm程度のSiO
2などのバッファ層が設けられてもよい。それによって、第1の平行導波路7、第2の平行導波路8、第3の平行導波路27及び第4の平行導波路28の中をそれぞれ伝搬する光が第1の信号電極41、接地電極43、第2の信号電極51及び接地電極52によって吸収されるのを防ぐことができる。
【0032】
第1の信号電極41は、図示しない抵抗を介して接地電極43に接続されており、それによって進行波電極となっていてもよい。第1の信号電極41に変調データに対応するマイクロ波の電気信号を印加すると、発生する電界によって第1の平行導波路7及び第2の平行導波路8の屈折率がそれぞれ+Δn
1及び−Δn
2のように変化する。それによって、第1の平行導波路7と第2の平行導波路8との間の位相差が変化し、マッハツェンダ干渉によって第1の光合波部9から出力される信号光が強度変調される。
【0033】
第2の信号電極51は、図示しない抵抗を介して接地電極52に接続されており、それによって進行波電極となっていてもよい。第2の信号電極51に変調データに対応するマイクロ波の電気信号を印加すると、発生する電界によって第3の平行導波路27及び第4の平行導波路28の屈折率がそれぞれ+Δn
3及び−Δn
4のように変化する。それによって、第3の平行導波路27と第4の平行導波路28との間の位相差が変化し、マッハツェンダ干渉によって第2の光合波部29から出力される信号光が強度変調される。
【0034】
第1の信号電極41及び第2の信号電極51の断面形状を変化させることによって、マイクロ波の実効屈折率を制御することができる。それによって、光とマイクロ波の速度を整合させることができ、高速の光応答特性を得ることができる。
【0035】
図2は、
図1に示す光変調器における光の伝搬の様子を示す図である。
図2において、矢印は光の進む向きを表す。
図2に示すように、入力光分岐部36の入力端にCW(Continuous Wave、連続波)光が入力されるとする。入力光分岐部36の入力端から入力される光は、入力光分岐部36において分岐され、第1のマッハツェンダ型光導波路1の第1の入力導波路5及び第2のマッハツェンダ型光導波路21の第2の入力導波路25を伝搬する。
【0036】
第1の入力導波路5を伝搬する光は、第1の光分岐部6において分岐され、第1の平行導波路7及び第2の平行導波路8を伝搬する。第1の平行導波路7を伝搬する光と第2の平行導波路8を伝搬する光とは、第1の光合波部9において合波される。第1の光合波部9からは、第1のマッハツェンダ型光導波路1におけるマッハツェンダ干渉によって光強度が変調された変調光が出力される。また、第1の光合波部9からは放射光が放射される。
【0037】
第1の光合波部9から出力される変調光は、第1の分岐導波路2の第1の出力[1−a]導波路10から出力される。変調光の一部は、第1の分岐導波路2において分岐され、第1の出力a導波路11からモニタ光として出力される。
図2には、第1の出力[1−a]導波路10から出力される変調光は、変調光Aと表されており、第1の出力a導波路11から出力されるモニタ光は、モニタ光Aと表されている。モニタ光Aは、第1の受光部3によって受光される。
【0038】
第2の入力導波路25を伝搬する光は、第2の光分岐部26において分岐され、第3の平行導波路27及び第4の平行導波路28を伝搬する。第3の平行導波路27を伝搬する光と第4の平行導波路28を伝搬する光とは、第2の光合波部29において合波される。第2の光合波部29からは、第2のマッハツェンダ型光導波路21におけるマッハツェンダ干渉によって光強度が変調された変調光が出力される。また、第2の光合波部29からは放射光が放射される。
【0039】
第2の光合波部29から出力される変調光は、第2の分岐導波路22の第2の出力[1−a]導波路30から出力される。変調光の一部は、第2の分岐導波路22において分岐され、第2の出力a導波路31からモニタ光として出力される。
図2には、第2の出力[1−a]導波路30から出力される変調光は、変調光Bと表されており、第2の出力a導波路31から出力されるモニタ光は、モニタ光Bと表されている。モニタ光Bは、第2の受光部23によって受光される。
【0040】
LN基板を用いる変調器では、温度変化などによって、オフとなる電圧が変化する。第1の受光部3によってモニタ光Aを受光し、変調データに対応するマイクロ波の電気信号に、変調光Aのパワーに応じたバイアス電圧を重畳することによって、基準となる光の位相を調節してもよい。第2の受光部23によってモニタ光Bを受光し、変調データに対応するマイクロ波の電気信号に、変調光Bのパワーに応じたバイアス電圧を重畳することによって、基準となる光の位相を調節してもよい。
【0041】
第1の出力[1−a]導波路10から出力される変調光Aと、第2の出力[1−a]導波路30から出力される変調光Bとを、互いの偏波が直交するようにして合波してもよい。そうすることによって、第1のマッハツェンダ型光導波路1及び第2のマッハツェンダ型光導波路21を有する光変調器をDP−BPSK(Dual Polarization Binary Phase Shift Keying)変調器として用いることができる。
【0042】
図1に示す光変調器によれば、第1及び第2の光合波部9,29の各出力端と第1及び第2の出力a導波路11,31とが反対側に傾くことによって、第1及び第2の光合波部9,29から放射されて第1及び第2の受光部3,23に入射する放射光が減る。従って、2入力1出力型の第1及び第2の光合波部9,29を用いる光変調器において、モニタ光の消光比を改善することができ、良好なモニタ光の消光比が得られる。
【0043】
・光変調器の第2の例
図3は、実施の形態にかかる光変調器の第2の例を示す図である。
図3に示す光変調器は、
図1に示す光変調器において、第1のマッハツェンダ型光導波路1の一方の平行導波路及び第2のマッハツェンダ型光導波路21の一方の平行導波路がそれぞれ長さ補正部61,62を有するものである。
【0044】
例えば
図1に示す例では、第1のマッハツェンダ型光導波路1において、第1の光合波部9の出力端が第1の平行導波路7及び第2の平行導波路8のうち、第1の平行導波路7の側に傾いている。従って、第1のマッハツェンダ型光導波路1においては、第1の平行導波路7側の導波路が第2の平行導波路8側の導波路よりも短い。
【0045】
また、第2のマッハツェンダ型光導波路21において、第2の光合波部29の出力端が第3の平行導波路27及び第4の平行導波路28のうち、第3の平行導波路27の側に傾いている。従って、第2のマッハツェンダ型光導波路21においては、第3の平行導波路27側の導波路が第4の平行導波路28側の導波路よりも短い。
【0046】
図3に示すように、第1の平行導波路7側の導波路に例えばS字状をなす第1の長さ補正部61が設けられることによって、第1の長さ補正部61がない場合よりも第1の平行導波路7側の導波路の長さが長くなる。それによって、第1の平行導波路7側の導波路の長さを第2の平行導波路8側の導波路の長さに近づけるか、または同じにすることができる。
【0047】
同様に、第3の平行導波路27側の導波路に例えばS字状をなす第2の長さ補正部62が設けられることによって、第2の長さ補正部62がない場合よりも第3の平行導波路27側の導波路の長さが長くなる。それによって、第3の平行導波路27側の導波路の長さを第4の平行導波路28側の導波路の長さに近づけるか、または同じにすることができる。
【0048】
図3に示すように、第1及び第2の長さ補正部61,62は、電極のない箇所に設けられていてもよい。第1及び第2の長さ補正部61,62の形状は、光の損失を抑えることを考慮すると、曲率半径の大きいS字状であるのが望ましい。第2の例のその他の構成は
図1に示す光変調器と同様であるので、同様の構成には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0049】
マッハツェンダの2本の導波路の長さが異なると、基準となるバイアス電圧が変化してしまうことがある。従って、マッハツェンダの2本の導波路の長さは同じであるのが望ましい。
図3に示す光変調器によれば、マッハツェンダの2本の導波路の長さが同じか、または長さの差が小さくなる。それによって、基準となるバイアス電圧が変化してしまうのを抑えることができる。
【0050】
・光変調器の第3の例
図4は、実施の形態にかかる光変調器の第3の例を示す図である。
図4に示す光変調器は、
図1に示す光変調器において、電極の下に、
図3に示す第2の例と同様に長さ補正部61,62を配置するものである。
【0051】
図4に示すように、第1及び第2の長さ補正部61,62は、第1及び第2の光合波部9,29の近くに配置されている接地電極52の下に配置されてもよい。第3の例のその他の構成は
図1または
図3に示す光変調器と同様であるので、同様の構成には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0052】
図4に示す光変調器によれば、接地電極52と第1及び第2の光合波部9,29との間に第1及び第2の長さ補正部61,62を配置する場合よりも基板4のサイズを小さくすることができる。従って、光変調器チップのサイズを小さくすることができる。
【0053】
・光変調器の第4の例
図5は、実施の形態にかかる光変調器の第4の例を示す図である。
図5に示す光変調器は、
図1に示す光変調器において、第1及び第2のマッハツェンダ型光導波路1,21にバイアス電圧を印加するDC電極66,67を有し、DC電極66,67の下に、
図3に示す第2の例と同様に長さ補正部61,62を配置するものである。
【0054】
図5に示すように、第1のDC電極66のうちの第1の平行導波路7の上に配置される電極の下に第1の長さ補正部61が配置されてもよい。第2のDC電極67のうちの第3の平行導波路27の上に配置される電極の下に第2の長さ補正部62が配置されてもよい。第4の例のその他の構成は
図1または
図3に示す光変調器と同様であるので、同様の構成には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0055】
長さ補正部61,62を、変調データに対応するマイクロ波の電気信号が印加される信号電極41,51の下に配置すると、長さ補正部61,62が湾曲しているため、信号電極41,51と接地電極43,52との間隔が広がる部分ができてしまう。その場合には、その電極間隔が広がる部分のインピーダンスが上がり、インピーダンスミスマッチによる電気信号の反射が発生してしまうため、変調帯域が狭くなってしまう。
【0056】
それに対して、
図5に示す光変調器によれば、信号電極41,51と接地電極43,52との間隔が一定であるため、インピーダンスミスマッチが起こらない。それによって、電気信号の反射の発生を抑えることができ、変調帯域が狭くなるのを防ぐことができる。
【0057】
・光変調器の第5の例
図6は、実施の形態にかかる光変調器の第5の例を示す図である。
図6に示す光変調器は、
図1に示す光変調器において、
図5に示す第4の例と同様にDC電極66,67を有し、DC電極66,67の下に、
図3に示す第2の例と同様に長さ補正部61,62を配置し、DC電極66,67の間に電極68,69,70を有するものである。
【0058】
図6に示すように、第1のDC電極66のうち、第1の平行導波路7の上に配置される電極と第2の平行導波路8の上に配置される電極との間に、第1のDC電極66との間に隙間を空けて電極68が配置されてもよい。第2のDC電極67のうち、第3の平行導波路27の上に配置される電極と第4の平行導波路28の上に配置される電極との間に、第2のDC電極67との間に隙間を空けて電極69が配置されてもよい。
【0059】
第1のDC電極66のうちの第2の平行導波路8の上に配置される電極と第2のDC電極67のうちの第3の平行導波路27の上に配置される電極との間に、第1及び第2のDC電極66,67との間に隙間を空けて電極70が配置されてもよい。これらの電極68,69,70は接地電極52に繋がっていてもよい。第5の例のその他の構成は
図1、
図3または
図5に示す光変調器と同様であるので、同様の構成には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0060】
第1の長さ補正部61を第1のDC電極66の下に配置すると、第1の長さ補正部61が湾曲しているため、第1のDC電極66のうち、第1の平行導波路7の上に配置される電極と第2の平行導波路8の上に配置される電極との間隔が広がる部分ができてしまう。第2の長さ補正部62を第2のDC電極67の下に配置する場合も同様である。その場合には、その電極間隔が広がることによって電界が弱くなるため、駆動電圧が上昇してしまう。
【0061】
それに対して、
図6に示す光変調器によれば、長さ補正部61,62によって第1の平行導波路7と第2の平行導波路8との間隔や、第3の平行導波路27と第4の平行導波路28との間隔が広がっても、電極68,69,70があることによって、DC電極66,67の電極間隔は一定である。従って、駆動電圧の上昇を抑えることができる。
【0062】
・シングルモードの導波路による放射光成分の除去
ところで、モニタ光の消光比を改善するには、第1及び第2の光合波部9,29において放射光をできるだけ放射させて放射光成分を除去し、その後の第1及び第2の分岐導波路2,22に放射光成分をできるだけ混入させないのが望ましい。そのためには、第1及び第2の光合波部9,29と第1及び第2の分岐導波路2,22との間のそれぞれの導波路にシングルモードの部分があってもよい。
【0063】
第1及び第2の光合波部9,29における導波路の幅は、他の部分の導波路の幅よりも太くなることがある。幅が太い導波路はマルチモードになりやすい。マルチモードの部分からシングルモードの部分へ移行する境界部分では、光のモードが急激に変化する。このような急激なモードの変化は散乱損失を誘発し、デバイスの挿入損失を増加させてしまう。
【0064】
このような急激なモードの変化を防ぐためには、第1及び第2の光合波部9,29から第1及び第2の分岐導波路2,22へ向かってそれぞれの導波路がテーパ状に狭くなっていてもよい。あるいは、第1及び第2の光合波部9,29から第1及び第2の分岐導波路2,22へ向かってそれぞれの導波路の比屈折率が徐々に小さくなっていてもよい。
【0065】
図7は、2入力1出力型光合波部への入力光の位相が等しい場合の光の伝搬を説明する図である。
図7に示すように、第1の光合波部9へ入力される2つの光71,72のパワーが等しく、かつ位相も等しい場合、第1の光合波部9の出力は全て基本モードに結合し、基本モードの光73として第1の光合波部9から出力される。
図7において、矢印は光の進む向きを表す。第2の光合波部29についても同様である。
【0066】
図8は、2入力1出力型光合波部への入力光の位相が180°異なる場合の光の伝搬を説明する図である。
図8に示すように、第1の光合波部9へ入力される2つの光71,72のパワーが等しく、かつ位相が180°異なる場合、第1の光合波部9の出力は1次モードなどの高次モードに結合する。第1の光合波部9から出力される光は、マルチモードの導波路を伝搬する場合、1次モードの光74として伝搬する。
図8において、矢印は光の進む向きを表す。第2の光合波部29についても同様である。
【0067】
図8に示す1次モードの光74は、本来オフ光であるが、ノイズ成分となる。従って、この1次モードの光74が第1の分岐導波路2に達して出力されると、本来オフである状態、すなわち出力のパワーがゼロである状態においてノイズ光が出力されることになる。モニタ光の消光比は、ノイズ成分がない場合に理論的に無限大となる。出力にノイズ成分が含まれると、そのノイズ成分のパワーに応じてモニタ光の消光比が有限の値となり、劣化することになる。
【0068】
そこで、
図9及び
図10に示すように、第1の光合波部9から第1の分岐導波路2へ向かって導波路をテーパ状に狭くすると、導波路の幅の狭い部分でシングルモードとなる。第1の光合波部9から第1の分岐導波路2へ向かって導波路の比屈折率を徐々に小さくしても同様であり、比屈折率の小さい部分でシングルモードとなる。第2の光合波部29についても同様である。
【0069】
図9は、2入力1出力型光合波部への入力光の位相が等しい場合のシングルモード部分における光の伝搬を説明する図である。
図9に示すように、基本モードの光73は、導波路の幅がテーパー状に狭くなるシングルモード部分を伝搬する。
図9において、矢印は光の進む向きを表す。
【0070】
図10は、2入力1出力型光合波部への入力光の位相が180°異なる場合のシングルモード部分における光の伝搬を説明する図である。
図10に示すように、1次モードの光74は、導波路の幅がテーパー状に狭くなるシングルモード部分を伝搬できずに、放射光として放射される。それによって、1次モードの光74は第1の分岐導波路2に入力されず、第1の分岐導波路2から出力される変調光A及びモニタ光Aはノイズを含まないため、モニタ光の消光比が改善される。
【0071】
従って、
図1、
図3,
図4または
図5に示す各光変調器において、第1及び第2の光合波部9,29と第1及び第2の分岐導波路2,22との間のそれぞれの導波路にシングルモードの部分があってもよい。それによって、第1及び第2の分岐導波路2,22にノイズ成分が混入するのを防ぐことができるので、モニタ光の消光比が改善される。
【0072】
導波路のシングルモードの部分は、第1及び第2の光合波部9,29から第1及び第2の分岐導波路2,22へ向かってそれぞれの導波路をテーパ状に狭くすることによって、あるいはそれぞれの導波路の比屈折率を徐々に小さくすることによって、形成されていてもよい。それによって、マルチモードの部分からシングルモードの部分へ移行する境界部分における光のモードの急激な変化を防ぐことができる。従って、散乱損失を抑え、デバイスの挿入損失が増加するのを防ぐことができる。
【0073】
・光変調器の第6の例
図11は、実施の形態にかかる光変調器の第6の例を示す図である。
図11に示す光変調器は、
図1に示す光変調器において、位相が互いに90°異なるようにそれぞれの位相を調整して第1の光合波部9の出力光と第2の光合波部29の出力光とを合波させることによって、DQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)信号を生成するものである。
【0074】
また、
図11に示す光変調器は、
図5に示す第4の例と同様にDC電極66,67を有し、DC電極66,67の下に、
図3に示す第2の例と同様に長さ補正部61,62を配置し、
図6に示す第5の例と同様にDC電極66,67の間に電極68,69,70を有するものである。
【0075】
図11に示すように、第1の光合波部9の出力端には、
図1に示す第1の例における第1の分岐導波路2の代わりに、第1の出力導波路81が連結されている。第2の光合波部29の出力端には、
図1に示す第1の例における第2の分岐導波路22の代わりに、第2の出力導波路82が連結されている。
【0076】
第1の出力導波路81の出力端は2入力1出力型の第3の光合波部83の一方の入力端に連結されている。第2の出力導波路82の出力端は第3の光合波部83のもう一方の入力端に連結されている。第3の光合波部83の出力端には第3の分岐導波路84が連結されている。第3の分岐導波路84から出力される2つの光の出力比をa:[1−a]とする。ただし、aは0.5よりも小さい正の実数である。
【0077】
第3の分岐導波路84の、出力比の値が[1−a]である導波路(以下、第3の出力[1−a]導波路と表す)85は、例えば第1及び第2の平行導波路7,8と同じ方向に伸びていてもよい。第3の出力[1−a]導波路85は基板4の端、例えば
図11における左端まで伸びていてもよい。
【0078】
第3の分岐導波路84の、出力比の値がaである導波路(以下、第3の出力a導波路と表す)86は、第1及び第2の平行導波路7,8に対して斜めに傾いている。
図11に示す例では、第3の出力a導波路86は、第1及び第2の平行導波路7,8に対して0よりも大きいθmの角度をなして、基板4の
図11における下側の長辺側に傾いている。
【0079】
つまり、第1及び第2の光合波部9,29の出力端と第3の出力a導波路86とは、第1及び第2の平行導波路7,8に対して互いに反対側に斜めに傾いている。第3の出力a導波路86は基板4の端、例えば
図11における左端まで伸びていてもよい。
【0080】
第3の出力a導波路86から出射される光を受光可能な位置、すなわち第3の出力a導波路86の延長線上には、第3の受光部87が配置される。フォトダイオードは第3の受光部87の一例である。本実施例では、第3の受光部87はフォトダイオードであるとし、
図11において第3の受光部87をPDと表す。第6の例のその他の構成は
図1、
図3、
図5または
図6に示す光変調器と同様であるので、同様の構成には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0081】
図12は、
図11に示す光変調器における光の伝搬の様子を示す図である。
図12において、矢印は光の進む向きを表す。入力光分岐部36の入力端にCW光が入力されてから、第1及び第2の平行導波路7,8をそれぞれ伝搬する光が第1の光合波部9において合波されるまで、また第3及び第4の平行導波路27,28をそれぞれ伝搬する光が第2の光合波部29において合波されるまでは、光変調器の第1の例において
図2を参照しながら説明した通りである。従って、重複する説明を省略する。
【0082】
第1の光合波部9からは、第1のマッハツェンダ型光導波路1におけるマッハツェンダ干渉によって光強度が変調された変調光が出力される。第2の光合波部29からは、第2のマッハツェンダ型光導波路21におけるマッハツェンダ干渉によって光強度が変調された変調光が出力される。また、第1及び第2の光合波部9,29からは放射光が放射される。
【0083】
第1の光合波部9から出力される変調光は、第1の出力導波路81を伝搬し、第3の光合波部83において、第2の光合波部29から出力され、第2の出力導波路82を伝搬してくる変調光と合波される。第1の出力導波路81から第3の光合波部83に入力する変調光と、第2の光合波部29から第3の光合波部83に入力する変調光とは、位相が互いに90°異なる。
【0084】
第3の光合波部83から出力される変調光は、第3の分岐導波路84の第3の出力[1−a]導波路85から出力される。変調光の一部は、第3の分岐導波路84において分岐され、第3の出力a導波路86からモニタ光として出力される。モニタ光は、第3の受光部87によって受光される。
【0085】
図11に示す光変調器によれば、第1及び第2の光合波部9,29の各出力端と第3の出力a導波路86とが反対側に傾くことによって、第1及び第2の光合波部9,29から放射されて第3の受光部87に入射する放射光が減る。従って、2入力1出力型の第1及び第2の光合波部9,29を用いるDQPSK光変調器において、モニタ光の消光比を改善することができ、良好なモニタ光の消光比が得られる。
【0086】
なお、
図1、
図3、
図4、
図5または
図6に示す光変調器に対して、
図11に示す第6の例のように、第1及び第2のマッハツェンダ型光導波路1,21からそれぞれ出力される変調光を、位相が互いに90°異なるようにそれぞれの位相を調整して合波させてもよい。また、第3の光合波部83から放射光が放射される場合には、第3の光合波部83の出力端の向きを、第1及び第2の平行導波路7,8に対して0よりも大きいθcの角度をなして、基板4の
図11における上側の長辺側に傾けてもよい。第3の光合波部83の出力端の向きを傾ける場合、第1の出力導波路81の途中に長さ補正部を設けてもよい。
【0087】
・光送信機の一例
図13は、実施の形態にかかる光送信機の一例を示す図である。
図13に示すように、光送信機101は、光変調器102、発光素子103、データ生成回路104及びドライバ105を有する。
【0088】
発光素子103は、光を出射する。レーザーダイオード(LD)は発光素子103の一例である。データ生成回路104は、変調データを生成する。ドライバ105は、データ生成回路104から出力される変調データに対応する振幅の電気信号を生成する。光変調器102は、ドライバ105から出力される電気信号に基づいて、発光素子103から出射される光の変調を行う。
図1、
図3〜
図6または
図11のそれぞれに示す光変調器は、光送信機101の光変調器102の一例である。光変調器102から出力される光は,図示省略するコネクタを介して光ファイバ106へ出力されてもよい。
【0089】
図13に示す光送信機によれば、光変調器102として
図1、
図3〜
図6または
図11のそれぞれに示す光変調器を用いることによって、モニタ光の消光比を改善することができ、良好なモニタ光の消光比が得られる。
【0090】
なお、
図1、
図3〜
図6または
図11のそれぞれに示す光変調器においては、マッハツェンダ型光導波路を2つ有するが、マッハツェンダ型光導波路を3つ以上有する場合も同様である。
【0091】
上述した各実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0092】
(付記1)一対の平行導波路、及び前記一対の平行導波路からそれぞれ出力される光を合波する2入力1出力型の光合波部を有するマッハツェンダ型光導波路と、前記光合波部から出力される光の一部を分岐させる分岐導波路と、前記分岐導波路から出力される光を受光する受光部と、を有し、前記分岐導波路の出力端の向きが前記受光部へ向かって前記平行導波路に対して斜めに傾いており、前記光合波部の出力端の向きが前記平行導波路に対して前記分岐導波路の出力端とは反対側に斜めに傾いていることを特徴とする光変調器。
【0093】
(付記2)前記一対の平行導波路のうちの一方の導波路に、該導波路の長さを補正する長さ補正部を有することを特徴とする付記1に記載の光変調器。
【0094】
(付記3)電極の下に前記長さ補正部を有することを特徴とする付記2に記載の光変調器。
【0095】
(付記4)前記電極は、前記平行導波路にバイアス電圧を印加する電極であることを特徴とする付記3に記載の光変調器。
【0096】
(付記5)前記平行導波路にバイアス電圧を印加する電極の間に電極を有することを特徴とする付記4に記載の光変調器。
【0097】
(付記6)前記光合波部と前記分岐導波路との間の導波路にシングルモードの部分を有することを特徴とする付記1乃至5のいずれか一項に記載の光変調器。
【0098】
(付記7)前記光合波部から前記分岐導波路へ向かって導波路がテーパ状に狭くなることを特徴とする付記6に記載の光変調器。
【0099】
(付記8)前記光合波部から前記分岐導波路へ向かって導波路の比屈折率が徐々に小さくなることを特徴とする付記6に記載の光変調器。
【0100】
(付記9)光を出射する発光素子と、変調データを生成するデータ生成回路と、前記データ生成回路から出力される変調データに対応する電気信号を生成するドライバと、前記ドライバから出力される電気信号に基づいて、前記発光素子から出射される光の変調を行う光変調器と、を備え、前記光変調器は、一対の平行導波路、及び前記一対の平行導波路からそれぞれ出力される光を合波する2入力1出力型の光合波部を有するマッハツェンダ型光導波路と、前記光合波部から出力される光の一部を分岐させる分岐導波路と、前記分岐導波路から出力される光を受光する受光部と、を有し、前記分岐導波路の出力端の向きが前記受光部へ向かって前記平行導波路に対して斜めに傾いており、前記光合波部の出力端の向きが前記平行導波路に対して前記分岐導波路の出力端とは反対側に斜めに傾いていることを特徴とする光送信機。
【0101】
(付記10)前記一対の平行導波路のうちの一方の導波路に、該導波路の長さを補正する長さ補正部を有することを特徴とする付記9に記載の光送信機。
【0102】
(付記11)電極の下に前記長さ補正部を有することを特徴とする付記10に記載の光送信機。
【0103】
(付記12)前記電極は、前記平行導波路にバイアス電圧を印加する電極であることを特徴とする付記11に記載の光送信機。
【0104】
(付記13)前記平行導波路にバイアス電圧を印加する電極の間に電極を有することを特徴とする付記12に記載の光送信機。
【0105】
(付記14)前記光合波部と前記分岐導波路との間の導波路にシングルモードの部分を有することを特徴とする付記9乃至13のいずれか一項に記載の光送信機。
【0106】
(付記15)前記光合波部から前記分岐導波路へ向かって導波路がテーパ状に狭くなることを特徴とする付記14に記載の光送信機。
【0107】
(付記16)前記光合波部から前記分岐導波路へ向かって導波路の比屈折率が徐々に小さくなることを特徴とする付記14に記載の光送信機。