(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  測定対象となる測定ガスと接触する側において外部電極と、基準ガスと接触する側において内部電極と、それぞれ接続され、測定ガスの酸素濃度と基準ガスの酸素濃度との差に応じて起電力を発生するジルコニア素子と、
  前記外部電極に接続された第1の白金電極と、
  前記内部電極に接続された第2の白金電極と
  を備える酸素濃度測定装置において、
  前記第2の白金電極の先端部分は、前記内部電極との接触面に沿って屈曲され、前記内部電極と面接合していることを特徴とする酸素濃度測定装置。
  前記第2の白金電極の先端部分は、前記内部電極との接触面に沿って所定形状の領域を形成するように複数回屈曲させた形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の酸素濃度測定装置。
  前記第2の白金電極の先端部分は、前記ジルコニア素子と、前記内部電極及び前記ジルコニア素子を保持するセンサ保持部材とで挟持されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の酸素濃度測定装置。
【背景技術】
【0002】
  金属部品の熱処理、表面処理等に用いる炉内では、酸素は非常に微量である。このような微量の酸素を測定するために、主としてセラミックスを用いた酸素濃度測定装置が採用されている。
【0003】
  特許文献1には、従来の酸素濃度測定装置が開示されている。
図8は、従来の酸素濃度測定装置のセンサ部分近傍の内部構造を模式的に示す部分断面図である。
図8に示すように、従来の酸素濃度測定装置では、アルミナ管13内部を流れる基準ガスと、測定対象となる測定ガスとの酸素濃度差によりジルコニア(素子)12で発生する起電力を、内部電極16に接続された白金電極14と外部電極17に接続された白金電極15との電位差として測定する。
【0004】
  発生する起電力の大きさは、基準ガスの温度によっても変動する。そこで、熱電対18を用いた熱電対温度測定部により基準ガスの温度を測定しておくことにより、ネルンストの式を用いて、周囲環境の温度変化に応じた測定ガスの酸素濃度を算出することができる。
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
  しかし、特許文献1に開示された酸素濃度測定装置は、内部電極16の一部分に白金電極14が接続されており、内部電極16と白金電極14との接触不良、換言すればジルコニア(素子)12と白金電極14との接触不良が発生するおそれがあった。すなわち、白金電極14は、先端を屈曲させた状態で内部電極16と接続しているので、屈曲の度合いによっては線接触できずに点接触で接続される可能性が残されていた。したがって、ジルコニア素子12における酸素濃度の測定精度に個体差が生じやすく、酸素センサとして製品にばらつきが生じることを抑制することが困難であるという問題点があった。
【0007】
  本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、ジルコニア素子における酸素濃度の測定精度に個体差が生じにくく、酸素センサとして製品にばらつきが生じることを抑制することが可能な酸素濃度測定装置を提供することを目的とする。
 
【課題を解決するための手段】
【0008】
  上記目的を達成するために本発明に係る酸素濃度測定装置は、測定対象となる測定ガスと接触する側において外部電極と、基準ガスと接触する側において内部電極と、それぞれ接続され、測定ガスの酸素濃度と基準ガスの酸素濃度との差に応じて起電力を発生するジルコニア素子と、前記外部電極に接続された第1の白金電極と、前記内部電極に接続された第2の白金電極とを備える酸素濃度測定装置において、前記第2の白金電極の先端部分は、前記内部電極との接触面に沿って屈曲され、前記内部電極と面
接合していることを特徴とする。
【0009】
  上記構成では、第2の白金電極の先端部分が、内部電極との接触面に沿って屈曲され、内部電極と面
接合しているので、第2の白金電極を内部電極と確実に接触させることができ、ひいてはセンサ素子であるジルコニア素子と確実に接触させることができる。したがって、ジルコニア素子と第2の白金電極とを電気的に確実に接続することができ、ジルコニア素子における酸素濃度の測定精度に個体差が生じにくく、酸素センサとして製品にばらつきが生じることを抑制することが可能となる。
【0010】
  また、本発明に係る酸素濃度測定装置は、前記第2の白金電極の先端部分は、前記内部電極との接触面に沿って渦巻状に形成されていることが好ましい。
【0011】
  上記構成では、第2の白金電極の先端部分は、内部電極との接触面に沿って渦巻状に形成されているので、第2の白金電極を内部電極と面接触させることができ、ひいてはセンサ素子であるジルコニア素子と確実に接触させることができる。したがって、ジルコニア素子と第2の白金電極とを電気的に確実に接続することができ、ジルコニア素子における酸素濃度の測定精度に個体差が生じにくく、酸素センサとして製品にばらつきが生じることを抑制することが可能となる。
【0012】
  また、本発明に係る酸素濃度測定装置は、前記第2の白金電極の先端部分は、前記内部電極との接触面に沿って所定形状の領域を形成するように複数回屈曲させた形状に形成されていることが好ましい。
【0013】
  上記構成では、第2の白金電極の先端部分は、内部電極との接触面に沿って所定形状の領域を形成するように複数回屈曲させた形状に形成されているので、第2の白金電極を内部電極と面接触させることができ、ひいてはセンサ素子であるジルコニア素子と確実に接触させることができる。したがって、ジルコニア素子と第2の白金電極とを電気的に確実に接続することができ、ジルコニア素子における酸素濃度の測定精度に個体差が生じにくく、酸素センサとして製品にばらつきが生じることを抑制することが可能となる。
【0014】
  また、本発明に係る酸素濃度測定装置は、前記第2の白金電極の先端部分は、前記ジルコニア素子と、前記内部電極及び前記ジルコニア素子を保持するセンサ保持部材とで挟持されていることが好ましい。
【0015】
  上記構成では、第2の白金電極の先端部分は、ジルコニア素子と、内部電極及びジルコニア素子を保持するセンサ保持部材とで挟持されているので、第2の白金電極を内部電極とより確実に接触させることができ、ひいてはセンサ素子であるジルコニア素子と確実に接触させることができる。したがって、ジルコニア素子と第2の白金電極とを電気的に確実に接続することができ、ジルコニア素子における酸素濃度の測定精度に個体差が生じにくく、酸素センサとして製品にばらつきが生じることを抑制することが可能となる。
 
【発明の効果】
【0016】
  上記構成によれば、第2の白金電極の先端部分が、内部電極との接触面に沿って屈曲され、内部電極と面
接合しているので、第2の白金電極を内部電極と確実に接触させることができ、ひいてはセンサ素子であるジルコニア素子と確実に接触させることができる。したがって、ジルコニア素子と第2の白金電極とを電気的に確実に接続することができ、ジルコニア素子における酸素濃度の測定精度に個体差が生じにくく、酸素センサとして製品にばらつきが生じることを抑制することが可能となる。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る酸素濃度測定装置の構成を示す断面図である。
 
【
図2】本発明の実施の形態に係る酸素濃度測定装置の先端部分の構成を示す部分断面図である。
 
【
図3】ジルコニア素子で発生する起電力と測定ガスの酸素濃度との関係を示すグラフである。
 
【
図4】本発明の実施の形態に係る酸素濃度測定装置の第2の白金電極の形状を模式的に示す平面図及び側面図である。
 
【
図5】本発明の実施の形態に係る酸素濃度測定装置の第2の白金電極の他の形状を模式的に示す平面図である。
 
【
図6】本発明の実施の形態に係る酸素濃度測定装置の第2の白金電極の他の形状を模式的に示す平面図である。
 
【
図7】本発明の実施の形態に係る酸素濃度測定装置の先端部分の構成を拡大して示す部分拡大断面図である。
 
【
図8】従来の酸素濃度測定装置のセンサ部分近傍の内部構造を模式的に示す部分断面図である。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0018】
  以下、本発明の実施の形態に係る酸素濃度測定装置について、図面に基づいて具体的に説明する。
 
【0019】
  図1は、本発明の実施の形態に係る酸素濃度測定装置の構成を示す断面図である。本実施の形態に係る酸素濃度測定装置1は、酸素濃度を測定する基準となる基準ガスが流入する円筒状のアルミナ管13の一端に、ジルコニア素子12を含む酸素センサ部10を備えている。アルミナ管13の他端には、基準ガスを流入する基準ガス流入口2を備えている。また、アルミナ管13を内挿するアルミナ管20を備えており、アルミナ管13とアルミナ管20との間の空間を基準ガス流出経路として機能させている。
 
【0020】
  図2は、本発明の実施の形態に係る酸素濃度測定装置1の先端部分の構成を示す部分断面図である。
図2に示すように、本実施の形態に係る酸素濃度測定装置1は、ジルコニア素子12を含む酸素センサ部10を一端に備えたアルミナ管13が、アルミナ管20を内挿する保護管19に収納されている。ジルコニア素子12は、アルミナ管13内部を流れる基準ガスと接触する側において内部電極16と、酸素濃度の測定対象となる測定ガスと接触する側において外部電極17とに、それぞれ接続されている。
 
【0021】
  また、白金電極(第1の白金電極)15が外部電極17に、白金電極(第2の白金電極)14が内部電極16に、それぞれ接続されている。なお、ジルコニア素子12は、外部電極17及び内部電極16と一体化して形成されている。内部電極16は、例えばジルコニア素子12の基準ガスと接触する側に白金ペーストを塗布しておき、第2の白金電極14を後述するセンサ保持部材で押しつけた状態で焼き付けることにより形成される。
 
【0022】
  ジルコニア素子12は、一定の高温環境下では、酸素濃度が高い方から低い方へ電荷が移動するという性質を有している。したがって、電荷の移動によりジルコニア素子12に発生する起電力を、内部電極16と外部電極17との電位差として測定することにより、測定ガスの酸素濃度を測定することができる。
 
【0023】
  つまり、基準ガスの酸素濃度をP
R (%)、測定ガスの酸素濃度をP
M (%)とした場合、(式1)のネルンストの式が成立する。
 
【0025】
  本実施の形態では、ジルコニア素子12において、酸素濃度の高い側では酸素イオンが発生し、低い側では酸素イオンから酸素が発生するという、イオン電導が生じる。イオン電導の化学反応式は、(式2)のように表すことができる。
 
【0027】
  したがって、(式1)における「反応に含まれる電子数n」は、‘4’となる。
 
【0028】
  基準ガスの酸素濃度P
R は既知であることから、ジルコニア素子12で発生する起電力Eを測定することにより、測定ガスの酸素濃度P
M を(式1)から算出することができる。
図3は、ジルコニア素子12で発生する起電力Eと測定ガスの酸素濃度P
M との関係を示すグラフである。
図3に示すように、酸素濃度P
M は起電力Eの対数関数値として変動していることがわかる。したがって、ジルコニア素子12で発生する起電力Eを測定することにより、測定ガスの酸素濃度P
M を求めることができる。
 
【0029】
  なお、(式1)に示すネルンストの式からもわかるように、起電力Eは、周囲の雰囲気の温度(絶対温度)Tによって変動する。そこで、熱電対18を用いた熱電対温度測定部により基準ガスの温度(絶対温度)Tを測定することにより、ネルンストの式から正しい起電力Eを求めることができ、より正確に測定ガスの酸素濃度P
M を求めることができる。
 
【0030】
  図2に戻って、本実施の形態に係る酸素濃度測定装置1は、アルミナ管13の一端に、円柱状の第1のセンサ保持部材31と、第1のセンサ保持部材31と嵌め合わせることが可能な、ジルコニア素子12を保持する円柱状の第2のセンサ保持部材32とを備えている。第1のセンサ保持部材31と第2のセンサ保持部材32との間には基準ガスを流通させる隙間を設けてある。アルミナ管13及び第1の保持部材31から流入した基準ガスは、第1のセンサ保持部材31と第2のセンサ保持部材32との間の隙間から基準ガス流出経路を経て、外部へと流出する。
 
【0031】
  なお、アルミナ管13及び第1のセンサ保持部材31には、熱電対18を挿通させてあり、第1のセンサ保持部材31を通過した位置において熱電対18を結合してある。熱電対18の結合部分を熱電対温度測定部として機能させて基準ガスの温度を測定することにより、測定ガスの酸素濃度P
M の測定精度を高めることができる。
 
【0032】
  また、第2の白金電極14は、ジルコニア素子12(内部電極16)との接触面積を増やすように形状を工夫している。すなわち、第2の白金電極14は、その先端部分がジルコニア素子12(内部電極16)との接触面に沿って屈曲され、ジルコニア素子12(内部電極16)と面接触することが可能な形状、例えば渦巻状に形成されている。
図4は、本発明の実施の形態に係る酸素濃度測定装置1の第2の白金電極14の形状を模式的に示す平面図及び側面図である。
図4(a)は、第2の白金電極14を酸素濃度測定装置1の測定ガスと接触する側から見た平面図であり、
図4(b)は、第2の白金電極14を酸素濃度測定装置1の側面側から見た側面図である。
 
【0033】
  図4(b)に示すように、第2の白金電極14は、先端部分をジルコニア素子12(内部電極16)との接触面に沿って屈曲させてあるとともに、
図4(a)に示すように、先端部分が渦巻状に形成されている。
図4(a)では、渦巻状の第2の白金電極14間に隙間が存在するように記載されているが、隙間があっても良いし、互いに密着させて隙間がないように形成されていても良い。
 
【0034】
  本実施の形態では、アルミナ管13が円筒状であるので、先端部分が円形状で渦巻状の第2の白金電極14を形成しているが、これに限定されるものではなく、例えば先端部分が多角形状で渦巻状の第2の白金電極14を形成しても良い。
図5は、本発明の実施の形態に係る酸素濃度測定装置1の第2の白金電極14の他の形状を模式的に示す平面図である。
 
【0035】
  図5(a)は、四角形状で渦巻状に形成された第2の白金電極14を酸素濃度測定装置1の測定ガスと接触する側から見た平面図である。また、
図5(b)は、多角形状で渦巻状に形成された第2の白金電極14を酸素濃度測定装置1の測定ガスと接触する側から見た平面図である。このように、第2の白金電極14の先端部分を多角形状で渦巻状に形成することにより、
図4と同様、第2の白金電極14をジルコニア素子12(内部電極16)と確実に接触させることができ、第2の白金電極14とジルコニア素子12(内部電極16)との接触不良が生じにくくなる。
 
【0036】
  また、先端部分の形状は、第2の白金電極14とジルコニア素子12(内部電極16)との接触面積を増大させる形状であれば、特に渦巻状に限定されるものでもない。
図6は、本発明の実施の形態に係る酸素濃度測定装置1の第2の白金電極14の他の形状を模式的に示す平面図である。
 
【0037】
  図6(a)では、先端部分を所定の円形領域に収まるように複数回屈曲させながら、例えば先端部分が蛇腹状の第2の白金電極14を形成している。また、
図6(b)では、先端部分を所定の矩形領域に収まるように複数回屈曲させながら、例えば先端部分が蛇腹状の第2の白金電極14を形成している。このように、所定形状の領域に収まるように複数回屈曲させた形状に第2の白金電極14の先端部分を形成することにより、
図4及び
図5と同様、第2の白金電極14をジルコニア素子12(内部電極16)と確実に接触させることができ、第2の白金電極14とジルコニア素子12(内部電極16)との接触不良が生じにくくなる。
 
【0038】
  なお、渦巻状又は蛇腹状に形成した第2の白金電極14の先端部分を、ジルコニア素子12(内部電極16)の一方の面に圧着させることが好ましい。本実施の形態では、第2の白金電極14の先端部分を、ジルコニア素子12(内部電極16)とジルコニア素子12へ第2の白金電極14を押しつけて保持する第2のセンサ保持部材32とで挟持している。
 
【0039】
  図7は、本発明の実施の形態に係る酸素濃度測定装置1の先端部分の構成を拡大して示す部分拡大断面図である。
図7に示すように、本実施の形態に係る酸素濃度測定装置1は、第2の白金電極14の先端部分をジルコニア素子12(内部電極16)との接触面に沿って略直角に屈曲させ、屈曲させた先端部分は、
図4乃至
図6に示すように、ジルコニア素子12(内部電極16)との接触面積を増大させるような形状に形成してある。そして、斯かる形状に形成された第2の白金電極14の先端部分を、ジルコニア素子12(内部電極16)と、ジルコニア素子12へ第2の白金電極14を押しつけて保持する第2のセンサ保持部材32とで挟持している。
 
【0040】
  第2のセンサ保持部材32は、アルミナ管13及び第1のセンサ保持部材31によってジルコニア素子12側へと押しつけられ、第2の白金電極14の先端部分と、ジルコニア素子12(内部電極16)とを圧着させている。これにより、第2の白金電極14の先端部分と、ジルコニア素子12(内部電極16)とを、確実に接触させることができる。
 
【0041】
  以上のように本実施の形態によれば、第2の白金電極14の先端部分を、内部電極16との接触面に沿って屈曲され、内部電極16と面
接合しているので、第2の白金電極14を内部電極16と確実に接触させることができ、ひいてはジルコニア素子12を含む酸素センサ部10と確実に接触させることができる。したがって、ジルコニア素子12と第2の白金電極14とを電気的に確実に接続することができ、ジルコニア素子12における酸素濃度の測定精度に個体差が生じにくく、酸素センサとして製品にばらつきが生じることを抑制することが可能となる。
 
【0042】
  その他、上述した実施の形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができることは言うまでもない。