特許第6186720号(P6186720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6186720設備機器の制御装置およびそれを備えたエネルギー管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186720
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】設備機器の制御装置およびそれを備えたエネルギー管理システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/02 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   F24F11/02 K
   F24F11/02 P
   F24F11/02 103D
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-283207(P2012-283207)
(22)【出願日】2012年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-126274(P2014-126274A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】米森 強
(72)【発明者】
【氏名】吉見 学
(72)【発明者】
【氏名】小竹 正人
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−325539(JP,A)
【文献】 特開平11−159837(JP,A)
【文献】 特開平09−113011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常運転時の消費エネルギーよりも起動時の消費エネルギーのほうが大きい設備機器(10)の制御装置(80)と、
前記設備機器の制御装置に対して消費エネルギー抑制要求を送信する、エネルギー統括装置(1a)と、
前記設備機器の使用者と前記エネルギー統括装置の管理者との間で結ばれる契約の情報を記憶する記憶装置(2b1)と、
を備えるエネルギー管理システムであって、
前記設備機器の制御装置は、
前記消費エネルギー抑制要求がある抑制期間に、前記設備機器に能力抑制制御をかける、消費エネルギー抑制制御部(82)と、
前記抑制期間の直後に、停止状態あるいは低能力状態の前記設備機器の能力を通常運転で必要な能力まで増加させる抑制後起動制御(83b)を前記設備機器にかける、起動制御部(83)と、
前記抑制後起動制御における制御パラメータである起動待機時間を設定する起動待機時間設定部(84)と、
を備え、
前記抑制後起動制御は、制御開始から前記起動待機時間だけ待機した後に、前記設備機器の能力を増加させ始める制御であり、
前記起動待機時間設定部は、前記設備機器の使用者によって入力された値を、前記起動待機時間として設定し、
前記契約の情報に、前記設備機器の使用者の入力により設定された前記起動待機時間の長さと、前記エネルギー統括装置の管理者から前記設備機器の使用者に支払われるインセンティブとを関連付けた情報が含まれる、
エネルギー管理システム。
【請求項2】
通常運転時の消費エネルギーよりも起動時の消費エネルギーのほうが大きい、多数の設備機器(10)の制御装置(80)と、
前記設備機器の制御装置と双方向通信可能に接続され、前記設備機器の制御装置に対して消費エネルギー抑制要求を送信する、エネルギー統括装置(1a)と、
を備えるエネルギー管理システムであって、
前記設備機器の制御装置は、
前記消費エネルギー抑制要求がある抑制期間に、前記設備機器に能力抑制制御をかける、消費エネルギー抑制制御部(82)と、
前記抑制期間の直後に、停止状態あるいは低能力状態の前記設備機器の能力を通常運転で必要な能力まで増加させる抑制後起動制御(83b)を前記設備機器にかける、起動制御部(83)と、
前記抑制後起動制御における制御パラメータである起動待機時間を設定する起動待機時間設定部(84)と、
を備え、
前記抑制後起動制御は、制御開始から前記起動待機時間だけ待機した後に、前記設備機器の能力を増加させ始める制御であり、
前記起動待機時間設定部は、外部から入力された値、あるいは、乱数生成で得られた値を、前記起動待機時間として設定し、
前記エネルギー統括装置は、前記設備機器の制御装置それぞれの前記起動待機時間を収集し、それらの前記起動待機時間の分布が偏っている場合には、偏り抑制措置を行う、
エネルギー管理システム。
【請求項3】
前記起動待機時間設定部は、所定の時間範囲の中から乱数生成で得られた値を、前記起動待機時間として設定する、
請求項2に記載のエネルギー管理システム
【請求項4】
前記起動待機時間設定部は、前記設備機器の設置時に入力された値を、前記起動待機時間として設定する、
請求項2に記載のエネルギー管理システム
【請求項5】
前記起動制御部は、前記抑制後起動制御とは別の通常起動制御(83a)を前記設備機器にかけることができ、
前記通常起動制御は、制御開始後、直ちに前記設備機器の能力を増加させ始める制御である、
請求項1から4のいずれかに記載のエネルギー管理システム
【請求項6】
前記設備機器(10)は、圧縮機(21)を含む冷凍サイクルを有する冷凍装置であり、
前記起動制御部は、前記抑制後起動制御において、前記抑制期間の終了後、前記起動待機時間だけ待機してから、前記圧縮機の回転数を増加させ始める、
請求項1から5のいずれかに記載のエネルギー管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備機器の制御装置およびそれを備えたエネルギー管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー供給事業者、例えば電力を供給する電力供給事業者は、安定的な電力供給を実現するために、電力供給量と電力需要量とをバランスさせたいという要求を持っている。このような要求を満たすシステムとして、特許文献1(特開2005−107901号公報)では、電力負荷平準化システムが提案されている。このシステムでは、電力逼迫時に、電力需要者の機器に電力抑制要求情報が入り、抑制期間の間、所定のIT家電機器が電源オフされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような、電力需要者の機器に電力抑制要求が送られるシステムでは、抑制期間の間は各機器が停止したり能力を落としたりすることで電力供給者が供給する電力の総量が抑えられる。その一方、抑制期間が終了した直後には、各機器が一斉に起動することが想定される。例えば、抑制期間の間、電力需要者の空気調和機の能力に上限が掛けられていた場合、抑制期間が終わって能力の上限が外されると、抑制期間中に蓄積していた熱負荷を処理するために各空気調和機が低能力状態から高能力状態まで一斉に起ち上がることが想定される。
【0004】
しかし、このような事態が生じると、一時的に電力需要量が急増し、電力供給と電力需要のバランスが取れなくなる。このような事態を避けるため、電力需要者のサイドで、各電力需要者の機器における抑制期間の終期を調整したり、各機器の起動のタイミングを指示したりすることも考えられるが、そのための装置が新たに必要となり、また調整処理等も煩雑となる。
【0005】
本発明の課題は、エネルギーの抑制期間の終了直後にエネルギー需要者の設備機器が一斉に起動して需給バランスが崩れるという事態を抑制することができる、設備機器の制御装置およびそれを備えたエネルギー管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る設備機器の制御装置は、通常運転時の消費エネルギーよりも起動時の消費エネルギーのほうが大きい設備機器の制御装置である。この制御装置は、消費エネルギー抑制制御部と、起動制御部と、起動待機時間設定部とを備えている。消費エネルギー抑制制御部は、消費エネルギー抑制要求がある抑制期間に、設備機器に能力抑制制御をかける。起動制御部は、抑制期間の直後に、抑制後起動制御を設備機器にかける。抑制後起動制御は、停止状態あるいは低能力状態の設備機器の能力を、通常運転で必要な能力まで増加させる制御である。起動待機時間設定部は、抑制後起動制御における制御パラメータである起動待機時間を設定する。また、抑制後起動制御は、制御開始から起動待機時間だけ待機した後に、設備機器の能力を増加させ始める制御である。そして、起動待機時間設定部は、外部から入力された値、あるいは、乱数生成で得られた値を、起動待機時間として設定する。
【0007】
ここでは、抑制後起動制御において起動待機時間が用いられ、その起動待機時間が、起動待機時間設定部によって設定される。そして、外部から入力された値を起動待機時間として設定する場合には、例えば同じ地域に存在する多数の設備機器の制御装置において入力する起動待機時間の値を分布させることで、抑制期間の終了直後に多数の設備機器が一斉に起動して需給バランスが崩れるという事態を抑制することができる。また、乱数生成で得られた値を起動待機時間として設定する場合には、多数の設備機器が存在していても、それらの設備機器の起動待機時間が所定時間範囲において分散することになるため、多数の設備機器が一斉に起動して需給バランスが崩れるという事態を抑制することができる。
【0008】
本発明の第2観点に係る設備機器の制御装置は、第1観点の制御装置であって、起動制御部は、抑制後起動制御とは別の通常起動制御を、設備機器にかけることができる。この通常起動制御は、制御開始後、直ちに設備機器の能力を増加させ始める制御である。
【0009】
上述のように、抑制期間の直後に抑制後起動制御を設備機器にかけることで、抑制期間の終了直後に多数の設備機器が一斉に起動して需給バランスが崩れるという事態が抑制されるが、制御開始から起動待機時間だけ待機させる抑制後起動制御を常に行う場合には、多数の設備機器が一斉に起動する恐れがない通常時において、設備機器が直ちに起動しないというデメリットが出てしまう。そこで本発明の第2観点に係る制御装置は、抑制後起動制御とは別の通常起動制御を設けている。これにより、通常時には、この通常起動制御を使うことで、直ちに設備機器の能力を増加させることができる。
【0010】
本発明の第3観点に係る設備機器の制御装置は、第1観点又は第2観点の制御装置であって、起動待機時間設定部は、所定の時間範囲の中から乱数生成で得られた値を、起動待機時間として設定する。
【0011】
ここでは、例えば10分という所定の時間範囲の中から、乱数値を用いて起動待機時間が設定される。これにより、例えば同じ地域に存在する多数の設備機器の制御装置の起動待機時間が10分の中で分散することになり、抑制期間の直後における多数の設備機器の起動エネルギーのスパイク(急増)のタイミングが一致することがなくなる。
【0012】
本発明の第4観点に係る設備機器の制御装置は、第1観点又は第2観点の制御装置であって、起動待機時間設定部は、設備機器の設置時に入力された値を、起動待機時間として設定する。
【0013】
ここでは、例えば、設備機器が設置されるときに、その設置を行う工事業者が起動待機時間を入力することによって、起動待機時間が設定される。したがって、エネルギー供給者が、エネルギー供給先にある多数の設備機器における起動待機時間が分散されるように工事業者等に指示することによって、抑制期間の直後における多数の設備機器の起動エネルギーのスパイクのタイミングが一致することがなくなる。
【0014】
本発明の第5観点に係るエネルギー管理システムは、第1観点又は第2観点の設備機器の制御装置と、エネルギー統括装置と、記憶装置とを備えている。設備機器の制御装置は、その起動待機時間設定部が、設備機器の使用者によって入力された値を、起動待機時間として設定する。エネルギー統括装置は、設備機器の制御装置に対して、消費エネルギー抑制要求を送信する。記憶装置は、設備機器の使用者とエネルギー統括装置の管理者との間で結ばれる契約の情報を記憶する。契約の情報には、設備機器の使用者の入力により設定された起動待機時間の長さと、エネルギー統括装置の管理者から設備機器の使用者に支払われるインセンティブとを関連付けた情報が含まれる。
【0015】
第1観点又は第2観点の設備機器の制御装置によれば、例えば同じ地域に存在する多数の設備機器の制御装置において起動待機時間の値が分散し、抑制期間の終了直後に需給バランスが崩れるという事態を抑制できる。一方、起動待機時間が長い時間に設定された場合、抑制期間の終了後に設備機器が十分な能力を発揮するまでに、他の設備機器よりも長い時間を要することになる。この不公平を解消するために、本発明の第5観点に係るエネルギー管理システムでは、設備機器の使用者とエネルギー統括装置の管理者との間で結ばれる契約の情報を記憶装置に記憶させている。この契約の情報に含まれる、起動待機時間の長さと設備機器の使用者に支払われるインセンティブとを関連付けた情報によって、他の設備機器よりも抑制期間の終了後の設備機器の起動が遅れる設備機器の使用者は、高いインセンティブを得るといったことで不公平の解消を図ることができる。
【0016】
本発明の第6観点に係るエネルギー管理システムは、第1観点から第4観点のいずれかの設備機器の制御装置と、エネルギー統括装置とを備えている。エネルギー統括装置は、多数の設備機器の制御装置と、双方向通信可能に接続されている。また、エネルギー統括装置は、多数の設備機器の制御装置に対して、消費エネルギー抑制要求を送信する。そして、エネルギー統括装置は、設備機器の制御装置それぞれの起動待機時間を収集し、それらの起動待機時間の分布が偏っている場合には、偏り抑制措置を行う。
【0017】
ここでは、起動待機時間設定部によって設定された各設備機器の制御装置における起動待機時間が、結果的に平準化されておらず、それらの起動待機時間の分布が偏っている場合に、エネルギー統括装置は偏り抑制措置を行う。これにより、起動待機時間の分布が変わり、多数の起動待機時間が平準化されることが期待できる。したがって、本発明の第6観点に係るエネルギー管理システムでは、多数の設備機器が一斉に起動して需給バランスが崩れるという事態を、より確実に抑制することができるようになる。
【0018】
本発明の第7観点に係る設備機器の制御装置あるいはエネルギー管理システムは、第1観点から第4観点のいずれかの設備機器の制御装置、あるいは、第5観点又は第6観点のエネルギー管理システムであって、設備機器が、圧縮機を含む冷凍サイクルを有する冷凍装置である。そして、起動制御部は、抑制後起動制御において、抑制期間の終了後、起動待機時間だけ待機してから、圧縮機の回転数を増加させ始める。
【0019】
ここでは、通常運転時に比べて起動電力がかなり大きくなる圧縮機を含む冷凍装置を、上述の抑制後起動制御において起動待機時間を用いて起動させることで、多数の冷凍装置の圧縮機が一斉に起動してエネルギーの需給バランスが崩れるという事態を抑制している。これにより、圧縮機を含む冷凍サイクルを有する冷凍装置が多数存在するような地域のエネルギー供給者が、抑制期間の後のエネルギー需給のバランスをとることが容易になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1観点に係る設備機器の制御装置によれば、抑制後起動制御において起動待機時間を用いるため、多数の設備機器が一斉に起動して需給バランスが崩れるという事態を抑制することに寄与ができる。
【0021】
本発明の第2観点に係る設備機器の制御装置によれば、通常時には、通常起動制御を使うことで、直ちに設備機器の能力を増加させることができる。
【0022】
本発明の第3観点に係る設備機器の制御装置によれば、例えば同じ地域に存在する多数の設備機器の制御装置の起動待機時間が10分の中で分散することになり、抑制期間の直後における多数の設備機器の起動エネルギーのスパイク(急増)のタイミングが一致することがなくなる。
【0023】
本発明の第4観点に係る設備機器の制御装置によれば、エネルギー供給者が、エネルギー供給先にある多数の設備機器における起動待機時間が分散されるように工事業者等に指示することによって、抑制期間の直後における多数の設備機器の起動エネルギーのスパイクのタイミングが一致することがなくなる。
【0024】
本発明の第5観点に係るエネルギー管理システムによれば、起動待機時間の長さと設備機器の使用者に支払われるインセンティブとを関連付けた情報によって、他の設備機器よりも抑制期間の終了後の設備機器の起動が遅れる設備機器の使用者は、高いインセンティブを得るといったことで不公平の解消を図ることができる。
【0025】
本発明の第6観点に係るエネルギー管理システムによれば、エネルギー統括装置が偏り抑制措置を行うことにより、起動待機時間の分布が変わり、多数の起動待機時間が平準化されることが期待できる。
【0026】
本発明の第7観点に係る設備機器の制御装置あるいはエネルギー管理システムによれば、圧縮機を含む冷凍サイクルを有する冷凍装置が多数存在するような地域のエネルギー供給者が、抑制期間の後のエネルギー需給のバランスをとることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る暖房給湯システムを含む電力管理システムを示す図。
図2】暖房給湯システムの概略図。
図3】暖房給湯システムの制御ブロック図。
図4】起動待機時間とインセンティブとの相関を示す図。
図5】従来の、多数の機器(暖房給湯システムなど)の抑制期間終了の時点の前後の消費電力量の時間軸に沿った推移を示すグラフ。
図6】本発明の、多数の機器(暖房給湯システムなど)の抑制期間終了の時点の前後の消費電力量の時間軸に沿った推移を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係るコントローラ(制御装置)80およびそのコントローラ80が制御する設備機器としての暖房給湯システム10を含む電力管理システム100を、図面を参照して説明する。なお、下記の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0029】
(1)暖房給湯システムおよびそれを含む電力管理システムの構成
本実施形態に係る暖房給湯システム10は、住宅に設置されるヒートポンプシステムである。暖房給湯システム10は、暖房および給湯の目的で使用される。ただし、これに限定されるものではなく、暖房給湯システム10は、暖房又は給湯のみに使用されてもよい。また、例えば、暖房給湯システム10は、暖房、および/又は、給湯に加え、冷房にも使用されるものであってもよい。
【0030】
図1は、電力管理システム100を示している。電力管理システム100は、それぞれ電力需要者が住む複数の住宅2と、複数の住宅2に電力を供給する電力供給者としての電力会社1とを含む電力ネットワークである。住宅2には、暖房給湯システム10などが設置されている。電力会社1は、自ら発電した電力、および/又は、他者が発電した電力を電力需要者の住宅2に供給する。なお、図示は省略しているが、電力管理システム100には、暖房給湯システム10が設置されていない住宅や、住宅2に住む人以外の電力需要者も含まれる。
【0031】
(1−1)電力会社
電力会社1は、電力統括装置1aを有している。電力統括装置1aは、電力会社1の電力供給量と、電力需要者による電力需要量とがバランスするように各種処理を行って電力(エネルギー)の需給を調節する装置である。電力統括装置1aは、通信回線100aによって、後述する住宅2に設置されたスマートメータ2aと接続されており、スマートメータ2aと双方向通信が可能である。
【0032】
電力統括装置1aは、スマートメータ2aから送信される各住宅2の電力需要量(電力の使用量)と、住宅2以外の電力需要者の電力需要量とを収集し、電力供給量と電力需要量とがバランスしているか分析する。電力供給量と電力需要量とがバランスしているかの分析には、将来の予想を含む。
【0033】
また、電力統括装置1aは、電力供給量と電力需要量とをバランスさせるため、分析結果に基づいて、住宅2を含む電力需要者に対して、電力の消費量(使用量)の抑制を要求する。具体的には、電力統括装置1aは、電力の需要が供給を上回りそうな時間帯には、電力の消費抑制要求を各スマートメータ2aに送信する。
【0034】
電力統括装置1aは、各スマートメータ2aに対して電力の消費量の抑制要求を送信する際に、調整要求期間(いつ抑制させるか)、調整要求量(どれだけ抑制させるか)、および、インセンティブに関する情報(抑制要求に応じた場合の報奨金(あるいは応じなかった場合の罰金)に関する情報)を併せて送信する。調整要求量は、単位時間あたりの電力[kW]に関するものであっても、調整要求期間における電力量[kWh]に関するものであってもよい。インセンティブに関する情報は、報奨金(罰金)そのものについての情報である必要はなく、例えば、調整要求期間の電力単価の情報等であってもよい。
【0035】
電力統括装置1aは、さらに、偏り抑制部1a1と、起動情報記憶部1a2とを有している。これらの偏り抑制部1a1および起動情報記憶部1a2については、後に詳述する。
【0036】
(1−2)住宅
住宅2は、暖房給湯システム10のほか、スマートメータ2a、HEMS(家庭用エネルギー管理システム)2b、各種の電気機器3を有する。
【0037】
スマートメータ2aは、電力会社1の電力統括装置1aと通信回線100aにより接続される。スマートメータ2aは、住宅2で使用されている電力の値を電力統括装置1aに送信する。スマートメータ2aは、電力統括装置1aから電力の消費量の抑制要求を受信する。スマートメータ2aは、住宅2に設置されたHEMS2bと通信回線2cにより接続され、HEMS2bとの双方向通信が可能である。スマートメータ2aからHEMS2bへは、電力統括装置1aからスマートメータ2aに対して送信された電力の消費量の抑制要求(調整要求期間、調整要求量およびインセンティブに関する情報を含む)が送信される。
【0038】
HEMS2bは、通信回線2dにより、暖房給湯システム10および電気機器3と接続されている。HEMS2bは、住宅2における電力の消費量を把握するとともに、住宅2における電力の消費量を最適に制御する。
【0039】
HEMS2bは、電力統括装置1aから、スマートメータ2aを介して送信された電力の消費量の抑制要求に基づいて、暖房給湯システム10および電気機器3に、電力の消費量の抑制要求を送信する。HEMS2bは、電力の消費量の抑制要求と共に、暖房給湯システム10および電気機器3のそれぞれに、電力の抑制を要求する個別調整要求期間(いつ抑制させるか)と、個別電力消費目標(どれだけ抑制させるか)とを送信する。なお、個別要求期間および個別電力消費目標は、暖房給湯システム10および各電気機器3の特性、現在暖房給湯システム10および各電気機器3によって使用されている電力、電力統括装置1aから(スマートメータ2aを介して)送信された調整要求期間および調整要求量等を用いて、暖房給湯システム10および各電気機器3別に、HEMS2bが決定する。より具体的には、HEMS2bは、暖房給湯システム10および各電気機器3が、HEMS2bが決定した個別調整要求期間および個別電力消費目標に応じて電力の消費量を調整することで、電力統括装置1aから送信された調整要求期間に、調整要求量を満足できるように、個別調整要求期間および個別電力消費目標を決定する。
【0040】
個別電力消費目標は、個別調整要求期間における電力の目標値(kW)であってもよいし、現在の電力の消費量に対する調整量(kW)や調整率(%)などであってもよい。また、個別電力消費目標は、電力に関するものではなく、個別調整要求期間における電力量(kWh)に関するものであってもよい。本実施形態では、個別電力消費目標は、個別調整要求期間における電力の目標値(kW)である。
【0041】
なお、HEMS2bは、スマートメータ2aを介して受信した電力の消費量の抑制要求に応じた場合のインセンティブに関する情報を更に用いて、電力の消費量の抑制要求を暖房給湯システム10および電気機器3に送信するか否か、および/又は、暖房給湯システム10および電気機器3に送信する個別調整要求期間および個別電力消費目標、を決定してもよい。例えば、HEMS2bは、電力の消費量の抑制要求の受信時には、電力の消費量を減少させることで所定額以上の報奨金を得られる場合、あるいは、電力単価が所定価格以下となる場合(無料の場合を含む)のみ、暖房給湯システム10および電気機器3に電力の消費量の抑制要求を送信してもよい。ただし、本実施形態では、電力統括装置1aからHEMS2bに電力の消費量の抑制要求があった場合、インセンティブに関する情報によらず、HEMS2bは抑制要求に応じるものとして説明する。
【0042】
HEMS2bが有する、インセンティブに関する契約の情報を記憶する契約情報記憶部2b1については、後に詳述する。
【0043】
(1−2−1)暖房給湯システム
図2は、本発明の一実施形態に係る暖房給湯システム10の概略構成図である。暖房給湯システム10は、主に、蒸気圧縮機式のヒートポンプサイクルを利用することで水媒体を加熱し、加熱された水媒体を用いて暖房および給湯を行う。
【0044】
暖房給湯システム10は、図2および図3のように、主として、室外機20と、室内機30と、ガス冷媒連絡管26と、液冷媒連絡管27と、給湯ユニット60と、暖房ユニット70と、水媒体連絡管36,37と、を備えている。
【0045】
室外機20と室内機30とは、ガス冷媒連絡管26および液冷媒連絡管27を介して接続されており、これによって冷媒回路25を構成している。冷媒回路25は、主として、後述する圧縮機21と、利用側熱交換器31と、膨張弁22と、熱源側熱交換器23と、で構成される。冷媒回路25には、例えばR−410Aが冷媒として使用される。なお、冷媒の種類は例示であり、これに限定されるものではない。
【0046】
室内機30と、給湯ユニット60および暖房ユニット70とは、それぞれ水媒体連絡管36,37を介して接続されており、これによって水媒体回路35を構成している。水媒体回路35には、媒体として水が循環するようになっている。
【0047】
コントローラ80は、暖房給湯システム10と電気的に接続され、暖房給湯システム10の動きを制御する。
【0048】
(1−2−1−1)室外機
室外機20は、熱源ユニットとして機能する。室外機20は、通常、屋外に配置されている。室外機は、図2のように、ガス冷媒連絡管26と、液冷媒連絡管27とにより室内機30と接続され、冷媒回路25の一部を構成している。室外機20は、図2のように、主として、圧縮機21と、熱源側熱交換器23と、膨張弁22と、を有している。熱源側熱交換器23は、内部を流れる冷媒と、室外ファンによって生成され周囲を流れる外気との間で熱交換を行わせる。
【0049】
室外機20を含む暖房給湯システム10の中で、起動時に最も電力を消費する機械は、圧縮機21である。インバータ制御されるモータを内蔵する圧縮機21は、スクロール圧縮機、ロータリ圧縮機、あるいはスクリュー圧縮機であって、通常運転時の消費電力に比べ、起動時、特に起動直後に消費する電力量が非常に大きいという特性を持つ。
【0050】
(1−2−1−2)室内機
室内機30は、屋内に配置されている。室内機30は、図2のように、ガス冷媒連絡管26と、液冷媒連絡管27とを介して室外機20に接続されており、冷媒回路25の一部を構成している。また、室内機30は、図2のように、水媒体連絡管36,37を介して、それぞれ給湯ユニット60および暖房ユニット70に接続されており、水媒体回路35の一部を構成している。室内機30は、図2のように、主として、利用側熱交換器31と、暖房用電気ヒータ32と、循環ポンプ33とを有している。利用側熱交換器31は、図2のように、冷媒回路25内を流れる冷媒と、水媒体回路35を流れる水媒体との熱交換を行うことで、冷媒回路25を流れる冷媒の凝縮器として機能する。つまり、熱源側熱交換器23に流入した気相の冷媒は、水媒体回路35を流れる水媒体に熱を放出することで、凝縮して液相の冷媒となる。言い換えれば、利用側熱交換器31は、冷媒回路25を流れる冷媒の放熱器として機能し、水媒体回路35を流れる水媒体を加熱する。
【0051】
暖房用電気ヒータ32は、水媒体回路35を流れる水媒体を、暖房ユニット70に送る際に、さらに加熱するための電気ヒータである。暖房用電気ヒータ32は、利用側熱交換器31と、水媒体連絡管36とを接続する水媒体配管に設けられている。
【0052】
循環ポンプ33は、モータにより駆動される遠心式や容積式などのポンプである。循環ポンプ33は、インバータ制御される。循環ポンプ33は、利用側熱交換器31と水媒体連絡管36とを接続する水媒体連絡管36の、暖房用電気ヒータ32よりも下流側に設けられている。循環ポンプ33は、水媒体を昇圧し、水媒体を水媒体回路35内で循環させる。具体的には、利用側熱交換器31および/又は暖房用電気ヒータ32で加熱された水は、循環ポンプ33により昇圧され、水媒体連絡管36を介して、給湯ユニット60又は暖房ユニット70に送られる。給湯ユニット60又は暖房ユニット70を出た水媒体は、水媒体連絡管37を介して、利用側熱交換器31に戻る。
【0053】
(1−2−1−3)給湯ユニット
給湯ユニット60は、室内機30から供給される水媒体を使用する水媒体機器であって、屋内に設置されている。給湯ユニット60は、図2のように、水媒体連絡管36,37を介して室内機30と接続されており、水媒体回路35の一部を構成している。
【0054】
給湯ユニット60は、図2のように、主として、給湯タンク61と、熱交換コイル62と、給湯用電気ヒータ63と、を有している。
【0055】
給湯タンク61は、給湯に供される水を溜める容器である。給湯タンク61には、蛇口やシャワー等に温水となった水を送るための給湯管66と、給湯管66に送られて消費された水の補充を行うための給水管68と、が接続されている。
【0056】
熱交換コイル62は、図2のように、給湯タンク61内に設けられている。熱交換コイル62は、水媒体回路35を循環する水媒体と給湯タンク61内の水との熱交換を行うことで給湯タンク61内の水の加熱器として機能する熱交換器である。なお、熱交換コイル62の入口側は、水媒体連絡管36に設けられた三方弁65と接続され、熱交換コイル62の出口側は、水媒体連絡管37と接続されている。
【0057】
給湯ユニット60では、以上の構成により、室内機30において加熱される水媒体回路35を循環する水媒体によって、給湯タンク61内の水を加熱し、給湯タンク61内に溜めることが可能となっている。給湯タンク61には、異なる高さ位置において温水の温度を測る複数の給湯タンク温度センサ61aが設けられている。
【0058】
給湯用電気ヒータ63は、給湯タンク61内に設けられた電気ヒータである。給湯用電気ヒータ63は、給湯タンク61内の水を加熱するために利用される。給湯用電気ヒータ63は、例えば、ヒートポンプを利用した加熱(利用側熱交換器31による加熱)では実現できない高温給湯に対応する場合等に用いられる。
【0059】
(1−2−1−4)暖房ユニット
暖房ユニット70は、室内機30から供給される水媒体を使用する水媒体機器であって、屋内に設置されている。暖房ユニット70は、図2のように、水媒体連絡管36,37を介して室内機30に接続されており、水媒体回路35の一部を構成している。
【0060】
暖房ユニット70は、図2のように、主として、熱交換器71と、ファン72と、を有するファンコイルユニットである。熱交換器71およびファン72は、図示しないケーシング内に収納されている。
【0061】
熱交換器71は、水媒体回路35を循環する水媒体と室内空気との熱交換を行うことで室内空気の加熱器として機能する。なお、熱交換器71の入口側は、水媒体連絡管36に設けられた三方弁65と接続され、熱交換器71の出口側は、水媒体連絡管37と接続されている(図2参照)。
【0062】
ファン72は、ケーシング内に空気を取り込み、熱交換器71における、水媒体回路35を循環する水媒体と室内空気との熱交換を促進するためのファンである。熱交換器71により加熱された室内空気は、ケーシング外(室内)へと吹き出す。
【0063】
なお、ここでの暖房ユニット70は、ファンコイルユニットであるが、これに限定されるものではなく、暖房ユニット70は、床暖房ユニットやラジエータであってもよい。また、図2では、暖房ユニット70は1つしか設けられていないが、これに限定されるものではなく、並列に複数の暖房ユニット70が設けられてもよい。
【0064】
(1−2−1−5)水媒体連絡管
水媒体連絡管36は、図2のように、室内機30の出口側(循環ポンプ33の下流側)と、給湯ユニット60の熱交換コイル62の入口側および暖房ユニット70の熱交換器71の入口側とを接続している。水媒体連絡管37は、図2のように、室内機30の入口側(利用側熱交換器31の入口側)と、給湯ユニット60の熱交換コイル62の出口側および暖房ユニット70の熱交換器71の出口側とを接続している。室内機30から、水媒体連絡管36を介して、給湯ユニット60又は暖房ユニット70に供給された水媒体は、水媒体連絡管37を介して、室内機30へと戻る。
【0065】
水媒体連絡管36には、図2のように三方弁65が設けられている。三方弁65は、電動弁である。三方弁65は、水媒体回路35を循環する水媒体を、給湯ユニット60および暖房ユニット70のいずれか一方に供給するように、水媒体の流れ方向を切り換える。
【0066】
(1−2−2)コントローラ
コントローラ80は、CPUやメモリ等を有するマイクロコンピュータであり、メモリに記憶された各種プログラムをCPUが実行することで、各種制御を実行する。なお、コントローラ80は、一体に構成されている必要はなく、室外機20、室内機30、給湯ユニット60、暖房ユニット70をそれぞれ制御する複数のサブコントローラが回線により接続されて構成されるものであってもよい。
【0067】
コントローラ80は、図3のように、HEMS2bと電気的に接続され、HEMS2bとの間で各種情報をやり取りする。すなわち、コントローラ80は、HEMS2bと双方向通信が可能であり、HEMS2bおよびスマートメータ2aを介して電力統括装置1aと双方向通信をする。コントローラ80は、暖房給湯システム10の運転状況に関する情報(電力の消費量等)を、HEMS2bに対して送信する。また、コントローラ80は、HEMS2bから送信される、電力の消費量の調整要求(抑制要求)と、個別調整要求期間(いつ抑制させるか)と、個別電力消費目標(どれだけ抑制させるか)と、を受信する。
【0068】
コントローラ80は、図3に示すように、圧縮機21、膨張弁22、暖房用電気ヒータ32、循環ポンプ33、給湯用電気ヒータ63、三方弁65、ファン72等と電気的に接続されている。また、コントローラ80は、給湯タンク温度センサ61aを含む各種センサから検出信号を受け、これらの検出信号等に基づいて上記の各種機器を制御する。さらに、コントローラ80は、電力統括装置1aからHEMS2bを経て送信されてくる、電力の消費量の調整要求、個別調整要求期間、および個別電力消費目標に基づいて、各種機器を制御する。
【0069】
コントローラ80は、HEMS2bとの間で通信を行う通信部80a、給湯暖房運転を行うための給湯暖房運転制御部81、HEMS2bから電力の消費量の調整要求に応じて電力の消費量を調整する消費電力抑制制御部82等を機能部として有している。また、プログラムのCPUが実行することで備わる機能部として、コントローラ80は、さらに起動制御部83、起動待機時間設定部84および入力受付部80bを有している。
【0070】
(1−2−2−1)起動制御部
起動制御部83は、停止している暖房給湯システム10を立ち上げたり、後述する電力調整運転が終わって暖房給湯システム10を低能力状態から高能力状態に立ち上げたりするときに起動制御を行う。この起動制御部83は、起動制御として、通常起動制御83aと、抑制後起動制御83bとを有している。
【0071】
通常起動制御83aは、停止あるいはサーモオフしている暖房給湯システム10を立ち上げるときに行われる起動制御であり、立ち上げの指令が入ったときに直ちに暖房給湯システム10の圧縮機21を作動し始める。
【0072】
抑制後起動制御83bは、消費電力抑制制御部82による電力調整運転(後述)が行われた抑制期間(電力統括装置1aからHEMS2bを経て送信される個別調整要求期間)の直後に行われる起動制御である。この抑制後起動制御83bでは、信号が入って制御を開始してから、所定の起動待機時間だけ待機した後に、停止状態あるいは低能力状態(低回転数)の圧縮機21の回転数を上げ始め、通常運転で必要な回転数まで増加させる。
【0073】
(1−2−2−2)起動待機時間設定部および入力受付部
起動待機時間設定部84は、抑制後起動制御83bにおける制御パラメータである起動待機時間を設定する。入力受付部80bは、住宅2に住む暖房給湯システム10の使用者や、暖房給湯システム10を設置する工事業者が操作するタッチパネル89からの操作入力や設定入力を受け付ける機能部である。タッチパネル89を操作する者は、起動待機時間の設定に関し、まず自動設定か手動設定かを選択する。
【0074】
タッチパネル89で起動待機時間の自動設定が選択されると、起動待機時間設定部84は、自動的に起動待機時間を設定する。起動待機時間設定部84は、乱数生成部84aを有しており、自動設定が選択されたときには、抑制期間に実施される電力調整運転が終了する度に、乱数値によって所定時間(ここでは10分)から起動待機時間を決める。例えば、起動待機時間が、乱数値によって、5分20秒に決まったり、1分40秒に決まったりする。
【0075】
タッチパネル89で起動待機時間の手動設定が選択されると、起動待機時間設定部84は、タッチパネル89上に、0〜所定時間(ここでは10分)の範囲から任意の時間を入力させるための画面を表示する。この画面において、操作者は、起動待機時間を、例えば0分30秒と入力したり9分00秒と入力したりする。入力後に確定操作が為されると、起動待機時間設定部84は、入力された値を圧縮機21の起動待機時間として確定する。
【0076】
(2)電力統括装置の偏り抑制部および起動情報記憶部
上述の電力統括装置1aが有する起動情報記憶部1a2は、各住宅2の暖房給湯システム10のコントローラ80において設定された起動待機時間の情報を記憶する。電力統括装置1aは、HEMS2bを経てコントローラ80から各暖房給湯システム10の起動待機時間の情報を収集する。
【0077】
そして、電力統括装置1aに接続される多数の住宅2の暖房給湯システム10の起動待機時間が、0〜10分の時間の中で平準化されて分散しておらず、偏っている場合には、その偏りを改善する。具体的には、電力統括装置1aが有する偏り抑制部1a1が、乱数値によって決まっていた起動待機時間を前後にずらす修正を行うことによって、改善を図る。
【0078】
(3)電力需要者と電力供給者との契約
HEMS2bが有する契約情報記憶部2b1には、電力需要者である住宅2の住人と電力供給者である電力会社1との電力供給に関する契約の情報が記憶されている。この契約の情報は、電力供給者からの電力消費量の調整要求に応じたときに電力需要者が獲得するインセンティブに関する情報も含まれる。このインセンティブに関する情報は、例えば、図4に示すような、起動待機時間とインセンティブ支払い額とを関係づける情報を含む。この図4に示すインセンティブ支払い額は、上述の起動待機時間の設定において、電力需要者が手動設定を選択して起動待機時間を手動入力した場合に適用され支払われる金銭の額である。抑制後起動制御において0〜30秒という短い起動待機時間で圧縮機21が立ち上がるような手動入力をした場合には、インセンティブ支払い額は0円である。一方、抑制後起動制御において7分〜10分という比較的長い起動待機時間を待つことを選択して手動入力を行った場合には、インセンティブ支払い額は1回当たり70円となる。
【0079】
(4)ヒートポンプシステムの動作
本実施形態に係る暖房給湯システム10の動作、特に給湯暖房運転と、電力調整運転と、について説明する。
【0080】
(4−1)給湯暖房運転
暖房給湯システム10は、給湯暖房運転制御部81により制御され、給湯暖房運転として、暖房運転のみ、給湯運転のみ、あるいは暖房運転と給湯用電気ヒータ63による給湯運転との並行運転を行う。
【0081】
暖房運転は、住宅2の住人が、図示しないリモコンを介して、コントローラ80に暖房ユニット70の運転を要求している時に行われる。圧縮機21の回転数等の運転条件の調整は、図示しないセンサにより取得された室内温度、図示しないリモコンを介して入力される室温の設定温度、暖房ユニット70に送られる水媒体の温度等を用いて、給湯暖房運転制御部81により実行される。
【0082】
給湯運転は、給湯タンク61内の水が消費され、給湯タンク61に補給水が流入することで、給湯タンク61内の水温が低下した時に行われる。圧縮機21の回転数等の運転条件の調整や給湯用電気ヒータ63のON/OFFは、給湯タンク温度センサ61aにより取得された給湯タンク61内の水温、図示しないリモコンを介して入力される給水の設定温度、給湯ユニット60に送られる水媒体の温度等を用いて、給湯暖房運転制御部81により実行される。
【0083】
また、給湯運転は、給湯中(水の消費および補給水の流入が行われているとき)ではなくても、給湯タンク61内の水温を保持するために、あるいは、電力の単価が安い時間や、後述する電力の消費量を増加させるときに、蓄熱目的で行われる。
【0084】
暖房運転と給湯運転との並行運転では、利用側熱交換器で加熱され必要に応じて暖房用電気ヒータ32で加熱された水媒体が、暖房ユニット70に送られ、給湯用電気ヒータ63の加熱のみによって給湯タンク61内の水温が高められる。
【0085】
(4−2)電力調整運転
電力調整運転は、HEMS2bから電力の消費量の調整要求があった時に行われる運転である。電力調整運転は、消費電力抑制制御部82により実行される。
【0086】
消費電力抑制制御部82は、通信部80aがHEMS2bから電力の消費量の抑制要求を受信すると、暖房給湯システム10が電力の消費量を抑制する電力調整運転を実行するよう制御する。より詳細には、消費電力抑制制御部82は、HEMS2bから送信された個別調整要求期間に、電力の消費量が目標値(kW)を超えないよう、暖房給湯システム10の運転を抑制する制御を行う。通信部80aが電力の消費量の抑制要求を受信したときの、消費電力抑制制御部82による制御について、例を挙げて具体的に説明する。
【0087】
例えば、消費電力抑制制御部82は、給湯暖房運転制御部81により蓄熱のために給湯運転が行われている場合に、この給湯運転を停止させる。また、例えば、消費電力抑制制御部82は、給湯暖房運転制御部81により決定された運転条件によらず、圧縮機21、循環ポンプ33などの回転数を降下させる。なお、これらの電力調整運転は、制御に矛盾のない範囲で行われる。
【0088】
(4−3)電力調整運転の後の抑制後起動制御
電力の消費量の抑制要求を受信したとき、個別調整要求期間の間、上述のように消費電力抑制制御部82の指令に応じて暖房給湯システム10が電力の消費量を抑制する電力調整運転を実行するが、抑制期間(個別調整要求期間)が終了すると、停止状態あるいは低能力状態となっている暖房給湯システム10を立ち上げることになる。具体的には、暖房給湯システム10の圧縮機21の回転数を、ゼロあるいは低い回転数から、通常運転で要求される高い回転数まで上げていくことになる。この抑制期間後の圧縮機21の立ち上げは、起動制御部83が、抑制後起動制御83bを実行することによって為される。
【0089】
抑制後起動制御83bでは、抑制期間が終了したという信号が入って制御を開始してから、起動待機時間設定部84で設定された起動待機時間だけ待機した後に、停止状態あるいは低回転数の状態の圧縮機21の回転数を上げ始め、通常運転で必要な回転数まで増加させる。
【0090】
(5)特徴
(5−1)
本実施形態の暖房給湯システム10のコントローラ80は、起動制御部83が抑制後起動制御83bにおいて起動待機時間を用いる。この起動待機時間は、起動待機時間設定部84によって手動設定あるいは自動設定される。
【0091】
タッチパネル89から入力された値を起動待機時間として設定する場合には、電力会社1が管轄する地域に存在する多数の暖房給湯システム10のコントローラ80において入力してもらう起動待機時間の値を分布させることで、抑制期間の終了直後に多数の暖房給湯システム10(圧縮機21)が一斉に起動して電力の需給バランスが崩れるという事態を抑制することができる。この場合、暖房給湯システム10の設置を行う工事業者に、タッチパネル89から電力会社1が電力需要者との契約・合意に基づいて決めた起動待機時間を入力してもらうことが考えられる。
【0092】
また、乱数生成部84aによる乱数生成で得られた値を起動待機時間として設定する場合には、多数の暖房給湯システム10が存在していても、それらの暖房給湯システム10の起動待機時間が所定時間範囲(ここでは10分)において分散することになるため、抑制期間の直後における多数の暖房給湯システム10の起動電力のスパイク(急増)のタイミングが一致することがなくなる。すなわち、多数の暖房給湯システム10が一斉に起動して電力の需給バランスが崩れるという事態が、自然に抑制されるようになる。
【0093】
(5−2)
本実施形態の暖房給湯システム10は、住宅に設置されるヒートポンプシステムであり、圧縮機21を含むものである。この圧縮機21は、通常運転時の消費電力に比べ、起動時、特に起動直後に消費する電力量が非常に大きいという特性を持つ。このため、上述の抑制後起動制御83bがなければ、図5に示すように、電力会社1が管轄する地域に存在する多数の暖房給湯システム10が、抑制期間T1の後の時間帯T2の最初の短時間に、すなわち抑制期間T1の直後に一斉に起動して、それぞれ圧縮機21の回転数を上げてしまうと、電力会社1が想定している電力消費量W2を超えることが予想される。抑制期間T1の間、全体の電力消費量がW1程度になるように各暖房給湯システム10の運転に抑制が掛かっているため、その抑制期間T1が終わると一斉に暖房給湯システム10の圧縮機21の回転数が上がる可能性が高いためである。
【0094】
これに対し、本実施形態の暖房給湯システム10では、起動制御部83が抑制後起動制御83bを行うように構成しているため、上述のように多数の暖房給湯システム10が一斉に起動して電力の需給バランスが崩れるという事態が抑制される。この結果、図6に示すように、図5で存在していた抑制期間T1の直後の起動電力が分散することになって、抑制期間T1の後の期間T2において、電力会社1が想定している電力消費量W2を大きく超える事態が回避される。
【0095】
(5−3)
本実施形態の暖房給湯システム10では、上述のように起動制御部83が抑制後起動制御83bを行うが、仮に、制御開始から起動待機時間だけ待機させる抑制後起動制御83bを常に行うとすれば、多数の暖房給湯システム10が一斉に起動する恐れが殆どない通常時においても、暖房給湯システム10が直ちに起動しないというデメリットが出てしまう。例えば、普通の暖房給湯システム10を立ち上げるときや、暖房給湯システム10がサーモオフの状態からサーモオンの状態に変わったときに、長ければ10分という起動待機時間の間、住宅2の住人は暖房や給湯の機能を享受できないという不具合が生じる。
【0096】
これに鑑み、本実施形態の暖房給湯システム10では、起動制御部83に、抑制後起動制御83bとは別の通常起動制御83aを持たせている。これにより、通常時には、この通常起動制御83aを使って、直ちに暖房給湯システム10の能力、すなわち圧縮機21の回転数を増加させることができるようになっている。
【0097】
(5−4)
本実施形態の暖房給湯システム10のコントローラ80を採用すれば、同じ地域に存在する多数の暖房給湯システム10の起動待機時間の値が分散し、抑制期間の終了直後に電力の需給バランスが崩れるという事態を抑制できる。一方、起動待機時間が長い時間に設定された場合、その暖房給湯システム10を使用する住宅2の住人(電力需要者)は、抑制期間の終了後に暖房給湯システム10が十分な能力を発揮するまでに、他の住宅2の住人に比べて長い時間を要することになる。
【0098】
この不公平を解消するために、本実施形態の電力管理システム100では、暖房給湯システム10の使用者である住宅2の住人と電力統括装置1aを管理する電力会社1との間で結ばれる契約の情報を、HEMS2bの契約情報記憶部2b1に記憶させている。この契約の情報に含まれる、起動待機時間の長さと暖房給湯システム10の使用者に支払われるインセンティブとを関連付けた情報(図4参照)によって、他の暖房給湯システム10よりも抑制期間の終了後の圧縮機21の起動が遅れる暖房給湯システム10の使用者は、高いインセンティブを得るといったことで不公平の解消を図ることができている。
【0099】
(5−5)
本実施形態の電力管理システム100における電力統括装置1aでは、偏り抑制部1a1によって偏り抑制措置を行っている。具体的には、住宅2のコントローラ80の起動待機時間設定部84によって設定された暖房給湯システム10の起動待機時間が、結果的に平準化されておらず、それらの起動待機時間の分布が偏っている場合に、偏り抑制部1a1が所定数の暖房給湯システム10の起動待機時間を前後にずらす修正を行う。これにより、起動待機時間の分布が変わり、多数の起動待機時間が平準化され、多数の暖房給湯システム10が一斉に起動するという事態が、より確実に抑制されるようになっている。
【0100】
(6)変形例
(6−1)変形例A
上記の実施形態の電力管理システム100では、通常運転時の消費電力よりも起動時の消費電力のほうが大きい設備機器として、暖房給湯システム10を例に上げて説明しているが、起動時の消費エネルギーが大きい設備機器であれば、ホームエレベータでも、エアコンでも、換気装置でも構わない。
【0101】
(6−2)変形例B
上記の実施形態の暖房給湯システム10は、住宅2に設置される設備機器であるが、これに限定されるものではなく、ビルや商業施設に設置される設備機器であってもよい。この場合、コントローラ80は、HEMS2bではなく、例えばBEMS(ビル用エネルギー管理システム)から電力の消費量の調整要求を受け付けることになる。
【0102】
(6−3)変形例C
上記の実施形態の暖房給湯システム10では、起動待機時間設定部84が、自動設定が選択されたときには乱数値によって起動待機時間を決め、手動設定が選択されたときには操作者の入力値を起動待機時間としている。しかし、自動設定と手動設定との選択をさせる構成を採らずに、必ず乱数値によって起動待機時間を決める構成を採ってもよいし、逆に必ず操作者に入力をさせて起動待機時間を決める構成を採ってもよい。
【0103】
(6−4)変形例D
上記の実施形態の暖房給湯システム10では、電力統括装置1aの偏り抑制部1a1が、乱数値によって決まっていた起動待機時間を前後にずらす修正を行うことによって、改善を図っている。これに代えて、偏り制御部1a1が、起動待機時間が集中しているときに、該当する暖房給湯システム10の住宅2の住人に再手動設定の要請を送るようにしてもよい。また、偏り制御部1a1が、強制的に起動待機時間をずらす修正を行い、その修正を行った旨を、コントローラ80を介してタッチパネル89に表示させるようにしてもよい。
【0104】
(6−5)変形例E
上記の実施形態では、暖房給湯システム10とコントローラ80とを分けて説明しているが、上述のようにコントローラ80の構成は1つとは限らない。例えば、暖房給湯システム10とコントローラとが一体化されていてもよいし、室外機20あるいは暖房ユニット70にコントローラが組み込まれていてもよい。
【符号の説明】
【0105】
1a 電力統括装置(エネルギー統括装置)
2b1 契約情報記憶部(記憶装置)
10 暖房給湯システム(設備機器)
21 圧縮機
80 コントローラ(制御装置)
82 消費電力抑制制御部(消費エネルギー抑制制御部)
83 起動制御部
83a 通常起動制御
83b 抑制後起動制御
84 起動待機時間設定部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0106】
【特許文献1】特開2005−107901号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6