特許第6186733号(P6186733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186733
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】遠心機および遠心機用ロータ
(51)【国際特許分類】
   B04B 9/12 20060101AFI20170821BHJP
   B04B 5/02 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   B04B9/12
   B04B5/02 Z
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-16882(P2013-16882)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-147866(P2014-147866A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄貴
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−111417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B
F16D 1/108
F16D 3/202
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持するロータと、該ロータを回転駆動するモータと、該モータの回転軸の先端に取り付けられ前記ロータが装着されるクラウンと、該クラウンの回転中心軸からそれぞれ同一の配置半径の位置に前記回転中心軸に平行となって前記クラウンに設けられる少なくとも2本のクラウンピンと、前記クラウンの回転中心軸から前記配置半径の位置に前記回転中心軸に平行となって前記ロータに設けられる少なくとも2本のロータピンとを有し、前記クラウンの回転トルクを前記クラウンピンと該クラウンピンに接触する前記ロータピンとを介して前記ロータに伝達する遠心機であって、
対をなす2本の前記クラウンピンの中心を結ぶクラウン基準線と、前記クラウンピンに接触して対をなす2本の前記ロータピンの中心を結ぶロータ基準線とを、相互に平行に位置させて前記ロータピンと前記クラウンピンとを配置し、
前記クラウンピンと前記ロータピンの一方は奇数本であり、前記クラウンピンと前記ロータピンの他方は偶数本であり、
対をなす2本の前記ロータピンを、対をなす2本の前記クラウンピンに接触させる、遠心機。
【請求項2】
対をなす2本の前記クラウンピンの中心を結ぶクラウン基準線を、前記回転中心軸を横切る径方向線と該径方向線に平行な平行線の一方に位置させて前記クラウンピンを配置し、前記クラウンピンに接触して対をなす2本の前記ロータピンの中心を結ぶロータ基準線を、前記径方向線と前記平行線の他方に位置させて前記ロータピンを配置する、請求項1記載の遠心機。
【請求項3】
前記クラウンピンと前記ロータピンは、それぞれ円周方向に等間隔に配置されている、請求項1または2記載の遠心機。
【請求項4】
前記他方の偶数本のピンは、対をなす2本のピンが点対称の関係にある、請求項2または3記載の遠心機。
【請求項5】
前記ロータピンは対をなす2本を有し、前記クラウンピンは円周方向に1つ置きでそれぞれ対をなす5本を有する、請求項1または2記載の遠心機。
【請求項6】
前記クラウンピンを(2n+1)本(n=1,2,3・・・)有し、前記ロータピンを2本有し、前記配置半径をR、前記クラウンピンの径をdc、前記ロータピンの径をdr、前記クラウンピンと前記ロータピンとの間の微小な隙間をλとしたときに、前記ロータピンの径と前記クラウンピンの径が、
dr=2Rsin{π/[4(2n+1)]}−dc−2λ
の関係を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の遠心機。
【請求項7】
モータの回転軸の先端部に取り付けられ、回転中心軸からそれぞれ同一の配置半径の位置に前記回転中心軸に平行となって少なくとも2本のクラウンピンが設けられたクラウンに装着される遠心機用のロータであって、
前記ロータには前記配置半径の位置に前記回転中心軸に平行となって少なくとも2本のロータピンが設けられ、
前記クラウンピンと前記ロータピンの一方は奇数本であり、前記クラウンピンと前記ロータピンの他方は偶数本であり、
対をなす2本の前記クラウンピンの中心を結ぶクラウン基準線に対して、前記クラウンピンに接触して対をなす2本の前記ロータピンの中心を結ぶロータ基準線を平行に位置させて前記ロータピンを配置し、
対をなす2本の前記ロータピンを、対をなす2本の前記クラウンピンに接触させる、遠心機用ロータ。
【請求項8】
対をなす2本の前記クラウンピンの中心を結ぶクラウン基準線を、前記回転中心軸を横切る径方向線と該径方向線に平行な平行線の一方に位置させて前記クラウンピンを配置し、前記クラウンピンに接触して対をなす2本の前記ロータピンの中心を結ぶロータ基準線を、前記径方向線と前記平行線の他方に位置させて前記ロータピンを配置する、請求項記載の遠心機用ロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体等を試料とし、これを遠心力により沈殿分離や濃縮等の遠心処理を行う遠心用ロータおよび遠心機に関する。
【背景技術】
【0002】
医学、薬学および遺伝子工学等の分野においては、液体あるいは固体と液体との混合物を試料として、これを沈殿分離や精製等の遠心処理を行うために、遠心分離機つまり遠心機が使用されている。遠心機は、例えば培養液や血液等の試料が収容されたチューブやボトル等の容器が装填されるロータを有している。ロータは、収納容器のロータ室内に突出して設けられた回転軸に着脱自在に装着され、電動モータ等の駆動装置により回転駆動される。収納容器内の試料を遠心処理する際には、試料がロータに保持された状態のもとでロータを高速回転させる。
【0003】
ロータの回転速度は用途によって異なり、遠心機には、用途に合わせて数千回転程度の低速から最高回転速度が150,000rpm程度の高速までの製品群が提供されている。遠心機に用いられるロータには、様々なタイプがあり、試料を収容するチューブが固定角度式で高速回転速度に対応できるアングルロータや、チューブを装填したバケットがロータの移転に伴って垂直状態から水平状態に揺動するスイングロータなどがある。また、超高回転速度で回転させて少量の試料に高遠心加速度をかけるロータや、低回転速度となるが大容量の試料を扱えるロータなど様々な大きさのものがある。これらのロータは、遠心処理される試料に合わせて使用されるため、ロータはモータ等の駆動手段の回転軸の先端に設けられたカップリングつまりクラウンに着脱自在に装着されており、ロータは交換が可能である。
【0004】
ロータを回転させて試料を遠心処理する場合には、ロータに駆動手段によりトルクを与えて目標の回転速度に至るまで加速させ、予め設定された処理時間にわたってその回転速度を保持することにより、試料に一定の遠心力を与えている。ロータにはクラウンが嵌合される嵌合穴が形成されており、嵌合穴にはその底面から突出するピンつまりロータピンが取り付けられており、クラウンにはロータピンに接触するピンつまりクラウンピンが取り付けられており、クラウンピンによりロータには回転トルクが伝達される。ロータは一定の回転速度を保持している間も空気中での空気摩擦つまり風損が発生するため、釣り合いの取れるトルクを与え続ける必要がある。また、減速時には早くロータを取り出すことができるようにして遠心機の利便性ないし操作性を高めるために、ロータには逆方向のトルクを与えて、減速時間を早めるようにしている。
【0005】
特許文献1に記載されるように、ロータの嵌合穴には複数本のロータピンがロータの回転中心軸から同一半径の位置に回転中心軸を中心として円周方向に等間隔に取り付けられており、クラウンにはその回転中心軸を中心として円周方向に等間隔にクラウンピンが取り付けられている。ロータがクラウンに装着されると、円周方向に隣り合うロータピンの間に、クラウンピンが入り込み、クラウンピンとロータピンとの接触により、クラウンとロータとの間でトルクが伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−111417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
回転軸によりロータを加速しているとき、およびロータ回転速度を一定に保持しているときには、クラウンピンの回転方向前面側がロータピンの回転方向背面側に接触した状態となる。これに対し、ロータを減速させるときには、ロータはクラウンに対して相対的に逆方向に回転することになるので、クラウンピンの回転方向背面側がロータピンの回転方向前面側に接触した状態に変化する。このため、減速時にはクラウンピンとロータピンの接触位置が反対側に切りかわるために、クラウンとロータとの間で相対的な滑り移動が生じることになる。この滑り移動の量は、クラウンピンの間隔分となるので、それぞれのピンの本数やピン径などの条件によって相違する。ロータの回転中にロータとクラウンとの間に滑り移動が発生すると、滑り移動による摩擦力がロータに与えられて、ロータが不安定な振動を発生する場合がある。この振動発生は、特に、10,000rpm以上の高速度で回転させるようにした高速用のロータの場合に起こりやすい。このため、高速域で使用される遠心機においては、ロータとクラウンとの間で滑り移動が起こらないようにすることが望ましい。
【0008】
上述のように、ロータ減速時にロータとクラウンとの間で相対的な滑り移動が発生すると、ロータの回転が不安定となってロータに大きな振動が発生することがある。その対策としては、減速勾配を緩めて減速トルクを抑制すれば、高速域での滑り現象の発生を防止することができる。しかし、減速トルクを緩めることは、早くロータを停止させて遠心機から取り出したいという使用者の要望に応えるものではないため、望ましい対策ではない。
【0009】
ロータとクラウンとの間における滑り移動の発生を防止するために、クラウンに重りつまりウエイトを径方向に移動自在に装着し、遠心力によりウエイトをロータの嵌合穴の内周面に突き当てるようにした滑り移動防止技術が開発されている。クラウンにウエイトを設けると、遠心力でウエイトが嵌合穴の内周面に押し付けられるので、ロータの滑り移動をある程度は抑制することができるが、押し付け力は回転速度の減速に依存して小さくなっていくため、一定の回転速度を下回ると、減速トルクが摩擦力によるトルクを上回り、ロータとクラウンとの間で滑り移動が発生することになる。ウエイトを大きくすれば、理論的には、低い回転速度まで滑り発生を防止できるが、クラウンの大きさには限度があるため、自ずとウエイトの大きさも制限される。
【0010】
しかも、ウエイトを装着する方式では、ウエイトの大きさが制限されるので、ロータの滑り移動による異常振動を懸念する必要のない低い回転速度に減速するまでロータの滑り移動を抑えることができなかった。その対策としては、クラウン側に雌ねじを設け、ロータを挟み込むようにロータの上からねじ止めする方式があるが、異常振動の発生は抑えられるもののロータの着脱操作が煩わしくなり、利便性ないし操作性が劣るというデメリットがある。
【0011】
本発明の目的は、ロータの構造を複雑にするとこなく、ロータ減速時における振動発生を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の遠心機は、試料を保持するロータと、該ロータを回転駆動するモータと、該モータの回転軸の先端に取り付けられ前記ロータが装着されるクラウンと、該クラウンの回転中心軸からそれぞれ同一の配置半径の位置に前記回転中心軸に平行となって前記クラウンに設けられる少なくとも2本のクラウンピンと、前記クラウンの回転中心軸から前記配置半径の位置に前記回転中心軸に平行となって前記ロータに設けられる少なくとも2本のロータピンとを有し、前記クラウンの回転トルクを前記クラウンピンと該クラウンピンに接触する前記ロータピンとを介して前記ロータに伝達する遠心機であって、対をなす2本の前記クラウンピンの中心を結ぶクラウン基準線と、前記クラウンピンに接触して対をなす2本の前記ロータピンの中心を結ぶロータ基準線とを、相互に平行に位置させて前記ロータピンと前記クラウンピンとを配置し、前記クラウンピンと前記ロータピンの一方は奇数本であり、前記クラウンピンと前記ロータピンの他方は偶数本であり、対をなす2本の前記ロータピンを、対をなす2本の前記クラウンピンに接触させる。
【0013】
本発明の遠心機は、対をなす2本の前記クラウンピンの中心を結ぶクラウン基準線を、前記回転中心軸を横切る径方向線と該径方向線に平行な平行線の一方に位置させて前記クラウンピンを配置し、前記クラウンピンに接触して対をなす2本の前記ロータピンの中心を結ぶロータ基準線を、前記径方向線と前記平行線の他方に位置させて前記ロータピンを配置する。本発明の遠心機は、前記クラウンピンと前記ロータピンは、それぞれ円周方向に等間隔に配置されている。本発明の遠心機は、前記他方の偶数本のピンは、対をなす2本のピンが点対称の関係にある。本発明の遠心機は、前記ロータピンは対をなす2本を有し、前記クラウンピンは円周方向に1つ置きでそれぞれ対をなす5本を有する。
【0014】
本発明の遠心機は、前記クラウンピンを(2n+1)本(n=1,2,3・・・)有し、前記ロータピンを2本有し、前記配置半径をR、前記クラウンピンの径をdc、前記ロータピンの径をdr、前記クラウンピンと前記ロータピンとの間の微小な隙間をλとしたときに、前記ロータピンの径と前記クラウンピンの径が、
dr=2Rsin{π/[4(2n+1)]}−dc−2λ
の関係を有する。
【0015】
本発明の遠心機用ロータは、モータの回転軸の先端部に取り付けられ、回転中心軸からそれぞれ同一の配置半径の位置に前記回転中心軸に平行となって少なくとも2本のクラウンピンが設けられたクラウンに装着される遠心機用のロータであって、前記ロータには前記配置半径の位置に前記回転中心軸に平行となって少なくとも2本のロータピンが設けられ、前記クラウンピンと前記ロータピンの一方は奇数本であり、前記クラウンピンと前記ロータピンの他方は偶数本であり、対をなす2本の前記クラウンピンの中心を結ぶクラウン基準線に対して、前記クラウンピンに接触して対をなす2本の前記ロータピンの中心を結ぶロータ基準線を平行に位置させて前記ロータピンを配置し、対をなす2本の前記ロータピンを、対をなす2本の前記クラウンピンに接触させる。本発明の遠心機用ロータは、対をなす2本の前記クラウンピンの中心を結ぶクラウン基準線を、前記回転中心軸を横切る径方向線と該径方向線に平行な平行線の一方に位置させて前記クラウンピンを配置し、前記クラウンピンに接触して対をなす2本の前記ロータピンの中心を結ぶロータ基準線を、前記径方向線と前記平行線の他方に位置させて前記ロータピンを配置する。
【発明の効果】
【0016】
回転軸に設けられたクラウンの回転トルクを、クラウンに装着されるロータに伝達するために、クラウンには複数本のクラウンピンが設けられ、クラウンピンに接触するロータピンがロータに設けられている。ロータピンとクラウンピンの配置形態により、回転軸によりロータを加速し、ロータを一定回転速度で駆動するときには、クラウンピンからロータピンに回転トルクが伝達され、ロータを減速するときにはロータとクラウンとの滑り移動が抑制される。これにより、簡単な構造でロータの滑り移動に起因したロータの振動発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施の形態である遠心機の全体構造を示す断面図である。
図2図1に示されたロータの拡大断面図である。
図3図1に示されたクラウンの拡大斜視図である。
図4】クラウンとクラウンに装着されたロータとを示す断面図である。
図5図4におけるA−A線断面図である。
図6図4に示したロータピンとクラウンピンの配置関係を示す概略図である。
図7】ロータとクラウンの変形例を示す概略図である。
図8】ロータとクラウンの他の変形例を示す概略図である。
図9】ロータとクラウンのさらに他の変形例を示す概略図である。
図10】比較例として示す従来のロータに設けられたロータピンとクラウンに設けられたクラウンピンとの配置関係を示す概略図である。
図11】他の比較例として示す従来のロータとクラウンとを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示される遠心分離機つまり遠心機10は、箱形の板金などにより形成されたほぼ直方体形状の筐体11を有している。この筐体11の内部には、金属製の薄板により形成されたボウルつまり収納容器12が設けられており、収納容器12の内部はロータ室13となっている。このロータ室13内には回転体つまりロータ14が配置されるようになっている。収納容器12の底部には、筐体11の内部に設けられた駆動手段としての電動モータ15の回転軸16が貫通しており、回転軸16の先端にはロータ14が装着されるカップリングつまりクラウン17が取り付けられている。ロータ14はクラウン17に着脱自在に装着されて電動モータ15により回転駆動される。
【0019】
筐体11にはドア18が蝶番19を中心に開閉自在に装着されており、ドア18を開放した状態のもとで、ロータ室13の内部に、遠心処理される試料が装填されたロータ14を着脱つまり装着と脱着とを行うことができる。ドア18により収納容器12の開口部が閉じられたときに、ロータ室13を密閉するために、筐体11にはドア18に接触するドアパッキン20が設けられている。ドア18の後方には、使用者がロータの回転速度や処理時間等の条件を入力するとともに、各種情報を表示するための操作パネル21が設けられている。
【0020】
筐体11には、ロータ室13を所望の低温に保持するための冷却手段として冷却装置22が設けられている。冷却装置22は、収納容器12に巻き付けられた冷却配管23と、この冷却配管23の流入口と流出口との間に接続された循環配管24とを有し、冷却装置22は冷却配管23と循環配管24の内部に冷媒が循環する冷凍機により形成されている。冷却装置22は、冷却配管23から吐出したガス状の冷媒を圧縮する圧縮機25と、圧縮された冷媒を冷却して液化する凝縮器つまりコンデンサ26と、コンデンサ26から冷却配管23に向けて供給される冷媒を断熱膨張させるキャピラリーチューブ27とを有し、冷却配管23と循環配管24とにより冷媒が矢印で示す方向に循環する冷凍サイクルが構成される。筐体11には、電動モータ15の回転等を制御するための制御ユニット28が設けられている。
【0021】
ロータ14は遠心処理される試料に応じて多数用意されており、用意されたいずれのロータ14もクラウン17に装着されるようになっている。図示するロータ14がアングルロータとすると、ロータ14には試料が収容されたチューブ等の容器が装填される装填部が円周方向に間隔を隔てて複数個形成されている。なお、ロータ室13に配管を通じて図示しない真空ポンプを接続するようにした形態においては、ロータ14を運転させるときにロータ室13を減圧することができる。
【0022】
図2図1に示されたロータを拡大して示す断面図であり、図3図1に示されたクラウンを拡大して示す斜視図である。図4はクラウンとクラウンに装着されたロータを示す断面図であり、図5図4におけるA−A線断面図である。
【0023】
図2および図5に示されるように、ロータ14にはクラウン17が嵌合される嵌合穴31が下端面に開口して形成されており、嵌合穴31はストレート部31aと下端面側のテーパ部31bとを有している。嵌合穴31に嵌合されるクラウン17は、図3に示されるように、ストレート部31aに嵌合される円筒部32と、これの下端部側に設けられた大径部33とを有し、大径部33には、ロータ14のテーパ部31bに突き当てられるテーパ面33aが設けられている。ロータ14がクラウン17に装着されると、図4に示されるように、ロータ14の回転中心軸はクラウン17の回転中心軸Oと同軸となる。
【0024】
ロータ14には、図5に示されるように、回転中心軸Oから配置半径(R/2)の位置に2本のロータピン34が設けられている。つまりロータピン34は配置直径Rの位置に設けられている。それぞれのロータピン34は、横断面が円形であり、図4に示されるように嵌合穴31の底面31cから嵌合穴31の開口部に向けて突出し、回転中心軸Oに平行となっている。2本のロータピン34は、円周方向に180度の角度でずれて対をなしており、それぞれの中心Orを結ぶロータ基準線Srは、回転中心軸Oを横切る径方向線Qと一致している。図5においては、2本のロータピン34に(a),(b)を付してロータピンの位置を区別している。
【0025】
クラウン17には、図3に示されるように、大径部33の内側にスペースを隔てて小径部35が設けられており、大径部33と小径部35との間のスペースには、5本のクラウンピン36が設けられている。それぞれのクラウンピン36は、横断面が円形であり、底面31cに対向してクラウン17に設けられたピン取付面37からクラウン17の端面に向けて突出し、回転中心軸Oに平行となっている。図5においては、5本のクラウンピン36に(a)〜(e)を付してクラウンピンの位置を区別している。
【0026】
図4および図5は、ロータ14をクラウン17に装着した状態を示している。装着作業の容易性を高めるために、ロータピン34とクラウンピン36のそれぞれの先端部は、図2および図3に示されるように、先端に向かうに従って小径となるテーパ部が設けられている。
【0027】
それぞれのクラウンピン36(a)〜36(e)は、図5に示されるように、円周方向に72度の角度で等間隔にずれており、円周方向に1つのクラウンピンを介して隣り合う他のクラウンピンと相互に対をなしている。例えば、クラウンピン36(a)はクラウンピン36(c)と対をなすとともにクラウンピン36(d)とも対をなしており、クラウンピン36(b)はクラウンピン36(d)と対をなすとともにクラウンピン36(e)とも対をなしている。さらに、クラウンピン36(c)はクラウンピン36(e)とも対をなしている。
【0028】
ロータ14がクラウン17に装着されると、ロータ14側の対をなすロータピン34(a),34(b)は、クラウン17側の対をなす2本のクラウンピンに接触する。図5においては、ロータピン34(a),34(b)が、対をなすクラウンピン36(a),36(c)に接触した状態を示す。ロータピン34に接触する対をなすクラウンピン36(a),36(c)の中心Ocを結ぶクラウン基準線Scは、径方向線Qと平行となる平行線Pと一致するとともに、ロータ基準線Srと平行となっている。
【0029】
このように、クラウン基準線Scとロータ基準線Srとが平行となるようにロータピン34とクラウンピン36とを位置させて配置すると、遠心機10の始動時から停止時までに、常に、ロータピン34とクラウンピン36とが接触した状態を保持することになる。
【0030】
したがって、例えば、対をなすロータピン34(a),34(b)がクラウンピン36(a),36(c)に接触した状態のもとで、電動モータ15によりクラウン17を図5において時計方向に回転させて、その回転トルクをロータ14にピンを介して伝達することによって、試料を遠心処理する場合には、ロータ14を加速しているときと、ロータ回転速度を一定に保持しているときには、駆動側となるクラウンピン36(a),36(c)の回転方向前面側がロータピン34(a),34(b)の回転方向背面側に点接触した状態となる。これに対し、ロータ14を減速させるときには、ロータ14はクラウン17に対して相対的に逆方向に回転することになる。このときにも、クラウンピン36(a),36(c)の回転方向前面側がロータピン34(a),34(b)の回転方向背面側に点接触した状態となるので、ロータ14がクラウン17に対して相対的に滑り移動することが抑制される。これにより、滑り移動に起因した振動発生を防止することができる。ロータ14とクラウン17との装着性を向上させるために、ロータピン34とクラウンピン36との間に僅かな隙間を設けるように設定しても、その隙間は僅かであり、クラウンピン36(a),36(c)とロータピン34(a),34(b)は実質的には接触した状態となり、ロータ14の振動発生を確実に抑制することができる。
【0031】
クラウン17には5本のクラウンピン36(a)〜36(e)が設けられており、対をなす組み合わせは複数存在する。これにより、ロータ14をクラウン17に装着するときには、クラウン17に2本のクラウンピン36を設けた形態に比して、ロータ14の回転方向の位置決め姿勢を複数選択できるので、ロータ14の位置決め操作つまり装着操作を容易に行うことができる。ロータピン34(a),34(b)が図5に示したクラウンピン以外の対をなすクラウンピンと接触した場合にも同様にロータ14の振動発生を確実に抑制することができる。
【0032】
図3および図5に示されるように、クラウン17には5本のクラウンピン36が設けられ、ロータ14には2本のロータピン34が設けられているが、本数関係を逆転させて、クラウン17に2本のクラウンピン36を設け、ロータ14に5本のロータピン34を設ける形態しても、同様に、ロータ14の振動発生を抑制しつつ、ロータ14の位置決めを容易に行うことができる。この場合には、クラウン基準線Scが径方向線Qの位置となり、ロータ基準線Srが平行線Pの位置となる。このように、クラウン基準線Scを、径方向線Qと平行線Pの一方に位置させてクラウンピン36を配置し、ロータ基準線Srを径方向線Qと平行線Pの他方に位置させてロータピン34を配置することにより、ロータ14の振動発生を確実に抑制することができる。
【0033】
ただし、位置決めの容易性を考慮しなければ、2本のロータピン34が設けられたロータ14と、2本のクラウンピン36が設けられたクラウン17の形態としても良い。つまり、ロータピン34とクラウンピン36は、それぞれ少なくとも2本ずつ設ければ、振動発生を防止することができる。
【0034】
複数本のロータピン34およびクラウンピン36をそれぞれ円周方向に等間隔に配置する場合には、ロータピン34の本数を偶数本とすると、対をなすロータピン34のロータ基準線Srは、回転中心軸Oを横切る径方向線Qと一致するとともに、クラウン基準線Scに平行となる。一方、クラウンピン36の本数を奇数本とすると、対をなすクラウンピン36のクラウン基準線Scは、径方向線Qと平行となる平行線Pと一致するとともにロータ基準線Srと平行になる。クラウン基準線Scを径方向線Qと一致させる形態においては、クラウンピン36は偶数本設けられ、ロータピン34を奇数本とすると、対をなすロータピン34のロータ基準線Srは、径方向線Qと平行な平行線Pと一致することになる。いずれの形態においても、クラウン基準線Scとロータ基準線Srとが平行となるようにロータピン34とクラウンピン36とを位置させることにより、ロータ減速時における振動発生を抑制することができる。
【0035】
図5に示されるように、2本のロータピン34をロータ14に設け、3本以上の奇数本のクラウンピン36をクラウン17に設けた形態において、ロータピンの径drとクラウンピンの径dcの関係は、図6に符号で示される変数や要素に基づいて、以下のように表される。
【0036】
dr=2Rsin{π/[4(2n+1)]}−dc−2λ
ただし、符号Rは上述した配置直径つまりそれぞれのピンが配置される配置円Tの直径を示し、符号nは1,2,3,4・・・の整数であり、(2n+1)がクラウンピン36の本数を示す。符号λはロータピン34とこれに接触するクラウンピン36との間における僅かな隙間を示しており、それぞれのピンの径の加工誤差と配置誤差とを考慮してロータピン34とクラウンピン36との間に1mm以下のミクロンオーダーの公差隙間を設けてある。これにより、ロータ減速時におけるロータの滑り移動を抑制しつつ、ロータ14のクラウン17に対する着脱性を損なわないようにしている。
【0037】
図6に示されるように、ロータピン34とクラウンピン36の中心を結ぶ線Aの長さは、
A=(dc/2)+(dr/2)+λ ・・・(1)
クラウンピン36の中心軸からのずれ量Bは、
B=(R/2)sinθ ・・・(2)
クラウンピン36の本数をN本(N=2n+1)とすると、
θ={π−[(N−1)/2]・(2π/N)}/2
=(π/2)(1−(N−1)/N) ・・・(3)
であり、
θ3は相似の関係より、θ3=θ2=θ/2 であるから、
θ3=(π/4){1−[(N−1)/N]} となる。
【0038】
Acosθ3=Bであるから、(1)式と(2)式から、
[(dc/2)+(dr/2)+λ]cosθ3=(R/2)sinθ
=(R/2)sin2θ3=(R/2)2sinθ3・cosθ3
[(dc/2)+(dr/2)+λ]=Rsinθ3
[(dc/2)+(dr/2)+λ]=Rsin[(π/4)(1−(N−1)/N]
したがって、ロータピン34の径drとクラウンピン36の径dcは、以下の関係となる。
【0039】
dr=2Rsin[(π/4)(1−(N−1)/N]−dc−2λ ・・・(4)
クラウンピンの本数Nを(2n+1)に置き換えると、(4)式は、以下のように表される。
【0040】
dr=2Rsin{(π/4)(1−[2n/(2n+1)]}−dc−2λ
dr=2Rsin{π/[4(2n+1)]}−dc−2λ ・・・(5)
したがって、例えば、配置直径Rを50mm、クラウンピン36の径dcを6mm、隙間λを0.32mmとし、クラウンピン36の本数が5本なので、n=3とすると、ロータピン34の軸径drは9mmとなる。これにより、図5に示すように2本のロータピン34と5本のクラウンピン36を有する形態においては、クラウンピン36の軸径を6mmとし、ロータピン34の軸径を9mmとすると、ロータ減速時にロータ14のクラウンに対する滑り移動を抑制することができる。
【0041】
(5)式は、nを1,2,3・・の正の整数とすることにより、クラウンピン36の本数Nを3本以上としたときに、対をなすロータピン34と、これに対して接触するクラウンピン36とのそれぞれの軸径の関係を示しており、クラウンピン36の本数は、図3および図5に示した5本に限られることはない。
【0042】
図7はロータとクラウンの変形例を示す概略図である。図7に示した形態においては、クラウン17には円周方向に等間隔となって4本のクラウンピン36が設けられており、円周方向に1つ置きのクラウンピンが対をなしている。図示するように、クラウンピン36(a)とクラウンピン36(c)が対をなし、クラウンピン36(b)とクラウンピン36(d)が対となっている。したがって、対をなす2本のクラウンピン36の中心Ocを結ぶクラウン基準線Scは、径方向線Qと一致する。
【0043】
一方、ロータ14には2本のロータピン34が設けられている。それぞれのロータピン34は円周方向に不等間隔となって配置されており、2本のロータピン34の中心Orを結ぶロータ基準線Srは、径方向線Qと平行な平行線Pと一致するとともに、クラウン基準線Scと平行となっている。
【0044】
このように、クラウン基準線Scとロータ基準線Srとが平行となるようにロータピン34とクラウンピン36とを位置させて配置すると、遠心機10の始動時から停止時までに、常に対をなして接触するロータピン34とクラウンピン36とが接触した状態を保持することができる。
【0045】
図8はロータとクラウンの他の変形例を示す概略図である。図8に示した形態においては、図7に示した形態と同様に、クラウンには円周方向に等間隔となって4本のクラウンピン36が設けられている。この場合には、円周方向に隣り合う2本のクラウンピン36が対をなしている。図示するように、クラウンピン36(a)とクラウンピン36(b)が対をなし、クラウンピン36(b)とクラウンピン36(c)が対をなし、クラウンピン36(c)とクラウンピン36(d)が対をなし、クラウンピン36(d)とクラウンピン36(a)が対をなしている。したがって、対をなす2本のクラウンピン36の中心Ocを結ぶクラウン基準線Scは、径方向線Qとは一致していない。
【0046】
一方、ロータ14には図7に示した形態と同様に、2本のロータピン34が円周方向に不等間隔となって配置されており、2本のロータピン34の中心Orを結ぶロータ基準線Srは、クラウン基準線Scと平行となっている。このように、図8に示す形態においても、クラウン基準線Scとロータ基準線Srとが平行となるようにロータピン34とクラウンピン36とが配置されている。
【0047】
図9はロータとクラウンのさらに他の変形例を示す概略図である。図9に示した形態は、図7に示した形態と図8に示した形態とを組み合わせた形態となっている。図9においては、図7および図8に示した形態と同様に、クラウンには円周方向に等間隔となって4本のクラウンピン36が設けられている。この場合には、図8に示した形態と同様に、円周方向に隣り合う2本のクラウンピン36が対をなすとともに、図7に示した形態と同様に、円周方向に1つ置きのクラウンピンが対をなしている。
【0048】
つまり、クラウンピン36(a)とクラウンピン36(b)が対をなし、クラウンピン36(b)とクラウンピン36(c)が対をなし、クラウンピン36(c)とクラウンピン36(d)が対をなし、クラウンピン36(d)とクラウンピン36(a)が対をなしている。これらのクラウンピン36は、対をなす2本のクラウンピン36の中心Ocを結ぶクラウン基準線Scは、径方向線Qとは一致していない。さらに、クラウンピン36(a)とクラウンピン36(c)が対をなし、クラウンピン36(b)とクラウンピン36(d)が対となっている。したがって、これらの対をなす2本のクラウンピン36の中心Ocを結ぶクラウン基準線Scは、径方向線Qと一致する。
【0049】
一方、ロータ14には4本のロータピン34が円周方向に不等間隔となって配置されており、円周方向に1つ置きのロータピン34が対となっており、2対のロータピン対を有している。ロータピン34(a)とこれと対をなすロータピン34(c)の中心Orを結ぶ第1のロータ基準線Sr1は、径方向線Qと一致したクラウン基準線Scに平行となる。これに対し、ロータピン34(b)とこれと対をなすロータピン34(d)の中心Orを結ぶ第2のロータ基準線Sr2は、円周方向に隣り合ったクラウンピン36(a)とクラウンピン36(b)の中心Ocを結ぶクラウン基準線Scに平行となる。
【0050】
このように、図9に示す場合においても、クラウン基準線Scとロータ基準線Srとが平行となるようにロータピン34とクラウンピン36とを位置させてこれらが配置されている。これにより、図8および図9に示した形態においても、遠心機10の始動時から停止時までに、常に対をなして接触するロータピン34とクラウンピン36とが接触した状態を保持することができ、ロータ14の振動発生を抑制することができる。
【0051】
図10(A),(B)は比較例として示す従来のロータに設けられたロータピンとクラウンに設けられたクラウンピンとの配置関係を示す概略図である。図10(A)はロータを加速しているときと、ロータ回転速度を一定に保持している状態を示し、図10(B)はロータを減速している状態を示す。図10においては、上述した部材と共通する部材には同一の符号が付されている。図10に示すように、従来では、2本のロータピン34の中心Orを結ぶロータ基準線Srと、これに接触して対をなす2本のクラウンピン36の中心Ocを結ぶクラウン基準線Scとのいずれも、回転中心軸Oを横切る径方向線Qと一致するとともに、ロータ基準線Srとクラウン基準線Scとが交差している。
【0052】
このように、ロータ基準線Srとクラウン基準線Scとを交差配置すると、回転軸によりロータを加速しているとき、およびロータ回転速度を一定に保持しているときには、クラウンピン36(a)とクラウンピン36(c)の回転方向前面側がロータピン34(a)とロータピン34(b)の回転方向背面側に点接触した状態となる。これに対し、ロータ14を減速させるときには、ロータ14はクラウン17に対して相対的に逆方向に回転することになるので、クラウンピン36(b)とクラウンピン36(d)の回転方向背面側がロータピン34(a)とロータピン34(b)の回転方向前面側に点接触した状態に変化する。このため、減速時にはクラウンピン36とロータピン34の接触位置が反対側に切りかわるために、クラウン17とロータ14との間で相対的な滑り移動が生じることになる。ロータ14の回転中にロータ14とクラウン17との間に滑り移動が発生すると、滑り移動による摩擦力がロータ14に与えられて、ロータ14が不安定な振動を発生する場合がある。
【0053】
これに対し、上述のように、対をなす2本のクラウンピン36の中心を結ぶクラウン基準線Scと、クラウンピン36に接触して対をなす2本のロータピン34の中心を結ぶロータ基準線Srとを、相互に平行に位置させてロータピン34とクラウンピン36とを平行配置形態とすると、一定回転速度の状態から減速回転に切り換えられても、ロータ14はクラウン17に対して滑り移動しないので、簡単な構造により、ロータ減速時における振動発生を防止できる。
【0054】
図11は他の比較例として示す従来のロータとクラウンとを示す断面図である。図11には、従来の遠心機における図4と同様の部分が示されており、図4に示された部材と共通する部材には同一の符号が付されている。
【0055】
図11に示した遠心機においては、ロータ14とクラウン17との間における滑り移動の発生を防止するために、クラウン17には、重りつまりウエイト41が径方向に移動自在に装着されている。クラウン17にウエイト41を設けると、遠心力でウエイト41が嵌合穴31の内周面に押し付けられるので、ロータ14の滑り移動をある程度は抑制することができるが、押し付け力は回転速度の減速に依存して小さくなっていくため、一定の回転速度を下回ると、減速トルクが摩擦力によるトルクを上回り、ロータ14とクラウン17との間で滑り移動が発生することになる。
【0056】
これに対し、上述した実施の形態の遠心機においては、クラウン基準線Scとロータ基準線Srとを相互に平行に配置する平行配置形態とすることにより、簡単な構造でロータ減速時における振動発生を防止できる。しかも、ロータピン34とクラウンピン36の本数は、それぞれ少なくとも2本として任意の本数とすることができるので、遠心機の設定の自由度が高められるとともに、従来の遠心機の僅かな変更で既存の遠心機に対してもロータやクラウンの互換性を高めることかできる。しかも、ロータ14をクラウン17に装着する際には、複数本のクラウンピン36と複数本のロータピン34とが突き当たってこれらが乗り上げられることがないので、ロータ14の装着操作を容易に行うことができる。このような乗り上げを防止した装着操作の容易性は、それぞれのピン先端をテーパ形状としていることからも促進される。
【0057】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
10…遠心機、11…筐体、12…収納容器、13…ロータ室、14…ロータ、15…電動モータ、16…回転軸、17…クラウン、18…ドア、19…蝶番、20…ドアパッキン、21…操作パネル、22…冷却装置、23…冷却配管、24…循環配管、25…圧縮機、26…コンデンサ、27…キャピラリーチューブ、28…制御ユニット、31…嵌合穴、32…円筒部、33…大径部、33a…テーパ面、34…ロータピン、35…小径部、36…クラウンピン、37…ピン取付面、O…回転中心軸、P…平行線、Q…径方向線、R…配置直径、Sc…クラウン基準線、Sr…ロータ基準線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11