(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゴルフにおいては、ショットの瞬間に最大の集中力を発揮できるようになることが肝要となるが、どのような心身状態のときに集中力が最大限に高まり、最高のショットを打てるのかはプレイヤ毎に異なることが多い。例えば、明鏡止水のレベルまで心身が安定していなければ最良のショットを打てない者がある一方、若干リラックスした状態のほうが良いショットを打てる者も居るといった具合である。これは、ゴルフに限らず、野球におけるピッチングやテニスにおけるサーブなど自発的に行うことが可能な競技動作全てに共通する。このため、これら競技のプレイヤのなかには、自身がどのような心身状態のときに最良の競技動作を行えるのか客観的に把握しておきたいといったニーズを抱く者も居るが、従来、このようなニーズに応える技術は提案されていなかった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、最良の競技動作を行い得る自身の心身状態をプレイヤに客観的に把握させることを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、ユーザの生体情報を検出し、当該生体情報を表すデータを出力するセンサと、ある競技における競技動作が前記ユーザによって行われたことを検知する検知手段と、前記センサの出力データに基づいて、前記検知手段が前記競技動作を検知したタイミングまたはその近傍のタイミングを終期とする所定期間内の生体情報を表すデータを記憶装置へ書き込むデータ記録手段とを有することを特徴とする競技練習支援装置、を提供する。
【0008】
集中力が高まっている或いはプレッシャーを感じているなどの人の心理状態は心拍速度や呼吸の深さなどの生体情報の変化として現れることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。本発明の競技練習支援装置によれば、ある競技における競技動作(例えば、ゴルフにおけるパッティング動作や野球におけるピッチング動作など)をユーザが行ったことの検知を契機として、その検知タイミングまたはその近傍のタイミングを終期とする所定期間内の生体情報を表すデータが記憶装置に記録される。このため、ユーザは、競技動作の結果と記録装置に記録されたデータとを対比することで、自身がどのような状態のときに良好な競技動作を行えるのか(逆に良好な競技動作を行えないのか)を客観的に把握することができる。
【0009】
ここで、上記所定期間をどのように定めるかについては、練習対象の競技の性質との関係で定めるようにすれば良い。例えば、ゴルフにおけるパッティングの練習や野球におけるピッチングの練習に本発明を適用する場合には、競技動作の準備段階(ゴルフのパッティングであればアドレスと呼ばれる段階、野球のピッチングであればセットポジションと呼ばれる段階)に入ってから当該競技動作が行われるまでの期間を上記所定期間として定めておくことが考えられる。ゴルフにおけるパッティングや野球におけるピッチングのように準備段階に入った後に競技者が自発的に開始タイミングを決められる競技動作の場合、どのような心身状態のときに最良の競技動作を行えるのかを客観的に把握しておくことが競技者にとって特に重要となるからである。なお、上記所定期間の長さの具体的な定め方としては、一般的なプレイヤについて統計分析により定めた値(例えば平均値)を用いるようにしても良く、本発明の競技練習支援装置を利用して競技動作を練習しようとするユーザについての平均値を用いるようにしても良い。
【0010】
また、ユーザが競技動作を行ったことを検知する検知手段としてどのようなものを用いるのかについては種々の態様が考えられる。例えば、ユーザが競技動作を練習する過程の動画を撮像する撮像装置と、この撮像装置により得られた動画を解析する画像解析装置とにより上記検知手段を構成する態様が考えられる。動画の解析によって競技動作の実行を検知できるからである。また、このような態様においては、競技動作の実行の検知の他に、準備段階への移行の検知を行い、準備段階へ入ったことの検知タイミング(或いはその近傍のタイミング)を始期とし、競技動作の実行を検知したタイミング(或いはその近傍のタイミング)を終期とする期間を上記所定期間として生体情報の記録を行っても良い。また、上記競技動作がゴルフのパッティングである場合には、パッティングにより発生する打撃音を収音するマイクロホンを上記検知手段として用い、当該検知手段による打撃音の検知から所定時間(例えば、一般的なゴルフプレイヤがアドレスに入ってからパッティングを行うまでに要する時間の平均値など)だけ遡った時点を準備段階に移行した時点とみなして生体情報の記録を行わせるようにしても良い。また、検知手段としてスイッチなどを用い、準備段階へ入ったことを当該スイッチの操作によってユーザに直接指示させるようにしても良く、種々のセンサを用いてユーザの特定の動作から準備段階を判断するようにしても良い。
【0011】
特許文献4〜特許文献6には、単位時間当たりの心拍数や呼吸数などの生体情報からユーザの体調を判定し、その判定結果に応じた報知を行う技術が開示されている。より詳細に説明すると、特許文献4には、センサによって心拍数と深部体温を測定し、熱中症の危険がある場合にユーザに報知する装置の発明が記載されている。特許文献5には、座席に取り付けたセンサにより、ユーザの生体信号(心拍数)を計測し、居眠りに至ると判断した場合に、ユーザに警告することで居眠り運転を防止する装置の発明が記載されている。特許文献6には、加圧トレーニングを行う際、ユーザの身体の異常を、装着したセンサから受信した心拍によって検知し、異常が検知された場合は加圧機器の気圧を低くする装置の発明が記載されている。しかし、これら特許文献4〜特許文献6の各文献に開示の技術は、競技動作が行われたことの検知タイミング(或いはその近傍のタイミング)を終期とする所定期間の生体情報を記録する技術ではなく、本発明とは全く異なる技術である。
【0012】
また、特許文献7〜特許文献12には、心拍や呼吸などの生体情報を運動に利用する技術が開示されている。例えば、特許文献7には、生体の労作強度を検出し、目標総労作強度に達するまでの総仕事量に基づき運動機能を表す数値を提示するエアロバイクの発明が記載されている。特許文献8には、心拍の変動のパワースペクトルを分析し、生理的コヒーレンス状態であるかを判断する技術が開示されている。さらに、この特許文献8の実施例には、生理的コヒーレンス状態であれば運動効率が向上することが記載されている。特許文献9には、利用者の反復運動の際に、体動や心拍数が基準範囲に収まっているか否かを判定し、収まっていない場合には警告音などでユーザに報知する技術が開示されている。特許文献10には、パーキンソン病などの病気により身体が不自由な人のために、生体情報と運動の相関を求めて、生体情報からユーザが欲する運動を導き出す技術が開示されている。特許文献11には、温度、高度、心拍数から運動量を換算してユーザにフィードバックし、心拍数をリズムとして利用する技術が記載されている。特許文献12には、複数の音楽データの中からユーザのスイングタイミングに応じた音楽テンポを有する曲を選択して再生する技術が開示されている。しかし、これら特許文献7〜特許文献12の各文献に開示の技術も、競技動作が行われたことの検知タイミング(或いはその近傍のタイミング)を終期とする所定期間の生体情報を記録する技術ではなく、本発明とは全く異なる技術である。
【0013】
より好ましい態様としては、競技動作の評価情報が入力される入力手段を上記競技練習支援装置に設け、前記データ記録手段には、前記入力手段を介して評価情報が入力される毎に、前記センサの出力データから抽出したデータと当該評価情報とを対応付けて前記記憶装置へ書き込む処理を実行させる態様が考えられる。このような態様によれば、ユーザが競技動作を行う毎にその競技動作の良否を示す評価情報をユーザ自身(或いは、練習に付き添っているコーチ)に入力させ、良好な競技動作を示す評価情報に対応付けて記憶装置に記録されている生体情報に統計分析を施すことで、良好な競技動作を行えるか否かを生体情報に基づいて判断する際の基準を客観的に見つけ出すことが可能になる。また、さらに好ましい態様としては、センサの出力データと記憶装置の格納内容とを比較し、ユーザの身体の状態を判定する判定手段と、前記判定手段により下された判定結果に応じた報知を行う報知手段を上記競技練習支援装置に設ける態様が考えられる。このような態様によれば、上記の要領で作成された基準にしたがって競技動作の開始をユーザに促し、良好な競技動作を行える体調(或いは体調を通じて現れた心身状態)を当該ユーザ自身に体得させることができる。
【0014】
さらに好ましい態様としては、判定手段には、競技動作を良好に行い得る状態にあるか否か、準備段階に移行するべき状態にあるか否かを判定させ、前記判定手段による判定結果に応じて、準備段階に入ることを促す報知、または競技動作の開始を促す報知を上記報知手段に実行させる態様が考えられる。このような態様によれば、上記の要領で作成された基準にしたがって準備段階への移行をユーザに促し、どのような体調(或いは体調を通じて現れた心身状態)となったときに準備段階へ移行すれば良好な競技動作を行えるのかを当該ユーザ自身に体得させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
(A:第1実施形態)
(A−1:構成)
図1は、本発明の第1実施形態の競技練習支援装置1Aの構成例を示すブロック図である。この競技練習支援装置1Aは、ゴルフにおけるパッティングの練習を支援するためのものである。より詳細に説明すると、競技練習支援装置1Aは、パッティングの練習を行おうとするユーザの身体に取り付けられた生体情報センサの出力データを解析して当該ユーザが良好なパッティングを行える心身状態にあるか否かを判定する。そして、競技練習支援装置1Aは、良好なパッティングを行える状態にあると判定した場合には、パッティングの実行を促す報知を行う。
図1に示すように、競技練習支援装置1Aは、制御部110、外部機器インタフェース(以下、「I/F」)部120、ユーザI/F部130、記憶部140、およびこれら構成要素間のデータ授受を仲介するバス150を含んでいる。
【0017】
制御部110は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部110は、記憶部140に記憶されている練習支援プログラム144bを実行することにより、競技練習支援装置1Aの制御中枢として機能する。この練習支援プログラム144bにしたがって制御部110が実行する処理の詳細については後に明らかにする。
【0018】
外部機器I/F部120は、例えばNIC(Network Interface Card)やシリアルインタフェースなど、各種外部機器との間でデータ授受を行うインタフェースの集合体である。外部機器I/F部120には、生体情報センサとパッティング検知装置とがシリアルケーブルなどの信号線を介して接続される。生体情報センサは、ユーザの身体に装着され当該ユーザの生体情報を検出しその生体情報を表す生体情報データを出力する処理を周期的に繰り返す。パッティング検知装置は、ユーザによるパッティングの実行を検知し、パッティングが為されたことを示す検知データを出力する装置である。外部機器I/F部120は、生体情報センサやパッティング検知装置からデータを受信すると、当該データを制御部110に与える。
【0019】
図2は、競技練習支援装置1Aの具体的な使用態様を示す図である。本実施形態では、上記生体情報センサとして、ユーザの手首の装着される心拍センサ10と、同ユーザの胸部に装着される呼吸センサ20とが用いられる。心拍センサ10は、その装着部における動脈の脈動を周期的に検出し、その脈動波形を表すデータを心拍の時間波形を示すデータとして出力する。呼吸センサ20は、呼吸に伴うユーザの胸部の拡張および収縮を周期的に検出し、当該拡張および収縮の時間波形を表す波形データを出力する。
【0020】
外部機器I/F部120に接続されるパッティング検知装置の一例としては、パッティングにより発生する打撃音を収音するマイクロホンが挙げられる。パッティングにより発生した打撃音を表す音データを上記検知データとして用いるのである。なお、本実施形態では、パッティング検知装置としてマイクロホンを用いたが、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサなどの撮像装置と、この撮像装置により撮像された画像を解析する画像解析装置の組をパッティング検知装置として用いることも可能である。パッティング練習中のユーザの画像を当該撮像装置により撮像し、この画像を解析することでパッティングの瞬間を特定することができるからである。画像解析によりパッティングの瞬間を検知する場合、その画像解析に要する時間の分だけ、パッティングの検知が遅れて競技練習支援装置1Aに通知されることになるが、実際にパッティングが行われたタイミングの近傍においてその検知が競技練習支援装置1Aに通知されるため、特段の問題は生じない。
【0021】
本実施形態では、心拍センサ10、呼吸センサ20およびパッティング検知装置は、信号線により外部機器I/F部120に有線接続されているが、心拍センサ10、呼吸センサ20およびパッティング検知装置と外部機器I/F部120との間のデータ授受を無線通信により実現しても勿論良い。また、本実施形態では、心拍センサ10、呼吸センサ20およびパッティング検知装置を競技練習支援装置1Aとは別個のハードウェアとしたが、心拍センサ10、呼吸センサ20およびパッティング検知装置を競技練習支援装置の構成要素としても勿論良い。
【0022】
ユーザI/F部130は、競技練習支援装置1Aをユーザに利用させるための各種ユーザインタフェイスを提供する。ユーザI/F部130には、例えば液晶ディスプレイなどの表示装置と、例えばキーボードやマウスなどの入力装置と、
図2に示す二灯式信号器を模した報知装置30Aとが含まれる。表示装置には、制御部110による制御の下、競技練習支援装置1Aをユーザに利用させるためのメニュー画面等の各種画面が表示される。入力装置は各種指示をユーザに入力させるためのものである。
【0023】
報知装置30Aは、競技練習支援装置1Aを利用してゴルフのパッティング練習を行うユーザに対して、良好なパッティングを行える体調(或いは体調を通じて現れた心身状態)となったことを報知するのに用いられる。例えば、良好なパッティングを行える体調ではない間は二灯式のランプのうちの一方(例えば、赤色のランプ)が点灯し、良好なパッティングを行える体調となったことを契機として他方のランプ(例えば、青色のランプ)が点灯するといった具合である。報知装置30Aは、パッティングの際にボールを置く位置の近傍であって、当該位置から見てユーザとは反対側に上記2つのランプを鉛直上向きに向けた姿勢で設置される。これは、パッティングのためにボールを注視するユーザの視界に上記2つのランプが自然に入るようにするためである。
【0024】
本実施形態では、良好なパッティングを行える心身状態となったことをユーザの視覚に訴える報知により実現したが、聴覚に訴える報知であっても良く、また、触覚に訴える報知であっても良い。前者の態様であれば、報知装置30Aとしてスピーカを用い、良好なパッティングを行える体調となったことを示す報知音を出力させるようにすれば良い。また、後者の態様であれば、パターのグリップ部に報知装置30Aとして振動アクチュエータを内蔵させておき、当該振動アクチュエータを振動させることで良好なパッティングを行える状態となったことの報知を行えば良い。
【0025】
記憶部140は、
図1に示すように、揮発性記憶部142と不揮発性記憶部144を含んでいる。揮発性記憶部142は例えばRAM(Random Access Memory)である。揮発性記憶部142は、練習支援プログラム144bを実行する際のワークエリアとして制御部110によって利用される。また、本実施形態では、揮発性記憶部142は、外部機器I/F部120を介して受け取った生体情報データを最新のものから所定時間だけ遡った時間範囲に属する分だけ蓄積するリングバッファとしても利用される。一方、不揮発性記憶部144は、例えばハードディスクである。不揮発性記憶部144には、生体情報データベース144aと練習支援プログラム144bとが予め格納されている。
【0026】
生体情報データベース144aには、ユーザによる競技動作(すなわち、パッティング)の実行がパッティング検知装置より検知されたタイミングを終期とする所定期間の間に拍センサ10および呼吸センサ20から出力された生体情報データ(心拍の時間波形を表すデータ、および呼吸の時間波形を表すデータ)に対応付けて、その競技動作の良否を示す評価データが格納される。詳細については後述するが、本実施形態では、ユーザが競技動作(パッティング)を行う際の準備段階(すなわち、アドレス)に入ってからその競技動作が行われるまでの期間が上記所定期間に含まれるように、上記所定期間の長さが定められている。また、本実施形態では、競技練習支援装置1Aの工場出荷時点では生体情報データベース144aはカラになっており、生体情報データベース144aへの生体情報データおよび評価データの格納は練習支援プログラム144bにしたがって作動している制御部110によって行われる。
【0027】
練習支援プログラム144bは、
図1に示す生体情報記録処理SA100と練習支援処理SA110を制御部110に実行させるプログラムである。本実施形態では、競技練習支援装置1Aの電源(図示略)が投入されると、制御部110は練習支援プログラム144bを不揮発性記憶部144から揮発性記憶部142に読み出し、当該プログラムの実行を開始する。そして、練習支援プログラム144bにしたがって作動している制御部110は、生体情報記録処理SA100と練習支援処理SA110の何れを実行するのかをユーザに選択させるためのメニュー画面をユーザI/F部130の表示装置に表示させ、同ユーザI/F部130の入力装置に対する操作によって実行を指示された方の処理を実行する。
【0028】
生体情報記録処理SA100は、ユーザによりパッティングが行われたことをパッティング検知装置により検知したことを契機として、心拍センサ10および呼吸センサ20の出力データのうちその検知タイミングを終期とする所定期間分のデータをリングバッファから読み出し、入力装置を介して入力された評価データと対応付けて生体情報データベース144aに書き込む処理である。本実施形態では、上記所定期間の長さは一般的なゴルフプレイヤについてのアドレスに入ってからパッティングの実行が為されるまでの時間の平均値に設定されており、上記リングバッファのバッファサイズは当該所定期間分の生体情報データのデータ量に応じたものとなっている。
【0029】
練習支援処理SA110は、心拍センサ10および呼吸センサ20の出力データと生体情報データベース144aの格納内容とを比較して競技動作を良好に行える状態にあるか否かを判定し、判定結果に応じた報知が行われるように報知装置30Aを制御する処理である。この練習支援処理の処理内容の詳細については動作例において明らかにする。
以上が競技練習支援装置1Aの構成である。
【0030】
(A−2:動作)
次いで、競技練習支援装置1Aの具体的な使用態様に即して、競技練習支援装置1Aの動作を説明する。競技練習支援装置1Aの具体的な使用態様は、心拍センサ10および呼吸センサ20の出力データを収集して生体情報データベース144aに格納する「生体情報記録ステップ」と、競技練習支援装置1Aを使用してパッティング練習を行う「実践ステップ」に分けられる。
【0031】
(A−2−1:生体情報記録ステップにおける動作)
ユーザは、まず、心拍センサ10と呼吸センサ20を予め定められた部位に装着する。具体的には、心拍センサ10を手首(右腕と左腕のどちらでも良い)に装着し、呼吸センサ20を胸部に装着するといった具合である。ユーザは、このようにして心拍センサ10と呼吸センサ20の身体への装着を完了すると、競技練習支援装置1Aの電源を投入し、ユーザI/F部130の入力装置に対して生体情報記録ステップの実行を指示する操作を行う。競技練習支援装置1Aの制御部110は、上記操作を表すデータをユーザI/F部130から受け取ると、生体情報記録処理SA100の実行を開始する。以降、制御部110は、パッティングの実行がパッティング検知装置により為されるまで、外部機器I/F部120を介して心拍センサ10および呼吸センサ20から与えられる生体情報データをリングバッファへ書き込む処理を繰り返す。
【0032】
一方、ユーザは、準備運動や素振りなどを行い、心身が落ち着いた状態となった時点から、パッティングを開始する。これは、運動中で心身が落ち着いた状態の生体情報を正確に記録するためである。例えば、心身が落ち着いた状態であってもユーザが横たわっているような状態では、良好な競技動作を行える状態にあるか否かを判断するための基準となる生体情報を記録することはできないと考えられるからである。そして、ユーザは、パッティングを実行した後、良好なパッティングであったか否かを評価し、その評価結果を示す評価データを入力装置に入力する。なお、良好なパッティングであったか否かについての評価および評価データの入力については、例えばレッスンプロやコーチなどのパッティング練習に立ち会っている第三者に行わせるようにしても良い。また、一回のパッティング毎に評価データを入力するのではなく、複数回分の評価データをまとめて入力するようにしても良い。
【0033】
上記のようにしてユーザがパッティングを実行すると、そのパッティングにより発生した打撃音がパッティング検知装置により検知され、制御部110は、外部機器I/F部120を介してパッティング検知装置から与えられる検知データを受信すると、その受信時点を終期とする所定期間分の生体情報データをリングバッファから読み出し、入力装置から与えられた評価データと対応付けて生体情報データベース144aに書き込む。前述したように、本実施形態では、上記所定期間の長さは、アドレスに入ってからパッティングが行われるまでの時間長の平均値に設定されていることため、生体情報データベース144aには、競技練習支援装置1Aのユーザについて、アドレスに入ってからパッティングが行われるまでの期間における生体情報データとそのパッティングの良否を示す評価データとが格納される。
【0034】
図3(a)は緊張状態における一般的な心拍波形を表すグラフであり、
図3(b)はリラックスした状態における一般的な心拍波形を表すグラフである。上記生体情報記録ステップの実行を繰り返す過程で、ユーザの心拍波形が
図3(b)に示すものから徐々に
図3(a)に示すものへと変化し、
図3(b)に示す心拍波形に対応する生体情報データには、良好ではない評価結果を示す評価データが対応付けられ、
図3(a)に示す心拍波形に対応する生体情報データには、良好な評価結果を示す評価データが対応付けられたとする。これは、本動作例におけるユーザは、リラックスした状態よりは寧ろ若干緊張している状態の方が集中力が高まり良好なパッティングを行えることを意味する。もっとも、他のユーザについて生体情報記録ステップを実行すれば逆の結果(すなわち、リラックスした状態のほうが集中力が高まり、良好なパッティングを行えるという結果)が得られることは勿論考えられる。前述したように、どのような心身状態において集中力を最大限に発揮できるかは人によって異なるからである。
【0035】
前述したように、どのような心身状態において集中力を最大限に発揮できるかは人によって異なり、良好なパッティングを行える状態にあるか否かを生体情報に基づいて判定する際の統一的な基準を予め作成しておくことを難しいのであるが、本実施形態によれば、ユーザ毎に当該基準を簡便に作成することが可能になる。
【0036】
(A−2−2:実践ステップの動作)
次いで、実線ステップの動作について説明する。
前述した生体情報記録ステップにおける場合と同様に、ユーザは、まず、心拍センサ10と呼吸センサ20を身体の所定の部位に装着し、競技練習支援装置1Aの電源を投入した後に、実践ステップの実行を指示する操作を入力装置に対して行う。競技練習支援装置1Aの制御部110は、電源投入を契機として練習支援プログラム144bの実行を開始し、上記操作を表すデータをユーザI/F部130から受け取ったことを契機として練習支援処理SA110の実行を開始する。
【0037】
練習支援処理SA110においては、制御部110は、まず、二灯式の信号機を模した報知装置30Aに設けられている2つのランプのうち、パッティング不可を示す方を点灯させる。そして、制御部110は、外部機器I/F部120を介して心拍センサ10および呼吸センサ20から生体情報データを受け取る毎に、当該受け取った生体情報データと、良い評価を示す評価データに対応付けて生体情報データベース144aに格納されている生体情報データとを比較し、良好なパッティングを行える心身状態にあるか否かを判定する。
【0038】
例えば、制御部110は、心拍センサ10により得られた生体情報データについては、その生体情報データにより表される心拍に関する情報(例えば、心拍速度)が、良い評価を示す評価データに対応付けて生体情報データベース144aに格納されている生体情報データの示す同心拍に関する情報を中心とする所定の許容範囲(例えば、±10%の範囲)に収まっているか否か判定する。同様に、呼吸センサ20により得られた生体情報データについても、制御部110は、当該生体情報データの表す呼吸に関する情報(例えば、呼吸の深さ、呼吸速度、呼吸テンポなど)が、良い評価を示す評価データに対応付けて生体情報データベース144aに格納されている生体情報データから求まる許容範囲に収まっているか否か判定する。なお、良好な評価を示す評価データに対応付けて生体情報データベース144aに格納されている生体情報データが複数ある場合には、それらの平均等に基づいて上記許容範囲を求めるようにすれば良い(例えば、平均値を中心とする±10%の範囲を許容範囲とする等)。また、許容範囲をユーザが任意に設定できる構成としても良い。
【0039】
そして、制御部110は、現時点のユーザの心拍に関する情報と呼吸に関する情報の両者が各々の許容範囲に収まっている場合に、良好なパッティングを行える心身状態となったと判定し、報知装置30Aに設けられている2つのランプのうち、パッティング不可を示す方を消灯させ、他方(すなわち、パッティング許可を示すランプ)を点灯させる。このパッティング許可ランプの点灯に促され、ユーザはパッティングを行う。
【0040】
このように競技練習支援装置1Aによって為される報知にしたがってパッティングを行うことで、ユーザは、どのような心身状態のときに良好なパッティングを行えるのかを客観的に把握することができる。なお、本実施形態では、パッティングを行おうとするユーザの視界に入る位置に報知装置30Aを設置したが、ユーザが視線を移動させることなく報知結果を視認できるようにするために、ランプの放射光がボールに映るように報知装置30Aを設置し、ユーザの集中を妨げないようにしても良い。
【0041】
(B:第2実施形態)
次いで本発明の第2実施形態について
図4および
図5を参照しつつ説明する。
図4は、本発明の第2実施形態の競技練習支援装置1Bの構成例を示す図であり、
図5は同競技練習支援装置1Bの具体的な使用態様を示す図である。
図4と
図1とを対比すれば明らかなように、競技練習支援装置1Bのハードウェア構成は競技練習支援装置1Aのハードウェア構成と同一であるものの、競技練習支援装置1Bの不揮発性記憶部144には、練習支援プログラム144bに換えて練習支援プログラム144cが格納されている点が上記第1実施形態と異なる。また、
図5と
図2とを対比すれば明らかなように、本実施形態では、二灯式の信号機を模した報知装置30Aに換えて三灯式の信号機(すなわち、赤、黄、および青の各色のランプを有する信号機)を模した報知装置30Bが用いられる点も上記第1実施形態と異なる。
【0042】
練習支援プログラム144cは、生体情報記録処理SA100を制御部110に実行させる点は前述した練習支援プログラム144bと同一であるが、練習支援処理SA110に換えて練習支援処理SB110を制御部110に実行させる点が上記第1実施形態の練習支援プログラム144bと異なる。練習支援処理SB110は、心拍センサ10および呼吸センサ20の出力データと生体情報データベース144aの格納内容とを比較して競技動作を良好に行える状態であるか否かを判定し、判定結果に応じた報知が行われるように報知装置を制御する処理であるという点では前述した練習支援処理SA110と同一であるものの、制御対象が三灯式の信号機を模した報知装置30Bであるという点が上記第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態との相違点である練習支援処理SB110を中心に説明する。
【0043】
本実施形態においても、制御部110は、前述した第1実施形態と同様に、競技練習支援装置1Bの電源投入を契機として練習支援プログラム144cの実行を開始し、実践ステップの開始を指示する操作が入力装置に対して行われると、練習支援処理SB110の実行を開始する。練習支援処理SB110においては、制御部110は、三灯式の信号機を模した報知装置に設けられている3つのランプのうち、パッティング不可を示すランプ(例えば、赤色ランプ)を点灯させる。そして、制御部110は、外部機器I/F部120を介して心拍センサ10および呼吸センサ20から生体情報データを受け取る毎に、当該受け取った生体情報データの示す各生体情報が各々の許容範囲に収まっているか否かを判定し、その判定結果に応じて、報知装置30Aに設けられているランプの点灯制御を行う。
【0044】
より詳細に説明すると、心拍に関する情報と呼吸に関する情報の両者が何れも許容範囲に収まっていない場合には、制御部110は、赤色ランプの点灯を維持する。これに対して、心拍に関する情報と呼吸に関する情報の何れか一方が許容範囲に収っている場合には、制御部110は、黄色ランプを点灯させるとともに他の2つのランプを消灯状態とし、さらに、心拍に関する情報と呼吸に関する情報の両者が何れも許容範囲に収まっている場合には、制御部110は、青色ランプを点灯させるとともに他の2つのランプを消灯状態とする。このため、まず、呼吸に関する情報が許容範囲に収まり、その後、心拍に関する情報も許容範囲に収まるといった具合に、ユーザの心身状態が次第に変化するのに伴って、赤色ランプのみの点灯→黄色ランプのみの点灯→青色ランプのみの点灯といった具合に報知装置のランプの点灯制御が行われる。ユーザは、点灯するランプの移り変わりを視認することによって自身の心身状態の移り変わりを客観的に把握しつつパッティング練習を行うことができる。
【0045】
このように、本実施形態によれば、パッティングに臨む際の自身の心身状態の移り変わりを客観的にユーザに把握させ、どのような心身状態のときに良好なパッティングを行えるのかを客観的に把握させることができる。
【0046】
(C:変形)
以上本発明の各実施形態について説明したが、上記各実施形態を以下のように変形しても勿論良い。
(1)上記各実施形態では、生体情報として心拍に関する情報と呼吸に関する情報を用いたがこれらのうちの何れか一方のみを用いても良く、また、心拍に関する情報と呼吸に関する情報の両方或いは何れか一方に加えて(或いは換えて)発汗、血流量、体温などの生体に関する他の情報を用いても良い。要は、センサにより検出可能な生体情報であれば、どのような生体情報であっても利用可能である。また、ユーザの生体情報を検出するセンサは、ユーザの身体に装着されるものに限定される訳ではない。例えば生体情報として体温を検出する場合に赤外線センサを用いるようにしても良い。
【0047】
(2)上記各実施形態では、実践ステップにおいて、良好な評価を示す評価データに対応付けて生体情報データベース144aに格納されている生体情報データから許容範囲を求め、現時点の生体情報がその許容範囲に収まっているか否かを判定することで良好なパッティングを行える状態にあるか否かを判定した。しかし、生体情報記録ステップにおいて生体情報毎に上記許容範囲を求め、その許容範囲を示すデータを生体情報データベース144aに格納しておいても勿論良い。また、現時点の生体情報が許容範囲に収まっているか否かによって良好なパッティングを行える状態にあるか否かを判定するのではなく、現時点の生体情報データの示す時間波形と良好な評価を示す評価データに対応付けて生体情報データベース144aに格納されている生体情報データの示す時間波形の相関の強さ(例えば、両時間波形の相互相関値の大きさ)に応じて上記判定を行っても良い。なお、上記各実施形態では、生体情報データとして生体情報の時間波形を表すデータを生体情報データベース144aに格納したが、周波数領域のデータに変換して生体情報データベース144aに格納しても良く、また、練習支援処理SA110(或いはSB110)における比較処理を周波数領域において行っても勿論良い。
【0048】
(3)上記第1実施形態では、心拍に関する情報と呼吸に関する情報の両者から良好なパッティングを行える状態になったと判定された場合に、パッティングの実行をユーザに促す報知を行った。しかし、何れか一方の情報が良好なパッティングを行える状態となっていることを示している場合に上記報知を行うようにしても良い。また、上記第1実施形態におけるものと同様に二灯式信号機を模した報知装置を用い、心拍に関する情報に応じて一方(例えば、赤色ランプ)の点灯制御を行い、呼吸に関する情報に応じて他方の点灯制御を行うようにしても良い。
【0049】
また、上記第2実施形態におけるものと同様に三灯式信号機を模した報知装置を用いる場合には、心拍に関する情報と呼吸に関する情報の両者から、パッティングには適さないもののアドレスに適すると判定された場合には黄色ランプを点灯し、さらに良好なパッティングを行える状態になったと判定された場合には青色ランプを点灯させるといった具合に、パッティングの実行を促す報知に先立ってアドレスに移行することを促す報知を行うようにしても良い。例えば、生体情報センサにより得られた生体情報データが、良好な評価データを対応付けて生体情報データベース144aに格納されている生体情報データから求まる第1の許容範囲(例えば、±20%の範囲)には収まっているものの、第2の許容範囲(例えば、±10%の範囲)には収まっていない場合には、良好なパッティングを行える状態にはないもののアドレスには適すると判定し、当該第2の許容範囲に収まったことを契機として良好なパッティングを行える状態になったと判定するといった具合である。
【0050】
(4)上記各実施形態では、競技練習支援装置の工場出荷時点では生体情報データベース144aはカラの状態であったが、例えば一般的なゴルフプレイヤについて統計的に求めたデータを生体情報データベース144aに格納した状態で競技練習支援装置を工場出荷しても良い。このような態様によれば、実践ステップに先立って生体情報記録ステップを行うことなく、競技練習支援装置を利用したパッティング練習を開始することが可能になる。この場合、実践ステップにおいてパッティングに関する評価をユーザ(或いはパッティング練習に付き添うコーチ)に入力させ、この評価を示す評価データとそのパッティング練習において収集された生体情報データとを対応付けて生体情報データベース144aに追記することで、生体情報データベース144aの格納内容が当該ユーザに適したものとなるようにしても良い。
【0051】
(5)上記各実施形態では、競技練習支援装置の不揮発性記憶部144に生体情報データベース144aが格納されていた。しかし、外部機器I/F部120を介して競技練習支援装置に接続された記憶装置(例えば、USB(Universal Serial Bus)或いはSCSI(Small
Computer System Interface)ケーブルにより外部機器I/F部120に接続のハードディスク)に生体情報データベース144aを格納しても良い。また、LAN(Local Area Network)やインターネットなどの電気通信回線に競技練習支援装置を接続するとともに、この電気通信回線に接続された記憶装置(例えば、ネットワーク対応のハードディスク)に生体情報データベース144aを格納しておいても良い。
【0052】
(6)上記各実施形態では、競技練習支援装置の不揮発性記憶部144に、制御部110を本発明の生体情報記録処理および練習支援処理を実行させる練習支援プログラムが予め記憶されていた。しかし、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)などのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に当該練習支援プログラムを書き込んで配布しても良く、また、インターネットなどの電気通信回線経由のダウンロードにより配布しても良い。このようにして配布されるプログラムにしたがって一般的なコンピュータを作動させることで、当該コンピュータを上記各実施形態の競技練習支援装置として機能させることが可能になるからである。また、生体情報記録処理を制御部110に実行させるプログラムと練習支援処理を制御部110に実行させるプログラムを各々別個のプログラムとしても勿論良い。
【0053】
(7)上記各実施形態ではゴルフにおけるパッティング練習の支援への適用例を説明したが、ティーショットの練習支援に適用しても勿論良い。また、本発明による練習支援の対象となる競技はゴルフに限定されるものではない。例えば野球におけるピッチング練習やテニスにおけるサーブ練習、サッカーにおけるフリーキックの練習、バスケットボールにおけるフリースローの練習に適用しても勿論良い。要は、競技者が他者とはかかわりなく自発的に動作を開始できる競技動作であれば、その競技動作の練習に本発明を適用することができる。