(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、ダブルローラタイプのトリポード型等速ジョイント(以下、等速ジョイントと記載する)は、例えば車両の回転駆動力を車輪に伝達するドライブシャフトとして用いられている。
従来の等速ジョイントは、
図10の例に示す従来のローラユニット130を有しており、当該従来のローラユニット130が、
図11(A)に示すようにトリポード軸部11Aに挿通されている。従来のローラユニット130は、
図10の組み付け状態断面図に示すように、外ローラ131の鍔部131Bが形成されていない側から、内ローラ134が配置され、外ローラ131と内ローラ134との間に形成された環状空間に複数のニードル133が配置され、外ローラ131の内壁に形成されたリング溝131Aにスナップリング135が嵌め込まれて組み付けられている。なお、外ローラ131の一方の端面の側には径方向内側に延びる鍔部131Bが環状に形成されており、この鍔部131Bによって、内ローラ134とニードル133は外ローラ131の一方の端面の側から抜けないように保持されている。また、外ローラ131の他方の端面の側にはスナップリング135が嵌め込まれ、内ローラ134とニードル133は、スナップリング135によって、外ローラ131の他方の端面の側から抜けないように保持されている。
【0003】
上記の構成を有する従来のローラユニット130は、略球状のトリポード軸部11Aを挿通する個所の径(この場合、内ローラ134の内径)が軸Z130方向において一定である。なお
図11(A)及び(B)においてトリポード軸部11Aの外径D11は、略球状のトリポード軸部11Aの最大外径であり、当該外径D11は、内ローラ134の内径D134よりも若干小さく設定されている。
従って
図11(A)及び(B)に示すように、トリポード軸部11Aに対して、従来のローラユニット130を、スナップリング135の側から挿通することが可能(
図11(A)参照)であるとともに、鍔部131Bの側から挿通することも可能(
図11(B)参照)である。
ところが、従来のローラユニット130は、
図10、
図11(A)及び(B)に示すように、軸Z130方向において、対称形状とはなっておらず、一方の端面の側には鍔部131Bが、他方の端面の側にはリング溝131Aとスナップリング135が配置されており、鍔部131Bは一方の端面の位置に設けられ、スナップリング135は他方の端面よりも軸Z130方向において少し鍔部131Bの方向にずれた位置に設けられている。
従来のローラユニット130は軸Z130方向において対称形状ではないので、
図11(A)のようにスナップリング135の側から挿通した場合と、
図11(B)のように鍔部131Bの側から挿通した場合では、強度や性能が異なる。
図11(A)及び(B)に示す例では、
図11(A)のようにスナップリング135の側から挿通した場合のほうが、
図11(B)のように鍔部131Bの側から挿通した場合よりも、強度や性能がより向上することが確認されている。
【0004】
ここで、特許文献1に記載された従来技術には、ローラ(本願の外ローラに相当)の上方環状突出部とローラの狭小部との間に天板を配置しており、トリポード軸部を挿通する際には、当該天板にトリポード軸部の先端が干渉するまで(突き当たるまで)挿通することで、トリポード軸部に対するローラの位置決めをすることができる等速ジョイントが開示されている。なお、特許文献1に記載された従来技術は、トリポード軸部の形状が球状ではなく円柱状であるとともに、ローラユニットを挿通したトリポード軸部の先端はローラユニットから突出することがないので、トリポード軸部が天板に突き当たるまで挿通されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ダブルローラタイプのトリポード型等速ジョイントにおいて、
図10に示す従来のローラユニット130は、軸Z130方向において対称形状ではなく、
図11(A)のようにトリポード軸部11Aをスナップリング135の側から挿通した場合のほうが、
図11(B)のようにトリポード軸部11Aを鍔部131Bの側から挿通した場合よりも強度や性能をより向上させることができる。従って、スナップリングの側のみからトリポード軸部の挿通を許容する構成が必要である。
ここで、特許文献1に記載された従来技術では、天板の目的は、トリポード軸部に対するローラの位置決めであるが、天板が配置されていない側からのトリポード軸部の挿通のみを許容している。なお、
図10に示すようなローラユニット130が外ローラ131と内ローラ134を有するダブルローラタイプである場合であってトリポード軸部11Aの形状が円柱状でなく略球状である場合、
図11(A)及び(B)に示すように、ローラユニットを挿通したトリポード軸部の先端がローラユニットから突出できるようにする必要がある。
しかし、特許文献1に記載の天板を用いた場合、トリポード軸部の先端が天板に干渉してローラユニットからトリポード軸部の先端を突出させることができないので、好ましくない。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、略球状のトリポード軸部を有するダブルローラタイプのトリポード型等速ジョイントにおいて、作業者がトリポード軸部にローラユニットを組み付ける際にローラユニットの方向を間違えることがなく、且つローラユニットに挿通したトリポード軸部の先端がローラユニットから突出することを許容するダブルローラタイプのトリポード型等速ジョイントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るダブルローラタイプのトリポード型等速ジョイントは次の手段をとる。
まず、本発明の第1の発明は、略筒状の形状を有して軸方向に沿うように対向配置されたローラ案内面を有する3つの案内溝が内周面に形成された外輪と、前記外輪内に収容されて前記案内溝のそれぞれに向かって突出する3つの略球状の軸部であるトリポード軸部が設けられたトリポード部材と、前記トリポード軸部のそれぞれに外嵌される略円筒状の内ローラと、前記内ローラに外嵌されるとともに前記案内溝における対向配置された前記ローラ案内面の間に配置される外ローラと、前記内ローラと前記外ローラとの間に形成された環状空間に配置される複数の転動体と、を有するダブルローラタイプのトリポード型等速ジョイントである。
前記外ローラにおける一方の端面の側には、前記内ローラと前記転動体を前記外ローラ内に保持可能となるように前記内ローラの外径よりも小さな内径を有して径方向内側に延びる鍔部が環状に形成されており、前記外ローラにおける他方の端面の側には、前記内ローラと前記転動体を前記外ローラ内に保持可能となるように前記内ローラの外径よりも小さな内径を
有する保持部材が取り付けられている。
そして、
前記外ローラと前記内ローラと前記転動体と前記保持部材にて構成されるローラユニットにおける前記トリポード軸部が挿通される位置には、前記ローラユニットにおける前記外ローラの回転軸方向の前記鍔部側に、
前記ローラユニットの前記保持部材の側のみから前記トリポード軸部の挿通を許容するリング状のトリポード軸部挿通規制手段が設けられ、前記トリポード軸部挿通規制手段は、挿通された前記トリポード軸部の先端を覆うことなく前記トリポード軸部の先端が前記ローラユニットから突出することを許容する。
【0008】
この第1の発明では、ローラユニットにおけるトリポード軸部が挿通される位置に、リング状のトリポード軸部挿通規制手段が設けられている。
リング状のトリポード軸部挿通規制手段により、ローラユニットに
トリポード軸部を挿通する際に保持部材の側のみからの挿通を許容するので、作業者がトリポード軸部にローラユニットを組み付ける際にローラユニットの方向を間違えることがない。またトリポード軸部挿通規制手段は天板等の板状ではなくリング状であるので、挿通したトリポード軸部の先端がローラユニットから突出することを許容することができる。
トリポード軸部挿通規制手段が天板等の板状である場合、つまり、トリポード軸部の先端がローラユニットから突出することを許容できない場合、等速ジョイントが角度を取ったとき、ローラユニットに対してトリポード部材がトリポード軸部方向の上下にスライドするため、大角度を取るとトリポード軸部の先端がトリポード軸部挿通規制手段に干渉してしまい、大角度が取れなくなるという問題がある。これに対し、トリポード軸部挿通規制手段をリング状にしたことにより、大角度時のトリポード軸部の先端とトリポード軸部挿通規制手段との干渉を防止するため、最大ジョイント角をより大きくすることができる。
【0009】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係るダブルローラタイプのトリポード型等速ジョイントであって、前記トリポード軸部挿通規制手段は、前記内ローラの内周面の前記内ローラの回転軸方向における前記鍔部に近い側の端部となる位置に形成された第1リング溝と、リング状に形成され、前記トリポード軸部における前記トリポード軸部に対して直交方向に切断した断面の最大外径よりも小さな内径を有して前記第1リング溝に内嵌される第1リング状部材と、で構成されている。
【0010】
この第2の発明では、内ローラの内周面の内ローラの回転軸方向における鍔部に近い側の端部となる位置に形成された第1リング溝に第1リング状部材を内嵌して、トリポード軸部挿通規制手段を構成する。
これにより、従来のローラユニットに対して、比較的単純な形状の第1リング状部材を追加するだけで、トリポード軸部挿通規制手段を適切に実現することができる。
【0011】
次に、本発明の第3の発明は、上記第1の発明に係るダブルローラタイプのトリポード型等速ジョイントであって、前記トリポード軸部挿通規制手段は、前記鍔部の内周側の位置に、前記鍔部の内径に対応する外径を有するとともに、前記トリポード軸部における前記トリポード軸部に対して直交方向に切断した断面の最大外径よりも小さな内径を有して前記鍔部に内嵌される第2リング状部材にて構成されている。
【0012】
この第3の発明では、鍔部の内周側の位置に、鍔部に内嵌される第2リング状部材を設けて、トリポード軸部挿通規制手段を構成する。
これにより、従来のローラユニットに対して、比較的単純な形状の第2リング状部材を追加するだけで、トリポード軸部挿通規制手段を適切に実現することができる。
【0013】
次に、本発明の第4の発明は、上記第1の発明に係るダブルローラタイプのトリポード型等速ジョイントであって、前記トリポード軸部挿通規制手段は、前記外ローラにおける前記転動体及び前記内ローラを収容する個所の内径よりも小さな外径を有するとともに、前記トリポード軸部における前記トリポード軸部に対して直交方向に切断した断面の最大外径よりも小さな内径を有して、前記ローラユニットの回転軸方向における前記鍔部と前記内ローラとの間の位置に配置される第3リング状部材にて構成されている。
【0014】
この第4の発明では、ローラユニットの回転軸方向において鍔部と内ローラとの間の位置に、鍔部と内ローラに挟み込まれる第3リング状部材を設けて、トリポード軸部挿通規制手段を構成する。
これにより、従来のローラユニットに対して、比較的単純な形状の第3リング状部材を追加するだけで、トリポード軸部挿通規制手段を適切に実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。
●[ダブルローラタイプのトリポード型等速ジョイントの全体構成(
図1、
図2)]
まず
図1及び
図2を用いて、ダブルローラタイプのトリポード型等速ジョイント1(以降、等速ジョイント1と記載する)の全体構成について説明する。
図1は等速ジョイント1の分解斜視図を示しており、
図2(A)は等速ジョイント1の軸方向断面図を示しており、
図2(B)は
図2(A)におけるB−B断面図を示している。なお
図1では
図2(A)に示すブーツ40の記載を省略している。
図1に示すように、等速ジョイント1は、回転駆動力の入力側である駆動部20と、回転駆動力の出力側である受動部10とにて構成されており、駆動部20の回転軸Z20に対して受動部10の回転軸Z10が一致せずに所定角度で傾斜しても、回転軸Z10と回転軸Z20とを常に等速で回転させて回転駆動力を伝達することができる。なお、符号10と符号20は、どちらが駆動部であってもよく、一方が駆動部となれば他方が受動部となる。本実施形態では符号20を駆動部として説明する。
【0017】
受動部10は、シャフト12と、当該シャフト12の一方端に固定されたトリポード部材11と、にて構成されている。
トリポード部材11は外輪21内に収容され、トリポード部材11には、外輪21の内周面に形成された3つの案内溝21Aのそれぞれに向かって突出する3本の軸部であるトリポード軸部11Aが設けられている。そしてトリポード軸部11Aのそれぞれには、ローラユニット30が外嵌されている。そしてローラユニット30は、案内溝21Aに対向配置されたローラ案内面21Bの間に配置されている。
駆動部20は、外輪21と、当該外輪21に固定された連結軸22と、にて構成されている。
外輪21には、略筒状の形状を有して駆動部20の回転軸Z20の軸方向に沿うように対向配置されたローラ案内面21Bを有する3つの案内溝21Aが内周面に形成されている。
【0018】
ローラユニット30は、トリポード軸部11Aに外嵌され、トリポード軸部11Aに対して回転可能であり、ローラ案内面21Bに沿って回転しながら案内溝21Aに沿って移動可能である。
また
図2(A)に示すように、外輪21の開口部には、ブーツ40が取り付けられ、異物や水の浸入を防止するとともに潤滑油を内部に保持する。
また
図2(A)に示すように、トリポード軸部11Aは略球状の形状を有しており、回転軸Z20と回転軸Z10とが一致する状態では、ローラユニット30に挿通された略球状のトリポード軸部11Aの先端は、ローラユニット30から突出している。
以上の構成により、連結軸22から回転駆動力が入力されると、回転方向に対向しているローラ案内面21Bにローラユニット30が当接し、トリポード部材11及びシャフト12に回転駆動力を伝達する。
【0019】
上述したように、
図10に示す従来のローラユニット130では、
図11(A)に示すようにローラユニット130におけるスナップリング135の側からのトリポード軸部11Aの挿通(所望する方向からの挿通)を許容しているが、
図11(B)に示すようにローラユニット130における鍔部131Bの側からのトリポード軸部11Aの挿通(所望しない方向からの挿通)も許容している。
上述したように、ローラユニット130は軸Z130方向において対称形状ではないので、
図11(A)に示した状態と
図11(B)に示した状態では、強度や性能が異なる。この場合、ローラユニット130のスナップリング135の側からトリポード軸部11Aを挿通した
図11(A)の状態のほうが、ローラユニット130の鍔部131Bの側からトリポード軸部11Aを挿通した
図11(B)の状態よりも、強度も性能も向上されることが確認されている。
従って、作業者は、ローラユニット130をトリポード軸部11Aに外嵌する際、ローラユニット130の方向を間違えないように注意して作業する必要があるが、ローラユニット130の方向を間違えて外嵌してしまう可能性がある。
そこで、以下に説明する第1〜第3実施形態にて、作業者がトリポード軸部にローラユニットを組み付ける(外嵌する)際にローラユニットの方向を間違えることがなく、且つローラユニットに挿通したトリポード軸部の先端がローラユニットから突出することを許容するダブルローラタイプのトリポード型等速ジョイントの構成等について説明する。
【0020】
●[第1実施形態のローラユニット30の構造(
図3)とトリポード軸部11Aを挿通した状態(
図4)]
次に
図3、
図4を用いて、第1実施形態におけるローラユニット30の構造と、所望する方向(正しい方向)からトリポード軸部11Aを挿通した状態(
図4(A))と、所望しない方向(誤った方向)からトリポード軸部11Aを挿通した状態(
図4(B))について説明する。
なお、
図3はローラユニット30の分解斜視図と、組み付けた状態のローラユニット30の軸方向断面図を示している。
【0021】
図3に示すように、ローラユニット30は、外ローラ31と、複数のニードル33(転動体に相当)と、内ローラ34と、スナップリング35(保持部材に相当)にて構成されている。
外ローラ31は外周面における軸方向に沿った中央部が凸状となるように軸方向に湾曲した外周面を有し、円筒形状をした内周面を有する部材であり、外ローラ31の一方の端面には、径方向内側に突出する鍔部31Bが円周方向に形成されている。なお鍔部31Bの内径は、内ローラ34の外径よりも小さな径に設定されている。これにより、外ローラ31内に配置された内ローラ34及びニードル33は、外ローラ31の鍔部31Bの側の端面から抜けることなく保持される。
また外ローラ31の内壁であって他方の端面の側(鍔部31Bと反対の端面の側)には、スナップリング35を嵌め込むためのリング溝31Aが円周方向に設けられている。
スナップリング35は、弾性体で形成され、外径が伸縮可能となるように例えば切欠き部35Aが形成されている。
ニードル33は、針状ころであり、内ローラ34に対する外ローラ31の回転抵抗を低減する。
なお、針状ころ(ニードル33)、外ローラ31、スナップリング35は、
図10に示す従来のローラユニット130における針状ころ(ニードル133)、外ローラ131、スナップリング135と同様である。
【0022】
内ローラ34は円筒状であり、内周面の径である内径D34は略球状のトリポード軸部に外嵌可能な径(外径が最も大きくなる中央近傍の外径D11(
図11(A)、(B)参照)よりも若干大きな径)に設定されている。そして内ローラ34の材質は、外ローラ31の材質と同様である。
また
図3に示すように、内ローラ34の内周面であってローラ回転軸Z30方向において鍔部31Bに近い側の端部となる位置には、略球状のトリポード軸部における中央近傍の外径D11(トリポード軸部に対して直交方向に切断した断面の最大外径であり、
図4(A)、(B)参照)よりも小さな内径D38となるように径方向内側に突出するようにリング状に形成された第1リング状部材38が組み付けられている。そして、内ローラ34の内周面であってローラ回転軸Z30方向において鍔部31Bに近い側の端部となる位置には、第1リング状部材38が内嵌されるための第1リング溝34Bが円周方向に設けられている。また、第1リング状部材38の内径D38、軸方向長さL1、径方向突出長さD1は、
図4(A)に示す状態において、トリポード軸部11Aの先端におけるローラユニット30からの突出量が所望する突出量となるように適切な値に設定される。
以上より、内ローラ34の内径D34>トリポード軸部11Aの外径D11(トリポード軸部に対して直交方向に切断した断面の最大外径)>第1リング状部材38の内径D38となるように設定されている。
また、第1リング状部材38は、例えば樹脂や金属等の弾性体で形成され、外径が伸縮可能であり、円環状であってもよいし、C字状であってもよい。
なお、第1リング溝34Bと第1リング状部材38は、トリポード軸部挿通規制手段に相当する。
【0023】
ローラユニット30を組み付ける際は、まず外ローラ31の内周面にグリスを塗り、外ローラ31におけるリング溝31Aが形成されている端面の側(この場合、他方の端面の側)から、複数のニードル33を外ローラ31の内壁に沿って配置する(グリスにてニードル33は保持される)。そして外ローラ31におけるリング溝31Aが形成されている端面の側から、内ローラ34を外ローラ31内に入れる。そして外ローラ31のリング溝31Aにスナップリング35を嵌め込むことで、ローラユニット30が組み上がる。
そして組み上がったローラユニット30をトリポード軸部11Aに外嵌することで受動部10(
図1、
図2(A)参照)が出来上がる。
【0024】
図4(A)は、上記のローラユニット30のスナップリング35の側(正しい側)からトリポード軸部11Aを挿通した状態を示している。この場合、トリポード軸部11Aの先端がローラユニット30から突出するまで第1リング状部材38がトリポード軸部11Aに干渉しないので、作業者は、トリポード軸部11Aに正しい方向からローラユニット30を外嵌することができる。
また
図4(B)は、上記のローラユニット30の鍔部31Bの側(誤った側)からトリポード軸部11Aを挿通した状態を示している。この場合、トリポード軸部11Aがローラユニット30内に収容される前に第1リング状部材38がトリポード軸部11Aに干渉するので、作業者は、トリポード軸部11Aにローラユニット30を外嵌することができない。
【0025】
以上、第1実施形態では、作業者がトリポード軸部にローラユニットを組み付ける際にローラユニットの方向を間違えて組み付けてしまうことがない(方向が間違っている場合は組み付けることができない)。
また第1リング状部材38は、トリポード軸部11Aの先端を覆うような板状ではなく、中央部が開口したリング状であるので、挿通したトリポード軸部11Aの先端がローラユニット30から突出することを許容することができる。
【0026】
●[第2実施形態のローラユニット30Aの構造(
図5)とトリポード軸部11Aを挿通した状態(
図6)]
次に
図5、
図6を用いて、第2実施形態におけるローラユニット30Aの構造と、所望する方向(正しい方向)からトリポード軸部11Aを挿通した状態(
図6(A))と、所望しない方向(誤った方向)からトリポード軸部11Aを挿通した状態(
図6(B))について説明する。
なお、
図5はローラユニット30Aの分解斜視図と、組み付けた状態のローラユニット30Aの軸方向断面図を示している。
第2実施形態では、第1実施形態に対して、
図3に示す内ローラ34の内周面に内嵌された第1リング状部材38(及び第1リング溝34B)が省略され、
図5に示す第2リング状部材36が追加されている点が異なる。以下、この相違点について主に説明する。なお、第2リング状部材36は、トリポード軸部挿通規制手段に相当する。
【0027】
図5に示すように、第2実施形態のローラユニット30Aは、
図3に示したローラユニット30における内ローラ34の内周面に形成された第1リング溝34Bと、第1リング溝34Bに内嵌された第1リング状部材38が省略されている。従って、第2実施形態における内ローラ34Cの内径は、ローラ回転軸Z30方向において一定である。
また、外ローラ31の鍔部31Bの内周側の位置には、第2リング状部材36が圧入等にて内嵌される(鍔部31Bの内側に嵌め込まれる)。なお、第2リング状部材36の外径D36は、鍔部31Bの内径側に嵌め込みが可能な径であり、第2リング状部材36の内径D36Aは、略球状のトリポード軸部における中央近傍の外径D11(トリポード軸部に対して直交方向に切断した断面の最大外径であり、
図6(A)、(B)参照)よりも小さな径に設定されている。また、第2リング状部材36は、円環状であってもよいし、C字状であってもよい。
なお、第2リング状部材36の材質としては、樹脂や金属等、種々のものを利用することができる。また第2リング状部材36におけるローラ回転軸Z30方向の厚さは、適宜設定される。
なお、
図5に示す外ローラ31、ニードル33、スナップリング35は、
図3と同様であるので、これらについては説明を省略する。
【0028】
ローラユニット30Aを組み付ける際は、例えば第1実施形態と同様に外ローラとニードルと内ローラとスナップリングを組み付けた後、外ローラの鍔部に第2リング状部材を内嵌することでローラユニット30Aを組み付けることができる。なお、第2リング状部材は、最初に鍔部に内嵌してもよく、いずれのタイミングで鍔部に内嵌してもよい。
そして組み上がったローラユニット30Aをトリポード軸部11Aに外嵌することで受動部10(
図1、
図2(A)参照)が出来上がる。
【0029】
図6(A)は、上記のローラユニット30Aのスナップリング35の側(正しい側)からトリポード軸部11Aを挿通した状態を示している。この場合、トリポード軸部11Aの先端がローラユニット30Aから突出するまで第2リング状部材36がトリポード軸部11Aに干渉しないので、作業者は、トリポード軸部11Aに正しい方向からローラユニット30Aを外嵌することができる。
また
図6(B)は、上記のローラユニット30Aの鍔部31Bの側(誤った側)からトリポード軸部11Aを挿通した状態を示している。この場合、トリポード軸部11Aがローラユニット30A内に収容される前に第2リング状部材36がトリポード軸部11Aに干渉するので、作業者は、トリポード軸部11Aにローラユニット30Aを外嵌することができない。
【0030】
以上、第2実施形態では、作業者がトリポード軸部にローラユニットを組み付ける際にローラユニットの方向を間違えて組み付けてしまうことがない(方向が間違っている場合は組み付けることができない)。
また第2リング状部材36は、トリポード軸部11Aの先端を覆うような板状ではなく、中央部が開口したリング状であるので、挿通したトリポード軸部11Aの先端がローラユニット30Aから突出することを許容することができる。
【0031】
●[第3実施形態のローラユニット30Bの構造(
図7)とトリポード軸部11Aを挿通した状態(
図8)と第3リング状部材37の例(
図9)]
次に
図7〜
図9を用いて、第3実施形態におけるローラユニット30Bの構造と、所望する方向(正しい方向)からトリポード軸部11Aを挿通した状態(
図8(A))と、所望しない方向(誤った方向)からトリポード軸部11Aを挿通した状態(
図8(B))と、第3リング状部材37の例(
図9)について説明する。
なお、
図7はローラユニット30Bの分解斜視図と、組み付けた状態のローラユニット30Bの軸方向断面図を示している。
第3実施形態では、第2実施形態に対して、
図5に示す第2リング状部材36が省略され、
図7に示す第3リング状部材37が追加されている点が異なる。以下、この相違点について主に説明する。なお、第3リング状部材37は、トリポード軸部挿通規制手段に相当する。
【0032】
図7に示すように、第3実施形態のローラユニット30Bは、
図5に示したローラユニット30Aにおける第2リング状部材36が省略され、第3リング状部材37が追加されている。
また、ローラ回転軸Z30方向における鍔部31Bと内ローラ34との間の位置には、第3リング状部材37が配置されている。なお、第3リング状部材37の外径D37は、外ローラ31におけるニードル33及び内ローラ34を収容する個所の内径よりも小さな径(かつ鍔部31Bの内径よりも大きな径)に設定されており、第3リング状部材37の内径D37Aは、略球状のトリポード軸部における中央近傍の外径D11(トリポード軸部に対して直交方向に切断した断面の最大外径であり、
図8(A)、(B)参照)よりも小さな径に設定されている。また、第3リング状部材37は、円環状であってもよいし、C字状であってもよい。
なお、第3リング状部材37の材質としては、ニードル33や内ローラ34が回転しながら接触するので、金属等を利用することが好ましい。また第3リング状部材37のローラ回転軸Z30方向の厚さは、適宜設定される。
なお、
図7に示す外ローラ31、ニードル33、内ローラ34、スナップリング35は、
図5と同様であるので、これらについては説明を省略する。
【0033】
ローラユニット30Bを組み付ける際は、まず外ローラ31におけるリング溝31Aの側から、鍔部31Bに接するように第3リング状部材37を外ローラ31内に配置する。あとは第1実施形態と同様に、ニードルと内ローラとスナップリングを配置、及び組み付ける。
そして組み上がったローラユニット30Bをトリポード軸部11Aに外嵌することで受動部10(
図1、
図2(A)参照)が出来上がる。
【0034】
図8(A)は、上記のローラユニット30Bのスナップリング35の側(正しい側)からトリポード軸部11Aを挿通した状態を示している。この場合、トリポード軸部11Aの先端がローラユニット30Bから突出するまで第3リング状部材37がトリポード軸部11Aに干渉しないので、作業者は、トリポード軸部11Aに正しい方向からローラユニット30Bを外嵌することができる。
また
図8(B)は、上記のローラユニット30Bの鍔部31Bの側(誤った側)からトリポード軸部11Aを挿通した状態を示している。この場合、トリポード軸部11Aがローラユニット30A内に収容される前に第3リング状部材37がトリポード軸部11Aに干渉するので、作業者は、トリポード軸部11Aにローラユニット30Bを外嵌することができない。
【0035】
以上、第3実施形態では、作業者がトリポード軸部にローラユニットを組み付ける際にローラユニットの方向を間違えて組み付けてしまうことがない(方向が間違っている場合は組み付けることができない)。
また第3リング状部材37は、トリポード軸部11Aの先端を覆うような板状ではなく、中央部が開口したリング状であるので、挿通したトリポード軸部11Aの先端がローラユニット30Bから突出することを許容することができる。
【0036】
なお、第3リング状部材37の外径のサイズとしては、
図9(A)及び(B)に示す例が考えられる。
図9(A)の例では、第3リング状部材37の外径D37を、外ローラ31の内径(ニードル及び内ローラを収容している個所の内径)よりも小さな径、且つ内ローラ34の外径よりも大きな径に設定した例である。この場合、第3リング状部材37の外周面は外ローラ31の内周面と接触する。
図9(B)の例では、第3リング状部材37の外径D37Bを、内ローラ34の外径よりも小さな径、且つ鍔部31Bの内径D31Aよりも大きな径に設定した例である。この場合、第3リング状部材37の外周面は、ニードル33の外周面と接触する。
【0037】
以上、第1〜第3実施形態にて説明した等速ジョイントでは、ローラユニットにおけるスナップリングの側のみからのトリポード軸部の挿通を許容するので、作業者がトリポード軸部にローラユニットを組み付ける際にローラユニットの方向を間違えて組み付けてしまうことがない。
また、トリポード軸部挿通規制手段である第1リング状部材、第2リング状部材、第3リング状部材は、いずれも、トリポード軸部の先端を覆うような板状ではなく、中央部が開口したリング状であるので、挿通したトリポード軸部の先端がローラユニットから突出することを許容することができる。
また、本実施形態の説明では、外ローラにおける鍔部と反対側の端面にスナップリング(保持部材に相当)を嵌め込んで内ローラとニードルが抜けないように保持した例を説明したが、スナップリングの代わりに、外ローラにおける鍔部と反対側の端面の側に、内ローラとニードルが抜けないように保持可能なツメ部等を形成するようにしてもよい、この場合、外ローラに形成したツメ部等が保持部に相当する。
【0038】
本発明のダブルローラタイプのトリポード型等速ジョイント1、及びローラユニット30、30A、30Bを構成する各部材の構成、構造、外観、形状等は、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
また本実施形態の説明では、転動体としてニードルを用いた例を説明したが、ニードルに限定されず、鋼球等、種々の転動体を用いることができる。
また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、より小さい(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。