特許第6186815号(P6186815)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186815
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】車両用スライドドア装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/54 20060101AFI20170821BHJP
   E05D 15/10 20060101ALI20170821BHJP
   B60J 5/06 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   E05F11/54 A
   E05D15/10
   B60J5/06 A
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-78813(P2013-78813)
(22)【出願日】2013年4月4日
(65)【公開番号】特開2014-201955(P2014-201955A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】石田 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 知英
(72)【発明者】
【氏名】船山 肇
(72)【発明者】
【氏名】石橋 義輝
(72)【発明者】
【氏名】安藤 貴史
【審査官】 佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第201961125(CN,U)
【文献】 特開2010−195303(JP,A)
【文献】 特開2009−73307(JP,A)
【文献】 特開2012−162867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/00− 15/58
E05F 1/00− 13/04、17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側面に設けられたガイドレールと、
相対移動可能に前記ガイドレールに連結される連結部材と、を備え、
前記ガイドレール及び連結部材を介して前記車体にスライドドアを支持することにより、前記ガイドレールに沿った前記スライドドアの前後移動に基づいて、前記車体の側面に形成されたドア開口部を開閉可能に構成されるとともに、
前記ドア開口部の縁部に設けられた前記ガイドレールには、前記スライドドアに固定されることにより該スライドドア側から前記ガイドレール側に向かって延びる支持アームを備えた前記連結部材が連結されるものであって、
前記支持アームの幅方向両端部には、前記ドア開口部に臨む前記支持アームの表側に凸となる湾曲形状を有して該支持アームの延伸方向に延びるビードが形成され
前記ビードの内側に線状をなす伝達部材の配索経路を設定してなる
車両用スライドドア装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用スライドドア装置において、
前記ビードは、前記支持アームの延伸方向全長に亘って延設されること、
を特徴とする車両用スライドドア装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用スライドドア装置において、
前記支持アームの幅方向両端部に位置する二つの前記ビードの間に設けられ、前記ドア開口部に臨む前記支持アームの表側に凸となる湾曲形状を有して該支持アームの延伸方向に延びる第2のビードを備えること、を特徴とする車両用スライドドア装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の車両用スライドドア装置において、
前記支持アームの幅方向端部には、該幅方向端部に設けられたビードによって、前記支持アームの表側から裏側に向かって延びる側板部が形成されるとともに、
前記幅方向端部に設けられたビードは、前記スライドドアとの固定部を含んだ前記配索経路を形成するものであって、
前記側板部と前記スライドドア側の固定面との間には、
前記ビードの内側に前記伝達部材を挿入可能な隙間が設定されること、
を特徴とする車両用スライドドア装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の車両用スライドドア装置において、
前記伝達部材は、前記連結部材に設けられたロック装置に接続されるワイヤーケーブルであること、を特徴とする車両用スライドドア装置。
【請求項6】
請求項〜請求項の何れか一項に記載の車両用スライドドア装置において、
前記支持アームには、前記スライドドアを全開位置で保持可能なロック装置が組み付けられるとともに、
前記支持アームの幅方向端部には、該幅方向端部に設けられたビードによって、前記支持アームの表側から裏側に向かって延びる側板部が形成されるものであって、
前記ロック装置は、前記側板部に当接することにより位置決め可能に構成されること、
を特徴とする車両用スライドドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用スライドドア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用のスライドドア装置は、車両前後方向に延びるガイドレールと、このガイドレールに対し、その延設方向に沿って相対移動可能に連結される連結部材と、を備えている。そして、これらのガイドレール及び連結部材を介して車体にスライドドアを支持することにより、そのガイドレールに沿ったスライドドアの前後移動に基づいて、車体の側面に形成された車両のドア開口部を開閉することが可能となっている。
【0003】
また、多くの場合、ガイドレールに連結される連結部材には、そのスライドドア側からガイドレール側に向かって延びる支持アームが設けられている。例えば、特許文献1に記載のスライドドア装置は、その幅方向両端がフランジ状に折り曲げられた支持アームを備えている。そして、これにより、その支持剛性の向上が図られている。
【0004】
即ち、高い支持剛性を確保することにより、その支持アーム(を構成する板材)を薄肉化することができる。そして、これにより連結部材の軽量化を図ることで、より円滑にスライドドアを動作させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国実用新案公告第201961125号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来例の構成では、その支持アームの顕著な薄肉化までには至らないのが実情である。このため、その連結部材の軽量化についてもまた限りのあるものとなっており、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、より高い支持剛性を確保することのできる車両用スライドドア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する車両用スライドドア装置は、車体の側面に設けられたガイドレールと、相対移動可能に前記ガイドレールに連結される連結部材と、を備え、前記ガイドレール及び連結部材を介して前記車体にスライドドアを支持することにより、前記ガイドレールに沿った前記スライドドアの前後移動に基づいて、前記車体の側面に形成されたドア開口部を開閉可能に構成されるとともに、前記ドア開口部の縁部に設けられた前記ガイドレールには、前記スライドドアに固定されることにより該スライドドア側から前記ガイドレール側に向かって延びる支持アームを備えた前記連結部材が連結されるものであって、前記支持アームの幅方向両端部には、前記ドア開口部に臨む前記支持アームの表側に凸となる湾曲形状を有して該支持アームの延伸方向に延びるビードが形成され、前記ビードの内側に線状をなす伝達部材の配索経路を設定してなる
【0009】
上記構成によれば、その幅方向両端部にフランジを形成した場合と比較して、より高い支持剛性を確保することができる。そして、これにより、その連結部材の軽量化を図ることによって、より円滑にスライドドアを動作させることができる。また、その支持アームの幅方向端部がドア開口部に臨む表側に突出しない。その結果、より高い安全性を確保することができる。
上記構成によれば、簡素な構成にて、安定的且つ支持アームに保護された状態で伝達部材を保持することができる。そして、これにより高い信頼性を確保することができる。
【0010】
上記課題を解決する車両用スライドドア装置は、前記ビードは、前記支持アームの延伸方向全長に亘って延設されることが好ましい。
上記構成によれば、より高い支持剛性を確保することができる。
【0011】
上記課題を解決する車両用スライドドア装置は、前記支持アームの幅方向両端部に位置する二つの前記ビードの間に設けられ、前記ドア開口部に臨む前記支持アームの表側に凸となる湾曲形状を有して該支持アームの延伸方向に延びる第2のビードを備えることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、更なる支持剛性の向上を図ることができる
【0013】
記課題を解決する車両用スライドドア装置は、前記支持アームの幅方向端部には、該幅方向端部に設けられたビードによって、前記支持アームの表側から裏側に向かって延びる側板部が形成されるとともに、前記幅方向端部に設けられたビードは、前記スライドドアとの固定部を含んだ前記配索経路を形成するものであって、前記側板部と前記スライドドア側の固定面との間には、前記ビードの内側に前記伝達部材を挿入可能な隙間が設定されることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、容易に、伝達部材を配索することができる。そして、これにより、その作業効率を向上させることができる。
上記課題を解決する車両用スライドドア装置は、前記伝達部材は、前記連結部材に設けられたロック装置に接続されるワイヤーケーブルであることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、ロック装置の信頼性を向上させることができる。
上記課題を解決する車両用スライドドア装置は、前記支持アームには、前記スライドドアを全開位置で保持可能なロック装置が組み付けられるとともに、前記支持アームの幅方向端部には、該幅方向端部に設けられたビードによって、前記支持アームの表側から裏側に向かって延びる側板部が形成されるものであって、前記ロック装置は、前記側板部に当接することにより位置決め可能に構成されることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、ロック装置の信頼性を高めるとともに、併せてその組み付け作業の効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、より高い支持剛性を確保して連結部材の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】車両用スライドドア装置の概略構成図。
図2】センターレール及びその連結部材の構成を示す断面図(図1におけるII−II断面)。
図3】ロアレール及びその連結部材の構成を示す断面図(図1におけるIII−III断面)。
図4】ロアレールに連結される連結部材の平面図。
図5】ロアレールに連結される連結部材を構成する支持アームの断面図(図4におけるV−V断面図)。
図6】ロアレールに連結される連結部材の側面図。
図7】スライドドアに形成された操作伝達系の概略構成図。
図8】全開ロックを構成するロック装置の平面図。
図9】支持アームの側板部とスライドドア側の固定面との間に設定された隙間を示す拡大断面図。
図10】支持アームの側板部とロック装置と位置関係を示す断面図(図4におけるX−X断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、車両用スライドドア装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両1は、車両前後方向に移動することにより車体2の側面2aに形成されたドア開口部3を開閉可能なスライドドア4を備えている。
【0020】
詳述すると、この車両1には、車両前後方向に延びる複数のガイドレール5と、その延設方向に沿って相対移動可能に各ガイドレール5に連結される連結部材7と、を備えたスライドドア装置10が設けられている。そして、スライドドア4は、これらのガイドレール5(5A〜5C)及び連結部材7(7A〜7C)を介して車体2に支持されることにより、上記のように車両前後方向に移動して、その車体2の側面2aに形成されたドア開口部3を開閉することが可能となっている。
【0021】
具体的には、本実施形態のスライドドア装置10は、そのドア開口部3の後方において車両前後方向に延設されたセンターレール5Aと、ドア開口部3の下縁3b及び上縁3cにおいて、それぞれ車両前後方向に延設されたロアレール5B及びアッパレール5Cと、を備えている。また、スライドドア4の後端部には、センターレール5Aに連結される連結部材7Aが設けられている。そして、スライドドア4の前端部には、ロアレール5Bに連結される連結部材7B、及びアッパレール5Cに連結される連結部材7Cが設けられている。
【0022】
さらに詳述すると、図2に示すように、センターレール5Aは、車体2の側面2aに形成された車両前後方向(図2中、紙面に直交する方向)に延びる溝状の凹部12内に配置されている。また、センターレール5Aに連結される連結部材7Aは、スライドドア4の内側面4aに固定されるブラケット13と、上下方向に延びる支軸L1を有して回動自在にブラケット13に支持された支持アーム14と、を備えている。そして、この支持アーム14の先端14aには、センターレール5Aが形成する軌道T(図1参照)上を転動可能なガイドローラー16(16A)が設けられている。
【0023】
具体的には、センターレール5Aは、車幅方向(図2中、左右方向)に対向する一対の側壁部17a,17bを有している。また、ガイドローラー16Aは、上下方向に延びる支軸L2によって回転自在に支持されている。そして、センターレール5Aには、そのレール内に上記支持アーム14の先端14aを挿入可能な開口部17cが形成されている。
【0024】
即ち、連結部材7Aは、そのガイドローラー16Aが上記両側壁部17a,17b間に挟み込まれる態様で、センターレール5Aに連結されている。また、そのガイドローラー16Aが各側壁部17a,17bの何れかに当接することにより、その側壁部17a,17b上に軌道Tが形成される。そして、連結部材7Aは、その軌道T上をガイドローラー16Aが転動することにより、センターレール5Aの延伸方向に沿って移動することが可能となっている。
【0025】
また、図3に示すように、ドア開口部3の下縁3bには、車両前後方向(図3中、紙面に直交する方向)に延びる溝状の凹部18が形成されている。そして、ロアレール5Bは、この凹部18内に配置されている。
【0026】
具体的には、ロアレール5Bは、車幅方向(図3中、左右方向)に対向する一対の側壁部20a,20bを備えて下向きに開口する略コ字状の端面形状(断面形状)を有している。また、このロアレール5Bに連結される連結部材7Bは、スライドドア4の内側面4aに対する固定部21aと、スライドドア4側からロアレール5B側に向かって車幅方向内側(図3中、右側)に延びる延伸部21bと、を有した支持アーム21を備えている。更に、その延伸部21bの先端には、上下方向に延びる支軸L3を有して回動自在に連結されたローラー保持部22が設けられている。そして、このローラー保持部22には、上下方向に延びる支軸L4を有してロアレール5Bが形成する軌道T上を転動可能なガイドローラー16(16B)が設けられている。
【0027】
即ち、連結部材7Bもまた、そのローラー保持部22に設けられたガイドローラー16Bが上記両側壁部20a,20b間に挟み込まれる態様で、ロアレール5Bに連結されている。そして、その各側壁部20a,20b上に形成される軌道T上をガイドローラー16Bが転動することにより、ロアレール5Bの延伸方向に沿って移動することが可能となっている。
【0028】
尚、本実施形態では、アッパレール5C及び当該アッパレール5Cに連結される連結部材7Cもまた、その配置を除いて上記ロアレール5B及び当該ロアレール5Bに連結される連結部材7Bと略同様の構成を有している。このため、便宜上、その詳細な説明は省略する。
【0029】
本実施形態では、各連結部材7には、それぞれ、二つのガイドローラー16が設けられている。また、図2に示すように、本実施形態では、連結部材7Aを構成する支持アーム14の先端14aには、センターレール5Aの下壁部17d上を転動するロードローラー28が設けられている。更に、図3に示すように、連結部材7B(7C)を構成するローラー保持部22にも、同様のロードローラー28が設けられている。そして、本実施形態では、これらのロードローラー28によって、そのスライドドア4の荷重が支えられるようになっている。
【0030】
本実施形態のスライドドア4は、このように各ガイドレール5(5A〜5C)及び連結部材7(7A〜7C)を介して車体2に支持されている。そして、本実施形態のスライドドア装置10は、各ガイドローラー16の転動を伴いつつ、各ガイドレール5(5A〜5C)と各連結部材7(7A〜7C)とが相対移動することによって、その支持するスライドドア4を車両前後方向に移動させることが可能となっている。
【0031】
(支持アームの強化構造)
次に、ロアレール5Bに連結される連結部材7Bを構成する支持アーム21の強化構造について説明する。
【0032】
図4図6に示すように、本実施形態では、上記ロアレール5Bに連結される連結部材7Bの支持アーム21は、板材(薄板)を塑性加工(プレス加工)することにより形成されている。また、本実施形態の支持アーム21には、ロアレール5Bの上方に位置するドア開口部3に臨む表側(表面S1側)に凸となる湾曲形状を有した複数のビード30が形成されている。そして、本実施形態では、これにより、その支持剛性の向上が図られている。
【0033】
詳述すると、各ビード30は、略U字型の断面形状を有している。また、図4に示すように、支持アーム21は、そのスライドドア4に対する固定状態において、車両前方側(同図中、左側)にせり出すように湾曲しつつ車幅方向内側(同図中、上側)に向かって延びる延伸部21bを備えている。そして、本実施形態の支持アーム21は、その車両前後方向に対して交差する方向に延びる当該支持アーム21の幅方向両端部に設けられたビード30a,30bを有している。
【0034】
図4及び図6に示すように、これらの各ビード30a,30bは、その延伸部21bのみならずスライドドア4に対する固定部21aを含む支持アーム21の延伸方向全長に亘って延設されている。また、本実施形態では、これらの各ビード30a,30bの間にも、その支持アーム21の延伸方向に延びるビード30cが設けられている。そして、このビード30cは、その固定部21aから延伸部21bの略中間部分まで延設されている。
【0035】
(ワイヤーケーブルの配索構造)
次に、本実施形態の支持アーム21に形成されたワイヤーケーブルの配索構造について説明する。
【0036】
図7に示すように、スライドドア4には、当該スライドドア4を全閉位置で保持するためのフロントロック31及びリアロック32(全閉ロック)、並びにスライドドア4を全開位置で保持するための全開ロック33が設けられている。また、これらのロック装置(31〜33)は、ワイヤーケーブルやリンク等の伝達部材34を介してインサイドドアハンドル35及びアウトサイドドアハンドル36に接続されている。そして、本実施形態では、これにより、そのスライドドア4を開閉動作するための操作伝達系37が形成されている。
【0037】
具体的には、各ドアハンドル(35,36)に対する操作入力は、その操作伝達系37の途中に設けられたリモコン(リモートコントロール装置)38に入力される。そして、このリモコン38の動作に基づいて、その操作入力に応じた適切なロック装置(31〜33)がアンロック動作するようになっている。
【0038】
図4に示すように、本実施形態では、上記全開ロック33を構成するロック装置40は、ロアレール5Bに連結される連結部材7Bに設けられている。詳しくは、このロック装置40は、その支持アーム21の裏側(同図中、紙面奥側)に設けられている。また、このロック装置40と上記リモコン38との間を接続する伝達部材34には、ワイヤーケーブル41が用いられている。そして、本実施形態では、上記のように支持アーム21の表側(同図中、紙面手前側)に凸となる湾曲形状を有したビード30の内側に、そのワイヤーケーブル41が配索されるようになっている。
【0039】
詳述すると、図8に示すように、本実施形態のロック装置40は、その周面42sに開口する係合溝43を有して回動可能に設けられたラッチ42と、このラッチ42の回動を規制可能なポール44と、を備えている。また、車体2側には、そのスライドドア4が全開位置に移動することにより、そのラッチ42の係合溝43に係合可能なストライカ45が設けられている。そして、このロック装置40は、その係合溝43にストライカ45が係合した状態でラッチ42の回動を規制することにより、スライドドア4の前方移動を規制して、その全開位置を保持することが可能となっている。
【0040】
さらに詳述すると、ロック装置40は、平行する二本の支持軸46,47を有して支持アーム21の裏側(図6参照、裏面S2側)に固定されるブラケット48を備えている。そして、ラッチ42及びポール44は、これらの支持軸46,47によって、それぞれ、回動可能に軸支されている。
【0041】
また、これらのラッチ42及びポール44は、それぞれ、その支持軸46,47に嵌装された捩りコイルバネ50,51の弾性力に基づいて、互いに相反する方向に付勢されている。具体的には、ラッチ42は、図8中、時計回り方向に付勢され、ポール44は、反時計回り方向に付勢されている。そして、これにより、ラッチ42及びポール44は、互いの周面42s,44sが摺接する状態となっている。
【0042】
更に、ポール44の周面44sには、係合突部52が形成されている。また、ラッチ42の周面42sには、その係合突部52と係合可能な係合凹部53が形成されている。そして、本実施形態のロック装置40は、これらポール44の係合突部52とラッチ42の係合凹部53との係合関係に基づいて、そのラッチ42の回動位置を保持することが可能となっている。
【0043】
具体的には、ロック装置40がアンロック状態にある場合、ポール44は、その係合突部52の基端部分に位置する周面44sが、ラッチ42の周面42sにおける上記係合凹部53よりも上記係合溝43の開口部分に近い部分に摺接するようになっている(図8中、二点鎖線に示す位置)。また、このとき、ラッチ42の回動位置は、その係合溝43が車両後方側に開口するように設定されている。即ち、連結部材7Bの支持アーム21に設けられたロック装置40は、スライドドア4と一体に前後移動することにより、車体2側に設けられたストライカ45に対して接離するように構成されている。そして、本実施形態では、これにより、そのスライドドア4の開動作に基づいて、ラッチ42の係合溝43とストライカ45とが係合するようになっている。
【0044】
また、その後、スライドドア4が更に車両後方側に移動することによって、ラッチ42は、その係合溝43に係合するストライカ45に押圧される態様で、同図中、反時計周り方向に回動する。そして、スライドドア4が全開位置にある場合には、そのポール44の係合突部52がラッチ42の係合凹部53に係合するように構成されている。
【0045】
即ち、本実施形態では、その係合突部52と係合凹部53との係合関係に基づいて、図8中、時計回り方向におけるラッチ42の回動、つまりは、その係合溝43とストライカ45との係合が解除される方向におけるラッチ42の回動が規制される。そして、これにより、そのラッチ42の係合溝43からストライカ45が脱離不能な状態で、ラッチ42の回動位置を保持することが可能となっている(ロック状態)。
【0046】
また、本実施形態では、ポール44の係合突部52には、伝達部材34を構成するワイヤーケーブル41との接続部55が形成されている。具体的には、本実施形態のワイヤーケーブル41は、金属製のワイヤー41aを樹脂製のチューブ41b内に挿通してなる周知の構造を有しており、ポール44には、そのワイヤー41aの先端に設けられた玉状の端末部41cを係止可能な溝部を有した接続部55が形成されている。そして、ブラケット48には、そのチューブ41bの一端を掛止するケーブル保持部56が形成されている。
【0047】
即ち、ポール44は、ワイヤーケーブル41に引かれることにより、捩りコイルバネ51の弾性力に抗して、図8中、時計回り方向に回動する。また、このポール44の回動によって、その係合突部52とラッチ42(の係合凹部53)との係合が解除される。つまり、ラッチ42が時計回り方向に回動可能となることで、その係合溝43からストライカ45が脱離可能な状態になる。そして、本実施形態のロック装置40は、これにより、そのラッチ42(の係合溝43)とストライカ45との係合関係に基づくロック状態を解除(アンロック)することが可能となっている。
【0048】
図4図6に示すように、本実施形態では、上記のようにブラケット48のケーブル保持部56からロック装置40の外部に引き出されたワイヤーケーブル41は(図8参照)、更に支持アーム21の幅方向端部に設けられたビード30aが形成する配索経路N1を介してスライドドア4側に引き出されている。
【0049】
また、図5及び図9に示すように、本実施形態では、支持アーム21の幅方向端部に設けられたビード30a(30b)は、その幅方向端部に、略板状(図3参照、端面形状は略L字型)をなす支持アーム本体57に交差するように支持アーム21の表側から裏側(各図中、上側から下側)に向かって延びるフランジ状の側板部58を形成する。
【0050】
具体的には、図5に示すように、延伸部21bにおいては、その側板部58の先端58aは、支持アーム本体57の裏側まで延設されている。
その一方、図9に示すように、固定部21aにおいては、側板部58は、その先端58aが、支持アーム本体57の表側に位置するように形成されている。即ち、側板部58の先端58aとスライドドア4の内側面4aとの間には、隙間Xが形成されている。そして、本実施形態では、この隙間Xを利用することによって、容易に、そのビード30aの内側にワイヤーケーブル41を挿入することが可能となっている。
【0051】
また、図9に示すように、本実施形態では、ビード30aの内側には、ワイヤーケーブル41とともに、ゴムやウレタン等の弾性材料により形成された筒状の緩衝部材59が配設されている。尚、上記側板部58とスライドドア4側の固定面(内側面4a)との間の隙間Xは、線状をなすワイヤーケーブル41の外周に緩衝部材59を装着した状態で当該ワイヤーケーブル41をビード30aの内側に挿入することが可能な大きさに設定されている。また、このとき、緩衝部材59は、圧縮により縮径された状態となっている。そして、本実施形態では、その圧縮状態で装着された緩衝部材59の復元力に基づいて、ビード30aが形成する配索経路N1内にワイヤーケーブル41を保持する構成となっている。
【0052】
更に、図10に示すように、本実施形態のロック装置40は、支持アーム21に対して組み付けられる際、そのブラケット48の側壁48aが上記側板部58に当接するように構成されている。そして、その状態で支持アーム21の延伸方向に摺動させることによって、その位置決めが可能となっている。
【0053】
次に、上記のように構成された本実施形態のスライドドア装置10の作用について説明する。
本実施形態では、支持アーム21にロック装置40を組み付ける工程において、当該ロック装置40に接続されるワイヤーケーブル41(伝達部材34)は、その配索経路N1を形成するビード30aの外側に配置されている。そして、支持アーム21にロック装置40が組み付けられた後、その支持アーム21の幅方向端部に形成された側板部58とスライドドア4側の固定面(内側面4a)との間の隙間Xから、ビード30aの内側に挿入されるようになっている。
【0054】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ロアレール5Bに連結される連結部材7Bは、スライドドア4に固定されることにより当該スライドドア4側からロアレール5B側に向かって延びる支持アーム21を備える。そして、その支持アーム21の幅方向両端部には、ドア開口部3に臨む表側に凸となる湾曲形状を有して支持アーム21の延伸方向に延びるビード30a,30bが形成される。
【0055】
上記構成によれば、その幅方向両端部にフランジを形成した場合と比較して、より高い支持剛性を確保することができる。そして、これにより、その連結部材7Bの軽量化を図ることによって、より円滑にスライドドア4を動作させることができる。また、その支持アーム21の幅方向端部、詳しくは素材となる板材の端部がドア開口部3に臨む表側に突出しない。その結果、より高い安全性を確保することができる。
【0056】
(2)支持アーム21の幅方向両端部に設けられた各ビード30a,30bは、スライドドア4に対する固定部21aを含む支持アーム21の延伸方向全長に亘って延設される。このような構成とすることで、より高い支持剛性を確保することができる。
【0057】
(3)支持アーム21は、その幅方向両端部に位置する各ビード30a,30bの間に設けられたビード30cを備える。これにより、更なる支持剛性の向上を図ることができる。
【0058】
(4)支持アーム21には、全開ロック33を構成するロック装置40が設けられる。そして、このロック装置40に接続される伝達部材34としてのワイヤーケーブル41は、そのビード30(30a)の内側に配索される。
【0059】
上記構成によれば、簡素な構成にて、安定的且つ支持アーム21に保護された状態でワイヤーケーブル41を保持することができる。そして、これにより高い信頼性を確保することができる。
【0060】
(5)ビード30aの内側には、弾性材料により形成された緩衝部材59が配設される。この緩衝部材59は、圧縮された状態でワイヤーケーブル41とともに、ビード30a内に挿入される。そして、ワイヤーケーブル41は、その圧縮状態で装着された緩衝部材59の復元力に基づいて、そのビード30aが形成する配索経路N1内に保持される。
【0061】
上記構成によれば、クリップ等の保持部材を用いることなく、安定的にワイヤーケーブル41を保持することができる。そして、これによる部品点数及び工数の減少に基づいて、製造コストの低減を図ることができる。
【0062】
(6)ビード30aは、略平板状をなす支持アーム本体57に交差するように支持アーム21の表側から裏側に向かって延びるフランジ状の側板部58を形成する。また、固定部21aにおいては、その先端58aとスライドドア4の内側面4aとの間に、隙間Xが形成されるように構成される。そして、この隙間Xを介して、そのビード30aの内側にワイヤーケーブル41を挿入することが可能となっている。
【0063】
上記構成によれば、容易に、ワイヤーケーブル41を配索することができる。そして、これにより、その作業効率を向上させることができる。
(7)ロック装置40は、支持アーム21に対して組み付けられる際、そのブラケット48の側壁48aが上記側板部58に当接するように構成される。そして、その状態で支持アーム21の延伸方向に摺動させることにより、その位置決めが可能となっている。これにより、そのロック装置40の組み付け作業を容易化することができる。
【0064】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、ロアレール5Bに連結される連結部材7Bの支持アーム21について、その支持剛性を向上させることとした。しかし、これに限らず、ドア開口部3における上方の縁部に設けられたアッパレール5Cに関するもの、即ち連結部材7Cの支持アームについて、その支持剛性を向上させるものであってもよい。
【0065】
・上記実施形態では、支持アーム21の幅方向両端部に位置する各ビード30a,30bの間に設けられたビード30cは、支持アーム21における延伸部21bの略中間部分まで延設されることとした。しかし、これに限らず、この第2のビードを構成するビード30cについてもまた、その固定部21aを含む支持アーム21の延伸方向全長に亘って延設される構成としてもよい。そして、幅方向両端部に設けられた各ビード30a,30bの少なくとも一方が、支持アーム21の延伸方向全長に亘るものではない構成ついても、これを排除しない。
【0066】
・また、支持アーム21の幅方向両端部に位置する各ビード30a,30bの間に、複数のビード30c(第2のビード)が設けられた構成であってもよい。
・上記実施形態では、ビード30(30a)の内側に、伝達部材34としてのワイヤーケーブル41が配索されることとした。しかし、これに限らず、伝達部材34の配索経路については、そのビード30aが形成する配索経路N1のみならず、支持アーム21における他方の幅方向端部に設けられたビード30bが形成する配索経路N2を用いる構成であってもよい。また、これら二つのビード30a,30bの間に設けられたビード30c(第2のビード)が形成する配索経路N3を用いる構成であってもよい。そして、伝達部材34の配索経路として、上記各配索経路N1〜N3を任意に組み合わせて用いる構成であってもよい。
【0067】
・また、伝達部材34についても、ワイヤーケーブル41のような物理的な力を伝達するものに限らず、ワイヤーハーネスのような電気的な信号を伝達する伝達部材をビード30の内側に配索する構成であってもよい。
【0068】
・上記実施形態では、上記ビード30aが支持アーム21の幅方向端部に形成する側板部58の長さを変えることで、その側板部58とスライドドア4側の固定面(内側面4a)との間に隙間Xを形成することとした。しかし、これに限らず、スライドドア4の内側面4aに凹部を形成することで、その側板部58との間に隙間Xを形成する構成であってもよい。
【0069】
・また、各ビード30a,30bが形成する側板部58の形状は必ずしも同一でなくともよい。そして、上記隙間Xが一方のみに形成される構成であってもよい。
・更に、ロック装置40の位置決めに用いられる側板部58は、支持アーム21の幅方向両端部に位置する各ビード30a,30bの何れであってもよい。そして、その位置決めに際しては、必ずしも当接した状態で支持アーム21の延伸方向に摺動させるものでなくともよい。
【0070】
・上記実施形態では、圧縮状態で装着された緩衝部材59の復元力に基づいて、そのビード30が形成する配索経路内にワイヤーケーブル41を保持することとした。しかし、これに限らず、伝達部材の保持構造については任意に変更してもよい。
【0071】
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を効果とともに記載する。
(イ)圧縮状態で前記伝達部材とともに前記ビードの内側に配設される緩衝部材を備え、前記伝達部材は、前記緩衝部材の復元力に基づいて前記ビードの内側に保持されること、を特徴とする車両用スライドドア装置。
【0072】
上記構成によれば、クリップ等の保持部材を用いることなく、安定的に伝達部材を保持することができる。そして、これによる部品点数及び工数の減少に基づいて、製造コストの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0073】
1…車両、2…車体、2a…側面、3…ドア開口部、3b…下縁(縁部)、3c…上縁(縁部)、4…スライドドア、4a…内側面(固定面)、5…ガイドレール、5A…センターレール、5B…ロアレール、5C…アッパレール、7,7A,7B,7C…連結部材、10…スライドドア装置、16…ガイドローラー、21…支持アーム、21a…固定部、21b…延伸部、S1…表面、S2…裏面、30,30a,30b,30c…ビード、33…全開ロック、34…伝達部材、40…ロック装置、41…ワイヤーケーブル、N1〜N3…配索経路、58…側板部、X…隙間、59…緩衝部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10