(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記筒体に前記荷物が載置された場合に、前記荷物に当接することで、前記荷物の左右方向の少なくとも一方への移動可能範囲を所定の範囲内に規制するストッパを備える
請求項1または2に記載のラック。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の実施形態のラックついて、図面を参照しながら説明する。なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示したものではない。
【0029】
また、以下で説明する実施の形態は、包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0030】
(実施の形態1)
まず、
図1および
図2を用いて、本発明の実施の形態1における自動倉庫100およびラック80の構成概要を説明する。
【0031】
図1は、実施の形態1における自動倉庫100の構成概要を示す斜視図である。
【0032】
図2は、実施の形態1におけるラック80の保持部89の構成概要を示す斜視図である。
【0033】
図1に示すように、実施の形態1における自動倉庫100は、複数の荷物10を収容可能なラック80と、スタッカクレーン50と、スタッカクレーン50の動作を制御するコントローラ110とを備える。
【0034】
スタッカクレーン50は、ラック80との間で荷物10の移載を行う移載装置52および移載装置52が配置された昇降台51を有する。
【0035】
本実施の形態では、スタッカクレーン50はさらに、レール12に沿って走行する台車20と台車20に立設された2本のマスト30とを備える。
【0036】
なお、
図1には図示していないが、スタッカクレーン50は、上部に配置されたレールに沿って走行する上部の台車も有しており、2本のマスト30の上端は上部の台車に接続されている。また、台車20と上部の台車とが同期して移動することで、スタッカクレーン50は、全体として、
図1におけるX軸方向に移動する。
【0037】
昇降台51は、図示しないワイヤロープで懸吊され、昇降装置60によって駆動されるウィンチモータ63の回転に応じて、2本のマスト30にガイドされながら昇降する。また、昇降台51は、このように2本のマスト30にガイドされるための複数のガイドローラ55を有している。
【0038】
また、本実施の形態において昇降台51に配置された移載装置52は、スライドフォーク53によって荷物10の移載を行う移載方法を採用している。
【0039】
スタッカクレーン50は、コントローラ110からの指示に従って、X軸方向に走行し、昇降台51を昇降させ、かつ、移載装置52のスライドフォーク53を伸縮させる。スタッカクレーン50は、このような構成を採用することで、ラック80およびステーション58等の間での荷物10の受け渡しを行うことができる。
【0040】
なお、ステーション58は、荷物10の一時的な載置場所である。例えば、ラック80に収容されている荷物10は、スタッカクレーン50によってラック80から取り出されて搬送され、一時的にステーション58に置かれた後に、自動倉庫100の外部に運び出される。
【0041】
ラック80は、前後方向(Y軸方向)に荷物10の出し入れが可能である。具体的には、ラック80は、高さ方向(Z軸方向)に並んで配置された複数の棚段を有し、棚段は左右方向(X軸方向)に並べられた複数の棚(保持部89)を有する。
【0042】
スタッカクレーン50は、コントローラ110からの指示に応じて、取り出すべき荷物10が載置された保持部89の正面までX軸方向に移動し、かつ、当該保持部89の高さ方向の位置(高さ位置)まで昇降台51を上昇または下降させる。
【0043】
その後、昇降台51および移載装置52は、コントローラ110からの指示に応じて、スライドフォーク53を伸ばして当該荷物10を当該保持部89からすくい上げ、スライドフォーク53を縮めることで、昇降台51上方の所定の位置に取り込む。
【0044】
ラック80が備える保持部89は、
図2に示すように、前後方向に長尺状の棒体82と、棒体82に支持された筒体85と、接続部材83とを備える。
【0045】
具体的には、棒体82は、前後に並んで立設された2本の支柱81の側方に配置されている。また、棒体82は、当該2本の支柱81のそれぞれと、各支柱81から側方に突出して設けられた接続部材83によって接続されている。
【0046】
筒体85は、荷物10が載置される部材であり、棒体82の周方向に棒体82を囲むように配置されている。また、筒体85は、棒体82に対する周方向への回動、および、棒体82に対する前後方向への摺動が可能に、棒体82に配置されている。
【0047】
なお、本実施の形態において、1つの棒体82に対応する2つの接続部材83は、筒体85の棒体82に対する前後方向への摺動可能な範囲を規制する規制部材として機能する。
【0048】
本実施の形態の保持部89は、
図2に示すように、これら棒体82、筒体85、および2つの接続部材83からなる構造体を、左右方向(X軸方向)に対向するように配置することで構成されている。
【0049】
このように構成された保持部89において、2つの棒体82(筒体85)を跨ぐように荷物10が載置されることで、当該荷物10が保持部89に保持される。
【0050】
また、移載装置52のスライドフォーク53が、2つの棒体82(筒体85)の間に、下方から上昇してくることで、当該荷物10がすくい上げられる。
【0051】
また、保持部89が荷物10を保持していない場合、荷物10が載置された、移載装置52のスライドフォーク53が、2つの棒体82(筒体85)の間に上方から下ろされることで、当該荷物10が、保持部89に保持される。
【0052】
このような構造の保持部89では、筒体85が、棒体82に対して回動可能かつ摺動可能であることにより、例えば地震発生時における、保持部89に保持された荷物10の荷崩れ等の発生が抑制される。
【0053】
図3Aは、実施の形態1における保持部89の正面図であり、
図3Bは、実施の形態1における保持部89の側面図である。
【0054】
図3Aおよび
図3Bに示すように、本実施の形態の筒体85は軸方向に垂直な断面が環状の部材(中空円筒状の部材)であり、筒体85の内径は棒体82の外径よりも大きい。つまり、筒体85は、棒体82を軸とする回動が可能である。
【0055】
具体的には、棒体82は、例えば鉄の円柱状の棒材の表面に、焼付塗装によって強固でかつ表面粗さの小さな塗膜を形成することで作製される。
【0056】
なお、棒体82は、中実であっても中空であってもよい。また、棒体82は、角柱状であってもよい。つまり、棒体82は、中空円柱状(円筒状)または、中空角柱状(角筒状)であってもよい。
【0057】
さらに、棒体82は、複数の部材の組み合わせによって構成されていてもよい。例えば、円筒部材(例えば丸パイプ)に角柱状の棒材を挿入することで、本実施の形態の棒体82と同じく外形が丸棒状の棒体82を得ることができる。
【0058】
このように各種の態様で実現される棒体82を、例えばステンレス鋼の管材を所定の長さに切断することで得られた筒体85に挿入する。
【0059】
また、このようにして筒体85が装着された棒体82と、前後方向(Y軸方向)に並ぶ2本の支柱81とを、2つの接続部材83で接続する。なお、接続部材83の両端と、棒体82および支柱81とは例えば溶接により接合される。
【0060】
このようにして組み立てられた保持部89において、筒体85の軸方向(Y軸方向)の長さは、2つの接続部材83の間隔よりも短い。
【0061】
つまり、筒体85は、棒体82に対して移動(摺動)する余裕を持った状態で棒体82に支持されている。すなわち、
図3Bに示すように、筒体85は、棒体82に対する前後方向(Y軸方向)への摺動が可能に配置される。また、筒体85の摺動可能な範囲は、2つの接続部材83によって規制される。
【0062】
具体的には、筒体85が、接続部材83の方向に移動した場合、筒体85の、当該接続部材83側の端縁が当該接続部材83に当接することで、筒体85の当該方向への移動が制限される。
【0063】
このような構造の保持部89に、例えば、パレット10bと、パレット10bに積載された複数の箱体(箱体群10a)とで構成される荷物10が載置され、かつ、ラック80が例えば地震により大きくまたは激しく揺れた場合を想定する。
【0064】
この場合、本実施の形態のラック80では、当該荷物10を直接的に支持する筒体85が回動しかつ回動軸の方向に移動することで、当該荷物10をラック80に対して相対的に移動させる。これにより、当該荷物10における荷崩れ(箱体群10aの崩落など)の発生が抑制される。
【0065】
すなわち、保持部89が有する免震機能により、地震等による揺れの発生時における、保持部89に載置された荷物10(保持部89が保持する荷物10)の安定的な保持が図られる。
【0066】
このことを、
図4および
図5を用いて説明する。
【0067】
図4は、実施の形態1のラック80が揺れた場合における保持部89の状態の一例を示す正面図である。
【0068】
図5は、実施の形態1のラック80が揺れた場合における保持部89の状態の一例を示す側面図である。
【0069】
例えば
図4の(a)に示すように、荷物10が、左右の支柱81のほぼ中央に位置している場合に、地震等に起因して、ラック80が全体的に揺れた場合を想定する。
【0070】
この揺れにおいて、
図4の(b)に示すように、ラック80が左に移動した場合、荷物10の慣性および、荷物10(パレット10b)と筒体85との摩擦力により、筒体85は棒体82を中心に回動する。
【0071】
具体的には、荷物10を下方から支持する2つの筒体85のそれぞれは、右周りに回動し、これにより、少なくとも荷物10の左への移動距離は、当該保持部89の左への移動距離よりも短くなる。言い換えると、荷物10の左への加速度は、当該保持部89の左への加速度よりも小さくなる。
【0072】
また、
図4の(c)に示すように、ラック80が右に移動した場合も同様に、荷物10の慣性および、荷物10(パレット10b)と筒体85との摩擦力により、筒体85は回動する。
【0073】
具体的には、当該2つの筒体85のそれぞれは、左周りに回動し、これにより、少なくとも、荷物10の右への移動距離は当該保持部89の右への移動距離よりも短くなる。言い換えると、荷物10の右への加速度は、当該保持部89の右への加速度よりも小さくなる。
【0074】
以上から、ラック80が揺れた場合に、その揺れにおける左右方向の成分によって荷物10に与えられる衝撃は、棒体82に筒体85が装着されていないと仮定した場合よりも小さくなることがわかる。
【0075】
また、例えば
図5の(a)に示すように、荷物10が、前後の支柱81のほぼ中央に位置している場合に、地震等に起因して、ラック80が全体的に揺れた場合を想定する。
【0076】
この揺れにおいて、
図5の(b)に示すように、ラック80が前方(Y軸負の方向)に移動した場合、荷物10の慣性および、荷物10(パレット10b)と筒体85との摩擦力により、筒体85は棒体82に対して摺動する。
【0077】
具体的には、荷物10を下方から支持する2つの筒体85のそれぞれは、当該筒体85を支持する棒体82に対して相対的に後方(Y軸正の方向)に摺動し、これにより、少なくとも荷物10の前方への移動距離は当該保持部89の前方への移動距離よりも短くなる。言い換えると、荷物10の前方への加速度は、当該保持部89の前方への加速度よりも小さくなる。
【0078】
また、
図5の(c)に示すように、ラック80が後方に移動した場合も同様に、荷物10の慣性および、荷物10のパレット10bと筒体85との摩擦力により、筒体85は棒体82に対して摺動する。
【0079】
具体的には、当該2つの筒体85のそれぞれは、当該筒体85を支持する棒体82に対して相対的に前方に移動し、これにより、少なくとも、荷物10の後方への移動距離は当該保持部89の後方への移動距離よりも短くなる。言い換えると、荷物10の後方への加速度は、当該保持部89の後方への加速度よりも小さくなる。
【0080】
以上から、ラック80が揺れた場合に、その揺れにおける前後方向の成分によって荷物10に与えられる衝撃は、棒体82に筒体85が装着されていないと仮定した場合よりも小さくなることがわかる。
【0081】
このように、本実施の形態におけるラック80では、前後方向に並んで立設された2本の支柱81の側方に、前後方向に長尺状の棒体82が配置され、棒体82に、回動可能かつ摺動可能に筒体85が配置される。
【0082】
このような構造を採用するラック80が地震等によって揺れた場合、筒体85に載置される荷物10に与えられる衝撃の少なくとも一部は、筒体85が棒体82に対して回動しかつ摺動することで吸収される。
【0083】
すなわち、本実施の形態におけるラック80は、ラック80に揺れが生じた場合であっても、荷物10を安全に保持することができる。
【0084】
また、荷物10を下方から支持するための棒体82に、筒体85を装着することにより、荷物10に対する免震機構が実現される。すなわち、荷物10の収容のための空間をほとんど消費することなく、ラック80に、ラック80が揺れた場合における荷物10の安全な保持のための機構を備えさせることができる。
【0085】
また、棒体82と前後2本の支柱81のそれぞれとを接続する接続部材83によって、筒体85の前後方向の摺動範囲を規制することができる。つまり、簡素な構造により、筒体85が前後方向に過剰に移動することを防止することができる。
【0086】
なお、本実施の形態では、筒体85は、中空円筒状であり、棒体82と2本の支柱81とを接続する前に、棒体82に取り付けられるとした。つまり、筒体85は、棒体82を周方向に完全に覆う形状であるとした。
【0087】
しかし、筒体85は、棒体82を周方向に完全に覆わなくてもよく、筒体85は、棒体82の周方向に棒体82を囲むように配置されていればよい。
【0088】
例えば、筒体85は、筒体85の軸方向に垂直な断面が、棒体82を半周より多く覆う弧を形成していればよい。つまり、棒体82を半周より多く覆うように、筒体85が棒体82に取り付けられていれば、ラック80の揺れを吸収する程度に、筒体85が棒体82を軸として回動することは可能である。
【0089】
また、棒体82を周方向に完全には覆わない筒体を、棒体82に後付けで(例えば、棒体82が2本の支柱81と接続された後に)取り付けることも可能である。
【0090】
図6は、棒体82に後付けで取り付け可能な筒体86の概要を示す斜視図である。
【0091】
図7は、
図6に示す筒体86の断面形状を示す断面図である。
【0092】
例えば、
図6に示すような、軸方向の全長において一部を欠いた中空円筒状の筒体86であれば、前後2本の支柱81に、2つの接続部材83で接続された状態の棒体82に取り付けることが可能である。
【0093】
つまり、筒体86に設けられた軸方向のスリット86aを広げた状態で、棒体82を覆うように筒体86を棒体82に取り付け、必要に応じて、筒体86の形状を、筒体86の断面形状が全体として丸くなるように整える。
【0094】
なお、この状態で、スリット86aをまたぐように例えばテープを貼ることで、筒体86のスリット86aが開かないようしてもよい。また、このような形状の筒体86は、例えばステンレスの板材に曲げ加工を行うことで作製される。
【0095】
このように筒体86を棒体82に取り付けることで、
図7に示すように、筒体86の軸方向(Y軸方向)に垂直な断面は、棒体82の径よりも少し大きく、かつ、一部を欠いた環状になる。
【0096】
このようにして棒体82に取り付けられた筒体86は、棒体82の周方向に棒体82を囲み、棒体82に対する周方向への回動、および、棒体82に対する前後方向への摺動が可能である。
【0097】
また、筒体86は、上記の筒体85と同じく、前後方向の摺動可能な範囲が、筒体85の前後の接続部材83によって規制される。具体的には、筒体86の端縁が接続部材83に当接することで筒体86の移動が制限される。
【0098】
つまり、棒体82に後付けされた筒体86によれば、上記の筒体85と同じく、ラック80が地震等により揺れた場合における、保持部89に載置された荷物10(保持部89が保持する荷物10)の安定的な保持が図られる。
【0099】
なお、上述のような免震機能を有する保持部89は、棒体82、筒体85、および2つの接続部材83からなる構造体を、左右方向(X軸方向)に対向するように配置することで構成されているとした。
【0100】
しかし、保持部89は、棒体82、筒体85、および2つの接続部材83からなる構造体を1つのみ備えていてもよい。例えば、ラック80において、当該構造体の左右方向(X軸方向)に対向する位置に、当該構造体とともに荷物10を支持する部材が配置されている場合を想定する。
【0101】
この想定下において、ラック80が地震等により揺れた場合、荷物10を支持する1つの筒体85が回動および回動軸の方向への移動(棒体82に対する摺動)をすることで、当該荷物10への衝撃を軽減することは可能である。
【0102】
また、筒体85および筒体86のそれぞれは、複数の環状部材が軸方向に並べられることで構成されていてもよい。言い換えると、1本の棒体82に、複数の筒体85または筒体86が、棒体82の長手方向に並んで配置されてもよい。
【0103】
(実施の形態2)
実施の形態2として、例えば角柱状の棒体に後付けが可能な免震用具について説明する。なお、ラック80、および、ラック80を備える自動倉庫100の全体的な構成は実施の形態1と同じであるためこれらの説明は省略し、実施の形態2における免震用具の特徴を中心に以下に説明する。
【0104】
図8は、実施の形態2における免震用具180の構成概要を示す斜視図である。
【0105】
図9は、実施の形態2における免震用具180の構成概要を示す断面図である。
【0106】
なお、
図9は、免震用具180の長尺方向(Y軸方向)に垂直な断面を表している。
【0107】
免震用具180は、ラック80が備える保持部89が有する、角柱状の棒体82aに後付けで(例えば、棒体82aが2本の支柱81と接続された後に)取り付けが可能な部品群である。
【0108】
本実施の形態では、免震用具180は、
図8および
図9に示すように、棒体82aに取り付けられる支持部材181と、支持部材181に取り付けられる筒体182とを備える。
【0109】
支持部材181は、少なくとも一部の外面が曲面を形成する部材であり、本実施の形態では、
図8および
図9に示すように、角柱状の棒体82aに装着される。
【0110】
また、本実施の形態では、支持部材181は全体として半円筒の形状を有しており、例えば、アルミまたはステンレスなどの金属を押出成形することで作製される。
【0111】
なお、支持部材181は棒体82aへの取り付け後に、溶接またはボルトによる締結等により棒体82aに固定されてもよい。
【0112】
筒体182は、支持部材181の曲面に内周面が当接した状態で支持部材181によって支持される。また、筒体182は、棒体82aの周方向に棒体82aを囲むように配置される。なお、このような形状の筒体182は、例えばステンレスの板材に曲げ加工を行うことで作製される。
【0113】
また、筒体182は、上述の実施の形態1における筒体86(
図6および
図7参照)と同様に、軸方向の全長において一部を欠いた中空円筒状である。具体的には、筒体182は、スリット182aを有し、スリット182aを広げた状態で、棒体82aに取り付けられた支持部材181を覆うように支持部材181に取り付けられる。
【0114】
また、その後に、必要に応じて、筒体182の断面形状が全体として丸くなるように筒体182の形状が整えられる。なお、この状態で、スリット182aをまたぐように例えばテープを貼ることで、筒体182のスリット182aが開かないようにしてもよい。
【0115】
このように、免震用具180を棒体82aに取り付けることで、
図9に示すように、筒体86の軸方向(Y軸方向)に垂直な断面は、棒体82aに取り付けられた支持部材181の曲面を一部とする円の径よりも少し大きく、かつ、一部を欠いた環状になる。
【0116】
このようにして、棒体82aに、支持部材181を介して取り付けられた筒体182は、棒体82aの周方向に棒体82を囲み、支持部材181に対する周方向への回動、および、支持部材181に対する前後方向への摺動が可能である。
【0117】
すなわち、棒体82aの周方向への回動が可能であり、かつ、棒体82aに対する相対的な前後方向の移動が可能である。
【0118】
また、筒体182は、実施の形態1における筒体85および86と同じく、前後方向の摺動可能な範囲が、筒体182の前後の接続部材83によって規制される。具体的には、筒体182の端縁が接続部材83に当接することで筒体182の移動が制限される。
【0119】
従って、ラック80が地震等により揺れた場合、実施の形態1における筒体85および86と同様に、筒体182が回動および移動することで、免震用具180を備える保持部89に載置された荷物10(保持部89が保持する荷物10)の安定的な保持が図られる。
【0120】
なお、本実施の形態では、支持部材181は、角柱状である棒体82aに取り付けるための構造を有しているが、支持部材181の取り付け対象の棒体の形状は角柱状に限られない。
【0121】
つまり、支持部材181の取り付け対象の棒体の、軸方向に垂直な断面は、矩形以外の多角形であってもよく、曲線と直線とが組み合わされた形状であってもよい。要するに、支持部材181は、取り付け対象の棒体の外形に合わせた取り付けのための構造を有すればよい。
【0122】
また、例えば、丸棒である棒体82の外周面が粗い場合において、スムーズに筒体182を回動させるために、棒体82に、筒体182を支持する支持部材181が取り付けられてもよい。
【0123】
また、この場合、例えば、棒体82に、筒体182が滑り易いポリアミド等の樹脂で形成された板材を巻きつけることで、支持部材181が実現されてもよい。
【0124】
つまり、免震用具における支持部材の形状、サイズ、および素材は、本実施の形態における形状、サイズ、および素材に限定されない。免震用具における支持部材は、棒体に取り付け可能であって、かつ、筒体の回動および摺動が可能な形状および素材であればよい。
【0125】
(実施の形態1および2についての補足)
本発明のラックおよび免震用具は、上記の実施の形態1および2において説明された内容に限定されない。そこで、上記の実施の形態1および2についての各種の補足(変形例等)を以下に説明する。
【0126】
例えば、実施の形態1における筒体85の外周面に、筒体85に荷物10が載置された場合に、筒体85と荷物10との間の滑りを抑制する滑り止め部を備えてもよい。
【0127】
図10は、外周面に滑り止め部90を備える筒体85を含む保持部89の概要を示す斜視図である。
【0128】
図11は、
図10に示す保持部89の側面図である。
【0129】
例えば、
図10および
図11に示すように、筒体85の外周面に滑り止め部90を配置する。なお、本例では、筒体85に2箇所の滑り止め部90が配置されている。
【0130】
滑り止め部90は、例えば、表面の粗い樹脂テープを筒体85に巻きつけることで実現される。また、例えば、金属製の筒体85の外周面の少なくとも一部を粗く仕上げることで滑り止め部90を実現することもできる。
【0131】
このように、筒体85の外周面に滑り止め部90を配置することで、例えば、
図11に示すように、筒体85が、摺動可能範囲の端まで摺動して停止した場合における、荷物10の筒体85からの滑落が抑制される。
【0132】
つまり、地震等によってラック80が大きく揺れ、その結果、筒体85が棒体82に対して摺動し、規制部材として機能する接続部材83に当接した場合を想定する。この場合、筒体85と荷物10とが滑り易ければ、筒体85の移動が停止することにより、荷物10が筒体85から滑り落ちる可能性がある。
【0133】
しかし、
図10および
図11に示すように、筒体85に滑り止め部90を配置することで、筒体85と荷物10との間の摩擦係数を向上させることができる。その結果、地震等によってラック80が揺れた場合における、荷物10の前後方向への落下の発生が抑制される。
【0134】
また、上記実施の形態1および2では、接続部材83が筒体85(86、182)の前後方向への摺動可能な範囲を規制する規制部材として機能するとした。
【0135】
しかし、接続部材83とは別部材として、規制部材がラック80に設けられてもよい。
【0136】
図12は、棒体82に配置された規制部材93の概要を示す側面図である。
【0137】
例えば、
図12に示すように、棒体82に、棒体82の径方向に突出する規制部材93を配置する。具体的には、棒体82において、2つの規制部材93の間隔が、筒体85の軸方向の長さより長くなるように、筒体85の前後のそれぞれに規制部材93を配置する。
【0138】
これにより、筒体85は、棒体82に対して摺動可能であり、かつ、摺動可能な範囲が、2つの規制部材93により、所定の範囲に規制される。
【0139】
なお、
図12では、規制部材93は棒体82から下方に突出状に設けられているが、規制部材93の突出方向はこれに限られない。規制部材93は、例えば棒体82から側方に突出状に設けられてもよい。つまり、筒体85が規制部材93まで移動してきた場合に、筒体85の端縁が規制部材93に当接するように規制部材93が配置されていればよい。
【0140】
また、規制部材93と接続部材83との組により、筒体85の摺動可能な範囲を規制してもよい。例えば、
図12において、筒体85の後方(Y軸正の方向)の規制部材93をなくし、筒体85の後方への摺動可能な範囲を、筒体85の後方の接続部材83によって規制してもよい。
【0141】
また、規制部材93は、棒体82に配置されている必要はない。例えば、支柱81から筒体85の方向に突出し、筒体85の端縁が当接するように設けられた部材によって規制部材93が実現されてもよい。
【0142】
また、筒体85が棒体82に対して摺動した場合に、筒体85に物体を当接させることで筒体85の摺動可能な範囲を規制するのではなく、他の手法によって筒体85の摺動可能な範囲を規制してもよい。
【0143】
例えば、ワイヤまたはチェーンによって、筒体85と、前後いずれかの支柱81とを接続することで、筒体85の摺動可能な範囲を規制してもよい。つまり、この場合、ラック80が地震等によって揺れた場合における荷物10への衝撃を軽減させる程度の筒体85の回動および摺動が可能なように、ワイヤまたはチェーンの長さに余裕を持たせればよい。
【0144】
また、荷物10に当接することで、当該荷物10の左右方向の少なくとも一方への移動可能範囲を所定の範囲内に規制するストッパが、ラック80に備えられてもよい。
【0145】
図13は、荷物10の左右方向への移動可能範囲を所定の範囲内に規制するストッパ95を備える保持部89の正面図である。
【0146】
例えば
図13の(a)に示すように、接続部材83に上方に突出状にストッパ95を配置する。なお、
図13の(a)では、荷物10が保持部89に載置された場合に、荷物10の左右に相当する位置のそれぞれにストッパ95が配置されている。
【0147】
また、
図13の(a)に示される手前側の左右一対の接続部材83だけでなく、当該一対の接続部材83の奥に位置する一対の接続部材83のそれぞれにもストッパ95が配置されてもよい。
【0148】
このように、ラック80がストッパ95を備えることで、筒体85の回動によってラック80に対して相対的に左右に移動する荷物10の、例えば左方向または右方向への落下を抑制することができる。
【0149】
つまり、簡単に言うと、筒体85が回動することで荷物10が左方向または右方向に移動しすぎないように、荷物10の左右の少なくとも一方に、荷物10に当接することで荷物10を停止させるストッパ95が配置されてもよい。
【0150】
すなわち、ストッパ95は、ラック80に収納すべき荷物10の最大サイズ等から予め決定される荷物10の載置領域から左右方向に間隔をあけて配置される。これにより、荷物10の左右方向の移動が許容され、かつ、その移動距離が制限される。
【0151】
なお、ストッパ95は、例えば
図13の(b)に示すように、接続部材83に接続された本体部95aと、本体部95aに配置され、荷物10と当接する当接部95bとを有してもよい。
【0152】
この場合、当接部95bの素材として、例えば、荷物10と当接した場合の衝撃を吸収または低減する粘弾性体または弾性体を採用してもよい。これにより、例えば、地震等の大きな揺れに起因して、荷物10が高速でストッパ95に当接した場合であっても、荷物10を安全に停止させることが可能となる。
【0153】
また、筒体85、86、182のそれぞれは、径方向に板材が重ねられた部分を有していてもよい。例えば、筒体85が、ステンレス等の金属の薄板が複数回巻かれること得られる積層ロール状の部材として実現されてもよい。
【0154】
以上、本発明のラックおよび免震用具について、実施の形態1、2およびこれらの補足(実施形態等)に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記の実施形態等に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施形態等に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。