(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186823
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】詰替え容器
(51)【国際特許分類】
B65D 33/00 20060101AFI20170821BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20170821BHJP
B65D 33/38 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
B65D33/00 C
B65D30/02
B65D33/38
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-83702(P2013-83702)
(22)【出願日】2013年4月12日
(65)【公開番号】特開2014-205503(P2014-205503A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福田 彰男
(72)【発明者】
【氏名】大塚 浩之
(72)【発明者】
【氏名】小出 洋子
(72)【発明者】
【氏名】今井 健一郎
【審査官】
長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−255947(JP,A)
【文献】
特開2002−249148(JP,A)
【文献】
特開2006−036297(JP,A)
【文献】
実開平03−090935(JP,U)
【文献】
特開2012−250520(JP,A)
【文献】
特開2004−070077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/00
B65D 30/02
B65D 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を内側にして折り曲げて、折り曲げ部と本体表面積層体と本体裏面積層体を形成し、周縁を熱シールしてなる詰替え容器であって、
前記折り曲げ部は、前記本体表面積層体および本体裏面積層体および注出ノズルシール部と共に、内容物を注ぎ出すための注出ノズルを形成しており、
注出ノズルは、その先端が熱シールされて注出ノズル先端シール部を形成しており、前記注出ノズルシール部に設けられた開封用切目線によって分離形成された開封つまみを持って開封予定線に沿って切り離すことにより注出口を形成するものであり、
前記開封予定線は、折り曲げ部の稜線に対して傾斜しており、開封予定線を含む注出ノズル部には、開封予定線に並行する複数のハーフカット線が施されており、該注出ノズル先端シール部から該複数のハーフカット線が折り曲げ部の稜線と交わる部分を含む折り曲
げ部に、潤滑性のニス層が設けられ、かつ、複数のハーフカット線の抽出ノズル下方側に潤滑性のニス層が設けられていないことを特徴とする詰替え容器。
【請求項2】
基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を外側にして折り曲げて底テープとし、前記本体表面積層体と本体裏面積層体の間に挿入して周縁をシールしてなるスタンディングパウチ形状を有することを特徴とする請求項1に記載の詰替え容器。
【請求項3】
前記折り曲げ部の一部を切り開き、内容物充填用開口部としたことを特徴とする請求項1または2に記載の詰替え容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗剤、柔軟剤、シャンプー、リンスなどのトイレタリー用品や、食用油、インスタントコーヒーなどの食品等を収納する詰め替え容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体洗剤や柔軟仕上げ剤などのトイレタリー用品や、食用油、インスタントコーヒーなどの食品は、それぞれ使いやすいような形状の専用容器に収納されている。専用容器は、構造もしっかりしており、従って高価であることから、内容物が無くなった段階で、繰り返し使用することができるように、内容物のみを詰替える詰替え容器入りの製品が別途販売されていることが多い。
【0003】
例えば液体洗剤の容器は、洗剤を使用する時にその都度適切な量を計量して取り出す必要があるため、軽量カップに注ぎやすいように、注出口にノズルを備えた剛性のあるプラスチック容器が、繰り返し使用容器として用いられている。この容器に対して、内容物を補充するための詰め替え用の容器としては、軟包装フィルムからなる柔軟な容器に、注出口を形成した容器や、口栓を取付けた容器が一般的に使用されている。
【0004】
繰り返し使用する剛性の容器は、もっぱら注出し易いように設計されているため、繰り返し使用する容器に対して、詰替え容器から内容物を補充する詰替え操作の利便性を考慮したものでは、必ずしもなかった。
【0005】
また一方、詰替え容器も、もっぱら安価に製造することに重点を置くあまり、必ずしも詰替え操作の利便性を考慮したものではなかった。
【0006】
繰り返し使用する容器に設けられたノズルを利用して、詰替え容器の開封を行うことができ、さらに詰替え中に、詰替え容器が自立するために、手で保持しなくてもよい詰替え容器が提案されている。この手放し詰め替え容器は、繰り返し使用する容器の開口部に着脱可能かつ脱落不能に連結される結合部材と、詰め替え容器本体を密封する容器密封部材とを備えた詰め替え容器である(特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1に記載された詰め替え容器は、繰り返し使用する容器と詰め替え容器を結合するために、口栓部に、結合部材と容器密封部材という2つの部材を用いているため、容器のコストが高いものとならざるを得ない。また詰め替え容器を、繰り返し使用する容器の開口部にねじ込んで使用する構造であるため、両者の結合は確実であるが、反面、操作が面倒であるばかりでなく、口栓のコスト面においても不利であるという欠点があった。
【0008】
コストの面からは、
図5に示したような表裏2枚の包装フィルムの周縁をシールしてなる包装袋が有利である。この詰替え用包装袋は、容器の口径に見合った任意の巾の注出口を設けることができるが、表裏2枚のフィルムの端縁部をシールして注出口部を形成した場合、内容物を注出する際、開口部がシールされた両端に引っ張られ、表裏のフィルムが疑似密着状態となり、注出口が閉塞してしまうという問題や、注出口が横方向に折れ曲がり易く、詰替え操作中に注出口が、繰り返し使用する容器から外れてしまうといった問題がある。
【0009】
この注出口が閉塞したり、折れ曲がったりする問題を解決するために、注出口部にフィルムとは別部材のパーツを挿入したり(特許文献2参照)、注出口部付近のフィルムを膨らませて立体形状とすることで、開口面積を確保したりするものが多く提案されている(
特許文献3参照)。
【0010】
しかしこれらの包装袋は、別部材を取り付ける工程や、フィルムに深いエンボス加工を施す工程などが増加するという問題の他、充填時に包装袋の供給部において包装袋を整然と積み上げて揃えることができないという問題や、表裏2枚のフィルムをシールしてなる注出口は、両端にシール部が存在するため、その分だけ開口巾が狭くなり、十分な開口面積を確保することができないという基本的な問題があった。十分な開口面積が確保できないと、詰替え時の注出に要する時間は長くなってしまう。
【0011】
この問題を解決するために、包装袋を構成するフィルムを折り曲げて、注出口の片側を形成し、注出口のシール部を片側だけとする包装袋が提案されている(特許文献4、5参照)。
【0012】
特許文献4、5に示されたような、注出口の片側が折り曲げられたフィルムで構成されている包装袋の場合、注出口が閉塞する問題や、注出口部の開口面積が不足するという問題は解消されるが、特許文献5に示された軟質包装袋の注出口に見られるように、注出時の操作のし易さを考慮して注出口を斜めに設定した場合、開封操作性が不安定になるという問題が生じることが判明した。
【0013】
図6(1)は、特許文献5に開示された軟質包装袋を示した図であり、
図6(2)は、注出口部分の拡大図である。本出願人の出願になるこの軟質包装袋は、注出口部分に、切れ目線aとV字状の切欠きbと切れ目線aを覆うように設けられた網点状の傷加工cを備えているにも拘わらず、V字状の切欠きbの位置が多少ずれたような場合には、包装袋の裂け目が切れ目線aから外れてしまい、本来の切れ目線aの位置で開封できないという問題が生じる可能性があることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2004-99082号公報
【特許文献2】特開平5-132069号公報
【特許文献3】特許第4110940号
【特許文献4】特開平11-236053号公報
【特許文献5】特開2008-18991号公報
【特許文献6】特開2011-255947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本出願人の出願になる特許文献6に記載された詰替え容器は、この問題を解決するためになされたものであり、折り曲げ部に対して傾斜した開封予定線に沿って、複数の傷線からなる易カット加工を施し、さらに開封用切目線の先端を開封予定線と平行な方向に向けて折り曲げたことを特徴とする。
【0016】
特許文献6に記載された詰替え容器によれば、開封時に包装袋の裂け目が開封予定線から外れてしまうという問題は改善されるが、全く別の問題として、折り曲げ部の稜線上に、複数の傷線が配置された結果、この部分の積層体の強度が弱くなり、梱包時に段ボールケースとの摩擦によって傷がついたり、著しい場合にはピンホールが発生するといった問題が発生することが判明した。
【0017】
本発明の解決しようとする課題は、口栓等の別部材を使用することなく、大面積の注出口が形成できる折り曲げ部を有する詰替え容器において、注出口の開封操作が確実であり
、かつ、折り曲げ部の稜線部分の脆弱性が強化された詰替え容器を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を内側にして折り曲げて、折り曲げ部と本体表面積層体と本体裏面積層体を形成し、周縁を熱シールしてなる詰替え容器であって、
前記折り曲げ部は、前記本体表面積層体および本体裏面積層体および注出ノズルシール部と共に、内容物を注ぎ出すための注出ノズルを形成しており、
注出ノズルは、その先端が熱シールされて注出ノズル先端シール部を形成しており、前記注出ノズルシール部に設けられた開封用切目線によって分離形成された開封つまみを持って開封予定線に沿って切り離すことにより注出口を形成するものであり、
前記開封予定線は、折り曲げ部の稜線に対して傾斜しており、開封予定線を含む注出ノズル部には、開封予定線に並行する複数のハーフカット線が施されており、
該注出ノズル先端シール部から該複数のハーフカット線が折り曲げ部の稜線と交わる部分を含む折り曲げ部に、潤滑性のニス層が設けられ
、かつ、複数のハーフカット線の抽出ノズル下方側に潤滑性のニス層が設けられていないことを特徴とする詰替え容器である。
【0019】
本発明に係る詰替え容器は、複数のハーフカット線が施された結果、脆弱となる折り曲げ部の稜線部分に潤滑性のニス層を設けたので、輸送途中などにおいて、この部分が擦れて障害を発生することがなくなる。
【0020】
また、請求項2に記載の発明は、基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を外側にして折り曲げて底テープとし、前記本体表面積層体と本体裏面積層体の間に挿入して周縁をシールしてなるスタンディングパウチ形状を有することを特徴とする請求項1に記載の詰替え容器である。
【0021】
また、請求項3に記載の発明は、前記折り曲げ部の一部を切り開き、内容物充填用開口部としたことを特徴とする請求項1または2に記載の詰替え容器である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る詰替え容器は、基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を内側にして折り曲げて、折り曲げ部と本体表面積層体と本体裏面積層体を形成し、周縁をシールしてなる詰替え容器であるから、プラスチックボトルや、プラスチック製の口栓を使用した容器などと異なり、軟包装用積層体のみから製造することができるため、安価に製造することができる。
【0023】
また、本発明に係る詰替え容器は、1枚の積層体を、シーラント層を内側にして折り曲げて、折り曲げ部を形成し、該折り曲げ部は、前記本体表面積層体および本体裏面積層体および注出ノズルシール部と共に、内容物を注ぎ出すための注出ノズルを形成したので、大面積の注出口を安定して確保することが可能となり、その結果円滑かつ迅速な詰め替え操作が可能となった。また、注出口の形成も容易かつ確実にできる。
【0024】
また、本発明に係る詰替え容器は、注出口を形成する開封予定線が、前記折り曲げ部に対して傾斜しているため、容器を傾けて内容液を注出する際の操作性が良い。
【0025】
また、開封予定線上には、開封予定線に平行な複数のハーフカット線が施されており、開封用切目線の先端部が、開封予定線と平行な方向に向かって折れ曲がっているため、開封つまみを引き上げると、積層体の裂け目が自然に開封予定線に沿って進み、所定の位置に注出口を形成することが容易にしかも確実に可能となった。
【0026】
従来は、折り曲げ部の稜線に、表裏面の積層体に形成されたハーフカット線が集中する
ため、この部分が擦れやすく、脆弱であったが、この部分に潤滑性のニス層を設けたことにより、脆弱性が改善され、段ボールケースに収納して輸送したような場合にも、擦れによる傷付きやピンホールの発生が無くなった。
【0027】
請求項2に記載の発明のように、基材とシーラント層を少なくとも有する1枚の積層体を、シーラント層を外側にして折り曲げて底テープとし、本体表面積層体と本体裏面積層体の間に挿入して周縁をシールしてなるスタンディングパウチ形状とした場合には、自立性を有する大容量の詰替え容器とすることが可能となり、本発明の特徴を十分に生かせるものとなる。
【0028】
また、請求項3に記載の発明のように、折り曲げ部の一部を切り開き、内容物充填用開口部とした場合には、他のシール部分を充填用開口部とすることができないような形状の容器であっても、安定した充填操作が可能となる。
【0029】
本発明に係る詰替え容器は、ノズルキャップを有する繰り返し使用する容器のノズルを前記注出ノズルに挿入可能とした場合、水平に保持した注出ノズルに前記繰り返し使用する容器のノズルを挿入した後に、注出ノズルが垂直になるように容器を傾けることにより、迅速な詰め替えを可能とした詰替え容器となり、本発明の効果が最大限に発揮される。すなわち、本発明に係る詰替え容器は、1枚の積層体を折り曲げた折り曲げ部の存在によって、注出口が自然に開くので、目的とする容器のノズルを挿入し易く、またノズルに合わせて注出口の寸法を設計することにより、ノズルにぴったり合った注出口とすることができる。このため、水平に保持した注出ノズルに繰り返し使用する容器のノズルを挿入した後に、注出ノズルが垂直になるように傾けることにより、迅速な詰替え操作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本発明に係る詰替え容器の一実施態様を示した模式図である。
【
図2】
図2は、
図1のX−X’断面を示した断面模式図であり、詰替え容器を構成する積層体の層構成を示す。
【
図3】
図3は、
図1の注出ノズル部分の詳細を示した拡大説明図である。
【
図4】
図4は、積層体を折り曲げる前の状態を示した平面説明図である。
【
図5】
図5は、従来の詰替え容器の一例を示した模式図である。
【
図6】
図6は、特許文献5に記載された軟質包装袋とその注出口を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下本発明に係る詰替え容器について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る詰替え容器の一実施態様を示した模式図である。
図2は、
図1のX−X’断面を示した断面模式図であり、詰替え容器を構成する積層体の層構成を示す。
図3は、
図1の注出ノズル部分の詳細を示した拡大説明図である。また、
図4は、1枚の積層体を折り曲げる前の状態を示した平面説明図である。
【0032】
本発明に係る詰替え容器(1)は、基材(11)とシーラント層(12)を少なくとも有する積層体(10)からなる詰替え容器であって、
図1に示したように、1枚の積層体を、シーラント層を内側にして折り曲げて、折り曲げ部(6)と本体表面積層体(2)と
本体裏面積層体(3)を形成し、周縁をシールしてなる詰替え容器である。
【0033】
折り曲げ部(6)は、本体表面積層体(2)および本体裏面積層体(3)および注出ノズルシール部(24)と共に、内容物を注ぎ出すための注出ノズル(32)を形成しており、注出ノズル(32)の先端は注出ノズル先端シール部(25)によってシールされており、開封予定線(36)に沿って切り離すことにより注出口(31)を形成する。
【0034】
注出ノズル先端シール部(25)の下部には、注出ノズルシール部(24)に設けられた開封用切目線(35)によって分離形成された開封つまみ(34)が形成されている。この開封つまみ(34)を持って開封予定線(36)に沿って切り離すことにより注出口(31)が形成される。
【0035】
開封予定線(36)を含む注出ノズル部には、開封予定線(36)に並行する複数のハーフカット線(33)が施されており、開封用切目線の先端部は、ハーフカット線(33)と平行な方向に向かって折れ曲がっている。
【0036】
本発明に係る詰替え容器における第一の特徴は、折り曲げ部(6)を有することである。折り曲げ部(6)は、1枚の積層体をシーラント層(12)を内側にして天部で折り曲げて形成したものであり、折り曲げ部(6)は、折り曲げ部の下部に設けた注出ノズルシール部(24)および本体表面積層体(2)、本体裏面積層体(3)と共に、注出口(31)に至る内容物の流出路を形成している。折り曲げ部(6)における積層体の戻ろうとする弾性の働きにより、流出路の断面は、常に上部が膨らんだ状態となる。このため、注出口(31)の断面積を広く確保することが可能となり、一度に大量の内容物を排出することが可能となる。
【0037】
また本発明に係る詰替え容器における第二の特徴として、注出ノズルシール部(24)に設けられた開封用切目線(35)によって分離形成された開封つまみ(34)を持って開封予定線(36)に沿って切り離すことにより注出口(31)を形成するものであり、開封予定線(36)は、折り曲げ部(6)の稜線(7)に対して傾斜しており、開封予定線を含む注出ノズル部には、開封予定線(36)に並行する複数のハーフカット線(33)が施されている。
【0038】
開封用切目線の先端部は、ハーフカット線(33)と平行な方向に向かって折れ曲がっており、開封用切目線の先端から出発した積層体の切目が、確実にハーフカット線(33)に沿って進行し、開封が確実に行われる。
【0039】
また本発明に係る詰替え容器における第三の特徴は、複数のハーフカット線(33)が折り曲げ部(6)の稜線(7)と交わる部分を含む折り曲げ部に、潤滑性のニス層(5)が設けられていることである。折り曲げ部の稜線部分には、表裏面に施されたハーフカット線(33)が集中するため、ざらざらして滑りが悪くなるが、内容物を充填する前の包装袋の段階や、内容物を充填した後の包装体となった段階で、製品が段ボールケースに収納されて、輸送される場合、振動により、この部分が擦れやすく、傷が付いたり、甚だしい場合には、ピンホールが出来たりする事があった。
【0040】
折り曲げ部(6)に潤滑性ニス層(5)を設けることにより、擦れやピンホールの発生を防止する効果がある。潤滑性ニス層(5)としては、積層体(10)の基材(11)に付着性を有する透明ニスに、潤滑剤として、ワックスやシリコーンを添加した潤滑性ニスを用いることができる。
【0041】
潤滑性ニスとしては、軟包装材料の印刷に用いるインキのワニスに、潤滑剤を添加する
ことによっても、作成することができる。このようなインキのワニスとしては、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、塩酢ビ樹脂系、ポリアミド樹脂系、ニトロセルロース樹脂系、ポリエステル樹脂系など公知のバインダー樹脂を単体または複数混合したインキのワニスが使用できる。
【0042】
潤滑性ニス層(5)は、ハーフカット線(33)が形成された後に設けるのが好ましいが、ハーフカット線(33)を形成する前に設けておくこともできる。
【0043】
なお開封つまみ(34)が、V字型等の切込によって形成されていると、注出口シール部と完全に分離しているので、ぶらぶらして不必要に引っ掛かったりする場合があるが、本発明のように切目線によって形成されている場合には、ぶらぶらしたりしないという利点がある。
【0044】
図1に示した実施態様においては、本体表面積層体(2)と本体裏面積層体(3)の間に、底テープ(4)が挿入されて、サイドシール部(22)とボトムシール部(23)において熱シールされてスタンディングパウチ形状となっている。折り曲げ部(6)の後半は、切り開かれて、内容物充填用開口部(41)となっている。
【0045】
折り曲げ部(6)と内容物充填用開口部(41)との間には、ポイントシール部(26)を設けて、充填工程において、折り曲げ部(6)が裂けたりしないようになっている。
【0046】
スタンディングパウチ形状の容器は、底テープ(4)が広がるため、大容量の容器とすることが容易に可能である。従って、本発明に係る詰替え容器における注出時間が短くて済むという特徴を十分に生かすことができる。
【0047】
開封予定線(36)は、開封位置を示す仮想的な線であるが、開封位置を明らかにするために、実際に印刷表示等を行っても良い。また、ハーフカット線(33)は、開封予定線に並行するように開封予定線を含む注出ノズル部に設けられる。ハーフカット線は、本体表面積層体(2)および本体裏面積層体(3)の外側面に連続して設けたハーフカット線であることが好ましい。このようにすることにより、開封予定線(36)の部分を手で引き裂いて注出口(31)を容易に形成することが可能となる。ハーフカット線を形成するためのレーザーの種類としては、炭酸ガスレーザーが好ましい。
【0048】
本発明に係る詰替え容器に使用する積層体としては、通常軟包装袋に使用される積層体を用いることができる。基材(11)としては、1層ないしは数層からなる紙や金属箔や合成樹脂フィルムを使用する。一例を挙げれば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリオレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等のポリエステル系樹脂、セロハン、三酢酸セルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂(EVA)、アイオノマー樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂(PS)、ポリ塩化ビニル系樹脂(PVC)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(PVDC)、ポリカーボネート樹脂(PC)、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂等の合成樹脂フィルムおよび紙、金属箔等が単体または、複合して使用される。基材(11)には、必要に応じて印刷層や接着剤層が含まれる。
【0049】
紙としては、上質紙、片アート紙、コート紙、キャストコート紙、模造紙などを用いることができる。積層体に紙を用いた場合には、深いエンボス加工により紙に割れが生じる
ことがあるので、本発明に係る詰替え容器に用いる場合は、凸エンボスおよび凹エンボスとして、筋状のエンボスを採用することにより、紙を用いた積層体を安定して使用することができる。環境配慮の点からも、紙を用いることは有効である。
【0050】
シーラント層(12)としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・αオレフィン共重合体などのエチレン系樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂などが使用される。またこれらの樹脂を複合した多層フィルムが使用されることもある。
【0051】
積層体の具体的な構成例としては、PET/印刷層/接着剤層/延伸ポリアミド樹脂フィルム(以下ONYと略す)/接着剤層/LLDPEからなる構成のフィルムや、ONY/接着剤層/LLDPE、ONY/接着剤層/ONY/接着剤層/LLDPE、紙/LDPE/アルミニウム箔/LDPE、紙/LDPEなどが挙げられる。
【0052】
図1に示した詰替え容器を製造するには、容器の高さに相当する巾のほぼ2倍の巾にスリットした積層体をシーラント層面を内側にして天部で折り曲げて対向させ、本体表面積層体(2)と本体裏面積層体(3)とし、これを連続的に供給し、この間にシーラント層面が外側になるように二つ折りにした底テープ(4)を連続的に供給し、必要なシールを行った後に、打ち抜いて容器とする。
【0053】
このように、本発明に係る詰替え容器は、特別のプラスチック製の口栓等を使用せずに、大面積の注出口を確保することが可能であり、またこの注出口の大きさは、目的とする繰り返し使用容器の口栓の形状に合わせて自由に設計することができるので、迅速な詰替え操作が可能な専用詰替え容器として極めて価値の高いものである。
以下実施例に基づいて、本発明に係る詰替え容器についてさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0054】
本体表面積層体および本体裏面積層体として以下の構成からなる積層体を使用した。
<積層体の構成>
ONY(15μm)/印刷層/接着剤層/アルミ蒸着PET(12μm)/接着剤層/LLDPE(120μm)
底テープとして以下の構成からなる積層体を使用した。
<積層体の構成>
ONY(15μm)/LLDPE(120μm)
【0055】
上記の積層体を用いて、
図1に示した形状のスタンディングパウチを作製した。充填用開口部としては、折り曲げ部の一部をカットし、充填用開口部とした。また注出ノズル先端部の注出口となるべき開封予定線を含む部分に、レーザー加工による5本の直線状のハーフカット線を設けた。また注出ノズルシール部に開封用切込線を設け、その先端は、ハーフカット線の角度と一致する方向に折り曲げた。
【0056】
ハーフカット線を設けた後に、ハーフカット線と折り曲げ部稜線の交わる部分の積層体表面に、ウレタン系/塩酢ビ系インキワニスをベースとした潤滑性ニスを塗布して、潤滑性ニス層を設けた。
【0057】
作成した包装袋を段ボールケースに収納し、輸送テストを行ったところ、折り曲げ部に欠陥が生じたサンプルは無かった。
【符号の説明】
【0058】
1・・・詰替え容器
2・・・本体表面積層体
3・・・本体裏面積層体
4・・・底テープ
6・・・折り曲げ部
7・・・折り曲げ部稜線
10・・・積層体
11・・・基材
12・・・シーラント層
21・・・トップシール部
22・・・サイドシール部
23・・・ボトムシール部
24・・・注出ノズルシール部
25・・・注出ノズル先端シール部
26・・・ポイントシール部
31・・・注出口
32・・・注出ノズル
33・・・ハーフカット線
34・・・開封つまみ
35・・・開封用切目線
36・・・開封予定線
41・・・内容物充填用開口部
a・・・切れ目線
b・・・V字切欠き
c・・・網点状の傷加工