特許第6186827号(P6186827)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186827
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】巻線型電子部品の製造方法及び圧着方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/10 20060101AFI20170821BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   H01F41/10 C
   H01F15/10 G
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-85387(P2013-85387)
(22)【出願日】2013年4月16日
(65)【公開番号】特開2014-207398(P2014-207398A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】110001449
【氏名又は名称】特許業務法人プロフィック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鵜川 芳昭
(72)【発明者】
【氏名】田村 優佳
【審査官】 堀 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−008739(JP,A)
【文献】 特開昭59−073943(JP,A)
【文献】 特開平04−237108(JP,A)
【文献】 特開平04−239105(JP,A)
【文献】 特開平1−170187(JP,A)
【文献】 実開昭63−2572(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 13/00−21/12、27/00、27/02、27/06、
27/08、27/23−27/30、27/36、27/42、
30/00−38/12、38/16、38/42−41/04、
41/08−41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線、コア、及び外部電極を有する巻線型電子部品の製造方法であって、
前記コアに前記外部電極を形成する電極形成工程と、
前記コアに前記巻線を巻き回す巻回工程と、
前記コアに巻き回された前記巻線、及び該コアに形成された前記外部電極を交流電流のジュール熱により熱圧着する接続工程と、
を備え、
前記接続工程において、前記交流電流を増幅させた後に減衰させること、
を特徴とする巻線型電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記交流電流の増幅過程における該交流電流の包絡線の形状と該交流電流の減衰過程における該交流電流の包絡線の形状とは、略対称であること、
を特徴とする請求項1に記載の巻線型電子部品の製造方法。
【請求項3】
コアに設けられた外部電極に巻線を圧着する圧着方法であって、
前記巻線、及び前記外部電極を交流電流のジュール熱により熱圧着する際に、該交流電流の電流量を増幅させた後に減衰させること、
を特徴とする圧着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線型電子部品の製造方法及び圧着方法に関し、詳しくは、巻線型電子部品における巻線及び外部電極の接続工程に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の巻線型電子部品の製造方法として、特許文献1に記載の製造法が知られている。この種の製造方法における巻線と外部電極との接続工程は、ヒーターチップを用いて、巻線の端部を加熱しながら外部電極に押し当てる、いわゆる熱圧着によって行われている。これにより、巻線の端部の絶縁皮膜が焼失し、巻線と外部電極とが溶着される。
【0003】
ところで、前記接続工程におけるヒーターチップでは、交流電流のジュール熱を用いて、熱を発生させている。ここで、ヒーターチップを通過する交流電流は、図7に示すように、ヒーターチップが十分に加熱されるまでの時間t1の間だけ増幅される。そして、時間t1の経過と略同時に、交流電流の通電が止められる。このとき、該接続工程では、交流電流が発生する磁界によって、製造途中の巻線型電子部品のコアが磁化されてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−165539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、巻線と外部電極との接続工程における巻線型電子部品のコアの磁化を抑制することができる巻線型電子部品の製造方法及び圧着方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る巻線型電子部品の製造方法は、
巻線、コア、及び外部電極を有する巻線型電子部品の製造方法であって、
前記コアに前記外部電極を形成する電極形成工程と、
前記コアに前記巻線を巻き回す巻回工程と、
前記コアに巻き回された前記巻線、及び該コアに形成された前記外部電極を交流電流のジュール熱により熱圧着する接続工程と、
を備え、
前記接続工程において、前記交流電流を増幅させた後に減衰させること、
を特徴とする。
【0007】
本発明に係る圧着方法は、
コアに設けられた外部電極に巻線を圧着する圧着方法であって、
前記巻線、及び前記外部電極を交流電流のジュール熱により熱圧着する際に、該交流電流の電流量を増幅させた後に減衰させること、
を特徴とする。
【0008】
本発明では、巻線と外部電極とを熱圧着する接続工程において、交流電流を増幅させた後に減衰させている。これによって、交流電流の増幅過程において磁化された巻線型電子部品のコアが、減衰過程において消磁される。従って、該接続工程における巻線型電子部品のコアの磁化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、巻線と外部電極との接続工程における、巻線型電子部品のコアの磁化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施例に係る巻線型電子部品の外観図である。
図2】一実施例である製造方法における接続工程の概略図である。
図3】一実施例に係るヒーターチップに加えられる交流電流のグラフである。
図4】一実施例に係るヒーターチップの温度変化を表すグラフである。
図5】交流電流の増幅過程におけるコアの磁気ヒステリシス曲線である。
図6】交流電流の減衰過程におけるコアの磁気ヒステリシス曲線である。
図7】従来技術に係るヒーターチップに加えられる交流電流のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(巻線型電子部品の構成、図1参照)
以下に、実施例に係る巻線型電子部品1について図面を参照しながら説明する。図1において、巻芯部14の中心軸が延在している方向をx軸方向と定義する。また、x軸方向から平面視したとき、鍔部16の長辺に沿った方向をy軸方向と定義し、鍔部16の短辺に沿った方向をz軸方向と定義する。なお、x軸、y軸及びz軸は互いに直交している。
【0012】
巻線型電子部品1は、図1に示すように、コア12、巻線20及び外部電極22,24を備えている。
【0013】
コア12は、例えばフェライト等の絶縁材料により構成され、巻芯部14及び鍔部16,18を含んでいる。
【0014】
巻芯部14は、図1に示すように、x軸方向に延在している角柱状の部材である。ただし、巻芯部14は、角柱状に限らず、円柱状や多角形状であってもよい。
【0015】
鍔部16,18は、巻芯部14におけるx軸方向の両端に設けられている。具体的には、鍔部16は、図1に示すように、巻芯部14のx軸方向の負方向側の一端に設けられ、鍔部18は、巻芯部14のx軸方向の正方向側の他端に設けられている。また、鍔部16,18は共に、直方体状を成している。なお、鍔部16,18は、巻芯部14のx軸方向の中心を通り、y軸及びz軸と平行な平面に関して対称である。
【0016】
外部電極22,24は、Ni−Cr、Ni−Cu,Ni等のNi系合金やAg、Cu、Sn等により構成されている。外部電極22は、図1に示すように、鍔部16におけるz軸方向の正方向側の面(以下で、側面S1と称す)を覆うように設けられている。外部電極24は、図1に示すように、鍔部18におけるz軸方向の正方向側の面(以下で、側面S2と称す)を設けられている。
【0017】
巻線20は、図1に示すように、巻芯部14に巻き回されている導線であり、銅や銀といった導電性材料を主成分とする芯線がポリウレタン等の絶縁材料により被覆されることにより構成されている。また、巻線20のx軸方向の負方向側の一端は、側面S1において外部電極22と接続され、巻線20のx軸方向の正方向側の他端は、側面S2おいて外部電極24と接続されている。
【0018】
(巻線型電子部品の製造方法の概略)
以下に、実施例である巻線型電子部品の製造方法について説明する。
【0019】
まず、コア12の材料となるフェライトを主成分とした粉末を準備する。そして、準備したフェライト粉末を雌型に充填する。充填した粉末を雄型で加圧することによって、巻芯部14の形状及び鍔部16,18の形状を成形する。更に、加圧が終了した未焼成のコア12を焼成し、コア12が完成する。
【0020】
次に、コア12の鍔部16,18に外部電極22,24を形成する。より詳細には、まず、Agペーストが満たされた容器にコア12の鍔部16の側面S1及び鍔部18の側面S2を浸漬させて、各側面にAgペーストを付着させる。次に、付着したAgペーストを乾燥させ、焼成することによって、鍔部16,18の側面S1,S2に下地電極であるAg膜を形成する。更に、電気めっきなどにより、Ni系合金の金属膜をAg膜上に形成する。以上により、外部電極22,24が形成される。
【0021】
次に、コア12の巻芯部14に巻線20を巻きつける。この際、巻線20の両端を所定量だけ巻芯部14から引き出しておく。そして、巻線20の引き出された部分を外部電極22,24に対して熱圧着により接続する。以上のような工程を経て、巻線型電子部品1が完成する。
【0022】
(巻線及び外部電極の接続工程の詳細)
巻線20と外部電極22,24との熱圧着は、金属製のヒーターチップWを交流電流Iのジュール熱により加熱しつつ、図2に示すように、巻線20の両端部を外部電極22,24に押し当てることにより行う。このとき、ヒーターチップWに加えられる交流電流Iは、図3に示すように、熱圧着開始と同時に増幅され、その後減衰する。これにより、ヒーターチップWの温度は、図4に示すように、交流電流Iの増幅過程P1で上昇し、減衰過程P2で徐々に低下する。なお、増幅過程P1は、交流電流Iの振幅波形の包絡線により示される電流の絶対値が増加する過程であり、減衰過程P2は、交流電流Iの振幅波形の包絡線により示される電流の絶対値が減少する過程である。
【0023】
また、図5に示すように、増幅過程P1においてコア12の磁化は、交流電流Iによって発生する磁界の変化に伴って、反転を繰り返しながら、徐々に増加する。そして、図6に示すように、減衰過程P2においてコア12の磁化は、交流電流Iによって発生する磁界の変化に伴って、反転を繰り返しながら減衰していく。
【0024】
さらに、図3に示すように、増幅過程P1における交流電流Iの包絡線L1の形状と減衰過程P2における交流電流Iの包絡線L2の形状とは、増幅過程P1と減衰過程P2との境界に関して略対称である。これにより。増幅過程P1において、コア12に加えられる磁荷の量と、減衰過程P2において、コア12に加えられる磁荷の量が略等しくなる。
【0025】
(効果)
巻線型電子部品1の製造方法によれば、巻線20と外部電極22,24との接続工程における巻線型電子部品1のコア12の磁化を抑制することができる。具体的には、巻線型電子部品1の製造方法では、巻線20と外部電極22,24との接続工程において、交流電流Iを増幅させた後に減衰させている。これにより、交流電流Iの増幅過程P1におけるコア12の磁化は、交流電流Iによって発生する磁界の変化に伴って、反転を繰り返しながら、徐々に増加する。そして、減衰過程P2におけるコア12の磁化は、交流電流Iによって発生する磁界の変化に伴って、反転を繰り返しながら減衰していく。つまり、増幅過程P1において磁化された巻線型電子部品のコアが、減衰過程P2において消磁される。これにより、巻線20と外部電極22,24との接続工程における、巻線型電子部品のコアの磁化を抑制することができる。
【0026】
また、交流電流Iの増幅過程P1における包絡線L1の形状と減衰過程P2における包絡線L2の形状とは、略対称である。これにより、交流電流の増幅過程において、コア12に加えられる磁荷と、減衰過程において、コア12に加えられる磁荷が略等しくなる。結果として、交流電流Iの増幅過程において磁化された巻線型電子部品のコア12が、交流電流Iの減衰過程において消磁される共に、コア12の磁化が0に近づく。
【0027】
(他の実施例)
本発明に係る巻線型電子部品の製造方法及び圧着方法は前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明は、巻線型電子部品の製造方法及び圧着方法に有用であり、特に、巻線と外部電極との接続工程における、巻線型電子部品のコアの磁化を抑制することができる点で優れている。
【符号の説明】
【0029】
I 交流電流
1 巻線型電子部品
12 コア
14 巻芯部
16,18 鍔部
20 巻線
22,24 外部電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7