(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発光素子からなる光源と、該光源から放射される光が入射される位置に配置され、前記光源から入射する光を反射して車両前方に所定配光パターンを形成する反射面とを有し、
前記反射面は、前記反射面を縦に分割して形成された第1反射面、第2反射面及び第3反射面を備え、
前記第1反射面が、前記入射される光をカットオフラインを形成した高光度用配光パターンとして反射させ、
前記第2反射面が、前記入射される光を前記高光度用配光パターンと重畳する拡散用パターンとして反射させ、
前記第3反射面が、前記入射される光をオーバーヘッドサイン用配光パターンとして反射させ、
前記第3反射面を前記第1反射面領域の左右外側の位置に各々設けてなり、
前記発光素子は、車両前方へ水平に延設されたヒートシンク部材の下面に下向きに取り付けられ、前記反射面は、車両前方を向いて前記光源の下側に取り付けられ、前記第3反射面は、前記光源と離れた前記反射面の先端側の位置に設けられていることを特徴とする車両用灯具。
発光素子からなる光源と、該光源から放射される光が入射される位置に配置され、前記光源から入射する光を反射して車両前方に所定配光パターンを形成する反射面とを有し、
前記反射面は、前記反射面を縦に分割して形成された第1反射面、第2反射面及び第3反射面を備え、
前記第1反射面が、前記入射される光をカットオフラインを形成した高光度用配光パターンとして反射させ、
前記第2反射面が、前記入射される光を前記高光度用配光パターンと重畳する拡散用パターンとして反射させ、
前記第3反射面が、前記入射される光をオーバーヘッドサイン用配光パターンとして反射させ、
前記第3反射面を前記第1反射面領域の左右外側の位置に各々設けてなり、
前記光源は、車両前方へ水平に延設されたヒートシンク部材の上面に上向きに取り付けられ、
前記反射面は、車両前方を向いて前記光源の上側に取り付けられ、
前記第3反射面は、前記反射面の下端側に前記光源と隣接した位置に設けられていることを特徴とする車両用灯具。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子(例えば、LED等)を光源とし、かつ、複数の反射面を有して、カットオフラインを設けたすれ違い走行用であるロービーム用の配光パターンと、オーバーヘッドサイン(車両の前方路面の情報に配置された頭上標識)を照射するオーバーヘッドサイン用の配光パターンを、同時に車両前方に形成する車両用灯具は知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、複数の反射面を有して、カットオフラインを設けたロービーム用の配光パターンとオーバーヘッドサイン用の配光パターンを同時に車両前方に形成する車両用灯具の一例を模式的に示すものであり、(a)はその正面図、(b)は(a)におけるD−D線断面図、(c)はロービーム用の配光パターンとオーバーヘッドサイン用配光パターンを合成した配光パターンの一例を示す説明図である。なお、
図4に示す車両用灯具は、日本の左側通行に使用されるものである。
【0004】
図4の(a)及び(b)における車両用灯具51は、リフレクタ52と、光源としてのLED光源53と、ヒートシンク部材54と、を備えて構成されている。
【0005】
前記ヒートシンク部材54は、金属製であり、水平方向(車両前方)に延設された水平部54aと、水平部54aの後端から下方へ略直角に折り曲げられた垂直54bと、を一体に有して断面逆L字状に形成されている。
【0006】
前記LED光源53は、基板53aと発光部53bとから構成されており、ヒートシンク部材54の水平部54aの下面に基板53aが固定されて、発光部53bを下向きにして取り付けられている。
【0007】
前記リフレクタ52は、光不透過性の樹脂等から形成されており、その表面にはアルミ蒸着若しくは銀塗装等が施されている。また、リフレクタ52は、縦に分割されて、中央部分に第1反射面55が設けられているとともに、この第1反射面55の左右両側にそれぞれ第2反射面56、56を設け、更に第1反射面55の上縁部に左右方向に横たわるようにして第3反射面57を設け、これら第1反射面55と第2反射面56と第3反射面57を一体的に形成している。そして、リフレクタ52は、LED光源53から放射される光Lが入射される位置に配置されて、ヒートシンク部材54に取り付けられている。
【0008】
また、第1反射面55、第2反射面56、第3反射面57は、それぞれ放物線を基調とした反射面、例えば回転放物面、楕円放物面、放物中面の組み合わせ、あるいは放物面を基本とした自由曲面等の反射面からなる。
【0009】
そして、リフレクタ52は、LED光源53から放射される光Lが入射されると、入射された光Lを反射し、車両前方にロービーム用(すれ違い用)の配光パターンとオーバーヘッドサイン用の配光パターンを形成して照射するように設定されている。
図4の(c)に、そのロービーム用の配光パターンとオーバーヘッドサイン用の配光パターンが合成された配光パターンの一例を示す。
【0010】
すなわち、第1反射面55では、LED光源53からの光Lが入射されると、入射された光Lを反射し、この光Lが
図4(c)中における高光度用配光パターンHPを形成する。高光度用配光パターンHPは、範囲が狭められたスポット状の高光度を高めるものであり、水平カットオフラインCL1、CL2、及び斜めのカットオフラインCL3が形成される。そして、上下垂直線VU−VDから左側のカットラインCL1は水平線HL−HRよりも上側に位置し、右側のカットラインCL2は水平線HL−HRよりも下側に位置するようにして設けられ、すれ違い用走行時おける眩惑を防止するようにしている。第2反射面56では、LED光源53からの光Lが入射されると、入射された光Lを反射し、この光Lが
図4(c)中における拡散用配光パターンWPを水平線HL−HRよりも下側に形成する。そして、これら高光度用配光パターンHP及び拡散用配光パターンWPとで、ロービーム用の配光規格を満足させる。
【0011】
一方、第3反射面57では、LED光源53からの光Lが入射されると、入射された光Lを反射し、この光Lが
図4(c)中におけるオーバーヘッドサイン用配光パターンOPを水平線HL−HRよりも上側に形成する。そのオーバーヘッドサイン用配光パターンOPは、図示していないオーバーヘッドサイン(頭上標識)を照明するものである。このオーバーヘッドサイン用配光パターンOPを形成する第3反射面57は、第1反射面55の上縁部に、この第1反射面55の左右両端に跨がって連続した状態で形成されているので、オーバーヘッドサイン用配光パターンOPも上下垂直線VU−VDを中心として左右両側へ連続して広がる横長状をした1つの配光パターンとして形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、従来の車両用灯具では、オーバーヘッドサイン用配光パターンOPを形成する第3反射面57は、高光度用配光パターンHPを形成する第1反射面55の上縁部に、この第1反射面55の左右両端に跨がって連続した状態で形成されて、第1反射面55の一部を使用した形で設けられている。すなわち、高光度用配光パターンHPの配光の一部を犠牲にしている問題点があった。
【0014】
また、第3反射面57で形成されるオーバーヘッドサイン用配光パターンOPが、上下垂直線VU−VDを中心として左右両側へ連続して広がる横長状をした1つの配光パターンOPとして形成されている。しかしながら、配光規格(例えば、「B−50R」)等によっては、例えば
図4の(c)に符号P1、P2で示す位置(以下、これを「グレアポイントP1、P2」という)においては、光度値の上限が設定されているため、グレアポイントP1、P2の光度値を規格の範囲内に抑えつつ、視認性に優れたオーバーヘッドサイン用配光パターンOPの配光を設計することが困難であった。
【0015】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、規格等で要求される条件を容易に満たして理想的なロービーム配光パターンとオーバーヘッドサイン用配光パターンを形成することが可能な車両用灯具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、(1)本発明の車両用灯具は、発光素子からなる光源と、該光源から放射される光が入射される位置に配置され、前記光源から入射する光を反射して車両前方に所定配光パターンを形成する反射面とを有し、前記反射面は、縦に分割されて前記入射される光をそれぞれ、カットオフラインを形成した高光度用配光パターンとして反射させる第1反射面と、前記高光度用配光パターンと重畳する拡散用パターンとして反射させる第2反射面と、オーバーヘッドサイン用配光パターンとして反射させる第3反射面と、を備え、前記第3反射面を前記第1反射面領域の左右外側の位置に各々設けている。
【0017】
この構成によれば、オーバーヘッドサイン用配光パターンとして反射させる第3反射面を、第1反射面領域の左右外側の位置に、第1反射面の領域を外して設けることにより、第1反射面の一部を犠牲にしないで第3反射面を設けることができる。また、上下垂直線VU−VDを中心として、規格等で要求されるグレアポイントを間に挟むようにして、その左右両側にオーバーヘッドサイン用配光パターンを各々形成し、グレアポイントを避けたオーバーヘッドサイン用配光パターンを容易に形成することができる。
【0018】
(2)上記(1)において、前記反射面は、前記第1反射面と第3反射面の間に前記第2反射面を設けている。
【0019】
この構成によれば、樹脂成形時における第1反射面のヒケを抑えることができる。すなわち、高光度用配光パターンHPを形成する第1反射面に隣接させて第3反射面を設けた場合、第3反射面の形状は第1反射面の形状に比べて大きく異なる。このため、第1反射面と第3反射面の隣接箇所には段差等が作られ、その段差等が樹脂成形をする時に、第1反射面にヒケを発生させることがある。そのヒケは、第1反射面による配光制御を乱してグレアとなり、すれ違い用走行時おける眩惑の発生が危惧される。そこで、第1反射面と第3反射面との間に、第1反射面の形状により近い形状を有する、拡散用配光パターンを形成するための第2反射面の一部を介在させた状態にして第3反射面を設けると、段差等が少なくなり、樹脂成形時に第1反射面に発生するヒケを抑えることができる。
【0020】
(3)上記(1)又は(2)において、前記光源は、車両前方へ水平に延設されたヒートシンク部材の下面に下向きに取り付けられ、前記反射面は、車両前方を向いて前記光源の下側に取り付けられ、前記第3反射面は、前記光源と離れた前記反射面の先端側の位置に設けられている。
【0021】
この構成によれば、一般に、強い光量を必要としないオーバーヘッドサイン用配光パターンを形成する第3反射面は光源から遠い位置で、強い光量を必要とする第1、第2反射面は光源に近い位置に配置させて、第1,第2反射面に強い光量を付与することができるので、遠方視認性の向上が図れる。また、第1,第2反射面を光源に対してより近い位置に配置することができるので、遠方視認性の向上が図れるとともに、配光設計に自由が利き、より性能の高い車両用灯具を得ることができる。さらに、第3反射面を、光源から遠い位置に配置することにより、第3反射面による配光の一部がヒートシンク部材によって遮光されてしまうことを防止できる。
【0022】
(4)上記(1)または(2)において、前記光源は、車両前方へ水平に延設されたヒートシンク部材の上面に上向きに取り付けられ、前記反射面は、車両前方を向いて前記半導体型の光源の上側に取り付けられ、前記第3反射面は、前記反射面の下端側に前記光源と隣接した位置に設けられている。
【0023】
この構成によれば、第3反射面を、ヒートシンク部材の上面に上向きに取り付けることにより、第3反射面が光源と近い位置に配置されても、第3反射面による配光が、ヒートシンク部材によって遮光されてしまうことを防止できる。これは、オーバーヘッドサイン用配光パターンの光量を多く確保したいような車両用灯具に適用すると、より良い効果が得られる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、規格等で要求される条件を容易に満たして理想的なロービーム配光パターンとオーバーヘッドサイン用配光パターンを形成することが可能な車両用灯具を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態として示す車両用灯具は、日本の左側通行に使用されるものである。
【0027】
図1は本発明の第1の実施形態に係る車両用灯具を模式的に示すものであり、(a)は車両の前方側から見た正面図、(b)は(a)におけるA−A線断面図、(c)は本実施形態で得られる配光パターンの一例を示す説明図である。なお、
図1の(c)に示す配光パターンは運転席に座って前方を見たときに、車両前端部に正対した仮想鉛直スクリーン上に映し出される状態を示している。
【0028】
図1の(a)及び(b)における車両用灯具11は、リフレクタ12と、光源としてのLED光源13と、ヒートシンク部材14と、を備えて構成されている。
【0029】
前記ヒートシンク部材14は、金属製であり、水平方向(車両前方)に延設された水平部14aと、水平部14aの後端から下方へ略直角に折り曲げられた垂直14bと、を一体に有して断面逆L字状に形成されている。
【0030】
前記LED光源13は、基板13aと発光部13bとから構成されており、ヒートシンク部材14の水平部14aの下面に基板13aが固定されて、発光部13bを下向きにして取り付けられている。
【0031】
前記リフレクタ12は、光不透過性の樹脂等から形成されており、その表面にはアルミ蒸着若しくは銀塗装等が施されている。また、リフレクタ12は、縦方向に複数に分割されてなる、複数の第1反射面15と第2反射面16と第3反射面17を一体に形成してなる。すなわち、
図1(a)に示すように、リフレクタ12の中央部分には、左右1対の第1反射面15が設けられ、また第1反射面15の左右両側には、それぞれ4枚ずつに分割された第2反射面16、16が設けられたている。さらに、第1反射面15領域の左右外側の位置には、この第1反射面15に隣接し、かつリフレクタ12の下縁部から上縁部へ向かって第2反射面16内に入り込んだ状態にして第3反射面17が各々設けられている。そして、リフレクタ12は、ヒートシンク部材14の水平部14aの下面側の位置で、かつ、LED光源13から放射される光Lが各反射面15、16、17にそれぞれ入射される位置に配置されて、ヒートシンク部材14に取り付けられている。
【0032】
また、第1反射面15、第2反射面16、第3反射面17は、それぞれ放物線を基調とした反射面、例えば回転放物面、楕円放物面、放物中面の組み合わせ、あるいは放物面を基本とした自由曲面等の反射面からなる。
【0033】
そして、リフレクタ12は、LED光源13から放射される光Lが入射されると、入射された光Lを反射し、車両前方にロービーム用(すれ違い用)の配光パターンとオーバーヘッドサイン用の配光パターンを形成して照射するように設定されている。
図1の(c)に、そのロービーム用の配光パターンとオーバーヘッドサイン用の配光パターンが合成された配光パターンの一例を示す。
【0034】
すなわち、第1反射面15では、LED光源13からの光Lが入射されると、入射された光Lを反射し、
図1(c)中における高光度用配光パターンHPを形成する。高光度用配光パターンHPは、範囲が狭められたスポット状の高光度を高めるものであり、水平カットオフラインCL1、CL2、及び斜めのカットオフラインCL3が形成される。そして、上下垂直線VU−VDから左側のカットラインCL1は水平線HL−HRよりも上側に位置し、右側のカットラインCL2は水平線HL−HRよりも下側に位置するようにして設けられ、すれ違い用走行時おける眩惑を防止するようにしている。第2反射面16では、LED光源13からの光Lが入射されると、入射された光Lを反射し、
図1の(c)中における拡散用配光パターンWPを水平線HL−HRよりも下側の位置に高光度用配光パターンHPと重畳させて形成する。そして、これら高光度用配光パターンHP及び拡散用配光パターンWPとで、ロービームの配光規格を満足させる。
【0035】
一方、左右の第3反射面17、17では、LED光源13からの光Lがそれぞれ入射されると、入射された光Lを反射し、この光Lが
図1(c)中におけるオーバーヘッドサイン用配光パターンOP1を水平線HL−HRよりも上側で、かつ、上下垂直線VU−VDの左側の位置に形成するとともに、オーバーヘッドサイン用配光パターンOP2を水平線HL−HRよりも上側の位置で、かつ、上下垂直線VU−VDの右側の位置に形成する。そのオーバーヘッドサイン用配光パターンOP1、OP2は、図示していないオーバーヘッドサイン(頭上標識)を照明するものである。また、オーバーヘッドサイン用配光パターンOP2は、上下垂直線VU−VDと隣接する側において、水平線HL−HRと対向する符号18で示す部分を切欠するようにしてなるヒケを設け、水平線HL−HRとオーバーヘッドサイン用配光パターンOP2との間に配光されないスペースを形成している。これにより、例えば
図1の(c)に示すグレアポイントP1、P2に、配光をしないように要求された場合には、そのスペース内には、既にグレアポイントP1、P2が含まれているので、簡単に対応することができる。
【0036】
したがって、この第1の実施形態の構造によれば、オーバーヘッドサイン用配光パターンOP1、OP2として反射させる第3反射面17を第1反射面15領域の左右両側の位置に、該第1反射面15領域内から外して設けているので、従来の車両用灯具で問題となっていた第1反射面の一部の犠牲と上下垂直線VU−VDを中心として、オーバーヘッドサイン用配光パターンを複数の第3反射面17、17で個別に設計することにより、光度値の上限が規定されている例えば
図1の(c)に示すグレアポイントP1、P2への配光を制御することができる。また、遠方視認性の向上が図れるとともに、配光設計に自由が利き、より性能の高い車両用灯具が得られる。
【0037】
図2は本発明の第2の実施形態に係る車両用灯具を模式的に示すものであり、(a)は車両の前方側から見た正面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図、(c)は本実施形態で得られる配光パターンの一例を示す説明図である。なお、
図2の(c)に示す配光パターンも、運転席に座って前方を見たときに、車両前端部に正対した仮想鉛直スクリーン上に映し出される状態を示している。
【0038】
第2の実施形態における車両用灯具11の構成は、
図2の(a)に示すように、第3反射面17を第1反射面15の左右両側に分かれて、それぞれが第1反射面15領域の外側に位置し、かつ第1反射面15との間に第2反射面16の一部16a、16bを挟んで入り込むように設けて、リフレクタ12の成形時に、高光度用配光パターンHPを形成する第1反射面15にヒケが発生するのを抑制するようにしたものであり、他の構成は
図1と同一であるから、同一の構成部分は同一符号を付して重複説明を省略する。
【0039】
ヒケについて更に詳述すると、第1の実施形態における車両用灯具1の構成のように、高光度用配光パターンHPを形成する第1反射面15に直ぐ隣接した状態で第3反射面17を設けた場合、第3反射面17の形状は第1反射面15の形状に比べて比較的大きく異なることから、第1反射面15と第3反射面17の隣接箇所19(
図1の(a)参照)に段差等が作られる。そのため、リフレクタ12を樹脂成形した時に、その段差等が第1反射面15にヒケを発生させることがある。そのヒケは、第1反射面15による配光制御を乱してグレアとなり、すれ違い用走行時おける眩惑の発生が危惧される。そこで、第2の実施形態における車両用灯具1では、第1反射面15と第3反射面17との間に、第1反射面15の形状により近い形状を有する、拡散用配光パターンWPを形成するための第2反射面16の一部16a、16bを介在させた状態にして、第3反射面17を設けることによって、段差等を少なくして、樹脂成形時における第1反射面15に発生するヒケを抑えるようにしたものである。
【0040】
図2の(c)は、第2の実施形態における車両用灯具1の、ロービーム用の配光パターンとオーバーヘッドサイン用の配光パターンをそれぞれ合成した配光パターンの一例を示す。
【0041】
すなわち、第1反射面15では、LED光源13からの光Lが入射されると、入射された光Lを反射し、この光Lが
図2(c)中における高光度用配光パターンHPを形成する。ここでの高光度用配光パターンHPも、水平カットオフラインCL1、CL2、及び斜めのカットオフラインCL3が形成される。そして、上下垂直線VU−VDから左側のカットラインCL1は水平線HL−HRよりも上側に位置し、右側のカットラインCL2は水平線HL−HRよりも下側に位置するようにして設けられ、すれ違い用走行時おける眩惑を防止するようにしている。第2反射面16では、LED光源13からの光Lが入射されると、入射された光Lを反射し、
図2の(c)中における拡散用配光パターンWPを、水平線HL−HRよりも下側の位置に高光度用配光パターンHPと重畳させて形成する。そして、これら高光度用配光パターンHP及び拡散用配光パターンWPとで、ロービームの配光規格を満足させる。
【0042】
一方、左右の第3反射面17、17では、LED光源13からの光Lがそれぞれ入射されると、入射された光Lを反射し、この光Lが
図2(c)中におけるオーバーヘッドサイン用配光パターンOP1を水平線HL−HRよりも上側で、かつ、上下垂直線VU−VDの左側の位置に形成するとともに、オーバーヘッドサイン用配光パターンOP2を水平線HL−HRよりも上側の位置で、かつ、上下垂直線VU−VDの右側の位置に形成する。そして、オーバーヘッドサイン用配光パターンOP2は上下垂直線VU−VDと隣接する側において、水平線HL−HRと対向する符号18で示す部分を切欠するようにしてなるヒケを設け、水平線HL−HRとオーバーヘッドサイン用配光パターンOP2との間に配光されないスペースを形成している。これにより、例えば
図2の(c)に示すグレアポイントP1、P2に、配光をしないように要求された場合には、そのスペース内には、既にグレアポイントP1、P2が含まれているので、簡単に対応することができる。
【0043】
また、本第2実施形態の構造によるリフレクタ12では、第1反射面15と第3反射面17との間に、第1反射面15の形状により近い形状を有する第2反射面16の一部16a、16bを介在させた状態にして、第1反射面15の左右両側に第3反射面17を設けているので、第3反射面17を樹脂形成等した際に、この第1反射面15のヒケを抑えることができる。
【0044】
したがって、この第2の実施形態の構造によれば、オーバーヘッドサイン用配光パターンOP1、OP2として反射させる第3反射面17、17を、第1反射面15領域の左右の位置の外側に個々に設け、オーバーヘッドサイン用配光パターンOP2の形状を自由に変更できるようにしているので、従来の車両用灯具で問題となっていた第1反射面の一部の犠牲と上下垂直線VU−VDを中心として、オーバーヘッドサイン用配光パターンを複数の第3反射面17、17で個別に設計することにより、光度値の上限が規定されている例えば
図2の(c)に示すグレアポイントP1、P2への配光を制御することができる。また、リフレクタ12の樹脂成形時における第1反射面15のヒケを抑えて、配光パターンの精度を向上させることができる。
【0045】
図3は本発明の第3の実施形態に係る車両用灯具を模式的に示すものであり、(a)は車両の前方側から見た正面図、(b)は(a)におけるC−C線断面図、(c)は本実施形態で得られるロービーム配光パターンの一例を示す説明図である。なお、
図3の(c)に示す配光パターンも、運転席に座って前方を見たときに、車両前端部に正対した仮想鉛直スクリーン上に映し出される状態を示している。
【0046】
第3の実施形態における車両用灯具11は、オーバーヘッドサイン用配光パターンOP1を形成する第3反射面17にLED光源13から入射する光量を多く必要とする場合に有効な構造であって、第3反射面17をLED光源13の位置に近づけて設けたものであり、他の構成は
図1と同一であるから、同一の構成部分は同一符号を付して重複説明を省略する。
【0047】
その
図3に示す車両用灯具11は、LED光源13をヒートシンク部材14の水平部14aの上面に基板13aを固定し、発光部13bを上向きにして取り付けている。一方、リフレクタ12は、ヒートシンク部材14の水平部14aの上面側の位置で、かつLED光源13から放射される光Lが第1反射面15、第2反射面16、第3反射面にそれぞれ入射される位置で、ヒートシンク部材14に取り付けられている。
【0048】
そのリフレクタ12は、縦に分割されて、中央部分に第1反射面としての第1反射面15が設けられているとともに、この第1反射面15の左右両側にそれぞれ第2反射面16、16を設け、更に第1反射面15の左右の外側にそれぞれ、第1反射面15に隣接させて、リフレクタ12の下縁部から上縁部へ向かって第2反射面16内に入り込んだ状態にして第3反射面17を設け、それら第1反射面15と第2反射面16と第3反射面17を一体的に形成している。リフレクタ12は、ヒートシンク部材14の水平部14aの下面側の位置で、かつ、LED光源13から放射される光Lが各反射面15、16、17にそれぞれ入射される、LED光源13の上側の位置に配置されて、第3反射面17をLED光源13に隣接させた状態でヒートシンク部材14に取り付けられている。
【0049】
そして、リフレクタ12は、LED光源13から放射される光Lが入射されると、入射された光Lを反射して、車両前方にロービーム用の配光パターンとオーバーヘッドサイン用配光パターンを形成して照射するように設定されている。
図3(c)に、そのロービーム用の配光パターンとオーバーヘッドサイン用の配光パターンが合成された配光パターンの一例を示す。
【0050】
すなわち、第1反射面15では、LED光源13からの光Lが入射されると、入射された光Lを反射し、この光Lが
図3(c)中における高光度用配光パターンHPを形成する。ここでの高光度用配光パターンHPも、水平カットオフラインCL1、CL2、及び斜めのカットオフラインCL3が形成される。そして、上下垂直線VU−VDから左側のカットラインCL1は水平線HL−HRよりも上側に位置し、右側のカットラインCL2は水平線HL−HRよりも下側に位置するようにして設けられ、すれ違い用走行時おける眩惑を防止するようにしている。第2反射面16では、LED光源13からの光Lが入射されると、入射された光Lを反射し、
図3の(c)中における拡散用配光パターンWPを水平線HL−HRよりも下側に、高光度用配光パターンHPと重畳させて形成する。そして、これら高光度用配光パターンHP及び拡散用配光パターンWPとで、ロービームの配光規格を満足させる。
【0051】
一方、左右の第3反射面17、17では、LED光源13からの光Lがそれぞれ入射されると、入射された光Lを反射し、
図3(c)中におけるオーバーヘッドサイン用配光パターンOP1を水平線HL−HRよりも上側で、かつ、上下垂直線VU−VDの左側の位置に形成するとともに、オーバーヘッドサイン用配光パターンOP2を水平線HL−HRよりも上側の位置で、かつ、上下垂直線VU−VDの右側の位置に形成する。また、オーバーヘッドサイン用配光パターンOP2は、上下垂直線VU−VDと隣接する側において、水平線HL−HRと対向する符号18で示す部分を切欠するようにしてなるヒケを設け、水平線HL−HRとオーバーヘッドサイン用配光パターンOP2との間に配光されないスペースを形成している。これにより、例えば
図3の(c)に示すグレアポイントP1、P2に、配光をしないように要求された場合には、そのスペース内には、既にグレアポイントP1、P2が含まれているので、簡単に対応することができる。
【0052】
したがって、この第3の実施形態の構造によれば、オーバーヘッドサイン用配光パターンOP1、OP2として反射させる第3反射面17を第1反射面15領域の左右両側の位置に、第1反射面15領域内から外して設けているので、従来の車両用灯具で問題となっていた第1反射面の一部の犠牲と上下垂直線VU−VDを中心として、オーバーヘッドサイン用配光パターンを複数の第3反射面17、17で個別に設計することにより、光度値の上限が規定されているグレアポイントP1、P2への配光を制御することができる。また、遠方視認性の向上が図れるとともに、配光設計に自由が利き、より性能の高い車両用灯具が得られる。
【0053】
また、第3反射面17をLED光源13に近い位置に設けているので、オーバーヘッドサイン用配光パターンOP1の光量を多くして、図示していないオーバーヘッドサイン(頭上標識)をより鮮明に確認することが可能になる。
【0054】
なお、例えば
図1及び
図2の各実施形態に示す車両用灯具のように、LED光源13の発光部13bを下向きにして、ヒートシンク部材14の水平部14aの下面側にLED光源13とリフレクタ12を取り付け、かつ大きな光量を確保するために第3反射面17をLED光源13に近づけた場合には、
図4で説明したように、第3反射面17から反射されるオーバーヘッドサイン用配光の一部(符号LCで示す反射光)が水平部14aの先端部分14cで「けられ」て有効に使用できない場合がある。しかし、
図3の第3実施形態に示す車両用灯具のように、発光部13bを上向きにしてLED光源13をヒートシンク部材14の水平部14aの上面に固定した場合には、光の「けられ」を無くしてLED光源13の光りを有効に使用することができるとともに設計も容易になる。
【0055】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれものである。