特許第6186866号(P6186866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186866
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】エンジンの冷却システム
(51)【国際特許分類】
   F01P 3/20 20060101AFI20170821BHJP
   F01P 3/22 20060101ALI20170821BHJP
   F02M 26/28 20160101ALI20170821BHJP
   F02G 5/00 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   F01P3/20 F
   F01P3/20 M
   F01P3/22 H
   F01P3/22 K
   F02M26/28
   F02G5/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-99317(P2013-99317)
(22)【出願日】2013年5月9日
(65)【公開番号】特開2014-218952(P2014-218952A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】山口 進作
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−341700(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/007561(WO,A1)
【文献】 特開2008−255923(JP,A)
【文献】 特開2013−024083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 3/00 − 3/22
F02G 5/00 − 5/04
F01N 5/02
F02M 26/22 − 26/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を封入した循環流路に、作動流体を加熱する第一熱交換器、加熱された作動流体を膨張させる膨張機、膨張された作動流体を冷却する第二熱交換器、冷却された作動流体を圧送するコンプレッサが順に配置されたランキンサイクル装置と、
エンジンのシリンダブロック内に形成された第一冷却水流路と、
前記第一冷却水流路で加熱された冷却水を外気で冷却するメインラジエータと、
前記メインラジエータで冷却された冷却水を外気でさらに冷却するサブラジエータと、
前記第一冷却水流路の下流端から、前記第一熱交換器、前記メインラジエータを経由して、前記第一冷却水流路の上流端に接続されると共に、冷却水を圧送するポンプが設けられた第二冷却水流路と、
前記メインラジエータよりも下流側の第二冷却水流路から分岐すると共に、前記サブラジエータ、吸気を冷却するインタークーラを経由して、前記第二冷却水流路に接続された第三冷却水流路と、
前記サブラジエータよりも下流側の第三冷却水流路から分岐すると共に、前記第二熱交換器を経由して、前記第一熱交換器よりも下流側かつ前記メインラジエータより上流側の第二冷却水流路に接続された第四冷却水流路と、を備えることを特徴とするエンジンの冷却システム。
【請求項2】
エンジンの吸気系と排気系とを接続する環流排気流路に設けられて環流排気を冷却水で冷却する環流排気クーラと、
前記メインラジエータよりも下流側の第二冷却水流路から分岐すると共に、前記環流排気クーラを経由して、前記第一熱交換器よりも上流側の第二冷却水流路に接続された第五冷却水流路と、をさらに備える請求項1に記載のエンジンの冷却システム。
【請求項3】
前記第二冷却水流路が、前記第一熱交換器を経由する前に前記環流排気クーラを経由する請求項2に記載のエンジンの冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの冷却システムに関し、特に、ランキンサイクル装置を用いたエンジンの冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの冷却性能を向上させるために、冷却水循環路にメインラジエータとサブラジエータとを直列又は並列に配置した冷却システムが知られている。このような冷却システムでは、エンジンで加熱された冷却水をメインラジエータで冷却した後、サブラジエータでさらに冷却してインタークーラ等に導入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−38891号公報
【特許文献2】特開2011−190743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、エンジンの高出力化に伴い、特に登り坂走行時等の高負荷運転時はラジエータに高い冷却性能が求められている。冷却性能のさらなる向上を図るためには、ラジエータやファンの大型化が必要になるが、車載レイアウト、設置スペース等の制約から難しい状況にある。そのため、ラジエータやファンの能力不足を考慮して、いわゆるオーバヒートプロテクション(OHP)を設定しなければならない課題がある。
【0005】
本発明の目的は、冷却水の廃熱を効果的に回収しつつ、冷却性能を向上することができるエンジンの冷却システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のエンジンの冷却システムは、作動流体を封入した循環流路に、作動流体を加熱する第一熱交換器、加熱された作動流体を膨張させる膨張機、膨張された作動流体を冷却する第二熱交換器、冷却された作動流体を圧送するコンプレッサが順に配置されたランキンサイクル装置と、エンジンのシリンダブロック内に形成された第一冷却水流路と、前記第一冷却水流路で加熱された冷却水を外気で冷却するメインラジエータと、前記メインラジエータで冷却された冷却水を外気でさらに冷却するサブラジエータと、前記第一冷却水流路の下流端から、前記第一熱交換器、前記メインラジエータを経由して、前記第一冷却水流路の上流端に接続されると共に、冷却水を圧送するポンプが設けられた第二冷却水流路と、前記メインラジエータよりも下流側の第二冷却水流路から分岐すると共に、前記サブラジエータ、吸気を冷却するインタークーラを経由して、前記第二冷却水流路に接続された第三冷却水流路と、前記サブラジエータよりも下流側の第三冷却水流路から分岐すると共に、前記第二熱交換器を経由して、前記第一熱交換器よりも下流側の第二冷却水流路に接続された第四冷却水流路と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、エンジンの吸気系と排気系とを接続する環流排気流路に設けられて環流排気を冷却水で冷却する環流排気クーラと、前記メインラジエータよりも下流側の第二冷却水流路から分岐すると共に、前記環流排気クーラを経由して、前記第一熱交換器よりも上流側の第二冷却水流路に接続された第五冷却水流路と、をさらに備えるものであってもよい。
【0008】
また、前記第二冷却水流路が、前記第一熱交換器を経由する前に前記環流排気クーラを経由するものであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエンジンの冷却システムによれば、冷却水の廃熱を効果的に回収しつつ、冷却性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るエンジンの冷却システムを示す模式的な全体構成図である。
図2】他の実施形態に係るエンジンの冷却システムを示す模式的な全体構成図である。
図3】他の実施形態に係るエンジンの冷却システムを示す模式的な全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1に基づいて、本発明の一実施形態に係るエンジンの冷却システムを説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0012】
まず、本実施形態に係る冷却システムが適用された吸排気系の全体構成から説明する。
【0013】
図1に示すように、ディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)10の吸気マニホールド10aには吸気通路11が接続され、排気マニホールド10bには排気通路12が接続されている。吸気通路11には、吸気上流側から順に、過給機のコンプレッサ13、吸気を冷却するインタークーラ14が配置され、排気通路12には、過給機のタービン15が配置されている。また、エンジン10には、排気の一部を吸気系に再循環する排気環流装置(Exhaust Gas Recirculation:以下、EGR装置)20が設けられている。
【0014】
EGR装置20は、排気通路12と吸気通路11とを連通するEGR流路21に、第1EGRクーラ22、第2EGRクーラ23、EGRバルブ24を順に配置して構成されている。第1EGRクーラ22、及び、第2EGRクーラ23には、後述するEGRクーラ用流路38が接続されており、EGRガスをエンジン10の冷却水で冷却する。
【0015】
次に、本実施形態に係る冷却システムの全体構成を説明する。
【0016】
図1に示すように、冷却水回路は、ウォータジャケット等を有するシリンダブロック内流路31、メインラジエータ32が介設されたメイン流路33、メイン流路33から分岐する加熱用流路34、メインラジエータ32を迂回するバイパス流路35、サブラジエータ36とインタークーラ14とが介設されたサブ流路37、第1EGRクーラ22と第2EGRクーラ23とが介設されたEGRクーラ用流路38、サブ流路37から分岐する冷却用流路39を備え構成されている。
【0017】
なお、本実施形態において、シリンダブロック内流路31は本発明の第一冷却水流路、メイン流路33及び加熱用流路34は本発明の第二冷却水流路、サブ流路37は本発明の第三冷却水流路、冷却用流路39は本発明の第四冷却水流路、EGRクーラ用流路38は本発明の第五冷却水流路に相当する。
【0018】
メインラジエータ32は、公知の構造であって、その背面には外気を送風するファン40が設けられている。メインラジエータ32は、シリンダブロック内流路31で昇温された冷却水を外気と熱交換することで冷却する。
【0019】
メイン流路33は、シリンダブロック内流路31の出口部(下流端)から、メインラジエータ32を経由してシリンダブロック内流路31の入口部(上流端)に接続されている。このメイン流路33には、メインラジエータ32よりも上流側にサーモスタット41、メインラジエータ32よりも下流側に冷却水ポンプ42が設けられている。冷却水ポンプ42で圧送される冷却水は、エンジン10の暖機時はバイパス流路35を流れ、暖機が完了するとメインラジエータ32を流れるように構成されている。
【0020】
加熱用流路34は、バイパス流路35よりも下流側のメイン流路33から、後述するエバポレータ52を経由した後、メインラジエータ32よりも上流側のメイン流路33に接続されている。
【0021】
サブラジエータ36は、メインラジエータ32で冷却された冷却水を外気と熱交換することでさらに冷却する。このサブラジエータ36は、公知の構造であって、冷却水の流路となるチューブ(不図示)が蛇行形成されると共に、蛇行するチューブ間に熱交換用の複数のフィン(不図示)を備え構成されている。
【0022】
サブ流路37は、冷却水ポンプ42よりも下流側のメイン流路33から分岐して、サブラジエータ36、インタークーラ14を経由した後、メインラジエータ32と冷却水ポンプ42との間のメイン流路33に接続されている。また、サブ流路37には、冷却水温に応じてインタークーラ14に冷却水を導入させるサーモスタット43が設けられている。
【0023】
EGRクーラ用流路38は、冷却水ポンプ42よりも下流側のメイン流路33と、バイパス流路35よりも下流側のメイン流路33とを接続すると共に、第1EGRクーラ22、第2EGRクーラ23をそれぞれ経由するように分岐して形成されている。なお、EGRクーラ用流路38の下流端は、エバポレータ52よりも下流側の加熱用流路34に接続されてもよい。
【0024】
冷却用流路39は、サブラジエータ36とインタークーラ14との間のサブ流路37から分岐すると共に、後述するコンデンサ54を経由して、エバポレータ52よりも下流側の加熱用流路34に接続されている。
【0025】
ランキンサイクル装置50は、公知の構造であって、作動流体を封入した循環流路51に、エバポレータ52、膨張機53、コンデンサ54、コンプレッサ55を順に配置して構成されている。なお、本実施形態において、エバポレータ52は本発明の第一熱交換器、コンデンサ54は本発明の第二熱交換器に相当する。
【0026】
エバポレータ52には、シリンダブロック内流路31で加熱された冷却水、及び、EGRクーラ22,23で加熱された冷却水が、加熱用流路34を介して導入される。エバポレータ52は、加熱用流路34から導入される高温冷却水と作動流体との間で熱交換することで、作動流体を加熱して気化させる。膨張機53は、気化された作動流体により駆動するタービン等であって、作動流体の熱エネルギーを動力(回転力)に変換する。この膨張機53には、発電機60が接続されている。
【0027】
コンデンサ54には、サブラジエータ36で冷却された冷却水が、冷却用流路39を介して導入される。コンデンサ54は、冷却用流路39から導入される低温冷却水と作動流体との間で熱交換することで、膨張された作動流体を冷却する。コンプレッサ55は、例えばエンジン10の動力により駆動されることで、コンデンサ54で冷却された作動流体をエバポレータ52に圧送する。
【0028】
すなわち、ランキンサイクル装置50は、高温冷却水により加熱されるエバポレータ52と、低温冷却水により冷却されるコンデンサ54との温度差を利用して膨張機53を駆動させることで、冷却水の廃熱を動力として回収する。膨張機53には発電機60が接続されているので、回収した動力を電気エネルギーに変換することが可能に構成されている。
【0029】
次に、本実施形態に係る冷却システムによる作用効果を説明する。
【0030】
本実施形態の冷却システムでは、シリンダブロック内流路31やEGRクーラ22,23で加熱された高温冷却水は、メイン流路33、加熱用流路34を介してランキンサイクル装置50のエバポレータ52に導入される。エバポレータ52に導入された高温冷却水は、作動流体と熱交換されて冷却された後、再びメイン流路33に戻されてメインラジエータ32に導入される。すなわち、シリンダブロック内流路31等で加熱された高温冷却水は、メインラジエータ32に導入される前に、エバポレータ52により効果的に冷却されるように構成されている。
【0031】
したがって、本実施形態の冷却システムによれば、メインラジエータ32やファン40等を大型化することなく、冷却性能を確実に向上させることができる。
【0032】
また、本実施形態の冷却システムでは、サブラジエータ36で冷却された低温冷却水は、サブ流路37、冷却用流路39を介してランキンサイクル装置50のコンデンサ54に導入される。コンデンサ54に導入された低温冷却水は、膨張機53で膨張された作動流体を冷却する。そして、エバポレータ52とコンデンサ54との温度差を利用して膨張機53が駆動することで、冷却水の廃熱は動力として回収される。さらに、膨張機53により発電機60が駆動することで、回収された動力は電気エネルギーに変換されるように構成されている。
【0033】
したがって、本実施形態の冷却システムによれば、冷却性能を向上させつつ、冷却水の廃熱を効果的に回収して電気エネルギーとして利用することが可能になる。得られた電気エネルギーを用いてエンジン10の補機類を駆動させれば、エンジン10の負荷が低減されて、燃費の改善を図ることもできる。
【0034】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0035】
例えば、図2に示すように、加熱用流路34が、エバポレータ52を経由する前に、EGRクーラ22,23を経由するように構成してもよい。この場合、上述の実施形態よりもエバポレータ52とコンデンサ54との温度差が大きくなるため、電気エネルギーへの変換効率をさらに高めることができる。
【0036】
また、エバポレータ52とコンデンサ54との温度差は小さくなるが、上述の実施形態を、図3に示すようなサブラジエータを備えない冷却システムに適用することも可能である。この場合、冷却用流路39をメインラジエータ32よりも下流側のメイン流路33から分岐させればよい。
【符号の説明】
【0037】
10 エンジン
14 インタークーラ
20 EGR装置
22 第1EGRクーラ
23 第2EGRクーラ
31 シリンダブロック内流路
32 メインラジエータ
33 メイン流路
34 加熱用流路
35 バイパス流路
36 サブラジエータ
37 サブ流路
38 EGRクーラ用流路
39 冷却用流路
50 ランキンサイクル装置
51 循環流路
52 エバポレータ
53 膨張機
54 コンデンサ
55 コンプレッサ
図1
図2
図3