特許第6186883号(P6186883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6186883杭基礎構造、及び、杭基礎構造の構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186883
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】杭基礎構造、及び、杭基礎構造の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/12 20060101AFI20170821BHJP
   E04G 23/06 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   E02D27/12 Z
   E04G23/06 Z
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-108799(P2013-108799)
(22)【出願日】2013年5月23日
(65)【公開番号】特開2014-227736(P2014-227736A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤森 健史
(72)【発明者】
【氏名】勝二 理智
(72)【発明者】
【氏名】橋本 康弘
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−303483(JP,A)
【文献】 特開2006−233688(JP,A)
【文献】 実開昭61−085661(JP,U)
【文献】 実開昭62−190292(JP,U)
【文献】 特開平11−313563(JP,A)
【文献】 特開2001−182078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00〜 27/52
E02D 5/22〜 5/80
E04G 23/00〜 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された杭と、
前記杭の周囲を囲むように設けられた複数のアングル鋼と、
前記杭の杭頭部を埋設して形成された基礎と、
を備え、
前記複数のアングル鋼は、前記杭を補強する補強部と、前記基礎に定着される定着部と、をそれぞれ有し、
前記杭は、鉄筋コンクリートにより形成されたコンクリート杭であり、
前記杭頭部は、鉄筋コンクリートにより形成されたコンクリート杭頭部である、
ことを特徴とする杭基礎構造。
【請求項2】
請求項1に記載の杭基礎構造であって、
前記杭の杭頭部から鉄筋が突出しており、
前記杭頭部から突出した前記鉄筋と、前記基礎に配筋された鉄筋とが接合されている、
ことを特徴とする杭基礎構造。
【請求項3】
地中に埋設された杭と、
前記杭の周囲を囲むように設けられた複数のアングル鋼と、
前記杭の杭頭部を埋設して形成された基礎と、
を備え、
前記複数のアングル鋼は、前記杭を補強する補強部と、前記基礎に定着される定着部と、をそれぞれ有し、
前記杭は、中空部を有する中空杭であり、
前記杭頭部は、中空部を有する中空杭頭部である、
ことを特徴とする杭基礎構造。
【請求項4】
請求項3に記載の杭基礎構造であって、
前記杭の中空部に前記杭と前記基礎とを定着させる定着材が挿入されている、
ことを特徴とする杭基礎構造。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の杭基礎構造であって、
前記アングル鋼と、前記基礎に配筋された鉄筋とが接合されている、
ことを特徴とする杭基礎構造。
【請求項6】
地中に埋設された杭の周囲を囲むように複数のアングル鋼を地中に圧入するアングル鋼圧入工程と、
前記杭の杭頭部を埋設して基礎を形成する基礎形成工程と、
を有し、
前記複数のアングル鋼は、前記杭を補強する補強部と、前記基礎に定着される定着部と、をそれぞれ有することを特徴とする杭基礎構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭基礎構造、及び、杭基礎構造の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物(例えば建物)の建設において、浅い基礎では建物を支えることができない地盤の場合に、地中深くに杭を形成して、建物を支えるようにした杭基礎構造が知られている。
【0003】
また、建物の建替えに際し、古い建物に使用されていた既存の杭を撤去せずに、新築建物の杭として再利用することがある(例えば特許文献1参照)。また、この場合に、杭を掘り起こすことなく、且つ、非破壊で、健全性(ひび割れの有無など)を評価する方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−109653号公報
【特許文献2】特開2006−322734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような健全性の評価において、杭が健全でない(ひび割れがある)という評価結果が得られた場合は、当該杭を新築建物の杭として再利用することができず、代わりの杭を新たに打設しなければならないという問題があった。
【0006】
本発明はかかる従来の課題に鑑みてなされたもので、その主な目的は、既存の杭を健全性にかかわらずに再利用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために本発明の杭基礎構造は、
地中に埋設された杭と、
前記杭の周囲を囲むように設けられた複数のアングル鋼と、
前記杭の杭頭部を埋設して形成された基礎と、
を備え、
前記複数のアングル鋼は、前記杭を補強する補強部と、前記基礎に定着される定着部と、をそれぞれ有し、
前記杭は、鉄筋コンクリートにより形成されたコンクリート杭であり、
前記杭頭部は、鉄筋コンクリートにより形成されたコンクリート杭頭部である、
ことを特徴とする。
【0009】
かかる杭基礎構造であって、前記杭の杭頭部から鉄筋が突出しており、前記杭頭部から突出した前記鉄筋と、前記基礎に配筋された鉄筋とが接合されていることが望ましい。
このような杭基礎構造によれば、杭と基礎との定着性を高めることが可能である。
【0010】
また、地中に埋設された杭と、
前記杭の周囲を囲むように設けられた複数のアングル鋼と、
前記杭の杭頭部を埋設して形成された基礎と、
を備え、
前記複数のアングル鋼は、前記杭を補強する補強部と、前記基礎に定着される定着部と、をそれぞれ有し、
前記杭は、中空部を有する中空杭であり、
前記杭頭部は、中空部を有する中空杭頭部である
【0011】
かかる杭基礎構造であって、前記杭の中空部に前記杭と前記基礎とを定着させる定着材が挿入されていることが望ましい。
このような杭基礎構造によれば、杭と基礎との定着性を高めることが可能である。
【0012】
かかる杭基礎構造であって、前記アングル鋼と、前記基礎に配筋された鉄筋とが接合されていることが望ましい。
このような杭基礎構造によれば、アングル鋼と基礎との定着性をより高めることが可能である。
【0013】
また、本発明の杭基礎構造の構築方法は、地中に埋設された杭の周囲を囲むように複数のアングル鋼を地中に圧入するアングル鋼圧入工程と、前記杭の杭頭部を埋設して基礎を形成する基礎形成工程と、を有し、前記複数のアングル鋼は、前記杭を補強する補強部と、前記基礎に定着される定着部と、をそれぞれ有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、既存の杭を健全性にかかわらずに再利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る杭基礎構造の説明図である。
図2】第1実施形態に係る杭基礎構造の構築方法の手順を示すフロー図である。
図3】杭10の杭頭部10Aを掘り出した状態を示す斜視図である。
図4】杭10の周囲にアングル鋼を圧入した状態を示す斜視図である。
図5】第2実施形態に係る杭基礎構造の構築方法の手順を示すフロー図である。
図6】第2実施形態に係る杭基礎構造の説明図である。
図7】第3実施形態に係る杭基礎構造の説明図である。
図8】第4実施形態に係る杭基礎構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
===第1実施形態===
<杭基礎構造について>
図1は、第1実施形態に係る杭基礎構造の説明図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の杭基礎構造は、杭10、アングル鋼20、基礎30を有している。
【0018】
杭10は、古い建物(不図示)に使用されていた杭(既存杭)であり新築建物の杭として再利用されている。杭10のうち杭頭部10A側の部位は新築建物の基礎30に埋設されており、それよりも下側(鉛直方向下側)の部位は地中に埋設されている。なお、本実施形態の杭10は、場所打ちコンクリート杭(中実杭)であり、不図示の損傷部位(ひび割れ部)を有している。
【0019】
アングル鋼(山形鋼ともいう)20は、断面がL字型の鉄製の部材である。本実施形態のアングル鋼20は、L字の各辺の長さが等しい等辺山形鋼である。また、アングル鋼20の稜線方向の長さは、少なくとも杭10の杭頭部10Aからひび割れ部までの長さ以上である。本実施形態では、杭10の周囲を囲むように、4つのアングル鋼20が設けられており、各アングル鋼20は、それぞれ、内側面が杭10の外周面と対向するように配置されている。また、各アングル鋼20は、それぞれ、地中に圧入されている部位(図において破線で示す部位)と、基礎30に埋設されている部位(図において実線で示す部位)を有している。
【0020】
基礎30は、新築建物の下部構造であり、新築建物の重量を安定に支えるために設けられている。本実施形態の基礎30は鉄筋コンクリートで形成されている。
【0021】
<杭基礎構造の構築方法について>
図2は第1実施形態に係る杭基礎構造の構築方法の手順を示すフロー図である。また、図3は、杭10の杭頭部10Aを掘り出した状態を示す斜視図であり、図4は、杭10の周囲にアングル鋼20を圧入した状態を示す斜視図である。
【0022】
以下、古い建物(基礎を含む)が撤去された状態から説明を始める。古い建物が撤去されることにより、当該建物に使用されていた杭10が地中に埋設された状態で残っている。
【0023】
まず、図3に示すように、杭10の杭頭部10Aの周囲の土壌を除去して、杭10のうちの杭頭部10Aの端から長さL(本実施形態では50cm程度)分の部位を露出させる(杭頭部掘り出し工程S101)。このとき杭10の他の部位は地中に埋設されたままである。
【0024】
次に、図4に示すように、杭10の周囲(地中)にアングル鋼20を圧入する(アングル鋼圧入工程S102)。このときアングル鋼20の上端を杭頭部10Aとほぼ同じ位置にすることが望ましい。これはアングル鋼20と基礎30との定着性を高めるためである。また、アングル鋼20の下端は、少なくとも杭10のひび割れ部よりも下側に位置するように圧入する。なお、アングル鋼20と杭10との間の土はそのままにしていてもよいし、除去してもよい。
【0025】
本実施形態では、杭10の補強材としてアングル鋼20を用いているので、他の鋼材(例えば鋼管)を用いる場合と比べて、地中に圧入するときの圧入抵抗が小さい(圧入しやすい)。これにより、容易に杭10の補強を行うことができる。また、図のように杭10の周囲にアングル鋼20を配置することにより、せん断力に対する抵抗力(補強効果)を高めることができる。
【0026】
その後、新築建物の基礎30を形成するための鉄筋の配筋や型枠の設置を行ない、型枠にコンクリートを打設する(基礎配筋・コンクリート打設工程S103)。こうして、新築建物用の基礎30を形成するとともに、杭10杭頭部10Aやアングル鋼20の上部(図1で実線で示す部位)を基礎30に埋設させる(埋め込み定着工程S104)。
【0027】
このようにして、図1に示す杭基礎構造が構築される。各アングル鋼20の上部(実線で示す部位)は基礎30に埋設されることによって基礎30に定着している。すなわち、当該部位は定着部を構成している。また、その部位よりも下側の部位(破線で示す部位)は、杭10の周囲に配置されることにより杭10を補強している。すなわち、当該部位は補強部を構成している。このように、本実施形態の杭基礎構造においてアングル鋼20は、基礎30に定着する定着部と、杭10を補強する補強部とを有している。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の杭基礎構造は、地中に埋設された杭10と、杭10の周囲を囲むように設けられた4つのアングル鋼20と、杭10の杭頭部10Aを埋設して形成された基礎30とを備えている。そして、各アングル鋼20は、地中に圧入されて杭10を補強する補強部と、基礎30に埋設されることで基礎30に定着される定着部をそれぞれ有している。
【0029】
これにより、既存の杭10にひび割れ部がある場合においても、杭10を新築建物の杭として再利用することができる。また、本実施形態では、アングル鋼20を用いているので地中に圧入しやすい(施工が容易である)。また、せん断応力に対しての補強効果を高めることができる。
【0030】
なお、各アングル鋼20の上端と基礎30に配筋された鉄筋(不図示)とを例えば溶接などによって接合するようにしてもよい。この場合、基礎30への定着性をより高めることができる。また、例えば図4の状態において、隣接するアングル鋼20同士をそれぞれ連結(接合)させても良い。
【0031】
===第2実施形態===
第2実施形態では、杭10の杭頭部10Aを露出させた後の処理が第1実施形態と異なっている。
【0032】
図5は、第2実施形態に係る杭基礎構造の構築方法の手順を示すフロー図である。図5において、図2と同一工程には同一番号(ステップ番号)を付し説明を省略する。
【0033】
第2実施形態では、杭10の杭頭部10Aを露出させた後(杭頭部掘り出し工程S101の後)、杭頭処理を行なっている(杭頭処理工程S101´)。杭頭処理とは、杭の頂部(頭部)をはつり取る処理である。この杭頭処理により、杭10の内部に埋設されていた鉄筋が露出する。
【0034】
図6は、第2実施形態に係る杭基礎構造の説明図である。なお、図6において、図1と同一構成の部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0035】
第2実施形態では、前述した杭頭処理を行うことにより、杭10の杭頭部10Aの端に鉄筋11が20cm程度露出している。そして、第2実施形態では、杭頭処理により露出した鉄筋11と、基礎30に配筋された鉄筋(不図示)とを、例えば溶接により接合する。これにより杭10と基礎30との定着性をより高めることができる。なお、さらに基礎30に配筋された鉄筋(不図示)と、各アングル鋼20の上端とを溶接などにより接合するようにしてもよい。
【0036】
===第3実施形態===
第3実施形態では、杭基礎構造に用いられる杭の種類が前述の実施形態と異なっている。図7は、第3実施形態に係る杭基礎構造の説明図である。なお、図7において、図1と同一構成の部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0037】
第3実施形態では、既存杭として杭100が用いられている。
杭100は中空部を有する杭(例えば、PC杭、PHC杭、鋼管など)である。
【0038】
なお、杭基礎構造の構築方法は第1実施形態(図2)とほぼ同様である。
【0039】
このように第3実施形態では、図7のように杭100の周囲にアングル鋼20を設ける(圧入する)ことにより、杭100の健全性にかかわらずに、杭100を新築建物の杭として再利用することができる。
【0040】
===第4実施形態===
第4実施形態では、杭100の中空部に定着材を挿入しているところが第3実施形態と異なっている。
【0041】
図8は、第4実施形態に係る杭基礎構造の説明図である。なお、図8において、図7と同一構成の部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0042】
図8に示すように第4実施形態では、杭100の中空部に鉄筋籠200が挿入されている。また、鉄筋籠200の上端は杭100の杭頭部100Aよりも突出している。なお、鉄筋籠200が挿入された中空部100Bには、例えばコンクリートなどの充填材(不図示)が充填されている。
【0043】
そして、鉄筋籠200の鉄筋(杭100の杭頭部100Aから突出した鉄筋)と、基礎30に配筋された鉄筋とが例えば溶接などによって接合されている。
【0044】
この場合、杭100と基礎30との定着性をより高めることができる。なお、さらに基礎30に配筋された鉄筋(不図示)と、各アングル鋼20の上端とを溶接などにより接合するようにしてもよい。
【0045】
===その他の実施形態について===
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0046】
<杭について>
前述の実施形態では、杭(杭10、杭100)は、ひび割れ部を有していた(不健全であった)が、これには限られず、健全であってもよい。この場合においても、アングル鋼20を杭の周囲に配置して補強を行なうようにしてもよい。
【0047】
<アングル鋼20について>
前述の実施形態のアングル鋼20は辺の長さが等しい等辺山形鋼を用いていたが、辺の長さが異なる不等辺山形鋼を用いてもよい。
【0048】
また前述の実施形態では、杭(杭10、杭100)の周囲にアングル鋼20を4つ配置していたが、杭の周囲に配置するアングル鋼の数は4つには限られず、複数(2つ以上)であればよい。例えば、2つの場合、各辺の長さがアングル鋼20の約2倍のアングル鋼を用いて、杭の周囲を囲むように配置(圧入)すればよい。
【符号の説明】
【0049】
10 杭(中実杭)
10A 杭頭部
11 鉄筋
20 アングル鋼
30 基礎
100 杭(中空杭)
100A 杭頭部
100B 中空部
200 鉄筋籠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8