特許第6186888号(P6186888)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーウェーブの特許一覧

<>
  • 特許6186888-携帯端末 図000002
  • 特許6186888-携帯端末 図000003
  • 特許6186888-携帯端末 図000004
  • 特許6186888-携帯端末 図000005
  • 特許6186888-携帯端末 図000006
  • 特許6186888-携帯端末 図000007
  • 特許6186888-携帯端末 図000008
  • 特許6186888-携帯端末 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186888
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】携帯端末
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/00 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   G01P15/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-112311(P2013-112311)
(22)【出願日】2013年5月28日
(65)【公開番号】特開2014-232027(P2014-232027A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100166017
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和政
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】神谷 朋宏
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−232631(JP,A)
【文献】 特開2002−243754(JP,A)
【文献】 特開平11−296765(JP,A)
【文献】 特開昭61−120969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15/00−15/18
H04M 1/00− 1/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装ケースに保持された端末本体における所定の複数方向の加速度を検出する加速度センサと、
前記加速度センサが検出する加速度が所定状態となったことを条件として、前記端末本体の落下タイミングを検知する落下検知手段と、
前記落下検知手段によって前記端末本体の落下タイミングが検知された後、前記加速度センサが検出する加速度に所定の変化が生じたことを条件として、前記端末本体の落下後の衝撃タイミングを検知する衝撃検知手段と、
前記落下検知手段によって検知された前記落下タイミングから、前記衝撃検知手段によって検知された前記衝撃タイミングまでの経過時間に基づき落下高さを算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出された前記落下高さを反映した情報を前記端末本体内に記憶、又は前記端末本体外に出力する情報処理手段と、
を備え
前記衝撃検知手段により、前記衝撃タイミングが検知されたときに、前記加速度センサが検出する加速度が軽微な衝撃とみなされる所定の閾値未満である場合には、前記算出手段によって算出された前記落下高さを反映した情報を、前記情報処理手段によって前記端末本体内に記憶のみ行うことを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記情報処理手段は、前記衝撃タイミングが検知された日時をさらに記憶、又は、前記端末本体外に出力することを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記衝撃検知手段により前記衝撃タイミングが検知されたことを条件として報知を行う報知手段を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記衝撃検知手段により、前記衝撃タイミングが検知されたときに、前記加速度センサが検出する加速度が前記所定の閾値以上となったことを条件として報知を行う報知手段を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記衝撃検知手段は、前記端末本体にどの方向から落下衝撃が加わったかを検知可能に構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の携帯端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯型の光学的情報読取装置や携帯型の決済端末など様々な携帯端末が提供されている。そして、このような携帯端末は、携帯して使用されるが故、使用者が誤って落下させて衝撃を与えてしまい、故障が発生する場合がある。そして、このような落下を検出する機構を備えた携帯端末として、例えば、下記特許文献1に示すものが知られている。
【0003】
特許文献1には、自由落下しているときに加速度成分信号を出力するピエゾ抵抗型加速度センサ(106)を有した携帯型機器(磁気ディスク装置100)が開示されている。そして、加速度成分から算出した加速度の大きさが略零になって基準継続時間以上の間継続した場合、落下判別部(109)によって、磁気ディスク装置100が落下したと判定されて落下判定信号が発せられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−241442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1では、携帯端末の落下自体は検知することができるが、落下によって生じた衝撃がどの程度の大きさであるかを把握することができず、落下後の解析(例えば、携帯端末の故障原因の推測等)が難しかった。例えば、携帯端末が落下した後、一部の部品に故障等が判明した場合であっても、落下の衝撃がどの程度だったかを事後的に推測することが難しいため、その故障が大きな落下衝撃によるものか、それとも経年劣化等、他の要因によるものか判断するための情報が足りず、携帯端末の管理者や製造メーカなどでは、故障原因を特定することが難しいといった問題があった。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、落下衝撃が加わった際に落下高さの度合いを把握可能な状態で残すことが可能な携帯端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、外装ケースに保持された端末本体における所定の複数方向の加速度を検出する加速度センサと、前記加速度センサが検出する加速度が所定状態となったことを条件として、前記端末本体の落下タイミングを検知する落下検知手段と、前記落下検知手段によって前記端末本体の落下タイミングが検知された後、前記加速度センサが検出する加速度に所定の変化が生じたことを条件として、前記端末本体の落下後の衝撃タイミングを検知する衝撃検知手段と、前記落下検知手段によって検知された前記落下タイミングから、前記衝撃検知手段によって検知された前記衝撃タイミングまでの経過時間に基づき落下高さを算出する算出手段と、前記算出手段によって算出された前記落下高さを反映した情報を前記端末本体内に記憶、又は前記端末本体外に出力する情報処理手段と、を備え、前記衝撃検知手段により、前記衝撃タイミングが検知されたときに、前記加速度センサが検出する加速度が軽微な衝撃とみなされる所定の閾値未満である場合には、前記算出手段によって算出された前記落下高さを反映した情報を、前記情報処理手段によって前記端末本体内に記憶のみ行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、外装ケースに保持された端末本体における所定の複数方向の加速度を検出する加速度センサを備えており、この加速度センサが検出する加速度が所定状態となったことを条件として、端末本体の落下タイミングを落下検知手段により検知するようになっている。また、この落下検知手段によって端末本体の落下タイミングが検知された後、加速度センサが検出する加速度に所定の変化が生じたことを条件として、端末本体の落下後の衝撃タイミングを衝撃検知手段により検知し、落下検知手段によって検知された落下タイミングから、衝撃検知手段によって検知された衝撃タイミングまでの経過時間に基づき落下高さを算出手段により算出するようになっている。さらに、算出手段によって算出された落下高さを反映した情報を情報処理手段によって、端末本体内に記憶、又は端末本体外に出力するようにしている。この構成では、落下衝撃が加わった際に、落下高さの度合いを把握可能な状態で残すことが可能なため、落下後の解析(例えば、携帯端末の故障原因の推測等)が容易となる。特に、落下の衝撃がどの程度だったかを事後的に推測することができるため、携帯端末に故障が生じた場合に、携帯端末の管理者や製造メーカなどでは、その故障が落下衝撃によるものか、それとも経年劣化等、他の要因によるものかを特定しやすくなる。
特に、衝撃検知手段により、衝撃タイミングが検知されたときに、加速度センサが検出する加速度が軽微な衝撃とみなされる所定の閾値未満である場合には、算出手段によって算出された落下高さを反映した情報を、情報処理手段によって端末本体内に記憶のみ行うようにしている。このように、加速度が軽微な衝撃とみなされる所定の閾値未満である場合には、端末側では記憶のみ行い、この衝撃の検知は端末外部へは出力されないため、使用者や管理者等を不必要に煩わせることがない。
【0009】
請求項2の発明では、情報処理手段は、衝撃タイミングが検知された日時をさらに記憶、又は、端末本体外に出力するようにしている。このように、落下衝撃が加わった日時をさらに把握可能な状態で残すことが可能であるため、携帯端末の使用状況や、落下衝撃が加わった履歴をより管理しやすくなる。
【0010】
請求項3の発明では、衝撃検知手段により衝撃タイミングが検知されたことを条件として報知を行う報知手段を備えている。このように、報知手段を設けることで、携帯端末に落下衝撃が加わった際に、早期に対応しやすくなる。
【0011】
請求項4の発明では、衝撃検知手段により、衝撃タイミングが検知されたときに、加速度センサが検出する加速度が所定の閾値以上となったことを条件として報知を行う報知手段を備えている。このように、所定の閾値以上となったときに報知を行うようにしているので、故障に繋がらないような軽微な衝撃(加速度の値が所定の閾値未満)の場合にまで不必要に報知がなされることを防ぐことができる。
【0013】
請求項の発明では、衝撃検知手段は、端末本体にどの方向から落下衝撃が加わったかを検知可能に構成されているため、落下後の解析をより容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る携帯端末の構成概要を示す図であり、図1(A)は正面図、図1(B)は側面図である。
図2図1の携帯端末の電気的構成を例示するブロック図である。
図3図3は、第1実施形態に係る携帯端末で行われる落下衝撃検知処理の流れを例示するフローチャートである。
図4図4は、経過時間に対して、加速度センサにて検出される加速度値をプロットした図である。
図5図5は、経過時間に対して、加速度センサにて検出される加速度値をプロットした図である。
図6図6は、落下高さを算出する様子を説明する説明図であり、図6(A)は落下高さ2.0mのとき、図6(B)は落下高さ1.5mのとき、図6(C)は落下高さ1.0mのとき、図6(D)は落下高さ0.5mのときを示している。
図7図7は、落下高さと、加速度センサにより検出される加速度値が閾値を超えるまでの時間との関係を示す図である。
図8図8は、第2実施形態に係る携帯端末で行われる落下衝撃検知処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る携帯端末を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
(携帯端末の全体構成)
図1(A),(B)に示す携帯端末1は、長手状の外観をなしており、その一端側のほぼ半分の領域が把持領域とされ、ユーザによって把持されつつ使用される構成をなしている。この携帯端末1は、例えば、ユーザによって携帯されて様々な場所で用いられる携帯型の情報端末として構成されており、バーコードや二次元コードなどの情報コードを読み取る情報コードリーダとしての機能と、無線タグを読み取る無線タグリーダとしての機能とを備え、読み取りを二方式で行いうる構成となっている。
【0017】
図1(A),(B)に示すように、携帯端末1は、ABS樹脂等の合成樹脂材料により形成される上側ケース2aおよび下側ケース2bが組み付けられて構成される長手状の筐体2によって外郭が形成されている。また、上側ケース2aには、所定の情報を入力する際に操作されるファンクションキーおよびテンキー等のキー操作部25や、所定の情報を表示するための表示部24、トリガキー50等が配置されている。さらに、図1および図2に示すように、下側ケース2bには、下方に向けて開口する読取口11cが形成されている。なお、筐体2は、「外装ケース」の一例に相当する。
【0018】
本実施形態では、筐体2の長手方向を前後方向(図1のX軸方向)とし、読取口11cが形成された側を前方側(+X軸側)、それとは反対側を後方側(−X軸側)としている。また、筐体2の厚さ方向を上下方向(図1のY軸方向)とし、キー操作部25や表示部24が設けられた側を上方側(+Y軸側)、それとは反対側を下方側(−Y軸側)としている。また、これら前後方向及び上下方向と直交する方向を幅方向(図1のZ軸方向)とし、幅方向一方側を左側(−Z軸側)、それとは反対側を右側(+Z軸側)としている。
【0019】
(携帯端末の電気的構成)
次に、携帯端末1が備えている機能について説明する。
図2(A)に示すように、携帯端末1の筐体2内には、携帯端末1全体を制御する制御部21が設けられている。この制御部21は、マイコンを主体として構成されるものであり、CPU、システムバス、入出力インタフェース等を有し、メモリ22とともに情報処理装置を構成している。また、制御部21には、LED23、表示部24、キー操作部25、スピーカ26、外部インタフェース27、加速度センサ60、タイマ部62などが接続されている。キー操作部25は、制御部21に対して操作信号を与える構成をなしており、制御部21は、この操作信号を受けて操作信号の内容に応じた動作を行う。また、LED23、表示部24およびスピーカ26は、制御部21によって制御される構成をなしており、それぞれ、制御部21からの指令を受けて動作する。外部インタフェース27は、外部装置(例えばホスト装置)との間でのデータ通信を行うためのインタフェースとして構成されており、制御部21と協働して通信処理を行う構成をなしている。また、筐体2内には、電源部28が設けられており、この電源部28やバッテリ29によって制御部21や各種電気部品に電力が供給されるようになっている。
【0020】
また、制御部21には、情報コードを光学的に読み取るための情報コード読取部30が接続されている。この情報コード読取部30は、図2(B)に示すように、CCDエリアセンサからなる受光センサ33、結像レンズ37、複数個のLEDやレンズ等から構成される照明部31などを備えた構成をなしており、制御部21と協働して読取対象Rに付された情報コードC(バーコードや二次元コード)を読み取るように機能する。
【0021】
この情報コード読取部30によって読み取りを行う場合、まず、制御部21によって指令を受けた照明部31から照明光Lfが出射され、この照明光Lfが読取口11c(図1(B)参照)を通って読取対象Rに照射される。そして、照明光Lfが情報コードC(バーコードや二次元コード)にて反射した反射光Lrは読取口11cを通って装置内に取り込まれ、結像レンズ37を通って受光センサ33に受光される。読取口11cと受光センサ33との間に配される結像レンズ37は、情報コードCの像を受光センサ33上に結像させる構成をなしており、受光センサ33はこの情報コードCの像に応じた受光信号を出力する。受光センサ33から出力された受光信号は、画像データとしてメモリ22(図2(A))に記憶され、情報コードCに含まれる情報を取得するためのデコード処理に用いられるようになっている。なお、情報コード読取部30には、受光センサ33からの信号を増幅する増幅回路や、その増幅された信号をデジタル信号に変換するAD変換回路等が設けられているがこれらの回路については図示を省略している。
【0022】
また、制御部21には、非接触通信部40が接続されている。この非接触通信部40は、アンテナ70及び制御部21と協働してRFIDタグ等の非接触通信媒体との間で電磁波による通信を行ない、非接触通信媒体に記憶されるデータの読取り、或いは非接触通信媒体に対するデータの書込みを行なうように機能するものである。この非接触通信部40は、公知の電波方式で伝送を行う回路として構成されており、図2(C)にて概略的に示すように、制御部41に加えて、発振器42、変調器43、復調器44などを備えてなるものである。なお、非接触通信部40には、これら以外の公知構成(例えば、増幅器、フィルタ回路、整合回路等)も設けられているが、図2(C)ではこれらについては図示を省略している。
【0023】
また、制御部21には、タイマ部62が接続されている。タイマ部62は、リアルタイムクロック(以下、「RTC」と略す)等から構成されており、制御部21からの信号に基づき所定の時間(詳細は後述)を計測し、制御部21へ出力するようになっている。
【0024】
そして、携帯端末1には、加速度センサ60が設けられている。加速度センサ60は、公知の3軸加速度センサとして構成されており、本構成では携帯端末1において互いに直交する所定の三方向(X軸、Y軸、Z軸方向)のそれぞれの加速度を測定する構成をなしている。なお、加速度を検出する方向はあくまで一例であり、各軸の方向はこの例に限られるものではない。
【0025】
制御部21は、加速度センサ60による各方向の検出値(X、Y、Z軸方向の各加速度)に基づき、公知の方法で、当該端末1の落下や衝撃を検知するようになっており、例えば、特開2008−5322公報、特開2007−128317などに示される方法などによって、検出できるようになっている。そして、制御部21では、加速度センサ60の加速度の変化から、落下高さを算出できるようになっている(詳細は後述)。また、制御部21は、設定されたX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の加速度がそれぞれどの程度であるかを加速度センサ60からの信号に基づき算出できるようになっている。
【0026】
(落下衝撃検知処理)
次に、落下衝撃検知処理について、図3〜7を用いて説明する。
まず、携帯端末1が、所定位置に置かれている(若しくは、使用者に把持されている)状態から落下すると、この自由落下によって携帯端末1に加速度値の変化が生じ、この変化が加速度センサ60によって感知される。そして加速度センサ60は、割込信号を制御部21に対して発生させる(ステップS1でYes)。具体的に、自由落下の状態では、加速度センサ60によって検出される携帯端末1の加速度値はx、y、zのそれぞれでゼロになるため、x、y、zの加速度値がいずれも所定閾値未満となったタイミング(例えば、いずれもゼロになったタイミング)を、落下タイミングとして検知するようにしている(すなわち、加速度センサ60が検出する加速度値が所定の低レベルの状態(例えば、ゼロの状態)が所定状態であり、加速度値が所定状態となったことを条件として、落下タイミングが検知されるようになっている)。ここで、この割込信号が発生するまでは、ステップS1では、Noとの判定が繰り返されている。なお、加速度センサ60及び制御部21は、「落下検知手段」の一例に相当する。
【0027】
次に、この割込信号が入力された制御部21は、加速度センサ60にアクセスし、x、y、zのそれぞれの加速度値を取得し、メモリ22に記憶するようにしている(ステップS2)。具体的に、例えば、落下を検知してから、1秒間の間、所定の読み出し間隔で、x、y、zの加速度値を記録する。この読み出し間隔は、任意に設定することができ、この読み出し間隔が短いほど加速度の検出精度は高くなるが、処理が多くなるために他の動作へ影響を与える場合がある(端末の負荷が大きくなる)。一方、読み出し間隔が長いほど、処理が少ないため他の動作への影響は抑えられるが(端末の負荷が小さくなるが)、加速度の検出精度が低くなってしまう。そのため、この読み出し間隔は、端末の負荷がある程度抑えられ、また、ある程度の検出精度(算出される距離の誤差が許容範囲内の精度)が得られる程度に設定するとよい。
【0028】
ここで、ステップS2にて記録されるx、y、zの加速度値は、例えば、図4、5に示すようになる。図4、5では、異なる4つの高さ(図6参照)から携帯端末1を落下させたときの時間に対する加速度の変化をそれぞれ示している。図4、5において、実線がx軸方向に検出された加速度値を示し、一点鎖線がy軸方向に検出された加速度値を示し、点線がz軸方向に検出された加速度値を示している。また、携帯端末1が自由落下する前の静止している状態では、加速度は64(1G相当。加速度値が−256〜255の値で変動し±4Gの検出が可能な加速度センサの場合の例)となっている。一般的に、自由落下している最中は、加速度センサ60により検出される加速度値は、x軸、y軸、z軸ともほぼゼロとなり、地面に落下して衝撃が加わると、この加速度値は急激に増大する。ステップS3では、加速度センサ60が検出する加速度値に所定の変化が生じたことを条件として、端末本体の落下後の衝撃タイミングを検知するようにしている。具体的に、x軸、y軸、z軸の各加速度値の絶対値がゼロ付近から急激に増大したときに、端末本体の衝撃タイミングを検知している。より具体的に、|x|、|y|、|z|の加速度値の少なくともいずれかがある閾値を超えたときに、その閾値を超えたタイミングを衝撃タイミングとしている。例えば、|x|、|y|、|z|の加速度値の少なくともいずれかが重力加速度を超えたときに、その閾値を超えたタイミングを衝撃タイミングとするとよい。また、この閾値は、重力加速度の値よりもやや低い値としてもよく、重力加速度の値よりもやや高い値としてもよい。そして、この加速度値の変化を基に、携帯端末1が落下してから衝突するまでの時間(落下タイミングが検知されてから衝撃タイミングが検知されるまでの経過時間(落下時間)t0)を図4、5から求め、メモリ22に記憶するようにしている。なお、この経過時間t0は、制御部21からの信号に基づき、タイマ部62にて計測されるようになっている。また、加速度センサ60及び制御部21は、「衝撃検知手段」の一例に相当する。
【0029】
次に、ステップS4にて、|x|、|y|、|z|の値の少なくともいずれかが、閾値a以上であるか否かが判定される。本実施形態では、この閾値aは±80に設定されており、|x|、|y|、|z|のいずれかの加速度値が±80を超えた場合にはYesと判定され、続くステップS5の処理へと進む。一方、|x|、|y|、|z|の値のいずれかが閾値a未満である場合は、故障に繋がらないような軽微な衝撃であるため、ステップS5以降の処理を行わず、再びステップS1へと戻る。この閾値aは、適宜変更することができ、例えば、弱い衝撃でも検知したい場合はaの値を小さくし、大きな衝撃のみを検知したい場合はaの値を大きくするとよい。なお、落下する高さ(落下高さ)が大きいほど、落下してから衝撃が発生するまでの時間(落下時間)が長くなるため、図4、5に示すように、落下高さが大きいほど、加速度値のピーク値は右側へシフトする(図4、5では、説明の便宜上、ステップS6で算出される落下高さhの値を予め記載している)。なお、加速度センサ60及び制御部21は、「衝撃検知手段」の一例に相当する。
【0030】
そして、このように衝撃タイミングが検知されて、|x|、|y|、|z|の値のいずれかが閾値a以上となったときに、さらに、使用者等に報知するようにしてもよい。例えば、ブザー音やアラーム音をスピーカ26から発してもよく、端末が落下した旨のメッセージを表示部24に表示させるようにしてもよい。なお、スピーカ26及び表示部24は、「報知手段」の一例に相当する。
【0031】
次に、ステップS5にて、上述したステップS3で求められた経過時間t0に補正値taを足し合わせる。ここで、ステップS1において、制御部21で割込信号が検知されてから衝撃タイミングを検知するまでの時間を測定するまでに、ソフトウェア処理上での遅延が発生する。このため、ステップS5では、この遅延時間を補正値taとしてt0に足し合わせることで、算出する落下高さhをより精度よく求めることができる。
【0032】
そして、続くステップS6にて、このt1を基に、落下高さhを求めるようにしている。ここで、落下高さhは、等加速度直線運動の公式を用いて、次式で求めることができる。
h=v0×t+1/2×g×t・・・(1)
ただし、初速v0=0、重力加速度g=9.8m/sである。
この式(1)に、ステップS5にて補正された補正値t(=t0+ta)を代入し、落下高さhを求めることができる。例えば、図4(A)のグラフから求めた落下高さhは、図6(A)に示すように2.0mとなり、図4(B)のグラフから求めた落下高さhは、図6(B)に示すように1.5mとなる、また、図5(A)のグラフから求めた落下高さhは、図6(C)に示すように1.0mとなり、図5(B)のグラフから求めた落下高さhは、図6(D)に示すように0.5mとなる。
【0033】
なお、落下高さhと、|x|、|y|、|z|の値のいずれかが閾値a以上(ここではa=±80)となるまでの時間(s)との関係は図7に示すようになる。したがって、予め、この表をメモリ22に記憶しておき、この表を基に、落下高さhを算出するようにしてもよい。このようにすることで、制御部21での処理負荷を抑えることができる。そして、このように算出された落下高さhは、メモリ22に記憶されるか、端末本体外(例えばホストコンピュータなどの上位装置等)へ出力されて、当該落下衝撃検知処理が終了する。本実施形態では、さらに、落下衝撃タイミングが発生すると、このログが随時メモリ22に記録されるようになっており、算出された落下高さhのデータと紐付けされて、メモリ22に記録されるか、端末本体外へ出力されるようになっている。なお、制御部21は、「算出手段」及び「情報処理手段」の一例に相当する。また、落下高さhは、「落下高さを反映した情報」の一例に相当する。
【0034】
ここで、「落下高さを反映した情報」は、落下高さhのほか、衝撃タイミングが検知された日時や、落下タイミングが検知されてから衝撃タイミングが検知されるまでの経過時間t0であってもよい。また、落下高さhや経過時間t0から求めた落下衝撃力などの値であってもよい。なお、|x|、|y|、|z|の値のいずれかが閾値a未満である場合は、ステップS3にて算出された経過時間t0を「落下高さを反映した情報」としてメモリ22に記憶のみ行うようにしている。
【0035】
以上説明したように、本第1実施形態に係る携帯端末1では、外装ケースに保持された端末本体における所定の複数方向の加速度を検出する加速度センサ60を備えており、この加速度センサ60が検出する加速度が所定状態となったことを条件として、端末本体の落下タイミングを落下検知手段(制御部21,加速度センサ60)により検知するようになっている。また、この落下検知手段によって端末本体の落下タイミングが検知された後、加速度センサ60が検出する加速度に所定の変化が生じたことを条件として、端末本体の落下後の衝撃タイミングを衝撃検知手段(制御部21,加速度センサ60)により検知し、落下検知手段によって検知された落下タイミングから、衝撃検知手段によって検知された衝撃タイミングまでの経過時間t0に基づき落下高さhを算出手段(制御部21)により算出するようになっている。さらに、算出手段によって算出された落下高さhを反映した情報を情報処理手段(制御部21)によって、端末本体内に記憶、又は端末本体外に出力するようにしている。この構成では、落下衝撃が加わった際に、落下高さhの度合いを把握可能な状態で残すことが可能なため、落下後の解析(例えば、携帯端末1の故障原因の推測等)が容易となる。特に、落下の衝撃がどの程度だったかを事後的に推測することができるため、携帯端末1に故障が生じた場合に、携帯端末1の管理者や製造メーカなどでは、その故障が落下衝撃によるものか、それとも経年劣化等、他の要因によるものかを特定しやすくなる。
【0036】
また、情報処理手段は、衝撃タイミングが検知された日時をさらに記憶、又は、端末本体外に出力するようにしている。このように、落下衝撃が加わった日時をさらに把握可能な状態で残すことが可能であるため、携帯端末1の使用状況や、落下衝撃が加わった履歴をより管理しやすくなる。
【0037】
また、衝撃検知手段により衝撃タイミングが検知されたことを条件として報知を行う報知手段(表示部24、スピーカ26)を備えている。このように、報知手段を設けることで、携帯端末1に落下衝撃が加わった際に、早期に対応しやすくなる。
【0038】
また、衝撃検知手段により、衝撃タイミングが検知されたときに、加速度センサ60が検出する加速度が所定の閾値a以上となったことを条件として報知手段により報知を行うようにしている。このように、所定の閾値a以上となったときに報知を行うようにしているので、故障に繋がらないような軽微な衝撃(加速度の値が所定の閾値a未満)の場合にまで不必要に報知がなされることを防ぐことができる。
【0039】
また、衝撃検知手段により、衝撃タイミングが検知されたときに、加速度センサ60が検出する加速度が所定の閾値a未満である場合には、算出手段によって算出された落下高さhを反映した情報を、情報処理手段によって端末本体内に記憶のみ行うようにしている。このように、加速度が所定の閾値未満である場合(軽微な衝撃の場合)には、端末側では記憶のみ行い、この衝撃の検知は端末外部へは出力されないため、使用者や管理者等を不必要に煩わせることがない。
【0040】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る携帯端末1にて行われる落下衝撃検知処理について、図8に示すフローチャートを用いて説明する。本第2実施形態では、上記第1実施形態の構成に加え、さらに、端末本体にどの方向から落下衝撃が加わったかを検知するように構成されている。したがって、第1実施形態の携帯型決済端末1と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0041】
上記第1実施形態1と同様に、ステップS21にて割込信号が加速度センサ60によって発生すると、制御部21により当該端末本体の落下タイミングが検知される。そして、ステップS22にて、x、y、zのそれぞれの加速度値を取得し、メモリ22に記憶するようにしている(ステップS22)。そして、ステップS23にて衝撃タイミングが検知されると、ステップS24にて、|x|、|y|、|z|の値のいずれかが、閾値a以上であるか否かが判定される。
【0042】
ステップS24にてYesと判定されると、続くステップS25にて、|x|、|y|、|z|の値の最大値(各軸の加速度の絶対値の値のピーク値)を比較する。そして、ステップS26にて、落下方向を特定する。|x|、|y|、|z|の各最大値のうち、x軸が最大の場合は、前後方向の落下であると判断する。また、このとき、xの値がプラスであれば前方向への落下、xの値がマイナスであれば後ろ方向への落下と判断することができる。|x|、|y|、|z|の各最大値のうち、y軸が最大の場合は、上下方向への落下であると判断する。また、このとき、yの値がプラスであれば上方向への落下、yの値がマイナスであれば下方向への落下と判断することができる。|x|、|y|、|z|の各最大値のうち、z軸が最大の場合は、幅方向への落下であると判断する。また、このとき、zの値がプラスであれば右方向への落下、zの値がマイナスであれば左方向への落下と判断することができる。なお、ステップS25からの処理と並行して、上述したステップS4〜S6の落下高さhを算出する処理が行われており(図示略)、算出された落下高さhと共に落下方向が、メモリ22に記録されるか、端末本体外へ出力されるようになっている。
【0043】
このように、本第2実施形態に係る携帯端末1では、衝撃検知手段(制御部21)は、端末本体にどの方向から落下衝撃が加わったかを検知可能に構成されているため、落下後の解析をより容易にすることができる。
【0044】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0045】
上記各実施形態では、三軸センサを用いたが、六軸センサ等のセンサを用いてもよい。
【0046】
上記各実施形態では、加速度センサ60によって検出されるx、y、zの加速度値がゼロとなったことを条件として落下タイミングを検知するようにしたが、これに限らず、例えば、|x|、|y|、|z|の加速度値がある閾値未満となったことを条件として落下タイミングを検知するようにしてもよい。
【0047】
上記各実施形態では、|x|、|y|、|z|の値のいずれかが閾値a以上となったときに、使用者等に報知する構成を例示したが、報知しない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…携帯端末
2…筐体(外装ケース)
21…制御部(落下検知手段、衝撃検知手段、算出手段、情報処理手段)
22…メモリ
24…表示部(報知手段)
26…スピーカ(報知手段)
60…加速度センサ(落下検知手段、衝撃検知手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8