(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186892
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】車両に搭載される燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20170821BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20170821BHJP
B60L 11/18 20060101ALI20170821BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/00 Z
B60L11/18 G
B60L1/00 L
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-113765(P2013-113765)
(22)【出願日】2013年5月30日
(65)【公開番号】特開2014-232681(P2014-232681A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2015年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】藤森 弘幸
【審査官】
清水 康
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−098134(JP,A)
【文献】
特開2007−012418(JP,A)
【文献】
特開2012−028146(JP,A)
【文献】
特開2008−053162(JP,A)
【文献】
特開2008−300177(JP,A)
【文献】
特開2013−045514(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/029862(WO,A1)
【文献】
特開2014−235781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/2495
B60L 11/18
B60L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される燃料電池システムであって、
水素と酸素の化学反応によって電気エネルギーを発生させる燃料電池と、
前記燃料電池の出力に接続される第1補機と、
前記燃料電池の出力と前記第1補機との間に並列に接続される第1蓄電手段と、
前記燃料電池の出力に前記第1蓄電手段および前記第1補機と並列に接続される電力変換手段と、
前記電力変換手段の出力側に接続されると共に前記第1補機よりも消費電力の低い第2補機と、
前記電力変換手段の出力側と前記第2補機との間に接続される第2蓄電手段と、
前記電力変換手段の動作を制御する制御手段と、
前記燃料電池の出力電圧を測定する電圧測定手段と、
前記燃料電池から前記電力変換手段に流入する電流を測定する電流測定手段と
を備え、
前記制御手段は、前記電力変換手段を制御することによって前記燃料電池から出力されて前記電力変換手段に流入する直流電流に微小振幅の交流電流を重畳させ、その際に前記電圧測定手段によって測定される電圧値と前記電流測定手段によって測定される電流値とに基づいて、前記燃料電池のインピーダンスを測定する、車両に搭載される燃料電池システム。
【請求項2】
前記電力変換手段は、DC/DCコンバータである、請求項1に記載の車両に搭載される燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載される燃料電池システムに係り、特に燃料電池のインピーダンスを測定することができる、車両に搭載される燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムを搭載した車両の実用化が進められている。一般的な燃料電池システムでは、燃料電池に水素と酸素が供給され、これら水素と酸素が燃料電池内で化学反応を起こすことによって、電気エネルギーが生成される。
【0003】
燃料電池の発電状態を高効率に保つためには、燃料電池の内部水分量を適切な水準に保つことが重要である。しかしながら、燃料電池の内部水分量を直接測定することは困難であるため、通常、燃料電池の内部水分量とインピーダンスとの間に相関関係があることを利用して、まず燃料電池のインピーダンスを測定し、測定されたインピーダンスに基づいて内部水分量を推定することが行われている。
【0004】
特許文献1には、交流インピーダンス法を用いて燃料電池のインピーダンスを測定する方法が記載されている。具体的には、燃料電池の出力する直流電圧に微小振幅の交流電圧を重畳させ、その際に測定される燃料電池の出力電圧と出力電流に基づいて、燃料電池のインピーダンスを測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−12418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、燃料電池の出力電圧は、燃料電池の出力に接続される補機の負荷変動に伴って変動するため、特許文献1に記載されているように燃料電池の出力電圧に微小振幅の交流電圧を重畳させてインピーダンスを測定する方法では、補機の負荷変動が大きい場合に十分な測定精度が得られない可能性がある。
【0007】
この発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、燃料電池のインピーダンスを補機の負荷変動の影響を受けずに高い精度で測定することができる、車両に搭載される燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明に係る車両に搭載される燃料電池システムは、水素と酸素の化学反応によって電気エネルギーを発生させる燃料電池と、燃料電池の出力に接続される第1補機と、燃料電池の出力と第1補機との間に並列に接続される第1蓄電手段と、燃料電池の出力に第1蓄電手段および第1補機と並列に接続される電力変換手段と、電力変換手段の出力側に接続されると共に第1補機よりも消費電力の低い第2補機と、
電力変換手段の出力側と第2補機との間に接続される第2蓄電手段と、電力変換手段の動作を制御する制御手段と、燃料電池の出力電圧を測定する電圧測定手段と、燃料電池から電力変換手段に流入する電流を測定する電流測定手段とを備え、制御手段は、電力変換手段を制御することによって燃料電池から出力されて電力変換手段に流入する直流電流に微小振幅の交流電流を重畳させ、その際に電圧測定手段によって測定される電圧値と電流測定手段によって測定される電流値とに基づいて、燃料電池のインピーダンスを測定する。
【0009】
電力変換手段は、DC/DCコンバータであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る車両に搭載される燃料電池システムによれば、燃料電池のインピーダンスを補機(第1補機)の負荷変動の影響を受けずに高い精度で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の実施の形態1に係る車両に搭載される燃料電池システムの構成を示す図である。
【
図2】この発明の実施の形態1に係る車両に搭載される燃料電池システムにおける燃料電池のインピーダンスの測定方法を示すフローチャートである。
【
図3】この発明の実施の形態2に係る車両に搭載される燃料電池システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る車両に搭載される燃料電池システム100の構成を
図1に示す。なお、以降の説明では、燃料電池システムは、フォークリフト等の荷役装置を有する産業車両に搭載されるものとして説明する。
【0015】
燃料電池システム100は、燃料電池1と、水素ガスを供給可能な水素タンク2と、酸素を含む空気を供給可能なコンプレッサ3とを備えており、水素タンク2から供給される水素とコンプレッサ3から供給される空気中の酸素とが燃料電池1の内部で化学反応を起こすことによって、電気エネルギーが生成される。燃料電池1と水素タンク2の間には、燃料電池1に供給される水素ガス量を調整するための電磁弁4が設けられており、電磁弁4およびコンプレッサ3は、マイクロコンピュータによって構成される電子制御ユニット(ECU)5によって制御される。ECU5は、電磁弁4の開度とコンプレッサ3の吐出量を制御することによって、燃料電池1に供給される水素と酸素の量を調整し、燃料電池1の発電電力を制御する。
【0016】
燃料電池1の出力には、ダイオード6とキャパシタ7を介して第1補機8が接続されている。
ダイオード6は、燃料電池1に向けて電流が逆流するのを防止するための保護ダイオードである。
キャパシタ7は、燃料電池1の発電電力が第1補機8の要求電力を上回る場合には余剰の電力を充電し、発電電力が要求電力を下回る場合には、不足分の電力を放電して第1補機8に供給する。
第1補機8は、産業車両の荷役装置を駆動するための荷役モータや車軸を駆動するための走行モータ等の機器である。
【0017】
また、燃料電池1の出力には、上記キャパシタ7や第1補機8と並列にDC/DCコンバータ9が接続されており、DC/DCコンバータ9の出力側にはバッテリ10を介して第2補機11が接続されている。
DC/DCコンバータ9は、ECU5からの制御信号Ctrlによって出力電流を可変制御可能なスイッチングレギュレータであり、燃料電池1から出力される約48Vの直流電圧を12Vの直流電圧に降圧する電力変換手段として機能する。
バッテリ10は、充放電可能な二次電池であり、DC/DCコンバータ9から第2補機11に供給される直流電力を安定化させる。
第2補機11は、産業車両に搭載される各種センサやアクチュエータ類等の上記第1補機8に比べて消費電力の低い機器である。
【0018】
また、燃料電池1の出力電圧vを測定するための電圧センサ12と、燃料電池1からDC/DCコンバータ9に流入する電流iを測定するための電流センサ13とが設けられており、これらセンサによって測定された情報はECU5に入力される。なお、図示しないが、燃料電池1の出力電流を測定する電流センサが設けられており、このセンサによって測定された情報もECU5に入力される。
【0019】
電子制御ユニット(ECU)5は、上述したように電磁弁4の開度とコンプレッサ3の吐出量を制御することによって燃料電池1の発電電力を制御すると共に、制御信号CtrlによってDC/DCコンバータ9の出力電流を制御する。また、ECU5は、交流インピーダンス法に基づいて燃料電池1のインピーダンスを測定する機能を有しており、測定されたインピーダンスに基づいて燃料電池1の内部水分量を推定することができる。以下、ECU5が燃料電池1のインピーダンスを測定する方法の詳細について、
図2のフローチャートを参照して説明する。
【0020】
図2のステップS1において、ECU5は、DC/DCコンバータ9への制御信号Ctrlを調整することによって、燃料電池1から出力されてDC/DCコンバータ9に流入する直流電流i
DCに所定周波数fpを有する微小振幅の交流電流i
ACが重畳されるようにする。より詳細には、通常、スイッチングレギュレータ型のDC/DCコンバータの出力電流と入力電流とは概ね比例関係にあるため、DC/DCコンバータ9の出力電流ioに所定周波数fpの交流電流を重畳させることによって、燃料電池1から出力されてDC/DCコンバータ9に流入する直流電流i
DCに所定周波数fpの交流電流i
ACを重畳させる。なお、重畳させる交流電流i
ACの具体的な波形としては、例えば正弦波や矩形波とすることができる。また、微小振幅の大きさは、直流電流i
DCの大きさの10%未満であることが好ましい。
【0021】
次に、ステップS2において、上記微小振幅の交流電流i
ACが重畳された状態における、電圧センサ12によって測定される燃料電池1の出力電圧vと、電流センサ13によって測定される燃料電池1からDC/DCコンバータ9に流入する電流i(=i
DC+i
AC)を、所定時間に渡ってそれぞれサンプリングする。
【0022】
次に、ステップS3において、ステップS2でサンプリングされた電圧と電流の各サンプリング系列に対して高速フーリエ変換を行い、上記所定周波数fpに対応する電圧の複素周波数成分V(fp)と電流の複素周波数成分I(fp)をそれぞれ抽出する。
【0023】
最後に、ステップS4において、ステップS3で抽出された電圧の複素周波数成分V(fp)と電流の複素周波数成分I(fp)とから、燃料電池1の所定周波数fpにおける複素インピーダンスZ(fp)を以下の式に従って算出する。
【0025】
ECU5は、上記ステップS1〜S4の処理を実行することによって、燃料電池1の所定周波数fpにおけるインピーダンスZ(fp)を測定することができる。なお、当然のことながら、種々の周波数fpの値について上記ステップS1〜S4の処理を実行することによって、インピーダンスZの周波数特性を測定することもできる。
【0026】
以上説明したように、この実施の形態1に係る車両に搭載される燃料電池システム100では、DC/DCコンバータ9を制御することによって燃料電池1から出力されてDC/DCコンバータ9に流入する直流電流i
DCに所定周波数fpを有する微小振幅の交流電流i
ACを重畳させ、その際に電圧センサ12によって測定される電圧値vと電流センサ13によって測定される電流値iとに基づいて、所定周波数fpにおける燃料電池1のインピーダンスZ(fp)を測定する。
【0027】
前述したように、燃料電池1の出力電圧は第1補機8の負荷変動に伴って変動するため、特許文献1に記載されているように燃料電池1の出力電圧に微小振幅の交流電圧を重畳させてインピーダンスを測定する方法では、第1補機8の負荷変動が大きい場合に十分な測定精度が得られない可能性がある。これに対して、本願発明では、燃料電池1の出力にキャパシタ7や第1補機8と並列にDC/DCコンバータ9が接続され、燃料電池1から出力されてDC/DCコンバータ9に流入する直流電流i
DCに微小振幅の交流電流i
ACを重畳させてインピーダンスを測定する。これにより、燃料電池1のインピーダンスを第1補機8の負荷変動の影響を受けずに高い精度で測定することができる。
【0028】
なお、燃料電池1から第1補機8に向けて流れる電流の大きさは、第1補機8に含まれる荷役モータや走行モータ等の消費電力が大きいために数百アンペア程度である。そのため、仮に第1補機8に向けて流れる直流電流に微小振幅の交流電流を重畳させてインピーダンスを測定する場合には、電流センサの測定レンジを数百アンペアのオーダーに設定する必要があり、十分な測定精度が得られない可能性がある。これに対して、燃料電池1からDC/DCコンバータ9に流入する電流の大きさは、第2補機11に含まれる機器の消費電力が小さいために数アンペア程度である。そのため、本願発明のように燃料電池1から出力されてDC/DCコンバータ9に流入する直流電流i
DCに微小振幅の交流電流i
ACを重畳させてインピーダンスを測定することにより、電流センサ13の測定レンジを数アンペアのオーダーに設定ことができ、燃料電池1のインピーダンスを高い精度で測定することができる。
【0029】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る車両に搭載される燃料電池システム200の構成を
図3に示す。
【0030】
実施の形態2では、実施の形態1におけるDC/DCコンバータ9に代えて、DC/ACコンバータ209が接続されており、DC/ACコンバータ209の出力側には第2補機211が接続されている。
【0031】
DC/ACコンバータ209は、ECU205からの制御信号Ctrl’によって出力電流を可変制御可能な三相出力型のインバータであり、燃料電池1から出力される約48Vの直流電圧を12Vの三相交流電圧に変換する電力変換手段として機能する。
第2補機211は、三相交流によって動作する機器であって、コンプレッサ3を駆動するための小型モータ等の第1補機8に比べて消費電力の低い機器である。
ECU205は、実施の形態1と同様に、DC/ACコンバータ209を制御することによって燃料電池1から出力されてDC/ACコンバータ209に流入する直流電流i
DCに所定周波数fpを有する微小振幅の交流電流i
ACを重畳させ、その際に電圧センサ12によって測定される電圧値vと電流センサ13によって測定される電流値iとに基づいて、所定周波数fpにおける燃料電池1のインピーダンスを測定する。
【0032】
上記のように構成しても、実施の形態1と同様に、燃料電池1のインピーダンスを第1補機8の負荷変動の影響を受けずに高い精度で測定することができる。
【0033】
その他の実施の形態.
実施の形態1,2では、燃料電池1の出力電圧vを測定するために電圧センサ12を設け、燃料電池1からDC/DCコンバータ9やDC/ACコンバータ209に流入する電流iを測定するために電流センサ13が設けられていたが、これら出力電圧vや流入電流iをDC/DCコンバータ9やDC/ACコンバータ209の内部で測定するようにしてもよい。
また、実施の形態1,2では、本願発明をフォークリフト等の荷役装置を有する産業車両に適用した例を説明したが、本願発明を適用可能な車両はこれに限定されるものではなく、燃料電池システムを搭載した車両であればよい。そのため、例えば牽引車や乗用車等であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
100,200 燃料電池システム、1 燃料電池、5,205 ECU(制御手段)、7 キャパシタ(第1蓄電手段)、8 第1補機、9 DC/DCコンバータ(電力変換手段)、209 DC/ACコンバータ(電力変換手段)、10 バッテリ(第2蓄電手段)、11,211 第2補機、12 電圧センサ(電圧測定手段)、13 電流センサ(電流測定手段)。