(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186916
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】野菜サラダ用クルトン
(51)【国際特許分類】
A21D 13/46 20170101AFI20170821BHJP
【FI】
A21D13/46
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-125687(P2013-125687)
(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公開番号】特開2015-23(P2015-23A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100122688
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100117743
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 美由紀
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(72)【発明者】
【氏名】神▲徳▼ 朋之
(72)【発明者】
【氏名】本多 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】和賀 彩文
【審査官】
北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−267228(JP,A)
【文献】
特表2002−510471(JP,A)
【文献】
Split Pea Soup with Ham, The Gourmand Mom [online], 2011.03.16, retrieved on 2017.04.12, <URL: https:/thegourmandmom.com/2011/03/16/split-pea-soup-with-ham/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 13/00−13/80
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン生地を用いて、焼成後の厚みが8〜24mmとなるように食パンを製造し、該食パンを放冷後、カットおよび加熱乾燥することを特徴とする、クルトンの製造方法。
【請求項2】
クルトンが角型のクルトンである、請求項1に記載のクルトンの製造方法。
【請求項3】
1辺の長さが、いずれも焼成後の食パンの厚みと同じになるようにカットすることを特徴とする、請求項1または2に記載のクルトンの製造方法。
【請求項4】
1辺の長さがいずれも6〜20mmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のクルトンの製造方法。
【請求項5】
クルトンの比容積が2〜4ml/gであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のクルトンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜サラダのトッピングとして使用されるクルトンに関する。
【背景技術】
【0002】
クルトンは、スープの浮き身やサラダ、グラタン等のトッピング材として使用されるものであり、吸水性が低く、かりかりとした好ましい食感をより長く維持することが一般的に求められる。
クルトンの製法としては、製パン法や押し出し法が用いられており、製パン法によってクルトンを製造する場合、厚みのある食パン状に焼いたパンを放冷後に所定の形状にカットし、加熱乾燥するか、またはその後さらに油で揚げるのが一般的な製法である。
製パン製法では、厚みのある食パンをカットしてクルトンを製造するため、従来の製パン製法で得られるクルトンは全体的には食パン内部由来の個片が大半であり、白色または淡黄色の単調な色調であるためトッピング材として使用する際に見た目の存在感が乏しかった。
【0003】
特許文献1には、野菜及び/又は果実を生地に練り込むことにより、白色や淡黄色に限らず種々の色を呈し、味、香等風味豊かなクルトンを提供することが記載されている。
【0004】
より硬いクルトンを製造する方法として、特許文献2には、通常のパンの2倍ないし3倍の生地を使用した密度の高いパンからクルトンを製造することが記載されている。また、クルトンの吸水を阻害する方法として、特許文献3および4には、パン生地中に油脂を一定量配合する方法が記載され、特許文献5〜7には、クルトン周囲を固形油脂でコーティングする方法が記載されている。
しかしながら、従来の製パン製法で得られるクルトンは、単調な色調であるため見た目の存在感に乏しく、特許文献1に記載のクルトンは、野菜・果実等の味風味も出るため、小麦の自然な風味の感じられるクルトンとはやや異なるものである。また、特許文献2〜7に記載の方法によって製造されるクルトンは、野菜サラダに用いる場合には食感が硬すぎたり、口の中で感じる油脂感が強くなりすぎて好ましくないというデメリットがある。
さらに、食感面の改善のため高比容積の食パンを用いて工業的にクルトンを製造する場合、一般的に使用する裁断機(スライサー等)でのカット中に食パンがつぶれてしまうといった不具合が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2929032号公報
【特許文献2】特許第3407401号公報
【特許文献3】特公昭59−7294号公報
【特許文献4】特開平1−179639号公報
【特許文献5】特開平1−187044号公報
【特許文献6】特開2002−51692号公報
【特許文献7】特開2008−67647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、野菜サラダ用として、見た目、食感および味等の品質面に優れ、かつ、製造適性に優れたクルトンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、薄く焼き上げたパンを用いることにより、見た目、食感および味等の品質に優れたクルトンを製造でき、また、製造適性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は以下に関する。
[1] 向かい合った面にパンのミミ部分を有することを特徴とするクルトン。
[2] 四角柱(好ましくは、略立方体または略直方体)であって、該四角柱の向かい合った面にパンのミミ部分を有することを特徴とするクルトン。
[3] 角型のクルトンであって、1辺の長さが6〜20mmである、上記[1]または[2]に記載のクルトン。
[4] パン生地を用いて、焼成後の厚みが8〜24mmとなるように食パンを製造し、該食パンを放冷後、カットおよび加熱乾燥することを特徴とする上記[1]ないし[3]のいずれかに記載のクルトン。
[5] 比容積が2〜4ml/gであることを特徴とする上記[1]ないし[4]のいずれかに記載のクルトン。
[6] パン生地を用いて、焼成後の厚みが8〜24mmとなるように食パンを製造し、該食パンを放冷後、カットおよび加熱乾燥することを特徴とするクルトンの製造方法。
[7] 1辺の長さが焼成後の食パンの厚みと同じになるようにカットすることを特徴とする上記[6]に記載のクルトンの製造方法。
[8] クルトンの比容積が2〜4ml/gであることを特徴とする上記[6]または[7]に記載のクルトンの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、薄く焼き上げた食パンを用いることにより、向かい合った面にパンのミミ部分を有するクルトンを製造することができるため、見た目、食感、味等の品質に優れたクルトンを提供することができる。さらに、適切な厚みで焼き上げた食パンを用いることにより、カット中に食パンがつぶれることを抑制し、製造適性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のクルトンは、製パン法により製造される。好ましくは、パン生地を用いて、焼成後の厚みが8〜24mmとなるように食パンを製造し、該食パンを放冷後、カットおよび加熱乾燥することにより製造される。
【0011】
本発明において「パン生地」とは、小麦粉を主成分とするパン生地を意味する。小麦粉を主成分とするパン生地は、一般に小麦粉、水(牛乳を使用する場合もある)、塩および必要に応じて油脂類、卵、砂糖、調味料等の添加剤に、イーストまたはベーキングパウダー、あるいはその両方を加え、生地としたものである。本発明においては、小麦粉以外の他の穀類粉末も必要により添加してもよく、クルトンの味、風味に変化を与えるための素材を添加することも可能である。添加材についても一般に食品に添加することが認められるものであれば特に限定されない。例えば、乾燥野菜粉末、着色料、イーストフード、乳化剤などが挙げられる。
【0012】
本発明における「食パン」は、パン生地を金属製の焼型に入れ、焼成して製造される。焼成は、オーブン式、通電式のいずれでもよい。焼成された食パンの外側には、ミミあるいはクラストと呼ばれる硬く茶色い部分が形成される。形成されたパンのミミは、食パンに特有の色およびロースト香を付与する。
本発明における食パンの焼成温度は190〜230℃であり、好ましくは200〜220℃である。
本発明における食パンの焼成時間は10〜50分であり、好ましくは20〜40分である。
【0013】
本発明における食パンの焼成後の厚みは8〜24mmであり、好ましくは10〜18mmであり、より好ましくは10〜14mmである。
焼成後の厚みが8〜24mmである食パンをカットおよび加熱乾燥することにより、向かい合った面にパンのミミ部分を有するクルトンを製造することができる。例えば、角型のクルトンの場合、1辺の長さが食パンの焼成後の厚みと同じ長さになるようにカットすることにより、少なくとも上面および下面にパンのミミ部分を有するクルトンを製造することができる。
本発明における乾燥温度は100〜180℃であり、好ましくは120〜160℃である。
本発明における乾燥時間は10〜60分であり、好ましくは20〜50分である。
【0014】
本発明のクルトンは、クルトン表面積に占めるパンのミミ部分が多いため、従来のクルトンと比べて、見た目の存在感があり、食感および味・風味も向上する。また、通常の厚みの食パンを用いた製法では、焼成後の水分値が比較的高く、食パンの内部が柔らかいため、半日ないしは一晩程度放冷しないとスライサーによるカットが困難である。そのため、食パンを焼成し、カットおよび乾燥するまでに約2日を要している。一方、本発明の薄型の食パンを用いた製法では、焼成後の水分値が低く組織が安定した状態となっており、粗熱をとってすぐにカットが可能であるため、食パンの焼成、カットおよび乾燥に要する時間は約1日である。
さらに、焼成後の厚みが8〜24mmとなるように焼成した食パンは、カット工程においてつぶれ難い。
【0015】
本発明におけるクルトンの比容積は、カットおよび乾燥後のクルトンの比容積を意味する。
本発明におけるクルトンの比容積は、特に限定されるものではないが、好ましくは2〜4ml/gであり、より好ましくは2.5〜3.5ml/gである。比容積が2ml/gより小さい場合、クルトンの食感は重く(堅く)なる傾向があり、比容積が4ml/gより大きい場合、クルトンの食感は軽くなる傾向がある。
本発明におけるクルトンの比容積は、クルトンの製造におけるパン生地の配合成分の配合量、焼型に入れるパン生地の重量、食パンの焼成温度および焼成時間、ならびにカット後の乾燥温度および乾燥時間により適宜調整することができる。
【0016】
本発明のクルトンでは、使用目的に応じて、固体油脂を用いてコーティングを行うことができる。野菜サラダ用に使用する際には、固体油脂によるコーティングをしないクルトンでも十分にクルトンへの吸水が抑制されるため、油脂コーティングをしないクルトンとすることが、良好な外観と優れた食感、味風味の点で特に好ましい。
【0017】
本発明のクルトンの形状は、特に限定されるものではないが、例えば、角型に成形されているものが挙げられる。好ましくは、四角柱であり、より好ましくは、略立方体または略直方体である。
本発明のクルトンの大きさは、特に限定されるものではないが、見た目、食感等の観点から、一辺の長さが6〜20mmであることが好ましく、より好ましくは7〜16mmであり、特に好ましくは8〜12mmである。
本発明のクルトンは、スープの浮き身やサラダ、グラタン等のトッピング材として使用することができ、特に野菜サラダ用に適している。また、ドレッシング等の具材として使用することもできる。
【0018】
本発明のクルトンの製造方法は、パン生地を用いて、焼成後の厚みが8〜24mmとなるように食パンを製造し、該食パンを放冷後、カットおよび加熱乾燥する方法である。
具体的には、(1)パン生地を調製する工程、(2)得られたパン生地を金属製の焼型に入れ、発酵させた後、190〜230℃(好ましくは、200〜220℃)で、10〜50分(好ましくは、20〜40分)焼成し、焼成後の厚みが8〜24mmとなるように食パンを製造する工程、(3)該食パンを放冷後、カットする工程、および(4)100〜180℃(好ましくは、120〜160℃)で、10〜60分(好ましくは、20〜50分)乾燥する工程を含む方法である。
上記(3)工程において、1辺の長さが焼成後の食パンの厚みと同じになるようにカットすることにより、少なくとも上面および下面にパンのミミ部分を有するクルトンを製造する。
上記(1)工程におけるパン生地の配合成分の配合量、上記(2)工程におけるパン生地の重量、食パンの焼成温度および焼成時間、上記(4)工程における乾燥温度および乾燥時間を適宜調整することにより、比容積が2〜4ml/gであるクルトンを製造することができる。
【実施例】
【0019】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に述べる。なお、以下の実施例は、本発明の一例について具体的に説明するものであって、本発明をこれに限定するものではない。
【0020】
実施例1〜3 クルトンの製造
【0021】
小麦粉100部に対し、イースト5部、砂糖5部、乳化剤2.5部、食塩2部、乳糖1部および水49部をミキシングし、パン生地を調製した。
得られたパン生地を、クルトンの各比容積に応じた生地重量で分割し、36cm×31cm×1.2cmのトレイに入れた。40〜45℃、湿度60〜80%で10〜20分間発酵させた。その後、ハンドローラーを使用して、生地を薄く伸ばし、40〜45℃、湿度60〜80%で10〜20分間再度発酵させた。発酵させた生地を、約200℃で20〜30分間焼成した後に、放冷した。焼成後の食パンの厚さは12mmであった。放冷後、該食パンを12mm×12mmに裁断し、約140℃で30分以上乾燥させ、クルトンを得た。
【0022】
比較例1〜3 クルトンの製造
実施例1〜3と同様に得られたパン生地を、分割し、容器に入れて40〜45℃、湿度60〜80%で10〜20分間発酵させた。次に、クルトンの各比容積に応じた生地重量で分割し、延伸した後で丸めて、36cm×13cm×12cmのトレイへ生地を入れて、40〜45℃、湿度60〜80%で10〜20分間再度発酵させた。発酵させた生地を、約200℃で20〜30分間焼成した後に、放冷した。焼成後の食パンの厚さは120mmであった。放冷後、該食パンを12mm×12mm×12mmに裁断し、約140℃で30分以上乾燥させ、クルトンを得た。
比較例2については、上記で得られたクルトンに対して、80〜90℃で加熱溶解させた固体油脂(融点約40℃)を添加し、均一にコーティングされるよう十分に攪拌した。油脂の添加量は、クルトンの乾燥重量に対して、30重量%とした。その後、クルトンを攪拌しながら、冷風下で冷却した。翌日、パンにラクトースを添加し、全体を十分に攪拌し、油脂コーティングされたクルトンを得た。
【0023】
得られたクルトンの比容積を次の方法により求めた。
容積は、クルトン個片の各片の長さを測定し算出した。次いでクルトン個片の重量を計量して次式により求めた。
比容積(ml/g)=容積(ml)/重量(g)
実施例1〜3および比較例1〜3で得られたパンの厚みならびにクルトンの比容積および油脂コーティングの有無を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
(評価)
実施例1〜3および比較例1〜3で得られたクルトンについて、ミミ入りクルトンの割合を計算により求めた。さらに、見た目、食感、味風味を、3名のパネラーにより評価した。結果を表2に示す。
表2における評価基準は以下の通りである。
(1)ミミ入りクルトンの割合:
ミミ入りクルトンの割合は、以下のようにして算出した。
実施例1〜3では、焼成後の厚さが12mmになるように食パンを薄く焼成した後、12mm×12mmにカットすることにより、全てのクルトン個片は向かい合う両面にミミを有していた。よって、ミミ入りクルトンが含まれる割合は100%である。
比較例1〜3では、焼成後の食パンのサイズは、36cm×13cm×12cmであった。該食パンを12mm×12mm角(30列×11列×10列)にカットすることにより、3300個のクルトン個片が得られた。このうち、短側面:11列×10列×2面から220個のクルトンが得られ、長側面:28列×10列×4面から1120個のクルトンが得られたため、少なくとも1面にミミを有するクルトン個片は合計で1340個であった。
したがって、ミミ入りクルトンが含まれる割合は、約41%である。
(2)見た目:
◎:とても存在感がある
○:存在感がある
△:存在感がない
(3)食感:
◎:かりかりしている
○:やや硬い、またはやや軽い
△:硬すぎる、または軽すぎる
(4)味・風味:
◎:とても香ばしい味・風味がある
○:香ばしい味・風味がある
△:香ばしい味・風味が弱い、または油っぽい
【0026】
【表2】
【0027】
上記のとおり、本発明のクルトンは、見た目、食感、味・風味すべての点で好ましかった。また、本発明のクルトンの製法は、食パン焼成から食パンの放冷、カットおよび加熱乾燥の工程を約1日で行うことができ、かつ、カット工程において食パンがつぶれ難いため、製造適性に優れるものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、見た目、食感、味等の品質に優れ、かつ、製造適性に優れたクルトンおよびその製造方法を提供することができる。