特許第6186945号(P6186945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セントラル硝子株式会社の特許一覧

特許6186945ガラス繊維被覆用水性塗布液及びそれを用いたゴム補強用ガラス繊維
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186945
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ガラス繊維被覆用水性塗布液及びそれを用いたゴム補強用ガラス繊維
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/41 20060101AFI20170821BHJP
   D06M 13/188 20060101ALI20170821BHJP
   D06M 15/693 20060101ALI20170821BHJP
   D02G 3/40 20060101ALI20170821BHJP
   F16G 1/08 20060101ALI20170821BHJP
   B65G 15/32 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   D06M15/41
   D06M13/188
   D06M15/693
   D02G3/40
   F16G1/08 A
   B65G15/32
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-136343(P2013-136343)
(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-31605(P2014-31605A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2016年3月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-153599(P2012-153599)
(32)【優先日】2012年7月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108671
【弁理士】
【氏名又は名称】西 義之
(72)【発明者】
【氏名】岩野 隆史
(72)【発明者】
【氏名】山本 一宏
(72)【発明者】
【氏名】小浜 峯一
(72)【発明者】
【氏名】大柿 克彦
【審査官】 佐藤 玲奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−052262(JP,A)
【文献】 特開2012−067410(JP,A)
【文献】 特開2007−063729(JP,A)
【文献】 特開2008−133553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00 − 15/715
B65G 15/32
D02G 3/40
F16G 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレン系ゴムベルトに埋設するゴム補強用ガラス繊維に被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用水性塗布液であって、該塗布液にモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)を含有することを特徴とするガラス繊維被覆用水性塗布液。
【請求項2】
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(C)を、C/(A+B+C)=0.1質量%以上、40質量%以下の範囲で含有することを特徴とする請求項1に記載のガラス繊維被覆用水性塗布液。
【請求項3】
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)を、A/(A+B+C)=3質量%以上、30質量%以下、前記(B)を、B/(A+B+C)=30質量%以上、90質量%以下、前記(C)を、C/(A+B+C)=0.1質量%以上、40質量%以下の範囲で含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス繊維被覆用水性塗布液。
【請求項4】
さらにクロロスルホン化ポリエチレン(D)を含有し、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と該クロロスルホン化ポリエチレン(D)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(D)を、D/(B+D)=70質量%以下の範囲で含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のガラス繊維被覆用水性塗布液。
【請求項5】
クロロプレン系ゴムベルトに埋設するゴム補強用ガラス繊維であって、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)を含有する被覆層を設けてなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維。
【請求項6】
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(C)を、C/(A+B+C)=0.1質量%以上、40質量%以下の範囲で含有することを特徴とする請求項5に記載のゴム補強用ガラス繊維。
【請求項7】
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)を、A/(A+B+C)=3質量%以上、30質量%以下、前記(B)を、B/(A+B+C)=30質量%以上、90質量%以下、前記(C)を、C/(A+B+C)=0.1質量%以上、40質量%以下の範囲で含有することを特徴とする請求項5又は6に記載のゴム補強用ガラス繊維。
【請求項8】
さらにクロロスルホン化ポリエチレン(D)を含有し、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と該クロロスルホン化ポリエチレン(D)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(D)を、D/(B+D)=70質量%以下の範囲で含有することを特徴とする請求項5〜7の何れか1項に記載のゴム補強用ガラス繊維。
【請求項9】
請求項5〜8の何れか1項に記載のゴム補強用ガラス繊維がクロロプレンゴムを主成分とするゴムに埋設されてなることを特徴とする伝動ベルト。
【請求項10】
請求項5〜8の何れかに記載のゴム補強用ガラス繊維がクロロプレンゴムを主成分とするゴムに埋設されてなることを特徴とするコンベアベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動ベルトを作製する際に、母材であるゴムに芯線として埋設し補強を行うためのゴム補強用ガラス繊維に被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用水性塗布液およびそれを用いたゴム補強用ガラス繊維、該ゴム補強用ガラス繊維を補強のために芯線として埋め込んだゴム製の伝動ベルト及びコンベアベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
伝動ベルト、タイヤ等のゴム製品に引っ張り強さ及び寸法安定性を与えるために、ガラス繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、又はポリエステル繊維等の引っ張り強度の高い繊維からなるコードであるゴム補強用繊維を母材であるゴムに補強材として埋設することは一般的に行われ、母材ゴムに埋設するゴム補強用繊維には、母材ゴムとの界面が強固で剥離しないことが必要とされる。しかしながら、多数本のガラス繊維フィラメントにシランカップリング剤及び樹脂等を含有する集束剤を散布し集束させたガラス繊維コード、言い換えれば、ストランドをそのまま母材ゴムに埋め込んでも、繊維とゴムとの界面が剥離してしまい補強材としての用をなさない。そのため、伝動ベルトを製造する際に母材ゴムに埋設して使用するゴム補強用ガラス繊維には、母材ゴムと接着するために、ガラス繊維被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布被覆した被覆層を設ける。
【0003】
例えば、自動車のタイヤコードとしてのナイロンコード等の被覆材には、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物及びラテックスからなる被覆用水性塗布液が用いられてきた。レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物は反応性に富み、優れた接着力をもたらし、その総需要の半分以上がタイヤコードの接着剤の原料である。ラテックスには、通常、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョンが用いられる。(ラテックスは水中にポリマーの微粒子が安定に分散した系(エマルジョン)であり、以後、ラテックスもエマルジョンと表記する)
しかしながら、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョンのみを含有する被覆用水性塗布液からなる被覆層は乾燥させても高い粘着性を有し、ゴム補強用繊維の品質が安定しなく、ゴム補強用繊維に被覆する際の作業性に劣る。そこで、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等のエマルジョンが、被覆層の成分に加えられてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、ガラス繊維よりなる芯線上にレゾルシンホルムアルデヒドの水溶性縮合物、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョン及びアクリロニトリル−ブタジエン共重合体のエマルジョンを含む層を形成させたゴムの補強用繊維が開示されている。
【0005】
また、伝動ベルトとした際の耐水性の向上を目的として、本出願人の特許出願に係る特許文献2には、ガラス繊維コードに被覆するための、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体とクロロスルホン化ポリエチレンとを水に分散させエマルジョンとしたガラス繊維被覆用水性塗布液が開示されている。当該ガラス繊維被覆用水性塗布液は、特に母材を水素化ニトリルゴムとするタイミングベルトに埋設するゴム補強用ガラス繊維に使用するに適し、1次被覆層を、当該ガラス繊維被覆用水性塗布液を用いて設け、接着性向上及び耐久性向上のために2次被覆層に有機ジイソシアネート化合物、ビスアリルナジイミド系化合物、マレイミド系化合物又はトリアジン系化合物等を用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−103634号公報
【特許文献2】特開2006−104595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物は反応性に富み、該レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物及びゴムエマルジョンからなる組成物はクロロプレンゴムとの優れた接着力を有するものがある。しかしながら、母材を水素化ニトリルゴムとしたタイミングベルトにおいては、芳香環の水素をヒドロキシ基に2個置換したレゾルシンをホルムアルデヒドと反応させたレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物よりも、芳香環の水素をヒドロキシ基に1個置換したモノヒドロキシベンゼンをホルムアルデヒドと反応させたモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物を含有させた被覆層を有するゴム補強用ガラス繊維を用いる方が、タイミングベルトとしての耐熱性、及び耐水性に優れる。
【0008】
耐水性に優れることは、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物よりも、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物が疎水性であることによる。
【0009】
耐熱性、耐水性の向上を目的として、ガラス繊維フィラメントに集束材を塗布し集束させてなるストランドに、特許文献2に記載のガラス繊維被覆用水性塗布液を塗布後乾燥させて、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体とクロロスルホン化ポリエチレンを含有させた被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維を、クロロプレンゴムを母材とする伝動ベルト又はコンベアベルトに埋設しようとしたところ、繊維とゴムの接着力が弱く実用化できないレベルであった。
【0010】
本発明は、クロロプレンゴムを母材とし、補強のためのゴム補強用ガラス繊維を埋設してなる伝動ベルト又はコンベアベルトに耐熱性、耐水性等の耐久性をバランスよく与えるために、クロロプレンゴムとの接着力に優れる被覆層を与えるガラス繊維被覆用水性塗布液及びそれを用いたゴム補強用ガラス繊維を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の問題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、多数本のガラス繊維フィラメントにシランカップリング剤及び樹脂等を含有する集束剤を塗布した後に集束させたストランドに、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)を含有するガラス繊維被覆用水性塗布液を塗布被覆してなる被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維が、母材であるクロロプレンゴムと優れた接着性を有することがわかった。
【0012】
ガラス繊維被覆用水性塗布液にモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)を含有させゴム補強用ガラス繊維の被覆層とすることで、ゴム補強用ガラス繊維を埋設してなる、クロロプレンゴムが母材の伝動ベルト又はコンベアベルトの耐熱性、耐水性が向上する。
【0013】
ガラス繊維被覆用水性塗布液にビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)を含有させゴム補強用ガラス繊維の被覆層とすることで、ゴム補強用ガラス繊維を埋設してなる伝動ベルト又はコンベアベルトの機械的耐久性が保たれる。
【0014】
ガラス繊維被覆用水性塗布液に金属石鹸(C)を含有させゴム補強用ガラス繊維の被覆層とすることで、ゴム補強用ガラス繊維と母材であるクロロプレンゴムとの接着力が発現する。
【0015】
即ち、第一の発明は、クロロプレン系ゴムベルトに埋設するゴム補強用ガラス繊維に被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用水性塗布液であって、該塗布液にモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)を含有することを特徴とするガラス繊維被覆用水性塗布液である。
【0016】
また、本発明のガラス繊維覆用水性塗布液において、金属石鹸(C)の含有率を調整することによりゴム補強用ガラス繊維と母材であるクロロプレンゴムに好ましい接着力を得ることができる。
【0017】
そこで、第一の発明において、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(C)を、C/(A+B+C)=0.1質量%以上、40質量%以下の範囲で含有することが好ましい。
【0018】
また、本発明のガラス繊維覆用水性塗布液において、含有物であるモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)との組成比を調整することで、ゴム補強用ガラス繊維と母材であるクロロプレンゴムに好ましい接着力を得、耐熱性及び耐水性をバランスよく合わせ持たせることが可能となった。
【0019】
そこで、第一の発明において、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)を、A/(A+B+C)=3質量%以上、30質量%以下、前記(B)を、B/(A+B+C)=30質量%以上、90質量%以下、前記(C)を、C/(A+B+C)=0.1質量%以上、40質量%以下の範囲で含有することが好ましい。
【0020】
さらに、第一の発明において、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を含有してもよく、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と該クロロスルホン化ポリエチレン(D)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(D)を、D/(B+D)=70質量%以下の範囲で含有することが好ましい。
【0021】
このように、多数本のガラス繊維フィラメントにシランカップリング剤及び樹脂等を含有する集束剤を塗布した後に集束させたストランドに、本発明のガラス繊維被覆用水性塗布液を塗布被覆して、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)とクロロスルホン化ポリエチレン(D)を含有する被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維がクロロプレンゴムと優れた接着性を有することがわかった。
【0022】
即ち、第二の発明は、クロロプレン系ゴムベルトに埋設するゴム補強用ガラス繊維であって、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)を含有する被覆層を設けてなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維である。
【0023】
その際、第二の発明において、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(C)を、C/(A+B+C)=0.1質量%以上、40質量%以下の範囲で含有することが好ましい。
【0024】
また、第二の発明において、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)を、A/(A+B+C)=3質量%以上、30質量%以下、前記(B)を、B/(A+B+C)=30質量%以上、90質量%以下、前記(C)を、C/(A+B+C)=0.1質量%以上、40質量%以下の範囲で含有することが好ましい。
【0025】
さらに、第二の発明において、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を含有してもよく、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と該クロロスルホン化ポリエチレン(D)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(D)を、D/(B+D)=70質量%以下の範囲で含有することが好ましい。
【0026】
また、第三の発明は、上記に記載のゴム補強用ガラス繊維がクロロプレンゴムを主成分とするゴムに埋設されてなることを特徴とする伝動ベルトである。
【0027】
さらに、第四の本発明は、上記に記載のゴム補強用ガラス繊維がクロロプレンゴムを主成分とするゴムに埋設されてなることを特徴とするコンベアベルトである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によって、クロロプレンゴムとの接着力に優れる被覆層を与えるガラス繊維被覆用水性塗布液及びそれを用いたゴム補強用ガラス繊維が得られた。加えて、クロロプレンゴムを母材とし補強のためのゴム補強用ガラス繊維を埋設してなる伝動ベルト又はコンベアベルトに耐熱性及び耐水性等の耐久性をバランスよく与える。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、具体的には、ガラス繊維フィラメントを撚り合わせて集束材にて集束させてなるストランドに被覆層を設けゴム補強用ガラス繊維を得る際、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用水性塗布液及びそれを用いたゴム補強用ガラス繊維、該ゴム補強用ガラス繊維を補強のために芯線として埋め込んだゴム製の伝動ベルト又はコンベアベルトに関する。
【0030】
特に、クロロプレン系ゴムベルトに属する、母材にクロロプレンゴムを用いた伝動ベルト又はコンベアベルトに埋設し補強を行うためのゴム補強用ガラス繊維に被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用水性塗布液及びそれを用いたゴム補強用ガラス繊維、該ゴム補強用ガラス繊維を補強のために芯線として埋め込んだゴム製の伝動ベルト又はコンベアベルトに関する。
【0031】
本発明は、クロロプレン系ゴムベルトに埋設するためのゴム補強用ガラス繊維に被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用水性塗布液であって、該塗布液にモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)を含有することを特徴とするガラス繊維被覆用水性塗布液である。
【0032】
尚、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)は水溶性であり、本発明のガラス繊維被覆用水性塗布液を調製する際は、これら縮合物の水溶液に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンと金属石鹸(C)の乳化液や水分散液を加える。
【0033】
本発明のガラス繊維覆用水性塗布液において、金属石鹸(C)の含有率を調整することによりゴム補強用ガラス繊維と母材であるクロロプレンゴムに好ましい接着力を発現させることができる。
【0034】
さらに、本発明のガラス繊維被覆用水性塗布液において含有物であるモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)との組成比を調整することで、ゴム補強用ガラス繊維と母材であるクロロプレンゴムとの好ましい接着力を得、耐熱性及び耐水性をバランスよく合わせ持たせることが可能となった。
【0035】
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)を、A/(A+B+C)=3質量%以上、30質量%以下とする。ガラス繊維被覆用水性塗布液中の前記(A)の含有がA/(A+B+C)=3質量%より少ないと、当該ガラス繊維被覆用水性塗布液による被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維を埋設した伝動ベルト又はコンベアベルトの耐熱性及び耐水性が低下する。また、前記(A)の含有が、A/(A+B+C)=30質量%より多いと、当該ガラス繊維被覆用水性塗布液を塗布被覆してなる被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維がクロロプレンゴムとの接着力が低下する。好ましくは5質量%以上、25質量%以下である。より好ましくは7質量%以上、20質量%以下である。
【0036】
また、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(B)を、B/(A+B+C)=30質量%以上、90質量%以下とする。ガラス繊維被覆用水性塗布液中の前記(B)の含有がB/(A+B+C)=30質量%より少ないと、当該ガラス繊維被覆用水性塗布液を塗布被覆してなる被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維の柔軟性が低下し、機械的耐久性が低下する。ガラス繊維被覆用水性塗布液中の前記(B)の含有がB/(A+B+C)=90質量%より多いと、当該ガラス繊維被覆用水性塗布液による被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維を埋設した伝動ベルト又はコンベアベルトの耐熱性が低下する。好ましくは45質量%以上、85質量%以下である。より好ましくは60質量%以上、80質量%以下である。
【0037】
また、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(C)を、C/(A+B+C)=0.1質量%以上、40質量%以下とする。ガラス繊維被覆用水性塗布液中の前記(C)の含有がC/(A+B+C)=0.1質量%より少ないと、当該ガラス繊維被覆用水性塗布液を塗布被覆してなる被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維がクロロプレンゴムとの接着力が低下する。また、前記(C)の含有がC/(A+B+C)=40質量%より多いと、当該ガラス繊維被覆用水性塗布液を塗布被覆してなる被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維が硬くなり、柔軟性が低下し、屈曲疲労性が低下する。好ましくは2質量%以上、30質量%以下である。より好ましくは5質量%以上、20質量%以下である。
【0038】
即ち、本発明は、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とアクリロニトリル−ブタジエン系共重合体(C)とを合わせた質量を100質量%基準とする質量百分率で表して、1次被覆層に前記(A)を、A/(A+B+C)=3質量%以上、30質量%以下、前記(B)を、B/(A+B+C)=30質量%以上、90質量%以下、前記(C)を、C/(A+B+C)=0.1質量%以上、40質量%以下の範囲で含有することを特徴とする上記のガラス繊維被覆用水性塗布液である。
【0039】
また、本発明のガラス繊維被覆用水性塗布液において、前記ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)の一部をクロロスルホン化ポリエチレン(D)に替えて使用できる。即ち、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンの一部ををクロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンに替えて調製したガラス繊維被覆用水性塗布液を使用できる。本発明のガラス繊維被覆用水性塗布液において、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(D)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(D)を、D/(B+D)=70質量%以下の範囲で使用する。前記(D)の含有が70質量%を超えると、当該ガラス繊維被覆用水性塗布液を塗布被覆してなる被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維とクロロプレンゴムの接着力及び耐水性が低下する。好ましくは、40質量%以下である。より好ましくは20質量%以下である。
【0040】
即ち、本発明は、さらにクロロスルホン化ポリエチレン(D)を含有し、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と該クロロスルホン化ポリエチレン(D)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(D)を、D/(B+D)=70質量%以下の範囲で含有することを特徴とする上記のガラス繊維被覆用水性塗布液である。
【0041】
本発明のガラス繊維被覆用水性塗布液には、老化防止剤、pH調整剤、安定剤等を含有させても良い。老化防止剤にはジフェニルアミン系化合物、pH調整剤にはアンモニア水が挙げられる。
【0042】
ガラス繊維被覆用水性塗布液のpHは8以上に保つのが好ましい。pHが8より小さいと、ガラス繊維被覆用水性塗布液が不安定となり沈殿物が生じる。pH調整剤にはアンモニア水を用いるのが好ましい。これは、ガラス繊維にガラス繊維被覆用水性塗布液を塗布後、加熱乾燥させるときに、アンモニアが散逸し、被覆層に残留しないために好ましい。pH調整剤に水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを用いると、加熱乾燥させても被覆層中に該pH調整剤が残留し、ガラス繊維被覆用水性塗布液が塗布乾燥されたゴム補強用ガラス繊維の引張強さが低下する。また、ガラス繊維被覆用水性塗布液の所望の固形分濃度に調整するために、適宜、水を加える。
尚、本発明のガラス繊維被覆用水性塗布液に、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物を含有させると、ゴム補強用ガラス繊維を埋設した伝動ベルト又はコンベアベルトの耐熱性及び耐水性が低下するため、含有しないことが好ましい。
【0043】
また、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(D)を含有したガラス繊維被覆用水性塗布液による被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維とクロロプレンゴムとの接着力は小さい。しかし、本発明のガラス繊維被覆用水性塗布液には金属石鹸(C)を添加しているので、上記(D)は70質量%以下の範囲で含有すればクロロプレンゴムと優れた接着性を有する。
【0044】
ガラス繊維被覆用水性塗布液を、ガラス繊維に塗布乾燥して、ガラス繊維表面に被覆層を設けてゴム補強用ガラス繊維を得る方法は特に限定されるものではなく、通常当業者が実施できる方法を適宜用いればよい。例えば、ガラス繊維被覆用水性塗布液中に、所定本数束ねたガラス繊維を屈曲走行させて、ガラス繊維被覆用水性塗布液の塗布を強制的に行った後、ガラス繊維に付着した過剰のガラス繊維被覆用水性塗布液を拭った後、加熱乾燥させる等の手段で行い、ガラス繊維の表面に被覆層を設けてゴム補強用ガラス繊維を得る。
【0045】
また、本発明は、クロロプレン系ゴムベルトに埋設するゴム補強用ガラス繊維であって、複数本のガラス繊維フィラメントを集束させたストランドに、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)を含有する被覆層を設けてなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維である。
【0046】
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)を、A/(A+B+C)=3質量%以上、30質量%以下とする。
【0047】
被覆層に含有する前記(A)の含有がA/(A+B+C)=3質量%より少ないと、ゴム補強用ガラス繊維を埋設した伝動ベルト又はコンベアベルトの耐熱性及び耐水性が低下する。また、前記(A)の含有が、A/(A+B+C)=20質量%より多いと、ゴム補強用ガラス繊維とクロロプレンゴムの接着力が低下する。好ましくは5質量%以上、25質量%以下である。より好ましくは7質量%以上、20質量%以下である。
【0048】
また、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(B)を、B/(A+B+C)=30質量%以上、90質量%以下とする。
【0049】
被覆層に含有する前記(B)の含有がB/(A+B+C)=30質量%より少ないと、ゴム補強用ガラス繊維とクロロプレンゴムの接着力が低下する。被覆層に含有する前記(B)の含有がB/(A+B+C)=90質量%より多いと、補強用ガラス繊維を埋設した伝動ベルト又はコンベアベルトの耐熱性が低下する。好ましくは45質量%以上、85質量%以下である。より好ましくは60質量%以上、80質量%以下である。
【0050】
また、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と金属石鹸(C)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(C)を、C/(A+B+C)=0.1質量%以上、40質量%以下とする。
【0051】
被覆層に含有する金属石鹸(C)の含有がC/(A+B+C)=0.1質量%より少ないと、当該ガラス繊維被覆用水性塗布液を塗布被覆してなる被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維がクロロプレンゴムとの接着力が低下する。また、金属石鹸(C)の含有がC/(A+B+C)=40質量%より多いと、当該ガラス繊維被覆用水性塗布液を塗布被覆してなる被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維が硬くなり、柔軟性が低下し、屈曲疲労性が低下する。
【0052】
即ち、本発明は、被覆層に含有するモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とアクリロニトリル−ブタジエン系共重合体(C)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、1次被覆層に前記(A)を、A/(A+B+C)=3質量%以上、30質量%以下、前記(B)を、B/(A+B+C)=30質量%以上、90質量%以下、前記(C)を、C/(A+B+C)=0.1質量%以上、40質量%以下の範囲で含有することを特徴とする上記のゴム補強用ガラス繊維である。
【0053】
また、本発明のゴム補強用ガラス繊維の被覆層において、前記ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)の一部をクロロスルホン化ポリエチレン(D)に替えて使用できる。本発明のゴム補強用ガラス繊維の被覆層において、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(D)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(D)を、70質量%以下の範囲で使用する。前記(D)の含有が70質量%を超えると、当該ガラス繊維被覆用水性塗布液を塗布被覆してなる被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維とクロロプレンゴムの接着力及び耐水性が低下する。好ましくは、40質量%以下である。より好ましくは20質量%以下である。
【0054】
即ち、本発明は、さらにクロロスルホン化ポリエチレン(D)を含有し、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と該クロロスルホン化ポリエチレン(D)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(D)を、D/(B+D)=70質量%以下の範囲で含有することを特徴とする上記のゴム補強用ガラス繊維である。
【0055】
尚、本発明のゴム補強用ガラス繊維の被覆層に、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物を含有させると、ゴム補強用ガラス繊維を埋設した伝動ベルト又はコンベアベルトの耐熱性及び耐水性が低下するため、含有しないことが好ましい。
【0056】
また、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(D)を含有した被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維とクロロプレンゴムとの接着力は小さい。しかし、本発明のゴム補強用ガラス繊維はの被覆層には金属石鹸(C)を添加しているので、上記(D)は70質量%以下の範囲で含有すればクロロプレンゴムと優れた接着性を有する。
【0057】
本発明のゴム補強用ガラス繊維をクロロプレンゴムに埋設し、クロロプレン系ゴムベルトに属する種々の形態や大きさの伝動ベルト又はコンベアベルトに成形して使用する。伝動ベルト又はコンベアベルトへの成形時には加熱し、その際に加硫硬化を行う。
【0058】
本発明のガラス繊維被覆用水性塗布液及びそれを用いたゴム補強用ガラス繊維の被覆層に使用するモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)、金属石鹸(C)及びクロロスルホン化ポリエチレン(D)の各々について説明する。
【0059】
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)としては、モノヒドロキシベンゼンに対するホルムアルデヒドのモル比が0.5以上、3.0以下で、アルカリの存在下で反応させたレゾール型のモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液又は水分散体を使用することが、固形分の析出なく、ガラス繊維被覆用水性塗布液を安定させる効果があるので好ましい。ホルムアルデヒドのモル比が0.5未満では、ゴム補強用ガラス繊維と耐熱ゴムとの接着強さに劣り、3.0を越えるとガラス繊維被覆用水性塗布液がゲル化し易い。レゾール型のモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)を用いることで、ガラス繊維被覆用水性塗布液の液安定性が向上する。尚、前記アルカリとしては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、又は水酸化バリウム等が挙げられる。
【0060】
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)には、工業用フェノール樹脂として市販されている群栄化学工業株式会社製、商品名、レジトップ、型番PL−4667が挙げられる。
【0061】
ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)には、ビニルピリジン:スチレン:ブタジエンの比が、質量比で10〜35:10〜40:25〜80の範囲で重合させてなるビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)を用いることが好ましく、該ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)として、日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス(固形分41質量%)や、日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックスLB(固形分41質量%)が挙げられる。
【0062】
金属石鹸(C )は、長鎖脂肪酸と、ナトリウム又はカリウム以外の金属塩である。例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウムナフテン酸亜鉛、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸リチウム、ナフテン酸マグネシウムが揚げられる。本発明では、これらの中から、単独、もしくは、数種類を合わせて使用する。これら金属石鹸は水に不溶であるため、水に分散や乳化した状態で使用される。
【0063】
例えば、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム水分散液として、日東化成工業社製、製品名CSE−6(固形分45質量%)、ステアリン酸亜鉛水分散液として、日東化成工業社製、製品名ZSE−2(固形分50質量%)などが挙げられる。
【0064】
クロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンとしては、住友精化社製、製品名セポレックスCSM(固形分40質量%)などが挙げられる。
【0065】
また、本発明のゴム補強用ガラス繊維の被覆層には、老化防止剤、安定剤等を含有させても良い。老化防止剤にはジフェニルアミン系化合物が挙げられる。ガラス繊維被覆用水性塗布液のpH調整剤に、アンモニア水を用いると、ガラス繊維にガラス繊維被覆用水性塗布液を塗布後、加熱乾燥させるときに、アンモニアが散逸し、被覆層に残留しない。
【実施例】
【0066】
実施例1
(ガラス繊維被覆用水性塗布液の調製)
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンと12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(C)の水分散液とアンモニア水と水を添加し、本発明のガラス繊維被覆用水性塗布液を調製した。
【0067】
詳しくは、市販のモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液(群栄化学工業株式会社製、商品名、レジトップ、型番PL−4667、固形分、50質量%、実施例において以下使用する)を濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液で2倍の質量割合で希釈したモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液を用いた。当該モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液、46質量部と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス、固形分、41.0質量%、実施例において以下使用する。)、521質量部と、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(C)の水分散液(日東化成工業社製、製品名CSE−6、固形分、45質量%)109質量部と、PH調整剤としてアンモニア水(濃度、25.0質量%)20質量部を加え、全体として1000質量部になるように水を添加し、ガラス繊維被覆用水性塗布液を調製した。
【0068】
前記ガラス繊維被覆用水性塗布液を蒸発皿に採取し、110℃で2時間加熱して水分を蒸発させ、残差の質量を測定し、採取した該ガラス繊維被覆用水性塗布液の質量に対する残差の質量を質量百分率で表して、詰まり、水性塗布液の固形分として28.5質量%であった。
【0069】
前記ガラス繊維被覆用水性塗布液のpH(水性塗布液のpH)は、pHメーター(堀場製作所社製、型番B−212)で測定したところ9.5であった。
【0070】
ガラス繊維被覆用水性塗布液中の各成分の含有割合は、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(C)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)が、A/(A+B+C)=8.0質量%、前記(B)が、B/(A+B+C)=75.0質量%、前記(C)が、C/(A+B+C)=17.0質量%である。尚、ガラス繊維被覆用水性塗布液中のモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(C)の質量は固形分濃度から固形分に換算して求めた。ほぼ、このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の被覆層となる。
【0071】
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
径9μmのガラス繊維フィラメントを、アクリルシラン系カップリング剤及び樹脂を含有する集束剤を用い200本集束させたストランド3本を引き揃えた後、前述の手順で作製したガラス繊維被覆用水性塗布液を塗布し、その後、温度280℃下で、22秒間乾燥させて被覆層を設け、1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して18.7質量%であった。
【0072】
実施例2〜16
(ガラス繊維被覆用水性塗布液の調製)
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンと12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(C)の水分散液とアンモニア水と水を添加し、本発明のガラス繊維被覆用水性塗布液を調製した。
【0073】
該ガラス繊維被覆用水性塗布液は、表1及び表2に記載されている組成にて、実施例1と同じ手順で調整した。
【0074】
水性塗布液の固形分は実施例2〜16の各々に対して、28.5、28.3、28.2、28.5、28.7、28.5、28.4、28.4、28.2、28.3、28.7、28.5、28.3、28.4、又は28.2質量%であった。
【0075】
水性塗布液のpHは実施例2〜16の各々に対して、9.4、9.3、9.2、9.4、9.3、9.3、9.4、9.5、9.3、9.5、9.3、9.5、9.2、9.2、又は9.4であった。
【0076】
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例1と同じ手順にてゴム補強用ガラス繊維の作製を行った。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して、実施例2〜16の各々に対して、18.5、18.3、18.2、18.7、18.5、18.7、18.4、18.6、18.5、18.4、18.7、18.2、18.3、18.5、又は18.7質量%であった。
【0077】
実施例17
(ガラス繊維被覆用水性塗布液の調製)
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)のラテックスと12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(C)の水分散液とクロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンとアンモニア水と水を添加し、本発明のガラス繊維被覆用水性塗布液を調製した。
【0078】
詳しくは、市販のモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液(群栄化学工業株式会社製、商品名、レジトップ、型番PL−4667、固形分、50質量%、実施例において以下使用する)を濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液で2倍の質量割合で希釈したモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液を用いた。当該モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液、41質量
部と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス、固形分、41.0質量%、実施例において以下使用する。)、464質量部と、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(C)の水分散液(日東化成工業社製、製品名CSE−6、固形分、45質量%)97質量部と、クロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョン(住友精化社製、製品名セポレックスCSM、固形分、40質量%)83質量部と、PH調整剤としてアンモニア水(濃度、25.0質量%)20質量部を加え、全体として1000質量部になるように水を添加し、ガラス繊維被覆用水性塗布液を調製した。
【0079】
水性塗布液の固形分は28.7質量%、水性塗布液のpHは9.4であった。
【0080】
ガラス繊維被覆用水性塗布液中の各成分の含有割合は、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(C)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)が、A/(A+B+C)=7.0質量%、前記(B)が、B/(A+B+C)=66.0質量%、前記(C)が、C/(A+B+C)=15.0質量%である。また、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(D)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(D)が、D/(B+D)=12.0質量%である。尚、ガラス繊維被覆用水性塗布液中のモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(C)及びクロロスルホン化ポリエチレン(D)の質量は固形分濃度から固形分に換算して求めた。ほぼ、このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の被覆層となる。
【0081】
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例1と同じ手順にてゴム補強用ガラス繊維の作製を行った。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して、18.4質量%であった。
【0082】
実施例18及び19
(ガラス繊維被覆用水性塗布液の調製)
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)のラテックスと12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(C)の水分散液とクロロスルホン化ポリエチレン(D)のラテックスとアンモニア水と水を添加し、本発明のガラス繊維被覆用水性塗布液を調製した。
【0083】
該ガラス繊維被覆用水性塗布液は、表3に記載されている組成にて、実施例17と同じ手順で調整した。
【0084】
水性塗布液の固形分は実施例18、19の各々に対して、28.4、28.5質量%であった。
【0085】
水性塗布液のpHは実施例18、19の各々に対して、9.2、9.3であった
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例17と同じ手順にてゴム補強用ガラス繊維の作製を行った。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して、実施例18、19の各々に対して、18.5、18.4質量%であった。
【0086】
実施例20
(ガラス繊維被覆用水性塗布液の調製)
実施例17の、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(C)の水分散液(日東化成工業社製、製品名CSE−6、固形分、45質量%)をステアリン酸亜鉛(C)の水分散液(日東化成工業社製、製品名ZSE−2、固形分、50質量%)に置き換え、実施例17と同じ手順で、表3の組成に従いガラス繊維被覆用水性塗布液を調製した。
【0087】
水性塗布液の固形分は28.7質量%、水性塗布液のpHは9.2であった。
【0088】
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例17と同じ手順にてゴム補強用ガラス繊維の作製を行った。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して、18.7質量%であった。
【0089】
実施例21
(ガラス繊維被覆用水性塗布液の調製)
実施例17の、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(C)の水分散液(日東化成工業社製、製品名CSE−6、固形分、45質量%)をオクチル酸亜鉛(C)(東栄化工社製、商品名ヘキサエート亜鉛22%、金属含有量、22質量%)に置き換え、実施例17と同じ手順で、表3の組成に従いガラス繊維被覆用水性塗布液を調製した。
【0090】
水性塗布液の固形分は28.3質量%、水性塗布液のpHは9.5であった。
【0091】
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例17と同じ手順にてゴム補強用ガラス繊維の作製を行った。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して、18.3質量%であった。
【0092】
比較例1
(ガラス繊維被覆用水性塗布液の調製)
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンとクロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンとアンモニア水と水を添加し、本発明のガラス繊維被覆用水性塗布液を調製した。
【0093】
該ガラス繊維被覆用水性塗布液は、表3に記載されている組成にて、金属石鹸(C)を加えない他は、実施例17と同じ手順で調整した。
【0094】
水性塗布液の固形分は28.5質量%、水性塗布液のpHは9.4であった。
【0095】
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例17と同じ手順にてゴム補強用ガラス繊維の作製を行った。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して、18.7質量%であった。
【0096】
比較例2
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンとアンモニア水と水を添加し、本発明のガラス繊維被覆用水性塗布液を調製した。
【0097】
該ガラス繊維被覆用水性塗布液は、表3に記載されている組成にて、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を加えない他は、実施例17と同じ手順で調整した。
【0098】
水性塗布液の固形分は28.2質量%、水性塗布液のpHは9.3であった。
【0099】
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例17と同じ手順にてゴム補強用ガラス繊維の作製を行った。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して、18.2質量%であった。
【0100】
(各ゴム補強用ガラス繊維とクロロプレンゴムの接着強さの評価試験)
接着強さの評価試験を説明する前に、試験に使用したゴム組成物を説明する。
【0101】
母材としてのクロロプレンゴム、100質量部に対して、カーボンブラック、40質量部と、亜鉛華、5質量部と、ステアリン酸、0.5質量部と、硫黄、0.4質量部と、加硫促進剤、2.5質量部と、老化防止剤、1.5質量部とを配合した。
【0102】
試験片は前記クロロプレンゴム組成物からなる3mm厚、25mm幅のゴムシート上に前記ゴム補強用ガラス繊維(実施例1、2、比較例1、2)を20本並べ、その上から布をかぶせ、温度150℃下、196ニュートン/cm2の条件で端部を除き押圧し、35分間加硫させつつ成形して、接着強さ評価のための試験片を得た。この試験片の接着強さの測定を、端部において各々のゴムシートとゴム補強用ガラス繊維を個別にクランプにて挟み、剥離速度を50mm/minとし、ゴムシートからゴム補強用ガラス繊維を剥がす際の最大の抵抗値を測定し、接着強さとした。接着強さが大きいほど接着力に優れる。
【0103】
また、各試験片を、沸騰水中に2時間放置後の接着強さも、上記と同様な方法で測定した。
【0104】
(接着強さの評価結果)
接着強さの評価結果を表1〜3に示す。表1〜3において、ガラス繊維とクロロプレンゴの剥離面が界面から剥離していない破壊状態をゴム破壊、剥離面の一部が界面から剥離した破壊状態を部分ゴム破壊、剥離面が完全に界面から剥離している破壊状態を界面剥離とした。ゴム破壊の方が、界面剥離より接着強さに優れる。表1〜3に、各ゴム補強用ガラス繊維のクロロプレンゴムに対する接着強さを示す。
【0105】
表1〜3に示すように、本発明のゴム補強用ガラス繊維(実施例1〜21)とクロロプレンゴムとの接着強さは、230〜428N/25mmで、ゴム破壊であり、煮沸2時間後の接着強さも、実施例19は部分ゴム破壊であったが、他はゴム破壊であり、良好な
接着力を示した。一方、本発明の範疇にないゴム補強用ガラス繊維(比較例1及び2)の接着強さは、78及び90N/25mm、煮沸2時間後においても55及び73N/25mmで、全て界面剥離であり、本発明のガラス繊維被覆用水性塗布液で処理したゴム補強用ガラス繊維は良好な接着特性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のガラス繊維被覆用水性塗布液を用いて設けた被覆層を有する本発明のゴム補強用ガラス繊維は、クロロプレンゴムと良好な接着性を示し、母材にクロロプレンゴムを用いた伝動ベルトや母材にクロロプレンゴムを用いたコンベアベルトの補強に好適に利用できる。











































【表1】

【表2】

【表3】