特許第6186973号(P6186973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186973
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】冷媒圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20170821BHJP
   F04C 29/12 20060101ALI20170821BHJP
   F04C 29/04 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   F04C18/02 311Y
   F04C29/12 E
   F04C29/04 B
【請求項の数】1
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-149385(P2013-149385)
(22)【出願日】2013年7月18日
(65)【公開番号】特開2015-21415(P2015-21415A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155767
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 憲志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 義実
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−287512(JP,A)
【文献】 実開昭51−122206(JP,U)
【文献】 実公昭53−47385(JP,Y2)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0318212(US,A1)
【文献】 特開2004−324485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
F04C 29/04
F04C 29/12
F04B 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内に固定され渦巻状壁体が形成された固定スクロールと、
渦巻状壁体が形成され前記ハウジング内で前記固定スクロールに対して旋回運動する可動スクロールと、
前記固定スクロールの渦巻状壁体と前記可動スクロールの渦巻状壁体との間に形成され前記可動スクロールの旋回運動により吸入した低圧の冷媒を圧縮して吐出する圧縮室と、
前記圧縮室から吐出された冷媒が流れる冷媒回路における中間圧の冷媒を前記圧縮室内に導入するインジェクションポートと、
インジェクションポートへ冷媒を導入する導入路に設けられ逆止弁として機能するリード弁部と
を備えた冷媒圧縮機において、
前記リード弁部は、一端が固定端とされ他端が自由端とされる板状のリード弁本体と、前記リード弁本体の開弁時に前記リード弁本体の背面を保持するリテーナーと、冷媒の入口が形成され前記リード弁本体が閉弁時に着座して前記入口を覆う着座面と、前記着座面と前記リテーナーとの間に形成され前記リード弁本体の可動空間となる弁室とを備え、
前記リード弁本体は、前記自由端が前記固定端よりも前記圧縮室に接近した側となり、前記固定端と前記自由端とを結ぶ方向が圧縮機軸と平行になるように配置され、
前記入口に連通する導入路は、前記圧縮機軸に直交する面と平行に形成され、
前記弁室は、前記リード弁本体の固定端から自由端に向かう方向に、前記冷媒を前記インジェクションポートへ送り出すための出口が形成されていることを特徴とする冷媒圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置に設けられる冷媒圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インジェクションサイクルを採用した空調装置が知られている。インジェクションサイクルとは、室外機の熱交換器と室内機の熱交換器との間の中間圧力を有するガス冷媒をスクロール型圧縮機の圧縮室内に返流させる冷凍サイクルであって、冷凍サイクルの効率向上を図るものである。スクロール型圧縮機は、渦巻状壁体を有する旋回式の可動スクロールと、渦巻状壁体を有する固定スクロールとを備え、可動スクロールと固定スクロールとの間に形成された渦巻状をなす容積可変の圧縮室を有する。圧縮室は、可動スクロールの旋回により、外周部から中心部に移動しながら容積を減少させてガス冷媒を圧縮し、最終的に、固定スクロールの中心部に穿設された吐出ポートに連通して吐出ポートから高圧状態の冷媒を吐出する。インジェクションサイクル対応のスクロール圧縮機には、中間圧力を有するガス冷媒を圧縮室に注入するために固定スクロールの半径方向中間位置にインジェクションポートが穿設されている。圧縮室は、外周部から中心部に移動する途中の位置においてインジェクションポートに連通し、インジェクションポートから中間圧力を有するガス冷媒が注入される。
【0003】
このインジェクションポートへの冷媒流入部には、リード弁が設けられる。リード弁は、板状の弁体からなる逆止弁であり、インジェクション配管から供給されたガス冷媒の圧縮室へ向かう方向の流れを許容し、その反対方向に向かうガス冷媒の流れを阻止する。従って、圧縮室がインジェクションポートと連通したときに、圧縮室の圧力がインジェクション配管から供給される中間圧力よりも低ければ、リード弁が開弁してガス冷媒が圧縮室に注入される。
【0004】
リード弁は、図9に示すように、弁室501内に設けられる。この弁室501には、リード弁500が開弁したときにリード弁500の背面を受け止めてリード弁500を保持するリテーナー502と、リード弁500が着座する着座面503とを備える。着座面503には、インジェクション配管から供給されたガス冷媒(インジェクション冷媒と呼ぶ)を弁室501内に導入する入口開口504が形成されている。この入口開口504は、インジェクション冷媒導入通路505を介してインジェクション配管と連通する。また、弁室501の着座面503と対向する面には、弁室501内に導入されたインジェクション冷媒を固定スクロール510に形成されたインジェクションポート511に供給するための出口開口506が形成されている。この出口開口506は、インジェクション冷媒供給通路507を介してインジェクションポート511と連通する。
【0005】
インジェクション冷媒導入通路505は、圧縮機軸と平行な向きに設けられる。また、リード弁500は、その板面が圧縮機軸と直交する方向に向けて設けられる。リード弁500が開弁すると、インジェクション冷媒が入口開口504から弁室501に流入する。弁室501に流入したインジェクション冷媒は、矢印にて示すように、リード弁500により前方(リード弁500の自由端側)に案内された後、リテーナー502の背面に形成された空間に流れ、出口開口506を通過して圧縮室512に送られる。
【0006】
また、特許文献1には、インジェクション冷媒通路に設けられる他の逆止弁構造が提案されている。この特許文献1においては、インジェクション冷媒通路である固定スクロールを貫通する貫通孔に、その軸方向と平行にリード弁を配置し、リード弁を軸方向と直交する方向に開閉させる弁ユニットが提案されている。この弁ユニットは、リード弁の一端がユニット本体と弁押さえ部材とで挟み込んで固定され、リード弁の他端が自由端となって着座面に対して開閉可能に設けられる。このリード弁の固定端は、貫通孔の下流側に設けられ、自由端は貫通孔の上流側に設けられる。従って、リード弁の自由端を開弁して弁ユニット内に流入したインジェクション冷媒を下流側に流すために、弁押さえ部材の両側には、リード弁の長手方向に沿って貫通孔の内周面との間に空間が形成されており、この空間を通ってインジェクション冷媒が圧縮室に供給されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−287512号公報
【発明の概要】
【0008】
(発明が解決しようとする課題)
【0009】
しかしながら、上記の図9に示したリード弁構造においては、弁室501の容積が大きくなってしまう。この弁室501の容積は、圧縮機の圧縮効率の低下の要因となり、一般に再圧縮容積と呼ばれる。従って、上記リード弁構造では、再圧縮容積を小さくすることができず、圧縮機の圧縮効率の低下を招いてしまう。また、圧縮機軸に直交する方向の弁室面積が大きくなるため、複数のリード弁を配置する場合にはレイアウトが難しくなる。
【0010】
また、特許文献1に提案された弁ユニットにおいては、弁押さえ部材の両側にリード弁の長手方向に沿って延びた空間を形成し、この空間にインジェクション冷媒を流す必要があり、流路抵抗が大きくなってしまう。また、弁押さえ部材の両側に形成された空間の容積が再圧縮容積となり、その分、再圧縮容積が大きくなってしまう。従って、圧縮効率の低下を招いてしまう。また、インジェクション冷媒を流す流路の形状が複雑化するため、この点においても圧力損失の増大を招き、圧縮効率の低下要因となる。
【0011】
本発明は、上記課題を解決し、冷媒圧縮機の圧縮効率を向上させることを目的とする。
【0012】
(課題を解決するための手段)
上記課題を解決する本発明の特徴は、
ハウジング(10)と、前記ハウジング内に固定され渦巻状壁体が形成された固定スクロール(20)と、渦巻状壁体が形成され前記ハウジング内で前記固定スクロールに対して旋回運動する可動スクロール(30)と、前記固定スクロールの渦巻状壁体と前記可動スクロールの渦巻状壁体との間に形成され前記可動スクロールの旋回運動により吸入した低圧の冷媒を圧縮して吐出する圧縮室(80)と、前記圧縮室から吐出された冷媒が流れる冷媒回路における中間圧の冷媒を前記圧縮室内に導入するインジェクションポート(71)と、インジェクションポートへ冷媒を導入する導入路に設けられ逆止弁として機能するリード弁部(90)とを備えた冷媒圧縮機において、
前記リード弁部は、一端が固定端とされ他端が自由端とされる板状のリード弁本体(93)と、前記リード弁本体の開弁時に前記リード弁本体の背面を保持するリテーナー(92)と、冷媒の入口(95)が形成され前記リード弁本体が閉弁時に着座して前記入口を覆う着座面(94)と、前記着座面と前記リテーナーとの間に形成され前記リード弁本体の可動空間となる弁室(97)とを備え、
前記リード弁本体は、前記自由端が前記固定端よりも前記圧縮室に接近した側となり、前記固定端と前記自由端とを結ぶ方向が圧縮機軸と平行になるように配置され、
前記入口に連通する導入路は、前記圧縮機軸に直交する面と平行に形成され、
前記弁室は、前記リード弁本体の固定端から自由端に向かう方向に、前記冷媒を前記インジェクションポートへ送り出すための出口(98)が形成されていることにある。
【0013】
本発明の冷媒圧縮機は、スクロール型圧縮機であって、冷媒回路における中間圧の冷媒を圧縮室内に導入するインジェクションポートを備えている。中間圧は、圧縮機の吐出圧より低く、吸入圧よりも高い圧力となる。インジェクションポートへ冷媒を導入する導入路にはリード弁部が設けられている。リード弁部は、外部(冷媒回路)からインジェクションポートへの冷媒の流入を許容し、インジェクションポートから外部への冷媒の流出を阻止する逆止弁として機能する。リード弁部においては、着座面に冷媒の入口が形成されており、その入口にリード弁本体の自由端側が配置され、リード弁本体の板面により入口を塞ぐことにより閉弁状態となる。圧力差によりリード弁本体が湾曲して開弁したときには、リテーナーによりリード弁本体の背面が保持される。着座面とリテーナーとの間に形成された空間、つまり、リード弁本体の可動空間が弁室となる。
【0014】
リード弁本体は、自由端が固定端よりも圧縮室に接近した側となる方向に配置されている。また、弁室は、リード弁本体の固定端から自由端に向かう方向に、冷媒をインジェクションポートへ送り出すための出口が形成されている。このため、入口から流入した冷媒は、リード弁本体に案内されてスムーズに出口に流れる。そして、出口から送り出された冷媒は、圧縮室側に向かうことになる。このため、リテーナーの側面や背面(リード弁本体を保持する保持面を正面とした場合の側面や背面)に冷媒を流す通路を必要としない。従って、リード弁部において冷媒の流れる通路の容積を、例えば、リード弁本体の可動空間と同程度にすることができる。これにより、再圧縮容積を少なくすることができる。また、リード弁部において冷媒の流れる通路がシンプルとなり、圧力損失を少なくすることができる。これらの結果、本発明によれば、冷媒圧縮機の圧縮効率を向上させることができる。
【0016】
本発明においては、リード弁本体は、リード弁本体の固定端と自由端とを結ぶ方向が圧縮機軸と平行になるように配置される。また、入口に連通する導入路が圧縮機軸に直交する面と平行に形成される。ここで、リード弁本体の固定端と自由端とを結ぶ方向は、リード弁本体が閉弁している状態での固定端の幅方向中心と自由端の幅方向中心とを結ぶ線のなす方向に相当する。また、圧縮機軸は、可動スクロールの旋回中心軸に相当する。この構成によれば、リード弁本体の板面は、圧縮機軸と平行になるように配置されるため、圧縮機軸に直交する方向におけるリード弁本体の占有面積を最小とすることができる。従って、他の複数のリード弁部を設ける場合に、それらのレイアウトが容易となる。特に、本発明のリード弁部に加えて、リード弁本体の板面が圧縮機軸と直交するように配置される他のリード弁部を設ける場合には、レイアウト性において優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係るスクロール型圧縮機の断面を概念的に表した概略構成図である。
図2】固定スクロールの裏面を表す図である。
図3】インジェクション用リード弁ユニットが設けられる位置(図1のA−A切断ライン位置)での圧縮機軸に直交する断面の概略図である。
図4】インジェクション用リード弁ユニットの側面図である。
図5】インジェクション用リード弁ユニットの弁室内を表す透視斜視図である。
図6】吐出用弁部が設けられる位置(図1のB−B切断ライン位置)での圧縮機軸に直交する断面の概略図である。
図7】弁機構の各部の配置を軸方向から見て表した配置図である。
図8】本実施形態の冷媒圧縮機が適用される空調装置の概略構成図である。
図9】従来のインジェクション用リード弁部を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の冷媒圧縮機の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係るスクロール型圧縮機の断面を概念的に表した概略構成図である。スクロール型圧縮機(以下、単に、圧縮機と呼ぶ)1は、ハウジング10と、ハウジング10内に固定される固定スクロール20と、固定スクロール20にかみ合わされる可動スクロール30と、可動スクロール30を旋回運動させるシャフト40と、シャフト40に回転力を伝達するクラッチプーリー50とを備えている。
【0019】
固定スクロール20は、円盤状の本体部21と、本体部21の一方側から立設される渦巻状壁体22とを有しており、図示しないネジによってハウジング10に固定される。本体部21には、図2に示す位置において、軸方向に穿設された貫通孔である、1つの吐出ポート61、2つのリリーフポート62a,62b(第1リリーフポート62a,第2リリーフポート62b)、2つのリデュースポート63a,63b(第1リデュースポート63a,第2リデュースポート63b)、2つの暖房用インジェクションポート71a,71b(第1暖房用インジェクションポート71a,第2暖房用インジェクションポート71b)、2つの冷房用インジェクションポート72a,72b(第1冷房用インジェクションポート72a,第2冷房用インジェクションポート72b)が形成されている。尚、本明細書において、「軸方向」とは、ことわりのない限り、圧縮機1の軸方向(シャフト40の軸線方向)を意味している。
【0020】
図1においては、一例として、吐出ポート61と、第2リデュースポート63bと、第1暖房用インジェクションポート71aとを示している。各ポートの軸方向から見た位置については、図2に示す通りである。以下、2つのリリーフポート62a,62bを区別しない場合には、それらを単に、リリーフポート62と呼び、2つのリデュースポート63a,63bを区別しない場合には、それらを単に、リデュースポート63と呼び、2つの暖房用インジェクションポート71a,71bを区別しない場合には、それらを単に、暖房用インジェクションポート71と呼び、2つの冷房用インジェクションポート72a,72bを区別しない場合には、それらを単に、冷房用インジェクションポート72と呼ぶ。また、暖房用インジェクションポート71と冷房用インジェクションポート72とを区別しない場合には、それらを単に、インジェクションポート70と呼ぶ。
【0021】
可動スクロール30は、円盤状の本体部31と、本体部31の一方側から立設される渦巻状壁体32と、フランジ部33とを有している。本体部31の直径は、固定スクロール20の本体部21よりも小径となっている。渦巻状壁体32は、固定スクロール20に向けて立設されており、固定スクロール20の渦巻状壁体22とかみ合わされる位置に設けられる。これにより、固定スクロール20と可動スクロール30との間には、両渦巻状壁体22,32と両本体部21,31とによって囲まれた複数の渦巻状の圧縮室80が形成される。フランジ部33は、円環状であり、渦巻状壁体32が設けられる面と反対側の面に本体部31と一体に形成されている。
【0022】
ハウジング10には、吸入配管接続口11が形成されており、この吸入配管接続口11と圧縮室80の外周部とがハウジング10内で連通している。シャフト40は、大径部41を備え、この大径部41の先端に偏心ピン42を備えている。偏心ピン42は、シャフト40の軸心(圧縮機軸と呼ぶ)に対して偏心した位置に設けられる。この偏心ピン42は、偏心ブッシュ43および軸受け44を介してフランジ部33に連結される。シャフト40の大径部41は、軸受け45を介してハウジング10に回転可能に支持される。シャフト40の基端部46は、クラッチプーリー50に固定されている。クラッチプーリー50は、軸受け51を介してハウジング10に回転可能に支持されている。クラッチプーリー50は、ガスエンジン400(図8参照)の駆動力がベルトを介して伝達され、この駆動力によってシャフト40を回転させる。シャフト40の外周には、基端部46と大径部41とのあいだとなる位置で、ハウジング10との間にメカニカルシール47が設けられている。
【0023】
可動スクロール30は、シャフト40の回転に伴って、シャフト40の回転軸とは所定量偏心した位置を回転軸として回転する。この場合、可動スクロール30は、図示しないオルダムカップリングによって自転が防止されているため旋回運動を行う。この旋回運動によって、固定スクロール20の渦巻状壁体22と可動スクロール30の渦巻状壁体32との間に形成される複数の渦巻状の圧縮室80が、旋回しつつ徐々に容積を減らしながら固定スクロール20の外周側から中央部に移動する。そして、圧縮室80は、固定スクロール20の中央部に導かれると吐出ポート61と連通する。また、圧縮室80は、固定スクロール20の外周側から中央部に移動する過程において、その移動位置に応じてリリーフポート62、リデュースポート63、暖房用インジェクションポート71、冷房用インジェクションポート72に連通する。
【0024】
可動スクロール30が旋回運動すると、固定スクロール20と可動スクロール30との嵌合部の外周側から冷媒が吸入されて圧縮室80に導入される。そして、冷媒は、可動スクロール30の旋回運動にともなう圧縮室80の容積の減少により圧縮され、高圧となって吐出ポート61から吐出される。また、後述する弁機構の作動により、圧縮室80が吐出ポート61に連通するまでの過程において圧縮室80内の冷媒量が調整されるように構成される。例えば、圧縮途中で圧縮室80内が過圧状態となった場合には、冷媒がリリーフポート62から抜けるように構成されている。また、空調要求負荷が高く高負荷運転が行われるときには、圧縮途中で暖房用インジェクションポート71あるいは冷房用インジェクションポート72から中間圧力の冷媒が圧縮室80に注入されるように構成されている。また、空調要求負荷が低く低負荷運転が行われるときには、圧縮途中でリデュースポート63から冷媒が抜けるように構成されている。
【0025】
以下、このように冷媒の流量を調整する弁機構について図3図7を用いて説明する。図3は、図1のA−A切断ラインでの圧縮機軸に直交する断面を表し、図6は、図1のB−B切断ラインでの圧縮機軸に直交する断面を表し、図7は、図3図6を合成して各部の配置を表した配置図である。尚、図1に示した弁機構については、図7のX−X切断ラインでの圧縮機軸方向に沿った断面を表している。ハウジング10内には、固定スクロール20の本体部21の裏面側(渦巻状壁体22が形成されていない側)に、第1暖房時インジェクション用リード弁ユニット90a、第2暖房時インジェクション用リード弁ユニット90b、第1冷房時インジェクション用リード弁ユニット90c、第2冷房時インジェクション用リード弁ユニット90dが設けられる。図3は、ハウジング10の圧縮機軸に直交する断面を使って、各インジェクション用リード弁ユニット90a〜90dの位置と、固定スクロール20に設けられたインジェクションポート71a,71b,72a,72bの位置との関係を表している。第1暖房時インジェクション用リード弁ユニット90aは、固定スクロール20に穿設された第1暖房用インジェクションポート71aから軸方向に延長した位置に設けられ、第2暖房時インジェクション用リード弁ユニット90bは、第2暖房用インジェクションポート71bから軸方向に延長した位置に設けられ、第1冷房時インジェクション用リード弁ユニット90cは、第1冷房用インジェクションポート72aから軸方向に延長した位置に設けられ、第2冷房時インジェクション用リード弁ユニット90dは、第2冷房用インジェクションポート72bから軸方向に延長した位置に設けられる。図1においては、一例として、第1暖房時インジェクション用リード弁ユニット90aを示している。各リード弁ユニット90a,90b,90c,90dは、それぞれ同様の構成である。従って、これらを区別する必要がない場合には、各リード弁ユニット90a,90b,90c,90dを、単にインジェクション用リード弁ユニット90と呼ぶ。
【0026】
インジェクション用リード弁ユニット90は、図4に示すように、ケーシング91と、ケーシング91内に設けられるリテーナー92と、リード弁本体93とを有している。ケーシング91は、四角い箱状に形成され、そのうちの1つの内面がリード弁本体93が着座する着座面94となっている。着座面94には、中間圧力のインジェクション冷媒が導入される入口となる入口開口95が形成されている。この入口開口95は、リード弁本体93の先端側と向かい合う位置に形成される。リテーナー92には、リード弁本体93が開弁したときに、リード弁本体93の背面を受け止めて保持する傾斜保持面96が形成されている。この傾斜保持面96は、ケーシング91に形成された着座面94に対して傾斜して向かい合うとともに、着座面94側にやや膨らみを帯びるように湾曲して形成されている。傾斜保持面96の一端は、着座面94と平行となる平坦面に形成されている。
【0027】
リード弁本体93は、バネ性を有する薄い金属板であって、その長手方向の一端が、着座面94とリテーナー92の平坦面との間に挟まれた状態でネジSを締め付けることによって、着座面94とリテーナー92とにより挟圧されて固定される。リード弁本体93の他端は、自由端となる。このようにリード弁本体93は、その一端が着座面94に固定されることにより、着座面94に平行に配置され、自由端が入口開口95を塞ぐ。リテーナー92は、傾斜保持面96を除く全ての面が、ケーシング91の内側面に密着固定されており、傾斜保持面96の側面側および背面側にインジェクション冷媒が流れ込めないようになっている。着座面94とリテーナー92の傾斜保持面96との間に形成された断面略扇形の空間がリード弁本体93が開閉動作する空間であり、インジェクション冷媒が通過できる空間となる。この空間を弁室97と呼ぶ。図5は、この弁室97の形状を説明するための透視斜視図である。本実施形態においては、弁室97の容積をできるだけ小さくするために、リード弁本体93の幅方向寸法、長手方向寸法に合わせて、リテーナー92およびケーシング91の大きさが設定されている。つまり、リード弁本体93の開閉動作を邪魔しない範囲で、できるだけ内容積が小さくなるようにリテーナー92およびケーシング91の寸法が設定されている。
【0028】
ケーシング91には、この弁室97に臨む面であって、リード弁本体93の自由端側で着座面94と直交する面に、インジェクション冷媒を送り出す出口開口98が形成されている。この出口開口98が形成された面を出口面99と呼ぶ。従って、出口面99および出口開口98は、リード弁本体93に対して、リード弁本体93の固定端から自由端に向かう方向に形成されている。
【0029】
また、インジェクション用リード弁ユニット90は、リード弁本体93の自由端が圧縮室80側となり、かつ、リード弁本体93の固定端と自由端とを結ぶ方向が圧縮機軸と平行になるように配置される。従って、入口開口95は、軸方向に対して直交する方向を向く。また、出口開口98は、軸方向を向くことになり、インジェクション冷媒を軸方向(リード弁本体93の固定端から自由端に向かう方向)に送り出す。
【0030】
ハウジング10の外周には、暖房用インジェクション配管接続口14と、冷房用インジェクション配管接続口15とが設けられる。ハウジング10内には、暖房用インジェクション配管接続口14と2つの暖房時インジェクション用リード弁ユニット90a,90bの入口開口95とを連通する上流側暖房用インジェクション通路16が形成されている。また、ハウジング10内には、冷房用インジェクション配管接続口15と2つの冷房時インジェクション用リード弁ユニット90c,90dの入口開口95とを連通する上流側冷房用インジェクション通路17が形成されている。上流側暖房用インジェクション通路16、および、上流側冷房用インジェクション通路17は、それぞれ圧縮機軸に直交する面と平行に形成されて、着座面94に対して直交するように入口開口95と連通する。上流側冷房用インジェクション通路17は、上流側暖房用インジェクション通路16に干渉しないように、途中で軸方向位置がずれるように曲げて形成される。
【0031】
また、ハウジング10内には、第1暖房時インジェクション用リード弁ユニット90aの出口開口98と第1暖房用インジェクションポート71aとを一直線状に連通する第1暖房用インジェクション通路18aが形成され、第2暖房時インジェクション用リード弁ユニット90bの出口開口98と第2暖房用インジェクションポート71bとを一直線状に連通する第2暖房用インジェクション通路18bが形成される。また、ハウジング10内には、第1冷房時インジェクション用リード弁ユニット90cの出口開口98と第1冷房用インジェクションポート72aとを一直線状に連通する第1冷房インジェクション通路19aが形成され、第2冷房時インジェクション用リード弁ユニット90dの出口開口98と第2冷房用インジェクションポート72bとを一直線状に連通する第2冷房用インジェクション通路19bが形成される。従って、各インジェクション通路18a,18b,19a,19bは、軸方向に平行に設けられている。
【0032】
暖房用インジェクション配管接続口14には、暖房用インジェクション配管207が接続され、冷房用インジェクション配管接続口15には、冷房用インジェクション配管206が接続される。
【0033】
暖房用インジェクション配管接続口14、および、冷房用インジェクション配管接続口15には、外部から選択的に中間圧力のインジェクション冷媒が供給される。これにより、インジェクション用リード弁ユニット90は、インジェクションポート70に連通する圧縮室80の圧力が、インジェクション冷媒の中間圧力よりも低い場合には、リード弁本体93が差圧により開弁して、その圧縮室80にインジェクション冷媒を注入する。
【0034】
このインジェクション冷媒の注入にあたっては、インジェクション用リード弁ユニット90におけるリード弁本体93の向きと、入口開口95と出口開口98との位置関係を上記のように設定することにより、インジェクション用リード弁ユニット90内を最短ルートにてインジェクション冷媒を通過させることができる。この場合、図4図5の矢印にて示すように、入口開口95から導入されたインジェクション冷媒は、リード弁本体93の表面に案内されて、その向きを出口開口98の方向に変更し、そのまま出口開口98から流出する。従って、インジェクション用リード弁ユニット90内におけるインジェクション冷媒の通路形状がシンプルとなり、弁室97の容積をできるだけ小さくしつつ、十分な通過面積を確保することができる。これにより、流路抵抗が少なく、かつ、再圧縮容積を小さくすることができる。
【0035】
尚、本実施形態においては、インジェクション用リード弁ユニット90を圧縮機1のハウジング10内に組み込むようにしているが、それに代えて、例えば、ハウジング10を加工して弁室97を形成し、その弁室97にリード弁本体93を取り付けるようにしてもよい。また、本実施形態においては、四角いケーシング91にリテーナー92を組み込んでいるが、それに代えて、例えば、傾斜保持面96を有するケーシングを形成してもよい。つまり、リテーナー92の形状を削ったケーシング(底面が傾斜保持面となったケーシング)を用いるようにしてもよい。
【0036】
ハウジング10には、図6に示すように、第1弁室101と第2弁室102とが気密に区画されて形成されている。第1弁室101、第2弁室102には、それぞれ圧縮機軸に対して直交する面となる着座面104、105を備えている。
【0037】
第1弁室101の着座面104には、固定スクロール20に穿設された吐出ポート61、リリーフポート62a,62bに一直線状に連通するように形成された吐出孔111、リリーフ孔112a,112bの先端が開口している。また、第2弁室102の着座面105には、固定スクロール20に穿設されたリデュースポート63a,63bに一直線状に連通するように形成されたリデュース孔113a,113bの先端が開口している。第1弁室101には、吐出孔111を開閉するための逆止弁である吐出弁121と、リリーフ孔112a,112bを開閉するための逆止弁であるリリーフ弁122a,122bとが設けられる。第2弁室102には、リデュース孔113a,113bを開閉するための逆止弁であるリデュース弁123a,123bが設けられる。
【0038】
吐出弁121、リリーフ弁122a,122b、リデュース弁123a,123bは、リード弁であり、その片側端がリテーナー124によって着座面104,105との間に挟まれた状態でネジSによって固定される。吐出弁121は、その先端(自由端)で吐出孔111を覆うように設けられ、リリーフ弁122a,122bは、その先端でリリーフ孔112a,112bを覆うように設けられ、リデュース弁123a,123bは、その先端でリデュース孔113a,113bを覆うように設けられる。各リード弁は、板面が、圧縮機軸に対して直交する方向に向けて設けられる。各リテーナー124は、図1に示すように、着座面104,105に対して傾斜した湾曲面形状の板体に形成されており、リード弁が開弁中にリード弁の背面を保持する。尚、図6においては、リード弁を示すために、リテーナー124の記載を省略している。
【0039】
ハウジング10には、図1に示すように、吐出配管接続口12およびリデュース配管接続口13が形成されている。ハウジング10内には、吐出配管接続口12と第1弁室101とを連通する吐出通路131、および、リデュース配管接続口13と第2弁室102とを連通するリデュース通路132が形成されている。
【0040】
図7は、上述した弁機構の各部の配置を軸方向からみて表した配置図である。図中において、インジェクションリード弁ユニット90に関する構成については実線にて示し、他のリード弁121,122a,122b,123a,123bに関連する構成については破線にて示している。図示するように、全てのインジェクションリード弁ユニット90およびインジェクション通路18a,18b,19a,19bを第1弁室101、第2弁室102に干渉しないように配置されている。また、上流側暖房用インジェクション通路16、上流側冷房用インジェクション通路17は、第1弁室101、第2弁室102に対して軸方向位置がずれているため、どのように配置しても第1弁室101、第2弁室102に干渉しない。
【0041】
このように構成された圧縮機1においては、可動スクロール30が旋回運動をすると、渦巻状に形成された圧縮室80が旋回しつつ徐々に容積を減らしながら固定スクロール20の外周側から中央部に移動する。そして、圧縮室80が吐出ポート61と連通すると、圧縮された冷媒の圧力により吐出弁121が開弁して、冷媒が第1弁室101に流れ吐出配管接続口12から吐出する。これにより、空調装置の冷媒回路に冷媒が供給される。
【0042】
また、圧縮室80が吐出ポート61に連通する前に、圧縮室80内の圧力が過剰に高くなった場合には、圧縮室80がリリーフポート62a(62b)に連通した段階で、冷媒の圧力によりリリーフ弁122a(122b)が開弁して、冷媒が第1弁室101に流れ吐出配管接続口12から吐出する。
【0043】
また、空調装置が低負荷運転を行うときには、後述するリデュース配管215に設けたリデュース用開閉弁216が開弁される。この場合、圧縮室80が吐出ポート61に連通する前であり、リデュースポート63a(63b)に連通した段階で、冷媒の圧力によりリデュース弁123a(123b)が開弁して、冷媒が第2弁室102に流れリデュース配管接続口13から吐出する。リデュース配管215は、後述するように吸入配管205に接続されている。従って、空調負荷に対して過剰分の冷媒を吸入路に帰還させて、空調装置の冷媒回路に供給する単位時間当たりの冷媒流量を低減させ、圧縮機1の負荷を低減させることができる。
【0044】
ここで、空調装置の冷媒回路について図8を用いて説明する。空調装置は、ガス冷媒を圧縮するための上述の圧縮機1と、室内に設置され冷媒を室内の空気と熱交換させるための室内熱交換器221A,221Bと、室外に設置され冷媒を外気と熱交換させるための室外熱交換器222と、冷媒を膨張させる暖房用膨張弁223Aおよび冷房用膨張弁223Bと、四方切換弁210と、冷媒を気液分離させる第1気液分離器225および第2気液分離器226と、冷媒をエンジン冷却水と熱交換させるためのサブ熱交換器227と、制御装置300と、ガスエンジン400とを備える。
【0045】
圧縮機1の吐出配管接続口12は、吐出配管である第1配管201を介して四方切換弁210に接続される。四方切換弁210は、4つのポート(第1ポート211、第2ポート212、第3ポート213、第4ポート214)を有する。四方切換弁210は、第1ポート211が第2ポート212に接続され且つ第3ポート213が第4ポート214に接続される暖房接続状態と、第1ポート211が第3ポート213に接続され且つ第2ポート212が第4ポート214に接続される冷房接続状態とに、その接続状態を切り換えることができるように構成される。上述の第1配管201は、四方切換弁210の第1ポート211に接続される。第2ポート212には第2配管202の一方端が接続される。第3ポート213には第3配管203の一方端が接続され、第4ポート214には第4配管204の一方端が接続される。
【0046】
第2配管202の他方端側は分岐し、一方の分岐管に室内熱交換器221Aが接続され、他方の分岐管に室内熱交換器221Bが接続される。各分岐管にはそれぞれ流量制御弁220A,220Bが設けられている。なお、室内熱交換器の数は1つでも良いし3つ以上でも良い。また、第3配管203の他方端に室外熱交換器222が接続される。室内熱交換器221A,221Bと室外熱交換器222とは中間配管256で接続される。室内熱交換器221A,221Bは、第2配管202または中間配管256から内部に冷媒を流入するとともに、流入した冷媒と室内空気とを熱交換させる。室外熱交換器222は、中間配管256または第3配管203から内部に冷媒を流入するとともに、流入した冷媒と外気とを熱交換させる。
【0047】
中間配管256は、室内熱交換器221A,221Bから室外熱交換器222に向かう方向からみて、図8の点Cで分岐し点Dで合流する暖房用中間配管256Aと冷房用中間配管256Bとを有する。暖房用中間配管256Aには、暖房用逆止弁291および暖房用膨張弁223Aが介装される。暖房用逆止弁291は、点Cから点Dに向かう暖房用中間配管256A内の冷媒の流れを許容しその反対方向に向かう流れを遮断する。暖房用膨張弁223Aはそこを通る冷媒を膨張させる。
【0048】
冷房用中間配管256Bには、冷房用逆止弁292、減圧弁293、第2気液分離器226、冷房用膨張弁223Bが介装される。冷房用逆止弁292は、点Dから点Cに向かう冷房用中間配管256B内の冷媒の流れを許容しその反対方向に向かう流れを遮断する。減圧弁293は、冷房用中間配管256Bを流れる冷媒を減圧する。第2気液分離器226は、冷房用中間配管256Bを流れる冷媒を気液分離し、ガス冷媒を後述する冷房用インジェクション配管206に流し、液冷媒のみを冷房用中間配管256Bに流す。冷房用膨張弁223Bはそこを通る冷媒を膨張させる。
【0049】
また、暖房用中間配管256Aの途中の部分であって暖房用膨張弁223Aが介装されている部分と暖房用逆止弁291が介装されている部分との間の部分に暖房用インジェクション配管207の一方端が連通する。暖房用インジェクション配管207の他方端は、圧縮機1の暖房用インジェクション配管接続口14に接続される。暖房用インジェクション配管207の途中には、サブ熱交換器227が設けられる。サブ熱交換器227には、暖房用インジェクション配管207を流れる冷媒が流入する。サブ熱交換器227に流入した冷媒は、ガスエンジン400を冷却した冷却水と熱交換する。このサブ熱交換器227によって、暖房用インジェクション配管207を流れる冷媒のうち液冷媒が蒸発される。また、暖房用インジェクション配管207には、サブ熱交換器227の上流側に暖房用インジェクション開閉弁208が設けられている。
【0050】
また、第2気液分離器226に冷房用インジェクション配管206の一方端が連通する。冷房用インジェクション配管206の他方端は、圧縮機1の冷房用インジェクション配管接続口15に接続される。冷房用インジェクション配管206の途中には、冷房用インジェクション開閉弁209が設けられている。
【0051】
第4配管204の他方端は、第1気液分離器225に接続される。第1気液分離器225は、そこに流入した冷媒を気液分離する。第1気液分離器225には、吸入配管である第5配管205の一方端が連通する。第5配管205の他方端は、圧縮機1の吸入配管接続口11に接続される。第1気液分離器225で気液分離された冷媒のうちのガス冷媒は、第5配管205を流れて圧縮機1に供給される。
【0052】
また、圧縮機1のリデュース配管接続口13には、リデュース配管215の一方端が接続される。リデュース配管215の他方端は、第5配管205に接続される。リデュース配管215の途中には、リデュース用開閉弁216が設けられている。
【0053】
次に、この空調装置の空調運転(暖房運転、冷房運転)について説明する。空調装置の運転制御は、制御装置300により行われる。この運転制御については、本発明の特徴ではないため、以下、簡単に説明する。まず、暖房運転について説明する。暖房運転時には四方切換弁210が暖房接続状態にされる。暖房運転時に圧縮機1が作動すると、圧縮機1で圧縮された高圧ガス冷媒が第1配管201(吐出配管)に吐出される。第1配管201に吐出された高圧ガス冷媒は、第1ポート211から四方切換弁210に入り、第2配管201に送られて室内熱交換器221A,221Bに流入する。室内熱交換器221A,221Bに流入した高圧ガス冷媒は、室内熱交換器221A,221B内を流通する間に室内空気に熱を吐き出して凝縮する。このとき高圧ガス冷媒から吐き出された熱によって室内空気が暖められて、室内暖房される。
【0054】
室内空気に熱を吐き出して凝縮した冷媒は、一部液化して室内熱交換器221A,221Bから流出し、中間配管256を流れ、さらに点Cで示す位置から暖房用中間配管256Aに流入する。そして、暖房用膨張弁223Aで膨張することにより蒸発しやすいように低圧化された後に室外熱交換器222に流入する。室外熱交換器222に流入した冷媒は、室外熱交換器222内を流通する間に外気の熱を奪って蒸発する。
【0055】
外気の熱を奪って蒸発した冷媒は、一部気化して室外熱交換器222から流出し、第3配管203を流れる。そして、第3ポート213から四方切換弁210に入り、第4配管204に送られて第1気液分離器225に流入する。第1気液分離器225では、冷媒が液冷媒と低圧のガス冷媒とに分離される。そして、低圧ガス冷媒のみが第5配管205(吸入配管)を流れて圧縮機1に帰還する。
【0056】
次に、冷房運転について説明する。冷房運転時には四方切換弁210が冷房接続状態にされる。冷房運転時に圧縮機1が作動すると、圧縮機1で圧縮された高圧ガス冷媒が第1配管201に吐出される。第1配管201に吐出された高圧ガス冷媒は、第1ポート211から四方切換弁210に入り、第3ポート213に送られて室外熱交換器222に流入する。室外熱交換器222に流入した高圧ガス冷媒は、室外熱交換器222内を流通する間に外気に熱を吐き出して凝縮する。
【0057】
外気に熱を吐き出して凝縮した冷媒は、一部液化して室外熱交換器222から流出されて中間配管256を流れ、点Dで示す位置から冷房用中間配管256Bに流入し、減圧弁293で減圧された後に第2気液分離器226に流入する。第2気液分離器226で冷媒がガス冷媒と液冷媒とに分離される。分離された冷媒のうち液冷媒のみが冷房用中間配管256Bをさらに流れる。そして、冷房用膨張弁223Bで膨張することにより蒸発しやすいように低圧化された後に室内熱交換器221A,221Bに流入する。室内熱交換器221A,221Bに流入した冷媒は、室内熱交換器221A,221B内を流通する間に室内空気の熱を奪って蒸発する。このとき、冷媒が室内空気の熱を奪うことによって室内空気が冷やされて、室内冷房される。
【0058】
室内空気の熱を奪って蒸発した冷媒は、一部気化して室内熱交換器221A,221Bから流出し、第2配管202を流れる。そして、第2ポート212から四方切換弁210に入り、第4配管204に送られて第1気液分離器225に流入する。第1気液分離器225では、冷媒が液冷媒と低圧のガス冷媒とに分離される。そして、低圧ガス冷媒のみが第5配管205を流れて圧縮機1に帰還する。
【0059】
このように、暖房時には、室内熱交換器221A,221Bが凝縮器となり室外熱交換器222が蒸発器となる。一方、冷房時には、室外熱交換器222が凝縮器となり室内熱交換器221A、221Bが蒸発器となる。
【0060】
空調装置の空調要求負荷が高い場合には、高負荷運転が行われる。高負荷運転が行われる場合には、暖房運転時であれば、暖房用インジェクション開閉弁208が開弁状態に維持され、冷房運転時であれば、冷房用インジェクション開閉弁209が開弁状態に維持される。尚、これらの開閉弁208,209は、制御装置300により開弁状態が制御され、高負荷運転が行われない場合には、閉弁状態に維持される。
【0061】
高負荷運転時においては、暖房運転時であれば、第1暖房時インジェクション用リード弁ユニット90a、第2暖房時インジェクション用リード弁ユニット90bの各入口開口95と中間配管256Aとが連通状態となる。この場合、中間配管256A内の冷媒は、中間圧力を有するため、圧縮室80が第1暖房用インジェクションポート71a,第2暖房用インジェクションポート71bに連通すると、第1暖房時インジェクション用リード弁ユニット90a、第2暖房時インジェクション用リード弁ユニット90bが差圧により開弁して圧縮室80に流入する。また、冷房運転時であれば、第1冷房時インジェクション用リード弁ユニット90c、第2冷房時インジェクション用リード弁ユニット90dの各入口開口95と中間配管256Bとが連通状態となる。この場合、中間配管256B内の冷媒は、中間圧力を有するため、圧縮室80が第1冷房用インジェクションポート72a,第2冷房用インジェクションポート72bに連通すると、第1冷房時インジェクション用リード弁ユニット90c、第2冷房時インジェクション用リード弁ユニット90dが差圧により開弁して圧縮室80に流入する。これにより、高負荷運転時においては、空調装置の冷媒回路に供給する単位時間当たりの冷媒流量を増加させることができ、高い空調要求負荷に対処することができる。
【0062】
空調装置の空調要求負荷が低い場合には、低負荷運転が行われる。制御装置300は、低負荷運転を行う場合においてのみリデュース用開閉弁216を開弁状態に維持する。これにより、第2弁室102と第5配管205とが連通状態となる。従って、圧縮室80がリデュースポート63a(63b)に連通したときに、圧縮室80内の冷媒の圧力によりリデュース弁123a(123b)が開弁して、圧縮室80内の冷媒は、第2弁室102、リデュース配管215を経由して第5配管205に戻される。従って、空調負荷に対して過剰分の冷媒を吸入路に帰還させて、空調装置の冷媒回路に供給する単位時間当たりの冷媒流量を低減させることができ、低い空調要求負荷に対処することができる。
【0063】
空調装置の空調要求負荷が中間的な範囲である場合には、通常負荷運転が行われる。制御装置300は、通常負荷運転を行う場合には、インジェクション開閉弁208,209、リデュース用開閉弁216を閉弁状態に維持し、ガスエンジン400の回転数制御にて冷媒流量を調整する。
【0064】
以上説明した本実施形態の圧縮機1によれば、中間圧力のガス冷媒を圧縮室80に注入するための通路にインジェクション用リード弁ユニット90を設けているため以下の効果を奏する。
1.インジェクション用リード弁ユニット90は、リード弁本体93の自由端が圧縮室80側となり、かつ、リード弁本体93の固定端と自由端とを結ぶ方向が圧縮機軸と平行になるように配置されるとともに、出口面99および出口開口98が、リード弁本体93の固定端から自由端に向かう方向に形成されている。また、リテーナー92の背面および側面には、インジェクション冷媒の流入できる空間が存在しないように弁室97が形成されている。従って、入口開口95と出口開口98とを互いに接近した位置に設けて弁室97内をインジェクション冷媒が通過する距離を短くし、かつ、その通路形状をシンプルにすることができる。これにより、弁室97の容積をできるだけ小さくしつつ、十分な通過面積を確保することができる。この結果、流路抵抗が少なく、かつ、再圧縮容積を小さくすることができ、圧縮機1の圧縮効率を向上させることができる。
【0065】
2.圧縮機1は、多数のリード弁(インジェクション用リード弁×4,吐出弁×1,リリーフ弁×2、リデュース弁×2)を備えているが、インジェクション用リード弁については、その板面が圧縮機軸と平行となるように配置され、他のリード弁については、その板面が圧縮機軸と直交する方向に向けて配置される。従って、複数機能のリード弁を混在して設ける場合には、それらリード弁のレイアウトが容易となる。例えば、本実施形態で使用する9つのリード弁の全てを、その板面が圧縮機軸と直交する方向となるように配置する場合には、リード弁の板面の占有する面積、弁室の占有する面積が多くなるため、それらのレイアウトが難しい。これに対して、本実施形態においては、図7に示すように、リード弁の板面の向きを圧縮機軸と平行に設けたものと、圧縮機軸と直交する方向に向けたものとを組み合わせるため、リード弁の増加に対応することができる。
【0066】
以上、本実施形態の冷媒圧縮機について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0067】
例えば、本実施形態では、インジェクション用リード弁を4つ備えた構成であるが、インジェクション用リード弁の数は任意に設定できるものである。同様に、他のリード弁についても、その数は任意に設定できるものである。
【符号の説明】
【0068】
1…圧縮機、10…ハウジング、20…固定スクロール、22…渦巻状壁体、30…可動スクロール、32…渦巻状壁体、40…シャフト、61…吐出ポート、62a,62b…リリーフポート、63a,63b…リデュースポート、71a,71b…暖房用インジェクションポート、72a,72b…冷房用インジェクションポート、80…圧縮室、90…インジェクション用リード弁ユニット、90a,90b…暖房時インジェクション用リード弁ユニット、90c,90d…冷房時インジェクション用リード弁ユニット、91…ケーシング、92…リテーナー、93…リード弁本体、94…着座面、95…入口開口、96…傾斜保持面、97…弁室、98…出口開口、99…出口面、206…冷房用インジェクション配管、207…暖房用インジェクション配管、215…リデュース配管。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9