特許第6186976号(P6186976)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186976
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】シート状材料の冷却制御方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/06 20060101AFI20170821BHJP
   B22D 11/124 20060101ALI20170821BHJP
   B22D 11/22 20060101ALI20170821BHJP
   B29C 47/88 20060101ALI20170821BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20170821BHJP
【FI】
   B22D11/06 330Z
   B22D11/06 370Z
   B22D11/124 Z
   B22D11/22 B
   B29C47/88 Z
   B29L7:00
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-150392(P2013-150392)
(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公開番号】特開2015-20191(P2015-20191A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 裕之
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−147105(JP,A)
【文献】 特開昭56−160859(JP,A)
【文献】 実開平01−072947(JP,U)
【文献】 特開昭58−181454(JP,A)
【文献】 特開昭57−112955(JP,A)
【文献】 特開2001−096342(JP,A)
【文献】 特開2010−058370(JP,A)
【文献】 米国特許第03862658(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00−11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融材料を回転する冷却ロールの外周面に供給して一次冷却を行い、続いて、前記冷却ロールと冷却ロール外周面に押し付けられる冷却ベルトとの間を通過させて二次冷却を行うことによりシート状材料を形成するシート状材料の冷却制御方法であって、
材料の二次冷却開始温度計測値が二次冷却開始温度目標値より高いとき、一次冷却の領域を長くして二次冷却開始温度を下げ、前記二次冷却開始温度計測値が二次冷却開始温度目標値以下のとき、一次冷却の領域を短くして二次冷却開始温度を上げる二次冷却開始温度調整工程と、
前記二次冷却開始温度計測値と二次冷却終了温度計測値に基づく冷却速度が冷却速度目標値より大きいとき、前記冷却ベルトの冷却ロール外周面に対する押付力を減少させて冷却速度を下げ、前記冷却速度が冷却速度目標値以下のとき、前記冷却ベルトの冷却ロール外周面に対する押付力を増加させて冷却速度を上げる冷却速度調整工程と、
前記二次冷却終了温度計測値が二次冷却終了温度目標値より高いとき、二次冷却の領域を長くして二次冷却終了温度を下げ、前記二次冷却終了温度計測値が二次冷却終了温度目標値以下のとき、二次冷却の領域を短くして二次冷却終了温度を上げる二次冷却終了温度調整工程と
を行い、
前記二次冷却開始温度調整工程における二次冷却開始温度計測値と二次冷却開始温度目標値との比較は、二次冷却開始温度計測値と二次冷却開始温度目標値との偏差の絶対値が許容偏差を超えるときに行い、
前記冷却速度調整工程における冷却速度は、前記二次冷却開始温度調整工程で前記二次冷却開始温度計測値と二次冷却開始温度目標値との偏差の絶対値が許容偏差以下のとき、冷却速度算出値として
R=(T−T)/(L/V)
但し、T:二次冷却開始温度計測値
:二次冷却終了温度計測値
L:冷却ロール外周面に押し付けられる冷却ベルトの弧長
V:冷却ロールの周速
より算出し、前記冷却速度算出値と冷却速度目標値との比較は、該冷却速度算出値と冷却速度目標値との偏差の絶対値が許容偏差を超えるときに行い、
前記二次冷却終了温度調整工程における二次冷却終了温度計測値と二次冷却終了温度目標値との比較は、前記冷却速度調整工程で冷却速度算出値と冷却速度目標値との偏差の絶対値が許容偏差以下であって、前記二次冷却終了温度計測値と二次冷却終了温度目標値との偏差の絶対値が許容偏差を超えるときに行い、前記二次冷却終了温度計測値と二次冷却終了温度目標値との偏差の絶対値が許容偏差以下のとき、前記二次冷却開始温度調整工程へ戻るようにしたことを特徴とするシート状材料の冷却制御方法。
【請求項2】
回転自在に配設され且つ外周面に供給される溶融材料の一次冷却と二次冷却とを行う冷却ロールと、
第一プーリーと第二プーリーとテンションプーリーとの間に無端状に掛け回され且つ第一プーリーと第二プーリーとの間で冷却ロール外周面に押し付けられて該冷却ロールとの間で材料の前記二次冷却を行う冷却ベルトと、
前記第一プーリーの配設位置における材料の二次冷却開始温度計測値を計測する第一温度センサと、
前記第二プーリーの配設位置における材料の二次冷却終了温度計測値を計測する第二温度センサと、
前記第一温度センサで計測される二次冷却開始温度計測値と前記第二温度センサで計測される二次冷却終了温度計測値とに基づき、前記第一プーリーの位置調整を行う第一アクチュエータと、前記第二プーリーの位置調整を行う第二アクチュエータと、前記テンションプーリーの位置調整を行うテンションアクチュエータとに制御信号を出力することにより、前記一次冷却と二次冷却とを調整する制御器と
を備え
前記第一プーリーは、前記冷却ロールにおける溶融材料の供給位置から冷却ロール回転方向下流側へ所要距離だけ離れた位置に、冷却ロール軸心と平行な軸心を中心として回転自在に且つ前記第一アクチュエータの作動により冷却ロール外周面に沿って位置調整自在となるよう配設され、
前記第二プーリーは、前記第一プーリーから冷却ロール回転方向下流側へ所要距離だけ離れた位置に、冷却ロール軸心と平行な軸心を中心として回転自在に且つ前記第二アクチュエータの作動により冷却ロール外周面に沿って位置調整自在となるよう配設され、
前記テンションプーリーは、前記第一プーリー及び第二プーリーから所要距離だけ離れた位置に、冷却ロール軸心と平行な軸心を中心として回転自在に且つ前記テンションアクチュエータの作動により冷却ロール外周面に対する位置調整自在となるよう配設され、
前記制御器は、
前記一次冷却の終了地点となる二次冷却の開始地点で第一温度センサにより計測される材料の二次冷却開始温度計測値と二次冷却開始温度目標値との偏差の絶対値が許容偏差を超え且つ前記二次冷却開始温度計測値が二次冷却開始温度目標値より高いとき、前記二次冷却の開始地点となる第一プーリーの位置を材料流通方向下流側へ移動させ、一次冷却の領域を長くして二次冷却開始温度計測値を下げる制御信号を前記第一アクチュエータへ出力する一方、前記二次冷却開始温度計測値と二次冷却開始温度目標値との偏差の絶対値が許容偏差を超え且つ前記二次冷却開始温度計測値が二次冷却開始温度目標値以下のとき、前記二次冷却の開始地点となる第一プーリーの位置を材料流通方向上流側へ移動させ、一次冷却の領域を短くして二次冷却開始温度計測値を上げる制御信号を前記第一アクチュエータへ出力する二次冷却開始温度調整部と、
該二次冷却開始温度調整部で前記二次冷却開始温度計測値と二次冷却開始温度目標値との偏差の絶対値が許容偏差以下であると判断されたとき、冷却速度算出値を
R=(T−T)/(L/V)
但し、T:二次冷却開始温度計測値
:二次冷却終了温度計測値
L:冷却ロール外周面に押し付けられる冷却ベルトの弧長
V:冷却ロールの周速
より算出し、該冷却速度算出値と冷却速度目標値との偏差の絶対値が許容偏差を超え且つ前記冷却速度算出値が冷却速度目標値より大きいとき、前記冷却ベルトの張力を減少させる方向へテンションプーリーを移動させ、該冷却ベルトの冷却ロール外周面に対する押付力を減少させて冷却速度算出値を下げる制御信号を前記テンションアクチュエータへ出力する一方、前記冷却速度算出値と冷却速度目標値との偏差の絶対値が許容偏差を超え且つ前記冷却速度算出値が冷却速度目標値以下のとき、前記冷却ベルトの張力を増加させる方向へテンションプーリーを移動させ、該冷却ベルトの冷却ロール外周面に対する押付力を増加させて冷却速度算出値を上げる制御信号を前記テンションアクチュエータへ出力する冷却速度調整部と、
該冷却速度調整部で冷却速度算出値と冷却速度目標値との偏差の絶対値が許容偏差以下であると判断されたとき、前記二次冷却の終了地点で第二温度センサにより計測される材料の二次冷却終了温度計測値と二次冷却終了温度目標値との偏差の絶対値が許容偏差を超え且つ前記二次冷却終了温度計測値が二次冷却終了温度目標値より高いとき、前記二次冷却の終了地点となる第二プーリーの位置を材料流通方向下流側へ移動させ、二次冷却の領域を長くして二次冷却終了温度計測値を下げる制御信号を前記第二アクチュエータへ出力する一方、前記二次冷却終了温度計測値と二次冷却終了温度目標値との偏差の絶対値が許容偏差を超え且つ前記二次冷却終了温度計測値が二次冷却終了温度目標値以下のとき、前記二次冷却の終了地点となる第二プーリーの位置を材料流通方向上流側へ移動させ、二次冷却の領域を短くして二次冷却終了温度計測値を上げる制御信号を前記第二アクチュエータへ出力し、前記二次冷却終了温度計測値と二次冷却終了温度目標値との偏差の絶対値が許容偏差以下のとき、前記二次冷却開始温度調整部での制御へ戻る二次冷却終了温度調整部と
を具備したことを特徴とするシート状材料の冷却制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状材料の冷却制御方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂或いは金属等の溶融材料を回転する冷却ロールの外周面に供給して冷却を行うことによりシート状材料を形成することが行われている。
【0003】
これと類似したシートの加工装置を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。該特許文献1に開示された装置では、一対のエンドレス支持ロールと転写ロールとの間隔の調整、及びエンドレス張力調整ロールの位置の調整によって、エンドレスベルトの接触面積及び張力(加圧される力)を調整することにより、熱可塑性樹脂への転写用の型の転写効率及び冷却効率を向上できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−260357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された装置は、基本的に熱可塑性樹脂を成型する際に微細模様を付与するためのものに過ぎない。
【0006】
又、特許文献1に開示された装置では、ダイスを出た溶融状態の熱可塑性樹脂は、微細模様加工した転写用の型を有する転写ロールと、エンドレスベルトとの間に直接導かれるようになっており、前記溶融状態の熱可塑性樹脂を、転写ロールとエンドレスベルトとの間に導く前に、転写ロールの外周面に供給して冷却しようとする技術的思想は全くない。このため、溶融材料の冷却工程できめ細かい制御を行うことは困難となり、透明性を確保した樹脂シート、或いは磁性や電気的特性を変化させた金属シートといったように、種々のシート状材料を形成する上で非常に重要となる所望の組織構造を得ることはできなかった。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、溶融材料の冷却工程できめ細かい制御を行うことができ、所望の組織構造を有したシート状材料を形成し得るシート状材料の冷却制御方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、溶融材料を回転する冷却ロールの外周面に供給して一次冷却を行い、続いて、前記冷却ロールと冷却ロール外周面に押し付けられる冷却ベルトとの間を通過させて二次冷却を行うことによりシート状材料を形成するシート状材料の冷却制御方法であって、
材料の二次冷却開始温度計測値が二次冷却開始温度目標値より高いとき、一次冷却の領域を長くして二次冷却開始温度を下げ、前記二次冷却開始温度計測値が二次冷却開始温度目標値以下のとき、一次冷却の領域を短くして二次冷却開始温度を上げる二次冷却開始温度調整工程と、
前記二次冷却開始温度計測値と二次冷却終了温度計測値に基づく冷却速度が冷却速度目標値より大きいとき、前記冷却ベルトの冷却ロール外周面に対する押付力を減少させて冷却速度を下げ、前記冷却速度が冷却速度目標値以下のとき、前記冷却ベルトの冷却ロール外周面に対する押付力を増加させて冷却速度を上げる冷却速度調整工程と、
前記二次冷却終了温度計測値が二次冷却終了温度目標値より高いとき、二次冷却の領域を長くして二次冷却終了温度を下げ、前記二次冷却終了温度計測値が二次冷却終了温度目標値以下のとき、二次冷却の領域を短くして二次冷却終了温度を上げる二次冷却終了温度調整工程と
を行い、
前記二次冷却開始温度調整工程における二次冷却開始温度計測値と二次冷却開始温度目標値との比較は、二次冷却開始温度計測値と二次冷却開始温度目標値との偏差の絶対値が許容偏差を超えるときに行い、
前記冷却速度調整工程における冷却速度は、前記二次冷却開始温度調整工程で前記二次冷却開始温度計測値と二次冷却開始温度目標値との偏差の絶対値が許容偏差以下のとき、冷却速度算出値として
R=(T−T)/(L/V)
但し、T:二次冷却開始温度計測値
:二次冷却終了温度計測値
L:冷却ロール外周面に押し付けられる冷却ベルトの弧長
V:冷却ロールの周速
より算出し、前記冷却速度算出値と冷却速度目標値との比較は、該冷却速度算出値と冷却速度目標値との偏差の絶対値が許容偏差を超えるときに行い、
前記二次冷却終了温度調整工程における二次冷却終了温度計測値と二次冷却終了温度目標値との比較は、前記冷却速度調整工程で冷却速度算出値と冷却速度目標値との偏差の絶対値が許容偏差以下であって、前記二次冷却終了温度計測値と二次冷却終了温度目標値との偏差の絶対値が許容偏差を超えるときに行い、前記二次冷却終了温度計測値と二次冷却終了温度目標値との偏差の絶対値が許容偏差以下のとき、前記二次冷却開始温度調整工程へ戻るようにしたことを特徴とするシート状材料の冷却制御方法にかかるものである。
【0010】
又、本発明は、回転自在に配設され且つ外周面に供給される溶融材料の一次冷却と二次冷却とを行う冷却ロールと、
第一プーリーと第二プーリーとテンションプーリーとの間に無端状に掛け回され且つ第一プーリーと第二プーリーとの間で冷却ロール外周面に押し付けられて該冷却ロールとの間で材料の前記二次冷却を行う冷却ベルトと、
前記第一プーリーの配設位置における材料の二次冷却開始温度計測値を計測する第一温度センサと、
前記第二プーリーの配設位置における材料の二次冷却終了温度計測値を計測する第二温度センサと、
前記第一温度センサで計測される二次冷却開始温度計測値と前記第二温度センサで計測される二次冷却終了温度計測値とに基づき、前記第一プーリーの位置調整を行う第一アクチュエータと、前記第二プーリーの位置調整を行う第二アクチュエータと、前記テンションプーリーの位置調整を行うテンションアクチュエータとに制御信号を出力することにより、前記一次冷却と二次冷却とを調整する制御器と
を備え
前記第一プーリーは、前記冷却ロールにおける溶融材料の供給位置から冷却ロール回転方向下流側へ所要距離だけ離れた位置に、冷却ロール軸心と平行な軸心を中心として回転自在に且つ前記第一アクチュエータの作動により冷却ロール外周面に沿って位置調整自在となるよう配設され、
前記第二プーリーは、前記第一プーリーから冷却ロール回転方向下流側へ所要距離だけ離れた位置に、冷却ロール軸心と平行な軸心を中心として回転自在に且つ前記第二アクチュエータの作動により冷却ロール外周面に沿って位置調整自在となるよう配設され、
前記テンションプーリーは、前記第一プーリー及び第二プーリーから所要距離だけ離れた位置に、冷却ロール軸心と平行な軸心を中心として回転自在に且つ前記テンションアクチュエータの作動により冷却ロール外周面に対する位置調整自在となるよう配設され、
前記制御器は、
前記一次冷却の終了地点となる二次冷却の開始地点で第一温度センサにより計測される材料の二次冷却開始温度計測値と二次冷却開始温度目標値との偏差の絶対値が許容偏差を超え且つ前記二次冷却開始温度計測値が二次冷却開始温度目標値より高いとき、前記二次冷却の開始地点となる第一プーリーの位置を材料流通方向下流側へ移動させ、一次冷却の領域を長くして二次冷却開始温度計測値を下げる制御信号を前記第一アクチュエータへ出力する一方、前記二次冷却開始温度計測値と二次冷却開始温度目標値との偏差の絶対値が許容偏差を超え且つ前記二次冷却開始温度計測値が二次冷却開始温度目標値以下のとき、前記二次冷却の開始地点となる第一プーリーの位置を材料流通方向上流側へ移動させ、一次冷却の領域を短くして二次冷却開始温度計測値を上げる制御信号を前記第一アクチュエータへ出力する二次冷却開始温度調整部と、
該二次冷却開始温度調整部で前記二次冷却開始温度計測値と二次冷却開始温度目標値との偏差の絶対値が許容偏差以下であると判断されたとき、冷却速度算出値を
R=(T−T)/(L/V)
但し、T:二次冷却開始温度計測値
:二次冷却終了温度計測値
L:冷却ロール外周面に押し付けられる冷却ベルトの弧長
V:冷却ロールの周速
より算出し、該冷却速度算出値と冷却速度目標値との偏差の絶対値が許容偏差を超え且つ前記冷却速度算出値が冷却速度目標値より大きいとき、前記冷却ベルトの張力を減少させる方向へテンションプーリーを移動させ、該冷却ベルトの冷却ロール外周面に対する押付力を減少させて冷却速度算出値を下げる制御信号を前記テンションアクチュエータへ出力する一方、前記冷却速度算出値と冷却速度目標値との偏差の絶対値が許容偏差を超え且つ前記冷却速度算出値が冷却速度目標値以下のとき、前記冷却ベルトの張力を増加させる方向へテンションプーリーを移動させ、該冷却ベルトの冷却ロール外周面に対する押付力を増加させて冷却速度算出値を上げる制御信号を前記テンションアクチュエータへ出力する冷却速度調整部と、
該冷却速度調整部で冷却速度算出値と冷却速度目標値との偏差の絶対値が許容偏差以下であると判断されたとき、前記二次冷却の終了地点で第二温度センサにより計測される材料の二次冷却終了温度計測値と二次冷却終了温度目標値との偏差の絶対値が許容偏差を超え且つ前記二次冷却終了温度計測値が二次冷却終了温度目標値より高いとき、前記二次冷却の終了地点となる第二プーリーの位置を材料流通方向下流側へ移動させ、二次冷却の領域を長くして二次冷却終了温度計測値を下げる制御信号を前記第二アクチュエータへ出力する一方、前記二次冷却終了温度計測値と二次冷却終了温度目標値との偏差の絶対値が許容偏差を超え且つ前記二次冷却終了温度計測値が二次冷却終了温度目標値以下のとき、前記二次冷却の終了地点となる第二プーリーの位置を材料流通方向上流側へ移動させ、二次冷却の領域を短くして二次冷却終了温度計測値を上げる制御信号を前記第二アクチュエータへ出力し、前記二次冷却終了温度計測値と二次冷却終了温度目標値との偏差の絶対値が許容偏差以下のとき、前記二次冷却開始温度調整部での制御へ戻る二次冷却終了温度調整部と
を具備したことを特徴とするシート状材料の冷却制御装置にかかるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシート状材料の冷却制御方法及び装置によれば、溶融材料の冷却工程できめ細かい制御を行うことができ、所望の組織構造を有したシート状材料を形成し得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のシート状材料の冷却制御装置の実施例を示す概要構成斜視図である。
図2】本発明のシート状材料の冷却制御装置の実施例を示す概要構成側面図である。
図3】本発明のシート状材料の冷却制御装置の実施例における二次冷却開始温度調整部を示すフローチャートである。
図4】本発明のシート状材料の冷却制御装置の実施例における冷却速度調整部を示すフローチャートである。
図5】本発明のシート状材料の冷却制御装置の実施例における二次冷却終了温度調整部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0016】
図1図5は本発明のシート状材料の冷却制御装置の実施例であって、1は溶融材料が貯留される坩堝、2は坩堝1に貯留された溶融材料を受けるタンディッシュであり、該タンディッシュ2で受けた溶融材料を、図示していないモータ及び減速機を介して回転する冷却ロール3の外周面に供給することにより、溶融材料の一次冷却と二次冷却とを行うようにしてある。
【0017】
前記冷却ロール3の内部には図示していない冷却流路が形成され、該冷却流路に冷却媒体が流通するようにしてある。
【0018】
前記冷却ロール3における溶融材料の供給位置から冷却ロール3の回転方向下流側へ所要距離だけ離れた位置には、冷却ロール3の軸心と平行な軸心を中心として回転自在な第一プーリー4を、冷却ロール3の外周面に沿って位置調整自在となるよう配設してある。該第一プーリー4の両端部は、図示していないハウジングに冷却ロール3の軸線を中心として回動自在となるよう配設された第一プーリーガイド5に軸受(図示せず)を介して支持され、該第一プーリーガイド5を流体圧シリンダ等の第一アクチュエータ6によって回動させることにより、前記第一プーリー4の位置調整を行うようにしてある。
【0019】
前記第一プーリー4から冷却ロール3の回転方向下流側へ所要距離だけ離れた位置には、冷却ロール3の軸心と平行な軸心を中心として回転自在な第二プーリー7を、冷却ロール3の外周面に沿って位置調整自在となるよう配設してある。該第二プーリー7の両端部は、前記ハウジングに冷却ロール3の軸線を中心として回動自在となるよう配設された第二プーリーガイド8に軸受(図示せず)を介して支持され、該第二プーリーガイド8を流体圧シリンダ等の第二アクチュエータ9によって回動させることにより、前記第二プーリー7の位置調整を行うようにしてある。
【0020】
前記第一プーリー4及び第二プーリー7から所要距離だけ離れた位置には、冷却ロール3の軸心と平行な軸心を中心として回転自在なテンションプーリー10を、冷却ロール3の外周面に対する位置調整自在となるよう配設してある。該テンションプーリー10の一端部は、前記ハウジングに冷却ロール3の軸線と平行な軸を中心として揺動自在となるよう配設されたアーム11の先端に軸受ブラケット12を介して支持され、該アーム11を流体圧シリンダ等のテンションアクチュエータ13によって揺動させることにより、前記テンションプーリー10の位置調整を行うようにしてある。
【0021】
前記第一プーリー4と第二プーリー7とテンションプーリー10との間には、冷却ベルト14を無端状に掛け回し、該冷却ベルト14を第一プーリー4と第二プーリー7との間で冷却ロール3の外周面に押し付けることにより、該冷却ロール3と冷却ベルト14との間に材料を通過させて前記二次冷却を行うようにしてある。該二次冷却は、材料を冷却ロール3だけでなく冷却ベルト14にも接触させるため、前記一次冷却よりも冷却速度を高め材料の急冷を行うことが可能となっている。
【0022】
前記第一プーリーガイド5から冷却ロール3の外周面側へ張り出すように配設した第一ブラケット15には、前記第一プーリー4の配設位置における材料の二次冷却開始温度計測値Tを計測する第一温度センサ16を設け、前記第二プーリーガイド8から冷却ロール3の外周面側へ張り出すように配設した第二ブラケット17には、前記第二プーリー7の配設位置における材料の二次冷却終了温度計測値Tを計測する第二温度センサ18を設けてある。
【0023】
そして、前記第一温度センサ16で計測される二次冷却開始温度計測値Tと前記第二温度センサ18で計測される二次冷却終了温度計測値Tとに基づき、制御器19から前記第一アクチュエータ6と第二アクチュエータ9とテンションアクチュエータ13とに制御信号6a,9a,13aを出力するようにしてある。
【0024】
前記制御器19は、二次冷却開始温度調整工程を行う二次冷却開始温度調整部19A(図3参照)と、冷却速度調整工程を行う冷却速度調整部19B(図4参照)と、二次冷却終了温度調整工程を行う二次冷却終了温度調整部19C(図5参照)とを具備している。
【0025】
前記二次冷却開始温度調整部19Aは、図3に示す如く、前記一次冷却の終了地点となる二次冷却の開始地点で第一温度センサ16により材料の二次冷却開始温度計測値Tを計測するステップS1と、該ステップS1で計測された材料の二次冷却開始温度計測値Tと二次冷却開始温度目標値TA0との偏差の絶対値を許容偏差εTAと比較して第一プーリー4の位置の調整の要否を判断するステップS2と、該ステップS2で二次冷却開始温度計測値Tと二次冷却開始温度目標値TA0との偏差の絶対値が許容偏差εTAを超え調整を要すると判断されたときに二次冷却開始温度計測値Tが二次冷却開始温度目標値TA0より高いか否かを判断するステップS3とを備えている。更に、前記ステップS3で前記二次冷却開始温度計測値Tが二次冷却開始温度目標値TA0より高いと判断されたとき、前記二次冷却の開始地点となる第一プーリー4の位置を材料流通方向下流側へ移動させ、一次冷却の領域を長くして二次冷却開始温度計測値Tを下げる制御信号6aを前記第一アクチュエータ6へ出力するステップS4と、前記ステップS3で前記二次冷却開始温度計測値Tが二次冷却開始温度目標値TA0以下であると判断されたとき、前記二次冷却の開始地点となる第一プーリー4の位置を材料流通方向上流側へ移動させ、一次冷却の領域を短くして二次冷却開始温度計測値Tを上げる制御信号6aを前記第一アクチュエータ6へ出力するステップS5とを備えている。尚、前記ステップS4或いはステップS5で制御信号6aを第一アクチュエータ6へ出力した後は、前記ステップS1へ戻るようにしてある。又、ステップS6は、前記ステップS2で前記二次冷却開始温度計測値Tと二次冷却開始温度目標値TA0との偏差の絶対値が許容偏差εTA以下であると判断されたとき、前記第一プーリー4の位置変更は行われないことを示している。
【0026】
前記冷却速度調整部19Bは、前記二次冷却開始温度調整部19AのステップS2で前記二次冷却開始温度計測値Tと二次冷却開始温度目標値TA0との偏差の絶対値が許容偏差εTA以下であると判断されたとき、前記ステップS6を経て、図4に示す如く、前記一次冷却の終了地点となる二次冷却の開始地点で第一温度センサ16により材料の二次冷却開始温度計測値Tを計測すると共に、二次冷却の終了地点で第二温度センサ18により材料の二次冷却終了温度計測値Tを計測するステップS7と、該ステップS7で計測された二次冷却開始温度計測値T及び二次冷却終了温度計測値Tに基づき冷却速度算出値Rを
R=(T−T)/(L/V)
但し、L:冷却ロール3の外周面に押し付けられる冷却ベルト14の弧長(図2参照)
V:冷却ロール3の周速(図2参照)
より算出するステップS8と、該ステップS8で算出された冷却速度算出値Rと冷却速度目標値Rとの偏差の絶対値を許容偏差εRと比較してテンションプーリー10の位置の調整の要否を判断するステップS9と、該ステップS9で冷却速度算出値Rと冷却速度目標値Rとの偏差の絶対値が許容偏差εRを超え調整を要すると判断されたときに冷却速度算出値Rが冷却速度目標値Rより大きいか否かを判断するステップS10とを備えている。因みに、前記冷却ロール3の外周面に押し付けられる冷却ベルト14の弧長Lは、前記第一アクチュエータ6と第二アクチュエータ9の伸縮量に基づいて演算され、前記冷却ロール3の周速Vは、前記モータの回転数に基づいて演算されるようにしてある。更に、前記ステップS10で前記冷却速度算出値Rが冷却速度目標値Rより大きいと判断されたとき、前記冷却ベルト14の張力を減少させる方向へテンションプーリー10を移動させ、該冷却ベルト14の冷却ロール外周面に対する押付力を減少させて冷却速度算出値Rを下げる制御信号13aを前記テンションアクチュエータへ出力するステップS11と、前記ステップS10で前記冷却速度算出値Rが冷却速度目標値R以下であると判断されたとき、前記冷却ベルト14の張力を増加させる方向へテンションプーリー10を移動させ、該冷却ベルト14の冷却ロール外周面に対する押付力を増加させて冷却速度算出値Rを上げる制御信号13aを前記テンションアクチュエータ13へ出力するステップS12とを備えている。尚、前記ステップS11或いはステップS12で制御信号13aをテンションアクチュエータ13へ出力した後は、前記ステップS7へ戻るようにしてある。又、ステップS13は、前記ステップS9で前記冷却速度算出値Rと冷却速度目標値Rとの偏差の絶対値が許容偏差εR以下であると判断されたとき、前記テンションプーリー10の位置変更は行われないことを示している。
【0027】
前記二次冷却終了温度調整部19Cは、前記冷却速度調整部19BのステップS9で冷却速度算出値Rと冷却速度目標値Rとの偏差の絶対値が許容偏差εR以下であると判断されたとき、ステップS13を経て、図5に示す如く、二次冷却の終了地点で第二温度センサ18により材料の二次冷却終了温度計測値Tを計測するステップS14と、該ステップS14で計測された材料の二次冷却終了温度計測値Tと二次冷却終了温度目標値TB0との偏差の絶対値を許容偏差εTBと比較して第二プーリー7の位置の調整の要否を判断するステップS15と、該ステップS15で二次冷却終了温度計測値Tと二次冷却終了温度目標値TB0との偏差の絶対値が許容偏差εTBとを超え調整を要すると判断されたときに二次冷却終了温度計測値Tが二次冷却終了温度目標値TB0より高いか否かを判断するステップS16とを備えている。更に、前記ステップS16で前記二次冷却終了温度計測値Tが二次冷却終了温度目標値TB0より高いと判断されたとき、前記二次冷却の終了地点となる第二プーリー7の位置を材料流通方向下流側へ移動させ、二次冷却の領域を長くして二次冷却終了温度計測値Tを下げる制御信号9aを前記第二アクチュエータ9へ出力するステップS17と、前記ステップS16で前記二次冷却終了温度計測値Tが二次冷却終了温度目標値TB0以下であると判断されたとき、前記二次冷却の終了地点となる第二プーリー7の位置を材料流通方向上流側へ移動させ、二次冷却の領域を短くして二次冷却終了温度計測値Tを上げる制御信号9aを前記第二アクチュエータ9へ出力するステップS18とを備えている。尚、前記ステップS17或いはステップS18で制御信号9aを第二アクチュエータ9へ出力した後は、冷却ベルト14のテンションが変わるので、再度、冷却速度を調整するために、前記冷却速度調整部19BのステップS7へ戻るようにしてある。又、ステップS19は、前記ステップS15で前記二次冷却終了温度計測値Tと二次冷却終了温度目標値TB0との偏差の絶対値が許容偏差εTB以下であると判断されたとき、前記第二プーリー7の位置変更は行われないことを示し、この場合、前記二次冷却開始温度調整部19AのステップS1へ戻るようにしてある。
【0028】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0029】
坩堝1に貯留された溶融材料は、タンディッシュを介して、回転する冷却ロール3の外周面に供給され、先ず一次冷却が行われる。
【0030】
続いて、第一プーリー4と第二プーリー7とテンションプーリー10との間に無端状に掛け回された冷却ベルト14は、第一プーリー4と第二プーリー7との間で冷却ロール3の外周面に押し付けられ、該冷却ロール3と冷却ベルト14との間を材料が通過して二次冷却が行われる。
【0031】
制御器19の二次冷却開始温度調整部19Aでは、図3に示す如く、前記一次冷却の終了地点となる二次冷却の開始地点で第一温度センサ16により材料の二次冷却開始温度計測値Tが計測される(ステップS1参照)。
【0032】
前記ステップS1で計測された材料の二次冷却開始温度計測値Tと二次冷却開始温度目標値TA0との偏差の絶対値は、許容偏差εTAと比較されて第一プーリー4の位置の調整の要否が判断される(ステップS2参照)。
【0033】
前記ステップS2で二次冷却開始温度計測値Tと二次冷却開始温度目標値TA0との偏差の絶対値が許容偏差εTAを超え調整を要すると判断されたときには、二次冷却開始温度計測値Tが二次冷却開始温度目標値TA0より高いか否かが判断される(ステップS3参照)。
【0034】
前記ステップS3で前記二次冷却開始温度計測値Tが二次冷却開始温度目標値TA0より高いと判断されたときには、制御器19から出力される制御信号6aにより第一アクチュエータ6が図1において伸長駆動されて、前記二次冷却の開始地点となる第一プーリー4の位置が材料流通方向下流側へ移動し、一次冷却の領域が長くなって二次冷却開始温度計測値Tが下げられる(ステップS4参照)。
【0035】
一方、前記ステップS3で前記二次冷却開始温度計測値Tが二次冷却開始温度目標値TA0以下であると判断されたときには、制御器19から出力される制御信号6aにより第一アクチュエータ6が図1において収縮駆動されて、前記二次冷却の開始地点となる第一プーリー4の位置が材料流通方向上流側へ移動し、一次冷却の領域が短くなって二次冷却開始温度計測値Tが上げられる(ステップS5参照)。
【0036】
尚、前記ステップS4或いはステップS5で制御信号6aが第一アクチュエータ6へ出力された後は、前記ステップS1へ戻り、前述と同様の操作が繰り返される。又、前記ステップS2で前記二次冷却開始温度計測値Tと二次冷却開始温度目標値TA0との偏差の絶対値が許容偏差εTA以下であると判断されたときには、前記第一プーリー4の位置変更は行われない(ステップS6参照)。ここで仮に、前記許容偏差εTAを設定していないと、第一プーリー4の位置変更が必要以上に行われてしまうことになるが、本実施例のように、許容偏差εTAを設定することにより、第一プーリー4が必要以上に位置変更されることが避けられる。
【0037】
次に、前記制御器19の冷却速度調整部19Bでは、前記二次冷却開始温度調整部19AのステップS2で前記二次冷却開始温度計測値Tと二次冷却開始温度目標値TA0との偏差の絶対値が許容偏差εTA以下であると判断されたとき、前記ステップS6を経て、図4に示す如く、前記一次冷却の終了地点となる二次冷却の開始地点で第一温度センサ16により材料の二次冷却開始温度計測値Tが計測されると共に、二次冷却の終了地点で第二温度センサ18により材料の二次冷却終了温度計測値Tが計測される(ステップS7参照)。
【0038】
前記ステップS7で計測された二次冷却開始温度計測値T及び二次冷却終了温度計測値Tに基づき冷却速度算出値Rが
R=(T−T)/(L/V)
より算出される(ステップS8参照)。
【0039】
前記ステップS8で算出された冷却速度算出値Rと冷却速度目標値Rとの偏差の絶対値が許容偏差εRと比較されてテンションプーリー10の位置の調整の要否が判断される(ステップS9参照)。
【0040】
前記ステップS9で冷却速度算出値Rと冷却速度目標値Rとの偏差の絶対値が許容偏差εRを超え調整を要すると判断されたときには、冷却速度算出値Rが冷却速度目標値Rより大きいか否かが判断される(ステップS10参照)。
【0041】
前記ステップS10で前記冷却速度算出値Rが冷却速度目標値Rより大きいと判断されたときには、制御器19から出力される制御信号13aによりテンションアクチュエータ13が図1において伸長駆動されて、前記冷却ベルト14の張力を減少させる方向へテンションプーリー10が移動し、該冷却ベルト14の冷却ロール外周面に対する押付力が減少されて冷却速度算出値Rが下げられる(ステップS11参照)。
【0042】
一方、前記ステップS10で前記冷却速度算出値Rが冷却速度目標値R以下であると判断されたときには、制御器19から出力される制御信号13aによりテンションアクチュエータ13が図1において収縮駆動されて、前記冷却ベルト14の張力を増加させる方向へテンションプーリー10が移動し、該冷却ベルト14の冷却ロール外周面に対する押付力が増加されて冷却速度算出値Rが上げられる。
【0043】
尚、前記ステップS11或いはステップS12で制御信号13aがテンションアクチュエータ13へ出力された後は、前記ステップS7へ戻り、前述と同様の操作が繰り返される。又、前記ステップS9で前記冷却速度算出値Rと冷却速度目標値Rとの偏差の絶対値が許容偏差εR以下であると判断されたとき、前記テンションプーリー10の位置変更は行われない(ステップS13参照)。ここで仮に、前記許容偏差εRを設定していないと、テンションプーリー10の位置変更が必要以上に行われてしまうことになるが、本実施例のように、許容偏差εRを設定することにより、テンションプーリー10が必要以上に位置変更されることが避けられる。
【0044】
更に、前記制御器19の二次冷却終了温度調整部19Cでは、前記冷却速度調整部19BのステップS9で冷却速度算出値Rと冷却速度目標値Rとの偏差の絶対値が許容偏差εR以下であると判断されたとき、ステップS13を経て、図5に示す如く、二次冷却の終了地点で第二温度センサ18により材料の二次冷却終了温度計測値Tが計測される(ステップS14参照)。
【0045】
前記ステップS14で計測された材料の二次冷却終了温度計測値Tと二次冷却終了温度目標値TB0との偏差の絶対値が許容偏差εTBと比較されて第二プーリー7の位置の調整の要否が判断される(ステップS15参照)。
【0046】
前記ステップS15で二次冷却終了温度計測値Tと二次冷却終了温度目標値TB0との偏差の絶対値が許容偏差εTBを超え調整を要すると判断されたときには、二次冷却終了温度計測値Tが二次冷却終了温度目標値TB0より高いか否かが判断される(ステップS16参照)。
【0047】
前記ステップS16で前記二次冷却終了温度計測値Tが二次冷却終了温度目標値TB0より高いと判断されたときには、制御器19から出力される制御信号9aにより第二アクチュエータ9が図1において収縮駆動されて、前記二次冷却の終了地点となる第二プーリー7の位置が材料流通方向下流側へ移動し、二次冷却の領域が長くなって二次冷却終了温度計測値Tが下げられる(ステップS17参照)。
【0048】
一方、前記ステップS16で前記二次冷却終了温度計測値Tが二次冷却終了温度目標値TB0以下であると判断されたときには、制御器19から出力される制御信号9aにより第二アクチュエータ9が図1において伸長駆動されて、前記二次冷却の終了地点となる第二プーリー7の位置が材料流通方向上流側へ移動し、二次冷却の領域が短くなって二次冷却終了温度計測値Tが上げられる(ステップS18参照)。
【0049】
尚、前記ステップS17或いはステップS18で制御信号9aが第二アクチュエータ9へ出力された後は、冷却ベルト14のテンションが変わるので、前記冷却速度調整部19BのステップS7へ戻り、再度、冷却速度が調整される。又、前記ステップS15で前記二次冷却終了温度計測値Tと二次冷却終了温度目標値TB0との偏差の絶対値が許容偏差εTB以下であると判断されたときには、前記第二プーリー7の位置変更は行われず(ステップS19参照)、この場合、前記二次冷却開始温度調整部19AのステップS1へ戻り、前述と同様の操作が繰り返される。ここで仮に、前記許容偏差εTBを設定していないと、第二プーリー7の位置変更が必要以上に行われてしまうことになるが、本実施例のように、許容偏差εTBを設定することにより、第二プーリー7が必要以上に位置変更されることが避けられる。
【0050】
本実施例においては、特許文献1に開示された装置のように基本的に熱可塑性樹脂を成型する際に微細模様を付与するためのものとは全く異なり、溶融材料の冷却工程できめ細かい制御を行うことができ、樹脂シートに適用すれば透明性を確保することが可能となる。又、金属シートに適用することも勿論でき、この場合、その磁性や電気的特性を変化させることが可能となり、種々のシート状材料を形成する上で非常に重要となる所望の組織構造が得られる。
【0051】
こうして、溶融材料の冷却工程できめ細かい制御を行うことができ、所望の組織構造を有したシート状材料を形成し得る。
【0052】
尚、本発明のシート状材料の冷却制御方法及び装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
3 冷却ロール
4 第一プーリー
5 第一プーリーガイド
6 第一アクチュエータ
6a 制御信号
7 第二プーリー
8 第二プーリーガイド
9 第二アクチュエータ
9a 制御信号
10 テンションプーリー
13 テンションアクチュエータ
13a 制御信号
14 冷却ベルト
16 第一温度センサ
18 第二温度センサ
19 制御器
19A 二次冷却開始温度調整部
19B 冷却速度調整部
19C 二次冷却終了温度調整部
二次冷却開始温度計測値
A0 二次冷却開始温度目標値
εTA 許容偏差
L 弧長
V 周速
R 冷却速度算出値
冷却速度目標値
εR 許容偏差
二次冷却終了温度計測値
B0 二次冷却終了温度目標値
εTB 許容偏差
図1
図2
図3
図4
図5