(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6186985
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 23/26 20060101AFI20170821BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20170821BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20170821BHJP
C08J 3/00 20060101ALI20170821BHJP
B60C 5/14 20060101ALI20170821BHJP
F16L 11/04 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
C08L23/26
C08L29/04 B
C08L77/00
C08J3/00CFG
B60C5/14 A
F16L11/04
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-154715(P2013-154715)
(22)【出願日】2013年7月25日
(65)【公開番号】特開2015-25043(P2015-25043A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 峻
【審査官】
藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−132850(JP,A)
【文献】
特開2012−057127(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/110077(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
C08L 23/26
C08J 3/00
B60C 5/14
C08L 29/04
C08L 77/00
F16L 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続相がエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)とポリアミド樹脂(B)を含み、分散相が酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)を含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
(I)エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)を混練してエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)中に酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)が分散した混練物を形成し、続いて、
(II)工程(I)で得られた混練物にポリアミド樹脂(B)を加えてさらに混練し、続いて
(III)工程(II)で得られた混練物に、ポリアミド樹脂(B)のための末端封鎖剤(D)をポリアミド樹脂(B)100質量部に対して0.1〜5質量部の量加え、ポリアミド樹脂(B)の融点以上で溶融混練すること、
を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
シリンダーの最も上流に設けられた第1の供給口、第1の供給口より下流に設けられた第2の供給口及び第2の供給口より下流に設けられた第3の供給口を含む少なくとも3つの供給口を有する二軸混練機を用い、第1の供給口にエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)を供給し、第2の供給口にポリアミド樹脂(B)を供給し、第3の供給口に末端封鎖剤(D)を供給することを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)とポリアミド樹脂(B)との質量比が35:65〜80:20であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)がエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)とポリアミド樹脂(B)の合計量100質量部に対し100〜240質量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
末端封鎖剤(D)が単官能エポキシ化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)が架橋剤(E)の存在下で動的架橋されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)が、エチレン含有率25〜50モル%でケン化度90%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)が、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−オクテン、および無水マレイン酸変性エチレン−ヘキセンから選ばれる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
ポリアミド樹脂(B)が、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン6/12、ナイロン6/10、ナイロン4/6、ナイロン6/66/12、および芳香族ナイロンからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関し、より詳細には、加工性に優れた熱可塑性樹脂組成物を高い生産性で製造する方法及び当該方法により製造される熱可塑性樹脂組成物並びに当該熱可塑性樹脂組成物を使用した物品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂中にゴムが分散した熱可塑性樹脂組成物は、気体遮断性及び柔軟性を兼ね備えており、熱可塑性樹脂として特に優れた気体遮断性を有することが知られているエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を含む熱可塑性樹脂組成物は、例えば、空気入りタイヤの製造において、例えば空気入りタイヤのフィルム状部材、例えばインナーライナーなどとして有用であり、また、ホースの製造に有用である。かかる熱可塑性樹脂組成物の製造方法として、例えば特許文献1には、変性ゴムを高充填しても溶融混練・混合時の流動性が維持されるように、ポリアミド樹脂をポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物とポリアミド樹脂の融点以上で溶融ブレンドすることにより変性ポリアミド樹脂を得た後、得られた変性ポリアミド樹脂を変性ゴム及び必要に応じてエチレン−ビニルアルコール共重合体と溶融混合することを含む方法が提案されている。さらに、特許文献2には、(I)酸無水物変性またはエポキシ変性ゴムをエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂と溶融混練することによりエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂中に酸無水物変性またはエポキシ変性ゴム(A)が分散した第1の樹脂組成物を調製する工程と、(II)架橋可能なエラストマーをポリアミド樹脂と溶融混練しながら架橋させることによりポリアミド樹脂中に架橋エラストマー粒子が分散した第2の樹脂組成物を調製する工程と、(III)第1の樹脂組成物と第2の樹脂組成物とを溶融混合する工程を含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−132850号公報
【特許文献2】特開平2012−57127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の先行技術の方法は、いずれも、原料から中間生成物を得るための溶融混練工程と全ての材料を溶融混合する工程を含む少なくとも2段階以上の工程が連続的でないため、混練・混合操作をより簡便にすることにより熱可塑性樹脂組成物の生産性を向上することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく研究を重ねた結果、エチレン−ビニルアルコール共重合体と酸変性ポリオレフィンエラストマーを混練してエチレン−ビニルアルコール共重合体中に酸変性ポリオレフィンエラストマーが分散した混練物を形成し、続いて、得られた混練物にポリアミド樹脂を加えてさらに混練し、続いて、得られた混練物にポリアミド樹脂のための末端封鎖剤をポリアミド樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部の量を加え、ポリアミド樹脂の融点以上で溶融混練することによって、酸変性ポリオレフィンエラストマーとポリアミド樹脂の反応を抑制することができ、しかも、ポリアミド樹脂を加えた後にポリアミド樹脂のための末端封鎖剤がポリアミド樹脂の末端アミノ基に反応することにより混練後に酸変性ポリオレフィンエラストマーとポリアミド樹脂が反応することを防止することができ、その結果、混練物の流動性の低下をもたらさずに1段階で連続して混練を行うことができることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0006】
本発明によれば、連続相がエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)とポリアミド樹脂(B)を含み、分散相が酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)を含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
(I)エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)を混練してエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)中に酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)が分散した混練物を形成し、続いて、
(II)工程(I)で得られた混練物にポリアミド樹脂(B)を加えてさらに混練し、続いて、
(III)工程(II)で得られた混練物に、ポリアミド樹脂(B)のための末端封鎖剤(D)をポリアミド樹脂(B)100質量部に対して0.1〜5質量部の量加え、ポリアミド樹脂(B)の融点以上で溶融混練すること、
を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法が提供される。
【0007】
本発明の上記方法により製造される熱可塑性樹脂組成物は、良好な気体遮断性、柔軟性、加工性などの優れた特性を示すため、かかる特性が要求される各種用途(例えば、空気入りタイヤ、ホース(例えば気体もしくは流体輸送用ホース)、防舷材、ゴム袋、燃料タンク等)に有用である。そのため、本発明によれば、上記方法により製造される熱可塑性樹脂組成物を使用して製造される各種製品、例えば本発明の熱可塑性樹脂組成物から成るフィルムをインナーライナーに用いた空気入りタイヤ、本発明の熱可塑性樹脂組成物から成るフィルムを気体遮断層に用いたホースなどの製品も提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、混練物の流動性の低下をもたらさずに連続的な1段階での混練操作により熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。さらに、本発明によれば、混練物中にゲル粒が発生するのを抑制することができる。従って、本発明の方法によれば、高い生産性で、良好な混練性、押出特性、フィルム成形性、外観を有する熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、上記のとおり、(I)エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)を混練してエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)中に酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)が分散した混練物を形成し、続いて、(II)工程(I)で得られた混練物にポリアミド樹脂(B)を加えてさらに混練し、続いて、(III)工程(II)で得られた混練物に、ポリアミド樹脂(B)のための末端封鎖剤(D)をポリアミド樹脂(B)100質量部に対して0.1〜5質量部の量加え、ポリアミド樹脂(B)の融点以上で溶融混練するという混練操作により熱可塑性樹脂組成物を製造することを可能とした。
【0010】
本発明の上記方法における工程(I)は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)を混練してエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)中に酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)が分散した混練物を形成する工程である。この工程により、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)中に酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)が分散した混練物が形成されるが、混練中にエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)とが反応するため、次の工程(II)で加えられるポリアミド樹脂と酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)との流動性の低下をまねく過剰な反応が抑制されると考えられる。工程(I)において、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)を混練する際の混練温度の下限は、少なくともエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の融点以上であればよく、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の融点より10℃以上高い温度であることが好ましく、典型的には約160℃〜約230℃である。使用する混練装置や、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)及び酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)の量、混練温度などに応じて混練時間は変わるが、混練時間は、典型的には1分間〜8分間、好ましくは2分間〜6分間である。
【0011】
工程(II)は、上記のように、工程(I)で得られた混練物にポリアミド樹脂(B)を加えてさらに混練する工程である。工程(II)における混練温度の下限は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の融点とポリアミド樹脂(B)の融点のうちの高い方の融点以上であればよく、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)の融点とポリアミド樹脂(B)の融点のうちの高い方の融点よりも10℃以上高い温度であることが好ましく、典型的には約190℃〜約250℃である。使用する混練装置や、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、ポリアミド樹脂(B)及び酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)の量、混練温度などに応じて混練時間は変わるが、混練時間は、典型的には30秒間〜4分間、好ましくは1分間〜3分間である。
【0012】
工程(III)において、混練物に、ポリアミド樹脂(B)のための末端封鎖剤(D)を加え、少なくともポリアミド樹脂(B)の融点以上であり、かつ、ポリアミド樹脂(B)と化合物(D)が反応するような温度で混練する。これにより、ポリアミド樹脂の少なくとも1つの末端アミノ基が末端封鎖剤(D)により封鎖され、この工程以降のEVOH(A)及びポリアミド樹脂(B)と酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)との反応が抑制される。使用する混練装置や、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、ポリアミド(B)、酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)及び末端封鎖剤(D)の量、混練温度などに応じて混練時間は変わるが、混練時間は、典型的には30秒間〜3分間である。この工程は、例えば二軸混練押出機を使用して実施する場合に、二軸混練押出機の押出方向上流側に位置する供給口を通じて導入されたEVOH(A)、酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)及びポリアミド樹脂(B)と、末端封鎖剤(D)とを、少なくともポリアミド樹脂(B)の融点以上の温度に設定された混練ゾーンで溶融混練することにより行うことができる。
【0013】
必要に応じて、第1、第2及び/又は第3の供給口を通じて二軸混練押出機のシリンダー内に架橋剤(E)を導入することにより、工程(I)、工程(II)及び工程(III)のうちの少なくとも1つの工程であって、架橋剤(E)を導入した後の工程において、酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)が動的架橋されてもよい。また、架橋剤(E)は、第1の供給口と第2の供給口の間に設けられた供給口、あるいは、第2の供給口と第3の供給口の間に設けられた供給口を通じて二軸混練押出機のシリンダー内に導入することができ、二軸混練押出機内の少なくとも一箇所の混練ゾーンを通して溶融混練されることで動的架橋されてもよい。動的架橋により、酸変性ポリオレフィンエラストマーのゴム弾性が強まり、熱可塑性樹脂組成物の疲労耐久性を向上させることができる。
【0014】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法において成分(A)として使用されるエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン単位(−CH
2CH
2−)とビニルアルコール単位(−CH
2−CH(OH)−)とからなる共重合体であるが、エチレン単位およびビニルアルコール単位に加えて、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の構成単位を含有していてもよい。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン単位の含有量、すなわちエチレン含有量が好ましくは5〜55モル%、より好ましくは20〜50モル%である。エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量が少なすぎると疲労耐久性が不足し、逆にエチレン含有量が多すぎるとバリア性が低下する。エチレン−ビニルアルコール共重合体はエチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物であるが、そのケン化度は、好ましくは90%以上、より好ましくは99%以上である。エチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化度が小さすぎると空気バリア性が低下し、また熱安定性も低下する。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、市販されており、たとえば、日本合成化学工業株式会社からソアノール(登録商標)の商品名で、株式会社クラレからエバール(登録商標)の商品名で入手することができる。エチレン含有量5〜55モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体としては、日本合成化学工業株式会社製「ソアノール」(登録商標)H4815B(エチレン含有量48モル%)、A4412B(エチレン含有量42モル%)、DC3212B(エチレン含有量32モル%)、V2504RB(エチレン含有量25モル%)、株式会社クラレ製「エバール」(登録商標)L171B(エチレン含有量27モル%)、H171B(エチレン含有量38モル%)、E171B(エチレン含有量44モル%)などがある。
【0015】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法において成分(B)として使用されるポリアミド樹脂の例としては、例えばナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体が挙げられる。これらのポリアミド樹脂のうち、加工性と耐久性の観点から、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66共重合体、ナイロン11、ナイロン12、ナイロンMXD6が好ましく使用される。上記ポリアミド樹脂のうちの1種を使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0016】
ポリアミド樹脂(B)の量は、好ましくは、EVOH(A)とポリアミド樹脂(B)との質量比が好ましくは35:65〜80:20となるような量である。EVOH(A)がポリアミド樹脂(B)に対して35:65未満の量で存在すると、EVOHによる気体遮断性の向上効果を十分に得ることが困難になる。一方、EVOHは、一般的に、分子間で水素結合を形成するために硬くて脆いという性質を有することから、EVOH(A)の量がポリアミド樹脂(B)に対して多すぎると、繰り返し屈曲や変形を受けることにより疲労により気体遮断性が低下する。
【0017】
分散相を形成する酸変性ポリオレフィンエラストマー(成分(C))は、分子の側鎖及び/又は末端にカルボキシル基又は酸無水物基を有するポリオレフィンエラストマーである。酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)は、EVOH(A)に対して相溶性を示し、EVOH(A)中に分散させることができる。酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)中に存在しうる酸無水物基の例としては、例えば無水マレイン酸基が挙げられる。酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)は、公知の方法に従って製造でき、例えば、酸無水物とペルオキシドをゴムと反応させることにより製造することができる。酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)の好ましい例としては、エチレン−α−オレフィン共重合体およびそれらの誘導体の酸無水物変性物(例えば、エチレン−プロピレン共重合体の酸無水物変性物、エチレン−ブテン共重合体の酸無水物変性物、エチレン−オクテン酸無水物変性物)が挙げられる。上記酸変性ポリオレフィンエラストマーのうちの1種を使用しても、2種以上を併用してもよい。市販されている酸変性ポリオレフィンエラストマーの例としては、例えば三井化学(株)製のタフマー(登録商標)MH7010(無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体)及びタフマーMH7020(無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体)が挙げられる。
【0018】
酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)は、EVOH(A)とポリアミド樹脂(B)との総量100質量部に対して、100〜240質量部、好ましく120〜200質量部である。EVOH(A)とポリアミド樹脂(B)との総量に対する酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)の比率が低過ぎると、十分な耐久性を得ることができず、EVOH(A)とポリアミド樹脂(B)との総量に対する酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)の比率が高過ぎると、酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)が連続相を形成してしまい、所望の熱可塑性樹脂組成物が得られない。
【0019】
ポリアミド樹脂(B)のための末端封鎖剤(成分(D))としては、単官能エポキシ化合物、イソシアネート基含有化合物、酸無水物基含有化合物、ハロゲン化アルキル基含有化合物などが挙げられるが、ポリアミド樹脂(B)の末端アミノ基との反応性という観点から、化合物(D)は、好ましくは、単官能エポキシ化合物である。
【0020】
単官能エポキシ化合物としては、エチレンオキシド、エポキシプロパン、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、3−メチル−1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、4−メチル−1,2−エポキシペンタン、2,3−エポキシペンタン、3−メチル−1,2−エポキシペンタン、4−メチル−1,2−エポキシペンタン、4−メチル−2,3−エポキシペンタン、3−エチル−1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、2,3−エポキシヘキサン、3,4−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、4−メチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、3−エチル−1,2−エポキシヘキサン、3−プロピル−1,2−エポキシヘキサン、4−エチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、4−メチル−2,3−エポキシヘキサン、4−エチル−2,3−エポキシヘキサン、2−メチル−3,4−エポキシヘキサン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシヘキサン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシヘキサン、3−メチル−1,2−エポキシへプタン、4−メチル−1,2−エポキシヘプタン、5−メチル−1,2−エポキシへプタン、6−メチル−1,2−エポキシヘプタン、3−エチル−1,2−エポキシヘプタン、3−プロピル−1,2−エポキシヘプタン、3−ブチル−1,2−エポキシヘプタン、4−プロピル−2,3−エポキシヘプタン、5−エチル−1,2−エポキシへプタン、4−メチル−2,3−エポキシヘプタン、4−エチル−2,3−エポキシへプタン、4−プロピル−2,3−エポキシヘプタン、2−メチル−3,4−エポキシヘプタン、5−メチル−3,4−エポキシヘプタン、6−エチル−3,4−エポキシヘプタン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシヘプタン、2−メチル−5−エチル−3,4−エポキシへプタン、1,2−エポキシヘプタン、2,3−エポキシヘプタン、3,4−エポキシへプタン、1,2−エポキシオクタン、2,3−エポキシオクタン、3,4−エポキシオクタン、4,5−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、2,3−エポキシノナン、3,4−エポキシノナン、4,5−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、2,3−エポキシデカン、3,4−エポキシデカン、4,5−エポキシデカン、5,6−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、2,3−エポキシウンデカン、3,4−エポキシウンデカン、5,6−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、2,3−エポキシドデカン、3,4−エポキシドデカン、4,5−エポキシドデカン、5,6−エポキシドデカン、6,7−エポキシドデカン、エポキシエチルベンゼン、1−フェニル−1,2−エポキシプロパン、3−フェニル−1,2−エポキシプロパン、1−フェニル−1,2−エポキシブタン、3−フェニル−1,2−エポキシブタン、4−フェニル−1,2−エポキシブタン、3−フェニル−1,2−エポキシペンタン、4−フェニル−1,2−エポキシペンタン、5−フェニル−1,2−エポキシペンタン、1−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、3−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、4−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、5−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、6−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、グリシドール、3,4−エポキシ−1−ブタノール、4,5−エポキシ−1−ペンタノール、5,6−エポキシ−1−ヘキサノール、6,7−エポキシ−1−ヘプタノール、7,8−エポキシ−1−オクタノール、8,9−エポキシ−1−ノナノール、9,10−エポキシ−1−デカノール、10,11−エポキシ−1−ウンデカノール、3,4−エポキシ−2−ブタノール、2,3−エポキシ−1−ブタノール、3,4−エポキシ−2−ペンタノール、2,3−エポキシ−1−ペンタノール、1,2−エポキシ−3−ペンタノール、2,3−エポキシ−4−メチル−1−ペンタノール、2,3−エポキシ−4,4−ジメチル−1−ペンタノール、2,3−エポキシ−1−ヘキサノール、3,4−エポキシ−2−ヘキサノール、4,5−エポキシ−3−ヘキサノール、1,2−エポキシ−3−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−メチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−エチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4,4−ジメチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4,4−ジエチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−メチル−1−ヘキサノ−ル、3,4−エポキシ−5−メチル−2−ヘキサノール、3,4−エポキシ−5,5−ジメチル−2−ヘキサノール、3,4−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−1−へプタノール、4,5−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−4−ヘプタノール、1,2−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−1−オクタノール、3,4−エポキシ−3−オクタノール、4,5−エポキシ−3−オクタノール、5,6−エポキシ−4−オクタノール、2,3−エポキシ−4−オクタノール、1,2−エポキシ−3−オクタノール、2,3−エポキシ−1−ノナノール、3,4−エポキシ−2−ノナノール、4,5−エポキシ−3−ノナノール、5,6−エポキシ−5−ノナノ−ル、3,4−エポキシ−5−ノナノール、2,3−エポキシ−4−ノナノール、1,2−エポキシ−3−ノナノール、2,3−エポキシ−1−デカノール、3,4−エポキシ−2−デカノール、4,5−エポキシ−3−デカノール、5,6−エポキシ−4−デカノール、6,7−エポキシ−5−デカノール、3,4−エポキシ−5−デカノール、2,3−エポキシ−4−デカノール、1,2−エポキシ−3−デカノール、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロヘプタン、1,2−エポキシシクロオクタン、1,2−エポキシシクロノナン、1,2−エポキシシクロデカン、1,2−エポキシシクロドデカン、3,4−エポキシシクロペンテン、3,4−エポキシシクロヘキセン、3,4−エポキシシクロヘプテン、3,4−エポキシシクロオクテン、3,4−エポキシシクロノネン、1,2−エポキシシクロデセン、1,2−エポキシシクロウンデカン、1,2−エポキシシクロドデセン、1−ブトキシ−2,3−エポキシプロパン、1−アリルオキシ−2,3−エポキシプロパン、ポリエチレングリコールブチルグリシジルエーテル、2−エチルへキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル等が挙げられ、ポリアミド樹脂の相溶性の観点から、炭素数が3〜20、好ましくは3〜13であり、エーテルおよび/または水酸基を有するエポキシ化合物が特に好ましい。
【0021】
末端封鎖剤(D)の量は、ポリアミド樹脂(B)100質量部に対して0.1〜5質量部であり、好ましくは1〜3質量部である。ポリアミド樹脂(B)に対して末端封鎖剤(D)の量が少なすぎると、酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)を高充填した際の流動性改善効果が小さいため好ましくない。逆に、多すぎると、ポリアミド樹脂の低温耐久性(繰返し疲労性)を悪化させるので好ましくない。
【0022】
熱可塑性樹脂組成物の調製に使用できる架橋剤(E)としては、アミン化合物、ペルオキシド化合物、水酸基を有する化合物などが挙げられるが、なかでも多官能アミン化合物および高水素結合性化合物が好ましい。多官能アミン化合物としては、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンなどが挙げられるが、なかでも3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートが、コスト、安全性、低温耐久性の向上の観点で好ましい。架橋剤の量は、典型的には、酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)100質量部に対して0.1〜5質量部であり、好ましくは0.5〜3質量部である。架橋剤の量が少なすぎると、疲労耐久性が低下する。逆に、架橋剤の量が多すぎると、混練または加工中にスコーチが起こる原因や、フィルムなどの成形した後にフィッシュアイなどの外観不良が生じる原因となる。
【0023】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法において、EVOH(A)、ポリアミド樹脂(B)、酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)、ポリアミド樹脂のための末端封鎖剤(D)を配合する際に、補強性、加工性、分散性、耐熱性、酸化防止性などの特性を改善するために、必要に応じて、充填剤、補強剤、加工助剤、相溶化剤、安定剤、酸化防止剤、老化防止剤などの一般的な樹脂又はゴム用の一般的な配合剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で添加してもよい。これらの添加剤の量は、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量であることができる。また、これらの添加剤は、本発明の目的に反しない限り、必要に応じて、EVOH(A)、ポリアミド樹脂(B)、酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)のうちの少なくとも1種に予め添加されていてもよい。
【0024】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記必須成分および任意の添加剤を、例えばニーダー、バンバリーミキサー、一軸混練押出機、二軸混練押出機等の熱可塑性樹脂組成物の製造に一般的に使用されている混練機を使用して溶融混練することによって製造できる。溶融混練は、その生産性の高さから二軸混練押出機を使用して行うことが好ましい。当業者は、使用される必須成分および任意の添加剤のタイプおよび量などに応じて混練条件を選択することができる。
【0025】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を、二軸混練押出機を使用して実施する場合、二軸混練押出機は、
押出方向上流側に位置する、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)をシリンダー内に供給するための第1の供給口、
エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)を混練してエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)中に酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)が分散した混練物を形成する第1の混練ゾーン、
第1の混練ゾーンより押出方向下流側に位置するポリアミド樹脂(B)をシリンダー内に供給するための第2の供給口、
第1の混練ゾーンから搬送された混練物をポリアミド樹脂(B)と混練するための第2の混練ゾーン、
第1の混練ゾーンより押出方向下流側に位置するポリアミド樹脂(B)のための末端封鎖剤(D)をシリンダー内に供給するための第3の供給口、
第2の混練ゾーンから搬送された混練物を末端封鎖剤(D)と溶融混練するための第3の混練ゾーン、
を含み、本発明の方法における工程(I)〜(III)は、上記の第1、第2及び第3の混練ゾーンにおいて実施できる。第1の混練ゾーンと第2の混練ゾーンの間及び/又は第2の混練ゾーンと第3の混練ゾーンの間に搬送ゾーンが存在してもよい。
【0026】
混練ゾーンの長さの合計は、スクリュー長の15〜40%であることが好ましい。混練ゾーンの長さの合計が、スクリュー長の15%未満であると、混練が不足し、十分な耐久性および押出成形性を達成することが困難になることがある。また、混練ゾーンの長さの合計が、スクリュー長の40%より長いと、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)、ポリアミド樹脂(B)及び酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)が過剰に混練される結果、ゲル粒や流動性低下が生じ加工性が不十分になることがある。混練ゾーンにおいて過剰な発熱を抑制するため、各混練ゾーンの長さはスクリュー長の10%以下が好ましいが、混練ゾーンの合計の長さが短すぎると混練が不十分になり酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)がマトリックス相に微分散しないため、局所的な発熱を抑制しながら段階的に混練するのが好ましく、混練ゾーンは4箇所以上設けられていることが好ましい。さらに、第1の混練ゾーンにてエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と酸変性ポリオレフィンエラストマー(C)の過剰反応によるゲル粒や流動性低下を抑制するという観点から、エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)が押出機に導入される第1の供給口でのシリンダー温度は、ポリアミド樹脂(B)が投入される第2の供給口の位置でのシリンダー温度と比べて40℃以上低いことが好ましい。
【0027】
例えば二軸混練押出機の吐出口に取り付けられたダイから通常の方法により溶融混練物をフィルム状、シート状またはチューブ状等の形状に押し出すか、あるいは、ストランド状に押出し、樹脂用ペレタイザーで一旦ペレット化した後、得られたペレットを、インフレーション成形、カレンダー成形、押出成形などの通常の樹脂成形法により、用途に応じてフィルム状、シート状、チューブ状などの所望の形状に成形することができる。
【0028】
本発明の上記製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物を使用して形成されたフィルムをインナーライナーとして使用して空気入りタイヤを製造することができる。空気入りタイヤを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。たとえば、本発明の熱可塑性樹脂組成物を所定の幅と厚さのフィルム状に押し出し、それをインナーライナーとしてタイヤ成形用ドラム上に円筒に貼りつける。その上に未加硫ゴムからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常のタイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、ドラムから抜き取ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、所望の空気入りタイヤを製造することができる。
【0029】
本発明の上記製造方法により得られた熱可塑性樹脂組成物は、ホースを製造するためにも用いることができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いてホースを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。たとえば、次のようにしてホースを製造することができる。まず、本発明の熱可塑性樹脂組成物のペレットを使用し、マンドレル上に、樹脂押出機によりクロスヘッド押出方式で、熱可塑性樹脂組成物を押し出し、内管を形成する。さらに内管上に他の本発明の熱可塑性樹脂組成物または一般の熱可塑性ゴム組成物を押し出し内管外層を形成してもよい。次に、内管上に必要に応じ、接着剤を塗布、スプレー等により施す。さらに、内管上に、編組機を使用して、補強糸または補強鋼線を編組する。必要に応じ補強層上に、外管との接着のために接着剤を塗布した後、本発明の熱可塑性樹脂組成物または他の一般的な熱可塑性ゴム組成物と同様にクロスヘッドの樹脂用押出機により押し出し、外管を形成する。最後にマンドレルを引き抜くと、ホースが得られる。内管上、または補強層上に塗布する接着剤としては、イソシアネート系、ウレタン系、フェノール樹脂系、レゾルシン系、塩化ゴム系、HRH系等が挙げられるが、イソシアネート系、ウレタン系が特に好ましい。
【実施例】
【0030】
以下に示す実施例及び比較例を参照して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例によって限定されるものでないことは言うまでもない。
【0031】
<比較例1〜3及び実施例1〜8>
熱可塑性樹脂組成物の製造
二軸混練押出機((株)日本製鋼所製)の第1の混練ゾーンの上流側に位置する第1の供給口からEVOH樹脂および酸変性ポリオレフィンエラストマー、第1の混練ゾーンと第2の混練ゾーンの間に位置する第2の供給口よりポリアミド樹脂、第2の混練ゾーンと第3の混練ゾーンの間に位置する第3の供給口よりポリアミドの末端封鎖剤、第1の供給口と第2の供給口の間に位置する第4の供給口より架橋剤を表1に示す質量部でシリンダー内に導入し、滞留時間約2〜8分間に設定された混練ゾーンに搬送して溶融混練し、溶融混練物を吐出口に取り付けられたダイからストランド状に押出した。得られたストランド状押出物を樹脂用ストランドカッターでペレット化し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0032】
【表1】
【0033】
表1の脚注:
(1):エチレン−ビニルアルコール共重合体(日本合成化学(株)製のソアノールH4815B、エチレン含有率48mol%)
(2):エチレン−ビニルアルコール共重合体(日本合成化学(株)製のソアノールDC3212B(エチレン含有率32mol%)
(3):ナイロン6(宇部興産(株)製のUBEナイロン1013B)
(4):ナイロン6−12(宇部興産(株)製のUBEナイロン7024B)
(5):ナイロン6−66(宇部興産(株)製のUBEナイロン5023B)
(6):p−sec−ブチルフェニル−グリシジルエーテル(日油(株)製のエピオールSB)
(7):p−sec−ブチルフェニル−グリシジルエーテル(エピオールSB)により変性されたナイロン6(UBEナイロン1013B)、事前に二軸混練にて作製
(8):無水マレイン酸変性エチレンブテン共重合体(三井化学(株)製のタフマーMH7020)
(9):無水マレイン酸変性エチレンブテン共重合体(三井化学(株)製のタフマーMH7010)
(10):トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(四国化成工業(株)製のセイクA)
【0034】
評価方法及び結果
上記のように製造した比較例1〜3及び実施例1〜8の熱可塑性樹脂組成物について、その製造の際の二軸混練押出機の吐出口から押し出されたストランドを観察することにより以下のように二軸混練性を評価した。さらに、吐出口から押出されたストランドを樹脂用ペレタイザーによりペレット化した後、以下のようにフィルム状に成形し、得られたフィルムにおけるゲル粒の有無を観察することによりフィルム成形性を評価した。
二軸混練性
原料投入してから30分経過時点で、吐出口から押出されたストランドを観察し、長さ3mのストランド内に7mm以上の大きさのゲル粒が2個以上見られたものについてはゲル粒有りと判定し、1個以下の場合はゲル粒なしと判定した。
Tダイキャストフィルム成形性
ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を、550mm幅T型ダイス付40mmφ単軸押出機(株式会社プラ技研)を用いて、押出温度Cl/C2/C3/C4/ダイ=200/210/220/230/230℃、冷却ロール温度50℃、引き取り速度3m/分の押出条件で、平均厚み0.1mmのフィルムに成形した。フィルム成形は、各例の組成物に対して70分間行い、押出成形開始から30分経過時点のフィルム外観を観察した。長さ2m(幅は成形幅)のフィルム中に、3mm×3mm以上の大きさのゲル粒が10個以上見られた場合は不良、3〜9個は可、2個以下は良としてフィルム成形性を判定した。
二軸混練性及びフィルム成形性の評価結果を下記表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
上記評価結果から、実施例1〜8の熱可塑性樹脂組成物は、二軸混練性及びTダイキャストフィルム成形性に優れ、加工性に優れることが判る。さらに、実施例1〜8は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法が、優れた加工性を有する熱可塑性樹脂組成物を1段階の連続する混練操作により提供することを示すものであることから、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法が、高い生産性を提供することも示している。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を例えばフィルム状に加工したものは、空気入りタイヤのインナーライナーとして好適に用いることができ、また、空気入りタイヤのほか、ホース、防舷材、ゴム袋、燃料タンク等の、気体遮断性を必要とするゴム積層体のバリア材として有用である。