(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記空間内に前記媒体を放出する際には前記ステージ上に集積された前記媒体の最上面と前記天井面との間に所定の放出高さを隔てる一方、前記ステージ上に集積された前記媒体を分離する際には当該ステージ上に集積された前記媒体を前記天井面に設けられ前記分離放出部の一部である分離ローラに当接させるよう、前記ステージ移動部を制御する制御部
をさらに具え、
前記案内変位部は、前記ステージと前記天井面との間隔が前記放出高さ以下となるときに、前記ステージの移動に伴って前記媒体案内部を前記空間の中心側へ移動又は回転させる
ことを特徴とする請求項3に記載の媒体集積装置。
前記空間内に前記媒体を放出する際には、前記ステージ上に集積された前記媒体の最上面と前記天井面との間に所定の放出高さを隔てる一方、前記ステージ上に集積された前記媒体を分離する際には、当該ステージ上に集積された前記媒体を前記天井面に設けられた前記分離放出部の一部分に当接させるよう、前記ステージ移動部を制御する制御部
をさらに具え、
前記案内変位部は、前記ステージと前記天井面との間隔が前記放出高さ以下となるときに、前記ステージの移動に伴い前記衝撃吸収部と共に前記媒体案内部を前記空間の中心側へ移動又は回転させる
ことを特徴とする請求項7に記載の媒体集積装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0024】
[1.第1の実施の形態]
[1−1.現金自動預払機の全体構成]
図1に外観を示すように、現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関等に設置され、顧客との間で入金取引や出金取引等の現金に関する取引を行うようになされている。
【0025】
筐体2は、その前側に顧客が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所、すなわち前面の上部から上面に渡る部分が斜めに切り落とされたような形状となっており、この部分に顧客応対部3が設けられている。
【0026】
顧客応対部3は、顧客との間で現金や通帳等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになされており、カード入出口4、入出金口5、操作表示部6、テンキー7、及びレシート発行口8が設けられている。
【0027】
カード入出口4は、キャッシュカード等の各種カードが挿入または排出される部分である。カード入出口4の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。入出金口5は、顧客が入金する紙幣が投入されると共に、顧客へ出金する紙幣BLが排出される部分である。また入出金口5は、シャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになされている。因みに紙幣は、例えば長方形の紙で構成されている。
【0028】
操作表示部6は、取引に際して操作画面を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、取引の種類の選択、暗証番号や取引金額等を入力するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルとなっている。テンキー7は、「0」〜「9」の数字等の入力を受け付ける物理キーであり、暗証番号や取引金額等の入力操作時に用いられる。レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容等を印字したレシートを発行する部分である。因みにレシート発行口8の奥側には、レシートに取引内容等を印字するレシート処理部(図示せず)が設けられている。
【0029】
以下では、現金自動預払機1のうち顧客が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した顧客から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
【0030】
筐体2内には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、紙幣に関する種々の処理を行う紙幣入出金機10等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金取引や出金取引等の種々の処理を行うようになされている。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させるようになされている。
【0031】
因みに筐体2は、前面側やその後面側等の一部の側面が開閉可能な扉により構成されている。すなわち筐体2は、顧客との間で現金に関する取引を行う取引動作時には、
図1に示したように各扉を閉塞することにより、紙幣入出金機10内に収納している紙幣を保護する。一方筐体2は、作業者等が保守作業を行う保守作業時には、必要に応じて各扉を開放することにより、内部の各部に対する作業を容易に行わせ得るようになされている。
【0032】
紙幣入出金機10は、
図2に側面図を示すように、内部に紙幣に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。また紙幣入出金機10の各部分は、紙幣制御部11により制御される。
【0033】
紙幣制御部11は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、紙幣の搬送先を決定する処理や各部の動作を制御する処理等、種々の処理を行うようになされている。また紙幣制御部11は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させるようになされている。
【0034】
紙幣制御部11は、例えば顧客が紙幣を入金する入金取引を行う場合、操作表示部6(
図1)を介して所定の操作入力を受け付けた後、シャッタを開いて接客部12内に形成された収容空間12Aへ紙幣を投入させる。接客部12は、所定のセンサにより収容空間12A内に紙幣が1枚以上収容されているか否か、及び収容空間12A内に収容可能な最大量の紙幣が収納されているか否かを検知し、その検知結果を紙幣制御部11へ通知する。
【0035】
この接客部12は、収容空間12Aに紙幣が投入されると、シャッタを閉じて当該収容空間12A内から紙幣を1枚ずつ繰り出し、搬送部13へ受け渡す。搬送部13は、複数のローラやベルト等により構成されており、長方形の紙葉状に構成された紙幣を短辺方向に沿って進行させ、鑑別部14へ搬送する。鑑別部14は、その内部で紙幣を搬送しながら、光学素子や磁気検出素子等を用いて当該紙幣の金種及び真偽、並びに損傷の程度等を鑑別し、その鑑別結果を紙幣制御部11へ通知する。これに応じて紙幣制御部11は、取得した鑑別結果に基づいて当該紙幣の搬送先を決定する。
【0036】
このとき搬送部13は、鑑別部14において正常紙幣と鑑別された紙幣を一時保留部15へ搬送する等して一時的に保留させる一方、取引すべきでないと鑑別されたリジェクト紙幣を接客部12へ搬送して顧客に返却する。その後紙幣制御部11は、投入された紙幣の合計金額を集計して操作表示部6に表示すると共に、入金取引を継続するか否かを顧客に選択させる。
【0037】
ここで紙幣制御部11は、顧客により入金取引の中止が指示された場合、一時保留部15に保留している全ての紙幣を搬送部13により接客部12へ搬送して顧客に返却する。また紙幣制御部11は、顧客により入金取引の継続が指示された場合、一時保留部15に保留している全ての紙幣を搬送部13により鑑別部14へ搬送してその金種及び損傷の程度等を鑑別させ、その鑑別結果を取得する。
【0038】
そして紙幣制御部11は、紙幣の損傷の程度が大きければ、これを再利用すべきでない紙幣として搬送部13によりリジェクトカセット16へ搬送して収納させ、損傷の程度が小さければ、これを再利用すべき紙幣として搬送部13により搬送させ、その金種に応じた紙幣カセット17に収納させる。
【0039】
また紙幣制御部11は、例えば顧客が紙幣を出金する出金取引を行う場合、操作表示部6(
図1)を介して所定の操作入力を受け付けた後、出金すべき金額に応じた紙幣を紙幣カセット17から繰り出させ、搬送部13により鑑別部14へ搬送させる。続いて紙幣制御部11は、この紙幣を鑑別部14により鑑別させた上で、搬送部13により接客部12へ搬送して収容空間12A内に集積させ、入出金口5(
図1)のシャッタを開いて顧客に取り出させる。
【0040】
このように一時保留部15は、入金取引において、顧客から入金された全紙幣を一時的に内部に保留し、取引処理の内容が確定した場合には全紙幣を紙幣カセット17へ搬送する一方、取引処理が中止された場合には全紙幣を接客部12へ搬送して顧客に返却するようになされている。
【0041】
[1−2.一時保留部の構成]
一時保留部15は、
図3に模式的に示すように、直方体状の筐体21内に媒体としての紙幣BLを取り込んで集積するようになされている。因みに
図3は左側面図を表している。また説明の都合上、一部の部品については透過させ、或いは省略している。
【0042】
筐体21は前後、左右及び上下の各側面をほぼ閉塞しており、内部に集積された紙幣BLや各部品等を保護するようになされている。筐体21内には、直方体状の内部空間21Sが形成されている。この内部空間21S内には、平板状のステージ23が設けられている。
【0043】
ステージ23は、内部空間21S内で板面をほぼ水平に向けるように設けられており、当該ステージ23の上面に紙幣BLを集積する。このステージ23は、図示しないモータやギア、ベルト等の組み合わせでなるステージ移動部25により、前後方向の位置を変化させること無く上下方向へ移動される。
【0044】
また
図4に内部空間21Sの平面図を示すように、ステージ23の上面には、後述する残留検知部41の検知光L1を通過させるための通過孔23A及び23Bが穿設されている。因みにステージ23の後端部分は、後述するビルストッパ31と対応する箇所が切り欠かれており、これにより当該ビルストッパ31との干渉を回避することができる。
【0045】
これに加えてステージ23内には、プリズム24(
図3)が組み込まれている。プリズム24は、ステージ23の通過孔23A及び23Bとそれぞれ対応する位置に、当該ステージ23の上面に対して約45度の角度をなす反射面24A及び24Bを有している。このため反射面24Aは、真上から進行してきた光を反射して反射面24Bへ導く。また反射面24Bは、反射面24Aから進行してきた光を反射して真上へ進行させる。
【0046】
筐体21の上側における前寄りの部分には、複数のローラ及び搬送ガイドの組み合わせにより構成された分離放出部26が設けられている。この分離放出部26は、搬送部13から受け渡された紙幣BLを内部空間21S内へ放出して集積させる放出モードと、ステージ23上に集積されている紙幣を1枚ずつに分離して搬送部13へ繰り出す分離モードといった2種類の動作モードで動作する。
【0047】
具体的に分離放出部26は、紙幣の搬送路Wを挟んで対向するフィードローラ27及び分離ローラ28と、複数の舌片を有する舌片ローラ29と、内部空間21Sの天井面に設けられたピッカローラ30とにより構成されている。因みに各ローラは、左右方向に沿った中心軸に沿って複数が配置されており、この中心軸を中心としてそれぞれ回転可能に構成されている。また各ローラは、図示しないモータやギア等から駆動力が伝達される。
【0048】
フィードローラ27、分離ローラ28及びピッカローラ30は、いずれも円柱状に形成されている。さらにフィードローラ27及びピッカローラ30は、それぞれ周側面の一部にのみ摩擦係数が高い部材が取り付けられている。舌片ローラ29は、比較的小径の中心部分から放射状に外方へ向かうように、複数の舌片29Aが設けられている。舌片29Aは、弾性を有しており、また表面の摩擦係数が高められている。
【0049】
分離放出部26は、放出モードの場合、フィードローラ27を
図3における時計方向に回転させると共に分離ローラ28をその反対方向に回転させることにより、搬送部13(
図2)から供給されて搬送路Wに沿って後方へ進行してくる紙幣BLを上下から挟み、後方の内部空間21S内へ放出する。これと共に分離放出部26は、舌片ローラ29を反時計方向に回転させ、舌片29Aにより内部空間21S内の紙幣BLをステージ23上に集積されている紙幣BLの上に叩き付けると共に前方へ引き寄せて集積する。
【0050】
また分離放出部26は、分離モードの場合、ステージ23が上方へ持ち上げられ紙幣BLの最上面がピッカローラ30に押し付けられた状態で、ピッカローラ30及びフィードローラ27を
図3における反時計方向に回転させると共に、舌片ローラ29を図示しない退避機構により紙幣BLの妨げとならない位置まで退避させ、分離ローラ28を静止させることにより、紙幣BLを1枚ずつに分離して前方へ搬送する。
【0051】
また筐体21の内部空間21Sにおける前側面の上方、すなわち内部空間21Sの前面側における上端近傍には、左右に所定の間隔を空けて2個のビルストッパ31が設けられている。ビルストッパ31は、小さな直方体状に形成されており、内部空間21Sの後側面21Bに対し、図示しない弾性体を介して取り付けられている。このビルストッパ31は、分離放出部26から放出された紙幣BLが衝突すると、弾性体の作用により僅かに後方へ移動しながら当該紙幣BLの衝撃を吸収し、また弾性体の復元作用により僅かに前方へ移動しながら当該紙幣を僅かに押し戻す。
【0052】
かかる構成に加えて、対向面としての後側面21Bの上方であって、ビルストッパ31の上方ないし前方には、左右に間隔を空けて2個の紙幣案内部32が設けられている。紙幣案内部32は、板状部材が屈曲されたような形状となっており、板面をほぼ水平に向けた水平部32Aと、板面を斜め前下方に向けた傾斜部32Bとを有している。すなわち傾斜部32Bの傾斜角は、内部空間21Sにおけるほぼ垂直な後側面21B及びほぼ水平な天井面21Cの間の角度となる。
【0053】
紙幣案内部32は、水平部32Aの上面が内部空間21Sの天井面21Cにおける後端近傍に取り付けられている。このため紙幣案内部32の傾斜部32Bは、内部空間21Sの天井面21Cと後側面21Bとの接合部分を塞ぐように位置している。
【0054】
また紙幣案内部32は、
図4に示すように、傾斜部32Bがビルストッパ31の上端付近又はその上方に位置しており、且つ当該傾斜部32Bにビルストッパ31を避けるように切り欠きが形成されている。さらに紙幣案内部32は、その下面が滑らかに形成され、摩擦が生じ難いようになされている。
【0055】
因みに紙幣案内部32は、内部空間21S内に紙幣BLが放出された場合やステージ23上に集積されている紙幣BLが繰り出される際に、これらの紙幣BLと当接しないよう、その形状や取付位置が定められており、当該紙幣BLの動作を阻害しないようになされている。
【0056】
ところで一時保留部15には、紙幣BLの通過や残留等を検知するセンサとして、残留検知部41、最上面検知部42及び通過検知部43が設けられている。
【0057】
残留検知部41は、検知光L1を発光する発光部41Aと、当該検知光L1を受光する受光部41Bとにより構成されている。発光部41Aは、筐体21の上側部分に取り付けられており、ほぼ真下へ向けて検知光L1を発光する。また受光部41Bは、筐体21の上側部分における発光部41Aの後方左側に取り付けられており、ほぼ真下から進行してくる検知光L2を受光する。
【0058】
因みに一時保留部15が組み込まれる現金自動預払機1は、入金取引や出金取引等の各種取引において、大きさの異なる複数種類の紙幣BLを取り扱うことが想定されている。このため水平方向に関する発光部41A及び受光部41Bの位置、すなわちステージ23における
通過孔23A及び23Bの位置は、最も小さい紙幣BLが当該ステージ23上でいずれかに偏った位置にあるときにも検知できるよう、適切に定められている。
【0059】
また紙幣案内部32は、水平部32Aの前端を検知光L1の光路よりも後方に位置させており、当該検知光L1を遮らないように配置されている。
【0060】
残留検知部41は、ステージ23上に紙幣BLが載置されていない場合、発光部41Aから発光した検知光L1がステージ23の通過孔23Aを通過し、プリズム24の反射面24A及び24Bにより順次反射され、さらに通過孔23Bを通過したところを受光部41Bにより受光する。一方残留検知部41は、ステージ23上に1枚以上の紙幣BLが載置されている場合、検知光L1が当該紙幣BLにより遮光されるため、受光部41Bにおいて受光できない。
【0061】
受光部41Bは、検知光L1を受光したか否かを表す残留検知信号を生成し、これを紙幣制御部11(
図2)へ供給する。紙幣制御部11は、この残留検知信号を基に、ステージ23上に紙幣BLが1枚以上残留しているか否かを認識することができる。
【0062】
最上面検知部42は、検知光L2を発光する発光部42Aと、当該検知光L2を受光する受光部42Bとにより構成されている。発光部42Aは、筐体21の上側部分に取り付けられており、検知光L2を下斜め前方へ向けて発光する。また受光部42Bは、筐体21の前側部分に取り付けられており、上斜め後方から進行してくる検知光L2を受光する。
【0063】
最上面検知部42は、ステージ23の上面又は当該ステージ23上に載置された紙幣BLの最上面(以下これを載置最上面と呼ぶ)が所定の高さH1よりも低い位置にあるとき、受光部42Bにおいて検知光L2を受光できる。一方最上面検知部42は、載置最上面が高さH1よりも高い位置にあるとき、受光部42Bにおいて検知光L2を受光できない。
【0064】
受光部42Bは、検知光L2を受光したか否かを表す最上面検知信号を生成し、これを紙幣制御部11(
図2)へ供給する。これに応じて紙幣制御部11は、この最上面検知信号を基に、載置最上面が高さH1よりも高いか否かを認識することができる。因みに高さH1は、分離放出部26により内部空間21S内に紙幣BLを放出するために、載置最上面を内部空間21Sの天井面21Cから引き離すべき位置に相当する。
【0065】
通過検知部43は、検知光L3を発光する発光部43Aと、当該検知光L3を受光する受光部43Bとにより構成されている。発光部43Aは、搬送路Wの上側部分に取り付けられており、検知光L3を下方へ向けて発光する。また受光部43Bは、搬送路Wの下側部分に取り付けられており、上方から進行してくる検知光L3を受光する。
【0066】
通過検知部43は、搬送路Wにおける検知光L3の光路上に紙幣BLが無いとき、受光部43Bにおいて検知光L3を受光できる。一方通過検知部43は、搬送路Wにおける検知光L3の光路上に紙幣BLがあるとき、受光部43Bにおいて検知光L3を受光できない。
【0067】
受光部43Bは、検知光L3を受光したか否かを表す通過検知信号を生成し、これを紙幣制御部11(
図2)へ供給する。これに応じて紙幣制御部11は、この通過検知信号を基に、紙幣BLが一時保留部15の搬送路Wを通過したか否かを認識することができる。
【0068】
また紙幣制御部11は、通過信号が変化した回数を基に搬送路Wを通過した紙幣BLの枚数を計数することができ、さらにこのときの紙幣BLの搬送方向と組み合わせることにより、一時保留部15内に収納している紙幣BLの枚数及び当該一時保留部15から繰り出した紙幣BLの枚数をそれぞれ集計することができる。
【0069】
このように一時保留部15は、各種検知光を用いて紙幣BLの通過や残留等を検知するようになされており、また内部空間21Sを挟んで分離放出部26の反対側に紙幣案内部32が設けられている。
【0070】
[1−3.処理手順]
一時保留部15は、紙幣制御部11の制御に基づき、搬送部13から搬送されてくる紙幣BLを内部に取り込んで収納する収納処理と、内部に収納されている紙幣BLを順次繰り出して搬送部13に受け渡す
繰出処理とを行うようになされている。
【0071】
[1−3−1.紙幣収納処理手順]
まず、一時保留部15の収納処理について説明する。紙幣制御部11は、操作表示部6(
図1)に対する顧客の操作等に基づいて入金取引が行われる際、記憶部から所定の紙幣収納プログラムを読み出して実行することにより、
図5に示す紙幣収納処理手順RT1を開始してステップSP1へ移る。ステップSP1において紙幣制御部11は、ステージ23を所定の高さへ移動させ、次のステップSP2へ移る。
【0072】
具体的に紙幣制御部11は、最上面検知部42からの最上面検知信号を監視しながら、ステージ移動部25を制御してステージ23を上方へ移動させる。ここで紙幣制御部11は、最上面検知信号を基に載置最上面(ステージ23の上面又は当該ステージ23上に載置された紙幣BLの最上面)が高さH1よりも高いことを認識した場合、
図6(A)に示すように、ステージ23の上方への移動を中止する。続いて紙幣制御部11は、ステージ23をその高さから所定の移動距離ΔHだけ下方へ移動させる。因みに移動距離ΔHは、例えば紙幣BLを10枚重ねたときの厚さに相当する距離となっている。
【0073】
ステップSP2において紙幣制御部11は、内部空間21Sに収納されている紙幣BLの枚数を計数するための変数である収納枚数を初期化し、次のステップSP3へ移る。ステップSP3において紙幣制御部11は、搬送部13(
図2)から搬送されてくる紙幣BLを搬送路W(
図3)に沿って後方へ進行させ、
図5(B)に示すように、分離放出部26により後方の内部空間21S内へ放出させて、次のステップSP4へ移る。
【0074】
このとき紙幣BLは、ビルストッパ31に衝突して衝撃が吸収されてから、舌片ローラ29の舌片29Aにより下方へ叩き落とされ、
図5(C)に示すように、ステージ23の上又は当該ステージ23上に集積されている紙幣BLの上に積み重ねられる。
【0075】
また紙幣制御部11は、最上面検知部42からの最上面検知信号を常に監視しており、紙幣BLが順次ステージ23上に集積されることによってその最上面(すなわち載置最上面)が上昇して高さH1を超えたとき、最上面検知信号を基にこのことを認識する。このとき紙幣制御部11は、ステージ移動部25を制御してステージ23を移動距離ΔHだけ下方へ移動させる。これにより紙幣制御部11は、内部空間21Sの高さ、すなわち内部空間21Sの天井面21Cから載置最上面までの距離を、紙幣BLの放出に必要な距離以上に維持することができる。
【0076】
ステップSP4において紙幣制御部11は、通過検知部43からの通過検知信号を基に、収納枚数を1枚増加させることにより更新し、次のステップSP5へ移る。
【0077】
ステップSP5において紙幣制御部11は、接客部12内における残留紙幣の枚数や鑑別部14を通過した紙幣BLの枚数等を基に、一時保留部15に収納すべき紙幣BLを全て収納し終えたか否かを判別する。ここで否定結果が得られると、このことは一時保留部15に収納すべき紙幣BLがまだ残っていることを表しており、このとき紙幣制御部11は、再度ステップSP3へ戻って新たな紙幣BLを内部空間21S内へ放出する処理を繰り返す。
【0078】
一方、ステップSP5において肯定結果が得られると、このことは一時保留部15に新たな紙幣BLを収納する必要が無く、当該一時保留部15に収納される紙幣BLの枚数が確定したことを表しており、このとき紙幣制御部11は、次のステップSP6へ移る。ステップSP6において紙幣制御部11は、更新された収納枚数を記憶したまま、紙幣収納処理手順RT1を終了する。
【0079】
[1−3−2.紙幣
繰出処理手順]
次に、一時保留部15の
繰出処理について説明する。紙幣制御部11は、入金取引において紙幣収納処理手順RT1を終了すると、接客部12に投入された紙幣BLの金種及び枚数を集計して入金金額を確定した上で、この入金金額を操作表示部6(
図1)に表示して入金取引を継続するか否かを問い合わせる。
【0080】
ここで紙幣制御部11は、顧客から入金取引を継続する旨の指示を受け付けた場合には紙幣BLの搬送先を紙幣カセット17とし、顧客から入金取引を中止する旨の指示を受け付けた場合には紙幣BLの搬送先を接客部12とした上で、
図7に示す紙幣繰出処理手順RT2を開始してステップSP11へ移る。
【0081】
ステップSP11において紙幣制御部11は、
図6(D)に示すように、ステージ23を上方へ移動させることにより、紙幣BLの最上面である載置最上面を分離放出部26のピッカローラ30に当接させ、次のステップSP12へ移る。ステップSP12において紙幣制御部11は、内部空間21Sから繰り出された紙幣BLの枚数を計数するための変数である
繰出枚数を初期化し、次のステップSP13へ移る。
【0082】
ステップSP13において紙幣制御部11は、分離放出部26を分離モードで動作させることにより、ステージ23上に集積されている紙幣BLを操り出し、次のステップSP14へ移る。具体的に紙幣制御部11は、分離放出部26の各ローラを適宜回転又は静止させることにより、ステージ23上に集積されている紙幣BLのうち最上面の紙幣BLのみを1枚ずつに分離して繰り出し、搬送路Wに沿って前方へ搬送して、搬送部13へ受け渡す。
【0083】
ステップSP14において紙幣制御部11は、通過検知部43からの通過検知信号を基に、
繰出枚数を1枚増加させることにより更新し、次のステップSP15へ移る。
【0084】
ステップSP15において紙幣制御部11は、残留検知部41からの残留検知信号を基に、ステージ23上に紙幣BLが1枚以上残留しているか否か、すなわちステージ23上に集積されていた紙幣BLの繰出を終了したか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは引き続きステージ23上の紙幣BLを分離して繰り出す必要があることを表しており、このとき紙幣制御部11は再度ステップSP13へ戻る。
【0085】
一方、ステップSP15において肯定結果が得られると、このことはステージ23上に集積されていた紙幣BLを全て繰り出したことを表しており、このとき紙幣制御部11は次のステップSP16へ移る。
【0086】
ステップSP16において紙幣制御部11は、更新された繰出枚数が収納枚数と一致するか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは紙幣BLが搬送路Wの途中など、各検知部によっては検知できない箇所に残留している可能性があることを表しており、このとき紙幣制御部11は次のステップSP17へ移る。
【0087】
ステップSP17において紙幣制御部11は、サブルーチンとして
図8に示す走行クリーニング処理手順SRT3を開始し、ステップSP21へ移る。
【0088】
ステップSP21において紙幣制御部11は、紙幣BLの搬送先(例えば紙幣カセット17等)から一時保留部15に対し、ステップSP13及びSP14において繰り出した全ての紙幣BLを搬送させて収納し、すなわち一度繰り出した紙幣BLを一時保留部15へ戻して、次のステップSP22へ移る。因みに紙幣制御部11は、このとき紙幣収納処理手順RT1と同様の処理を実行することになる。
【0089】
ステップSP22において紙幣制御部11は、一時保留部15から1枚の紙幣BLを再び繰り出して搬送先へ搬送し、次のステップSP23へ移って走行クリーニング処理手順SRT3を終了し、再度紙幣繰出処理手順RT2(
図7)へ戻って次のステップSP18へ移る。
【0090】
この走行クリーニング処理により、紙幣制御部11は、搬送路Wの途中等に紙幣BLが残留していたとしても、残留していた紙幣BLを他の紙幣BLと共に走行させて正常に集積、分離及び搬送できる可能性がある。
【0091】
ステップSP18において紙幣制御部11は、紙幣繰出処理手順RT2を終了する。その後紙幣制御部11は、入金取引における残りの処理として、紙幣BLの搬送処理や紙幣カセット17への収納処理等を実行する。また紙幣制御部11は、最終的に
繰出枚数と集積枚数とが一致しない場合には、図示しない通信部を介し、金融機関の職員や保守作業員に対して保守作業の必要がある旨を通知する。
【0092】
このように紙幣制御部11は、通過検知信号を基に収納枚数や分離枚数を計数しながら一時保留部15により紙幣BLの収納処理及び
繰出処理を実行するようになされている。
【0093】
[1−4.動作及び効果]
以上の構成において、第1の実施の形態による一時保留部15は、内部空間21Sの後側面21Bと天井面21Cとの接合部分に、後側面21B及び天井面21Cの間の傾斜角となるような傾斜部32Bを有する紙幣案内部32を設けた。
【0094】
ここで、一時保留部15において紙幣BLの収納処理及び繰出処理を順次行った後に、
図9(A)に示すように、各検知部により検知できない位置に紙幣BL(以下これを残留紙幣BLRと呼ぶ)が残留していた場合を想定する。
【0095】
この状態において一時保留部15は、走行クリーニング処理手順SRT3(
図8)を実行することにより、搬送部13から搬送されてくる紙幣BLを順次収納する。このとき一時保留部15では、
図15(B)に示すように、新たに搬送されてきた紙幣BLが残留紙幣BLRを押し出すようにして内部空間21S内へ落下させ、舌片ローラ29の回転範囲外に位置させる可能性がある。
【0096】
さらに残留紙幣BLRは、重力の作用により内部空間21S内で落下しつつあるときに、分離放出部26から新たに放出された紙幣BLと衝突することにより、後方へ押し込まれる場合がある。その後一時保留部15は、新たな紙幣BLが順次放出され集積されることにより、
図9(C)に示すように、集積された紙幣BLと内部空間21Sの後側面21Bとの隙間に残留紙幣BLRを入り込ませた状態となる。
【0097】
やがて一時保留部15は、収納処理を終了し、その次に繰出処理を行う。まず一時保留部15は、
図10(A)に示すように、ステージ23を上方へ移動させ、当該ステージ23上に集積されている紙幣BLの最上面をピッカローラ30の下面に押し付ける。
【0098】
これにより残留紙幣BLRは、天井面21Cに取り付けられた紙幣案内部32とステージ23との間で、上下から押し縮める方向に力が加えられる。このとき残留紙幣BLRの上端部分は、紙幣案内部32の傾斜部32B及び水平部32Aに沿って前方へ滑るように案内され、残留検知部41の検知光L1を遮る位置まで到達する可能性がある。
【0099】
その後一時保留部15は、ステージ23上に集積されている紙幣BLを順次繰り出す。このとき残留紙幣BLRは、ステージ23が徐々に上昇されることに伴い下端部分が持ち上げられていくため、その上端を紙幣案内部32の水平部32A及び天井面21Cに沿って前方へ滑らせていき、やがて
図10(B)に示すように、ピッカローラ30とステージ23との間に挟まれる位置に到達させる可能性がある。
【0100】
この場合、一時保留部15は、通常の
繰出処理を行うことにより、
図10(C)に示すように、残留紙幣BLRを通常の紙幣BLと同様に繰り出すことができる。これに伴い紙幣制御部11では、一時的に残留紙幣BLRが発生したにもかかわらず、収納された全ての紙幣BLを繰り出すことができる。
【0101】
このように一時保留部15では、紙幣案内部32を設けたことにより、ステージ23を上昇させるだけで、残留紙幣BLRの上端を前方へ案内することができるので、当該残留紙幣BLRを検知光L1の光路を遮る位置や、ピッカローラ30の真下となる位置に到達させる可能性を高めることができる。
【0102】
一時保留部15は、残留紙幣BLRがピッカローラ30の真下となる位置に到達した場合には、一度残留紙幣BLRとなった紙幣BLを分離放出部26により正しく繰り出すことができる。このことは、現金自動預払機1において発生しかけた障害を自動的に解消することになり、保守作業の頻度を低減することや各種取引処理を行う正常な稼働状態をより長く継続できることに繋がる。
【0103】
また一時保留部15は、残留紙幣BLRが検知光L1の光路を遮る位置に到達した場合には、紙幣制御部11により少なくとも内部空間21S内に紙幣BLが残留していることを検知させることができる。
【0104】
このとき現金自動預払機1では、一時保留部15の内部空間21S内に残留紙幣BLRがあることを金融機関の職員や保守作業者に通知することができる。これにより現金自動預払機1では、この残留紙幣BLRを取り出すための保守作業が必要となるものの、一時保留部15の内部空間21S内にあることが判明しているため、紙幣BLがいずれの隙間に入り込んだかを探索する作業等を行わせる必要が無く、保守作業の簡略化や時間短縮を図ることができる。
【0105】
また紙幣案内部32は、例えば1枚の板状部材を所定形状に切削した上で屈曲させるだけで構成できるので、材料費や加工費の観点から極めて低廉に製造することができる。
【0106】
また紙幣案内部32は、傾斜部32Bに切り欠きを設け、これをビルストッパ31と干渉しないようにした。これにより紙幣案内部32は、ビルストッパ31本来の機能である「分離放出部26から放出された紙幣BLを衝突させてその衝撃を吸収する」ことを阻害すること無く、残留紙幣BLRの上端を前方へ案内することができる。
【0107】
以上の構成によれば、一時保留部15は、内部空間21Sの後側面21Bと天井面21Cとの接合部分に紙幣案内部32を取り付けた。これにより一時保留部15は、
繰出処理においてステージ23を上昇させることに伴い、内部空間21Sの後側面21Bと集積された紙幣BLとの隙間に入り込んだ残留紙幣BLRの上端部分を前方へ滑らせ、残留検知部41の検知光L1を遮る位置に到達させてその存在を検知する可能性や、その前方にあるピッカローラ30の位置まで到達させて正常に繰り出させる可能性を高めることができる。
【0108】
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態による現金自動預払機101(
図1)は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、紙幣入出金機10に代わる紙幣入出金機110を有する点が相違するものの、他の部分については同様に構成されている。紙幣入出金機110(
図2)は、第1の実施の形態による紙幣入出金機10と比較して、紙幣制御部11及び一時保留部15に代わる紙幣制御部111及び一時保留部115を有する点が相違するものの、他の部分については同様に構成されている。
【0109】
紙幣制御部111は、第1の実施の形態による紙幣制御部11と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、紙幣の搬送先を決定する処理や各部の動作を制御する処理等、種々の処理を行うようになされている。また紙幣制御部111は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させるようになされている。
【0110】
[2−1.一時保留部の構成]
一時保留部115は、
図3と対応する
図11に示すように、第1の実施の形態による一時保留部15と比較して、ステージ23、ビルストッパ31及び紙幣案内部32に代わるステージ123、ビルストッパ131及び紙幣案内部132を有する点が相違するものの、他の部分については同様に構成されている。
【0111】
ビルストッパ131は、第1の実施の形態によるビルストッパ31と同様の直方体状に構成されており、図示しない弾性体を介して後側面21Bに取り付けられている。これに加えてビルストッパ131における左右の下部後端には、中心軸を左右方向に向けた円柱状の回動軸131Cが立設されている。この回動軸131Cは、内部空間21Sの後側面21Bに設けられた所定の軸受により、回動可能に支持されている。
【0112】
さらにビルストッパ131における左右の側面には、案内溝131Dが設けられている。案内溝131Dは、ビルストッパ131に外力が加わっていない状態で、長手方向を上下に向けると共に、上側が後方に湾曲されている。また案内溝131Dの下端は開放されている。
【0113】
紙幣案内部132は、第1の実施の形態による紙幣案内部32と同様に薄板状の材料により構成されているものの、第1の実施の形態と異なり、下端が垂直に近い一方、上端が前方へ傾いて水平に近くなるように、全体的に湾曲されている。
【0114】
また紙幣案内部132は、天井面21Cではなく、ビルストッパ131に取り付けられている。このため紙幣案内部132は、ビルストッパ131に外力が加えられると、ビルストッパ131と一体に、回動軸131Cを中心に回動する。
【0115】
ステージ123は、第1の実施の形態によるステージ23と同様の板状に形成されていることに加えて、ビルストッパ131における案内溝131Dの下端部分と対応する位置に、ポスト123Pが設けられている。ポスト123Pは、中心軸を左右方向に向けた円柱状に形成されており、その直径が案内溝131Dの溝幅よりも僅かに小さくなっている。
【0116】
かかる構成により一時保留部115は、ステージ123を下方から上昇させてビルストッパ131と重なる高さまで移動させると、当該ステージ123のポスト123Pをビルストッパ131の案内溝131D内へ進行させる。
【0117】
一時保留部115は、ステージ123をさらに上昇させると、ポスト123Pを案内溝131D内で上方へ移動させていく。ここでポスト123Pは、ステージ123に立設されていることにより、上下方向へ移動する際にも前後方向の位置を変化させない。このためビルストッパ131は、ステージ123の上昇に伴い、ポスト123Pの位置に案内溝131Dを追従させるようにして、回動軸131Cを中心に当該ビルストッパ131全体を徐々に前方へ回動させていく。
【0118】
このとき紙幣案内部132は、ビルストッパ131と共に回動軸131Cを中心として回動するため、前下方へ移動することになる。このため紙幣案内部132は、仮に
図9(C)のように、内部空間21Sの後側面21Bと集積された紙幣BLとの間に残留紙幣BLRが入り込んでいた場合、当該残留紙幣BLRの上端近傍を前下方へ押し下げることができる。
【0119】
これにより一時保留部115は、第1の実施の形態と比較して、残留紙幣BLRの上端部分を残留検知部41の検知光L1を遮る位置やピッカローラ30の真下となる位置に到達させる可能性を格段に高めることができる。
【0120】
因みに一時保留部115では、紙幣BLの放出処理を行うべくステージ123を移動させる高さH1を、ビルストッパ131の下端よりも下方に位置させている。このため一時保留部115は、紙幣BLの放出処理を行う際には、ポスト123Pをビルストッパ131の案内溝131Dから遠ざけることになるため、紙幣BLの衝突時に当該ビルストッパ131を自由に回動させることができる。
【0121】
[2−2.処理手順]
一時保留部115は、紙幣制御部111の制御に基づき、収納処理については第1の実施の形態と同様に紙幣収納処理手順RT1(
図5)に従った処理を行うものの、
繰出処理については
図7と対応する
図12に示す紙幣繰出処理手順RT4に従った処理を行う。
【0122】
紙幣制御部111は、入金取引において紙幣収納処理手順RT1を終了すると、第1の実施の形態と同様、接客部12の表示により顧客に入金取引を継続するか否かを問い合わせ、紙幣カセット17又は接客部12を紙幣BLの搬送先とした上で、紙幣繰出処理手順RT4(
図12)を開始してステップSP31へ移る。
【0123】
紙幣制御部111は、ステップSP31〜ステップSP36において、紙幣繰出処理手順RT2(
図7)のステップSP11〜ステップSP16とそれぞれ同様の処理を行い、更新された繰出枚数が収納枚数と一致するか否かを判定する。ステップSP36において否定結果が得られると、このことは紙幣BLが各検知部によっては検知できない箇所に残留している可能性があることを表しており、このとき紙幣制御部111は次のステップSP37へ移る。
【0124】
ステップSP37において紙幣制御部111は、ステージ123を下方へ移動させ、次のステップSP38へ移る。このとき紙幣制御部111は、ステージ123と内部空間21Sの天井面21Cとの間隔を、紙幣BLにおける走行方向の長さ、すなわち短手方向の長さ以上とする位置まで下降させる。
【0125】
これにより一時保留部115内では、残留紙幣BLRの上端が天井面21C又は紙幣案内部132から離れて安定性が低下するため、当該残留紙幣BLRが何ら支持されていない前方に倒れる可能性が高まる。
【0126】
ステップSP38において紙幣制御部111は、ステージ123を上方へ移動させ、ステージ123の上面又は前方へ倒れた残留紙幣BLRをピッカローラ30の下面に押し付け、次のステップSP39へ移る。
【0127】
このとき残留紙幣BLRは、ステージ123の上昇に伴って上端が紙幣案内部132に当接して、前方へ案内されるように摺動する。また紙幣案内部132は、ステージ123の上昇に伴って回動することにより、当該残留紙幣BLRの上端を前方へ押し込む。これらにより残留紙幣BLRは、前方へ倒れる可能性が高まる。
【0128】
ステップSP39において紙幣制御部111は、残留検知部41からの残留検知信号を基に、ステージ123上に紙幣BLが1枚以上残留しているか否か、すなわち残留紙幣BLRが少なくとも検知光L1(
図11)を遮る位置にあるか否かを判定する。
【0129】
ここで肯定結果が得られると、このことはステージ123の上下移動により残留紙幣BLRが前方に倒れたため、当該残留紙幣BLRをピッカローラ30により繰り出し得る可能性があることを表しており、このとき紙幣制御部111は次のステップSP40へ移る。
【0130】
ステップSP40において紙幣制御部111は、ステップSP33(すなわちステップSP13)と同様、分離放出部26を分離モードで動作させ、次のステップSP41へ移る。このとき一時保留部115は、残留紙幣BLRの一部がピッカローラ30とステージ123との間に挟まれていれば、当該ピッカローラ30の回転により当該残留紙幣BLRを繰り出す。
【0131】
ステップSP41において紙幣制御部111は、ステップSP34(すなわちステップSP14)と同様、通過検知部43からの通過検知信号を基に
繰出枚数を更新し、次のステップSP43へ移る。
【0132】
一方、ステップSP39において否定結果が得られると、このことはステージ123の上下移動によっては残留紙幣BLRが前方に倒れなかったこと、或いは内部空間21S内には残留紙幣BLRが存在しないことを表している。このとき紙幣制御部111は、ステップSP42へ移る。
【0133】
ステップSP42において紙幣制御部111は、第1の実施の形態におけるステップSP17と同様、サブルーチンとして走行クリーニング処理手順SRT3(
図8)を実行した後、次のステップSP43へ移る。これにより残留紙幣BLRは、第1の実施の形態と同様、残留検知部41により検知される可能性や分離放出部26により正しく繰り出される可能性を高めることができる。
【0134】
また、ステップSP36において肯定結果が得られた場合にも、紙幣制御部111は次のステップSP43へ移る。
【0135】
ステップSP43において紙幣制御部111は、紙幣繰出処理手順RT4を終了する。その後紙幣制御部111は、入金取引における残りの処理として、紙幣BLの搬送処理や紙幣カセット17への収納処理等を実行するようになされている。また紙幣制御部111は、最終的に
繰出枚数と集積枚数とが一致しない場合には、第1の実施の形態と同様、図示しない通信部を介し、金融機関の職員や保守作業員に対して保守作業の必要がある旨を通知する。
【0136】
このように紙幣制御部111は、通過検知信号を基に収納枚数や分離枚数を計数しながら一時保留部115により紙幣BLの収納処理及び
繰出処理を実行し、
繰出枚数と集積枚数とが一致しない場合には、ステージ123の上下移動により残留紙幣BLRの検知及び
繰出を図るようになされている。
【0137】
[2−3.動作及び効果]
以上の構成において、第2の実施の形態による一時保留部115は、回動軸131Cを中心にビルストッパ131を回動可能とし、当該ビルストッパ131の左右側面に、上側を後方へ湾曲させた案内溝131Dを形成した。
【0138】
また一時保留部115は、上端近傍を前方へ倒すように湾曲された紙幣案内部132をビルストッパ131の上側に取り付け、その一部を内部空間21Sの後側面21Bと天井面21Cとの接合部分に位置させると共に、当該ビルストッパ131と一体に回動するようにした。
【0139】
このため紙幣案内部132は、第1の実施の形態と同様、後側面21Bと集積された紙幣BLとの間に残留紙幣BLRが入り込んでいる場合に、ステージ123が上方へ移動することにより、当該残留紙幣BLRの上端部分を紙幣案内部132前面に沿って前方へ滑らせように案内することができる。
【0140】
またビルストッパ131は、ステージ123がビルストッパ131の下端よりも高い位置まで上昇すると、前後方向の位置が変化しないポスト123Pが案内溝131D内に入り込むことにより、紙幣案内部132と一体に前方へ回動していく。
【0141】
これにより紙幣案内部132は、残留紙幣BLRの上端部分を積極的に前下方向へ倒すことができるので、第1の実施の形態と比較して、当該残留紙幣BLRの一部を、残留検知部41の検知光L1を遮る位置まで到達させる可能性や、ピッカローラ30とステージ123との間に挟まれる位置に到達させる可能性を格段に高めることができる。
【0142】
さらに紙幣制御部111は、
繰出枚数と集積枚数とが一致しない場合には、ステージ123を一度下方へ移動させた後、再度上昇させる。これにより一時保留部115は、残留紙幣BLRが前方へ倒れる可能性、すなわち残留検知部41により検知できる可能性やピッカローラ30により繰り出す可能性をさらに高めることができる。
【0143】
かくして第2の実施の形態による一時保留部115は、第1の実施の形態による一時保留部15と比較して、一度残留紙幣BLRとなった紙幣BLを正しく繰り出す可能性をさらに高めることができるので、保守作業を行う頻度を格段に低減させ、現金自動預払機1として各種取引処理を行い得る正常な運用状態をより長く維持することができる。
【0144】
また紙幣案内部132は、本来移動可能に構成する必要があるビルストッパ131と一体に回動するようにした。このため一時保留部115は、紙幣案内部132を回動させるための機構を別途設ける必要が無く、従来と比較して構成を殆ど複雑化せずに済む。
【0145】
その他の点においても、第2の実施の形態による一時保留部115は、第1の実施の形態による一時保留部15と同様の作用効果を奏し得る。
【0146】
以上の構成によれば、一時保留部115は、ビルストッパ131と一体に回動可能な紙幣案内部132を設け、ステージ123の上昇に伴い当該ビルストッパ131及び紙幣案内部132を前方へ回動させるようにした。また紙幣制御部111は、
繰出枚数と集積枚数とが一致しない場合にステージ123を上下に移動させるようにした。これにより一時保留部115は、
繰出処理においてステージ123を上昇させることに伴い、残留紙幣BLRの上端部分を前方へ滑らせると共に前方へ倒すことができ、またステージ123を下降させて残留紙幣BLRが前方へ倒れる機会を設けることができるので、残留検知部41の検知光L1を遮る位置に到達させてその存在を検知する可能性や、その前方にあるピッカローラ30の位置まで到達させて正常に繰り出させる可能性を、格段に高めることができる。
【0147】
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、紙幣案内部32をいずれも平面状でなる水平部32Aと傾斜部32Bとを接合させたような形状、すなわち左右方向から見て板状部材を折れ線状に屈曲させたような形状とした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば紙幣案内部32を第2の実施の形態における紙幣案内部132と同様に湾曲された形状としても良い。これと反対に、第2の実施の形態における紙幣案内部132を、第1の実施の形態と同様に複数の平面を互いに接合させたような形状、すなわち左右方向から見て折れ線状に屈曲させたような形状としても良い。
【0148】
また上述した第1の実施の形態においては、紙幣案内部32の水平部32Aにおける前端を、残留検知部41の受光部41Bへ向かう検知光L1の光路よりも後側に位置させる
ようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、紙幣案内部32の水平部32Aにおける前端を検知光L1の光路よりも前側に位置させるようにしても良い。この場合、水平部32Aに検知光L1を通過させるための孔部や切り欠きを形成すれば良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0149】
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙幣案内部32を独立した部品として構成し、これを内部空間21Sの天井面21Cに取り付けるようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば天井面21Cにおける後端近傍を下方へ下がる傾斜面として形成することにより、紙幣案内部32の傾斜部32Bと同等の機能を持たせるようにしても良い。また第2の実施の形態においては、ビルストッパ131の上端側を前方や左右方向へ延長して紙幣案内部132と同様の形状とするようにしても良い。
【0150】
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙幣案内部32を薄板状の金属材料により構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、紙幣案内部32を樹脂材料等の成形品として構成しても良い。この場合、内部空間側に傾斜面を形成できれば良く、その厚さは任意とすることができる。第2の実施の形態についても同様である。
【0151】
さらに上述した第2の実施の形態においては、紙幣案内部132をビルストッパ131に取り付け、当該紙幣案内部132を当該ビルストッパ131と一体に回動させるようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば独立した回動機構を介して紙幣案内部132を内部空間21Sの後側面21Bや天井面21Cに取り付け、この回動機構により紙幣案内部132を回動させるようにしても良い。この場合、ステージ123のポスト123Pと係合するような案内溝を紙幣案内部132に形成すれば良い。或いは、所定の移動機構を介して紙幣案内部132を後側面21Bや天井面21Cに取り付け、この移動機構により当該紙幣案内部132を前方ないし下方へ移動させて残留紙幣BLRに対し前方へ倒れるような力を作用させるようにしても良い。
【0152】
さらに上述した第2の実施の形態においては、ステージ123に設けたポスト123Pをビルストッパ131の案内溝131D内に位置させることにより、ステージ123の上下移動に伴ってビルストッパ131及びこれに取り付けられた紙幣案内部132を回動させるようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば紙幣制御部111により制御される専用のアクチュエータから駆動力を伝達させることにより、ビルストッパ131の回動角度を独立して制御するようにしても良い。
【0153】
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙幣繰出処理手順RT2(
図7)のステップSP17において走行クリーニング処理を実行するようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、走行クリーニング処理を省略しても良い。この場合、繰出枚数が収納枚数と一致するか否かに関わらず紙幣繰出処理手順RT2を終了することになるが、繰出枚数が収納枚数と一致する場合には入金取引を継続し、繰出枚数が収納枚数と一致しない場合には保守作業を行わせることになる。第2の実施の形態についても同様である。
【0154】
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙幣入出金機10全体を制御する紙幣制御部11において紙幣収納処理手順RT1(
図5)及び紙幣繰出処理手順RT2(
図7)等の各種処理を実行するようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば一時保留部15にCPUやRAM等を有する専用の制御部を設け、この制御部において各種処理を実行するようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0155】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0156】
さらに上述した第1の実施の形態においては、本発明を一時保留部15に適用した場合について述べたが、これに限らず、例えば紙幣カセット17やリジェクトカセット16等の他の箇所に本発明を適用しても良い。この場合、要は内部に紙幣を収納する空間を有し、収納時には紙幣をこの空間内に放出して上下に移動するステージ上に集積すると共に、
繰出時には集積された紙幣を1枚ずつに分離して繰り出す箇所であれば、本発明を適用することができる。第2の実施の形態についても同様である。
【0157】
さらに上述した第1の実施の形態においては、顧客との間で現金に関する取引処理を行う現金自動預払機1の紙幣入出金機10において、媒体としての紙幣BLを一時的に収納し、また繰り出す一時保留部15に本発明を適用した場合について述べた。しかしながらこれに限らず、例えば種々の金券や証券等のような種々の紙葉状の媒体を取り扱う装置において、当該媒体を収納し、また繰り出す種々の箇所に本発明を適用するようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
【0158】
さらに上述した第1の実施の形態においては、空間としての内部空間21Sと、ステージとしてのステージ23と、ステージ移動部としてのステージ移動部25と、分離放出部としての分離放出部26と、残留検知部としての残留検知部41と、媒体案内部としての紙幣案内部32とによって、媒体集積装置としての一時保留部15を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる空間と、ステージと、ステージ移動部と、分離放出部と、残留検知部と、媒体案内部とによって媒体集積装置を構成するようにしても良い。
【0159】
さらに上述した第1の実施の形態においては、搬送部としての搬送部13と、空間としての内部空間21Sと、ステージとしてのステージ23と、ステージ移動部としてのステージ移動部25と、分離放出部としての分離放出部26と、残留検知部としての残留検知部41と、媒体案内部としての紙幣案内部32とによって、媒体取引装置としての現金自動預払機1を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる搬送部と、空間と、ステージと、ステージ移動部と、分離放出部と、残留検知部と、媒体案内部とによって媒体取引装置を構成するようにしても良い。