特許第6187027号(P6187027)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6187027ナトリウムイオン二次電池用負極活物質、ならびに、それを用いたナトリウムイオン二次電池用負極及びナトリウムイオン二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6187027
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ナトリウムイオン二次電池用負極活物質、ならびに、それを用いたナトリウムイオン二次電池用負極及びナトリウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/485 20100101AFI20170821BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20170821BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20170821BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20170821BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20170821BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20170821BHJP
【FI】
   H01M4/485
   H01M4/58
   H01M4/136
   H01M4/62 Z
   H01M10/054
   H01M4/131
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-171179(P2013-171179)
(22)【出願日】2013年8月21日
(65)【公開番号】特開2015-41455(P2015-41455A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山内 英郎
(72)【発明者】
【氏名】池尻 純一
【審査官】 正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−182115(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/063745(WO,A1)
【文献】 特表2016−502241(JP,A)
【文献】 特開2012−043691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 − 4/62
H01M 10/05 −10/0587
C03C 1/00 −14/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO、B、およびPの群から選択される少なくとも1種の酸化物と、SnOとを含有し、かつ実質的に非晶質相からなることを特徴とするナトリウムイオン二次電池用負極活物質。
【請求項2】
酸化物換算のモル%で、SnO 40〜95%、SiO+B+P 5〜55%を含有することを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオン二次電池用負極活物質。
【請求項3】
さらに、P 5〜55%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のナトリウムイオン二次電池用負極活物質。
【請求項4】
SnO/Pの値が酸化物換算のモル比で1.0〜7.0の範囲にあることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のナトリウムイオン二次電池用負極活物質。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載のナトリウムイオン二次電池用負極活物質を含有することを特徴とするナトリウムイオン二次電池用負極。
【請求項6】
熱硬化性樹脂からなる結着剤を含有することを特徴とする請求項に記載のナトリウムイオン二次電池用負極。
【請求項7】
熱硬化性樹脂が、熱硬化性ポリイミドであることを特徴とする請求項に記載のナトリウムイオン二次電池用負極。
【請求項8】
水溶性高分子からなる結着剤を含有することを特徴とする請求項に記載のナトリウムイオン二次電池用負極。
【請求項9】
水溶性高分子が、セルロース誘導体またはポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項に記載のナトリウムイオン二次電池用負極。
【請求項10】
請求項のいずれかに記載のナトリウムイオン二次電池用負極、正極、及び電解質を含むことを特徴とするナトリウムイオン二次電池。
【請求項11】
正極が、一般式Na(MはCr,Fe,Mn,Co,及びNiから選択される少なくとも1種以上の元素で、xは1.20≦x≦2.10で、かつyは0.95≦y≦1.60である)で表される結晶を含有する正極活物質を含むことを特徴とする請求項10に記載のナトリウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型電子機器、電気自動車等に用いられるナトリウムイオン二次電池用負極活物質に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用パソコンや携帯電話の普及に伴い、リチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスの高容量化と小サイズ化に対する要望が高まっている。蓄電デバイスの高容量化が進めば、電池の小サイズ化も容易となるため、蓄電デバイスの高容量化へ向けての開発が急務となっている。
【0003】
現状のリチウムイオン電池の問題点として、リチウム資源の地域的な偏在が挙げられる。近年、海水中に豊富に含まれ、安価で、入手しやすい元素であるナトリウムイオンを利用したナトリウムイオン二次電池の開発が進められている。
【0004】
ナトリウムイオン二次電池等の蓄電デバイス用負極活物質には、一般にハードカーボンなどの炭素材料が用いられている。
【0005】
また、特許文献1には金属Snや金属Geの負極活物質が、特許文献2にはSnO負極活物質を用いたナトリウムイオン二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−244976号公報
【特許文献2】特開2013−54987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ハードカーボンからなる負極活物質は、放電容量が低いという問題があった。
【0008】
また、SnO負極活物質及び金属Sn負極活物質は、充電・放電時に起こるナトリウムイオンの吸蔵・放出により、大きな体積膨張・収縮を生じる。その結果、電極が崩壊しサイクル特性が悪いという問題がある。
【0009】
したがって、本発明の課題は、放電容量が高く、サイクル特性に優れたナトリウムイオン二次電池用負極活物質、並びにナトリウムイオン二次電池用負極およびナトリウムイオン二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のナトリウムイオン二次電池用負極活物質は、SiO、B、およびPの群から選択される少なくとも1種の酸化物と、SnまたはSnOとを含有し、かつ非晶質相を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明のナトリウムイオン二次電池用負極活物質は、酸化物換算のモル%で、SnO 40〜95%、SiO+B+P 5〜55%を含有することが好ましい。
【0012】
さらに、P 5〜55%を含有するが好ましい。
【0013】
本発明のナトリウムイオン二次電池用負極活物質は、実質的に非晶質からなることが好ましい。
【0014】
また、SnO/Pの値が酸化物換算のモル比で1.0〜7.0の範囲にあることが好ましい。
【0015】
本発明のナトリウムイオン二次電池用負極は、前記ナトリウムイオン二次電池用負極活物質を含有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明のナトリウムイオン二次電池用負極は、熱硬化性樹脂からなる結着剤を含有することが好ましい。
【0017】
さらに、熱硬化性樹脂が、ポリイミド樹脂であることが好ましい。
【0018】
また、本発明のナトリウムイオン二次電池用負極は、水溶性高分子からなる結着剤を含有することが好ましい。
【0019】
さらに、水溶性高分子が、セルロース誘導体またはポリビニルアルコールであることが好ましい。
【0020】
本発明のナトリウムイオン二次電池は、前記ナトリウムイオン二次電池用負極、正極、及び電解質を含むことを特徴とする。
【0021】
また、本発明のナトリウムイオン二次電池は、正極が、一般式Na(MはCr,Fe,Mn,Co,及びNiから選択される少なくとも1種以上の元素で、xは1.20≦x≦2.10で、かつyは0.95≦y≦1.60である)で表される結晶を含有する正極活物質を含むことが好ましい。
【0022】
また、本発明のナトリウムイオン二次電池は、負極活物質が、ナノサイズの金属Sn粒子またはナノサイズのSn−Na合金粒子を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、放電容量が高く、サイクル特性に優れたナトリウムイオン二次電池用負極活物質、並びにナトリウムイオン二次電池用負極およびナトリウムイオン二次電池を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のナトリウムイオン二次電池用負極活物質は、SiO、B、およびPの群から選択される少なくとも1種の酸化物と、SnまたはSnOとを含有し、かつ非晶質相を含むことを特徴とする。上記構成にすることにより、SiO、B、およびPの群から選択される少なくとも1種の酸化物からなる非晶質相を含有するマトリックス中に、活物質成分であるSnが分散された構造を形成し、ナトリウムイオンを吸蔵および放出する際におけるSnの体積変化を緩和することができるため、放電容量が高く、サイクル特性に優れた負極活物質を得られる。
【0025】
本発明のナトリウムイオン二次電池用負極活物質は、酸化物換算のモル%で、SnO 40〜95%、SiO+B+P 5〜55%を含有することが好ましい。各成分をこのように限定した理由を以下に説明する。
【0026】
SnOはナトリウムイオンを吸蔵および放出するサイトとなる活物質成分である。SnOの含有量は40〜95%であることが好ましく、45〜92%であることがより好ましく、48〜90%であることがさらに好ましく、50〜87%であることが特に好ましい。SnOの含有量が少なすぎると、負極活物質の単位質量当たりの放電容量が小さくなり、かつ、初回充放電時の充放電効率が低下する傾向がある。一方、SnOの含有量が多すぎると、負極活物質中の非晶質成分が相対的に少なくなるため、充放電時のナトリウムイオンの吸蔵および放出に伴う体積変化を緩和できずに、サイクル特性が低下する傾向がある。なお本発明において、SnOの含有量は、SnO以外の酸化スズ成分(SnO等)もSnOに換算して合算したものを指す。
【0027】
SiO、B、及びPは網目形成酸化物であり、SnOにおけるナトリウムイオンの吸蔵および放出サイトを取り囲み、サイクル特性を向上させる作用がある。SiO、B、及びPの含有量の合計は5〜55%であることが好ましく、7〜52%であることがより好ましく、10〜50%であることがさらに好ましい。SiO、B、及びPの含有量の合計が少なすぎると、充放電時のナトリウムイオンの吸蔵および放出に伴うSnの体積変化を緩和できず構造劣化を起こすため、サイクル特性が低下しやすくなる。一方、SiO、B、及びPの含有量の合計が多すぎると、相対的にSnOの含有量が少なくなり、負極活物質の単位質量当たりの充放電容量が小さくなる傾向がある。
【0028】
なかでも、Pはナトリウムイオン伝導性に優れるため、サイクル特性を向上させる作用がある。Pの含有量は5〜55%であることが好ましく、7〜45%であることがより好ましく、10〜35%であることが特に好ましい。Pの含有量が多すぎると、耐水性が低下しやすくなり、また、水系電極ペーストを作製した際に、ガラス材料中に望まない異種結晶が生じ、ガラス材料中のPネットワークが切断されるため、サイクル特性が低下しやすくなる。
【0029】
また、SiOの含有量は0〜20%であることが好ましく、0〜10%であることがより好ましい。SiOの含有量が多すぎると、SiOやSiPなどの結晶が析出しやすくなり、サイクル特性が低下する傾向がある。また、Bの含有量は0〜50%であることが好ましく、3〜40%であることがより好ましい。
【0030】
SnO/P(モル比)は、1.0〜7.0であることが好ましく、2.0〜6.0であることがより好ましく、2.5〜5.5であることがさらに好ましく、3.0〜5.0であることが特に好ましい。SnO/Pが小さすぎると、SnO結晶やSnP結晶が析出しやすく、均質なガラスが得られ難くなり、サイクル特性が低下する傾向がある。一方、SnO/Pが大きすぎると、SnOの不均化反応が起こり、SnO結晶や金属Snが析出しやすくなり、サイクル特性が低下する傾向がある。
【0031】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分に加えてさらに種々の成分を添加することができる。このような成分としては、例えばCuO、ZnO、B、MgO、CaO、Al、RO(RはLi、Na、KまたはCsを示す)などが挙げられる。上記成分の含有量は、合量で0〜20%であることが好ましく、0.1〜15%であることがより好ましく、0.5〜13%であることがさらに好ましい。
【0032】
本発明のナトリウムイオン二次電池用負極活物質の結晶化度は、充放電反応前において質量%で95%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、70%以下であることがさらに好ましく、50%以下であることがなお好ましく、40%以下であることがより一層好ましく、10%以下であることが特に好ましい。また、負極活物質は実質的に非晶質からなることがとりわけ好ましい。ここで、「実質的に非晶質からなる」とは、結晶化度が実質的に0%(具体的には、0.1%未満)であることを指し、後述の粉末X線回折測定において、結晶性回折線が検出されないものをいう。結晶化度が小さい(非晶質の割合が大きい)ほど、繰り返し充放電時の体積変化を緩和できるため、サイクル特性が向上する傾向がある。
【0033】
なお、結晶化度は、CuKα線を用いた粉末X線回折測定によって得られる2θ値で10〜60°の回折線プロファイルを、結晶性回折線と非晶質ハローとにピーク分離することで求められる。具体的には、回折線プロファイルからバックグラウンドを差し引いて得られた全散乱曲線から、10〜40°におけるブロードな回折線(非晶質ハロー)をピーク分離して求めた積分強度をIa、10〜60°において検出される各結晶性回折線をピーク分離して求めた積分強度の総和をIcとした場合、結晶化度Xcは次式から求められる。
Xc=[Ic/(Ic+Ia)]×100(%)
【0034】
本発明のナトリウムイオン二次電池用負極活物質は、CuKα線を用いた粉末X線回折測定によって得られる回折線プロファイルにおいて2θ値で10〜45°に非晶質ハローを有し、当該範囲にて2θ値を22.5°に固定したピーク成分P1と22.5°より高角度側のピーク成分P2の二成分でカーブフィッティングした際に、P2のピーク頂点の位置が2θ値で25.0〜29.0°であることが好ましく、25.3〜28.5°であることがより好ましく、25.5〜28.3°であることがさらに好ましく、25.7〜28.0°であることが特に好ましい。ピーク成分P2の位置が小さすぎると、負極活物質中のスズイオンはリン酸ネットワークに存在する酸素原子の孤立電子対により、配位の影響を強く受けた状態で存在することになる。結果として、初回充電時において、負極活物質中のスズイオンを金属Snに還元するのに要する電子、さらには電荷補償に要するナトリウムイオンを過剰に必要とするため、初回充放電効率が著しく低下する。一方、ピーク成分P2のピーク位置が大きすぎると、負極活物質中のスズイオンがリン酸ネットワークに十分に取り囲まれないため、繰り返し充放電した際に、負極活物質中で体積変化が局所的に起こり、リン酸ネットワークの骨格が破壊され構造を引き起こす。結果として、繰り返し充放電した際に放電容量が低下する傾向がある。なお、ピーク成分P2のピーク位置は、負極活物質中のSnOとPの比や溶融雰囲気を適宜調整することにより、上記範囲に規制することができる。
【0035】
また、本発明のナトリウムイオン二次電池用負極活物質は、CuKα線を用いた粉末X線回折測定によって得られる回折線プロファイルにおいて2θ値で10〜45°に非晶質ハローを有し、当該範囲にて2θ値を22.5°に固定したピーク成分P1と22.5°より高角度側のピーク成分P2の二成分でカーブフィッティングした際に、P1のピーク面積A1とP2のピーク面積A2が、A1/A2=0.01〜8の関係を満たすことが好ましく、0.03〜7の関係を満たすことがより好ましく、0.1〜5.5の関係を満たすことがさらに好ましく、0.3〜4.5の関係を満たすことが特に好ましい。ピーク面積比A1/A2が小さすぎると、鎖状のリン酸が負極活物質中にわずかにしか存在しておらず、鎖が切断され孤立したリン酸の状態で存在し、錫イオンがリン酸ネットワークにより十分に取り囲まれていないことを意味する。このため、繰り返し充放電に伴う負極活物質の体積変化により、リン酸骨格が破壊されやすく、構造破壊を引き起こすおそれがある。結果として、サイクル特性が低下する傾向がある。一方、ピーク面積比A1/A2が大きすぎると、負極活物質中のスズイオンが、リン酸ネットワーク中の酸素原子が有する孤立電子対によって、配位の影響を強く受けた状態で存在する。このため、初回充電時に負極活物質中のSnイオンを金属Snに還元するために要する電子、さらには電荷補償に要するナトリウムイオンを過剰に必要とし、初回充放電効率が著しく低下する。なお、ピーク面積比A1/A2は、負極活物質中のSnOとPの比や溶融雰囲気を適宜調整することにより、上記範囲に規制することができる。
【0036】
本発明のナトリウムイオン二次電池用負極活物質は、例えば原料粉末を加熱溶融してガラス化することにより製造される。Snを含む酸化物材料は、溶融条件によってSn原子の酸化状態が変化しやすく、大気中で溶融した場合、望まないSnOやSnP等の結晶がガラス融液表面やガラス融液中に形成されやすい。その結果、負極活物質の初回充放電効率およびサイクル特性が低下しやすくなる。そこで、還元雰囲気または不活性雰囲気中で溶融を行うことで、酸化物材料中のスズイオンの価数の増加を抑制し、望まない結晶の形成を抑制でき、初回充放電効率およびサイクル特性に優れたナトリウムイオン二次電池用負極活物質を得ることが可能となる。
【0037】
還元雰囲気で溶融するには、溶融槽中へ還元性ガスを供給することが好ましい。還元性ガスとしては、体積%で、N 90〜99.5%およびH 0.5〜10%を含有する混合気体を用いることが好ましく、N 92〜99%およびH 1〜8%を含有する混合気体を用いることがより好ましい。
【0038】
不活性雰囲気で溶融する場合は、溶融槽中へ不活性ガスを供給することが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムのいずれかを用いることが好ましい。
【0039】
還元性ガスまたは不活性ガスは、溶融槽において溶融ガラスの上部雰囲気に供給してもよいし、バブリングノズルから溶融ガラス中に直接供給してもよく、両手法を同時に行ってもよい。
【0040】
また、上記負極活物質の製造方法において、出発原料粉末に複合酸化物を使用することにより、失透異物が少なく均質性に優れた負極活物質が得られやすくなる。当該負極活物質を用いれば、放電容量が安定したナトリウムイオン二次電池が得られやすくなる。このような複合酸化物としては、ピロリン酸第一錫(Sn)等が挙げられる。
【0041】
本発明のナトリウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法において、所定サイズの粉末を得るためには、一般的な粉砕機や分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、篩、遠心分離、空気分級などが用いられる。
【0042】
負極活物質が粉末状である場合、平均粒子径は0.1〜20μmであることが好ましく、0.2〜15μmであることがより好ましく、0.3〜10μmであることがさらに好ましく、0.5〜5μmであることが特に好ましい。最大粒子径は150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、75μm以下であることがさらに好ましく、55μm以下であることが特に好ましい。平均粒子径や最大粒子径が大きすぎると、充放電した際にナトリウムイオンの吸蔵および放出に伴う負極活物質の体積変化を緩和できず、集電体から剥れやすくなり、サイクル特性が著しく低下する傾向がある。一方、平均粒子径が小さすぎると、ペースト化した際に粉末の分散状態に劣り、均一な電極を製造することが困難になる傾向がある。また、比表面積が大きくなりすぎて、電極形成用のペーストを製造する際に負極活物質粉末が分散しにくくなるため、多量の結着剤や溶剤が必要となる。さらに、電極形成用ペーストの塗布性に劣り、均一な厚みを有する負極を形成しにくくなる。
【0043】
ここで、平均粒子径と最大粒子径は、それぞれ一次粒子のメイジアン径でD50(50%体積累積径)とD90(90%体積累積径)を示し、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定された値をいう。
【0044】
また、粉末状の負極活物質のBET法による比表面積は0.1〜20m/gであることが好ましく、0.15〜15m/gであることがより好ましく、0.2〜10m/gであることが特に好ましい。負極活物質の比表面積が小さすぎると、ナトリウムイオンの吸蔵および放出が迅速に行えず、充放電時間が長くなる傾向がある。一方、負極活物質の比表面積が大きすぎると、結着剤と水とを含む電極形成用のペーストを製造する際、当該粉末の分散状態に劣るため、結着剤と水の添加量を多くする必要性が生じたり、塗布性に欠けることで均一な電極形成が困難となる傾向がある。
【0045】
本発明のナトリウムイオン二次電池用負極は、前記ナトリウムイオン二次電池用負極活物質を含有することを特徴とする。また、本発明のナトリウムイオン二次電池用負極は、負極集電体と、負極集電体の片面または両面に担持され、負極活物質、結着剤および導電助剤を含む負極活物質含有層とを有することが好ましい。
【0046】
結着剤は、熱硬化性樹脂からなると、充放電した際に負極活物質がその体積変化により負極から剥離することを防止できるため好ましい。つまり、熱硬化性樹脂は直鎖状高分子の主鎖から枝状に分岐した側鎖を有する構造を有しているため、熱処理を施すと、側鎖同士の架橋反応が進み、負極活物質との結着性に優れる。よって、負極から負極活物質が剥離することを抑制できるとともに、負極集電体との接着性にも優れる。さらに、熱硬化性樹脂は熱処理により負極活物質とともに膨張した状態で硬化する。これを冷却すると、負極活物質のみが収縮するため、熱硬化性樹脂との間に空隙が形成される。この空隙は充放電に伴う活物質の体積変化を緩和するのに有効なスペースとなる。
【0047】
熱硬化性樹脂は、熱硬化性ポリイミド、熱硬化性ポリアミドイミド、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、およびポリウレタンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。特に、耐薬品性、耐熱性、耐クラック性に優れる熱硬化性ポリイミドが好ましい。なお、熱硬化性ポリイミドおよび熱硬化性ポリアミドイミドはイミド化されたものを用いてもよい。イミド化された熱硬化性ポリイミドまたはイミド化された熱硬化性ポリアミドイミドを用いると、負極作製時において、熱処理時間を短縮することができ、かつ熱処理温度も低減することができる。
【0048】
また、結着剤は、水溶性高分子からなることが好ましい。これにより、充放電した際に負極活物質がその体積変化により負極材料中から剥離することを防止できる。つまり、本発明の負極活物質は、最表面に水酸基(−OH)を有しているのに対し、水溶性高分子も水酸基を有している。これにより、負極活物質最表面の水酸基と水溶性高分子における水酸基とが脱水縮合し、負極活物質層中において負極活物質同士を強固に結着させることができるため、負極から負極活物質が剥離することを抑制できる。また、結着剤として水溶性高分子を用いることにより負極の低抵抗化が達成され、ハイレート特性を向上させることが可能となる。
【0049】
なお、水溶性高分子は水に対する溶解性が高いため、既述の熱可塑性直鎖状高分子やSBR等の高分子と異なり、非極性有機溶媒を使用しなくても溶媒中に均一に分散させることが可能である。よって、環境負荷が少なく、低コストであり、かつ安全性に優れた負極を作製することが可能である。
【0050】
水溶性高分子としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体;デンプン、カルボキシメチルデンプン、リン酸デンプン、カチオンデンプンなどのデンプン誘導体;キサンタンガム、グアーガム、アルギン酸、アラビアガム、カラギーナン、コンドロイチン硫酸ソーダ、ヒアルロン酸ソーダ、キトサン、ゼラチンなどの天然植物性高分子;ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンおよびその共重合体、ポリエチレングリコール、ポリメチルビニルエーテル、ポリイソプロピルアクリルアミドなどの非イオン性合成高分子;ポリアクリル酸ナトリウムおよびその共重合体、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリイソプレンスルホン酸ナトリウム共重合体、ナフタレンスルホン酸縮合物塩、ポリエチレンイミンザンテート塩などのアニオン性合成高分子;ジメチルジアリルアンモニウムクロライドの単独重合体およびその共重合体、ポリアミジンおよびその共重合体、ポリビニルイミダゾリン、ポリエチレンイミンなどのカチオン性合成高分子;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩−アクリル酸共重合物、ポリアクリアミドのホフマン分解物などの両親媒性合成高分子等が挙げられる。
【0051】
なかでも、水溶性高分子が、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体またはポリビニルアルコールであることが好ましく、工業的に広範囲に用いられ安価であるカルボキメチルセルロースまたはポリビニルアルコールであることがより好ましい。なお、カルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチルセルロースナトリムなどのカルボキシメチルセルロース塩も含むものとする。
【0052】
上記結着剤は一種類で使用してもよいし二種類以上を混合して用いてもよい。
【0053】
導電助剤は、負極の高容量化やハイレート化を達成するために添加される成分である。導電助剤の具体例としては、アセチレンブラックやケッチェンブラック等の高導電性カーボンブラックやグラファイト等のカーボン粉末や炭素繊維やNi粉末、Cu粉末、Ag粉末等の金属粉末などが挙げられる。なかでも、極少量の添加で優れた導電性を発揮する高導電性カーボンブラック、Ni粉末、Cu粉末のいずれかを用いることが好ましい。
【0054】
本発明の負極において、負極活物質含有層における負極活物質の含有量は、質量%で、55〜90%であることが好ましく、60〜88%であることがより好ましく、70〜86%であることが特に好ましい。負極活物質の含有量が少なすぎると、負極活物質層の単位質量当たりの充放電容量が小さくなり、高容量化の達成が困難となる。一方、負極活物質の含有量が多すぎると、負極活物質層中に負極活物質が密に詰まった状態となるため、充放電に伴う体積変化を緩和する隙間が十分に確保できず、サイクル特性が低下する傾向にある。
【0055】
負極活物質含有層における結着剤の含有量は、質量%で、5〜30%であることが好ましく、7〜25%であることがより好ましく、10〜23%であることが特に好ましい。結着剤の含有量が少なすぎると、負極活物質と導電助剤との結着性に欠くため繰り返し充放電した際に、負極活物質が体積変化に伴い負極から剥離しやすくなるため、サイクル特性が低下する傾向にある。一方、結着剤の含有量が多すぎると、負極中の負極活物質と導電助剤、または導電助剤同士の間に結着剤が介在しやすくなるため、負極活物質層の電子伝導性が低下するため、容量が低下し、ハイレート特性が著しく低下する。
【0056】
負極活物質含有層における導電助剤の含有量は、質量%で、3〜20%であることが好ましく、4〜15%であることがより好ましく、5〜13%であることが特に好ましい。導電助剤の含有量が少なすぎると、負極活物質層の電子伝導性が低下するため、容量が低下し、ハイレート特性も著しく低下する。一方、導電助剤の含有量が多すぎると、負極活物質含有層の嵩密度が低下し、結果的に、負極活物質含有層の単位体積あたりの充放電容量が低下する。また、負極活物質含有層の強度も低下する。
【0057】
なお、本発明のナトリウムイオン電池用負極は、例えば、粉末状の負極活物質に結着剤を添加し、これを例えば水や、N−メチルピロリドン等の有機溶剤に懸濁させ、この懸濁物を例えば銅または銅合金からなる金属箔の負極集電体に塗布、乾燥、プレスして帯状にすることにより作製される。
【0058】
負極活物質含有層の厚みは、目的とする容量に応じて適宜調整すればよく、例えば1〜250μmであることが好ましく、2〜200μmであることがより好ましく、3〜150μmであることが特に好ましい。負極活物質含有層の厚みが小さすぎると、負極活物質が凝集しやすくなり、結果的にサイクル特性が低下する傾向にある。一方、負極活物質含有層の厚みが大きすぎると、負極を折り曲げた状態で電池として用いる場合、負極活物質含有層の表面に引張り応力が生じやすくなる。そのため、繰り返し充放電した際に負極活物質の体積変化により亀裂が生じやすくなり、サイクル特性が著しく低下する傾向にある。
【0059】
負極活物質含有層を集電体表面に塗布した後の乾燥方法は特に限定されるものではないが、減圧下または不活性雰囲気下もしくは還元雰囲気下にて乾燥することが好ましい。また、その乾燥温度は、100〜400℃であることが好ましく、120〜380℃であることがより好ましく、140〜360℃であることが特に好ましい。乾燥温度が低すぎると、負極活物質含有層に吸着した水分の除去が不十分となるため、ナトリウムイオン二次電池内部で水分が分解し、酸素の放出によって破裂したり、ナトリウムと水との反応による発熱が原因で発火したりするため、安全性を欠く。一方、乾燥温度が高すぎると、結着剤が分解されやすくなる。結果として、結着性が低下したり、負極活物質が凝集する箇所が部分的に生じたりして、サイクル特性が低下しやすくなる。
【0060】
本発明のナトリウムイオン二次電池は、前記ナトリウムイオン二次電池用負極、正極、及び電解質を含むことを特徴とする。
【0061】
正極は、一般式Na(MはCr,Fe,Mn,Co,及びNiから選択される少なくとも1種以上の元素で、xは1.20≦x≦2.10で、かつyは0.95≦y≦1.60である)で表される結晶を含有する正極活物質を含むことが好ましい。一般式Naで表される結晶を含有する正極活物質は、アルカリイオンの拡散性、構造安定性及びサイクル特性に優れる特徴を有している。また、ナトリウム、遷移金属、およびリン酸を構成元素としているため、製造コストが安価となる。
【0062】
また、本発明のナトリウムイオン二次電池は、負極活物質が、ナノサイズの金属Sn粒子またはナノサイズのSn−Na合金粒子を含むことが好ましい。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0064】
(1)負極活物質の作製
表1、2に示す実施例1〜14の組成となるように、主原料としてスズとリンの複合酸化物(ピロリン酸第一錫:Sn)を用い、各種酸化物、燐酸塩原料、炭酸塩原料、還元剤として金属粉末原料または炭素原料、などで原料粉末を調製した。原料粉末を石英ルツボに投入し、電気炉を用いて窒素雰囲気にて950℃、40分間の溶融を行い、ガラス化した。
【0065】
次いで、溶融ガラスを一対の回転ローラー間に流し出し、急冷しながら成形し、厚み0.1〜2mmのフィルム状のガラスを得た。このフィルム状ガラスを直径20〜30mmのジルコニアボールを入れたボールミルを用いて100rpmで3時間粉砕した後、目開き120μmの樹脂製篩に通過させ、平均粒子径3〜15μmのガラス粗粉末を得た。次いで、このガラス粗粉末を空気分級することで平均粒子径2μmかつ最大粒子径28μmの負極活物質粉末を得た。
【0066】
得られた負極活物質粉末について粉末X線回折測定することにより構造を同定した。実施例1〜14の負極活物質粉末は、非晶質であり、結晶は検出されなかった。
【0067】
(2)負極の作製
実施例1〜11においては、負極活物質粉末に対し、結着剤として熱硬化性ポリイミド(Dreambond、IST社製)、導電助剤として物質名SuperC65(Timcal社製)を、負極活物質粉末:結着剤:導電助剤=80:15:5(質量比)となるように秤量し、これらをN−メチルピロリドン(NMP)に分散させた後、自転・公転ミキサーで十分に撹拌してスラリー化した。次に、隙間が100μmのドクターブレードを用いて、負極集電体である厚さ20μmの銅箔上に、得られたスラリーをコートし、乾燥機にて70℃で減圧乾燥後、一対の回転ローラー間に通してプレスすることにより負極集電体上に負極活物質層が形成された電極シートを得た。電極シートを電極打ち抜き機で直径11mmに打ち抜き、減圧しながら300℃で3時間乾燥させて円形の負極を得た。
【0068】
比較例1〜3においては、表3に記載の負極活物質を使用し、実施例1〜11と同様の方法で負極を作製した。
【0069】
また、実施例12〜14においては、負極活物質粉末に対し、結着剤としてカルボキシメチルセルロース(ダイセル化学工業社製)、導電助剤としてケッチェンブラック(ライオン社製)を、負極活物質粉末:結着剤:導電助剤=80:15:5(質量比)となるように秤量し、これらを純水中に分散させた後、自転・公転ミキサーで十分に撹拌してスラリー化した。次に、隙間が75μmのドクターブレードを用いて、負極集電体である厚さ18μmの銅箔上に、上記のスラリーをコートし、40〜70℃で乾燥後、一対の回転ローラー間に通し、プレスすることにより電極シートを得た。電極シートを電極打ち抜き機で直径11mmに打ち抜き、減圧下140℃にて6時間乾燥させ、円形の負極を得た。
【0070】
(3)試験電池の作製
次に、得られた負極を、銅箔面を下に向けてコインセルの下蓋に載置し、その上に70℃で8時間減圧乾燥した直径16mmのポリプロピレン多孔質膜からなるセパレータ、および、対極である金属ナトリウムを積層し、試験電池を作製した。電解液としては、1M NaPF溶液/EC:DEC=1:1を用いた。なお試験電池の組み立ては露点温度−70℃以下の環境で行った。
【0071】
(4)充放電試験
上記試験電池に対し、30℃で1Vから0VまでCC(定電流)充電(負極活物質へのナトリウムイオン吸蔵)を行い、負極活物質の単位質量中に充電された電気量(充電容量)を求めた。次に、0Vから1VまでCC放電(負極活物質からのナトリウムイオン放出)させ、負極活物質の単位質量中に放電された電気量(放電容量)を求めた。なお、Cレートは0.1Cとした。表2に、充放電特性の結果を示す。なお、放電容量維持率は、初回放電容量に対する25サイクル目の放電容量の割合をいう。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
実施例1〜14の初回放電容量は260mAh/g以上、放電容量維持率は82%以上と、高容量であり、かつサイクル性も良好であった。一方、比較例1、2は、初回放電容量は245mAh/g以下、放電容量維持率は80%以下といずれも低かった。また、比較例3は、初回放電容量は495mAh/g以下と高容量であったが、放電容量維持率は5%と低かった。
【0076】
(5)ナトリウムイオン二次電池の作製
(正極の作製)
組成がNaFePとなるように、各種酸化物、燐酸塩原料、炭酸塩原料、などで原料粉末を調製した。原料粉末を石英ルツボに投入し、電気炉を用いて窒素雰囲気にて1200℃、40分間の溶融を行い、ガラス化した。
【0077】
次いで、溶融ガラスを一対の回転ローラー間に流し出し、急冷しながら成形し、厚み0.1〜2mmのフィルム状の溶融固化体を得た。このフィルム状ガラスを直径20〜30mmのジルコニアボールを入れたボールミルを用いて100rpmで3時間粉砕した後、目開き120μmの樹脂製篩に通過させ、平均粒子径3〜15μmの粗粉末を得た。次いで、この粗粉末を空気分級することで平均粒子径3μmかつ最大粒子径28μmの溶融固化体粉末を得た。この粒末に10wt%のアスコルビン酸を添加して、混合した。その後、5%水素‐95%アルゴン雰囲気中、3時間、及び650℃の条件で加熱することで、正極活物質粉末を得た。
【0078】
正極活物質粉末に対し、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電助剤として物質名SuperC65(Timcal社製)を、正極活物質粉末:結着剤:導電助剤=85:5:10(質量比)となるように秤量し、これらをN−メチルピロリドン(NMP)に分散させた後、自転・公転ミキサーで十分に撹拌してスラリー化した。次に、隙間が100μmのドクターブレードを用いて、正極集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔上に、得られたスラリーをコートし、乾燥機にて70℃で減圧乾燥後、一対の回転ローラー間に通してプレスすることにより電極シートを得た。電極シートを電極打ち抜き機で直径11mmに打ち抜き、減圧しながら160℃で6時間乾燥させて円形の正極を得た。
【0079】
(電池の作製)
次に、得られた正極を、アルミニウム箔面を下に向けてコインセルの下蓋に載置し、その上に70℃で8時間減圧乾燥した直径16mmのポリプロピレン多孔質膜からなるセパレータ、および、実施例2の負極に予め電気化学的に100mAh/g(負極活物質単位重量あたり)を充電させた負極を積層し、ナトリウムイオン二次電池を作製した。電解液としては、1M NaPF溶液/EC:DEC=1:1を用いた。なおナトリウムイオン二次電池の組み立ては露点温度−70℃以下の環境で行った。
【0080】
(6)充放電試験
上記ナトリウムイオン二次電池に対し、25℃で1.8Vから4.0VまでCC(定電流)充電(負極活物質へのナトリウムイオン吸蔵/正極活物質からのナトリウムイオン放出)を行い、正極活物質の単位重量中に充電された電気量(充電容量)を求めた。次に、4.0Vから1.8VまでCC放電(負極活物質からのナトリウムイオン放出/正極活物質へのナトリウムイオン吸蔵)させ、正極活物質の単位重量中に放電された電気量(放電容量)を求めた。なお、Cレートは0.2とした。
【0081】
上記ナトリウムイオン二次電池の初回放電容量は87mAh/g(正極活物質単位重量あたり)、放電容量維持率は99%以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のナトリウムイオン二次電池用負極活物質は、携帯型電子機器、電気自動車等に用いられるナトリウムイオン二次電池用負極活物質として好適である。