(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記浮体が前記接触材の鉛直下方に位置したときに、該浮体と、該浮体の周囲の液体とが接して該液体に剪断力を生じさせる剪断装置を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の浮遊物除去装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
(浮遊物除去装置100)
図1は、浮遊物除去装置100を説明するための説明図である。特に、
図1(a)は、浮遊物除去装置100を設置した水槽Tの上面図であり、
図1(b)は、浮遊物除去装置100を設置した水槽Tの側面図であり、
図1(c)は、浮遊物除去装置100に用いられる浮体110の斜視図である。なお、
図1(a)における上下方向を幅方向、左右方向を奥行方向とし、前後方向を高さ方向とする。また、
図1(c)中、
図1(a)、(b)の方向に合わせ、幅方向、奥行方向(厚み方向)、高さ方向を図示の通り定義する。
【0017】
図1(a)、(b)に示すように、浮遊物除去装置100は水槽Tに設けられ、浮体110と、ワイヤ120と、巻き取り装置130と、円柱体140と、撹拌装置150と、を含んで構成される。
【0018】
図1(b)、(c)に示すように、浮体110は、比重が1より小さい本体112と、比重が1より大きい錘114とを含んで構成され、全体的な比重が1より小さいことで液体に浮かぶ。本体112は、矩形の板状部材であり、
図1(c)中下方に錘114が固定される。液中において錘114が沈降することで、本体112の側面112aおよび側面112bが液面と略垂直な位置関係となる。
【0019】
図1(a)、(b)に示すように、本実施形態の浮遊物除去装置100では例えば4つの浮体110を使用する。4つの浮体110は、それぞれ側面112aと側面112bとが対向するよう水槽Tの奥行方向の一端Ta側に配列される。ここで、4つの浮体110をそれぞれ、水槽Tの一端Ta側から、浮体110a、浮体110b、浮体110c、浮体110dと定義する。浮体110aには4本のワイヤ120が連結(固定)され、浮体110b、110c、110dはそれぞれ2本のワイヤ120が連結(固定)される。
図1(a)中、浮体110とワイヤ120との連結部分を黒丸で示す。
【0020】
ワイヤ(牽引部材)120は、
図1(b)に示すように、一端側が浮体110に連結され、他端側が後述する円柱体140の下方を通って巻き取り装置130の巻き取りドラムに連結され、水槽Tの奥行方向に張架される。また、ワイヤ120は、浮体110に対し、浮体110の高さ方向における鉛直上方、すなわち、錘114が設けられた側と反対側に連結されている。ワイヤ120の素材は、可撓性を有し、水や直射日光に頻繁に曝されても腐敗や劣化しにくい素材が好ましく、例えばポリプロピレンが安価であるため好ましい。
【0021】
図1(a)に示すように、ワイヤ120は、利用される契機に応じてワイヤ120aとワイヤ120bとに分けることができる。ワイヤ120aは全ての浮体110(浮体110a、110b、110c、110d)に所定の間隔を空けて連結され、ワイヤ120bは浮体110aのみに連結される。
【0022】
巻き取り装置(巻き取り機構)130は、ワイヤ120を巻き取る装置であり、水槽Tの奥行方向において、浮体110が位置する側(一端Ta側)の反対側(他端Tb側)における水槽Tの外部に設けられている。本実施形態では4つの巻き取り装置130を用い、4つの巻き取り装置130はそれぞれワイヤ120と連結される。巻き取り装置130の巻き取りドラムは、不図示のモータに回転自在に軸支されており、モータが駆動されることでワイヤ120の巻き取りを行い、ワイヤ120に連結された浮体110を移動させる。
【0023】
また、巻き取り装置130は、連結するワイヤ120の種類によって、巻き取り装置130aと巻き取り装置130bとに分けられる。巻き取り装置130aはワイヤ120aと連結され、巻き取り装置130bはワイヤ120bと連結される。本実施形態では、巻き取り装置130a、130bはそれぞれ2つ設けられている。ここで、巻き取り装置130は、巻き取り装置130a、130bを牽引する第1モード、すなわち全ての浮体110を直接牽引するモードと、巻き取り装置130aのみを牽引するモード、すなわち浮体110aを直接牽引することで浮体110b、110c、110dを間接的に牽引する第2モードの2つを有し、スイッチ等により変更することができる。
【0024】
円柱体(接触材)140は、円柱状の部材であり、軸方向を水槽Tの幅方向と一致させた状態で水槽Tの液面と交差するように設けられ、下部側が液中に位置している。また、円柱体140は、水槽Tの奥行方向において中心より他端Tb側に位置し、支持部材142によって回転自在に固定されている。円柱体140は浮体110の進路上に設けられ、下部側が液中に位置しているため、例えば、浮体110が円柱体140の下方に位置すると、浮体110が液中に沈降されることとなる。つまり、円柱体140によって浮体110は液面より鉛直下方に誘導される。
【0025】
撹拌装置(剪断装置)150は、
図1(b)に示すように、円柱体140の鉛直下方における水槽Tの底部に設けられる。撹拌装置150としては、例えばプロペラ機構を使用し、プロペラを回動させることで液体を撹拌し、円柱体140の鉛直下方領域の液体に水流をつくる。そして、浮体110が円柱体140の鉛直下方領域の液体と接したとき、浮体110の側面112aおよび側面112bに水流が当たり、剪断力が生じることとなる。なお、剪断装置として撹拌装置150を挙げて説明したが、水槽Tの底部から気体を送出する曝気装置を使用してもよい。
【0026】
次に、浮遊物除去装置100によって浮遊物を掻き取り、分散させる手順を説明する。
図2は、浮遊物除去装置100によって浮遊物を掻き取る手順を説明するための説明図である。特に、
図2(a)は、浮体110の移動開始状態を示す上面図であり、
図2(b)は、浮体110の沈降状態を示す側面図であり、
図2(c)は、浮体110の再浮上状態を示す上面図であり、
図2(d)は、浮体110の集合状態を示す上面図であり、
図2(a)、(b)、(c)、(d)の順に処理が遂行される。
【0027】
図2(a)に示すように、モータの第1モードにより巻き取り装置130a、130bが駆動し、巻き取り装置130a、130bでワイヤ120a、120bの巻き取りを開始すると、浮体110a、110b、110c、110dが水槽Tの奥行方向における一端(以下、「開始端」と称する。)Ta側から水槽Tの奥行方向における他端(以下、「終了端」と称する。)Tb側へ移動する(移動開始状態)。
【0028】
上述したように、浮体110a、110b、110c、110dは錘114により一部が液中に位置した状態で浮かんでおり、側面112aは液面に対して略垂直となっている。浮体110a、110b、110c、110dの側面112aが液面に対して略垂直に位置したまま移動することで、液面に浮遊するスカム等の浮遊物を、側面112a近傍の液面に寄せ集めることが可能となる。
【0029】
そして、浮体110a、110b、110c、110dが移動を続けると、円柱体140と接触することとなる。上述したように、円柱体140は支持部材142により水槽Tの奥行方向への移動が制限され、下部側が液中に位置している。また、上述したように、ワイヤ120a、120bは円柱体140の下方を通って巻き取り装置130a、130bと連結されている。このため、浮体110a、110b、110c、110dが円柱体140と接触した後、さらにワイヤ120a、120bに牽引されると、
図2(b)に示すように、円柱体140の下方を移動し、一時的に液中へ沈む(沈降状態)。そして、浮体110a、110b、110c、110dは、円柱体140よりも終了端Tb側へ移動すると、再び浮上する。具体的に、
図2(b)において、浮体110a、110bは円柱体140と接触前であり、側面112a近傍の液面に浮遊物を蓄積している状態であり、浮体110cは液中に沈降し、浮遊物が液中へ分散されている状態であり、浮体110dは液中への沈降が終了し(浮遊物の液中への分散が終了し)、再び浮上している状態を示す。
【0030】
浮体110a、110b、110c、110dが円柱体140と接触して液中に沈降すると、浮体110a、110b、110c、110dによって寄せ集められた浮遊物は、浮体110a、110b、110c、110dとともに液中へ沈む。また、上述したように、円柱体140の鉛直下方の水槽Tの底部には、撹拌装置150が設けられている。撹拌装置150により液体が撹拌されると、円柱体140の鉛直下方の領域とその周辺の液体に水流が生じる。そして、浮体110a、110b、110c、110dの側面112aおよび側面112bに水流が接触すると、剪断力が生じることとなる。その結果、液中へ沈んだ浮遊物の液中への分散を促進することが可能となり、水槽Tの液面への浮遊物の蓄積を低減することができる。
【0031】
また、このとき、円柱体140は支持部材142によって回転自在に固定されているので、浮体110が円柱体140と接触した後、円柱体140が回転し、浮体110を終了端Tb側へスムーズに移動させることができる。
【0032】
そして、
図2(c)に示すように、全ての浮体110a、110b、110c、110dが円柱体140よりも終了端Tb側に位置して再浮上すると、モータの第1モードでの駆動が終了する(再浮上状態)。
【0033】
最後に、
図2(d)に示すように、モータを第1モードから第2モードに変更して巻き取り装置130bを駆動し、巻き取り装置130bに連結され、浮体110aとのみ連結したワイヤ120bを巻き取る。浮体110aは、浮体110の中で最も開始端Ta側に位置することから、浮体110aが終了端Tb側へ移動することで、浮体110aが、隣り合う浮体110bと接触し、浮体110b、110c、110dを終了端Tb側に移動させることとなり、浮体110a、110b、110c、110dは終了端Tb側に重なった状態で集合する(集合状態)。
【0034】
図示はしていないが、浮体110を開始端Ta側へ移動させる必要がある場合は、開始端Ta側に別途巻き取り装置を設け、開始端Ta側の巻き取り装置の巻き取りドラムと連結されるワイヤを浮体110に連結する。そして、開始端Ta側の巻き取り装置を駆動し、開始端Ta側の巻き取り装置に連結されたワイヤを巻き取ることで、浮体110を開始端Ta側へ牽引する。
【0035】
以上、本実施形態にかかる浮遊物除去装置100によれば、簡易な構成で浮遊物を掻き取り、液中に分散させることが可能となる。
【0036】
(変形例)
次に、浮遊物除去装置100の変形例について説明する。
図3は変形例にかかる浮遊物除去装置100における浮体210およびワイヤ220の斜視図である。なお、
図3中、
図1(c)に合わせて、幅方向、厚み方向、高さ方向を図示の通り定義する。
【0037】
浮体210は、本体212と、錘114とを含んで構成される。本体212の高さ方向の一端側に錘114が固定され、本体112の高さ方向において錘114が固定された側と反対側かつ幅方向両端部には、本体212の厚み方向に貫通した円形の孔である孔212aが1つずつ形成されている。本実施形態では4つの浮体210を使用する。4つの浮体210は、開始端Ta側から浮体210a、浮体210b、浮体210c、浮体210dとする。
【0038】
ワイヤ220は、一端が浮体210の本体212における高さ方向における他端に連結され、ワイヤ220の他端が不図示の巻き取り装置130に連結される。本実施形態では、1つの浮体210に2本のワイヤ220が連結される。
【0039】
水槽Tに浮体210を設けた場合、浮体210は、浮体210の側面112aと側面112bとを隣り合わせて配置され、浮体210と連結したワイヤ220は、当該浮体210よりも終了端Tb側に配される浮体210における本体212の孔212aを通って巻き取り装置130と連結される。このため、水槽Tにおいて、最も開始端Ta側に位置する浮体210aの孔212aにワイヤ220は通らず、浮体210bの孔212aには浮体210aに連結されたワイヤ220が通り、浮体210cの孔212aには浮体210a、210bに連結されたワイヤ220が通り、浮体210dの孔212aには浮体210a、210b、210cに連結されたワイヤ220が通ることとなる。したがって、それぞれの浮体210a、210b、210c、210dに連結された2本のワイヤ220を巻き取り装置130により巻き取ることで、浮体210を1つずつ独立して移動させることができる。
【0040】
このため、浮遊物除去装置100では、移動開始状態から集合状態に亘って全ての巻き取り装置130を駆動させることで、浮体210a、210b、210c、210dを終了端Tb側へ集合させる。また、再浮上状態において、最も開始端Ta側の浮体210aと連結したワイヤ220を巻き取る巻き取り装置130のみを駆動させることで、浮体210a、210b、210c、210dを終了端Tb側へ集合させてもよい。
【0041】
かかる変形例の浮遊物除去装置100においても、簡易な構成で浮遊物を掻き取り、液中に分散させることが可能となる。
【0042】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0043】
例えば、上記実施形態において、浮体110、210をそれぞれ4つ用いたが、浮体110、210は少なくとも1つあればよい。
【0044】
また、錘114は、液中において錘114が鉛直下方に沈降することで、浮体110、210が液面と交差し、液面と垂直な面を形成すれば、錘114の形状は制限されない。
【0045】
また、上記実施形態において、ワイヤ120、220を、浮体110、210の高さ方向における錘114が設けられた側と反対側(他端側)に設けたが、錘114が設けられた側(一端側)に設けてもよい。この場合、浮体110、210が円柱体140と接触し、さらにワイヤ120、220により牽引されると、浮体110、210の高さ方向におけるワイヤ120、220が設けられた側(一端側)が、錘114が設けられた側(他端側)よりも終了端Tb側に位置して傾き、略水平となる。その結果、浮体110、210の側面112aに撹拌装置150によって生じた水流が当たり、剪断力が生じることとなる。
【0046】
また、上記実施形態において、ワイヤ120、220の巻き取り機構としてモータにより駆動する巻き取り装置130を用いているが、エンジンにより駆動する巻き取り装置を用いてもよいし、手動によりワイヤ120、220を巻き取ってもよい。
【0047】
また、上記実施形態において、接触材として円柱体140を1つ設けるとしたが、複数の円柱体140を略平行に並列させて設けてもよい。また、接触材は円柱状でなくてもよいし、回転自在に固定されていなくてもよい。
【0048】
また、上記実施形態において、撹拌装置150を設けたが、撹拌装置150は浮遊物の分散を促進させるための装置であるため、必須な構成ではない。