(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転する被クリーニング体に付着したトナーを前記被クリーニング体に当接させたクリーニングブレードにより除去するクリーニング装置について、前記被クリーニング体の回転方向における前記クリーニングブレードの傾きを測定する測定手段と、
前記測定された傾きが予め定めた閾値より大きい場合に、前記閾値より大きくなった時点を含む期間において前記測定された傾きの波形パターンと予め定めた波形パターンとの類似度が基準値以上であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果を示す情報を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とするクリーニングブレード状態判定装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
まず、本発明に係るクリーニングブレード状態判定装置が設けられる画像形成装置について説明する。画像形成装置は、紙などの記録材に画像を形成する機能を備えた装置であり、例えば、複写機、プリンタ装置、ファクシミリ装置、これらの機能を併せもった複合機などが知られている。
【0016】
図1には、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部構造の例を示してある。
図示の画像形成装置は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式であり、代表的な機能部として、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kと、各画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部21と、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー画像を用紙P(記録材の一例)に一括転写(二次転写)させる二次転写部22と、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着器34と、を備えている。
【0017】
画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kの各々は、図中の矢印A方向に回転する感光体ドラム11を有する。また、各感光体ドラム11の周囲には、感光体ドラム11を帯電する帯電器12、感光体ドラム11上に露光ビームBmを照射して静電潜像を書き込む露光器13、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化したトナー像を形成する現像器14、感光体ドラム11上に形成された各色成分のトナー像を一次転写部21にて中間転写ベルト15に重畳転写する一次転写ロール16、といった各種の電子写真用デバイスが順次配設されている。
これらの画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に、略直線状に配置されており、中間転写ベルト15に対して接離可能に構成されている。
【0018】
また、図示の画像形成装置は、用紙搬送系として、用紙収容部から用紙Pを取り出して二次転写部22へと送り込む給紙動作を行う給紙機構部31と、二次転写部22を通過した用紙Pを定着器34側へと搬送する搬送ベルト32と、用紙Pを定着器34の入口へガイドする定着入口ガイド33と、定着器34から排紙された用紙Pを下流側へガイドする排紙ガイド35と、排紙ガイド35によりガイドされた用紙Pを装置外部に排出する排紙ロール36と、を備えている。
【0019】
すなわち、給紙機構部31により用紙収容部から二次転写部22へと給紙された用紙Pは、二次転写部22にて中間転写ベルト15上のトナー像が静電転写された後、中間転写ベルト15から剥離された状態で搬送ベルト32へと搬送される。そして、搬送ベルト32により、定着器34の動作速度に合わせて、定着入口ガイド33を介して定着器34まで搬送される。定着器34に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着器34によって熱及び圧力を加える定着処理を受けることで用紙P上に定着される。その後、定着画像が形成された用紙Pは、排紙ガイド35及び排紙ロール36を介して、装置外部に設けられた排紙収容部(図示せず)へと搬送される。
【0020】
ここで、感光体ドラム11や中間転写ベルト15といったトナー像担持体は、その表面に残留しているトナーを除去する必要がある被クリーニング体である。このため、感光体ドラム11や中間転写ベルト15に対してクリーニング装置が配設される。
また、二次転写部22にて中間転写ベルト15に対向して設けられる二次転写バイアスロール23は、通常ではトナーの付着は無いが、まれにトナーが付着することがあり、付着したトナーが汚れとなって画質欠陥を引き起こす可能性がある。そこで、二次転写バイアスロール23も被クリーニング体として扱う。つまり、二次転写バイアスロール23に対してもクリーニング装置が配設される。
【0021】
図示の例では、クリーニング装置として、感光体ドラム11上の残留トナーを除去するドラムクリーナ17が一次転写部21の下流側に配設されており、中間転写ベルト15上の残留トナーを除去するベルトクリーナ18が二次転写部22の下流側に配設されており、二次転写バイアスロール23上の付着トナーを除去するロールクリーナ24が二次転写部22の下流側に配設されている。
【0022】
図2には、クリーニング装置の外観の例を示してあり、
図3には、クリーニング装置の内部の概略的な構造の例を示してある。
クリーニング装置40は、被クリーニング体46に臨む開口が形成された箱型の筐体41を有し、樹脂製(例えば、ウレタンゴムやポリウレタンゴム等の硬質ゴム製)の板状のクリーニングブレード42を、そのエッジ部が筐体41の開口部で被クリーニング体46に当接するように設けてある。クリーニングブレード42は、ブレード面が水平又はそれに近い方向となる配置で、金属製の板材よりなるブレード支持部材43により支持されている。被クリーニング体46の表面に付着しているトナーは、当該表面に当接された(突き当てられた)クリーニングブレード42のエッジ部により掻き落とされて筐体41の内部空間(廃トナー受け)に落下し、廃トナー搬出装置44により筐体外のトナー回収機構へ搬出される。
【0023】
クリーニングブレード42は樹脂製の板材であり、被クリーニング体46のクリーニング(トナー除去)によって摩耗や損傷が生じ、次第に劣化していく。そして、クリーニングブレード42の劣化が進行していくと、異音や画像欠陥といった異常が発生する懸念がある。このような異常の発生は画像形成装置の利用者に不便をかけることになるので、クリーニングブレード42の劣化状態を適切に判定して異常の防止や速やかな解消を図ることが、顧客満足度を高める上で重要となる。
【0024】
クリーニングブレード42の劣化状態を判定する手法として、クリーニングブレード42の振動から判定する手法がある。これは、回転する被クリーニング体46とその表面に当接させた(突き当てた)クリーニングブレード42のエッジ部との摩擦によりクリーニングブレード42に発生する振動が、クリーニングブレード42の劣化に伴って増大することに着目したものであり、クリーニングブレード42又はブレード支持部材43に振動センサーを設けておき、振動センサーによる振動の測定結果に基づいてクリーニングブレード42の劣化状態の判定を行う。
【0025】
ここで、画像形成装置に生じる異常として筋状の色線欠陥があるが、その原因の一つとして、クリーニングブレード42のエッジ部の破損が挙げられる。すなわち、クリーニングブレード42の破損箇所で除去できずに残存したトナーにより、当該破損箇所に沿った筋状の色線欠陥が発生する。
クリーニングブレード42のエッジ部の破損は、クリーニングブレード42が被クリーニング体46の回転方向に大きく変位するブレード変位現象に起因して生ずることが多い。このブレード変位現象は、例えば、被クリーニング体46とクリーニングブレード42との間の潤滑剤としても作用するトナーが不足している状況において、被クリーニング体46の回転にクリーニングブレード42が引き摺られることによって発生することが多い。また、例えば、被クリーニング体46に大量のトナーが残留している状況において、この大量のトナーによりクリーニングブレード42が持ち上がってしまうことによって発生する。
【0026】
また、近年では、トナーが微小化して球形に近づいていることにより被クリーニング体46への付着力が増しており、被クリーニング体46からトナーを除去するにはクリーニングブレード42を被クリーニング体46にきつく当てる必要があることに起因して、クリーニングブレード42が被クリーニング体46に引き摺られる等してブレード変位現象が多く発生するようになっている。
【0027】
ブレード変位現象は周期性に乏しいため、その発生の有無を振動センサーによる振動の測定結果から判断することは難しく、振動の測定結果をフーリエ変換したとしてもブレード変位現象の成分は表れにくい。更に、最悪の場合は、クリーニングブレード42が被クリーニング体46に引きずられたまま固定されるため、その状態を振動の測定結果に基づいて検出すること自体が不可能となる。
【0028】
また、対象物の変位及び振動を測定する手法として、高速で繰り返し測定が可能な変位計(渦電流式や光学式)を用いて、まず、対象物の変位を測定し、その後、変位のデータを数値的に微分して振動のデータを得る方法が知られているが、測定子、電源、データ処理部が高価かつ大型であるため、画像形成装置のクリーニングブレード42の変位測定に使用するには不向きである。
【0029】
そこで、本例では、被クリーニング体46の回転方向におけるクリーニングブレード42の傾きを測定する傾き測定器45を設けておき、クリーニングブレード42の傾きを測定することで、ブレード変位現象の発生の検出を行うようにした。つまり、クリーニングブレード42の傾きとクリーニングブレード42の変位量とが比例関係にあることを利用して、クリーニングブレード42の傾きからクリーニングブレード42の変位量を求め、ブレード変位現象の発生の検出を行う。
クリーニングブレード42の傾きとは、クリーニングブレード42が基準位置にある状態(変位が無い状態)に対する傾斜量(角度)のことを言う。
【0030】
ここで、本例では、クリーニングブレード42の傾きの変化が、クリーニングブレード42を支持するブレード支持部材43に伝達することを利用して、ブレード支持部材43に傾き測定器45を設けた構造となっている。なお、クリーニングブレード42自体に傾き測定器45を設けてもよいが、クリーニングブレード42は必要に応じて適宜交換される部品であるため、コスト面から見るとブレード支持部材43側に傾き測定器45を設けることが好ましい。
【0031】
傾き測定器45としては、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いた加速度センサーを用いることができる。MEMSの加速度センサーには、静電容量検出方式、ピエゾ抵抗方式、熱検知方式などの種々の方式のものがある。
【0032】
静電容量検出方式は、
図4に概略的な構造の例を示すように、センサー素子可動部51と固定部52の間の静電容量(図中のC1とC2の静電容量)の変化を測定して加速度の検出を行う方式である。静電容量はセンサー素子可動部51の位置に比例するため、傾きと振動の両方を測定できる。センサー素子部はSiやガラスなどの安定した物質で構成されるという特徴を持つ。安定した物質で構成されるので、特に温度特性に優れている。
【0033】
ピエゾ抵抗方式は、センサー素子可動部と固定部をつなぐバネ部分に配置したピエゾ抵抗素子により、加速度によってバネ部分に発生した歪を測定して加速度の検出を行う方式である。比較的構造が単純で素子からの出力が大きいという特徴を持つ。温度特性の直線性や感度の直線性がやや劣り、共振周波数が低い場合は外部振動による影響が出る場合もある。
【0034】
熱検知方式は、ヒーターにより筐体内に熱気流を発生させ、加速度による対流の変化を熱抵抗等で測定して加速度の検出を行う方式である。可動部を持たないので衝撃に強く、また、パッケージ容積と特性がトレードオフの関係にあるという特徴を持つ。常温ノイズは比較的低いが、感度の温度特性が低く、測定周波数帯域が数十Hzと狭い。
【0035】
本例では、傾き測定器45として静電容量検出方式の加速度センサーを用いており、以下では、適宜、加速度センサー45と記すこととする。
図5には、加速度センサー45による測定波形の例を示してある。
図5(a)〜(c)の各グラフにおいて、横軸は時間経過を表し、縦軸は測定結果の加速度を表す。
加速度センサー45から測定結果として出力される電気信号は、クリーニングブレード42と被クリーニング体46との摩擦による振動に基づく動的な加速度変化(高周波成分)と、クリーニングブレード42の変位に基づく静的な加速度変化(直流的なドリフト成分)とを合成した信号波形となっている。
図5(a)にはこの合成信号波形の例を示してあり、これを分離すれば、同図(b)に示す高周波成分と、同図(c)に示す直流的なドリフト成分を得ることができる。直流的なドリフト成分は、クリーニングブレード42の傾き(すなわち、変位量)を表すため、その値を閾値と比較すれば、クリーニングブレード42が大きく変位した状態にあるか否かを判定することができる。
【0036】
合成信号を高周波成分と直流的なドリフト成分に分ける方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、加速度センサーからの電気信号を2つに分け、フィルタリングすることで高周波成分と直流的なドリフト成分に分ける方法や、加速度センサーからの電気信号をデジタル化した後、演算装置でローパスフィルタ、ハイパスフィルタを用いてフィルタリングすることで高周波成分と直流的なドリフト成分に分ける方法などが挙げられる。
【0037】
ここで、本例では、加速度センサー45の感度軸(加速度に対する感度が最も大きい軸)をクリーニングブレード42の傾きの方向に対応させて配置している。すなわち、クリーニングブレード42の傾きと平行(或いはほぼ平行)になるように感度軸を合わせて加速度センサーを配置している。本例のクリーニングブレード42は、ブレード面が水平又はそれに近い方向となる配置であるため、加速度センサーの感度軸も同様な方向となる。
【0038】
このように、クリーニングブレード42の傾きの方向に感度軸を対応させると、クリーニングブレード42の振動(上下動)が殆んど検知されず、クリーニングブレード42の傾き方向の変位に相当する直流的なドリフト成分が強調して測定される。また、水平方向の感度軸は、垂直方向の感度軸に比べて傾き(角度)の変化を感度良く検出できるというメリットもある。これは、垂直方向の感度軸の場合には重力が掛かり続けるため、傾きの変化を捉えにくいためである。
なお、2つ以上の感度軸(例えば、互いに直交する2つの感度軸)を持つ加速度センサーを用いる場合には、そのうちの1つの感度軸がクリーニングブレード42の傾きの方向に対応するように配置すればよい。
【0039】
図6には、加速度センサー45による測定結果を利用してクリーニングブレード42の状態を判定するクリーニングブレード状態判定装置の機能ブロックの例を示してある。
図示のクリーニングブレード状態判定装置60は、取得部61と、判定部62と、出力部63と、を備えている。
【0040】
取得部61は、加速度センサー45の出力信号からクリーニングブレード42の傾きを示す信号成分(直流的なドリフト成分)を取得する。
判定部62は、取得部61により取得された直流的なドリフト成分を予め定めた閾値と比較して、閾値より大きいか否かを判定する。
出力部63は、取得部61により取得された直流的なドリフト成分が閾値より大きいと判定されたことに応じて、その旨を示す情報を出力する。
すなわち、本例のクリーニングブレード状態判定装置60では、加速度センサー45の出力信号から取得したクリーニングブレード42の傾きを示す信号成分が閾値より大きい場合に、ブレード変位現象が発生している(筋状の色線欠陥が発生する予兆がある)と判断する。
【0041】
なお、本例の判定部62では、クリーニングブレード42の傾きを示す信号成分が閾値より大きいか否かを判定するが、更に、閾値より大きくなった時点を含む期間について波形パターンを更に調べるようにしてもよい。すなわち、例えば、過去実績や試験結果に基づいて、クリーニングブレード42が破損に至る前の期間に現れ易い波形パターンを想定しておき、閾値より大きくなった時点を含む期間について取得した波形パターンと予め想定した波形パターンとを比較して類似度を算出し、類似度が基準値以上となった場合に、近い将来にクリーニングブレード42の破損が生じる可能性があると判定するようにしてもよい。
【0042】
また、本例の出力部63では、判定部62による判定結果を示す情報を画像形成装置の表示装置(例えば、操作パネル)に出力し、画像形成装置の利用者に知らせるようにしているが、印刷出力や音声出力等の他の態様により出力を行ってもよい。また、例えば、画像形成装置と通信接続された管理センタ側のコンピュータに送信し、当該コンピュータの表示装置に出力させて保守の担当者やその指示者などに知らせ、適切な処置(クリーニングブレード42の交換)を取らせるようにしてもよい。
【0043】
次に、クリーニングブレード42の傾きを測定する加速度センサー45の取り付け構造の変形例について、
図7を参照して説明する。
図7の例では、加速度センサー45を、被クリーニング体46の回転方向におけるクリーニングブレード42の変位を増幅する冶具47を介して取り付けてある。
本例の冶具47は、クリーニング装置の筐体41に固定された固定部材47aと、固定部47aに取り付けられた可動部材47bを有する。固定部材47aは、ブレード支持部材43の上側に張り出した形状であり、張り出しの先端部に軸受47cを有する。可動部材47bは、固定部材47aに対して軸受47cを介して回転可能に取り付けてあり、ブレード支持部材43に対して或る程度の傾斜を持たせつつ、一方の端部がブレード支持部材43に接触するように付勢してある。
【0044】
クリーニングブレード42からブレード支持部材43に伝達された振動(上下動)は、軸受47cを支点とした可動部材47bの回転運動に変換される。可動部材47bの他方の端部側には加速度センサー45を設けてあり、支点(軸受47c)からブレード支持部材43の接触点までの距離より、支点から加速度センサー45までの距離が長くなるようにしてある。
このような構成により、被クリーニング体46の回転方向におけるクリーニングブレード42の変位が増幅させることができ、加速度センサー45による傾きの検出精度を高めることができる。
【0045】
クリーニングブレード42の振動によるブレード支持部材43の上下動は、数μm以下の微小な変位であるが、クリーニングブレード42が被クリーニング体46に引き摺られることによる変位は、時として100μmを超える大きなものとなる。ここで、支点から検知点(ブレード支持部材43の接触点)までの距離が5mmの場合、50μmの上下動は0.5°の傾き変化に変換することができ、安価なMEMSの加速度センサーで十分に検出することができる。
【0046】
次に、上記の変形例による実験結果について説明する。
ここで、加速度センサー45として、アナログデバイセズ社の加速度センサー(ADXL103)を、
図7に示した冶具47に取り付けて実験した。固定部材47aは、1mm×1mmの底面積を有するプラスチック製の支柱であり、可動部材47bは、厚さ0.1mmのステンレス製である。
本実験では、A3用紙上へハーフトーン画像を印刷する処理を繰り返しながらクリーニングブレード42の傾きを測定した。
【0047】
図8には、本実験で得られたクリーニングブレード42の傾き成分(加速度センサー45の出力信号における直流的なドリフト成分)の波形の例を示してある。
図8(a)、(b)の各グラフにおいて、横軸は時間経過を表し、縦軸は測定結果の加速度を表す。
図8(a)は、印刷枚数が10枚目付近の波形を示したものであり、比較的安定した波形となっている。しかしながら、1,500,000枚目付近で直流的なドリフト成分に明瞭なピーク(特徴的信号)が見られるようになり、1,700,000枚目付近で筋状の色線欠陥が発生した。
図8(b)は、印刷枚数が1,700,000枚目付近の波形を示したものであり、特徴的信号が繰り返して発生しており、ブレード変位現象が頻発していることがわかる。
【0048】
同様の実験を更に9回繰り返し、その結果をまとめた表を
図9に示す。
同図では、実験番号で識別される実験毎に、特徴的信号の発生時の印刷枚数と、画質欠陥(筋状の色線欠陥)の発生時の印刷枚数を示してある。
4回の実験では、2,700,000枚目まで印刷を繰り返した結果、画質欠陥の発生が無く、特徴的信号の発生も無かった。一方、他の6回の実験では、特徴的信号が発生した後に更に印刷を繰り返したところ、画質欠陥が発生した。
このように、加速度センサー45の出力信号における直流的なドリフト成分を監視し、特徴的信号(ブレード変位現象)の発生を検知することで、クリーニングブレード42の破損による筋状の色線欠陥が発生する予兆を検出できることが分かる。
【0049】
ここで、本例の画像形成装置には、各種演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)、CPUの作業領域となるRAM(Random Access Memory)や基本的な制御プログラムなどを記録したROM(Read Only Memory)等の主記憶装置、各種のプログラムやデータを記憶するHDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置、各種の情報を表示出力するための表示装置及び操作者により入力操作に用いられる操作ボタンやタッチパネル等の入力機器とのインタフェースである入出力I/F、他の装置との間で有線又は無線により通信を行うインタフェースである通信I/F、といったハードウェア資源を備えたコンピュータが設けられている。
【0050】
そして、本発明に係るプログラムを補助記憶装置等から読み出してRAMに展開し、これをCPUにより実行させることで、本発明に係るクリーニングブレード状態判定装置の機能を画像形成装置のコンピュータ上に実現している。
なお、本例では、本発明に係る取得機能を取得部61により実現し、本発明に係る判定機能(判定手段の機能)を判定部62により実現し、本発明に係る出力機能(出力手段の機能)を出力部63により実現している。
【0051】
ここで、本発明に係るプログラムは、例えば、当該プログラムを記憶したCD−ROM等の外部記憶媒体から読み込む形式や、通信網等を介して受信する形式などにより、画像形成装置のコンピュータに設定される。
なお、本例のようなソフトウェア構成により各機能部を実現する態様に限られず、各機能部を専用のハードウェアモジュールで実現するようにしてもよい。
【0052】
また、上記の説明では、画像形成装置自身がブレード変位現象の発生の検出等を行う構成について説明したが、画像形成装置と通信可能に接続された他の装置がブレード変位現象の発生の検出等を行う構成としてもよい。すなわち、例えば、複数の画像形成装置と通信可能に接続された管理サーバを備えたシステムを構築し、当該管理サーバが、各々の画像形成装置から加速度センサー45の出力信号(又は、これに含まれる直流的なドリフト成分の信号)を受信して、画像形成装置毎にブレード変位現象の発生の検出等を行うようにしてもよい。