(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜11のいずれか1項に記載の積層シートを2枚以上用意し、第1積層シートの熱融着フィルムと、第2積層シートの熱融着フィルムとを重ね合わせる合わせ工程と、
前記合わせ工程により重ね合わせた部分を加熱して、前記第1積層シートと前記第2積層シートとを熱溶着する接合工程とを含むことを特徴とする積層シートの接合方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
透湿防水性キャッピングシートは、透湿防水性を備える樹脂シートと、遮光性を備え防水性を備えない遮光性繊維シートとの積層構造を持つ透湿防水性を備える積層シートである。このような積層シートを、単に重ねて接合したり、特許文献1のように繊維製テープを用いて接合した場合には(段落0050、
図1)、樹脂シート同士が直接接触しないため、樹脂シートの間に挟まった遮光性繊維シートを通って水が漏れるパスが残り防水性が低下するという問題がある。
【0008】
本発明は以上のような従来の課題を考慮してなされたものであり、防水性を損なうことなく接合することができる透湿防水性を備える積層シート、及び、該積層シートを接合する接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る積層シートは、透湿防水シートと保護シートとが積層されたシート本体と、前記透湿防水シート及び前記保護シートよりも融点が低い低融点物質を含む熱融着フィルムとを備える積層シートであって、前記熱融着フィルムは、前記シート本体の少なくとも一辺において、該シート本体の上面、下面、及び側面に存在していることを特徴とする。
【0010】
また積層シートにおいて、前記シート本体は長方形であり、前記熱融着フィルムは、前記シート本体の両長辺に存在していることが好ましい。
また積層シートにおいて、前記熱融着フィルムは、前記上面に積層された第1熱融着フィルムと、前記下面に積層された第2熱融着フィルムとが、前記側面において貼り合わされていることが好ましい。
【0011】
また積層シートにおいて、前記第1熱融着フィルムと前記第2熱融着フィルムとが貼り合わされている部分が、前記側面から3mm以上突出していることが好ましい。
【0012】
また積層シートにおいて、前記熱融着フィルムは、1枚の熱融着フィルムが曲げられて、前記上面、前記側面、及び前記下面に貼り付けられていることが好ましい。
【0013】
また積層シートにおいて、前記低融点物質は、融点が150℃以下であることが好ましい。
【0014】
また積層シートにおいて、前記熱融着フィルムは、前記低融点物質からなる低融点物質層と、前記低融点物質よりも融点が高い高融点物質からなる高融点物質層との積層構造であることが好ましい。
【0015】
前記高融点物質は、融点が160℃以上であることが好ましい。
【0016】
また積層シートにおいて、前記熱融着フィルムは、前記高融点物質層の両面に前記低融点物質層が積層されていることが好ましい。
【0017】
また積層シートにおいて、前記熱融着フィルムが、前記上面、及び前記下面において、前記側面から50〜500mmの領域に存在していることが好ましい。
【0018】
また積層シートにおいて、前記シート本体は、前記透湿防水シートの両面に前記保護シートが積層されていることが好ましい。
【0019】
本発明に係る積層シートの接合方法は、上記いずれかの積層シートを2枚以上用意し、第1積層シートの熱融着フィルムと、第2積層シートの熱融着フィルムとを重ね合わせる合わせ工程と、前記合わせ工程により重ね合わせた部分を加熱して、前記第1積層シートと前記第2積層シートとを熱溶着する接合工程とを含むことを特徴とする。
【0020】
本発明に係る積層シートの接合方法は、透湿防水シートと保護シートとが積層されたシート本体を含む積層シート同士を接合する積層シートの接合方法であって、第1シート本体の一辺、及び第2シート本体の一辺において、前記透湿防水シート及び前記保護シートよりも融点が低い低融点物質を含む熱融着フィルムを、該シート本体の上面、下面、及び側面に存在させて、前記第1シート本体の一辺と、前記第2シート本体の一辺とを重ね合わせる合わせ工程と、前記合わせ工程により重ね合わせた部分を加熱して、前記第1シート本体と前記第2シート本体とを熱融着する接合工程とを含むことを特徴とする。
【0021】
また積層シートの接合方法において、前記熱融着フィルムは、前記低融点物質からなる低融点物質層と、前記低融点物質よりも融点が高い高融点物質からなる高融点物質層との積層構造であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る積層シートは、第1積層シートの熱融着フィルムと第2積層シートの熱融着フィルムとを重ね合わせて加熱するだけで、第1積層シートと第2積層シートとを接合することができるため、作業が単純且つ容易であり作業性がよい。さらに、該積層シートは、シート本体の少なくとも一辺において、熱融着フィルムがシート本体の上面、下面、及び側面に存在するので、第1積層シートの熱融着フィルムと第2積層シートの熱融着フィルムとを接合すると、保護シートの側面が露出しないため水が漏れるパスが残らず防水性を損なうことがない。
【0023】
熱融着フィルムが低融点物質層と高融点物質層との積層構造である場合には、本発明に係る積層シートを熱融着する際に、作業効率を上げるために高温(例えば300℃〜400℃)で熱処理した場合であっても高融点物質層が熱により破損し難い。よって、透湿防水シートが熱融着する際の熱により破損したとしても、熱融着フィルム内の高融点物質層によって熱融着フィルム同士の防水性が保たれるから、積層シート同士の接合部分の防水性を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る積層シートは、透湿防水シートと保護シートとが積層されたシート本体と、透湿防水シート及び保護シートよりも融点が低い低融点物質を含む熱融着フィルムとを備える積層シートであって、熱融着フィルムは、シート本体の少なくとも一辺において、該シート本体の上面、下面、及び側面に存在している。
【0026】
本発明に係る積層シートは、第1積層シートの熱融着フィルムと第2積層シートの熱融着フィルムとを重ね合わせて加熱するだけで、第1積層シートと第2積層シートとを接合することができるため、作業が単純且つ容易であり作業性がよい。さらに、該積層シートは、シート本体の少なくとも一辺において、熱融着フィルムがシート本体の上面、下面、及び側面に存在するので、第1積層シートの熱融着フィルムと第2積層シートの熱融着フィルムとを接合すると、保護シートの側面が露出しないため水が漏れるパスが残らず防水性を損なうことがない。
【0027】
図1は、本発明に係る積層シートの外観図である。
図1に示す積層シート1は、
図1中のX方向を短辺(例えば2m)、
図1中のY方向を長辺(例えば100m)とする長尺の反物であり、透湿性と防水性とを兼ね備える透湿防水シート10と、耐候性及び強度を備える保護シート11と、熱融着フィルム12が
図1中のZ方向に積層され一体化されている。工場や現場において、積層シート1から複数の長方形を切り出し、該長方形の長辺同士を接合することにより、被覆領域の大きさに合った大きさ(例えば10m×25mの長方形)のキャッピングシートを形成することができる。保護シート11を透湿防水シート10に積層することにより、遮光性が得られ、耐候性能が良く透湿防水シート10の紫外線劣化等を抑制し、廃棄物被覆用のキャッピングシートとして必要な力学的強度を確保することができる。
【0028】
以下、透湿防水シート10と保護シート11とが積層された熱融着フィルム12を除く部分をシート本体2と称する。なお、シート本体2は、少なくとも1枚の透湿防水シート10と少なくとも1枚の保護シート11とを含む2層構造以上であればよく、3層構造以上であることが好ましい。例えば、
図1に示すように、1枚の透湿防水シート10の両面に1枚ずつ保護シート11が積層されている3層構造であることが好ましい。シート本体2を3層構造以上とする場合には、透湿防水シート10の表面側(廃棄物の反対側)に第1保護シート11aが積層され、透湿防水シート10の裏面側(廃棄物側)に第2保護シート11bが積層されるものとする。またシート本体2を2層構造とする場合には、透湿防水シート10の表面側に第1保護シート11aが積層されるものとする。
【0029】
図2は、
図1中の一点鎖線S−Sにおける断面の部分拡大図である。
熱融着フィルム12は、シート本体2の一辺Aにおいて、上面2a、下面2b、及び側面2cに存在している。詳しくは、熱融着フィルム12は、上面2a、及び下面2bにおいて、側面2cから50〜500mmの領域に存在している。熱融着フィルム12が側面2cから50mm以上の領域に存在していると十分に防水性を維持することができる。また、500mmを超える領域に存在していると、経済的及び実用的に不利であり、透湿性の領域が狭くなるので好ましくない。なお、熱融着フィルム12は、シート本体2の少なくとも一辺に存在すればよい。また、積層シート1を複数枚接合することができるように、シート本体2を長方形とし、熱融着フィルム12をシート本体2の両長辺に存在させることが好ましい。
【0030】
また
図2に示すように、熱融着フィルム12は、上面2aに積層された第1熱融着フィルム12aと、下面2bに積層された第2熱融着フィルム12bとが、側面2cにおいて貼り合わされて合わせ部分12cを形成している。ここで、合わせ部分12cが、側面2cから1mm以上突出していることが好ましく、3mm以上突出していることがより好ましい。合わせ部分12cが側面2cから1mm以上突出していないと貼り合わせが弱く防水性が損なわれるおそれがあり、3mm以上突出していると十分に貼り合わせることができる。また、作業時等に邪魔にならないように、合わせ部分12cが側面2cから10mmを超えて突出しないことが好ましい。
【0031】
図3は、熱融着フィルムの変形例を示す断面の部分拡大図である。
図3に示すように、1枚の熱融着フィルム12dを曲げて、上面2a、側面2c及び下面2bに貼り付けてもよい。
【0032】
透湿防水シート10は、透湿性と防水性とを兼ね備える樹脂シートである。透湿防水シート10は、防水性(遮水性)を確保する観点から、JIS_L_1092の耐水度試験A法の規定に従って測定される水位が1000mm以上であることが好ましく、2000mm以上であることがより好ましく、5000mm以上であることがさらに好ましい。また透湿防水シート10は、透湿性を確保する観点から、JIS_L_1099_A−1法の規定に従って測定される透湿度が1000g/m
2・24hr以上であることが好ましく、5000g/m
2・24hr以上であることがさらに好ましい。
【0033】
透湿防水シート10は、透湿性を確保する観点から、多孔質シートであることが推奨される。該多孔質シートは、例えば、ポリエチレン等の樹脂に炭酸カルシウム等の無機微粒子を混合してシート状とし、これを延伸するなどにより微小な空隙を形成するインフレーション法により製造される。
【0034】
特に、透湿防水シート10として、インフレーション法により製造される多孔質シートを用いることが好ましい。経験的に、インフレーション法により製造される多孔質シートは、保護シート11との接着性が良いため、シート本体2の防水性が向上する。
【0035】
透湿防水シート10の素材は、特に制限されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)などのポリオレフィン系樹脂や、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂が好ましく、特に低密度のポリエチレンが好ましい。
【0036】
以上のような低密度のポリエチレン製の素材からなりインフレーション法により製造される多孔質シートには、例えば、日東電工株式会社製のミクロテックスや、ドナルドソン株式会社製のテトラテックスなどの市販品を使用することができ、また、フラッシュ紡不織布や極細繊維を用いたSMS不織布を使用することもできる。
【0037】
透湿防水シート10は、敷設時の外力により破損が生じることを防ぐため、及び、接合部分において破損が生じることを防ぐため、適度な破断伸び率及び引裂強度を有するものであることが好ましい。
【0038】
透湿防水シート10は、JIS_L_1906の規定に従って測定される破断伸び率が250%以上であることが好ましく、300%以上であることがより好ましく、400%以上であることがさらに好ましい。
【0039】
透湿防水シート10は、JIS_K_7128_1法の規定に従って測定される引裂強度が0.75N以上であることが好ましく、1.0N以上であることがより好ましく、2.0N以上であることがさらに好ましい。
【0040】
透湿防水シート10の破断伸び率が250%以上(より好ましくは300%以上、さらに好ましくは400%以上)、又は引裂強度が0.75N以上(より好ましくは1.0N以上、さらに好ましくは2.0N以上)であると、敷設時の外力による破損が生じにくく、また接合部分において破損が生じにくいため、高い防水性を維持できる。
【0041】
透湿防水シート10の厚みは、特に制限されないが、例えば、特性、コスト及び施工性のバランス等を考慮すると、50μm以上であることが好ましく、80μm以上であることがより好ましく、また200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。
【0042】
透湿防水シート10の目付は、特に限定されないが、例えば、適切な透湿性及び経時耐久性等を考慮すると、50g/m
2以上であることが好ましく、80g/m
2以上であることがより好ましく、また200g/m
2以下であることが好ましく、150g/m
2以下であることがより好ましい。
【0043】
第1保護シート11aは、耐候性および強度を確保し、透湿性があり、紫外線をカットする遮光機能を有する遮光性シートであって、JIS_L_1055_A法の規定に従って測定される遮光率が90%以上、好ましくは95%以上であることが好ましい。紫外線の遮光率が90%以上(好ましくは95%以上)であれば、第1保護シート11aを表面側(廃棄物の反対側)にして施工をすることで、透湿防水シート10が紫外線に曝されることを防止でき、透湿防水シート10の劣化を抑制できる。なお、磨耗耐久性を向上するために、第1保護シート11aにエンボス加工を行うことが好ましい。
【0044】
第1保護シート11aは、例えば、繊維で構成された繊維シートであって、上記の遮光率を満足できるものであれば特に制限されないが、公知の各種繊維から構成される織布、不織布、編布及び割布などを用いることができ、特に、作業の易しさ(滑りにくさ)の面から、不織布を用いることが好ましい。なお、透湿防水シート10の透湿性能を損なうことがないように、第1保護シート11aは透湿防水シート10よりも透湿性が高いことが好ましい。
【0045】
第1保護シート11aの素材は、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルや、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン12などの脂肪族ポリアミド、もしくはアラミドなどの芳香族ポリアミド、ポリエチレンなどのポリオレフィンなどが好ましく、全芳香族ポリエステル、超高分子量ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトンなどの樹脂を使用することもできる。特に、第1保護シート11aの素材は、コストや耐候性等を考慮すると、上記例示のいずれかのポリエステルを素材とする防水性のない長繊維不織布が好ましい。
【0046】
なお、第1保護シート11aの素材は、例示の素材を単独で使用してもよいし、本発明の効果を損なわない範囲で2種以上を混合して使用してもよい。また第1保護シート11aは、遮光率を上げるために着色することが好ましい。ここで着色に使用する色素は、紡糸の際に劣化し難いカーボンブラックや無機顔料が好ましい。
【0047】
第1保護シート11aの色合いについては、特に制限されないが、通常、上記のような色素によって着色された側が最表面となるため、使用する場所に応じ好適な色となるように色素を選択すればよい。よって、色素は単独で使用してもよく、色合いを調整するために複数種を混合して使用してもよい。
【0048】
第1保護シート11aの厚みは、特に制限されないが、0.3mm以上であることが好ましく、0.4mm以上であることがより好ましく、また1.0mm以下であることが好ましく、0.8mm以下であることがさらに好ましい。第1保護シート11aの厚みが0.3mm以上(より好ましくは0.4mm以上)であると、廃棄物被覆用のキャッピングシートとして必要な力学的強度を十分に確保することができる。また第1保護シート11aの厚みが1.0mm以下(より好ましくは0.8mm以下)であると、シート本体2が硬くなり難い。
【0049】
第1保護シート11aの目付は、特に限定されないが、70g/m
2以上であることが好ましく、100g/m
2以上であることがより好ましく、また300g/m
2以下であることが好ましく、200g/m
2以下であることがより好ましい。このような目付とすることで、良好な施工性であるのに十分な柔軟性と、十分な補強効果を確保できる。第1保護シート11aの目付を70g/m
2以上(より好ましくは100g/m
2以上)にすることで、シート本体2の強度を向上させる効果が十分に期待できる。また第1保護シート11aの目付を300g/m
2以下(より好ましくは200g/m
2以下)にすることで、シート本体2が硬くならず、施工性が低下しない上に、経済的に有利である。
【0050】
なお、第1保護シート11aに、該シートを構成する繊維の10倍以上の直径の繊維を部分的に接合して防滑層(図示せず)を形成することが好ましい。該防滑層があると、表面側に土層を形成する場合に、傾斜があっても土がずり落ち難くなる。
【0051】
第2保護シート11bは、耐候性および強度を確保し、透湿性がある耐候性シートであって、ASTM_D_4833の規定に従って測定される貫入抵抗が200N以上であることが好ましく、300N以上であることがより好ましい。貫入抵抗が200N以上であれば、第2保護シート11bを裏面側(廃棄物側)にして施工をすることで、不法投棄された廃棄物に注射針の如き尖った形状の廃棄物が含まれる場合であっても、穴や破れが生じて防水性が損なわれることを防止できる。
【0052】
第2保護シート11bは、例えば、繊維で構成された繊維シートであって、上記の貫入抵抗を満足できるものであれば特に制限されないが、公知の各種繊維から構成される長繊維不織布、短繊維不織布及び織編物などを用いることができる。また、第2保護シート11bには、第1保護シート11aと同様のものを用いてもよいが、遮光機能は不要である。
【0053】
第2保護シート11bの厚みは、特に制限されないが、0.2mm以上であることが好ましく、0.6mm以上であることがより好ましく、また10.0mm以下であることが好ましく、5.0mm以下であることがより好ましい。第2保護シート11bの厚みが0.2mm以上(より好ましくは0.6mm以上)であると、貫入抵抗を200N以上とすることが容易であり、10.0mm以下(より好ましくは5.0mm以下)であると、シート本体2が硬くなり難い。
【0054】
第2保護シート11bの目付は、特に制限されないが、50g/m
2以上であることが好ましく、150g/m
2以上であることがより好ましく、また1000g/m
2以下であることが好ましく、500g/m
2以下であることがより好ましい。第2保護シート11bの目付を50g/m
2以上(より好ましくは150g/m
2以上)にすることで、シート本体2の強度を向上させる効果が十分に期待できる。また第2保護シート11bの目付を1000g/m
2以下(より好ましくは500g/m
2以下)にすることで、シート本体2が硬くならず、施工性が低下しない上に、経済的に有利である。
【0055】
シート本体2は、破断伸び率250%以上、引裂強度0.75N以上である透湿防水シート10が、厚さ0.3〜1.0mmの第1保護シート11aと、厚さ0.2〜10.0mmの第2保護シート11bとの間に積層一体化されてなる少なくとも3層の積層構造であることが好ましい。
【0056】
シート本体2は、防水性を確保する観点から、JIS_L_1092の耐水度試験A法の規定に従って測定される耐水度水位が1000mm以上であることが好ましく、2000mm以上であることがより好ましく、5000mm以上であることがさらに好ましい。シート本体2の耐水度水位が1000mm以上(より好ましくは2000mm以上、さらに好ましくは5000mm以上)であれば、雨水などが廃棄物側へ浸透することを十分に防止でき、廃棄物下の土壌の汚染を抑制することができる。
【0057】
シート本体2は、透湿性を確保する観点から、JIS_L_1099_A−1法の規定に従って測定される透湿度が100g/m
2・24hr以上であることが好ましく、1000g/m
2・24hr以上であることがより好ましく、3000g/m
2・24hr以上であることがさらに好ましい。該透湿度は大きいほど透湿性が良好であるが、実用上の上限は、10000g/m
2・24hrであり、より好ましくは8000g/m
2・24hrである。シート本体2の透湿度が100g/m
2・24hr以上(より好ましくは1000g/m
2・24hr以上、さらに好ましくは3000g/m
2・24hr以上)であれば、廃棄物から発生するガスや水蒸気がキャッピングシートで覆われた空間に閉じ込められてしまうことを抑制し、破れを防止することができる。
【0058】
透湿防水シート10と保護シート11の接着方法は特に制限はなく、公知の方法、例えば熱融着ラミネート法、接着剤を用いる方法などが採用できる。接着剤を用いる場合には、透湿性が損なうことのないように配慮する必要があり、例えば、部分的にホットメルトパウダーや、ホットメルト繊維タイプの接着剤などを用いて熱融着又は熱接着するとよい。
【0059】
熱融着温度又は熱接着温度は、60℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、また200℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましい。熱融着温度又は熱接着温度が200℃以下(より好ましくは130℃以下)であれば、高温により積層シート1に破損が起こりにくい。
【0060】
熱融着フィルム12は、透湿防水シート10及び保護シート11よりも融点が低い低融点物質を含む。なお、熱融着フィルム12は、少なくとも低融点物質からなる1層でよいが、好ましくは低融点物質からなる低融点物質層と低融点物質よりも融点が高い高融点物質からなる高融点物質層との2層以上の積層構造であることが好ましく、より好ましくは3層以上である。
図4は、熱融着フィルムの断面図である。
図4に示すように、熱融着フィルム12は、1枚の高融点物質層14の両面に1枚ずつ低融点物質層13が積層されている3層構造であることが好ましい。
【0061】
低融点物質の融点は150℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましい。低融点物質の融点が150℃以下(より好ましくは130℃以下)であれば、比較的低温での熱融着が容易である。
【0062】
高融点物質の融点は160℃以上であることが好ましく、170℃以上であることがより好ましい。高融点物質の融点が160℃以上(より好ましくは170℃以上)であれば、熱融着時に高融点物質層14の破損が起こり難く防水性が損なわれない。
【0063】
熱融着フィルム12全体の厚みは20〜500μmが好ましく、より好ましくは30〜300μmである。融着フィルム12全体の厚みが20μm以上であれば、フィルムの破損が起こり難い。融着フィルム12全体の厚みが500μm以下であれば、柔軟性が損なわれず、施工場所の起伏への追従性が損なわれない。
【0064】
なお、耐候性を向上させる目的で、熱融着フィルム12に耐候剤や原着を付与することができる。また、熱融着フィルム12における低融点物質層13と高融点物質層14との積層方法は、特に限定されず、熱融着による積層が好ましい。
【0065】
図5(a)、(b)は、本発明に係る積層シートの接合方法の概略を示す断面の部分拡大図である。
(1)合わせ工程において、
図5(a)に示すように、積層シート1を2枚以上用意し、第1積層シート1aの熱融着フィルムと、第2積層シート1bの熱融着フィルムとを重ね合わせる。積層シート同士を重ね合わせる部分の幅(接合部分の幅)は特に限定されないが、実用的には、50mm以上150mm以下であることが好ましい。
【0066】
(2)接合工程において、
図5(b)に示すように、合わせ工程により重ね合わせた部分を、例えば自走式加熱融着機により加熱して、第1積層シート1aと第2積層シート1bとを熱溶着する。熱溶着する部分の幅(溶着部分の幅)は特に限定されないが、実用的には、10mm以上75mm以下であることが好ましい。
【0067】
接合工程における加熱温度は、熱融着フィルム12中の高融点物質層14に破損を与えない程度の温度であれば特に限定されないが、400℃以下である事が好ましく、300℃以下である事がより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。また加工速度は0.5m/min以上である事が好ましく、1.0m/min以上である事がより好ましく、5.0m/min以下である事がさらに好ましい。
【0068】
なお、上記で説明した接合方法は、積層シート1の長辺側を接合する方法であるが、同様の方法で積層シート1の短辺側を接合することもできる。但し積層シート1の短辺側には熱融着フィルムを積層していないので、積層シート1の短辺同士を接合する場合には、上記合わせ工程において第1シートの短辺と第2シート本体の短辺とを重ね合わせる際に、第1積層シート1aの短辺に、単体の熱融着フィルム12を第1積層シート1aの短辺の上面、下面、及び側面に存在させ、第2積層シート1bの短辺に、単体の熱融着フィルム12を第2積層シート1bの短辺の上面、下面、及び側面に存在させる必要がある。また、このような短辺同士を接合する際の接合方法を、長辺同士を接合する際や、短辺と長辺とを接合する際にも用いることができる。
【0069】
あるいは積層シート1の短辺側にも長辺側と同様に熱融着フィルム12を積層しておくこともできる。しかしながら、積層シート1の短辺側は被覆領域の大きさに合わせて切断されることが多いので、切断部分を接合する際にはやはり、上記のような短辺同士を接合する際の接合方法を用いる必要がある。
【0070】
積層シート同士の接合部分は、JIS_L_1092の耐水度試験A法の規定に従って測定される耐水度水位が1000mm以上であることが好ましく、2000mm以上であることがより好ましい。接合部分の耐水度水位が1000mm以上(より好ましくは2000mm以上)であると、接合界面を通じる水の透過が抑えられるため、接合部において十分な防水性を維持することができる。
【0071】
積層シート同士の接合部分は、JIS_L_1906の規定に準拠して測定される接合強度が300N/5cm以上であることが好ましく、500N/5cm以上であることがより好ましい。接合部分の接合強度が300N/5cm以上(より好ましくは500N/5cm以上)であると、通常想定される外力により接合部分が破損することがない。
【0072】
なお、シート本体2において、第1保護シート11aの表面側に、さらに第3保護シート(図示せず)を積層することが好ましい。第3保護シートは、第2保護シート11bと同様に、耐候性および強度を確保し、透湿性がある耐候性シートであって、ASTM_D_4833の規定に従って測定される貫入抵抗が200N以上、より好ましくは250N以上、さらに好ましくは300N以上のものが推奨される。第3保護シートの貫入抵抗が200N以上であれば、耐水度の経時低下が起こりにくく、積層シート1上を作業者が歩くことが想定される場合に穴や破れが生じて防水性が損なわれることを防止でき、重機により土砂を覆せる時のダメージを少なくすることができる。
【0073】
第3保護シートは、例えば、繊維で構成された繊維シートであって、上記の貫入抵抗を満足できるものであれば特に制限されないが、第1保護シート11aと同様のものを用いることができる。第3保護シートは表面側になる場合があるため、遮光機能を有することが好ましく、例えば、第1保護シート11aと同様に、遮光率を上げるために着色することが好ましい。
【0074】
第3保護シートの厚みは、特に制限されないが、0.5mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることがより好ましく、また3.0mm以下であることが好ましく、2.0mm以下であることがより好ましい。第3保護シートの厚みが0.5mm以上(より好ましくは1.0mm以上)であると、貫入抵抗を200N以上とすることが容易であり、3.0mm以下(より好ましくは2.0mm以下)であると、シート本体2が硬くなり難い。
【0075】
第3保護シートの目付は、特に制限されないが、50g/m
2以上であることが好ましく、100g/m
2以上であることがより好ましく、また3000g/m
2以下であることが好ましく、2000g/m
2以下であることがより好ましい。第3保護シートの目付を50g/m
2以上(より好ましくは100g/m
2以上)にし、3000g/m
2以下(より好ましくは2000g/m
2以下)にすることで、適切な機械的強度および耐久性を保持できる。
【0076】
なお、例えば、塩化ビニルシート、ポリエチレンシートなどの防水性を有し透湿性を備えない防水性シートを、シート本体2の一部に使用することにより、接合コストを低減したり、施工時間を短縮できる場合がある。また、本発明に係る積層シート1は、不法投棄された廃棄物を一時的に覆うだけでなく、半永久的に埋め立てられる廃棄物処分場における廃棄物に対しても好適に使用される。
【0077】
以上のように、本発明に係る積層シート1によれば、第1積層シート1aの熱融着フィルムと第2積層シート1bの熱融着フィルムとを重ね合わせて加熱するだけで、第1積層シート1aと第2積層シート1bとを接合することができるため、作業が単純且つ容易であり作業性がよい。さらに、積層シート1は、シート本体の少なくとも一辺において、熱融着フィルム12がシート本体の上面、下面、及び側面に存在するので、第1積層シート1aの熱融着フィルムと第2積層シート1bの熱融着フィルムとを接合すると、保護シートの側面が露出しないため水が漏れるパスが残らず防水性を損なうことがない。
【0078】
熱融着フィルム12は、低融点物質層13と高融点物質層14との積層構造であるので、本発明に係る積層シート1を熱融着する際に、高融点物質層14が熱により破損し難い。よって、透湿防水シート10が熱融着する際の熱により破損したとしても、熱融着フィルム12内の高融点物質層14によって熱融着フィルム12同士の防水性が保たれるから、積層シート1同士の接合部分の防水性を維持することができる。
【0079】
不法投棄場所の廃棄物は、いずれは処分場へ移送しなければならないので、これらの廃棄物にキャッピングを行う際にはキャッピングシート表面に覆土をしないことが多い。よって、該キャッピングシートには従来よりも優れた耐候性が要求されるが、本発明に係る積層シート1は、表面側(廃棄物の反対側)に耐候性及び遮光機能を有する遮光性シートである第1保護シート11aを積層しているので、防水性を長期間に亘って保持することができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。本発明で用いた測定法は以下の通りである。
【0081】
<目付>
JIS_L_1906の規定に従って測定した。
【0082】
<破断伸び率>
JIS_L_1906の規定に従って測定した。
【0083】
<引裂強度>
JIS_K_7128_1法の規定に従って測定した。
【0084】
<熱収縮率>
JIS_L_1906の規定に準拠して測定した。15cm角のサンプルを切り出し、80℃のオーブンに10分間置いた後の、縦横の辺の長さの変化率を測定し、その平均値を採用した。
【0085】
<遮光率>
JIS_L_1055_A法の規定に従って測定した。
【0086】
<貫入抵抗>
ASTM_D_4833の規定に従って測定した。
【0087】
<透湿度>
JIS_L_1099_A−1法の規定に従って測定した。
【0088】
<耐水度水位>
JIS_L_1092の耐水度試験A法の規定に従って測定した。サンプルを固定ホルダーより一回り大きい円形に切り出し、端部を溶融パラフィンにつけてシートの末端封鎖を行い、隙間のありそうなところにはシリコン系シール材を塗って固化した。その後ホルダーにセットし、目視により水滴が浮き上がった際の水頭を測定した。n=5点測定し、その中で最も値の低いものを採用した。
【0089】
<接合強度>
JIS_L_1906の規定に準拠して測定した。接合部が上下の固定チャックの中間に来るようにセットして測定を行った。
【0090】
(実施例1)
第1繊維シートとして、黒色に着色されたポリエステル製の部分熱接着長繊維不織布(目付100g/m
2、厚み0.4mm、遮光率99.8%以上)を用いた。この第1繊維シートの上に、防水透湿性シートとして、ポリエチレンをインフレーション法により製膜した防水透湿フィルム(トクヤマ株式会社製の「ポーラム」高耐候高伸度タイプ:目付100g/m
2、厚み100μm、破断伸び率530%、引裂強度2.1N、80℃での縦横の熱収縮率の平均値16%)を積層した。
【0091】
さらに、第2繊維シートとして、ポリエステル製ニードルパンチ不織布(目付500g/m
2、厚み5mm)を防水透湿性シートの第1繊維シートの反対面側に積層した。また、第1繊維シートと防水透湿性シートとの積層および、防水透湿性シートと第2繊維シートとの積層には、アクリル系粘着剤(サイデン化学株式会社製のサイビノールTC−K3樹脂)を塗布することにより、三つの積層を一体し、防水透湿性積層体(幅2m、長さ10m)を作製した。
【0092】
防水透湿性積層体1両端部の表裏面にホットメルトフィルム(表裏層融点110℃、中間層融点180℃の3層構造)を端部から100mm、端部から20mmはみ出すように積層させた。上記積層した防水透湿性積層体同士を端部のフィルムが積層された部分同士を重ね、熱風型自走式融着機にて300℃、700N、2m/minの条件にて積層後フィルム端部から30〜80mmの間を接合させた。接合部耐水度水位及び接合部強度を前記手法によって測定した。実施例1では耐水度圧、接合部強度ともに極めて良好であった。実施例1の接合部強度結果を表1に示す。
【0093】
(実施例2)
実施例1で作製した防水透湿性積層体1の第1繊維シート面にホットメルトフィルム(表裏層融点110℃、中間層融点180℃の3層構造)を端部から100mm、端部から20mmはみ出すように積層させ、フィルム端部から10〜60mmの幅を接合させた以外は実施例1と同様の方法で施工及び評価を行った。実施例2では耐水度圧、接合部強度ともに極めて良好であった。実施例2の接合部強度結果を表1に示す。
【0094】
(実施例3)
実施例1で作製した防水透湿性積層体1の防水透湿性積層体1両端部の第1繊維シート面にホットメルトフィルム(表裏層融点110℃、中間層融点180℃の3層構造)を端部から100mm、端部から20mmはみ出すように積層させたものと、防水透湿性積層体1両端部の第2繊維シート面にホットメルトフィルム(表裏層融点110℃、中間層融点180℃の3層構造)を端部から100mm、端部から20mmはみ出すように積層させ、2枚の積層体のホットメルト面同士が重なり合うように接合した。その他の点は実施例2と同様の方法で施工及び評価を行った。実施例3では耐水度圧、接合部強度ともに極めて良好であった。実施例3の接合部強度結果を表1に示す。
【0095】
(比較例1)
実施例1で作製した防水透湿性積層体1同士を100mmオーバーラップさせ、端部から10〜60mmの幅を接合させた。その他の点は実施例1と同様の方法で施工及び評価を行った。比較例1では耐水度圧、接合部強度ともに低い値であった。比較例1の評価結果を表1に示す。
【0098】
【表1】