【実施例】
【0017】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0018】
(実施例1:栗皮の抽出物の調製)
栗の渋皮および鬼皮20g(総量)を乾燥させ破砕した後、400gの50体積%1,3−ブチレングリコール水溶液を加え、室温下で7日間抽出し、栗の渋皮および鬼皮をろ過することで栗皮の抽出物を得た。この栗皮の抽出物中の抽出溶媒(50体積%1,3−ブチレングリコール水溶液)を除いた固形分の含有量は、1.0質量%であった。
【0019】
(比較例1:栗葉の抽出物の調製)
栗の葉20gを乾燥させ破砕した後、400gの50体積%1,3−ブチレングリコール水溶液を加え、室温下で7日間抽出し、栗の葉をろ過することで栗葉の抽出物を得た。この栗葉の抽出物中の抽出溶媒(50体積%1,3−ブチレングリコール水溶液)を除いた固形分の含有量は、0.9質量%であった。
【0020】
(比較例2:栗のいがの抽出物の調製)
栗のいが20gを乾燥させ破砕した後、400gの50体積%1,3−ブチレングリコール水溶液を加え、室温下で7日間抽出し、栗のいがをろ過することで栗のいがの抽出物を得た。この栗のいがの抽出物中の抽出溶媒(50体積%1,3−ブチレングリコール水溶液)を除いた固形分の含有量は、0.8質量%であった。
【0021】
〔コラーゲン産生促進試験:I型コラーゲンアッセイ〕
実施例1、比較例1、2の各抽出物、アスコルビン酸(シグマ社製、比較例3)を50体積%1,3−ブチレングリコール水溶液で適宜希釈し、試験溶液とした。
ヒト皮膚線維芽細胞を96ウェルプレートに1. 0×10
4cells/100μL/wellになるように播種した。播種培地はダルベッコ変法イーグル培地(Dalbecco’s Modified Eagle Medium, DMEM 和光純薬社製)に牛胎児血清(Biowest 社製)を終濃度10%になるように添加し、さらに終濃度100U/mLのペニシリン・ストレプトマイシン(GIBCO社製)を使用した。
37℃、5%CO
2下で24時間培養後、培地を除去し各濃度の試料を含む無血清培地(DMEM)に置換し、48時間培養した。培養終了後に、培養上清を播種し、別の96ウェルプレートで100倍希釈(10倍×10倍の2段階希釈) した。
次に、この調製した試薬を用いて、宝酒造社製キットMK−101でI型コラーゲン生合成能を測定した。すなわち、ELISA法でヒト皮膚線維芽細胞が産出するI型プロコラーゲンC末端ペプチド(PIP:Procollagen typeI carboxyterminal propeptide)量を測定し、コラーゲン産生率を算出した。
その結果を表1に示す。なお、表1における有効分とは、乾燥残留物のことである。
【0022】
【表1】
【0023】
上記コラーゲン産生促進試験では、栗の使用部位におけるコラーゲン産生促進効果を比較するため、栗皮、葉、いがを用いて試験を行なった。また比較例3では、陽性対照として、コラーゲン産生促進作用を有することが既知であるアスコルビン酸を用いた。実施例1、比較例1、2の結果から、栗の使用部位により抽出される成分が異なることが示された。すなわち、実施例1の栗皮の抽出物は、コラーゲン産生促進作用を有しており、しかも濃度依存的にコラーゲン産生率が向上した。一方、比較例1の栗葉抽出物、および比較例2の栗いが抽出物は、コラーゲン産生促進作用を示さなかった。
【0024】
〔安定性試験〕
栗皮(実施例1)、葉(比較例1)、いが(比較例2)の各抽出物、アスコルビン酸(シグマ社製)を、50体積%1,3−ブチレングリコール水溶液を用いて、10,000μg/mLに希釈し、試験溶液とした。この試験溶液を透明ガラス容器に密封して、0℃、25℃、40℃でそれぞれ3ヶ月間保存し、その外観を観察して、下に示す2段階で評価した。
○:安定性良好(いずれの温度においても外観の変化がない。)
×:安定性不良(いずれかの温度において澱(おり)、沈殿を生じるまたは分離する。もしくは変色が著しい。)
結果を表2に示す。なお、表2における有効分とは、乾燥残留物のことである。
【0025】
【表2】
【0026】
上記の安定性試験において、栗皮、葉、いがの各抽出物は、良好な安定性を示した。一方、アスコルビン酸では、澱が確認されたことから、安定性が低いことが分かる。
したがって、栗皮抽出物を有効成分として含有する本発明のコラーゲン産生促進剤は、従来のコラーゲン産生促進剤であるアスコルビン酸よりも、安定性に優れていることが分かる。
【0027】
(実施例2、3および比較例4、5、6:官能評価)
実施例1で得られた栗皮の抽出物、比較例1で得られた栗葉の抽出物、比較例2で得られた栗のいがの抽出物をそれぞれ用いて、表3に示す化粧水(皮膚外用剤)を調製し、下記4項目についてそれぞれの評価基準により評価と判定を行った。結果を表3に示す。
【0028】
〔評価項目および評価基準〕
(1)シワ改善
20名の女性(35才〜60才)をパネラーとし、皮膚外用剤を1日2回、4週間使用した後の肌の状態について下記のように官能評価を行った。
2点:シワが明らかに少なくなったと感じた場合
1点:シワがやや少なくなったと感じた場合。
0点:シワ改善効果が見られないと感じた場合。
【0029】
さらに、20名の評価を加算し、合計点を下記の基準で判定した。
◎:35点以上かつ0点が1人もいない(非常に優れたシワ改善効果を有する皮膚外用剤)
○:30点以上かつ0点が1人まで(優れたシワ改善効果を有する皮膚外用剤)
△:15点以上かつ0点が2人まで(わずかにシワ改善効果を有する皮膚外用剤)
×:15点未満または0点が3人以上(シワ改善効果を有しない皮膚外用剤)
【0030】
(2)肌の張り
20名の女性(35才〜60才)をパネラーとし、皮膚外用剤を1日2回、4週間使用した後の肌の状態について下記のように官能評価を行った。
2点:肌の張りが明らかに出てきたと感じた場合。
1点:肌の張りがやや出てきたと感じた場合。
0点:肌に張りを与える効果が見られないと感じた場合。
【0031】
さらに、20名の評価を加算し、合計点を下記の基準で判定した。
◎:35点以上かつ0点が1人もいない(肌に張りを与える効果が非常に優れた皮膚外用剤)
○:30点以上かつ0点が1人まで(肌に張りを与える効果が優れた皮膚外用剤)
△:15点以上かつ0点が2人まで(肌に張りを与える効果をわずかに有する皮膚外用剤)
×:15点未満または0点が3人以上(肌に張りを与える効果を有しない皮膚外用剤)
【0032】
(3)肌のキメ
20名の女性(35才〜60才)をパネラーとし、皮膚外用剤を1日2回、4週間使用した後の肌の状態について下記のように官能評価を行った。
2点:肌のキメが明らかに整い、肌が明らかに若々しくなったと感じた場合。
1点:肌のキメがやや整い、肌がやや若々しくなったと感じた場合。
0点:肌のキメを整えて若々しい肌に導く効果が見られないと感じた場合。
【0033】
さらに、20名の評価を加算し、合計点を下記の基準で判定した。
◎:35点以上かつ0点が1人もいない(肌のキメを整えて若々しい肌に導く効果が非常に優れた皮膚外用剤)
○:30点以上かつ0点を評価したパネラーが1人まで(肌のキメを整えて若々しい肌に導く効果が優れた皮膚外用剤)
△:15点以上かつ0点を評価したパネラーが2人まで(肌のキメを整えて若々しい肌に導く効果をわずかに有する皮膚外用剤)
×:15点未満または0点を評価したパネラーが3人以上(肌のキメを整えて若々しい肌に導く効果を有しない皮膚外用剤)
【0034】
(4)化粧ノリ
20名の女性(35才〜60才)をパネラーとし、皮膚外用剤を1日2回、4週間使用した後の肌の状態について下記のように官能評価を行った。
2点:化粧のノリが良いと感じた場合。
1点:化粧のノリがやや良いと感じた場合。
0点:化粧のノリが良くないと感じた場合。
【0035】
さらに、20名の評価を加算し、合計点を下記の基準で判定した。
◎:35点以上かつ0点が1人もいない(化粧のノリが非常に良い皮膚化粧料)
○:30点以上かつ0点を評価したパネラーが1人まで(化粧のノリが良い皮膚化粧料)
△:15点以上かつ0点を評価したパネラーが2人まで(化粧のノリがやや良い皮膚化粧料)
×:15点未満または0点を評価したパネラーが3 人以上(化粧のノリがあまり良くない皮膚化粧料)
【0036】
【表3】
【0037】
実施例2および3の結果から、本発明のコラーゲン産生促進剤の有効成分である栗皮の抽出物を含有する化粧水が、シワ改善効果、肌に張りを与える効果、肌のキメを整えて若々しい肌に導く効果、および化粧のノリを向上させる効果を有することが分かる。
また、栗葉の抽出物(比較例5)や栗のいがの抽出物(比較例6)を含有する化粧水に対して、実施例3の化粧水は、上記の効果がより優れることも分かる。
すなわち、本発明のコラーゲン産生促進剤を含有する皮膚外用剤(化粧水)は、シワ改善効果、肌に張りを与える効果、肌のキメを整えて若々しい肌に導く効果、および化粧のノリを向上させる効果に非常に優れることが分かる。